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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008637
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ガス充填容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20250109BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110965
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB11
3E172AB13
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172CA22
3E172DA36
3J046AA01
3J046BA01
3J046BB01
3J046BD08
3J046CA04
3J046DA05
(57)【要約】
【課題】容器を厚肉とすることなく、製造コストの低減を図る。
【解決手段】水素充填容器10は円筒状の外容器11と、外容器11内に配置された内容器12とを備えている。外容器11は外容器本体11aと、外容器本体11a内面に形成されたモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bとを有する。外容器11の縦弾性係数×厚みは、内容器12の縦弾性係数×厚みより大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス充填容器において、
合成樹脂製の円筒状外容器と、
前記外容器内に配置され、前記外容器との間に消費者に供給される第1ガスが充填される充填空間を形成するとともに、内部に前記充填空間の圧力変動を吸収する第2ガスが充填された合成樹脂製の円筒状内容器とを備え、
前記外容器は外容器本体と、前記外容器本体内面に形成された粘土鉱物膜とを有し、
前記外容器の外容器本体の縦弾性係数×厚みは、前記内容器の縦弾性係数×厚みより大きい、ガス充填容器。
【請求項2】
前記第1ガスと前記第2ガスは同一のガス成分をもつ、請求項1記載のガス充填容器。
【請求項3】
前記外容器本体は円筒形状をもつ胴部と、前記胴部の両端に設けられた一対の端板とを有する、請求項1または2記載のガス充填容器。
【請求項4】
前記一対の端板の一方の端板を貫通して第1取付部が設けられ、前記第1取付部の内方に前記内容器が接続され、前記第1取付部の外方に前記内容器内の水素の圧力を制御する圧力調整弁が連結される、請求項3記載のガス充填容器。
【請求項5】
前記一対の端板の他方の端板を貫通して第2取付部が設けられ、前記第2取付部の外方に開閉弁が連結される、請求項4記載のガス充填容器。
【請求項6】
前記第2取付部の内方は前記内容器に固定され、前記内容器を保持する、請求項5記載のガス充填容器。
【請求項7】
前記第2取付部の内方は前記内容器から離間する、請求項5記載のガス充填容器。
【請求項8】
前記外容器の外容器本体はポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなり、前記内容器はポリウレタン樹脂からなる、請求項1または2記載のガス充填容器。
【請求項9】
前記外容器の外周に、強化プラスチックファイバが巻き付けられている、請求項1または2記載のガス充填容器。
【請求項10】
前記粘土鉱物膜はモンモリロナイトを含む、請求項1または2記載のガス充填容器。
【請求項11】
前記外容器の内容積と、前記内容器の内容積との比は、2:1~10:1となっている、請求項1記載のガス充填容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス充填容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス、例えば高圧の水素ガスを充填するためのガス充填容器が知られている。
【0003】
ところで金属製のガス充填容器を用いた場合、水素は金属腐食を生じさせることがあり、このためガス充填容器をナイロン等の合成樹脂で作製することが考えられている。
【0004】
しかしながら合成樹脂製のガス充填容器は、ガスバリア性に問題があり、ガスバリア性を高めるため、容器の厚みを大きくする必要がある。このように容器の厚みを大きくすると、製造コストが高くなり、かつ容器の重量が重くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-207094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、容器の軽量化を図ることができ、かつ製造コストを低く抑えることができるガス充填容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ガス充填容器において、合成樹脂製の円筒状外容器と、前記外容器内に配置され、前記外容器との間に消費者に供給される第1ガスが充填される充填空間を形成するとともに、内部に前記充填空間の圧力変動を吸収する第2ガスが充填された合成樹脂製の円筒状内容器とを備え、前記外容器は外容器本体と、前記外容器本体内面に形成された粘土鉱物膜とを有し、前記外容器に内圧が加わるとともに、前記外容器の外容器本体の縦弾性係数×厚みは、前記内容器の縦弾性係数×厚みより大きい、第1ガス充填容器である。
【0008】
本開示は、前記第1ガスと前記第2ガスは、同一のガス成分をもつ、ガス充填容器である。
【0009】
本開示は、前記外容器本体は円筒形状をもつ胴部と、前記胴部の両端に設けられた一対の端板とを有する、ガス充填容器である。
【0010】
本開示は、前記一対の端板の一方の端板を貫通して第1取付部が設けられ、前記第1取付部の内方に前記内容器が接続され、前記第1取付部の外方に前記内容器内の水素の圧力を制御する圧力調整弁が連結される、ガス充填容器である。
【0011】
本開示は、前記一対の端板の他方の端板を貫通して第2取付部が設けられ、前記第2取付部の外方に開閉弁が連結される、ガス充填容器である。
【0012】
本開示は、前記第2取付部の内方は前記内容器に固定され、前記内容器を保持する、ガス充填容器である。
【0013】
本開示は、前記第2取付部の内方は前記内容器から離間する、ガス充填容器である。
【0014】
本開示は、前記外容器の外容器本体はポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂からなり、前記内容器はポリウレタン樹脂からなる、ガス充填容器である。
【0015】
本開示は、前記外容器の外周に、強化プラスチックファイバが巻き付けられている、ガス充填容器である。
【0016】
本開示は、前記粘土鉱物膜はモンモリロナイトを含む、ガス充填容器である。
【0017】
本開示は、前記外容器の内容積と、前記内容器の内容積との比は、2:1~10:1となっている、ガス充填容器である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、容器を厚肉とすることなく高圧のガスを充填することができ、容器全体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は第1の実施の形態による水素充填容器を示す断面図。
図2図2は水素充填容器の第1取付部を示す拡大図。
図3図3は水素充填容器の第2取付部を示す拡大図。
図4図4は第2の実施の形態による水素充填容器を示す断面図。
図5図5は水素充填容器の第2取付部を示す拡大図。
図6図6は水素充填容器の外容器を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、図面を参照して本開示の第1の実施の形態について説明する。
【0021】
図1乃至図3および図6は本開示の第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
本実施の形態において、内部にガスを充填するガス充填容器として、内部に高圧の水素ガスを充填する水素充填容器を例に説明するが、ガス充填容器としては、高圧の水素ガス以外に、高圧の窒素ガスまたは高圧の炭酸ガスを充填するものであってもよい。また、水素充填容器内には、高圧の気体状水素ガスを充填してもよく、液体状の水素ガスを充填してもよい。以下、本実施の形態において、内部に気体状の高圧の水素ガスを充填する水素充填容器について、説明する。図1乃至図3に示すように、水素充填容器10は合成樹脂製、例えば、ポリカーボネート(PC)、またはアクリル系のポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む外容器11と、外容器11内に配置され、外容器11との間に水素が充填される充填空間15を形成する合成樹脂製、例えばポリウレタン(PU)からなる内容器12とを備えている。
【0023】
このうち外容器11は、図6に示すようにポリカーボネート(PC)またはアクリル系のポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる外容器本体11aと、外容器本体11a内面に設けられた少なくともモンモリロナイト等のガスバリア成分を含む粘土鉱物膜11bと、外容器本体11a外面に巻き付けられた強化プラスチックファイバ11cとを有する。
【0024】
外容器11の外容器本体11aは、外容器11の基本的構成要素であって、充填空間15内に充填される水素ガス(以下、水素ともいう)を収容するものである。水素は後述するように、例えば40MPa~100MPa、好ましくは40MPa~50MPaの圧力をもって充填空間15内に充填されるため、このような高圧の水素を収容することができるよう外容器11の外容器本体11aは所望の縦弾性係数および所望の厚みを有する。
【0025】
なお、外容器本体11aの特性については後述する。
【0026】
またモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bは高い水素バリア特性をもつ材料からなり、温度によらず高い水素バリア特性を維持することができる。
【0027】
なお、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの構造は後述する。
【0028】
また強化プラスチックファイバ11cは、例えばカーボンファイバ等の強化プラスチックの繊維からなり、外容器本体11aの外面に巻き付けられて外容器本体11aを外方から保護強化する。
【0029】
さらに内容器12はポリウレタン(PU)からなるとともに、所望の縦弾性係数および所望の厚みを有し、高圧の水素が充填空間15内に充填された際、内方へ圧縮変形して、外容器11の外方への膨張変形を防ぐよう機能する。
【0030】
すなわち、外容器11のモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bは粘土状に形成された後、外容器本体11a内面に塗布、乾燥して得られ、弾性の低い材料となっている。このため高圧の水素が充填空間15内に充填された際、内容器12が内方へ圧縮変形することにより、外容器11の外方への膨張変形を抑えることができ、これによりモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bが外容器本体11a内面から、脱落することを未然に防ぐことができる。
【0031】
本実施の形態において外容器11と内容器12との間の充填空間15内に、例えば40MPa~100MPaの水素(第1ガスともいう)が充填され、内容器12内には圧力調整用の例えば0.1MPa~0.15MPaの水素(第2ガスともいう)が充填される。そして、充填空間15内の第1ガスと内容器12内の第2ガスは、同一のガス成分(水素)を含んでいる。なお、充填空間15内の第1ガスと内容器12内の第2ガスは必ずしも完全に同一のガス成分を含む必要はない。
【0032】
この場合、充填空間15内に充填された水素と、外方の大気を合わせて40MPa~100MPaの内圧が外容器11内面に加わる。また充填空間15内に充填された水素と、内容器12内の圧力調整用水素を合わせて、外容器11内面の内圧と略同一の外圧が内容器12外面に加わる。
【0033】
この場合、外容器11の外方への半径方向膨張量は以下の式で求まる。
外容器の半径方向膨張量B1=(R1×P1)/(t1×E1) (1)
【0034】
ここで外容器11の変形は外容器本体11aにより定まると考えると、t1は外容器本体11aの厚み、E1は外容器本体11aの縦弾性係数(ヤング率)、P1は外容器11内面に加わる内圧、R1は外容器本体11aの半径である。
【0035】
一方、内容器12の内方への内径方向圧縮量は、以下の式で求まる。
内容器の半径方向圧縮量B2=(R2×P2)/(t2×E2) (2)
【0036】
ここでt2は内容器の厚み、E2は内容器12の縦弾性係数(ヤング率)、P2は内容器外面に加わる外圧、R2は内容器12の半径である。
【0037】
本実施の形態において、上述のように充填空間15内に高圧の水素を充填した際、外容器11の外方への半径方向膨張量と、内容器12の内方への半径方向圧縮量を式(1)および(2)により求める。
【0038】
後述の様に、外容器11の内面に加わる内圧P1と、内容器12の外面に加わる外圧P2は、略同一と考えられる。仮に外容器11と内容器12を、同一の材料、同一の半径、および同一の厚みをもつよう作製した場合、外容器の半径方向膨張量と、内容器の半径方向圧縮量は同一となる。
【0039】
以上のことから、(外容器11の外容器本体11aの縦弾性係数E1×外容器11の外容器本体11aの厚みt1)>(内容器12の縦弾性係数E2×内容器の厚みt2)とすることによって、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12は半径方向内方へ圧縮変形し易くなる。
【0040】
本実施の形態において、(外容器11の外容器本体11aの縦弾性係数E1×外容器11の外容器本体11aの厚みt1)>(内容器12の縦弾性係数E2×内容器の厚みt2)となっている。このため、水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、内容器12が内方へ圧縮して大きく変形する。このことにより、充填空間15内に高圧水素を充填した際の充填空間15内の圧力変動を内容器12の半径方向内方への圧縮変形により吸収することができる。このことにより外容器11の外方への膨張変形を抑えて、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bが外容器本体11a内面から脱落することを未然に防ぐことができる。
【0041】
次に図1乃至図3により外容器11と内容器12との間の充填空間15および内容器12内に水素を供給する構造について述べる。
【0042】
外容器11の外容器本体11aは円筒形状をもつ胴部15Aと、胴部15Aの両端に設けられた一対の端板16,17とを有する。そして一方の端板16を貫通して第1取付部20が設けられ、他方の端板17を貫通して第2取付部30が設けられている。
【0043】
このうち第1取付部20は図2に示すように、一方の端板16を貫通する口部21と、口部21に取り付けられたフランジ22とを有する。第1取付部20の口部21の外面に内容器12の上部12bが接着されている。また第1取付部20のフランジ22は一方の端板16の内面に固着されている。
【0044】
このことにより第1取付部20はフランジ22を介して一方の端板16に固着され、第1取付部20の口部21の外面に内容器12の上部12bが固着されている。
【0045】
また第1取付部20の口部21の外方には、内容器12内に充填する水素に関し、その圧力調整を行う圧力調整弁25が接続されている。そしてこの圧力調整弁25によって内容器12内の水素が0.1MPa~0.15MPaに調整される。
【0046】
また図3に示すように、外容器11の他方の端板17を貫通して第2取付部30が設けられ、この第2取付部30は他方の端板17の内面に固着されるフランジ31を有する。このフランジ31には他方の端板17を貫通する蓋体32が取り付けられている。そして蓋体32の外方には外容器11内に水素を供給する開閉弁35が接続されている。このように、圧力調整弁25と、開閉弁35は、外容器11の上部および下部に互いに離間して配置されている。このため、圧力調整弁25と、開閉弁35を互いに干渉することなく、互いに独立して取り扱うことができる。
【0047】
そして図示しない水素供給系から供給される高圧の水素が開閉弁35を介して蓋体32とフランジ31との間の空間32aに送られる。その後蓋体32とフランジ31との間の空間32aからフランジ31に形成された供給孔31aを介して外容器11と内容器12との間の充填空間15内に高圧、例えば40MPa~100MPaの水素が供給される。
【0048】
また図3においてフランジ31の上部には、取付リング33が設けられ、内容器12の底部12aはこの取付リング33の外面に接着されて固定されている。また取付リング33により固定された内容器12の底部12aはフランジ31により密閉されている。
【0049】
なお、本明細書において、「上部」「上方」、「下部」、「下方」、「底部」とは水素充填容器10を図1に示す方向に配置した場合における「上部」「上方」、「下部」、「下方」、「底部」をいう。
【0050】
次に水素充填容器10を構成する外容器11および内容器12の構成材料について述べる。
【0051】
外容器11の外容器本体11aは、ポリカーボネート(PC)またはアクリル系のポリメチルメタクリレート(PMMA)を含み、このうちポリカーボネート(PC)はASTMのD638に準拠する測定方法により求められた縦弾性係数(ヤング率ともいう)が2300MPaとなっている。またポリメチルメタクリレート(PMMA)はASTMのD638に準拠する測定方向により求められた縦弾性係数が3430MPaとなっている。
【0052】
また変形前の外容器本体11aの半径は100mm~750mm、その厚みは10mm~100mmとなっている。
【0053】
他方、内容器12は例えばポリウレタン(PU)からなり、ポリウレタンはASTMのD638に準拠する測定方法により求められた縦弾性係数が70MPa~690MPaとなっている。
【0054】
また変形前の内容器12の半径は30mm~200mm、その厚みは10mm~40mmとなっている。なお、変形前の外容器本体11aの内容積と、変形前の内容器12の内容積の比は、2:1~10:1となっている。この場合、内容器12の内容積が上記の内容積の比より大きくなると、外容器11内(充填空間15内)に収納される第1ガスの収納スペースが小さくなる。他方、内容器12の内容積が上記の内容積の比より小さくなると、内容器12の変形により、充填空間15内の圧力変動を吸収する効果は期待できない。これに対して本願発明によれば、変形前の外容器本体11aの内容積と、変形前の内容器12の内容積の比は、2:1~10:1となっている。このことにより、外容器11内(充填空間15内)に収納される第1ガスの収納スペースを確実に確保することができ、かつ、内容器12の変形により、充填空間15内の圧力変動を吸収することができる。
【0055】
本実施の形態において、外容器11の半径方向膨張量は、式(1)により求められ、内容器12の半径方向圧縮量は、式(2)により求められる。
【0056】
本実施の形態によれば、外容器11の外容器本体11aの縦弾性係数E1×外容器の外容器本体11aの厚みt1>内容器12の縦弾性係数E2×内容器の厚みt2とすることによって、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12は半径方向内方へ圧縮変形し易くなる。
【0057】
このため、水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、内容器12が内方へ圧縮して大きく変形する。このことにより、充填空間15内に高圧水素を充填した際の充填空間15内の圧力変動を内容器12の半径方向内方への圧縮変形により吸収することができる。このことにより外容器11の外方への膨張変形を抑えて、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bが外容器本体11a内面から脱落することを未然に防ぐことができる。
【0058】
次に外容器11のモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bについて述べる。粘土鉱物膜11bは外容器本体11aの内面に塗工液を塗布し、乾燥することにより得られる。乾燥後の粘土鉱物膜11bはきわめて脆い特性をもち、外容器本体11aの変形により外容器本体11aから脱落する恐れもあるが、本実施例によれば外容器本体11aの変形を抑えることができる。
【0059】
<塗工液>
次に粘土鉱物膜11bを形成する塗工液について述べる。
【0060】
塗工液は粘土鉱物と、水と、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(以下、「BVOH」ともいう。)とを含有してなる。塗工液の固形分中(媒体(溶媒)を除いた成分中)、粘土鉱物の含有量は55~85質量%であり、当該固形分中のBVOHの含有量は15~45質量%である。塗工液は、通常は、BVOHが溶解している水又は水性媒体(水と水溶性有機溶媒との混合液)に粘土が分散した状態の分散液である。
【0061】
粘土鉱物は水などの媒体と混合すると結晶層間が乖離して媒体中に分散する。ここにBVOHを共存させると、BVOHは媒体中に溶解し、粘土鉱物とBVOHとの均一混合物(スラリー、塗工液)を得ることができる。このスラリーを外容器本体11a上に塗工し、塗膜を乾燥させると、粘土鉱物とBVOHとがナノレベルで複合化(一体化)した粘土鉱物膜11bが得られる。
【0062】
本発明の塗工液を構成する各成分について説明する。
【0063】
<粘土鉱物>
本発明の塗工液は粘土鉱物を特定量含有する。粘土鉱物は層状ケイ酸塩化合物で構成され、高温下でもガスバリア性が低下しにくい。また、粘土鉱物の結晶層は基本的にガスを透過させず、分子サイズの小さな水素ガスやヘリウムガスのバリア性にも優れている。
【0064】
粘土鉱物は、天然のものであっても、合成されたものであってもよい。本発明に用いる粘土鉱物は、少なくともモンモリロナイトを含み、その他雲母、バーミキュライト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マガディアイト、アイラライト、及びカネマイトを含むことが好ましい。また、粘土鉱物はモンモリロナイトおよびその他を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。粘土鉱物は、更に好ましくは、少なくともモンモリロナイトを含み、その他雲母、バーミキュライト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マガディアイト、アイラライト、及びカネマイトの少なくとも1種を含む。
【0065】
粘土鉱物は、少なくともモンモリロナイトを含み、その他雲母、バイデライト、サポナイト、及びヘクトライトの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0066】
上記粘土鉱物は、水等の媒体への分散性、塗工液の塗工性の観点から、Na型粘土、Li型粘土、K型粘土、及びNH4型粘土から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、Na型粘土又はLi型粘土がより好ましい。また、例えば、スラリーを用いて形成した粘土膜の耐水性をより高めることを考慮し、Mg型粘土、Ca型粘土、Al型粘土、及びCu型粘土から選ばれる1種又は2種以上の多価陽イオン型粘土を用いることもできる。
【0067】
ここで、Na型、Li型、K型、NH4型、Mg型、Ca型、Al型、及びCu型の各粘土は、それぞれ、粘土の浸出陽イオン量(すなわち浸出陽イオンの総量、単位:meq/100g)に占めるNa+、Li+、K+、NH4+、Mg2+、Ca2+、Al3+、及びCu2+の量(単位:meq/100g)が70%以上である粘土を意味する。
【0068】
本明細書において、粘土の浸出陽イオン量は、粘土の層間陽イオンを粘土0.5gに対して100mLの1M酢酸アンモニウム水溶液(Al型粘土については1M硫酸、NH4型粘土については10質量%塩化カリウム水溶液)を用いて4時間かけて浸出させ、得られた溶液中の各種陽イオンの濃度を、ICP発光分析、原子吸光分析、アンモニア電極等により測定し、算出されるものである。
【0069】
塗工液の固形分中において、上記粘土の含有量は55~85質量%であり、好ましくは57~83質量%であり、より好ましは58~82質量%であり、更に好ましくは59~81質量%である。また、当該含有量は65質量%以上とすることも好ましく、70質量%以上とすることも好ましい。
【0070】
粘土鉱物は市場から容易に入手することもできる。
【0071】
<ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)>
塗工液はBVOHを特定量含有する。BVOHを特定量含有することにより、粘土膜のガスバリア性を十分に発現させながら、粘土鉱物膜11bの耐水性も効果的に高めることができる。すなわち、BVOHは水溶性であるため粘土鉱物とナノレベルで均一混合物を形成でき、得られる膜において粘土粒子の空隙を隙間なく埋めるバインダーとして機能し、粘土鉱物とBVOHとがナノレベルで複合化(一体化)した粘土鉱物膜11bを形成することができる。こうして形成した粘土鉱物膜11bが高度なガスバリア性を発現する。その理由は粘土結晶とBVOHとの間で強固な水素結合が形成されることなどが一因と考えられる。
【0072】
BVOHは3,4-ジアセトキシ-1-ブテンと酢酸ビニルの反応によって得られた共重合体を加水分解して得ることができる。BVOHは、ランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。BVOHの原料モノマーとして用いる3,4-ジアセトキシ-1-ブテンと酢酸ビニルの共重合比は特に限定されない。例えば、[3,4-ジアセトキシ-1-ブテン]:[酢酸ビニル]=1:99~99:1(モル比)とすることができ、[3,4-ジアセトキシ-1-ブテン]:[酢酸ビニル]=10:90~90:10(モル比)とすることも好ましく、[3,4-ジアセトキシ-1-ブテン]:[酢酸ビニル]=20:80~80:20(モル比)とすることも好ましい。
【0073】
また、BVOHの重合度も特に制限はない。例えば、100~10000とすることができ、200~5000とすることも好ましく、250~3000とすることも好ましい。BVOHの重合度は小さい方が、分散液の粘土が低くなり、取り扱い性の観点で好ましい。
【0074】
また、BVOHのけん化度は70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上であることも好ましい。けん化度が高い方が、得られる複合粘土膜の耐水性が高まる傾向にある。
【0075】
BVOHは市場から入手することもでき、例えば、G-polymer(三菱ケミカル社製、けん化度95.0モル%以上)を好ましい例として挙げることができる。また、常法によりモノマーを付加重合してBVOHを得ることもできる。
【0076】
塗工液の固形分中において、上記ブテンジオールビニルアルコールコポリマーの含有量は15~45質量%であり、好ましくは17~43質量%であり、より好ましくは18~42質量%であり、更に好ましくは19~41質量%である。また、当該含有量は35質量%以下とすることも好ましく、30質量%以下とすることも好ましい。
【0077】
<その他の成分>
本発明の塗工液は、シランカップリング剤、架橋剤、BVOH以外の有機高分子、シリカ、界面活性剤、無機ナノ粒子等を含んでいてもよい。これらの成分の含有量は合計で、通常は塗工液の固形分中10質量%以下である。
【0078】
塗工液の塗工方法は特に限定されず、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられる。
【0079】
塗膜の乾燥温度は特に制限されず、例えば、70~120℃とすることができる。乾燥時間も塗膜を十分に乾燥できればよく、例えば、1分~24時間とすることができ、15分~12時間とすることも好ましく、20分~3時間とすることも好ましい。
【0080】
また、上記塗膜の乾燥後に、上記支持基材の耐熱温度の範囲内で、例えば130℃以上(好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上)の熱処理に付すことができる。この熱処理時間は、好ましくは1分~24時間であり、より好ましくは15分~12時間であり、更に好ましくは20分~3時間である。この熱処理を行わなくても、十分に高い耐水性とガスバリア性を示す複合粘土膜を得ることができるが、熱処理を行うことにより溶媒を完全に除去でき、より緻密化された、より高耐水性で、より高ガスバリア性の複合粘土膜を得ることが可能となる。すなわち、本発明の複合粘土膜は130℃以上の熱処理品であることも好ましい形態である。熱処理による緻密化の程度は、複合粘土膜の密度の測定、X線回折の001ピークの値が高角度にシフトすることによりある程度把握することができるが、複合粘土膜の構造として具体的に、正確に特定することは困難であり、本発明では粘土複合膜の状態を上記のようにその熱処理温度により特定することがある。上記熱処理温度は、通常は200℃以下である。
【0081】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0082】
まず図1に示すように水素充填容器10の内容器12内に、図示しない水素供給系から圧力調整弁25を介して水素(第2ガス)が供給され、内容器12内の水素が例えば、0.15MPaに調整される。
【0083】
この場合、内容器12の内圧は外容器12内の大気圧(0.1MPa)より大きな圧力となる。そして内容器12は変形し易いポリウレタン(PU)からなるため外容器11内に配置された内容器12はわずかに外容器11内で半径方向外方へ膨張する(図1の実線)。
【0084】
その後、外容器11と内容器12との間の充填空間15内に、図示しない水素供給系から開閉弁35を介して高圧、例えば40MPa~100MPaの水素(第2ガス)が供給される。
【0085】
この場合、まず開閉弁35を介して供給された水素は、フランジ31と蓋体32との間の空間32a内に入り、この空間32aからフランジ31に形成された供給孔31aを介して外容器11と内容器12との間の充填空間15内に供給される。このとき、充填空間15内には例えば40MPa~100MPaの高圧の水素が供給される。
【0086】
この際、充填空間15内に充填された水素と、外方の大気を合わせた結果、40MPa~100MPaの内圧が外容器11内面に加わる。また充填空間15内に充填された水素と、内容器12内の圧力調整用水素を合わせた結果、40MPa~100MPaの外圧が内容器12外面に加わる。このとき、外容器11に加わる大気の圧力は、0.1MPaであり、内容器12内には大気圧よりわずかに大きな圧力の水素が充填されるが(0.15MPa)、この大気の圧力と内容器12内の圧力は充填空間15内の水素の圧力(40~100MPa)よりかなり低いため、内容器12外面に加わる外圧は、外容器11内面に加わる内圧と略同一の圧力をもつと考えることができる。
【0087】
本実施の形態において、(外容器11の外容器本体11aの縦弾性係数E1×外容器11の外容器本体11aの厚みt1)をA1とし、(内容器12の縦弾性係数E2×内容器12の厚みt2)をA2とした場合、仮に外容器本体11aとして縦弾性係数が2300MPaのポリカーボネートを用い、外容器本体11aの厚みを55mmとした場合、A1=126,500Mpa・mmとなる。また、内容器12として縦弾性係数が380MPaのポリウレタンを用い、内容器12の厚みを25mmとした場合、A2=9,500MPa・mmとなる。すなわちA1>A2となっている。なお、A1とA2との関係は、A1=(5~30)×A2となっていることが好ましく、このようにA1がA2に比べてかなり大きな値をとることによって、外容器11と内容器12の構造は、充填空間15内に水素が充填される際、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12は半径方向内方へ圧縮変形し易い構造をとる。ここでA1がA2×5未満の場合、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12が半径方向内方へ圧縮変形し易い効果を得ることは難しくなる。他方、A1がA2×30以上の場合、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12が半径方向内方へ圧縮変形し易い効果を得ることができるが、外容器11の外容器本体11aの厚みを過度に厚くする必要があり、外容器11の軽量化を図ることは難しくなる。なお、本実施の形態において、外容器本体11aの縦弾性係数(例えばポリカーボネートの場合、2300MPa)も、内容器12の縦弾性係数(例えばウレタンの場合、380MPa)より、大きくなっている。
【0088】
水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、充填空間15内に圧力変動が生じるが、この場合、変形し易くかつ水素(第2ガス)が充填された内容器12を半径方向内方へ大きく圧縮変形させることができる。このため、変形し難い外容器11の外方への膨張変形を抑えてモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。
【0089】
また水素充填容器10内の水素を消費者が使用するに際し、水素充填容器10の充填空間15内から水素(第1ガス)が徐々に開閉弁35を介して放出される。この場合も充填空間15内に圧力変動が生じるが、この場合も内容器12を半径方向外方へ大きく膨張変形させることができる。このため外容器11の内方への圧縮変形を抑えて、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。以上のことから、外容器11内(充填空間15内)の水素(第1ガス)は消費者に供給されるガスとなり、内容器12内の水素(第2ガス)は外容器11内(充填空間15内)の圧力変動を吸収するガスとなる。
【0090】
以上のように本実施の形態によれば、外容器11は外容器本体11aの内面に設けられ少なくともモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bを有するため、外容器11は高い水素バリア特性をもつことになる。このため水素バリア特性を高めるために外容器11を必要以上に厚肉とする必要はなく、このことにより水素充填容器10全体の軽量化を図ることができ、かつ製造コストの低減を図ることができる。
【0091】
また水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12を半径方向内方へ大きく圧縮変形させることができる。また充填空間15内の高圧水素を外方へ放出する際、内容器12を半径方向外方へ大きく膨張変形させることができる。そしていずれの場合も、外容器11の半径方向外方への膨張変形を抑えることができ、あるいは外容器11の半径方向内方への圧縮変形を抑えることができる。このため充填空間15内へ高圧水素を充填する際、あるいは充填空間15内の水素を排出する際、いずれの場合も外容器の変形を抑えてモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。
【0092】
また外容器11の外容器本体11aの外面に強化プラスチックファイバ11cが巻き付けられているため、外容器本体11aを外方から保護強化することができる。このため充填空間15内に水素を充填する際、外容器本体11aが半径方向外方へ膨張変形することをより確実に防ぐことができる。
【0093】
さらにまた、外容器11内に内容器12が配置され、この内容器12の上部12bが外容器11の端板16を貫通する第1取付部20に固着されている。また内容器12の底部12aが外容器11の端板17を貫通する第2取付部30に固着されている。このため外容器11内において内容器12を上部12bおよび底部12aにおいて、堅固に外容器11に固定することができる。
【0094】
また内容器12内には圧力調整弁25から圧力調整用の水素が充填されている。このため、充填空間15内の高圧水素が内容器12内の水素と混じり合っても充填空間15内の高圧水素の純度が低下することはない。
【0095】
また内容器12内に充填された圧力調整用の水素の圧力を圧力調整弁25を介して調整することにより、充填空間15内に水素を充填する際の内容器12の変形量を調整することができる。このことにより、外容器の変形をより確実に抑えることができる。
【0096】
また水素充填容器10の外容器11の上部に内容器12内に連通する圧力調整弁25を設け、外容器11の下部に充填空間15内に連通する開閉弁35を設けた。このことにより、圧力調整弁25および開閉弁35を互いに離間し、かつ互いに独立して設けることができる。このことにより、例えば圧力調整弁25と開閉弁35を外容器11の上部に一体に設ける場合に比べて、外容器11に対する圧力調整弁25および開閉弁35の取り付け構造を、簡略化することができる。
【0097】
<第2の実施の形態>
以下、図面を参照して本開示の第2の実施の形態について説明する。
【0098】
図4乃至図5は本開示の第2の実施の形態を示す図である。
【0099】
なお、図4乃至図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図3および図6に示す第1の実施の形態と同一部分については、同一符号を付して説明する。
【0100】
図4乃至図5に示すように、水素充填容器10は合成樹脂製、例えば、ポリカーボネート(PC)、またはアクリル系のポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む外容器11と、外容器11内に配置され、外容器11との間に水素が充填される充填空間15を形成する合成樹脂製、例えばポリウレタン(PU)からなる内容器12とを備えている。
【0101】
このうち外容器11は、図6に示すようにポリカーボネート(PC)またはアクリル系のポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる外容器本体11aと、外容器本体11a内面に設けられた少なくともモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bと、外容器本体11a外面に巻き付けられた強化プラスチックファイバ11cとを有する。
【0102】
外容器11の外容器本体11aは、外容器11の基本的構成要素であって、充填空間15内に充填される水素ガス(以下、水素ともいう)を収容するものである。水素は後述するように、例えば40MPa~100MPa、好ましくは40MPa~50MPaの圧力をもって充填空間15内に充填されるため、このような高圧の水素を収容することができるよう外容器11は所望の縦弾性係数および所望の厚みを有する。
【0103】
また強化プラスチックファイバ11cは、例えばカーボンファイバ等の強化プラスチックの繊維からなり、外容器本体11aの外面に巻き付けられて外容器本体11aを外方から保護強化する。
【0104】
さらに内容器12はポリウレタン(PU)からなるとともに、所望の縦弾性係数および所望の厚みを有し、高圧の水素が充填空間15内に充填された際、内方へ圧縮変形して、外容器11の外方への膨張変形を防ぐよう機能する。
【0105】
すなわち、外容器11のモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bは粘土状に形成された後、外容器本体11a内面に塗布、乾燥して得られ、弾性の低い材料となっている。このため高圧の水素が充填空間15内に充填された際、内容器12が内方へ圧縮変形することにより、外容器11の外方への膨張変形を抑え、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bが外容器本体11a内面から、脱落することを未然に防ぐことができる。
【0106】
本実施の形態において外容器11と内容器12との間の充填空間15内に、例えば40MPa~100MPaの水素(第1ガス)が充填され、内容器12内には圧力調整用の例えば0.1MPa~0.15MPaの水素(第2ガス)が充填される。
【0107】
この場合、充填空間15内に充填された水素と、外方の大気を合わせて40MPa~100MPaの内圧が外容器11内面に加わる。また充填空間15内に充填された水素と、内容器12内の圧力調整用水素を合わせて、外容器11内面の内圧と略同一の圧力をもつ外圧が内容器12外面に加わる。
【0108】
本実施の形態において、(外容器11の外容器本体11aの縦弾性係数E1×外容器の外容器本体11aの厚みt1)>(内容器12の縦弾性係数E2×内容器の厚みt2)となっている。このため、水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、内容器12が内方へ圧縮して大きく変形する。このことにより、充填空間15内に高圧水素を充填した際の充填空間15内の圧力変動を内容器12の半径方向内方への圧縮変形により吸収することができる。このことにより外容器11の外方への膨張変形を抑えて、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bが外容器本体11a内面から脱落することを未然に防ぐことができる。
【0109】
次に図4乃至図5により外容器11と内容器12との間の充填空間15および内容器12内に水素を供給する構造について述べる。
【0110】
外容器11の外容器本体11aは円筒形状をもつ胴部15Aと、胴部15Aの両端に設けられた一対の端板16,17とを有する。そして一方の端板16を貫通して第1取付部20が設けられ、他方の端板17を貫通して第2取付部30が設けられている。
【0111】
このうち第1取付部20は図2に示すように、一方の端板16を貫通する口部21と、口部21に取り付けられたフランジ22とを有する。第1取付部20の口部21の内方に内容器12の上部12bが接着されている。また第1取付部20のフランジ22は一方の端板16の内面に固着されている。
【0112】
このことにより第1取付部20はフランジ22を介して一方の端板16に固着され、第1取付部20の口部21に内容器12の上部12bが固着されている。
【0113】
また第1取付部20の口部21の外方には、内容器12内に充填する水素に関し、その圧力調整を行う圧力調整弁25が接続されている。そしてこの圧力調整弁25によって内容器12内の水素が0.1MPa~0.15MPaに調整される。
【0114】
また図5に示すように、外容器11の他方の端板17を貫通して第2取付部30が設けられ、この第2取付部30は他方の端板17の内面に固着されるフランジ31を有する。このフランジ31には他方の端板17を貫通する蓋体32が取り付けられている。そして蓋体32の外方には外容器11内に水素を供給する開閉弁35が接続されている。
【0115】
そして図示しない水素供給系から供給される高圧の水素が開閉弁35を介して蓋体32とフランジ31との間の空間に送られる。その後蓋体32とフランジ31との間の空間32aからフランジ31に形成された供給孔31aを介して外容器11と内容器12との間の充填空間15内に高圧、例えば40MPa~100MPaの水素が供給される。
【0116】
なお、図5に示すように、図3に示す第1の実施の形態と異なって、フランジ31には取付リング33が設けられることはなく、内容器12の底部12aはフランジ31および端板16から離間している。
【0117】
このように内容器12の底部12aがフランジ31および端板16から離間することにより、後述のように充填空間15内に水素を充填する際、内容器12を半径方向内方へ容易に圧縮変形させることができる。このことにより、外容器11の膨張変形を確実に抑えることができる。
【0118】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0119】
まず図4に示すように水素充填容器10の内容器12内に、図示しない水素供給系から圧力調整弁25を介して水素(第2ガス)が供給され、内容器12内の水素が例えば、0.15MPaに調整される。
【0120】
この場合、内容器12の内圧は外容器11内の大気圧(0.1MPa)より大きな圧力となる。そして内容器12は変形し易いポリウレタン(PU)からなるため外容器11内に配置された内容器12はわずかに外容器11内で半径方向外方へ膨張する(図4の実線)。
【0121】
その後、外容器11と内容器12との間の充填空間15内に、図示しない水素供給系から開閉弁35を介して高圧、例えば40MPa~100MPaの水素(第1ガス)が供給される。
【0122】
この場合、まず開閉弁35を介して供給された水素は、フランジ31と蓋体32との間の空間32a内に入り、この空間32aからフランジ31に形成された供給孔31aを介して外容器11と内容器12との間の充填空間15内に供給される。このとき、充填空間15内には例えば40MPa~100MPaの高圧の水素が供給される。
【0123】
水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、充填空間15内に圧力変動が生じるが、この場合、変形し易い内容器12を半径方向内方へ大きく圧縮変形させることができる。このため、変形し易い外容器11の外方への膨張変形を抑えてモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。
【0124】
また水素充填容器10内の水素を使用するに際し、水素充填容器10の充填空間15内から水素が徐々に開閉弁35を介して放出される。この場合も充填空間15内に圧力変動が生じるが、この場合も内容器12を半径方向外方へ大きく膨張変形させることができる。このため外容器11の内方への圧縮変形を抑えて、モンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。
【0125】
以上のように本実施の形態によれば、外容器11は外容器本体11aの内面に設けられ少なくともモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bを有するため、外容器11は高い水素バリア特性をもつことになる。このため水素バリア特性を高めるために外容器11を必要以上に厚肉とする必要はなく、このことにより水素充填容器10全体の軽量化を図ることができ、かつ製造コストの低減を図ることができる。
【0126】
また水素充填容器10の充填空間15内に高圧水素を充填する際、外容器11が半径方向外方へ膨張変形するのに比べて、内容器12を半径方向内方へ大きく圧縮変形させることができる。また充填空間15内の高圧水素を外方へ放出する際、内容器12を半径方向外方へ大きく膨張変形させることができる。そしていずれの場合も、外容器11の半径方向外方への膨張変形を抑えることができ、あるいは外容器11の半径方向内方への圧縮変形を抑えることができる。このため充填空間15内へ高圧水素を充填する際、あるいは充填空間15内の水素を排出する際、いずれの場合も外容器の変形を抑えてモンモリロナイトを含む粘土鉱物膜11bの脱落を防ぐことができる。
【0127】
また外容器11の外容器本体11aの外面に強化プラスチックファイバ11cが巻き付けられているため、外容器本体11aを外方から保護強化することができる。このため充填空間15内に水素を充填する際、外容器本体11aが半径方向外方へ膨張変形することをより確実に防ぐことができる。
【0128】
さらにまた、外容器11内に内容器12が配置され、この内容器12の上部12bが外容器11の端板16を貫通する第1取付部20に固着されている。
【0129】
また内容器12の底部12aはフランジ31および外容器11の端板16から離間し、内容器12の底部12aは自由状態を維持している。このため充填空間15内に水素を充填する際、内容器12を半径方向内方へ容易に圧縮変形させることができる。このことにより外容器11の膨張変形を確実に抑えることができる。
【0130】
また内容器12内には圧力調整弁25から圧力調整用の水素が充填されている。このため、充填空間15内の高圧水素が内容器12内の水素と混じり合っても充填空間15内の高圧水素の純度が低下することはない。
【0131】
また内容器12内に充填された圧力調整用の水素の圧力を圧力調整弁25を介して調整することにより、充填空間15内に水素を充填する際の内容器12の変形量を調整することができる。このことにより、外容器の変形をより確実に抑えることができる。
【0132】
また水素充填容器10の外容器11の上部に内容器12内に連通する圧力調整弁25を設け、外容器11の下部に充填空間15内に連通する開閉弁35を設けた。このことにより、圧力調整弁25および開閉弁35を互いに外容器11の上部と下部に離間し、かつ互いに独立して設けることができる。このことにより、例えば圧力調整弁25と開閉弁35を外容器11の上部に一体に設ける場合に比べて、外容器11に対する圧力調整弁25および開閉弁35の取り付け構造を、簡略化することができ、圧力調整弁25と開閉弁35を互いに独立して取り扱うことができる。
【0133】
<他の変形例>
なお、上述した各実施の形態において、外容器11の外容器本体11aの材料としてポリカーボネート(PC)あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)を用い、内容器12の材料としてポリウレタン(PU)を用いた例を示した。しかしながらこれに限らず外容器本体11aの材料として、比較的縦弾性係数が大きい材料、すなわち変形し難い材料、例えばアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)を用いてもよい。
【0134】
また内容器12の材料として、比較的縦弾性係数が小さい材料、すなわち変形し易い材料、例えばゴム系樹脂を用いてもよい。
【符号の説明】
【0135】
10 水素充填容器
11 外容器
11a 外容器本体
11b 粘土鉱物膜
11c 強化プラスチックファイバ
12 内容器
12a 底部
12b 上部
15 充填空間
16 一方の端板
17 他方の端板
20 第1取付部
21 口部
22 フランジ
25 圧力調整弁
30 第2取付部
31 フランジ
31a 供給孔
32 蓋体
32a 空間
35 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6