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  • 特開-燃料電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025086574
(43)【公開日】2025-06-09
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20250602BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250602BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20250602BHJP
   B01D 39/10 20060101ALI20250602BHJP
   B01D 46/79 20220101ALI20250602BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250602BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/04701
B01D39/10
B01D46/79
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200648
(22)【出願日】2023-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 秀幸
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA02
4D019BA02
4D019BB07
4D019BC12
4D019CA10
4D019CB01
4D019CB04
4D019CB09
4D058JA12
4D058JB03
4D058MA12
4D058MA17
4D058SA20
4D058UA01
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC02
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB37
5H127CC07
5H127CC10
(57)【要約】
【課題】圧力損失が小さく、空気に存在する海水粒子を除去した空気を供給することができるフィルタを備えた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ガス供給を受けて発電する燃料電池2と、燃料電池2にガスを供給する酸化剤ガス供給配管10と、酸化剤ガス供給配管10に設けられガス中の不純物を除去するフィルタ15と、を備えた燃料電池システム1であって、フィルタ15は、金属製多孔体で構成され、所定の温度以上に加熱される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給を受けて発電する燃料電池と、当該燃料電池にガスを供給するガス供給通路と、当該ガス供給通路に設けられガス中の不純物を除去するフィルタと、を備えた燃料電池システムであって、
前記フィルタは、金属製多孔体で構成され、所定の温度以上に加熱されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記フィルタは、前記燃料電池が発電することによって生じる熱によって、前記所定の温度以上に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池が発電することによって生じる熱が、前記燃料電池を冷却する冷却水を介して前記フィルタに伝熱されることで、前記フィルタは前記所定の温度以上に加熱されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池が発電することによって生じる生成水を貯めるバッファタンクと、
前記バッファタンクに貯められた前記生成水を前記フィルタに放水する放水ノズルと、を有し、
前記バッファタンク及び前記放水ノズルは、前記フィルタよりも上方に配置され、
前記放水ノズルから前記生成水を前記フィルタに放水することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記バッファタンクと前記放水ノズルとを接続する生成水供給通路と、前記生成水供給通路に設けられる電磁弁と、前記燃料電池の停止指示の信号を受信でき且つ前記電磁弁を制御する制御装置と、有し、
前記制御装置は、前記燃料電池の停止指示の信号を受信した場合は、前記電磁弁を開いて、前記生成水を前記フィルタに放水させ、前記燃料電池の停止指示の信号を受信していない場合は、前記電磁弁を閉じることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記金属製多孔体は、Ni、NiCr、NiSn、Al、Ti、真鍮、のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と連通するガス流路に設けられてガス中の不純物を除去するフィルタを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、アノード電極とカソード電極とで挟み込んで形成された発電セルを複数積層して構成された燃料電池のアノード電極側に燃料ガスとして水素ガスが供給されると共に、カソード電極側に酸化ガスとして空気が供給されることにより発電が行われる。そして、カソード電極に供給される酸化ガスとして大気中の酸素を用いるのが一般的であり、大気から取り込まれた空気が燃料電池のカソード電極に供給される。ところが、大気中には塵埃が含まれているので、燃料電池に供給される前に空気中の塵埃を除去する必要があり、従来は液体が含浸されたフィルタによって、塵埃は除去されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-109555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、沿岸地域で燃料電池システムを使用する場合は、大気中に含まれる空気に海水粒子が存在していることから、海水粒子を除去する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池システムは、液体が含浸されたフィルタによって塵埃を除去していたため、海水粒子を除去できたとしても圧力損失が大きく発電能力が低下してしまうおそれがあった。一方、圧力損失を減らすために、含浸されている液体の量を減らすと、大気中に含まれる空気に存在している海水粒子を十分に取り除くことができないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、圧力損失を抑制しつつ、空気に存在する海水粒子を除去した空気を供給することができるフィルタを備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ガス供給を受けて発電する燃料電池と、該燃料電池と連通して該燃料電池にガスを供給するガス供給通路と、該ガス供給通路に設けられてガス中の不純物を除去するフィルタと、を備えた燃料電池システムであって、フィルタは、金属製多孔体で構成され、所定の温度以上に加熱される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧力損失を抑制しつつ、空気に存在する海水粒子を除去した空気を供給することができるフィルタを備えた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
図2】本実施形態に係る燃料電池システムに用いるフィルタのモデル図である。
図3】本実施形態に係る燃料電池システムに用いる放水ノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1を参照して、本実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池システムを示す構成図である。以下、本実施形態に係る燃料電池システム1は燃料電池車両の車載発電システムに適用される。ただし、燃料電池システム1は、燃料電池車両の車載発電システムに限らず、船舶,航空機,電車などの移動体への適用や、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムへの適用も可能である。
【0010】
燃料電池システム1は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成される燃料電池2を備える。燃料電池2は、アノード電極に燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極に酸化剤ガスが供給されることによって発電する。本実施形態では、燃料ガスとして水素を、酸化剤ガスとて空気を用いるケースについて説明する。
【0011】
燃料電池システム1は、燃料電池2に水素を供給するための図示しない水素系統と、燃料電池2に空気を供給するための空気系統3と、燃料電池2を冷却するための冷却系統4とを備えている。本実施形態に係る燃料電池システム1において、水素系統は公知の構成が用いられるため詳細な説明は省略するが、水素系統において、水素は、図示されない燃料タンクに貯蔵され、この燃料タンクから図示されない水素供給流路を介して燃料電池2に供給される。
【0012】
冷却系統4は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水が循環する閉ループ状の冷却水路7を有しており、この冷却水路7には、冷却水を循環させる図示されない循環ポンプが設けられている。この循環ポンプを動作させることにより、冷却水路7内の冷却水が循環する。冷却水路7には、冷却水タンク8が設けられている。冷却水タンク8はバッファとして機能し、燃料電池2を冷却して温度が上昇した冷却水は冷却水路7を経由して、冷却水タンク8に貯留される。また、冷却系統4は、冷却水タンク8に並列に接続される図示しないラジエータを有している。このラジエータには、ラジエータを送風するファンが設けられており、冷却水が燃料電池2の冷却によって所定温度以上に上昇した場合は、冷却水がラジエータを流れラジエータによって冷却される。冷却された冷却水は、燃料電池2に供給される。燃料電池2を冷却して温度が上昇し、冷却水タンク8に戻ってきた冷却水の温度は略80℃である。
【0013】
空気系統3において、カソード電極に供給される酸化剤ガスは空気が用いられ、酸化剤ガスとして用いられる空気は大気である。空気系統3は、燃料電池2に大気からの空気を供給するために用いられる酸化剤ガス供給配管10と、燃料電池2から発電反応に使用された酸化剤ガスである空気を外部へ排出するために用いられる酸化剤ガス排出配管11と、を有している。また、空気系統3は図示されないコンプレッサを有する。当該コンプレッサは大気中の空気を取り込むと共に加圧し、当該コンプレッサによって取り込まれ加圧された空気は、酸化剤ガス供給配管10を介して燃料電池2に供給される。カソード電極で使用されて排出される空気は、酸化剤ガス排出配管11を介して外部に排出される。酸化剤ガス供給配管10は、本発明におけるガス供給通路である。
【0014】
本実施形態における燃料電池システム1は、大気から空気を取り込んで燃料電池2のカソード電極に供給しているが、大気中には塵埃が含まれているので、燃料電池2に供給する前に空気中の塵埃を除去する必要がある。そのため、空気系統3は、フィルタ15を有したフィルタ部14を備えている。フィルタ部14は酸化剤ガス供給配管10の取込口12に設けられている。尚、図1においては、理解を容易にするため、フィルタ部14は酸化剤ガス供給配管10の取込口12から離れた場所に配置されているが、本実施形態では、フィルタ部14は酸化剤ガス供給配管10の取込口12に設けられている。尚、フィルタ部14が酸化剤ガス供給配管10に設けられて、カソード電極に供給される空気がフィルタ15を通過すれば、フィルタ部14は、燃料電池2と酸化剤ガス供給配管10との間である酸化剤ガス供給配管10の出口、酸化剤ガス供給配管10の途中、酸化剤ガス供給配管10の取込口12のいずれに設けられていても構わない。
【0015】
フィルタ部14は、フィルタ15と、フィルタ15を固定する固定枠16を有する。フィルタ15は略矩状に形成され、略矩形状のフィルタ15の4辺は固定枠16によって固定されている。フィルタ15は、図2に示すように、3次元網目構造の金属製多孔体で構成されている。フィルタ15を構成する金属製多孔体はNiで形成されている。尚、本実施形態では、フィルタ15を構成する金属製多孔体はNiで形成されているが、NiCr、NiSn、Al、Ti、真鍮、のいずれかの金属で形成されていても構わない。固定枠16は金属製であり、具体的には、Al製である。フィルタ15の縦(空気の流れ方向の高さ)、横(空気の流れ方向に直交する幅)、厚さ(空気の流れ方向の厚さ)のサイズは、縦が200mm、横が200mm、厚さが30mm~100mmである。
【0016】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池車両の車載発電システムに適用される。そのため、本実施形態に係る燃料電池システム1が適用された燃料電池車両は、当然に海岸近くの沿岸地域で使用さる場合がある。沿岸地域で燃料電池システム1が使用される場合、大気中に含まれる空気に海水粒子が存在していることから、海水粒子を除去する必要がある。そのため、本実施形態に係る燃料電池システム1は、次で述べる特徴を有している。
【0017】
燃料電池システム1は、冷却水タンク8に貯留された冷却水及びフィルタ部14の固定枠16に接続して、冷却水の温度をフィルタ15に伝熱してフィルタ15を加熱させる伝熱部材17を有している。伝熱部材17は、Al製の部材で形成されている。尚、伝熱部材17は、Al製の部材で形成されているが、熱伝導が高い材料であれば他の材料によって形成されていても構わない。固定枠16についても同様で、固定枠16は、熱伝導が高い材料であれば他の材料によって形成されていても構わない。固定枠16及び伝熱部材17はAl製であり、熱伝導が高い材料で形成されているため、冷却水の熱(略80℃)をフィルタ15に伝えて、フィルタ15を加熱する。すなわち、フィルタ15は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介してフィルタ15に伝熱されることで、所定の温度以上に加熱されている。フィルタ15が、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介して所定の温度以上に加熱されているため、大気中に含まれる空気に海水粒子が存在していても、本実施形態のフィルタ15によって海水粒子は除去される。
【0018】
図1を用いて、本実施形態のフィルタ15の働きについて説明する。図1において、雲形で示す形状は空気Aを示し、雲形で示す空気Aの中に存在する丸は海水粒子Sを示す。沿岸地域で燃料電池システム1が使用される場合、フィルタ15を通過する前の大気中に含まれる空気Aには海水粒子Sが多く存在している。フィルタ15は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介して所定の温度(本実施形態では、80℃)以上に加熱されている。そのため、フィルタ15を通過する空気に含まれる海水粒子が、熱せられたフィルタ15を構成する金属製多孔体と接することで水分が蒸発し、固体のNaClへ変化して金属製多孔体に付着し、その結果として燃料電池2には海水粒子が無くなった空気が供給される。
【0019】
本実施形態における燃料電池システム1は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介して所定の温度以上に加熱されているフィルタ15を有し、フィルタ15によって大気中に含まれる空気の海水粒子Sは除去される。しかし、フィルタ15には大気中に含まれる空気から除去したNaClが付着しているので、フィルタ15に付着したNaClを洗い流す必要がある。そのため、本実施形態に係る燃料電池システム1は、次で述べる特徴を有している。
【0020】
燃料電池システム1は、酸化剤ガス排出配管11に設けられた気液分離器25と、気液分離器25によって分離された生成水を貯留するバッファタンク26と、バッファタンク26に貯留された生成水をフィルタ15に放水する放水ノズル30を有している。放水ノズル30には、生成水を放水するための複数のノズル孔31が形成されている。気液分離器25とバッファタンク26との間には生成水排出配管27が接続されている。燃料電池2から発電反応に使用された酸化剤ガスである空気には、発電によって生成される生成水が含まれている。気液分離器25は、発電反応に使用され生成水が含まれている酸化剤ガスを生成水と生成水が含まれない空気とに分離する。気液分離器25によって分離された生成水を含まない空気は酸化剤ガス排出配管11によって大気に放出される。気液分離器25によって分離された生成水は生成水排出配管27によってバッファタンク26に放出される。バッファタンク26と放水ノズル30との間には生成水供給配管28が接続されている。生成水供給配管28には電磁弁29が設けられ、電磁弁29の開閉によって、放水ノズル30から生成水が放水されたり、されなかったりする。放水ノズル30及びバッファタンク26は、高さ方向において、フィルタ15よりも上方に配置されている。より詳細には、放水ノズル30の長手方向長さは、フィルタ15の全域亘って放水できるように、放水ノズル30及びバッファタンク26は、高さ方向において、フィルタ15及び固定枠16を有するフィルタ部14よりも上方に配置されている。フィルタ15の横の長さと略同じになっている。放水ノズル30及びバッファタンク26は、高さ方向において、フィルタ15よりも上方に配置されているため、動力を必要とするポンプがなくても、放水ノズル30からフィルタ15に生成水を放水することができ、生成水をフィルタ15に放水することで、フィルタ15に付着したNaClを洗い流すことができる。尚、生成水供給配管28が、本発明における生成水供給通路である。
【0021】
燃料電池システム1は、電磁弁29を制御する制御装置35を有している。制御装置35は、また、燃料電池車両をコントロールするECU36に接続し、ECU36から燃料電池2の停止支持の信号を受信することが可能である。制御装置35は、次のような制御を行う。
【0022】
制御装置35は、ECU36から燃料電池2の停止指示の信号を受信して所定時間経過した後、電磁弁29を開く。本実施形態では、所定時間は5秒に設定されている。これにより、バッファタンク26に貯留された生成水が放水ノズル30からフィルタ15に放水され、フィルタ15に付着したNaClを洗い流すことができる。また、所定時間として5秒を設定することで、燃料電池2の停止指示直後では、大気中から燃料電池2の内部に向かう空気の流れが残っている状態であり、この時に放水ノズル30で生成水を放水してしまうとNaClを含む飛沫が燃料電池2に流れてしまうことを抑制することができる。制御装置35は、ECU36から燃料電池2の停止指示の信号を受信していない場合は、電磁弁29を閉じる。
【0023】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、ガス供給を受けて発電する燃料電池2と、燃料電池2と連通して燃料電池2にガスを供給する酸化剤ガス供給配管10と、酸化剤ガス供給配管10に設けられガス中の不純物を除去するフィルタ15と、を備え、フィルタ15は、金属製多孔体で構成され、所定の温度以上に加熱される。そのため、圧力損失を大きくせずに大気中に含まれる空気に存在している海水粒子を十分に取り除くことができた空気を燃料電池2に供給することができる。これにより、発電性能の低下を抑制でき、その結果、燃料電池2の長寿命化に貢献できる。尚、本実施形態では、フィルタ15を所定の温度以上に加熱させるために、燃料電池2が発電することによって生じる熱を利用していたが、必ずしもこれに限定されない。例えば、車内空調用のコンプレッサ、燃料電池車両の車輪を駆動させるための駆動モータ、燃料電池車両の車輪を駆動させるための駆動モータを制御するインバータなどの他の発熱す機器を利用して、フィルタ15を加熱させても構わない。
【0024】
本実施形に係る燃料電池システム1において、フィルタ15は、燃料電池2が発電することによって生じる熱によって、所定の温度以上に加熱される。そのため、加熱専用のヒータを設けることなく、圧力損失を大きくせずに大気中に含まれる空気に存在している海水粒子を十分に取り除くことができた空気を燃料電池2に供給することができる。これにより、発電性能の低下を抑制でき、その結果、燃料電池2の長寿命化に貢献できる。尚、本実施形態では、フィルタ15は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介して、所定の温度以上に加熱されていたが、必ずしもこれに限定されない。燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水ではなく、燃料電池2の高温となる他の部分を用いて、フィルタ15を所定の温度以上に加熱しても構わない。
【0025】
本実施形に係る燃料電池システム1において、フィルタ15は、燃料電池2が発電することによって生じる熱を冷却する冷却水を介して、所定の温度以上に加熱される。そのため、加熱専用のヒータを設けることなく、また、漏電のリスクも少なく、圧力損失を大きくせずに大気中に含まれる空気に存在している海水粒子を十分に取り除くことができた空気を燃料電池2に供給することができる。これにより、発電性能の低下を抑制でき、その結果、燃料電池2の長寿命化に貢献できる。また、冷却水によってフィルタ15を加熱することは、フィルタ15によって冷却水は冷却されることになるため、ラジエータを送風するファンの動作を軽減することができ、あるいは、ラジエータを使用せずに冷却水を冷却することができる。
【0026】
本実施形に係る燃料電池システム1は、燃料電池2が発電することによって生じる生成水を貯めるバッファタンク26と、バッファタンク26に貯められた生成水をフィルタ15に放水する放水ノズルと、を有し、バッファタンク26及び放水ノズル30は、フィルタ15よりも上方に配置され、放水ノズル30から生成水をフィルタ15に放水する。そのため、フィルタ15の交換作業が不要となり、且つ、フィルタ15の交換忘れによる致命的な出力低下も抑えられる。また、フィルタ15に付着したNaClを洗い流す生成水は、燃料電池2から排出されるため、補給が不要である。尚、本実施形態では、専用の放水ノズル30を設けて、フィルタ15に生成水を放水するが、必ずしも、専用の放水ノズル30を設ける必要はなく、例えば、固定枠16であってフィルタ15の上方に位置する部分(上部側固定枠)に生成水供給配管28を接続し、当該上部側固定枠にノズル孔を形成して、当該上部側固定枠からフィルタ15に生成水を放水する構成としても構わない。
【0027】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【0028】
例えば、図1において、本実施形態では、酸化剤ガス排出配管10は燃料電池の上部側に接続され、酸化剤ガス供給配管11は燃料電池の下部側に接続されているが、必ずしも、これに限定されない。放水ノズル30及びバッファタンク26は、高さ方向において、フィルタ15よりも上方に配置されていれば、酸化剤ガス排出配管10は燃料電池の下部側に接続され、酸化剤ガス供給配管11は燃料電池の上部側に接続されていても構わない。
【符号の説明】
【0029】
1…燃料電池システム
2…燃料電池
3…空気系統
4…冷却系統
7…冷却水路
8…冷却水タンク
10…酸化剤ガス供給配管
11…酸化剤ガス排出配管
12…取込口
14…フィルタ部
15…フィルタ
16…固定枠
17…伝熱部材
25…気液分離器
26…バッファタンク
27…生成水排出配管
28…生成水供給配管
29…電磁弁
30…放水ノズル
31…ノズル孔
35…制御装置
36…ECU
A…空気
S…海水粒子
図1
図2
図3