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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008602
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20250109BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20250109BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W30/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110888
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 直輝
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 智貴
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA60
3D241CC01
3D241CC08
3D241DA39Z
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB12Z
3D241DC21Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自車両の前方に障害物が検出され自車両の後方に後続車両が検出されている場合に、運転者が自車両の前方の障害物を認識することに遅れが生じる虞を低減することができるよう改良された車両の制御装置を提供する。
【解決手段】自車両102の前方の障害物を検出する障害物検出装置12,14と、自車両の後方の後続車両を検出する後続車両検出装置と、自車両が障害物に衝突する虞があると判定したときには、衝突の虞がある旨を運転者に報知する報知装置52,56と、後続車両検出装置により検出された後続車両が自車両に接近していると判定したときには、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知する通知装置52,54,56と、を含み、報知装置は、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、通知装置が通知していないときに比して、衝突の虞がある旨を運転者に報知するタイミングを早くする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の障害物を検出する障害物検出装置と、自車両の後方の後続車両を検出する後続車両検出装置と、自車両が前記障害物検出装置により検出された障害物に衝突する虞があると判定したときには、衝突の虞がある旨を運転者に報知する報知装置と、前記後続車両検出装置により検出された後続車両が自車両に接近していると判定したときには、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知する通知装置と、を含む車両の制御装置において、
前記報知装置は、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知していないときに比して、衝突の虞がある旨を運転者に報知するタイミングを早くするよう構成された、車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、前記通知装置は、後続車両が自車両に接近している旨を表示装置に表示することにより運転者に通知するよう構成され、前記報知装置は、後続車両が自車両に接近している旨が前記表示装置に表示されているときには、衝突の虞がある旨を前記表示装置に表示するよう構成された、車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、前記表示装置は、運転者に情報を通知可能に構成された後方確認用のミラー装置である、車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の制御装置において、自車両は、自車両が前記障害物検出装置により検出された障害物に衝突する虞があると判定したときには、自動ブレーキにより障害物との衝突の虞を低減する衝突防止制御を行う衝突防止装置を備えており、前記衝突防止装置は、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知していないときに比して、前記自動ブレーキの開始を早くするよう構成された、車両の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の制御装置において、前記衝突防止装置は、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を前記通知装置が通知していないときに比して、前記自動ブレーキが開始する可能性がある旨を運転者に報知するタイミングを早くするよう構成された、車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の制御装置として、自車両の前方に障害物が検出されると、自車両が障害物に衝突する虞を判定し、衝突の虞があるときには、自動ブレーキにより車両に制動力を付与して衝突を防止する衝突防止装置が知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、自車両が前方の障害物と衝突する虞が予知され、後続車両が検知されると、後続車両が検知されていないときに比して、自動ブレーキのタイミングを早くし、自動ブレーキを後続車両が後突しない程度のブレーキにする衝突防止装置が記載されている。
【0004】
また、自動車などの車両の制御装置として、自車両の後方に後続車両が検出され、後続車両が自車両に接近していると判定されると、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知する通知装置が知られている。この種の制御装置によれば、後続車両が自車両に接近しているときには、後続車両が自車両に接近していないときに比して、運転者は早期に後続車両が自車両に接近していることを認知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-52546号公報
【発明の概要】
【0006】
〔発明が解決しようとする課題〕
自車両の前方に障害物が検出されている状況において、自車両の後方に後続車両が検出され、後続車両が自車両に接近している旨が通知装置に表示されることにより通知されると、運転者は通知装置に表示された通知に注目する。そのため、運転者が自車両の前方にある障害物を認識することに遅れが生じる虞がある。
【0007】
本発明の主要な課題は、自車両の前方に障害物が検出され自車両の後方に後続車両が検出されている場合に、運転者が自車両の前方の障害物を認識することに遅れが生じる虞を低減することができるよう改良された車両の制御装置を提供することである。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、自車両(102)の前方の障害物を検出する障害物検出装置(カメラセンサ12及びレーダセンサ14)と、自車両の後方の後続車両を検出する後続車両検出装置(カメラセンサ12及びレーダセンサ14)と、自車両が障害物検出装置により検出された障害物に衝突する虞があると判定したときには(S70)、衝突の虞がある旨を運転者に報知する報知装置(運転支援ECU10、メータECU50、表示装置52及び警報装置56)と、後続車両検出装置により検出された後続車両が自車両に接近していると判定したときには(S240)、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知する通知装置(運転支援ECU10、メータECU50、表示装置52、電子インナミラー54及び警報装置56)と、を含む車両の制御装置(100)が提供される。
【0009】
報知装置は、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには(S40)、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、衝突の虞がある旨を運転者に報知するタイミングを早くする(S60)よう構成される。
【0010】
上記の構成によれば、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、衝突の虞がある旨を運転者に報知するタイミングが早くなる。
【0011】
よって、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、運転者に衝突の虞があることを早く認知することができる。従って、自車両の前方に障害物が検出され自車両の後方に後続車両が検出されている場合に、運転者が自車両の前方に障害物があることを認識することに遅れが生じる虞を低減することができる。
【0012】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、通知装置は、後続車両が自車両に接近している旨を表示装置(52)に表示することにより運転者に通知するよう構成され、報知装置は、後続車両が自車両に接近している旨が表示装置に表示されているときには(S40)、衝突の虞がある旨を表示装置に表示する(S80)よう構成される。
【0013】
本発明の他の一つの態様においては、表示装置は、運転者に情報を通知可能に構成された後方確認用のミラー装置(電子インナミラー54)である。
【0014】
本発明の他の一つの態様においては、自車両(102)は、自車両が障害物検出装置により検出された障害物に衝突する虞があると判定したときには(S90)、自動ブレーキにより障害物との衝突の虞を低減する衝突防止制御(S110)を行う衝突防止装置(運転支援ECU10、自動ブレーキ装置34)を備えており、衝突防止装置は、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには(S40)、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、自動ブレーキの開始を早くする(S60)よう構成される。
【0015】
本発明の他の一つの態様においては、衝突防止装置は、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、自動ブレーキが開始する可能性がある旨を運転者に報知するタイミングを早くするよう構成される。
【0016】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による車両の制御装置の実施形態を示す概略構成図である。
図2】実施形態における衝突防止制御ルーチンを示すフローチャートである。
図3】実施形態における後方接近制御ルーチンを示すフローチャートである。
図4】実施形態におけるフラグ設定制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5】自車両が前方の障害物に衝突する虞があり且つ後続車両がある場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付の図を参照して、本発明の実施形態に係る車両の制御装置について詳細に説明する。
【0019】
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる制御装置100は、車両102に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両102は、自動運転が可能な車両であってよく、駆動ECU20、制動ECU30及びメータECU50を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。なお、以下の説明においては、車両102は、他車両と区別するために、必要に応じて自車両102と呼称される。
【0020】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)104を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0021】
運転支援ECU10は、衝突防止制御、車線維持制御などの運転支援制御を行う中枢の制御装置である。運転支援ECU10には、カメラセンサ12及びレーダセンサ14が接続されている。カメラセンサ12は、前方、後方、右側方及び左側方を撮像する4個のカメラセンサを含んでいるが、4個に限定されるものではない。レーダセンサ14は、前方の領域、右前方の領域、左前方の領域、右後方の領域及び左後方の領域に存在する立体物を検出し、その情報を取得する5個のレーダセンサを含んでいるが、5個に限定されるものではない。
【0022】
カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、車両(自車両)102の前方の障害物を検出する障害物検出装置として機能する。また、カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、車両102の後方の後続車両を検出する後続車両検出装置として機能する。
【0023】
カメラセンサ12の各カメラセンサは、撮影して得られた画像データを解析して道路の白線、他車両などの物標の情報を取得し、物標の情報を所定の時間毎に運転支援ECU10に供給する。
【0024】
レーダセンサ14の各レーダセンサは、自車両と立体物との距離、自車両と立体物との相対速度、自車両に対する立体物の相対位置(方向)などを表す情報を所定の時間毎に取得して運転支援ECU10に供給する。なお、レーダセンサ14に代えて、又はレーダセンサ14に加えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)が使用されてもよい。
【0025】
更に、運転支援ECU10には、設定操作器16が接続されており、設定操作器16は、運転者により操作される位置に設けられている。図1には示されていないが、設定操作器18は、衝突防止制御スイッチを含み、運転支援ECU10は、衝突防止制御スイッチがオンである場合に衝突防止制御を実行する。設定操作器18は、後方接近制御スイッチを含み、運転支援ECU10は、後方接近制御スイッチがオンである場合に後方接近制御を実行する。衝突防止制御及び後方接近制御については後に詳細に説明する。
【0026】
駆動ECU20には、図1には示されていない駆動輪に駆動力を付与することにより車両102を加速させる駆動装置22が接続されている。駆動ECU20は、通常時には、駆動装置22により発生される駆動力が運転者による駆動操作に応じて変化するよう、駆動装置を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて駆動装置22を制御する。
【0027】
なお、駆動装置22は、内燃機関及び自動変速機の組合せに限定されない。即ち、駆動装置22は、内燃機関及び無段変速機の組合せ、内燃機関及びモータの組合せである所謂ハイブリッドシステム、所謂プラグインハイブリッドシステム、燃料電池及びモータの組合せ、モータのように、当技術分野において公知の任意の駆動装置であってよい。
【0028】
制動ECU30には、図1には示されていない車輪に制動力を付与することにより車両102を制動により減速させる制動装置32が接続されている。制動ECU30は、通常時には、制動装置32により発生される制動力が運転者による制動操作に応じて変化するよう、制動装置32を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて制動装置32を制御することにより自動ブレーキを行う。よって、制動ECU30及び制動装置32は、自動ブレーキ装置として機能する。なお、車輪に制動力が付与されているときには、図1には示されていないブレーキランプが点灯される。
【0029】
メータECU50には、運転支援ECU10による制御の状況、自車両が他車両と衝突する虞があるときには、そのことを示す視覚警報などを表示する表示器52が接続されている。表示器52は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイであってよく、ナビゲーション装置のディスプレイであってもよい。
【0030】
更に、メータECU50には、電子インナミラー54、警報装置56及びハザードランプ58が接続されている。電子インナミラー54は、自車両の後方を撮影するカメラにより撮影された画像を表示し、必要に応じて運転者に伝達すべき情報を表示するよう構成された後方確認用のミラー装置である。警報装置56は、警報を発出する。警報装置56は、表示器、警報ランプのような視覚警報を発する警報装置、警報ブザーのような聴覚警報を発する警報装置、シートの振動のような体感警報を発する警報装置の何れであってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。
【0031】
運転操作センサ60及び車両状態センサ62は、CAN104に接続されている。運転操作センサ60及び車両状態センサ62によって検出された情報(センサ情報と呼ぶ)は、CAN104に送信される。CAN104に送信されたセンサ情報は、各ECUにおいて適宜に利用可能である。なお、センサ情報は、特定のECUに接続されたセンサの情報であって、その特定のECUからCAN104に送信されてもよい。
【0032】
運転操作センサ60は、アクセルペダルの操作量を検出する駆動操作量センサ、マスタシリンダ圧力又はブレーキペダルに対する踏力を検出する制動操作量センサ、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチを含んでいる。更に、運転操作センサ60は、操舵角を検出する操舵角センサ、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサなどを含んでいる。
【0033】
車両状態センサ62は、車両102の車速を検出する車速センサ、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサ、及び車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサなどを含んでいる。
【0034】
実施形態においては、運転支援ECU10のROMは、図2に示されたフローチャートに対応する衝突防止制御のプログラムを記憶しており、CPUは、衝突防止制御スイッチがオンであるときに、該プログラムに従って衝突防止制御を実行する。なお、以下の説明においては、衝突防止制御をPCS制御と呼称する。
【0035】
後に詳細に説明するように、運転支援ECU10、メータECU50、表示器52及び警報装置56は、自車両102が障害物検出装置により検出された障害物に衝突する虞があると判定したときには、衝突の虞がある旨を運転者に報知する報知装置として機能する。
【0036】
また、運転支援ECU10のROMは、図3に示されたフローチャートに対応する後方接近制御のプログラムを記憶しており、CPUは、後方接近制御スイッチがオンであるときに、該プログラムに従って後方接近制御を実行する。後方接近制御は、後続車両が自車両に接近しているときに、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知して注意喚起する制御である。
【0037】
後に詳細に説明するように、運転支援ECU10、メータECU50、表示器52、電子インナミラー54及び警報装置56は、後続車両検出装置により検出された後続車両が自車両102に接近していると判定したときには、後続車両が自車両に接近している旨を運転者に通知する通知装置として機能する。
【0038】
更に、運転支援ECU10のROMは、図4に示されたフローチャートに対応するフラグ設定制御のプログラムを記憶しており、CPUは、後方接近制御スイッチがオンであるときに、該プログラムに従ってフラグ設定制御を実行する。フラグ設定制御は、衝突予測時間TTCfの大小を判別するための基準値を高くすべきであるか否かを示すフラグFrpを設定する制御である。
【0039】
<PCS制御ルーチン>(図2
まず、ステップS10においては、CPUは、車両102の前方に障害物があるか否か、即ち障害物検出装置が車両102の前方に障害物を検出しているか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、PCS制御を一旦終了し、肯定判別をしたときには、PCS制御をステップS20へ進める。
【0040】
ステップS20においては、車両102が障害物に衝突するまでの予測時間である衝突予測時間TTCfを演算する。衝突予測時間TTCfは、障害物検出装置による検出結果に基づく障害物と自車両との間の距離Drfと、障害物に対する自車両の相対速度Vrfとに基づいて、次式(1)に従って演算される。衝突予測時間TTCfは、自車両が障害物に衝突する可能性の高さを表す指標であり、その値が小さいほど、自車両が障害物に衝突する可能性(危険性)が高くなる。
TTCf=Drf/Vrf ・・・(1)
【0041】
ステップS30においては、CPUは、フラグFpcsが1であるか否かの判別、即ちPCS制御による自動ブレーキの実行中であるか否かの判別をする。CPUは、肯定判別をしたときには、PCS制御をステップS120へ進め、否定判別をしたときには、PCS制御をステップS40へ進める。なお、フラグFpcsは、PCS制御の開始時にステップS10に先立って0に初期化される。
【0042】
ステップS40においては、CPUは、後述の図4に示されたフローチャートに従って設定されるフラグFrpが1であるか否かの判別、即ち衝突予測時間TTCfの大小を判別するための基準値を高くすべきであるか否かの判別をする。CPUは、否定判別をしたときには、ステップS50において、基準値TTCfw、TTCfb及びTTCfeをそれぞれ標準値TTCfwn、TTCfbn及びTTCfen(正の定数)に設定する。これに対し、CPUは、肯定判別をしたときには、ステップS60において、基準値TTCfw、TTCb及びTTCfeをそれぞれ標準値TTCfwn、TTCfbn及びTTCfenよりも大きい値TTCfwh、TTCfbh及びTTCfeh(正の定数)に設定する。
【0043】
ステップS70においては、CPUは、衝突予測時間TTCfが警報用基準値TTCfw以下であるか否かの判別、即ち自車両が障害物に衝突する可能性がある旨の警報を発出する必要があるか否かの判別をする。CPUは、否定判別をしたときには、PCS制御を一旦終了し、肯定判別をしたときには、PCS制御をステップS80へ進める。
【0044】
ステップS80においては、CPUは、警報装置58を作動させることにより自車両が障害物に衝突する虞がある旨の警報を発出すると共に、電子インナミラー54に自車両が障害物に衝突する虞がある旨の警報を表示する。特に、CPUは、ステップS40において肯定判定をしたときには、自動ブレーキが開始する可能性がある旨が運転者に報知されるように警報装置56を作動させる。
【0045】
ステップS90においては、CPUは、衝突予測時間TTCfが制動用基準値TTCfb以下であるか否かの判別、即ち自動ブレーキの必要があるか否かの判別をする。CPUは、否定判別をしたときには、PCS制御を一旦終了し、肯定判別をしたときには、ステップS100において、フラグFpcsを1にセットする。
【0046】
ステップS110においては、CPUは、衝突を防止するための目標減速度としてPCS要求減速度Gpcsを演算し、車両102の減速度をPCS要求減速度GpcsにするPCSブレーキ指令を制動ECU30へ出力する。よって、車両102の減速度がPCS要求減速度Gpcsになるように制動ECU30によって制動装置32が制御され、自動ブレーキが実行される。また、CPUは、自動ブレーキが開始する可能性がある旨の報知を解除し、自動ブレーキが実行されていることを表示器52に表示する。
【0047】
PCS要求減速度Gpcsは、以下のように演算される。自車両の減速度をGb(<0)とし、自車両が停止するまでの時間をtとすれば、自車両が停止するまでの走行距離Xは、次式(2)にて表すことができる。
X=Vrf・t-(1/2)・Gb・t ・・・(2)
【0048】
また、自車両が停止するまでの時間tは、次式(3)にて表すことができる。
t=-Vrf/Gb ・・・(3)
【0049】
従って、式(2)の時間tに式(3)により計算される時間tを代入することにより、自車両が停止するまでの走行距離Xは、次式(4)にて表すことができる。
X=-V/(2Gb) ・・・(4)
【0050】
障害物に対して距離βだけ手前で自車両を停止させるためには、この走行距離Xを、障害物検出装置によって検出されている距離Drfから距離β(>0)だけ引いた距離(Drf-β)に設定して、減速度Gbを計算すればよい。PCS要求減速度Gpcsは、このように計算される減速度Gbの符号反転値に設定される。
【0051】
ステップS120においては、CPUは、衝突予測時間TTCfが終了基準値TTCfeよりも大きいか否かを判定する。CPUは、否定判別をしたときには、PCS制御をステップS110へ進め、肯定判別をしたときには、PCS制御をステップS130へ進める。
【0052】
ステップS130においては、CPUは、フラグFpcsを0にリセットし、自動ブレーキ及び警報の発出を解除すると共に、自動ブレーキが解除されたことを表示器52に表示する。
【0053】
<後方接近制御ルーチン>(図3
まず、ステップS210においては、CPUは、自車両102の後方に後続車両があるか否か、即ち後続車両検出装置により後続車両が検出されているか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、後方接近制御をステップS280へ進め、肯定判別をしたときには、後方接近制御をステップS220へ進める。
【0054】
ステップS220においては、後続車両検出装置による検出結果に基づく自車両102と後続車両との間の距離Drr及び自車両に対する後続車両の相対速度Vrrに基づいて、後続車両が自車両102に衝突するまでの予測時間である衝突予測時間TTCrを演算する。衝突予測時間TTCrは、距離Drrと自車両に対する後続車両の相対速度Vrrとに基づいて、次式(5)に従って演算される。衝突予測時間TTCfは、後続車両が自車両に衝突する可能性の高さを表す指標であり、その値が小さいほど、後続車両が自車両に衝突する可能性(危険性)が高くなる。
TTCr=Drr/Vrr ・・・(56)
【0055】
ステップS230においては、CPUは、フラグFraが1であるか否かの判別、即ち後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報が発出されているか否かの判別をする。CPUは、肯定判別をしたときには、後方接近制御をステップS250へ進め、否定判別をしたときには、後方接近制御をステップS240へ進める。なお、フラグFraは、後方接近制御の開始時にステップS210に先立って0に初期化される。
【0056】
ステップS240においては、CPUは、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報の発出の開始条件が成立しているか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、後方接近制御をステップS280へ進め、肯定判別をしたときには、後方接近制御をステップS260へ進める。
【0057】
このステップS240においては、下記の条件1又は2が成立しているときに、肯定判別が行われてよい。
条件1:衝突予測時間TTCrが警報開始の基準時間TTCrs(正の定数)以下である。
条件2:後方車両と自車両との間の距離Drrが警報開始の基準距離Drrs(正の定数)以下である。
【0058】
ステップS250においては、CPUは、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報の発出の終了条件が成立しているか否かを判別する。CPUは、肯定判別をしたときには、後方接近制御をステップS280へ進め、否定判別をしたときには、後方接近制御をステップS260へ進める。
【0059】
このステップS250においては、下記の条件3又は4が成立しているときに、肯定判別が行われてよい。
条件3:衝突予測時間TTCrが警報終了の基準時間TTCre(TTCrsよりも大きい正の定数)以上である。
条件4:後方車両と自車両との間の距離Drrが警報終了の基準距離Drrs(Drrsよりも大きい正の定数)以上である。
【0060】
ステップS260においては、CPUは、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報の発出の禁止条件が成立しているか否かを判別する。CPUは、肯定判別をしたときには、後方接近制御をステップS280へ進め、否定判別をしたときには、後方接近制御をステップS270へ進める。
【0061】
このステップS260においては、下記の条件5又は6が成立しているときに、肯定判別が行われてよい。
条件5:運転者により制動操作が行われている。
条件6:ウインカスイッチがオンである。
【0062】
ステップS270においては、CPUは、フラグFraが0であるときには、フラグFraを1にセットする。また、CPUは、電子インナミラー54の表示及び警報装置56の作動により、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報を発出すると共に、ハザードランプ58を短い点滅間隔にて点滅させることにより、後続車両の運転者に注意を喚起する。
【0063】
ステップS280においては、CPUは、フラグFraを0にリセットする。また、CPUは、警報を実行している場合には、電子インナミラー54及び警報装置56の作動を停止すると共に、ハザードランプ58の点滅を停止する。
【0064】
<フラグ設定制御ルーチン>(図4
まず、ステップS310においては、CPUは、ステップS210と同様に、自車両102の後方に後続車両があるか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、ステップS310を繰り返し実行し、肯定判別をしたときには、フラグ設定制御をステップS320へ進める。
【0065】
ステップS320においては、CPUは、ステップS230と同様に、フラグFraが1であるか否かの判別、即ち後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報が発出されているか否かの判別をする。CPUは、否定判別をしたときには、フラグ設定制御をステップS350へ進め、肯定判別をしたときには、ステップS330において、フラグFrpを1にセットする。
【0066】
ステップS340においては、CPUは、フラグFraが0になったか否かの判別、即ち後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報の発出が終了したか否かの判別をする。CPUは、否定判別をしたときには、ステップS340を繰り返し実行し、肯定判別をしたときには、フラグ設定制御をステップS380へ進める。
【0067】
ステップS350においては、CPUは、後続車両が自車両に後突するリスクが高いか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、フラグ設定制御を一旦終了し、肯定判別をしたときには、ステップS360において、フラグFrpを1にセットする。
【0068】
このステップS350においては、下記の条件7又は8が成立しているときに、肯定判別が行われてよい。
条件7:衝突予測時間TTCrが警報開始の基準時間TTCrsよりも大きいが、距離Drrの減少率が基準減少率dDrr(正の定数)以上ある。
条件8:後方車両と自車両との間の距離Drrが警報開始の基準距離Drrsよりも大きいが、衝突予測時間TTCrの減少率が基準減少率dTTCr(正の定数)以上である。
【0069】
ステップS370においては、CPUは、後続車両が自車両に後突するリスクが解消したか否かを判別する。CPUは、否定判別をしたときには、ステップS370を繰り返し実行し、肯定判別をしたときには、ステップS380において、フラグFrpを0にリセットする。
【0070】
<実施形態の作動>
次に、図5に示されているように、自車両102が停止車両のような前方の障害物106に衝突する虞があり且つ後続車両108がある場合について、実施形態の作動を説明する。
【0071】
C1:後続車両が自車両に接近していない場合
図3のステップS230及びS240において、否定判別が行われるので、ステップS280において、フラグFraが0にリセットされる。よって、図4のステップS320及びS350において、否定判別が行われるので、フラグFrpは0に維持される。
【0072】
従って、図2のステップS30及びS40において、否定判別が行われるので、ステップS50において、基準値TTCfw、TTCfb及びTTCfeがそれぞれ標準値TTCfwn、TTCfbn及びTTCfenに設定され、ステップS70以降が実行される。なお、後続車両が自車両に接近していないので、警報の発出(S80)及び自動ブレーキ(S110)は行われない。
【0073】
C2:後続車両が自車両に接近している場合
まず、図3のステップS230、S240及びS260において、それぞれ否定判別、肯定判別及び否定判別が行われるので、ステップS270において、フラグFraが1に設定される。その後、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報の発出の終了条件(S250)が成立するまで、ステップS230及びS250において、それぞれ肯定判別及び否定判別が行われる。よって、ステップS270が実行されることにより、フラグFraが1に維持される。また、後続車両が自車両に衝突する虞がある旨の警報が発出されると共に、ハザードランプ58を短い点滅間隔にて点滅させることにより、後続車両の運転者に注意が喚起される。
【0074】
図4のステップS320において、肯定判別が行われるので、ステップS330において、フラグFrpが1に設定され、フラグFraが0になるまで、即ちステップS340において、肯定判別が行われるまで、1に維持される。
【0075】
図2のステップS30において、否定判別が行われるが、ステップS40において、肯定判別が行われるので、ステップS60において、基準値TTCfw、TTCfb及びTTCfeがそれぞれ標準値TTCfwn、TTCfbn及びTTCfenよりも大きい値TTCfwh、TTCfbh及びTTCfehに設定され、ステップS70乃至S130が実行される。
【0076】
よって、基準値TTCfwが標準値TTCfwnである場合に比して早期にステップS70の判別が肯定判別になる。従って、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、衝突の虞がある旨を運転者に報知するタイミングが早くなる。
【0077】
よって、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知しているときには、後続車両が自車両に接近している旨を通知装置が通知していないときに比して、運転者は衝突の虞があることを早く認知することができる。従って、自車両の前方に障害物が検出され自車両の後方に後続車両が検出されている場合に、運転者が自車両の前方に障害物があることを認識することに遅れが生じる虞を低減することができる。
【0078】
また、自車両の前方に障害物があり且つ後続車両が自車両に接近している状況において、後続車両が自車両に接近している旨が表示装置に表示され、運転者がその表示に注目すると、運転者が自車両の前方に障害物があることを認識することに遅れが生じ易くなる。
【0079】
実施形態によれば、後続車両が自車両に接近している旨が表示装置としての電子インナミラー54に表示されることにより運転者に通知される。更に、後続車両が自車両に接近している旨が電子インナミラーに表示されているときには(S40)、衝突の虞がある旨が電子インナミラーに表示される(S80)。よって、運転者は電子インナミラーによって後続車両を確認しているときにも、自車両の前方に障害物があることを容易に認識することができるので、障害物があることの認識に遅れが生じる虞を低減することができる。
【0080】
また、基準値TTCfbが標準値TTCfbnである場合に比して早期にステップS90の判別が肯定判別になる。よって、後続車両が自車両に接近している旨が通知されているときには(S40)、後続車両が自車両に接近している旨が通知されていないときに比して、自動ブレーキの開始が早くなる(S110)。従って、たとえ運転者が自車両の前方に障害物があることを認識することに遅れが生じても、自車両が障害物に衝突することを防止する可能性を高くすることができる。
【0081】
更に、基準値TTCfwが標準値TTCfwnである場合に比して早期にステップ70の判別が肯定判別になる。よって、後続車両が自車両に接近している旨が通知されているときには(S40)、後続車両が自車両に接近している旨が通知されていないときに比して、自動ブレーキの開始の予告が早くなる(S80)。従って、運転者は自動ブレーキの開始を早期に認識することができる。
【0082】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0083】
例えば、上述の実施形態においては、後続車両が自車両に接近している旨が表示され、自車両が前方に障害物に衝突する虞がある旨が表示される共通の表示装置は、電子インナミラー54である。しかし、共通の表示装置は、表示器52であってもよく、反射式のインナミラーに表示器が設けられたインナミラーであってもよい。
【0084】
また、上述の実施形態においては、後続車両が自車両に接近している旨が通知されているときには、後続車両が自車両に接近している旨が通知されていないときに比して、自動ブレーキの開始及びその予告が早くなる。しかし、自動ブレーキの開始及びその予告を早めることの少なくとも一方が省略されてもよい。
【0085】
更に、上述の実施形態においては、図4に示されたフローチャートによるフラグ設定制御が実行される。しかし、フラグ設定制御が省略され、ステップS240において否定判別が行われたときに、ステップS350が実行され、肯定判別が行われたときには、後方接近制御がステップS260へ進み、否定判別が行われたときには、後方接近制御がステップS280へ進むよう、修正されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…運転支援ECU、12…カメラセンサ、14…レーダセンサ、20…駆動ECU、30…制動ECU、50…メータECU、52…表示器、54…電子インナミラー、56…警報装置、58…ハザードランプ、60……運転操作センサ、62…車両状態センサ、100…制御装置、102…自車両
図1
図2
図3
図4
図5