(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008643
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット
(51)【国際特許分類】
B62J 41/00 20200101AFI20250109BHJP
B62J 50/30 20200101ALI20250109BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20250109BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62J41/00
B62J50/30
B62M7/02 X
B60K11/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110977
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潔
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB04
3D038AC01
3D038AC14
(57)【要約】
【課題】空気の短絡流れを抑制し放熱性能の向上を図る上で有利な鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットを提供する。
【解決手段】ラジエータ22に、ラジエータ22とラジエータファン24とが並べられた方向と直交する方向である下方から見て、ラジエータ22とラジエータファン24との間の隙間S1を覆う短絡流れ防止板26が設けられている。短絡流れ防止板26が設けられた箇所において、ラジエータ22の周囲からラジエータ22の背面22Bとラジエータファン24との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する空気流、すなわち短絡流れを阻止することができ、停車時や低速走行時におけるラジエータ22を通過する空気量を増加させる上で有利となり、ラジエータ22の放熱性能の向上を図る上で有利となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並べて配置されたラジエータ(22)およびラジエータファン(24)と、前記ラジエータ(22)に取り付けられて前記ラジエータファン(24)を支持するブラケット(42)とを備え、
前記ラジエータファン(24)は、前記ブラケット(42)で支持されるモータ(36)と、前記モータ(36)により回転される複数のファンブレード(38)と、前記複数のファンブレード(38)の外周端に連結されたファンリング(40)とを有する鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットであって、
前記ブラケット(42)に、前記ラジエータ(22)と前記ラジエータファン(24)とが並べられた方向と直交する方向から見て、前記ラジエータ(22)と前記ファンリング(40)との間の隙間(S1)を覆う短絡流れ防止板(26)が一体形成されている、
ことを特徴とする鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット。
【請求項2】
前記短絡流れ防止板(26)は、前記ラジエータ(22)と前記ラジエータファン(24)とが並べられた方向とほぼ直交する方向において対向するように一対設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット。
【請求項3】
前記短絡流れ防止板(26)は、前記隙間(S1)の下方に配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット。
【請求項4】
前記ブラケット(42)は、前記ラジエータ(22)及び前記ラジエータファン(24)の後方において、後方から見て、前記ラジエータ(22)の下方から、前記ラジエータファン(24)の中心までの範囲のみを覆う、泥除け防止板(48)を有し、
前記泥除け防止板(48)は、前記短絡流れ防止板(26)の後端から起立している、
ことを特徴とする請求項3記載の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り車両(自動二輪車、自動三輪車、バギー車および鞍乗りのATV(All Terrain Vehicle:全地形対応車)を含む)または鞍乗りではないATV用ラジエータユニットとして、ラジエータと、その背面に配置されたラジエータファンと、ラジエータファンの周囲と後方を覆うことでラジエータファンによりラジエータに引き込まれる風を導くシュラウドとを備えるものが提案されている。(特許文献1参照)。
上記従来技術では、ラジエータファンはシュラウドに取り付けられ、シュラウドはラジエータに取り付けられている。
一方、シュラウドを備えない鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットも提供されている。
この種の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットは、ラジエータと、ラジエータの後方に配置されたラジエータファンと、ラジエータに取り付けられてラジエータファンを支持するブラケットとを備えている。そして、ラジエータファンは、ブラケットで支持されるモータと、モータにより回転される複数のファンブレードと、複数のファンブレードの外周端に連結されたファンリングとを有している。
前者および後者の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットの何れにおいても、車両の高速走行時には走行風がラジエータを通過することでラジエータから熱が放熱される一方、停車時や低速走行時にはラジエータファンの回転により冷却風をラジエータに通過させることでラジエータから熱が放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者のシュラウドを備える鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットは、車両の高速走行時にシュラウドが空気抵抗となることからラジエータを通過する走行風の流量が低下しラジエータの放熱性能が低下する不利がある。
これに対して、後者の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットは、シュラウドが存在しないため、車両の高速走行時に発生する空気抵抗が少なくラジエータを通過する走行風の流量を確保できることからラジエータの放熱性能を確保する上で有利となる。
しかしながら、後者の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットは、シュラウドが存在しないため、停車時や低速走行時にラジエータファンが回転した際に、ラジエータの背面とファンリングとの間の隙間から流入する、ラジエータを通過せず放熱に寄与しない空気流、すなわち空気の短絡流れが発生することによってラジエータを通過する空気量が低下することが懸念され、ラジエータの放熱性能の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、シュラウドを備えない鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットに関するもので、空気の短絡流れを抑制し放熱性能の向上を図る上で有利な鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、互いに並べて配置されたラジエータ22およびラジエータファン24と、前記ラジエータ22に取り付けられて前記ラジエータファン24を支持するブラケット42とを備え、前記ラジエータファン24は、前記ブラケット42で支持されるモータ36と、前記モータ36により回転される複数のファンブレード38と、前記複数のファンブレード38の外周端に連結されたファンリング40とを有する鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットであって、前記ブラケット42に、前記ラジエータ22と前記ラジエータファン24とが並べられた方向と直交する方向から見て、前記ラジエータ22と前記ファンリング40との間の隙間S1を覆う短絡流れ防止板26が一体形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記短絡流れ防止板26は、前記ラジエータ22と前記ラジエータファン24とが並べられた方向とほぼ直交する方向において対向するように一対設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記短絡流れ防止板26は、前記隙間S1の下方に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ブラケット42は、前記ラジエータ22及び前記ラジエータファン24の後方において、後方から見て、前記ラジエータ22の下方から、前記ラジエータファン24の中心までの範囲のみを覆う、泥除け防止板48を有し、前記泥除け防止板48は、前記短絡流れ防止板26の後端から起立していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、短絡流れ防止板26を設けた箇所において、ラジエータ22の周囲からラジエータ22とファンリング40との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する短絡流れを阻止することができ、停車時や低速走行時におけるラジエータ22を通過する空気量を増加させる上で有利となり、ラジエータ22の放熱性能が向上する。
また、本発明の一実施の形態によれば、短絡流れ防止板26が互いに対向するように2箇所に設けられているので、短絡流れ防止板26が設けられた2箇所において短絡流れを阻止できることから、停車時や低速走行時におけるラジエータ22を通過する空気量を増加させる上でより有利となり、ラジエータ22の放熱性能の向上を図る上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、短絡流れ防止板26が設けられた箇所において、走行時、前輪16ではね上げられた小石のラジエータ22やラジエータファン24への衝突や、前輪16で巻き上げられた泥のラジエータ22やラジエータファン24への付着を防止する泥除け板としても機能し、鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットの耐久性を高める上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、泥除け板48が設けられた箇所において、走行時、ラジエータ22やラジエータファン24への小石の衝突や、ラジエータ22やラジエータファン24への泥の付着を防止する上でより有利となり、鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニット20Cの耐久性を高める上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る鞍乗り車両の前部の概略構成を示す側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットを車両の下方かつ車両の後方から見た斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットのブラケットの斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットにおける短絡流れ防止板の位置関係を模式的に示す説明図であり、(A)はラジエータおよび短絡流れ防止板をラジエータの背面と直交する方向から見た図、(B)は(A)のB矢視図、(C)は(A)のC-C線断面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットのブラケットの斜視図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットにおける短絡流れ防止板の位置関係を模式的に示す説明図であり、(A)はラジエータおよび短絡流れ防止板をラジエータの背面と直交する方向から見た図、(B)は(A)のB矢視図、(C)は(A)のC-C線断面図である。
【
図7】第3の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットを車両の下方かつ車両の後方から見た斜視図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットのブラケットの斜視図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る鞍乗り車両用ラジエータユニットにおける短絡流れ防止板および泥除け板の位置関係を模式的に示す説明図であり、(A)はラジエータ、短絡流れ防止板および泥除け板をラジエータの背面と直交する方向から見た図、(B)は(A)のB矢視図、(C)は(A)のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について
図1-
図4を参照して説明する。
本実施の形態では、本発明の鞍乗り車両またはATV用ラジエータユニットが、鞍乗り車両である自動二輪車に適用された場合について説明するが、本発明は、自動三輪車、自動三輪バギー車、自動四輪バギー車およびATVなどの従来公知の様々な鞍乗り車両または鞍乗りではないATVに適用可能である。
なお、以下の図面において、符号FRは車両の前方、符号UPは車両の上方、符号Lは車両の左方、符号Rは車両の右方を示し、それら前方、左方、右方は、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向をいうものとする。
【0009】
図1に示すように、自動二輪車10は、水冷式エンジン12が搭載されたフレーム14、フレーム14により操舵可能に支持された前輪16とを備え、フレーム14にはカウリング18が装着されている。
鞍乗り車両用ラジエータユニット20Aは、水冷式エンジン12の冷却水を冷却風により冷却するものであり、前輪16の上部の後方に配置され、鞍乗り車両用ラジエータユニット20Aは不図示のブラケットを介して水冷式エンジン12やフレーム14に取り付けられている。
図1、
図2に示すように、鞍乗り車両用ラジエータユニット20Aは、ラジエータ22、ラジエータファン24、ブラケット42、短絡流れ防止板26を含んで構成されている。
鞍乗り車両用ラジエータユニット20Aは、その大半の部分がカウリング18の内側に配置され、ラジエータ22とラジエータファン24とは、車両前後方向に並べられ、言い換えると、カウリング18の導風口1802から導入される冷却風(走行風)が通過する方向に並べられている。
【0010】
ラジエータ22は、
図4に示すように、上下方向の高さと、車幅方向に沿った幅と、車両前後方向に沿った厚さとを有するほぼ矩形板状に設けられている。
ラジエータ22は、その厚さ方向に冷却風が通過することで冷却水を冷却するものであり、ラジエータ22の厚さ方向の一端は冷却風が導入される前面22Aとされ、厚さ方向の他端は冷却風が排出される背面22Bとされている。
本実施の形態では、ラジエータ22は、その幅方向を車幅方向に沿わせてその前面22Aを前方に向け、かつ、その幅方向の中心を車幅方向の中心に合致させて配置され、本実施の形態では、
図1に示すように、自動二輪車10の車幅方向から見て上方に至るにつれて前方に変位するように傾斜して設けられている。
【0011】
図2に示すように、ラジエータ22は、ラジエータコア28と、ラジエータコア28の幅方向両側に設けられた上流側タンク30Aおよび下流側タンク30Bとを含んで構成されている。
ラジエータコア28は、ラジエータコア28の幅方向に延在し冷却水が流通する偏平チューブと冷却フィンとがラジエータコア28の高さ方向に積層されて構成され、ラジエータコア28の高さ方向において隣り合う偏平チューブ間の冷却フィンを冷却風がラジエータコア28の前面22Aから背面22Bを通過することで偏平チューブを流通する冷却水が冷却される。
なお、本明細書においてラジエータコア28(ラジエータ22)の厚さ方向とはラジエータコア28(ラジエータ22)の冷却風が通過する方向であり、ラジエータコア28(ラジエータ22)の高さ方向とは、ほぼ上下方向においてラジエータコア28(ラジエータ22)の幅方向と直交する方向であり、ラジエータコア28(ラジエータ22)の幅方向とはラジエータコア28(ラジエータ22)の高さ方向および厚さ方向と直交する方向である。
上流側タンク30Aは、水冷式エンジン12から供給される冷却水が流入する箇所であり、上流側タンク30Aから偏平チューブの上流端に冷却水が供給される。
下流側タンク30Bは、ラジエータコア28により冷却された冷却水が偏平チューブの下流端から流入される箇所であり、下流側タンク30Bから水冷式エンジン12に冷却水が供給される。
なお、上流側タンク30A、下流側タンク30Bは金属製であってもよく、合成樹脂製であってもよい。
【0012】
ラジエータコア28の上部と下部にはそれぞれコアサポート32A、32Bが取り付けられ、コアサポート32A、32Bの両端は上流側タンク30Aおよび下流側タンク30Bに連結されている。
尚、
図2において符号34Aは上流側タンク30Aに設けられた冷却水の入口パイプ、符号34Bは下流側タンク30Bに設けられた冷却水の出口パイプを示す。
【0013】
図2に示すように、ラジエータファン24は、モータ36と、モータ36により回転駆動される複数のファンブレード38と、複数のファンブレード38の外周端3802を連結するファンリング40とを備えている。
ブラケット42は合成樹脂製であり、ラジエータ22に取り付けられてモータ36を支持している。
ブラケット42により、
図4に示すように、ファンブレード38はラジエータ22の中央部でラジエータ22の背面22Bから隙間を空けた近接した箇所に配置されると共に、ファンリング40の前面はラジエータ22の中央部でラジエータ22の背面22Bから隙間S1を空けた近接した箇所に配置される。
なお、
図4においては、短絡流れ防止板26が明確に把握できるように、ブラケット42の図示を省略している。
また、隙間S1の寸法は1mm~8mm程度であり、隙間S1は走行時の振動によるラジエータファン24とラジエータ22の背面22Bとの接触を防止するために確保されている。
【0014】
図2、
図3に示すように、ブラケット42は、モータ36に取り付けられるモータ側取り付け部44と、ラジエータ22に取り付けられるラジエータ側取り付け部45と、それら取り付け部44、45を連結する一対のステー部46A、46Bとを備えている。
モータ側取り付け部44は、モータ36に設けられた不図示の3つのフランジに当て付けられる環板部4402を有し、環板部4402のボルト挿通孔4404に挿通されたボルトをフランジの雌ねじに螺合することでモータ側取り付け部44はモータ36に取り付けられている。
一対のステー部46A、46Bは、モータ側取り付け部44の上下からそれぞれ突設され、それらの先端にラジエータ側取り付け部45が設けられている。
一対のステー部46A、46Bは、ラジエータ22の背面22B側で複数のファンブレード38から離れた箇所を延在している。
ラジエータ側取り付け部45は、
図2に示すように、ボルト、ナットを介してコアサポート32A、32Bの取り付け片3202に取り付けられている。
【0015】
また、
図4(A)に示すように、ラジエータ22を背面22B側から見て、ファンリング40の外周は、ラジエータコア28の上部のコアサポート32Aおよびラジエータコア28の下部のコアサポート32Bよりもラジエータファン24の中心寄りに位置している。
本実施の形態では、ファンリング40の外周とラジエータコア28の下部のコアサポート32Bとの最短距離D2は、30mm以内であり、この最短距離D2は、ファンリング40の外周とラジエータコア28の上部のコアサポート32Aとの最短距離D1よりも短い寸法となっている。
【0016】
短絡流れ防止板26は、
図4(C)に示すように、停車時や低速走行時においてラジエータファン24が回転した際に、ラジエータ22の周囲からラジエータ22の背面22Bとファンリング40の前面との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する空気流、すなわち、ラジエータ22を通過せず放熱に寄与しない短絡流れを阻止し、ラジエータ22の前面22Aから背面22Bに通過する空気流の風量を確保することでラジエータ22の放熱性能の向上を図るものである。
短絡流れ防止板26は、ラジエータ22の周囲の一箇所に設ければ良く、本実施の形態では、ラジエータ22の下方からラジエータ22の背面22Bとラジエータファン24との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する空気流を阻止するように、隙間S1の下方に設けられている。これは上述したように、ファンリング40の外周とラジエータコア28の下部のコアサポート32Bとの最短距離D2がファンリング40の外周とラジエータコア28の上部のコアサポート32Aとの最短距離D1よりも小さいためである。
図2、
図3に示すように、短絡流れ防止板26は下側のステー部46Bのラジエータ側取り付け部45寄りの箇所と、下側のラジエータ側取り付け部45とに一体に設けられている。
【0017】
短絡流れ防止板26は、車両前後方向に沿った長さと、車幅方向の幅とを有し、
図4(C)に示すように、その幅方向の中心をラジエータ22の幅方向の中心にほぼ合致させて配置されている。
短絡流れ防止板26は、
図2、
図3に示すように、下側のステー部46Bのラジエータ側取り付け部45寄りの箇所と、下側のラジエータ側取り付け部45とに取り付けられる細幅の基部2602を備え、短絡流れ防止板26はこの基部2602を含んで平板状を呈し、短絡流れ防止板26は、
図4(C)に示すように、ラジエータ22のラジエータコア28の下部のコアサポート32Bと平行に設けられ、ラジエータファン24の軸心と平行に設けられている。
【0018】
短絡流れ防止板26は、ラジエータコア28の下部のコアサポート32Bに隙間なく取り付けてもよく、あるいは、隙間を空けて配置されてもよく、
図4(C)に示すように、本実施の形態では隙間S2を空けて配置されている。
図4(B)に示すように、短絡流れ防止板26は、下方から見て、ラジエータコア28の一部分に位置しその幅内においてラジエータコア28の厚さ方向のほぼ全域を覆うと共に、
図4(C)に示すように、その後端がファンリング40の後面よりも後方に位置する長さで設けられている。
すなわち、ラジエータ22に、
図4(B)、(C)に示すように、ラジエータ22とラジエータファン24とが並べられた方向と直交する方向である下方から見て、ラジエータコア28の一部分に位置し車両前後方向におけるラジエータ22の背面22Bとファンリング40との間の隙間S1を跨ぐようにその幅内において覆う短絡流れ防止板26が設けられている。
本実施の形態では、短絡流れ防止板26は、
図4(C)に示すように、隙間S1の下方で隙間S1の前方箇所から隙間S1の後方箇所に至る長さで設けられている。
また、短絡流れ防止板26の幅は、大きければ大きいほどよいが、本実施の形態では、
図4(A)に示すように、ラジエータファン24のファンリング40の直径のほぼ1/2程度の寸法で形成されている。
【0019】
本実施の形態によれば、短絡流れ防止板26はラジエータ22の周囲に位置しているため、高速走行時、従来と同様に走行風がラジエータ22を通過することでラジエータ22の放熱性能が確保されることは無論のこと、停車時や低速走行時、短絡流れ防止板26が設けられた箇所において、ラジエータ22の周囲からラジエータ22の背面22Bとラジエータファン24との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する空気流、すなわち短絡流れを阻止することができる。
したがって、停車時や低速走行時におけるラジエータ22を通過する空気量を増加させる上で有利となり、ラジエータ22の放熱性能の向上を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、短絡流れ防止板26は、前輪16の上部の後方でラジエータ22の下方に配置されているので、短絡流れ防止板26が設けられた箇所において、走行時、前輪16ではね上げられた小石のラジエータ22やラジエータファン24への衝突や、前輪16で巻き上げられた泥のラジエータ22やラジエータファン24への付着を防止する泥除け板としても機能し、鞍乗り車両用ラジエータユニット20Aの耐久性を高める上で有利となる。
また、本実施の形態では、ラジエータファン24を支持するブラケット42と一体に設けた短絡流れ防止板26を隙間S1の下方に配置することで主に下方からの小石や泥がラジエータ22やラジエータファン24へ付着することを防止する泥除け板として機能させるので、ラジエータ22の下部にブラケット42とは別体の泥除け板を設ける必要がなく、組み立て作業の簡易化、部品点数の削減化、軽量化を図る上で有利となる。
【0020】
なお、
図4(A)に示すように、車両の上下方向において、言い換えると、ラジエータ22の高さ方向において、短絡流れ防止板26とファンリング40の外周面との間の距離Lを30mm以下とすることで、短絡流れを防止する上でより有利となる。
また、
図4(C)に示すように、短絡流れ防止板26のうち、隙間S1に対向する部分を平面のみによって構成すると、短絡流れを防止する効果を高める上でより好ましい。
また、車幅方向や車両の上下方向などのラジエータ22の周囲から見て、短絡流れ防止板26の前端とラジエータ22の背面22Bとが車両前後方向において同一の箇所に位置し、短絡流れ防止板26の後端とファンリング40の前面とが車両前後方向において同一の箇所に位置していても、短絡流れ防止板26は、車両前後方向においてラジエータファン24の隙間S1を跨ぐように覆うことができ、短絡流れを防止する効果が発揮される。
しかしながら、本実施の形態のように、ラジエータ22の周囲から見て、短絡流れ防止板26により隙間S1を覆うと共に、短絡流れ防止板26の前端が、ラジエータ22の背面22Bよりも前方に突出すると共に、短絡流れ防止板26の後端が、ファンリング40の背面よりも後方に突出していると、短絡流れを防止する効果を高める上でより好ましい。
【0021】
(第2の実施の形態)
次に
図5、
図6を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の箇所についてはその説明を簡略化し、または省略し、第1の実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。
図6においては、第1の実施の形態と同様に、短絡流れ防止板26が明確に把握できるように、ブラケット42の図示を省略している。
第2の実施の形態の鞍乗り車両用ラジエータユニット20Bでは、短絡流れ防止板26を、ラジエータ22とラジエータファン24とが並べられた方向とほぼ直交する方向において対向するように一対設けたものであり、本実施の形態では、短絡流れ防止板26がラジエータ22の上下に一対設けられている。
すなわち、第1の実施の形態の短絡流れ防止板26に加え、ラジエータ22の上方にも短絡流れ防止板26を設けたものである。
【0022】
ラジエータ22の上方に設けた短絡流れ防止板26は、第1の実施の形態と同様に、上側のステー部46Aのラジエータ側取り付け部45寄りの箇所と、上側のラジエータ側取り付け部45とに一体に設けられ、また、ラジエータ22とラジエータファン24とが並べられた方向と直交する方向である上方から見て、車両前後方向におけるラジエータ22とラジエータファン24との間の隙間S1を跨ぐようにその幅内で覆っており、短絡流れを阻止する効果において第1の実施の形態の短絡流れ防止板26とほぼ同様な効果が奏される。
第2の実施の形態によれば、短絡流れ防止板26が互いに対向するように2箇所に設けられているので、短絡流れ防止板26が設けられた2箇所において短絡流れを阻止できる。
したがって、第1の実施の形態に比べ、停車時や低速走行時におけるラジエータ22を通過する空気量を増加させる上でより有利となり、ラジエータ22の放熱性能の向上を図る上でより有利となる。
【0023】
(第3の実施の形態)
次に、
図7、
図8、
図9を参照して第3の実施の形態について説明する。
なお、
図9においては、短絡流れ防止板26が明確に把握できるように、ブラケット42のうち一対のステー部46A、46Bの図示を省略し、モータ側取り付け部44のみ図示している。
第3の実施の形態の鞍乗り車両用ラジエータユニット20Cは、第1の実施の形態の変形例であり、第3の実施の形態では、第1の実施の形態に比べ泥除け機能を高め、また、短絡流れを阻止する機能を高めたものである。
すなわち、第3の実施の形態は、第1の実施の形態の短絡流れ防止板26に加えブラケット42に泥除け板48を設けたものである。
【0024】
泥除け板48は、短絡流れ防止板26の後端から起立した板体で構成されている。
図9(A)、(C)に示すように、泥除け板48の上部はラジエータファン24の下部のみに対して間隔をおいて後方から対向すると共に、泥除け板48の下部はラジエータファン24の半径方向外側に位置するラジエータ22の背面22Bの下部のみに後方から対向している。
言い換えると、泥除け防止板48は、ラジエータ22及びラジエータファン24の後方において、後方から見て、ラジエータ22の下方から、ラジエータファン24の中心までの範囲のみを覆っている。
また、言い換えると、泥除け板48は、ラジエータファン24の上部およびラジエータ22の上部を車両後方に開放させた状態で、ラジエータファン24の下部およびラジエータ22の下部に対して車両後方から対向している。
図8に示すように、泥除け板48を構成する板体の一辺は下側のステー部46Bに接続され、他の一辺は短絡流れ防止板26に接続されている。
詳細には、泥除け板48は、短絡流れ防止板26、ブラケット42の下側のステー部46B、環板部4402と一体に設けられ、短絡流れ防止板26側、ステー部46B側、環板部4402側に位置する泥除け板48の箇所の全域は、短絡流れ防止板26、ステー部46B、環板部4402に隙間なく接続されている。
泥除け板48にはモータ36と同軸上で円弧状に延在する複数の窓部50が貫通形成され、本実施の形態では、2つの窓部50が貫通形成されている。したがって、ラジエータファン24の後方に泥除け板48が位置する箇所では、冷却風は2つの窓部50を通って後方に排出されるので、鞍乗り車両用ラジエータユニット20Cの放熱性能の向上を図る上で有利となる。
また、泥除け板48は、ラジエータファン24の上部およびラジエータ22の上部を車両後方に開放させた状態で、ラジエータファン24の下部およびラジエータ22の下部に対して車両後方から対向する大きさの板体で構成されている。
また、車幅方向において泥除け板48と短絡流れ防止板26とはほぼ同じ寸法の幅を有している。
【0025】
第3の実施の形態によれば、泥除け板48が設けられた箇所において、走行時、前輪16ではね上げられた小石のラジエータ22やラジエータファン24への衝突や、前輪16で巻き上げられた泥のラジエータ22やラジエータファン24への付着を防止する上でより有利となり、鞍乗り車両用ラジエータユニット20Cの耐久性を高める上でより有利となる。
すなわち、短絡流れ防止板26によって、下方からの小石や泥がラジエータ22やラジエータファン24に対して付着することを防止できることは無論のこと、泥除け板48によって後方からの小石や泥についてもラジエータ22やラジエータファン24へ付着することを防止できるので、第1の実施の形態よりも泥除け機能の向上を図る上で有利となる。
なお、短絡流れ防止板26によってラジエータ22の周囲からラジエータ22の背面22Bとラジエータファン24との間の隙間S1を通りラジエータファン24に流入する短絡流れを阻止することで、ラジエータ22の放熱性能の向上を図る上で有利となることは第1の実施の形態と同様である。
この第3の実施の形態の泥除け板48は第2の実施の形態にも無論適用可能である。
【0026】
なお、実施の形態では、鞍乗り車両がカウリング18を備えた場合について説明したが、本発明はカウリング18を備えていない鞍乗り車両にも無論適用される。
【符号の説明】
【0027】
10 自動二輪車
12 水冷式エンジン
14 フレーム
16 前輪
18 カウリング
1802 導風口
20A、20B、20C 鞍乗り車両用ラジエータユニット
22 ラジエータ
22A 前面
22B 背面
24 ラジエータファン
26 短絡流れ防止板
2602 基部
28 ラジエータコア
30A 上流側タンク
30B 下流側タンク
32A、32B コアサポート
3202 取り付け片
34A 入口パイプ
34B 出口パイプ
36 モータ
38 ファンブレード
3802 外周端
40 ファンリング
42 ブラケット
44 モータ側取り付け部
4402 環板部
4404 ボルト挿通孔
45 ラジエータ側取り付け部
46A、46B 一対のステー部
48 泥除け板
50 窓部
S1 隙間