(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025085963
(43)【公開日】2025-06-06
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/20 20060101AFI20250530BHJP
F02M 69/00 20060101ALI20250530BHJP
【FI】
F02M37/20 E
F02M37/20 R
F02M69/00 320J
F02M69/00 320P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199691
(22)【出願日】2023-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
(57)【要約】
【課題】燃料の気化によって燃料供給装置にベーパーが発生してもベーパーロックを抑制する。
【解決手段】燃料供給装置(50)には、燃料タンク内の燃料を燃料通路に向けて送り出す燃料ポンプ(51)と、燃料ポンプよりも燃料通路の下流側に位置する燃料フィルタ(54)と、燃料フィルタよりも燃料通路の下流側に位置する分岐ジョイント(61)と、燃料通路の下流端において吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁(62)と、が設けられている。分岐ジョイントには一対の枝管が設けられ、一方の枝管には燃料ポンプに燃料を戻すリターン配管(73)が接続され、他方の枝管には燃料噴射弁に燃料を導くフィード配管(74)が接続されている。一方の枝管が他方の枝管よりも高くなっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからエンジンの吸気通路に燃料を供給する燃料供給装置であって、
前記燃料タンク内の燃料を燃料通路に向けて送り出す燃料ポンプと、
前記燃料ポンプよりも燃料通路の下流側に位置する燃料フィルタと、
前記燃料フィルタよりも燃料通路の下流側に位置する分岐ジョイントと、
燃料通路の下流端において前記吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備え、
前記分岐ジョイントには一対の枝管が設けられ、一方の枝管には前記燃料ポンプに燃料を戻すリターン配管が接続され、他方の枝管には前記燃料噴射弁に燃料を導くフィード配管が接続され、
前記一方の枝管が前記他方の枝管よりも高くなっていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記分岐ジョイントが前記燃料ポンプよりも前方に位置し、
前記一方の枝管が前方に向けられ、前記他方の枝管が後方に向けられ、
前記リターン配管が前記一方の枝管から上方に延びた後に前記燃料ポンプに向かって後方に延びていることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記リターン配管の後方に延びている部分が前記フィード配管よりも上方に位置していることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記燃料噴射弁が前記分岐ジョイントよりも低く位置し、
前記フィード配管の下流側が上方に延びた後に前記燃料噴射弁に向かって下方に延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記分岐ジョイントの主管には前記燃料フィルタから延びるフィルタ配管が接続され、
前記フィルタ配管が前記燃料フィルタから上方に延びた後に前記主管に向かって下方に延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記分岐ジョイントが前記燃料フィルタよりも車幅方向外側に位置し、
上面視にて、前記フィルタ配管が前記リターン配管と前記フィード配管の間を通っていることを特徴とする請求項5に記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記燃料フィルタに前記分岐ジョイントが保持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、燃料タンクの外側に燃料ポンプ及び燃料フィルタが設置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両では、燃料タンクの下方にエンジンが設置されており、クランクケースの後方に燃料ポンプが設置され、シリンダの後方に燃料フィルタが設置されている。燃料タンクから上流配管を通じて燃料ポンプに燃料が供給され、燃料ポンプからリターン配管を通じて余剰燃料が燃料タンクに戻されている。燃料ポンプからフィルタ配管を通じて燃料フィルタに燃料が送り出され、燃料フィルタからフィード配管を通じて燃料噴射弁に燃料が送られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような機種では、車両停車中に燃料フィルタ内の燃料が気化してベーパーが発生する場合がある。燃料フィルタからフィード配管にベーパーが入り込むと、燃料噴射弁への燃料供給が妨げられてエンジンがストールするおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、燃料の気化によってベーパーが発生してもベーパーロックを抑制することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の燃料供給装置は、燃料タンクからエンジンの吸気通路に燃料を供給する燃料供給装置であって、前記燃料タンク内の燃料を燃料通路に向けて送り出す燃料ポンプと、前記燃料ポンプよりも燃料通路の下流側に位置する燃料フィルタと、前記燃料フィルタよりも燃料通路の下流側に位置する分岐ジョイントと、燃料通路の下流端において前記吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁と、を備え、前記分岐ジョイントには一対の枝管が設けられ、一方の枝管には前記燃料ポンプに燃料を戻すリターン配管が接続され、他方の枝管には前記燃料噴射弁に燃料を導くフィード配管が接続され、前記一方の枝管が前記他方の枝管よりも高くなっていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の燃料供給装置によれば、燃料フィルタで発生したベーパーが分岐ジョイント側に移動しても、一方の枝管からリターン配管側にベーパーが移動し易い。他方の枝管からフィード配管側にベーパーが移動し難くなって、フィード配管を通じて燃料噴射弁側へのベーパーの移動が抑えられる。ベーパーロックによる燃料噴射弁の作動不良が抑えられて、燃料噴射弁から吸気通路に燃料が適切に噴射されてエンジンストールの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の鞍乗型車両の車両中央部の右側面図である。
【
図2】本実施例の燃料供給装置周辺の右側面図である。
【
図3】本実施例の燃料供給装置周辺の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の燃料供給装置では、燃料タンクからエンジンの吸気通路に燃料が供給される。燃料ポンプによって燃料タンク内の燃料が燃料通路に送り出され、燃料通路の下流端で燃料噴射弁によって吸気通路に燃料が噴射される。燃料ポンプよりも燃料通路の下流側に燃料フィルタが位置し、燃料フィルタよりも燃料通路の下流側に分岐ジョイントが位置している。分岐ジョイントには一方の枝管と他方の枝管が設けられ、一方の枝管には燃料ポンプに燃料を戻すリターン配管が接続され、他方の枝管には燃料噴射弁に燃料を導くフィード配管が接続されている。一方の枝管が他方の枝管よりも高くなっている。燃料フィルタで発生したベーパーが分岐ジョイント側に移動しても、一方の枝管からリターン配管側にベーパーが移動し易い。他方の枝管からフィード配管側にベーパーが移動し難くなって、フィード配管を通じて燃料噴射弁側へのベーパーの移動が抑えられる。ベーパーロックによる燃料噴射弁の作動不良が抑えられて、燃料噴射弁から吸気通路に燃料が適切に噴射されてエンジンストールの発生を防止することができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の車両中央部の右側面図である。なお、
図1では鞍乗型車両から外装部品等の一部の部材を取り外した状態を示している。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、バックボーン型の車体フレーム10にエンジン25や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10のヘッドパイプ11から後方にメインフレーム12が延びており、メインフレーム12の下向きに湾曲した後部には一対のピボットフレーム13が接続されている。また、ヘッドパイプ11から下方にダウンフレーム14が延びており、ダウンフレーム14の下部にはブラケット15が接続されている。ダウンフレーム14下部のブラケット15にエンジン25前部が支持され、一対のピボットフレーム13に設けられたブラケット16、17にエンジン25後部が支持されている。
【0012】
メインフレーム12の後部から後方に一対の上側シートレール18が延びており、一対のピボットフレーム13の中間部から後斜め後方に一対の下側シートレール19が延びている。一対の上側シートレール18の後部と一対の下側シートレール19の後部が接続されている。ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク21が操舵可能に支持され、フロントフォーク21の下部には前輪(不図示)が回転可能に支持されている。また、一対のピボットフレーム13にはスイングアーム22が揺動可能に支持され、スイングアーム22の後部には後輪(不図示)が回転可能に支持されている。
【0013】
エンジン25は、クランクケース26と、クランクケース26上に設けられたシリンダ27と、シリンダ27上に設けられたシリンダヘッド28と、シリンダヘッド28上に設けられたシリンダヘッドカバー29と、を有している。シリンダヘッド28の後面にはインテークパイプ32、スロットルバルブ33等を介してエアクリーナ34が接続されている。シリンダヘッド28の前面から左斜め下方に排気管35が延出しており、排気管35がクランクケース26の下方を通って車両後方の消音チャンバ36に接続されている。消音チャンバ36の後部から突き出したテールパイプ37に後上りに傾けられたマフラ38が接続されている。
【0014】
メインフレーム12の上部には燃料タンク41が設置され、燃料タンク41の下方にはイグニッションコイル42が設置されている。ダウンフレーム14の左側にはオイルクーラ45(特に
図3参照)が設置され、オイルクーラ45の後方にはオイルクーラ配管46、47やイグニッションコイル42の配線が位置している。燃料タンク41とインテークパイプ32が燃料供給装置50の各種配管を介して接続されている。燃料供給装置50の上流の燃料ポンプ51(
図2参照)が燃料タンク41に取り付けられ、燃料供給装置50の下流の燃料噴射弁62がインテークパイプ32に取り付けられて、燃料タンク41からエンジン25の吸気通路に燃料が供給されている。
【0015】
ところで、燃料にガソリン、アルコール、ガソリンとアルコールの混合燃料が使用可能な鞍乗型車両が存在する。このような鞍乗型車両では燃料タンクの内側に加えて、燃料タンクの外側にも燃料フィルタが設けられている。アルコール等の揮発性が高い燃料は燃料フィルタ内で気化して、ベーパーロックによって燃料噴射弁の作動不良を生じさせる恐れがある。特に、高負荷運転後の車両停車中には、エンジンや排気系部品の熱で燃料フィルタが温められてベーパーが発生し易い。そこで、本実施例の燃料供給装置50は、アルコール燃料等が使用されても、配管の工夫によってベーパーロックが効果的に抑えられている。
【0016】
以下、
図2及び
図3を参照して、燃料供給装置の周辺構造について説明する。
図2は本実施例の燃料供給装置周辺の右側面図である。
図3は本実施例の燃料供給装置周辺の左側面図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、燃料供給装置50には、燃料ポンプ51と燃料噴射弁62を接続する複数の配管によって燃料通路が形成されている。エアクリーナ34の上方の燃料タンク41(
図1参照)内には燃料ポンプ51が入り込んでおり、燃料ポンプ51によって燃料タンク41内の燃料が燃料通路に向けて送り出されている。シリンダヘッドカバー29の上方には円筒状の燃料フィルタ54が設置されており、燃料ポンプ51よりも燃料通路の下流側で燃料フィルタ54によって燃料中の不純物や水分等が取り除かれている。前面視にて燃料フィルタ54の外端がシリンダヘッドカバー29よりも車幅方向外側(右側)に位置している。
【0018】
燃料フィルタ54の外周面にはフィルタクッション57が装着されており、フィルタクッション57が後述するフィルタブラケット75を介してメインフレーム12に支持されている。フィルタクッション57の一対の保持部58にT字状の分岐ジョイント61が保持されており、燃料フィルタ54よりも燃料通路の下流側で分岐ジョイント61によって燃料通路が2本に分岐されている。一方の燃料通路は燃料ポンプ51に向けて延びており、他方の燃料通路は燃料噴射弁62に向けて延びている。インテークパイプ32内には燃料噴射弁62が入り込んでおり、燃料通路の下流端で燃料噴射弁62によって吸気通路に燃料が噴射されている。
【0019】
燃料ポンプ51の吐出管52から延びる上流フィルタ配管71が燃料フィルタ54の入口管55に接続され、燃料フィルタ54の出口管56から延びる下流フィルタ配管72が分岐ジョイント61の縦向きの主管に接続されている。上流フィルタ配管71及び下流フィルタ配管72によって燃料ポンプ51から燃料フィルタ54を通じて分岐ジョイント61に燃料が導かれている。分岐ジョイント61の前向きの枝管(一方の枝管)には燃料ポンプ51の吸込管53に燃料を戻すリターン配管73が接続され、分岐ジョイント61の後向きの枝管(他方の枝管)には燃料噴射弁62に燃料を導くフィード配管74が接続されている。
【0020】
燃料フィルタ54の上方ではコイルブラケット44とフィルタブラケット75がメインフレーム12にボルトで共締めされている。コイルブラケット44にはイグニッションコイル42が支持されており、イグニッションコイル42はハイテンションコード43を介してエンジン25のプラグカバー31に接続されている。フィルタブラケット75はコイルブラケット44よりも下方に延びており、フィルタブラケット75の下端にフィルタクッション57が挿し込まれて燃料フィルタ54が支持されている。燃料フィルタ54はイグニッションコイル42の下方でイグニッションコイル42よりも車幅方向外側に位置付けられている。
【0021】
続いて、
図4及び
図5を参照して、燃料供給装置について詳細に説明する。
図4は本実施例の燃料供給装置の右側面図である。
図5は本実施例の燃料供給装置の上面図である。
【0022】
図4及び
図5に示すように、燃料ポンプ51よりも前方に燃料噴射弁62が位置し、燃料噴射弁62よりも前方に燃料フィルタ54と分岐ジョイント61が位置している。燃料ポンプ51と燃料噴射弁62が車幅方向中央に位置しており、燃料ポンプ51と燃料噴射弁62よりも車幅方向外側に燃料フィルタ54が位置し、燃料フィルタ54よりも車幅方向外側に分岐ジョイント61が位置している。また、燃料ポンプ51が燃料タンク41(
図1参照)の下面に取り付けられ、この燃料ポンプ51から下方に向かって分岐ジョイント61、燃料フィルタ54、燃料噴射弁62の順に並んでいる。
【0023】
燃料ポンプ51の吐出管52が車幅方向一方側(左側)に位置付けられ、燃料ポンプ51の吸込管53が車幅方向他方側(右側)に位置付けられている。燃料フィルタ54の入口管55が前側に位置付けられ、燃料フィルタ54の出口管56が後側に位置付けられている。フィルタクッション57から一対の保持部58が突き出しており、一対の保持部58の先端がC字状に形成されている。分岐ジョイント61の主管が上方に向き、分岐ジョイント61の一対の枝管が前後方向に向くように、一対の保持部58の開口に一対の枝管が嵌め込まれている。燃料噴射弁62の接続管63が斜め上方に向けられている。
【0024】
燃料ポンプ51の吐出管52に上流フィルタ配管71の上流端が接続され、上流フィルタ配管71の下流端が燃料フィルタ54の入口管55に接続されている。燃料フィルタ54の出口管56に下流フィルタ配管72の上流端が接続され、下流フィルタ配管72の下流端が分岐ジョイント61の主管に接続されている。分岐ジョイント61の前向きの枝管にリターン配管73の上流端が接続され、リターン配管73の下流端が燃料ポンプ51の吸込管53に接続されている。分岐ジョイント61の後向きの枝管にフィード配管74の上流端が接続され、フィード配管74の下流端が燃料噴射弁62の接続管63に接続されている。
【0025】
燃料供給装置50では、燃料ポンプ51に燃料タンク41内の燃料が汲み取られ、燃料ポンプ51から上流フィルタ配管71に燃料が吐出される。上流フィルタ配管71から燃料フィルタ54に燃料が送られ、燃料フィルタ54で燃料中の異物が取り除かれて下流フィルタ配管72に燃料が送られる。下流フィルタ配管72から分岐ジョイント61に燃料が送られると、分岐ジョイント61で燃料の流れがフィード配管74とリターン配管73に分岐される。フィード配管74から燃料噴射弁62に燃料が供給されて燃料噴射が実施され、リターン配管73から燃料ポンプ51に余剰燃料が戻されている。
【0026】
上記したように、混合燃料やアルコール燃料が使用されると、燃料フィルタ54においてベーパーが生じ易い。このため、燃料フィルタ54の入口管55が出口管56よりも高くなるように燃料フィルタ54が傾けられている。すなわち、鞍乗型車両1の水平ラインL1を基準にして、燃料フィルタ54の軸線L2が前方に向かって高くなっている。燃料フィルタ54でベーパーが生じても、燃料フィルタ54の傾きによって上流フィルタ配管71側にベーパーが移動し易い。下流フィルタ配管72側にはベーパーが移動し難くなって、燃料フィルタ54の下流の燃料噴射弁62側へのベーパーの移動が抑えられている。
【0027】
下流フィルタ配管72は燃料フィルタ54の出口管56から上方に延びた後に、分岐ジョイント61の主管に向かって下方に延びている。下流フィルタ配管72は側面視逆U字状に湾曲しており、下流フィルタ配管72の上流端及び下流端よりも中間の頂部が高く位置付けられている。燃料フィルタ54で生じたベーパーが下流フィルタ配管72に入り込んでも、ベーパーの浮力によって下流フィルタ配管72の頂部側(上側)にベーパーが移動し易い。下流フィルタ配管72の頂部よりも下方の分岐ジョイント61にはベーパーが移動し難くなって燃料噴射弁62側へのベーパーの移動が抑えられている。
【0028】
分岐ジョイント61は主管の上向きの逆T字状に設置されているが、分岐ジョイント61の前向きの枝管が後向きの枝管よりも高くなるように分岐ジョイント61が傾けられている。すなわち、鞍乗型車両1の水平ラインL1を基準にして、分岐ジョイント61の一対の枝管の中心線となる軸線L3が前方に向かって高くなっている。燃料フィルタ54で生じたベーパーが分岐ジョイント61側に移動しても、分岐ジョイント61の傾きによってリターン配管73側にベーパーが移動し易い。フィード配管74にはベーパーが移動し難くなって燃料噴射弁62側へのベーパーの移動が抑えられている。
【0029】
分岐ジョイント61が燃料ポンプ51よりも前方に位置し、リターン配管73が分岐ジョイント61の前方の枝管から上方に延びた後に燃料ポンプ51に向かって後方に延びている。リターン配管73は側面視横U字状に湾曲しており、リターン配管73の上流端よりも下流端が高く位置付けられている。また、リターン配管73の後方に延びている部分がフィード配管74よりも上方に位置している。ベーパーが分岐ジョイント61側に移動しても、ベーパーの浮力によってリターン配管73側にベーパーが移動し易い。フィード配管74にはベーパーが移動し難くなって燃料噴射弁62側へのベーパーの移動が抑えられている。
【0030】
燃料噴射弁62が分岐ジョイント61よりも低く位置し、フィード配管74の下流側が上方に延びた後に燃料噴射弁62に向かって下方に延びている。フィード配管74の下流側の略半部が前面視逆U字状に湾曲しており、フィード配管74の上流端及び下流端よりも中間の頂部が高く位置付けられている。ベーパーがフィード配管74に入り込んでも、ベーパーの浮力によってフィード配管74の頂部側(上側)にベーパーが移動し易い。フィード配管74の頂部よりも下方の燃料噴射弁62にはベーパーが到達し難くなってベーパーロックによる燃料噴射弁62の作動不良が抑えられる。
【0031】
上面視にて、下流フィルタ配管72がリターン配管73とフィード配管74の間を通っている。より詳細には、下流フィルタ配管72の上流端がフィード配管74の車幅方向内側に位置し、下流フィルタ配管72の頂部がリターン配管73の車幅方向外側に位置している。リターン配管73とフィード配管74に挟まれて下流フィルタ配管72の揺れが抑えられる。上記したように、燃料フィルタ54に分岐ジョイント61が保持されている。下流フィルタ配管72、リターン配管73、フィード配管74がコンパクトにまとめられ、燃料フィルタ54と分岐ジョイント61がコンパクトにまとめられて車両の大型化を抑えられている。
【0032】
以上、本実施例の燃料供給装置50によれば、燃料フィルタ54で発生したベーパーが分岐ジョイント61側に移動しても、分岐ジョイント61の傾きによって前方の枝管からリターン配管73側にベーパーが移動し易い。後方の枝管からフィード配管74側にベーパーが移動し難くなって、フィード配管74を通じて燃料噴射弁62側へのベーパーの移動が抑えられる。ベーパーロックによる燃料噴射弁62の作動不良が抑えられて、燃料噴射弁62から吸気通路に燃料が適切に噴射されてエンジンストールの発生を防止することができる。
【0033】
なお、本実施例では、分岐ジョイントの一対の枝管が前後方向に向けられているが、リターン配管側の一方の枝管がフィード配管側の他方の枝管よりも高ければ、一対の枝管の向きは特に限定されない。例えば、一対の枝管が左右方向に向けられていてもよい。
【0034】
また、本実施例では、燃料フィルタの軸線と分岐ジョイントの一対の枝管の軸線が平行に見えるが、燃料フィルタの軸線と一対の枝管の軸線が非平行でもよい。燃料フィルタの軸線よりも一対の枝管の軸線の傾きが大きくてもよいし、燃料フィルタの軸線よりも一対の枝管の軸線の傾きが小さくてもよい。また、燃料フィルタの軸線が水平でもよい。
【0035】
また、本実施例では、下流フィルタ配管、リターン配管、フィード配管がU字状に湾曲しているが、下流フィルタ配管、リターン配管、フィード配管の曲げ形状は特に限定されない。
【0036】
また、本実施例の燃料供給装置は上記の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0037】
以上の通り、第1態様は、燃料タンク(41)からエンジン(25)の吸気通路に燃料を供給する燃料供給装置(50)であって、燃料タンク内の燃料を燃料通路に向けて送り出す燃料ポンプ(51)と、燃料ポンプよりも燃料通路の下流側に位置する燃料フィルタ(54)と、燃料フィルタよりも燃料通路の下流側に位置する分岐ジョイント(61)と、燃料通路の下流端において吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁(62)と、を備え、分岐ジョイントには一対の枝管が設けられ、一方の枝管には燃料ポンプに燃料を戻すリターン配管(73)が接続され、他方の枝管には燃料噴射弁に燃料を導くフィード配管(74)が接続され、一方の枝管が他方の枝管よりも高くなっている。この構成によれば、燃料フィルタで発生したベーパーが分岐ジョイント側に移動しても、一方の枝管からリターン配管側にベーパーが移動し易い。他方の枝管からフィード配管側にベーパーが移動し難くなって、フィード配管を通じて燃料噴射弁側へのベーパーの移動が抑えられる。ベーパーロックによる燃料噴射弁の作動不良が抑えられて、燃料噴射弁から吸気通路に燃料が適切に噴射されてエンジンストールの発生を防止することができる。
【0038】
第2態様は、第1態様において、分岐ジョイントが燃料ポンプよりも前方に位置し、一方の枝管が前方に向けられ、他方の枝管が後方に向けられ、リターン配管が一方の枝管から上方に延びた後に燃料ポンプに向かって後方に延びている。この構成によれば、リターン配管によって一方の枝管からリターン配管側にベーパーが移動し易くなり、他方の枝管からフィード配管側へのベーパーの移動が抑えられる。また、リターン配管の配管自由度が向上される。
【0039】
第3態様は、第2態様において、リターン配管の後方に延びている部分がフィード配管よりも上方に位置している。この構成によれば、フィード配管側へのベーパーの移動がさらに抑えられる。
【0040】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、燃料噴射弁が分岐ジョイントよりも低く位置し、フィード配管の下流側が上方に延びた後に燃料噴射弁に向かって下方に延びている。この構成によれば、燃料噴射弁にベーパーが到達し難くなってベーパーロックによる燃料噴射弁の作動不良が抑えられる。
【0041】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、分岐ジョイントの主管には燃料フィルタから延びるフィルタ配管(下流フィルタ配管72)が接続され、フィルタ配管が燃料フィルタから上方に延びた後に主管に向かって下方に延びている。この構成によれば、燃料フィルタでベーパーが発生しても分岐ジョイントにベーパーが移動し難くなる。
【0042】
第6態様は、第5態様において、分岐ジョイントが燃料フィルタよりも車幅方向外側に位置し、上面視にて、フィルタ配管がリターン配管とフィード配管の間を通っている。この構成によれば、リターン配管とフィード配管に挟まれてフィルタ配管の振れが抑えられる。また、複数の配管がコンパクトにまとめられて車両の大型化を抑えることができる。
【0043】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1態様において、燃料フィルタに分岐ジョイントが保持されている。この構成によれば、燃料フィルタと分岐ジョイントがコンパクトにまとめられて車両の大型化を抑えることができる。
【0044】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0045】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。