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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008598
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ハンドル装置及びドア装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20250109BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20250109BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20250109BHJP
   E05B 85/12 20140101ALI20250109BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60J5/04 H
E05B79/20
E05B79/22 B
E05B85/12 B
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110880
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】若松 将也
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ43
2E250KK01
2E250LL01
2E250MM03
2E250PP12
2E250PP13
2E250PP14
(57)【要約】
【課題】簡略的な構造によって、コスト及び重量を抑えつつ良好に組み立て可能なハンドル装置及びドア装置を提供する。
【解決手段】ベース21と、レバー22と、レバー22を回動方向Raへ付勢する第1スプリング24と、レバー22と同一の回動軸36を中心に回動可能に支持され、レバー22を係止して回動方向Rbへ回動させるハンドル23と、ハンドル23を回動方向Raへ付勢する第2スプリング25と、レバー22に連結されてラッチに繋がるラッチ側ケーブル15と、レバー22に連結されてシリンダ錠13に繋がるシリンダ側ケーブル16と、を備え、レバー22は、シリンダ側ケーブル16との連結箇所に、回動軸36を中心とした円弧状の長孔部56aを有し、シリンダ側ケーブル16の連結端である係合部16aは、ハンドル23に係止されてレバー22が回動される際に長孔部56a内で移動される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられ、前記ドアのドアロック機構に設けられたラッチによる車体への係合を解除させるハンドル装置であって、
前記ドアに取り付けられるベースと、
前記ベースに回動可能に支持されるレバーと、
前記レバーを一方向の回動方向へ付勢する第1付勢部と、
前記ベースに前記レバーと同一回動軸を中心に回動可能に支持され、他方向の回動方向へ回動されることにより前記レバーを係止して前記他方向の回動方向へ回動させる室内ハンドルと、
前記室内ハンドルを前記一方向の回動方向へ付勢する第2付勢部と、
前記レバーに連結されて前記一方向の回動方向前方側へ延びて前記ラッチに繋がるラッチ側配索材と、
前記レバーに連結されて前記他方向の回動方向前方側へ延びてシリンダ錠に繋がるシリンダ側配索材と、
を備え、
前記レバーは、前記シリンダ側配索材との連結箇所に、前記回動軸を中心とした円弧状の長孔部を有し、
前記シリンダ側配索材の連結端は、前記長孔部内に収容されて保持され、前記室内ハンドルに係止されて前記レバーが回動される際に前記長孔部内で移動される、
ハンドル装置。
【請求項2】
前記ラッチ側配索材及び前記シリンダ側配索材は、ケーブルからなる、
請求項1に記載のハンドル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハンドル装置と、
前記シリンダ側配索材が連結されるシリンダ錠と、
前記ラッチ側配索材が連結されるドアロック装置と、
を備えた、
ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル装置及びドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体のストライカに係合してドアを閉鎖状態に保持するラッチを有するドアロックを備えたドアロック装置が開示されている。このドアロック装置では、ラッチのストライカに対する係合を解除してドアロックを開放するためのアウトサイドハンドルとインサイドハンドルがドアロックに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4-116569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1に記載のドアロック装置では、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルを、それぞれロッドによってドアロックに連結している。つまり、このドアロック装置は、アウトサイドハンドルとドアロックとを連結するロッド及びインサイドハンドルをドアロックに連結するロッドを2経路に配索する複雑構造となり、組み立て作業性、重量及びコストの点で改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡略的な構造によって、コスト及び重量を抑えつつ良好に組み立て可能なハンドル装置及びドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 車両のドアに設けられ、前記ドアのドアロック機構に設けられたラッチによる車体への係合を解除させるハンドル装置であって、
前記ドアに取り付けられるベースと、
前記ベースに回動可能に支持されるレバーと、
前記レバーを一方向の回動方向へ付勢する第1付勢部と、
前記ベースに前記レバーと同一回動軸を中心に回動可能に支持され、他方向の回動方向へ回動されることにより前記レバーを係止して前記他方向の回動方向へ回動させる室内ハンドルと、
前記室内ハンドルを前記一方向の回動方向へ付勢する第2付勢部と、
前記レバーに連結されて前記一方向の回動方向前方側へ延びて前記ラッチに繋がるラッチ側配索材と、
前記レバーに連結されて前記他方向の回動方向前方側へ延びてシリンダ錠に繋がるシリンダ側配索材と、
を備え、
前記レバーは、前記シリンダ側配索材との連結箇所に、前記回動軸を中心とした円弧状の長孔部を有し、
前記シリンダ側配索材の連結端は、前記長孔部内に収容されて保持され、前記室内ハンドルに係止されて前記レバーが回動される際に前記長孔部内で移動される、ハンドル装置。
【0007】
(2) (1)に記載のハンドル装置と、
前記シリンダ側配索材が連結されるシリンダ錠と、
前記ラッチ側配索材が連結されるドアロック装置と、
を備えた、ドア装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡略的な構造によって、コスト及び重量を抑えつつ良好に組み立て可能なハンドル装置及びドア装置を提供できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るハンドル装置を備えたドア装置を説明する車両のドアの概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係るハンドル装置の斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係るハンドル装置の分解斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係るハンドル装置の正面図である。
図5図5は、本実施形態に係るハンドル装置の背面図である。
図6図6は、図4におけるVI-VI断面図である。
図7図7は、図4におけるVII-VII断面図である。
図8図8は、ハンドル装置の動きを説明する図4におけるVI-VI断面相当図である。
図9図9ハンドル装置の動きを説明する図4におけるVI-VI断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るハンドル装置11を備えたドア装置14を説明する車両のドアDの概略構成図である。図1では、図面の右側が車両の前方側、左側が車両の後方側、上側が上方側、下側が下方側となる。また、ドア装置14における車両の内側が正面側、車両の外側が背面側となる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るハンドル装置11は、車両のドアDに設けられる。ドアDには、ドアロック装置12及びシリンダ錠13が設けられている。ハンドル装置11は、ドアロック装置12及びシリンダ錠13とともに、ドア装置14を構成する。例えば、ハンドル装置11は、ドアDのインナパネルに設けられ、シートに座った状態の搭乗者が操作しやすいようにドアDの中央付近から車両前方側の周辺に設けられている。シリンダ錠13は、ドアDのアウタパネルに設けられ、搭乗者が車外から操作しやすいようにドアDの回転先端側に設けられている。ドアロック装置12は、ドアDのインナパネルとアウタパネルとの間に設けられ、後述する車体に設けられたストライカと係合するため、ドアDの回転先端側に設けられている。
【0014】
ドアロック装置12は、ロック機構およびラッチ(いずれも図示略)を備えており、ハンドル装置11の2回の操作により、ロック機構の解錠およびラッチの解除が可能なダブルアクション仕様になっている。ドアDは、ドアロック装置12のラッチが車体に設けられたストライカ(図示略)に係合することにより、閉鎖状態が維持され、その状態でロック機構により施錠される。
【0015】
ハンドル装置11は、ラッチ側ケーブル15によってドアロック装置12に連結されている。また、ハンドル装置11は、シリンダ側ケーブル16によってシリンダ錠13に連結されている。これにより、シリンダ錠13は、ハンドル装置11を介して1経路で繋がるシリンダ側ケーブル16及びラッチ側ケーブル15によってドアロック装置12に連結されている。
【0016】
ドア装置14では、ハンドル装置11が開操作されると、その操作力が引張り力としてラッチ側ケーブル15を介してドアロック装置12に伝達される。ハンドル装置11の1回目の開操作により、ロック機構が解錠され、2回目の開操作により、ラッチによるストライカの係合が解除され、ドアDが開かれる。また、ドア装置14では、シリンダ錠13が開操作されると、その操作力が引張り力としてシリンダ側ケーブル16及びラッチ側ケーブル15を介してドアロック装置12のラッチに伝達される。これにより、ラッチによるストライカの係合が解除され、ドアDが開かれる。このように、ドア装置14は、ハンドル装置11またはシリンダ錠13が開操作されることにより、ドアロック装置12によるドアDの閉状態が解除可能とされている。
【0017】
次に、ハンドル装置11の構造について説明する。
図2は、本実施形態に係るハンドル装置11の斜視図である。図3は、本実施形態に係るハンドル装置11の分解斜視図である。図4は、本実施形態に係るハンドル装置11の正面図である。図5は、本実施形態に係るハンドル装置11の背面図である。図6は、図4におけるVI-VI断面図である。図7は、図4におけるVII-VII断面図である。
【0018】
図2図7に示すように、ハンドル装置11は、ベース21と、レバー22と、ハンドル23と、第1スプリング24と、第2スプリング25と、を備えている。第1スプリング24および第2スプリング25は、本発明の第1弾性部および第2弾性部をそれぞれ構成する。
【0019】
ベース21は、ドアDに取り付けられる。このベース21は、上下に配置された上辺部31及び下辺部32と、これらの上辺部31及び下辺部32の両端を繋ぐ側辺部33,34とによって構成される。これにより、ベース21は、正面側が矩形状の開口部35とされた収容空間Sを有する枠状に形成されている。
【0020】
ベース21の上辺部31及び下辺部32には、一方の側辺部33寄りに、固定孔31a,32aが形成されている。固定孔31a,32aは、互いに対向する位置に形成されており、これらの固定孔31a,32aには、回動軸36が通されて固定されている。また、ベース21の後部側には、他方の側辺部34から一方の側辺部33へ向かって延びる後壁部37が形成されている。
【0021】
ベース21の後部には、ケーブル取付部41,42が設けられている。これらのケーブル取付部41,42は、両側辺部33,34に形成されている。一方のケーブル取付部41には、ラッチ側ケーブル15が通される被覆部45の端部が保持され、他方のケーブル取付部42には、シリンダ側ケーブル16が通される被覆部46の端部が保持される。
【0022】
また、ベース21の上辺部31及び下辺部32には、それぞれ孔部47を有する固定片48が一対ずつ形成されている。ベース21は、固定片48の孔部47に挿し込んだネジ(図示略)をドアDのインナパネルに形成されたネジ孔へねじ込むことにより、ドアDのインナパネルに取り付けられる。
【0023】
レバー22は、ベース21の収容空間S内に収容される。このレバー22は、円筒部51と、ケーブル保持部52とを有している。円筒部51には、回動軸36が挿通されている。これにより、レバー22は、ベース21の収容空間S内において、上下方向の回動軸36を中心として回動可能に支持されている。
【0024】
ケーブル保持部52は、ラッチケーブル保持部55と、シリンダケーブル保持部56とを有している。ラッチケーブル保持部55には、ラッチ側ケーブル15の端部に設けられた係合部15aが係合されている。また、シリンダケーブル保持部56には、シリンダ側ケーブル16の端部に設けられた係合部16aが係合されている。
【0025】
ラッチケーブル保持部55は、孔部55aと、この孔部55aに繋がるスリット55bとを有している。ラッチケーブル保持部55には、ラッチ側ケーブル15をスリット55bへ通しながら係合部15aを孔部55aへ収容させることにより、ラッチ側ケーブル15の端部が連結される。
【0026】
シリンダケーブル保持部56は、長孔部56aと、この長孔部56aに繋がるスリット56bとを有している。シリンダケーブル保持部56には、シリンダ側ケーブル16をスリット56bへ通しながら係合部16aを長孔部56aへ収容させることにより、シリンダ側ケーブル16の端部が連結される。シリンダケーブル保持部56の長孔部56aは、回動軸36を中心とした円弧状に形成されている。そして、このシリンダケーブル保持部56の長孔部56aに収容されたシリンダ側ケーブル16の係合部16aは、長孔部56a内で移動可能とされている。
【0027】
ハンドル23は、ベース21の開口部35と略一致する平板状に形成されており、開口部35からベース21の収容空間Sへ嵌め込まれて組付けられる。本実施形態では、ハンドル23は、電子的にドアロック装置12を制御する手段が使用できない場合などに非常用のハンドルとして用いられることを想定している。そのため、ハンドル23の形状をベース21の開口部35と略一致させこれらの隙間をなるべく小さくすることにより、ハンドル23を目立たないようにして意匠性を高めたり、非常時以外には操作されにくいようになっている。このハンドル23は、その上縁部及び下縁部に、ベース21への組付け方向へ突設する支持片61を有している。これらの支持片61には、それぞれ挿通孔62が形成されており、挿通孔62には、回動軸36が挿通される。これにより、ハンドル23は、上下方向の回動軸36を中心として回動可能に支持されている。また、ハンドル23には、その一側部に、ベース21への組付け方向へ突設する係止片63が形成されている。
【0028】
第1スプリング24は、ねじりスプリングからなるもので、一対のアーム部24a,24bを有している。同様に、第2スプリング25は、ねじりスプリングからなるもので、一対のアーム部25a,25bを有している。
【0029】
第1スプリング24には、レバー22の円筒部51における上方側が挿入されており、第2スプリング25には、レバー22の円筒部51における下方側が挿入されている。これにより、第1スプリング24及び第2スプリング25がレバー22に装着されている。
【0030】
第1スプリング24は、一方のアーム部24aがベース21の後壁部37に係止され、他方のアーム部24bがレバー22のケーブル保持部52に係止されている。そして、レバー22は、第1スプリング24によって、回動軸36を中心とした一方向の回動方向Raへ付勢されている(図6参照)。
【0031】
第2スプリング25は、一方のアーム部25aがベース21の後壁部37に係止され、他方のアーム部25bがハンドル23の係止片63に係止されている。そして、ハンドル23は、第2スプリング25によって、回動軸36を中心とした一方向の回動方向Raへ付勢されている(図6参照)。
【0032】
第2スプリング25によって一方向の回動方向Raへ付勢されるハンドル23は、その一側部の係止片63がベース21に形成された規制壁38に当接する(図6参照)。これにより、ハンドル23は、ベース21の収容空間Sの開口部35を閉鎖した状態で、第2スプリング25の付勢力による回動方向Raへの回動が規制される。また、第1スプリング24によって一方向の回動方向Raへ付勢されるレバー22は、ケーブル保持部52がハンドル23の係止片63に当接し、第1スプリング24の付勢力による回動方向Raへの回動が規制される。
【0033】
上記構造のハンドル装置11では、ラッチ側ケーブル15は、レバー22の一方向の回動方向Raの前方側(車両の前方側)へ延びるように配索され、シリンダ側ケーブル16は、レバー22の一方向の回動方向Raと反対方向である他方向の回動方向Rbの前方側(車両の後方側)へ延びるように配索される(図6参照)。
【0034】
次に、上記構造のハンドル装置11を備えたドア装置14において、ドアロック装置12によるドアDの閉状態を解除する場合について説明する。
図8及び図9は、それぞれハンドル装置11の動きを説明する図4におけるVI-VI断面相当図である。
【0035】
(ハンドル装置11による開操作)
室内側からハンドル装置11によってドアロック装置12によるドアDの閉状態を解除するには、図8に示すように、ハンドル装置11のハンドル23の他側部を把持し、ハンドル23を手前(図8中矢印A方向)へ引く。すると、ハンドル23が第2スプリング25の付勢力に抗して他方向の回動方向Rbへ回動される。すると、ハンドル23の係止片63に係止されたレバー22のケーブル保持部52がハンドル23によって押圧され、レバー22が第1スプリング24の付勢力に抗して他方向の回動方向Rbへ回動される。これにより、レバー22のラッチケーブル保持部55に連結されたラッチ側ケーブル15が引っ張られて引張り力F1が生じ、この引張り力F1によって、ドアロック装置12の施錠状態においては解錠状態に移行し、解錠状態においてはラッチによるストライカの係合が解除され、ドアDが開かれる。
【0036】
ここで、レバー22が他方向の回動方向Rbへ回動される際に、シリンダ側ケーブル16の係合部16aは、シリンダケーブル保持部56の長孔部56a内で移動する。言い換えると、シリンダケーブル保持部56はレバー22の回動力をシリンダ側ケーブル16の係合部16aに伝達しないため、係合部16aは初期位置から動くことがない。これにより、ハンドル23とともに回動されるレバー22によってシリンダ側ケーブル16が押し込まれることによる撓みの発生が抑えられる。したがって、シリンダ側ケーブル16が撓んでスリット56bから抜けてシリンダケーブル保持部56から係合部16aが外れるようなことがない。
【0037】
なお、ハンドル装置11では、ベース21の収容空間Sの開口部35がハンドル23によって塞がれている。したがって、ハンドル23を開操作する場合、ハンドル23に対して、第2スプリング25によって付勢されている回動軸36よりも一側部を押し込む。すると、ハンドル23が他方向の回動方向Rbへ回動されることにより、ハンドル23の他側部とベース21との間に隙間が形成される。したがって、この隙間に指を入れてハンドル23を手前に引き、ハンドル23を回動させることができる。
【0038】
(シリンダ錠13による開操作)
室外側からドアロック装置12によるドアDの閉状態を解除するには、室外側に設けられたシリンダ錠13を操作する。シリンダ錠13はアウトサイドハンドルと一体、またはアウトサイドハンドル近傍でドアDに対して設けられており、このように、シリンダ錠13を操作すると、図9に示すように、シリンダ錠13の操作力によってシリンダ側ケーブル16に引っ張り力F2が付与される。すると、シリンダ側ケーブル16に付与された引張り力F2によって第1スプリング24の付勢力に抗してレバー22が他方向の回動方向Rbへ回動される。これにより、レバー22のラッチケーブル保持部55に連結されたラッチ側ケーブル15が引っ張られ、ドアロック装置12の施錠状態においては解錠状態に移行し、解錠状態においてはラッチによるストライカの係合が解除されてドアDが開かれる。
なお、室外側からの操作は、正当な車の所有者以外の者の操作によって不正に解錠されることがないよう、所有者が保有する鍵でしか作動しないシリンダ錠13によって操作する態様を例示したがこれに限らない。車の所有者以外には操作部へアクセスできないようになっていればよいため、例えばドアにハンドルや、レバー、ワイヤーを直接引き操作するためのリンクフック等の室外側操作部を設け、普段は室外側操作部は直接操作できないように規制されており、シリンダ錠やNFC認証装置を用いて車の所有者であることが認証された場合には規制が解除されるようにしてもよい。
【0039】
このとき、レバー22のみ回動して、ハンドル23は、回動することなく、ベース21の収容空間Sの開口部35を閉鎖した状態が維持される。したがって、シリンダ錠13による開操作にともなってハンドル装置11のハンドル23が開動作して見栄えが損なわれることがなく、良好な外観を確保できる。
【0040】
なお、第1スプリング24及び第2スプリング25は、均等の付勢力を有するものでもよいが、それぞれ異なる付勢力を有するものでもよい。
【0041】
ここで、シリンダ錠13による開操作の場合、レバー22のみを回動させることとなるが、ハンドル装置11による開操作の場合、ハンドル23とレバー22とを回動させることとなるため、シリンダ錠13による開操作よりも大きな操作力が必要となる。したがって、第2スプリング25の付勢力を、第1スプリング24の付勢力より小さくすることで、ハンドル装置11による開操作時の操作性を向上させることができる。
【0042】
また、通常時にハンドル装置11での開操作を行わない電子制御式のドア装置では、ハンドル装置11による開操作は非常時に行われる。したがって、この場合、普段は使用されないハンドル装置11が不用意に作動することがないよう、ハンドル23を付勢する第2スプリング25の付勢力を第1スプリング24の付勢力と同等か、それ以上としてもよい。
【0043】
このように、本実施形態に係るハンドル装置11を備えたドア装置14によれば、ハンドル装置11のハンドル23またはシリンダ錠13を操作することにより、ドアロック装置12のラッチによる車体へのドアDの係合を解除させることができる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態に係るハンドル装置11によれば、ラッチ側ケーブル15を介してドアロック装置12のラッチに繋がるレバー22を、ハンドル23の操作またはシリンダ側ケーブル16で繋がるシリンダ錠13の操作によって回動させ、ラッチによる車体へのドアDの係合を解除させることができる。つまり、ハンドル23の操作力またはシリンダ錠13の操作力を伝達させる配索材の経路を1つの経路とし、構造の簡略化を図ることができる。これにより、コスト及び重量を抑えつつ良好な組付立て性が得られる。
【0045】
しかも、レバー22及びハンドル23を、ベース21に対して同一の回動軸36を中心に回動可能に支持した構造であるので、部品点数の削減及びコンパクト化が図れる。
【0046】
また、本実施形態に係るハンドル装置11では、操作力を伝達させる配索材として、ケーブルを用いている。つまり、ドアDの内部でケーブルを引き回す構造であるので、ロッドを用いた構造と比べ、ドアDの内部へ配索させる際の制約を少なくできる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るハンドル装置及びドア装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両のドア(D)に設けられ、前記ドア(D)のドアロック機構(12)に設けられたラッチによる車体への係合を解除させるハンドル装置(11)であって、
前記ドア(D)に取り付けられるベース(21)と、
前記ベース(21)に回動可能に支持されるレバー(22)と、
前記レバー(22)を一方向の回動方向(Ra)へ付勢する第1付勢部(第1スプリング24)と、
前記ベース(21)に前記レバー(22)と同一回動軸(36)を中心に回動可能に支持され、他方向の回動方向(Rb)へ回動されることにより前記レバー(22)を係止して前記他方向の回動方向(Rb)へ回動させる室内ハンドル(ハンドル23)と、
前記室内ハンドル(ハンドル23)を前記一方向の回動方向(Ra)へ付勢する第2付勢部(第2スプリング25)と、
前記レバー(22)に連結されて前記一方向の回動方向(Ra)前方側へ延びて前記ラッチに繋がるラッチ側配索材(ラッチ側ケーブル15)と、
前記レバー(22)に連結されて前記他方向の回動方向(Rb)前方側へ延びてシリンダ錠(13)に繋がるシリンダ側配索材(シリンダ側ケーブル16)と、
を備え、
前記レバー(22)は、前記シリンダ側配索材(シリンダ側ケーブル16)との連結箇所に、前記回動軸(36)を中心とした円弧状の長孔部(56a)を有し、
前記シリンダ側配索材(シリンダ側ケーブル16)の連結端(係合部16a)は、前記長孔部(56a)内に収容されて保持され、前記室内ハンドル(ハンドル23)に係止されて前記レバー(22)が回動される際に前記長孔部(56a)内で移動される、ハンドル装置。
【0049】
上記[1]の構成のハンドル装置によれば、ラッチ側配索材を介してドアロック装置のラッチに繋がるレバーを、ハンドルの操作またはシリンダ側配索材で繋がるシリンダ錠の操作によって回動させ、ラッチによる車体へのドアの係合を解除させることができる。つまり、ハンドルの操作力またはシリンダ錠の操作力を伝達させる配索材の経路を1つの経路とし、構造の簡略化を図ることができる。これにより、コスト及び重量を抑えつつ良好な組付立て性が得られる。
しかも、レバー及びハンドルを、ベースに対して同一回動軸を中心に回動可能に支持した構造であるので、部品点数の削減及びコンパクト化が図れる。
【0050】
[2] 前記ラッチ側配索材(ラッチ側ケーブル15)及び前記シリンダ側配索材(シリンダ側ケーブル16)は、ケーブルからなる、上記[1]に記載のハンドル装置。
【0051】
上記[2]の構成のハンドル装置によれば、操作力を伝達させる配索材として、ケーブルを用いている。つまり、ドアの内部でケーブルを引き回す構造であるので、ロッドを用いた構造と比べ、ドアの内部へ配索させる際の制約を少なくできる。
【0052】
[3] 上記[1]または[2]に記載のハンドル装置(11)と、
前記シリンダ側配索材(シリンダ側ケーブル16)が連結されるシリンダ錠(13)と、
前記ラッチ側配索材(ラッチ側ケーブル15)が連結されるドアロック装置(12)と、
を備えた、ドア装置。
【0053】
上記[3]の構成のドア装置によれば、ハンドル装置のハンドルまたはシリンダ錠を操作することにより、ドアロック装置のラッチによる車体へのドアの係合を解除させることができる。
【符号の説明】
【0054】
11:ハンドル装置
12:ドアロック装置
13:シリンダ錠
14:ドア装置
15:ラッチ側ケーブル(ラッチ側配索材)
16:シリンダ側ケーブル(シリンダ側配索材)
16a:係合部(連結端)
21:ベース
22:レバー
23:ハンドル
24:第1スプリング
25:第2スプリング
36:回動軸
56a:長孔部
Ra:一方向の回動方向
Rb:他方向の回動方向
D:ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9