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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008640
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】情報通信システム
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20250109BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20250109BHJP
   G06K 7/015 20060101ALI20250109BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20250109BHJP
【FI】
G03H1/22
G06K7/10 268
G06K7/015
G07B15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110972
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】増山 祐子
(72)【発明者】
【氏名】中崎 久美子
(72)【発明者】
【氏名】杉江 健太
(72)【発明者】
【氏名】水野 剛秀
【テーマコード(参考)】
2K008
3E127
【Fターム(参考)】
2K008AA13
2K008CC01
2K008EE04
2K008FF17
2K008HH02
3E127AA03
3E127CA02
3E127DA02
3E127DA06
3E127DA17
3E127DA30
3E127FA43
(57)【要約】
【課題】ICチップを含むICカード等と通信部との接触を避けやすくする。
【解決手段】情報通信システム10は、通信位置15Pに配置されたICチップ5Cと情報を通信する通信部15と、通信部15に重ねられたホログラムシート20と、を備える。ホログラムシート20は、体積反射ホログラム層25を含む。ホログラムシート20は、光を照射されることによって像30を結像位置30Pに結ぶ。通信位置15Pは、通信部15から離れている。結像位置30Pは、通信位置15Pとホログラムシート20との間に位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信位置に配置されたICチップと情報を通信する通信部と、
前記通信部に重ねられたホログラムシートと、を備え、
前記ホログラムシートは、体積反射ホログラム層を含み、
前記ホログラムシートは、光を照射されることによって像を結像位置に結び、
前記通信位置は、前記通信部から離れており、
前記結像位置は、前記通信位置と前記ホログラムシートとの間に位置する、情報通信システム。
【請求項2】
前記ホログラムシートのシート面は、n回対称形状であり、
nは5以上である、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項3】
前記ホログラムシートのシート面は、直径9cm以上の円形を内包可能な形状である、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項4】
前記ホログラムシートは、自己吸着層を含み、
前記自己吸着層は、前記通信部と接触している、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項5】
前記ホログラムシートが前記像を結ぶ方向の当該ホログラムシートの法線方向に対する角度は、45°以上である、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項6】
前記ホログラムシートが前記像を結ぶ光の入射角度は、45°以上である、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項7】
前記ホログラムシートに照射される光は、環境光である、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項8】
前記環境光は、白色である、請求項7に記載の情報通信システム。
【請求項9】
ICチップと情報を通信する通信部に重ねられるホログラムシートであって、
体積反射ホログラム層を含む、ホログラムシート。
【請求項10】
当該ホログラムシートのシート面は、n回対称形状であり、
nは5以上である、請求項9に記載のホログラムシート。
【請求項11】
当該ホログラムシートのシート面は、直径9cm以上の円形を内包可能な形状である、請求項9に記載のホログラムシート。
【請求項12】
自己吸着層をさらに含む、請求項9に記載のホログラムシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばICチップを含むICカードとカードリーダ部のような通信部との間で情報を通信できる情報通信システムが知られている。通信部から離れた読み取り位置にICカードをかざすことで、通信部とICカードとを接触させることなく、情報を通信できる。例えば特許文献1には、情報通信システムを有するセキュリティゲートが記載されている。セキュリティゲートは、通信にかざされたICカードに記録された人物情報等が適正であることが確認されると、扉を開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-085004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICチップを含むICカードと通信部とが非接触で情報を通信できるにもかかわらず、利用者がICカードと通信部とを接触させることが多い。ICカードと通信部との接触は、接触時の衝撃によるICカードや通信部の故障や傷つき、菌やウイルス等が接触によって広まることの原因となり得る。本開示は、ICチップを含むICカード等と通信部との接触を避けやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の情報通信システムは、
通信位置に配置されたICチップと情報を通信する通信部と、
前記通信部に重ねられたホログラムシートと、を備え、
前記ホログラムシートは、体積反射ホログラム層を含み、
前記ホログラムシートは、光を照射されることによって像を結像位置に結び、
前記通信位置は、前記通信部から離れており、
前記結像位置は、前記通信位置と前記ホログラムシートとの間に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ICチップを含むICカード等と通信部との接触を避けやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、情報通信システムが適用された装置の一例としてのゲート装置を示す斜視図である。
図2図2は、情報通信システムと情報を通信するICチップを含むICカードを示す正面図である。
図3図3は、情報通信システムの正面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った情報通信システムの断面図である。
図5図5は、ホログラムシートが結ぶ像の第1の例である。
図6図6は、ホログラムシートが結ぶ像の第2の例である。
図7図7は、ホログラムシートが結ぶ像の第3の例である。
図8図8は、ホログラムシートが結ぶ像の第4の例である。
図9図9は、情報通信システムが含むホログラムシートの断面図である。
図10図10は、ホログラムシートが含む体積反射ホログラム層の製造方法を説明するための図である。
図11図11は、ホログラムシートが含む体積反射ホログラム層の製造方法を説明するための図である。
図12図12は、ホログラムシートが含む体積反射ホログラム層の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張していることがある。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0009】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等は、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0010】
本明細書において、「シート」、「フィルム」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。例えば「透明板」は、「透明フィルム」又は「透明シート」と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0011】
本明細書において、シート状の部材の法線方向とは、対象となるシート状の部材のシート面への法線方向のことを指す。また、「シート面」とは、対象となるシート状の部材を全体的且つ大局的に見た場合において対象となるシート状部材と一致する面のことを指す。「シート」を「フィルム」または「板」等と読み替えた場合も同様である。
【0012】
本明細書において、パラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータは、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせた数値範囲であってもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[12]に関する。
[1]
通信位置に配置されたICチップと情報を通信する通信部と、
前記通信部に重ねられたホログラムシートと、を備え、
前記ホログラムシートは、体積反射ホログラム層を含み、
前記ホログラムシートは、光を照射されることによって像を結像位置に結び、
前記通信位置は、前記通信部から離れており、
前記結像位置は、前記通信位置と前記ホログラムシートとの間に位置する、情報通信システム。
[2]
前記ホログラムシートのシート面は、n回対称形状であり、
nは5以上である、[1]に記載の情報通信システム。
[3]
前記ホログラムシートのシート面は、直径9cm以上の円形を内包可能な形状である、[1]または[2]に記載の情報通信システム。
[4]
前記ホログラムシートは、自己吸着層を含み、
前記自己吸着層は、前記通信部と接触している、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の情報通信システム。
[5]
前記ホログラムシートが前記像を結ぶ方向の当該ホログラムシートの法線方向に対する角度は、45°以上である、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の情報通信システム。
[6]
前記ホログラムシートが前記像を結ぶ光の入射角度は、45°以上である、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の情報通信システム。
[7]
前記ホログラムシートに照射される光は、環境光である、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の情報通信システム。
[8]
前記環境光は、白色である、[7]に記載の情報通信システム。
[9]
ICチップと情報を通信する通信部に重ねられるホログラムシートであって、 体積反射ホログラム層を含む、ホログラムシート。
[10]
当該ホログラムシートのシート面は、n回対称形状であり、
nは5以上である、[9]に記載のホログラムシート。
[11]
当該ホログラムシートのシート面は、直径9cm以上の円形を内包可能な形状である、[9]または[10]に記載のホログラムシート。
[12]
自己吸着層をさらに含む、[9]乃至[11]のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【0014】
図1には、一実施の形態の情報通信システム10が適用された装置の一例として、ゲート装置1が示されている。ゲート装置1は、駅の改札や病院、図書館等の公共施設、映画館等のアミューズメント施設、宿泊施設、企業の通用口等の、特定の人物のみが立ち入ることのできる施設に設置される。図2には、ICチップ5Cを含むICカード5が示されている。ICカード5は、特定の人物が所有する。ICチップ5Cには、例えば所有者に関連する情報が記録されている。ICカード5を情報通信システム10にかざすことで、ICチップ5Cと情報通信システム10とが情報を通信する。ICカード5と情報通信システム10とは、接触することなく情報を通信できる。情報通信システム10がICチップ5Cから読み取った情報が適正であることが確認されると、言い換えるとゲート装置1を通過してよい人物であると判断されると、ゲート装置1は、扉3を開く。ICカード5の所有者はゲート装置1を通過できる。
【0015】
図示されている例に限らず、情報通信システム10は、ゲート装置1以外の任意の装置に適用され得る。例えば、情報通信システム10は、クレジットカードの決済装置に適用されてもよい。ICチップ5Cは、ICカード5以外のものに含まれていてもよい。例えば、ICチップ5Cは、携帯端末に含まれていてもよい。ICチップ5Cに記録されている情報は、人物情報に限られない。ICチップ5Cは、例えばチャージされた金額の情報を記録していてもよい。情報通信システム10は、ICチップ5Cから情報を読み取るだけでなく、ICチップ5Cに情報を書き込んでもよい。
【0016】
図3は、情報通信システム10の正面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った情報通信システム10の断面図である。図3および図4に示すように、情報通信システム10は、筐体13と、通信部15と、ホログラムシート20と、を含んでいる。筐体13は、通信部15を保持している。筐体13は、図1に示されているようなゲート装置1の筐体であってもよい。ホログラムシート20は、通信部15に重ねられている。ホログラムシート20は、通信部15の全体を覆うように重ねられていてもよい。
【0017】
通信部15は、通信位置15Pに配置されたICチップ5Cと情報を通信する。通信位置15Pは、通信部15から離れている。通信部15と通信位置15Pとの間の距離は、0.1cm以上であってもよいし、5cm以下であってもよい。
【0018】
通信部15は、例えば図示しないアンテナを含んでいる。ICチップ5Cを含むICカード5等も、ICチップ5Cに接続された図示しないアンテナを含んでいる。通信部15のアンテナに電流が流れることで、電磁界が発生する。ICチップ5Cに接続されたコイルが磁場に十分に近づくと、具体的には通信位置15Pより通信部15に近づくと、電磁誘導により、ICチップ5Cに接続されたアンテナに電流が流れる。アンテナからICチップ5Cに電流が流れる。電磁界を変化させ、電磁誘導を行うことにより、通信部15は、通信位置15Pに配置されたICチップ5Cと情報を通信できる。
【0019】
ホログラムシート20は、光を照射されると像30を結像位置30Pに結ぶ。結像位置30Pは、ホログラムシート20から離れている。ホログラムシート20は、特定の波長の光を回折することで特定の角度で入射した光を所定の結像位置30Pに向かわせる。ホログラムシート20は、光を反射させながら像30を結ぶ。筐体13や通信部15が光を発しても、ホログラムシート20が結ぶ像30には影響しない。利用者は、ホログラムシート20が結ぶ像30とともに、筐体13や通信部15が発する光を観察できる。筐体13や通信部15の利便性を向上できる。
【0020】
ホログラムシート20に光を照射する光源7が、図1および図4に示されている。ホログラムシート20に照射される光Lは、環境光であってもよい。光源7は、太陽や複数の電灯であってもよい。環境光は、複数の光源からの光であってもよい。環境光は、白色であってもよい。ホログラムシート20に照射される光Lは、ホログラムシート20が像30を結ぶ波長を含んでいる。
【0021】
ホログラムシート20には、像30の形状、結像位置30P、像30を結ぶ光の波長、像30を結ぶ光の入射角度、及び、像30を結ぶ方向のホログラムシート20の法線方向ndに対する角度が、あらかじめ記録されている。ホログラムシート20と結像位置30Pとの間の距離は、0.1cm以上であってもよいし、3cm以下であってもよい。ホログラムシート20が像30を結ぶ光の波長は、380nm以上であってもよいし、780nm以下であってもよい。ホログラムシート20が像30を結ぶ光の入射角度は、45°以上であってもよい。ホログラムシート20が像30を結ぶ方向のホログラムシート20の法線方向ndに対する角度は、45°以上であってもよい。
【0022】
図5乃至図8には、ホログラムシート20が結ぶ像30の形状の例がそれぞれ示されている。ホログラムシート20が結ぶ像30の各例について説明する。
【0023】
図5に示されている第1の例では、像30は、規則的に配置された複数の同一の点からなるパターンである。第1の例の像30によれば、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識できる。図示されている例に限らず、パターンにおいて、複数の点は不規則に配置されていてもよい。
【0024】
ホログラムシート20の向きが変わると、ホログラムシート20が結ぶ像30の向きも変わる。第1の例では、像30が同一の点からなるため、ホログラムシート20の向きが変わっても、各点の位置が変わるのみで、各点の向きは変わらない。第1の例では、ホログラムシート20の向きが変わっても、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識できる。
【0025】
図6に示されている第2の例では、像30は、規則的に配置された複数の点であって、中心に近づくにつれて大きくなっている点からなるパターンである。第2の例の像30によれば、像30が結ばれている結像位置30P及びその中心を容易に認識できる。図示されている例に限らず、パターンにおいて、複数の点は不規則に配置されていてもよい。
【0026】
第2の例では、複数の点は中心に近づくにつれて大きくなっているため、ホログラムシート20の向きが変わっても、各点の位置が変わるのみで、各点の向きは変わらない。複数の点は中心に近づくにつれて大きくなることも変わらない。第2の例では、ホログラムシート20の向きが変わっても、像30が結ばれている結像位置30P及びその中心を容易に認識できる。
【0027】
図7に示されている第3の例では、像30は、意匠を示す1つの形状からなるパターンである。図示されている例では、意匠を示す形状は、太陽のような形状である。具体的には、意匠を示す形状は、円形と、円形の周囲に等間隔に配置された8個の二等辺三角形形状と、を含んでいる。図示されている例に限らず、意匠を示す形状は、文字や図形、記号またはそれらの組み合わせであってもよい。意匠を示す形状は、n回対称形状であってもよい。nは5以上であってもよい。図示されている例では、nは8である。第3の例の像30によれば、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識でき、且つ像30により情報通信システム10に優れた意匠を付与できる。
【0028】
第3の例では、意匠を示す形状がn回対称形状であるため、ホログラムシート20の向きが変わっても、像30の向きが変わっても、像30への認識はほとんど変化しない。第3の例では、ホログラムシート20の向きが変わっても、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識でき、且つ像30により情報通信システム10に優れた意匠を付与できる。
【0029】
図8に示されている第4の例では、像30は、規則的に配置された意匠を示す複数の形状からなるパターンである。図示されている例では、意匠を示す形状は、飛行機のような形状である。意匠を示す形状は、文字や図形、記号またはそれらの組み合わせであってもよい。第4の例の像30によれば、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識でき、且つ像30により情報通信システム10に優れた意匠を付与できる。図示されている例に限らず、パターンにおいて、複数の意匠を示す形状は不規則に配置されていてもよいし、複数の意匠を示す形状の向きも不規則であってもよい。
【0030】
図示されている例では、意匠を示す形状は同一の向きであるが、各形状が不規則に異なる向きであってもよい。この場合、ホログラムシート20の向きが変わっても、像30への認識はほとんど変化しない。ホログラムシート20の向きが変わっても、像30が結ばれている結像位置30Pを容易に認識でき、且つ像30により情報通信システム10に優れた意匠を付与できる。
【0031】
図示されている例に限らず、ホログラムシート20が結ぶ像30は、任意の形状であってもよい。
【0032】
ホログラムシート20に照射される光が2つ以上の環境光である場合、像30は、パターンが互いにずれた状態で複数重なって結ばれ得る。第1の例、第2の例及び第4の例の像30においてパターンが互いにずれた状態で複数重なって結ばれても、像30への認識はほとんど変化しない。ホログラムシート20に照射される光が環境光であっても、結像位置30Pを容易に認識できる。
【0033】
ホログラムシート20のシート面20Sは、ICチップ5Cを含むICカード5より大きくてもよい。具体的には、ホログラムシート20のシート面20Sは、直径9cm以上の円形を内包可能な形状であってもよい。ホログラムシート20のシート面20Sは、直径10cm以上の円形を内包可能な形状であってもよい。直径9cm以上の円形を内包可能な形状とは、当該形状の内部において、直径9cm以上の円形を配置可能であることを意味している。ホログラムシート20のシート面20Sは、n回対称形状であってもよい。n回対称形状とは、ある点を中心に[360/n]°回転させると自らと一致する形状である。nは、5以上であってもよいし、8以上であってもよいし、10以上であってもよい。図3に示されている例では、ホログラムシート20のシート面20Sは、円形である。円形では、n回対称形状のnは無限大である。
【0034】
図9には、ホログラムシート20の断面図が示されている。図9に示されているように、ホログラムシート20は、表面層27と、体積反射ホログラム層25と、接合層23と、基材21と、自己吸着層29と、をこの順で含んでいる。ホログラムシート20は、他の層を含んでいてもよい。ホログラムシート20の厚みは、100μm以上であってもよいし、1mm以下であってもよい。
【0035】
基材21は、体積反射ホログラム層25を支持する。基材21は、薄板状である。基材21は、透明である。基材21の厚みは、透明性、体積反射ホログラム層25の適切な支持性及び耐久性等を考慮すると、10μm以上100μm以下であってもよい。基材21の材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィンであってもよい。
【0036】
透明とは、当該部材の380nm以上780nm以下の波長における透過率が、40%以上、70%以上または80%以上であることを意味している。
【0037】
接合層23は、基材21と体積反射ホログラム層25とを接合する。接合層23は、透明である。接合層23は、接着性または粘着性を有する。接合層23の厚みは、5μm以上50μm以下であってもよい。接合層23の材料は、アクリル系粘着材であってもよい。
【0038】
体積反射ホログラム層25は、入射した光を反射しながら回折することで、結像位置30Pに像30を結ぶ。体積反射ホログラム層25を含むホログラムシート20を介して、通信部15を観察できる。体積反射ホログラム層25は、通信部15が外部から観察されることを阻害しにくい。体積反射ホログラム層25は、金属を含まない。体積反射ホログラム層25によって、通信部15がICチップ5Cと情報を通信することが阻害されない。体積反射ホログラム層25の厚みは、1μm以上であってもよいし、5μm以上であってもよいし、100μm以下であってもよいし、40μm以下であってもよい。体積反射ホログラム層25は、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマーが硬化したものであってもよい。
【0039】
表面層27は、ホログラムシート20の表面をなしており、体積反射ホログラム層25を外部から保護する。表面層27は、透明である。表面層27の厚みは、10μm以上であってもよいし、100μm以下であってもよい。表面層27は、何らかの機能を付与されていてもよい。表面層27に付与され得る機能は、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能、接合機能であってもよい。表面層27の材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィンであってもよい。
【0040】
自己吸着層29は、ホログラムシート20を筐体13に吸着させて固定する。自己吸着層29は、通信部15と接触していてもよい。自己吸着層29は、複数の微細孔を含む。微細孔から空気が抜けることで、自己吸着層29は他の部材に吸着する。自己吸着層29は、一度吸着した部材から剥離することができ、剥離した後にも再度吸着可能である。自己吸着層29は、透明であってもよい。自己吸着層29の厚みは、10μm以上であってもよいし、100μm以下であってもよい。自己吸着層29の材料は、シリコン系粘着剤やポリウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤であってもよい。
【0041】
通信位置15Pは、結像位置30Pによって示される。図4に示されているように、結像位置30Pは、通信位置15Pとホログラムシート20との間に位置している。言い換えると、ホログラムシート20と結像位置30Pとの間の長さは、ホログラムシート20と通信位置15Pとの間の長さより短い。結像位置30Pと通信位置15Pとの間の長さは、0.1cm以上であってもよいし、3cm以下であってもよい。
【0042】
情報通信システム10は、図示しない表示物をさらに含んでいてもよい。表示物は、ICチップ5Cを通信部15に接触させなくても、通信部15がICチップ5Cと情報を通信できることを示唆する文言を表示してもよい。ホログラムシートが結ぶ像が緑色であり、ICカードがICチップを含む場合、表示物は、例えば「緑の光にカードを触れてください」といった文字を表示してもよい。
【0043】
次に、体積反射ホログラム層25及びホログラムシート20の製造方法について、図10乃至図12を参照しながら説明する。
【0044】
図10に示すように、ガラス等からなる第1基板51上にホログラム感材57a及びパターンマスク53を設ける。ホログラム感材57aの材料は、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマーであってもよいが、フォトポリマーであることが好ましい。フォトポリマーは、紫外線を照射されることで硬化する乾式材料からなり、量産性に優れる。フォトポリマーは、少なくとも一種の光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含んでもよい。パターンマスク53は、開口部53aを有しており、開口部53aが設けられていない部分では光を遮光するが、開口部53aが設けられている部分では光を透過させる。パターンマスク53は、開口部53aによって、ホログラムシート20が像30を結ぶ位置に対応したパターン形状を形成している。例えば、ホログラムシート20が結ぶ像30に重なる位置において、パターンマスク53には開口部53aが設けられていない。
【0045】
図10に矢印で示すように、パターンマスク53を介して紫外線を照射する。パターンマスク53の開口部53aが設けられていない部分では、紫外線は遮られる。開口部53aが設けられている部分では、紫外線は、パターンマスク53を透過して、ホログラム感材57aに照射される。紫外線を照射されたホログラム感材57aは、硬化する。ホログラム感材57aは、パターンマスク53に対応したパターン形状以外の部分で硬化する。ホログラム感材57aの硬化した部分は、ホログラムを記録しない不感部分57bとなる。後にホログラムを結像するための光を照射しても、不感部分57bにおいてはホログラムが結像されなくなる。
【0046】
図11に示すように、パターンマスク53を除去する。第1基板51のホログラム感材57aとは逆側に第1ホログラム原版55を配置する。ホログラム感材57aと第1ホログラム原版55との間に、第1基板51が位置している。第1ホログラム原版55には、全体にホログラムが記録されている。図11に矢印で示すように、ホログラム感材57aに光、特に平行光束を照射する。ホログラム感材57aに直接照射される光が参照光として、またホログラム感材57aをいったん透過して第1ホログラム原版55で回折された回折光が物体光として、ホログラム感材57aに入射する。物体光と参照光とが干渉することにより、ホログラム感材57aにおいて明暗パターンである干渉縞が生成される。感光性を有したホログラム感材57aにおいて、干渉縞が記録される。不感部分57bでは干渉縞が記録されない。ホログラムシート20が結ぶ像30に重なる位置において干渉縞が記録されることで、ホログラム感材57aから第2ホログラム原版57が製造される。
【0047】
ホログラム感材57aに照射される光、すなわち物体光及び参照光は、アルゴンイオンレーザー(波長457.9nm、476.5nm、488.0nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(波長647.1nm)、ヘリウム-ネオンレーザー(波長632.8nm)、YAGレーザー(波長532nm)であってもよい。照射される波長の光は、ホログラムシート20が像30を結ぶ際にホログラムシート20に照射される光に含まれる。
【0048】
図12に示すように、体積反射ホログラム層25を形成する第2ホログラム感材25aと上述した工程で製造された第2ホログラム原版57とを離して配置する。第2ホログラム感材25aと第2ホログラム原版57との間の距離は、製造される体積反射ホログラム層25が像30を結ぶ結像位置30Pと体積反射ホログラム層25ひいてはホログラムシート20との間の距離となる。第2ホログラム感材25aと第2ホログラム原版57との間の距離を調節することで、体積反射ホログラム層25が像30を結ぶ結像位置30Pとホログラムシート20との間の距離を調節できる。図12に示されている例では、第2ホログラム感材25aと第2ホログラム原版57との間を所望の距離で離れさせるために、第2ホログラム感材25aと第2ホログラム原版57との間にガラスや透明樹脂等からなる第2基板52が設けられている。図示されている例に限らず、第2ホログラム感材25aと第2ホログラム原版57との間は、所望の距離で離れていれば、空気等であってもよい。図12に矢印で示すように、第2ホログラム感材25aに光を照射することで、上述した第2ホログラム原版57の製造工程と同様に、第2ホログラム感材25a内に明暗パターンである干渉縞が生成される。干渉縞は、第2ホログラム原版57において干渉縞が生成されている位置、すなわちホログラムシート20が結ぶ像30に重なる位置に生成される。このようにして、体積反射ホログラム層25が製造される。
【0049】
製造された体積反射ホログラム層25を接合層23を介して基材21に接合させ、基材21の体積反射ホログラム層25とは逆側に自己吸着層29を設ける。体積反射ホログラム層25の基材21とは逆側に表面層27を設ける。以上の工程で、図9に示されたホログラムシート20が製造される。自己吸着層29が意図せずに他の部材に粘着することを防止するため、自己吸着層29に剥離可能なセパレータを重ねてもよい。
【0050】
ホログラムシート20からセパレータを剥離して、通信部15に重なるように筐体13にホログラムシート20を貼り付ける。これにより、図3及び図4に示されている情報通信システム10が製造される。
【0051】
従来の情報通信システムの利用者は、ICチップを含むICカードを通信部にかざすことで、通信部がICチップと情報を通信すると認識する。利用者は、ICチップを含むICカードを通信部にかざす際に、かざす勢いで意図せずに、あるいは通信部がICチップと確実に情報を通信させることができるとの考えから意図して、ICカードを通信部に接触させることがある。ICカードが通信部に接触すると、接触の衝撃によりICチップ及び通信部のいずれか、あるいは両方が故障することがある。ICカードが通信部に接触すると、ICカードから通信部に、あるいは通信部からICカードに、菌やウイルスなどが移ることがある。このことは、感染症の拡大の原因になり得る。ICカードを通信部に接触させないために、利用者が通信部の通信位置を適切に認識することが望まれる。
【0052】
一実施の形態の情報通信システム10は、通信部15に重ねられたホログラムシート20を含んでいる。ホログラムシート20は、光を照射されることによって像30を結像位置30Pに結ぶ。結像位置30Pは、通信位置15Pとホログラムシート20との間に位置する。ICカード5を結像位置30PにかざすとICカード5が通信位置15Pを通過するため、通信部15がICチップ5Cと情報を通信できる。利用者は、結像位置30Pにホログラムシート20が結ぶ像30を観察する。利用者は、像30を観察することにより、目視ではわかりにくい通信位置15Pを認識できる。利用者は、像30にICチップ5Cを含むICカード5をかざすことで、通信部15がICチップ5Cと情報を通信できることを認識する。利用者は、通信部15ではなく、像30にICカード5をかざそうとする。ICチップ5Cを含むICカード5等と通信部15との接触を避けやすくできる。
【0053】
一実施の形態において、ホログラムシート20のシート面20Sの形状は、n回対称形状であり、nは5以上であってもよい。ホログラムシート20が結ぶ像30が適切な向きとなるように、ホログラムシート20の向きを通信部15に対して変えても、ホログラムシート20の向きに違和感なく、ホログラムシート20を通信部15に重ねることができる。ホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が適切に観察できる。
【0054】
一実施の形態において、ホログラムシート20のシート面20Sは、直径9cm以上の円形を内包可能な形状であってもよい。ホログラムシート20が十分な大きさであるため、ホログラムシート20が結ぶ像30も十分な大きさとなる。利用者が像30を観察しやすくなる。ホログラムシート20が結ぶ像30が、ホログラムシート20の向きによらず、ICチップ5Cを含むICカード5より大きくなる。利用者が像30にICチップ5Cを含むICカード5をかざしやすくなる。
【0055】
一実施の形態において、ホログラムシート20は、自己吸着層29を含んでもよい。自己吸着層29は、通信部15と接触していてもよい。ホログラムシート20を通信部15から剥離して再度自己吸着層29を通信部15と接触させることで、ホログラムシート20を通信部15に重ねることができる。ホログラムシート20が結ぶ像30が適切な向きでない場合でも、ホログラムシート20が結ぶ像30が適切な向きとなるように、ホログラムシート20の向きを修正できる。ホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が適切に観察できる。
【0056】
一実施の形態において、ホログラムシート20が像30を結ぶ方向のホログラムシート20の法線方向ndに対する角度は、45°以上であってもよい。通信部15の設置の態様によらず、通信部15に重ねられたホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が容易に観察できる。
【0057】
一実施の形態において、ホログラムシート20が像30を結ぶ光の入射角度は、45°以上であってもよい。情報通信システム10の周囲において光を遮るもの、例えば通行人が通過しても、ホログラムシート20が像30を結ぶための光が妨げられにくい。ホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が容易に観察できる。
【0058】
一実施の形態において、ホログラムシート20に照射される光は、環境光であってもよい。情報通信システム10が設置される位置によらずに、ホログラムシート20が像30を結ぶことができる。ホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が容易に観察できる。
【0059】
一実施の形態において、環境光は、白色であってもよい。白色の光は、任意の波長の光を含み得る。ホログラムシート20が像30を結ぶ光の波長を含み得る。ホログラムシート20が像30を結ぶ光の波長によらずに、環境光を照射されたホログラムシート20が像30を結ぶことができる。ホログラムシート20が結ぶ像30を利用者が容易に観察できる。
【0060】
一実施の形態の情報通信システム10は、通信位置15Pに配置されたICチップ5Cと情報を通信する通信部15と、通信部15に重ねられたホログラムシート20と、を備える。ホログラムシート20は、体積反射ホログラム層25を含む。ホログラムシート20は、光を照射されることによって像30を結像位置30Pに結ぶ。通信位置15Pは、通信部15から離れている。結像位置30Pは、通信位置15Pとホログラムシート20との間に位置する。一実施の形態の情報通信システム10によれば、ICカード5を結像位置30PにかざすとICカード5が通信位置15Pを通過するため、通信部15がICチップ5Cと情報を通信できる。体積反射ホログラム層25は、通信部15のICチップ5Cとの情報の通信を阻害しない。利用者は、像30にICチップ5Cを含むICカード5をかざすことで、通信部15がICチップ5Cと情報を通信できることを認識する。ICチップ5Cを含むICカード5等と通信部15との接触を避けやすくできる。
【0061】
一実施の形態を説明してきたが、上述の一実施の形態は本開示を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の態様で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0062】
情報通信システム10は、ゲート装置1に限らず、種々の装置に適用できる。情報通信システム10は、決済処理や解錠のための通信端末に適用されてもよい。通信部15を保持する筐体13は、通信端末の筐体であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ゲート装置
5 ICカード
5C ICチップ
7 光源
10 情報通信システム
13 筐体
15 通信部
15P 通信位置
20 ホログラムシート
20S シート面
21 基材
23 接合層
25 体積反射ホログラム層
27 表面層
29 自己吸着層
30 像
30P 結像位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12