(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008682
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/496 20060101AFI20250109BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20250109BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/51
A61F13/49 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111049
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】源 和晃
(72)【発明者】
【氏名】南岡 政宏
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200CA04
3B200CA05
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA21
3B200DA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】着用操作後の着用者の身体へのフィット性を維持したまま、着用操作時における指をひっかける掴みやすさと幅方向への広げやすさとを両立できるパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】サイドシール部を備えたパンツ型吸収性物品であって、前記腹側部が、前記ウエスト開口部から順に強伸縮領域、非伸縮領域及び弱伸縮領域を有し、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域には、前記幅方向に沿って伸縮可能な状態で延在する弾性部材が前記身丈方向に間隔をあけて複数配置され、前記強伸縮領域は、前記弱伸縮領域よりも前記幅方向の伸縮応力が強くされており、前記弱伸縮領域における前記サイドシール部の幅方向内側に隣接する位置に、前記弱伸縮領域の中で最も伸縮応力が小さい最弱伸縮領域が存在し、前記非伸縮領域の前記身丈方向の幅が、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域それぞれにおける前記弾性部材のピッチ間隔よりも広い、パンツ型吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身丈方向及び該身丈方向に直交する幅方向を有し、着用者の胴を通すウエスト開口部及び前記着用者の脚を通す左右一対のレッグ開口部、着用者の腹側に配される腹側部、股間側に配される股下部及び背側に配される背側部、並びに、前記腹側部の前記身丈方向に沿う両側部と前記背側部の前記身丈方向に沿う両側部とが接合されてなるサイドシール部を備えたパンツ型吸収性物品であって、
前記腹側部が、前記ウエスト開口部から順に強伸縮領域、非伸縮領域及び弱伸縮領域を有し、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域には、前記幅方向に沿って伸縮可能な状態で延在する弾性部材が前記身丈方向に間隔をあけて複数配置され、前記強伸縮領域は、前記弱伸縮領域よりも前記幅方向の伸縮応力が強くされており、
前記弱伸縮領域における前記サイドシール部の幅方向内側に隣接する位置に、前記弱伸縮領域の中で最も伸縮応力が小さい最弱伸縮領域が存在し、
前記非伸縮領域の前記身丈方向の幅が、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域それぞれにおける前記弾性部材のピッチ間隔よりも広い、
パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記最弱伸縮領域には、前記弾性部材に接着剤が配されている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記強伸縮領域、非伸縮領域及び弱伸縮領域の前記身丈方向の幅は、弱伸縮領域>強伸縮領域≧非伸縮領域の関係になっている、請求項1又は2記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記強伸縮領域が着色されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記最弱伸縮領域が着色されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記腹側部が有する前記強伸縮領域、非伸縮領域及び弱伸縮領域、並びに弱伸縮領域に含まれる最弱伸縮領域に係る構成が、前記背側部にも配されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつなどのパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつなどのパンツ型吸収性物品は、下着のように、ウエスト開口部側の部分をつかんで引き上げて着用される。着用しやすさ等の観点から、これまでいつくかの提案がされてきた。
例えば、特許文献1には、幅方向に延びつつも股下側に向かって膨らむように湾曲した配置を有する湾曲伸縮部材を備えたパンツ型の使い捨ておむつが記載されている。該使い捨ておむつは上方に引き上げやすくなるよう、前記湾曲伸縮性部材によって、横方向に加えて縦方向(身丈方向ともいう)にも伸縮性が付与される。
特許文献2記載のパンツ型おむつは、胴回り部に、吸収体を縦方向に仮想的に延長した場合の延長領域の横方向(幅方向ともいう)の両外方に、伸縮性を有しない非伸縮領域がサイドシール部に近接して配置されている。前記非伸縮領域は、おむつ着用時に手指で把持されることの多い部分に部分的に配置され、これにより着用操作がスムーズになるとされる。
【0003】
特許文献3記載の使い捨て着用物品では、前胴回り域において第2弾性領域と第3弾性領域との間に位置するとともに弾性部材及び吸収体が存在しない第2非弾性領域が配されている。該第2非弾性領域は、複数の熱溶着点が設けられて平面性が向上し、外観が改善されるとされている。
また、特許文献4記載のパンツ型の着用物品では、前ウエスト域において第1前弾性域と第3前弾性域の間、第3前弾性域と第2前弾性域の間に、弾性部材が配置されていない第1及び第2非弾性域が位置することが記載されている。第1及び第2前弾性域には複数条の弾性体が、第3前弾性域には伸縮性シートが配され、前述の非弾性域はこれら各弾性域の緩衝域となるとされる。また、前記第2非弾性域は、吸液構造体のエンドフラップに位置して、着用操作時に指を引っ掛けてその上の第3前弾性域を手で掴みやすくできるとされる。
特許文献5記載のパンツタイプの吸収性物品では、外装シートの第2胴回り領域と中間弾性領域との間に、いずれの弾性部材も配置されない補助領域を設けることが記載されている。前記補助領域では、指先を深く引っ掛けて吸収性物品をしっかりと掴むことが容易に可能となり、吸収性物品を着用者の身体に沿って容易に移動できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-173778号公報
【特許文献2】特開2019-111278号公報
【特許文献3】特開2015-58226号公報
【特許文献4】特開2015-202226号公報
【特許文献5】国際公開2013/099510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パンツ型吸収性物品は、着用者の身体へのフィット性の観点から幅方向の伸縮性を具備する。一方で、着用に際し、パンツ型吸収性物品のウエスト開口部側の縁を掴んで穿き上げる際、身体との摩擦をできるだけ小さくするよう幅方向外方に広げる操作が伴う。しかし、上記のフィット性の観点からは、幅方向内方への収縮力(伸縮応力)は適度に高くする必要があり、該収縮力と前述の幅方向外方への広げる操作性との両立が難しく、改善の余地があった。また、幅方向外方への広げ幅が十分でない状態で穿き上げると身体との摩擦が高まり、掴んだ指がすべったり抜けたりすることが生じかねず、この観点からも改善の余地があった。
この点、特許文献1記載のパンツ型の使い捨ておむつでは、湾曲伸縮部材がその伸縮性の一部を身丈方向への伸縮性に振り分けており、上記のフィット性が低減しかねず改善の余地がある。
特許文献2記載のパンツ型おむつは、サイドシール近傍の非伸縮領域はあくまで掴みしろの存在に留まる。そのため、掴みやすさと広げやすさとを両立させること、またこの両立をフィット性を維持しながら実現することについての記載はない。この点は、特許文献3~5記載の着用物品及び吸収性物品においても同様である。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、着用操作後の着用者の身体へのフィット性を維持したまま、着用操作時における指をひっかける掴みやすさと幅方向への広げやすさとを両立できるパンツ型吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、身丈方向及び該身丈方向に直交する幅方向を有し、着用者の胴を通すウエスト開口部及び前記着用者の脚を通す左右一対のレッグ開口部、着用者の腹側に配される腹側部、股間側に配される股下部及び背側に配される背側部、並びに、前記腹側部の前記身丈方向に沿う両側部と前記背側部の前記身丈方向に沿う両側部とが接合されてなるサイドシール部を備えたパンツ型吸収性物品であって、前記腹側部が、前記ウエスト開口部から順に強伸縮領域、非伸縮領域及び弱伸縮領域を有し、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域には、前記幅方向に沿って伸縮可能な状態で延在する弾性部材が前記身丈方向に間隔をあけて複数配置され、前記強伸縮領域は、前記弱伸縮領域よりも前記幅方向の伸縮応力が強くされており、前記弱伸縮領域における前記サイドシール部の幅方向内側に隣接する位置に、前記弱伸縮領域の中で最も伸縮応力が小さい最弱伸縮領域が存在し、前記非伸縮領域の前記身丈方向の幅が、前記強伸縮領域及び前記弱伸縮領域それぞれにおける前記弾性部材のピッチ間隔よりも広い、パンツ型吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパンツ型吸収性物品は、着用操作後の着用者の身体へのフィット性を維持したまま、着用操作時における指をひっかける掴みやすさと幅方向への広げやすさとを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のパンツ型吸収性物品の好ましい一実施形態としてのパンツ型おむつを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すパンツ型おむつをサイドシール部で破断して展開し伸長させて肌面側から見た状態を模式的に示す一部切欠展開平面図である。
【
図3】
図1に示すパンツ型おむつの穿き上げ操作を模式的に示す説明図である。
【
図4】強伸縮領域と弱伸縮領域との配置を入れ替えた場合の穿き上げ操作を模式的に示す説明図である。
【
図5】最外装シートの折り返し部と非伸縮領域との位置関係の好ましい形態の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のパンツ型吸収性物品の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
本明細書において、着用者の肌に接触する側を肌側といい、これと反対側を非肌側という。これらは、着用者の肌に接触する面を有さない部材に関しても、吸収性物品の部材構成における相対的な位置関係を示す用語として用いる。また、吸収性物品において、着用時に着用者の前側に位置する方向を前方又は前側といい、後側に位置する方向を後方又は後側という。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向、すなわち部材同士の積層方向を厚み方向という。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のパンツ型おむつ10(以下、おむつ10ともいう)は、着用者の胴を通すウエスト開口部12及び前記着用者の脚を通す左右一対のレッグ開口部13、13を備える。おむつ10は、身丈方向Y及び該身丈方向Yに直交する幅方向Xを有し、身丈方向Yは着用者の身体の上下方向に対応し、相対的な位置関係としてウエスト開口部12側を上側、レッグ開口部13側を下側ともいう。
【0012】
おむつ10は、ウエスト開口部12寄りの位置に、着用者の腹側及び背側に配される腹側部10F及び背側部10Rを有する。腹側部10F及び背側部10Rは、後述するサイドシール部11の身丈方向Yの長さと該サイドシール部11、11間を結ぶ幅方向Xの長さにて区画される領域である。腹側部10Fと背側部10Rとを下側で繋いだ部分が、着用者の股間側に配される股下部10Cをなしている。股下部10Cの幅方向Xの左右外方に前述のレッグ開口部13、13がある。更におむつ10は、腹側部10Fの身丈方向Yに沿う両側部と背側部10Rの身丈方向Yに沿う両側部とが接合されてなるサイドシール部11、11を備える。これにより、おむつ10の腹側部10F及び背側部10Rが繋がって、おむつ10における環状部10Dが形成されている。
【0013】
本実施形態において、おむつ10は構成部材として縦長の吸収性本体1と該吸収性本体1の非肌面側に接合された外装体2とを具備する。外装体2は、腹側部10F、股下部10C及び背側部10R全体に及ぶ外表本体をなしている。外装体2の腹側部10Fに配される部分を前側外装体21、背側部10Rに配される部分を後側外装体22ともいう。
前述のサイドシール部11は、より詳細には、腹側部10Fの前側外装体21及び背側部10Rの後側外装体22それぞれの両側縁が重ね合わされ接合されて形成された領域であり、幅方向外側端部11Aからサイドシールの幅方向内側端部11Bまでの領域を指す。サイドシール部11は、前側外装体21及び後側外装体22の幅方向Xの左右両端部において、身丈方向Yに沿って延在している。サイドシール部11の身丈方向Yに沿った延在範囲は、環状部10D(腹側部10F及び背側部10R)の身丈方向Yの長さに対応する範囲である。言い換えると、前記延在範囲は、ウエスト開口部12の高さ位置からレッグ開口部13の身丈方向Yの上端に隣接する位置までの範囲である。この延在範囲に、サイドシール部11の幅方向外側端部11A及び幅方向内側端部11Bが身丈方向Yに沿って存在する。サイドシール部11における接合は、この種の物品に用いられる種々の方法により行うことができる。例えば、融着接合(例えば、ヒートシール、超音波シール、レーザー熔融)、圧着接合(例えば、エンボス加工)等の圧密一体化する接合が挙げられる。また、前述の吸収性本体1と外装体2との接合は、ホットメルト接着剤など、この種の物品で採用される接合手段を用いることができる。その塗布方法も螺旋状塗工など部材の剛性を高めず、透液性や通気性等を阻害しない方法が用いられる(以下の接合においても同様。)。
【0014】
図2は、おむつ10をサイドシール部11、11において破断して展開し伸長させて肌面側から見た状態を示している。展開し伸長させた状態(展開状態)とは、各部を伸長させてパンツ型吸収性物品を平面状に広げた状態をいう。展開状態において、前述の身丈方向Y及び幅方向Xは、展開状態における長手方向Y及び幅方向Xに相当する。また、幅方向Xに沿う長手方向Yの中心線CLを境に前身頃10S、後身頃10Tともいう。
おむつ10の展開状態において、外装体2は、股下部10Cの両側縁がサイドシール部11の下端縁から幅方向Xの内方に緩やかに括れた湾曲形状を有する。また、外装体2は、腹側部10F及び背側部10Rにおいて、幅方向Xに張り出した横長の形状を有する。縦長の吸収性本体1は、外装体2の肌面側であって幅方向Xの中央の領域に、その長手方向を長手方向Yに向け、長手方向Yに沿って腹側部10F、股下部10C及び背側部10Rに亘って配設されている。なお、外装体2の平面形状は、
図2に示すものに限定されず種々の形態をとり得る。例えば、外装体2は、腹側部10F及び背側部10Rのみに配されて股下部10Cへは延在しない形態であってもよい。この場合、股下部10Cは吸収性本体1によって構成される。
【0015】
吸収性本体1は、
図2に示すように、肌側の液透過性の表面シート3、非肌側の防漏性の裏面シート4、及び表面シート3と裏面シート4との間に配置される液保持性の吸収体5を有する。吸収体5は、体液を吸収保持する吸収素材の集合体であり、クレープ紙等の親水性のコアラップシートによって被覆されていてもよい。この吸収体5は、吸収性本体1と同等の幅(幅方向Xの長さ)を有し、吸収性本体1よりも身丈方向Yの長さが若干短くされている。更に吸収性本体1は、長手方向Yの両側に一対のサイドシート6を備える。サイドシート6の幅方向Xの内方側の端部に長手方向Yに沿って伸長状態で接合された立体ギャザー弾性部材79が配されて、着用時に着用者の肌面に向けて起立し得る立体ギャザーが形成されている。
【0016】
外装体2に関し、腹側部10Fの前側外装体21には、幅方向Xに沿って伸縮可能な状態で延在する弾性部材が身丈方向Yに間隔をあけて複数配置されている。より具体的には、腹側部10Fの前側外装体21において、ウエスト開口部周り弾性部材71、その下側の胴周り弾性部材72が、それぞれ複数配されている(以下、単に弾性部材71、72ともいう)。それぞれの弾性部材は伸長可能な状態で幅方向に延在し、腹側部10Fの左右端部のサイドシール部11、11にて接合され、伸縮可能になっている。
弾性部材72は、腹側部10Fの幅方向Xの中心に配される吸収性本体1と重なる位置にて部分的に切断されている。これにより、弾性部材72の伸縮力で吸収性本体1がヨレないようにして、吸収性本体1と着用者の身体との間に隙間が生じにくくなるようにしている。切断された弾性部材72の端部が吸収体5の左右両側と重なる位置の前側外装体21にて接合され、サイドシール部11に接合された他方の端部との間で伸縮可能にされている。このように弾性部材72は、吸収性本体1と重なる位置の左右外方で幅方向Xに延在している。また、本実施形態において、弾性部材72は吸収性本体1よりも上側に位置するものを含み、この部分においてはサイドシール部11、11間の幅方向Xの全体に連続して伸縮可能に配されている。
【0017】
本実施形態において、前側外装体21には、上記の幅方向Xに沿って延在する弾性部材71、72とは別に、レッグ周り弾性部材78が配されている。より具体的には、レッグ周り弾性部材78は、前身頃10Sにおいて腹側部10Fの左右のサイドシール部11それぞれの下端領域から幅方向Xに延出した後、該幅方向Xに交差する下方向に延びて、股下部10Cの両側縁の緩やかに括れる湾曲部分に沿って外装体2に配されている。このようにしてレッグ周り弾性部材78はレッグ開口部13に沿って配されている。更に、レッグ周り弾性部材78は、長手方向Yの中央線CL近傍において、幅方向Xの内方側に方向を変えて延在している。
【0018】
また本実施形態において、腹側部10Fと同様に、背側部10Rにおいても弾性部材71、72が配設されている。また、身丈方向Yに沿う吸収性本体1が背側部10Rに対して、腹側部10Fの場合と同様に積層されている。更にレッグ周り弾性部材78が、後身頃10Tにおいて背側部10Rの左右のサイドシール部11それぞれの下端領域から、腹前身頃10Sと同様にして股下部10Rのレッグ開口部13に沿って配されている。ただし、背側部10Rから股下部10Cに延びるレッグ周り弾性部材78は、長手方向Yの中央線CLを越えて前身頃10S側に僅かに延出し、その位置で幅方向Xの内方に方向を変え、腹側部10Fから股下部10Cに延びるレッグ周り弾性部材78と重なるようにされている。
【0019】
次に、腹側部10Fの構成についてより詳細に説明する。
腹側部10Fは、ウエスト開口部12から順に強伸縮領域14A、非伸縮領域14B及び弱伸縮領域14Cを有する。
強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cは、幅方向Xに沿う伸縮性を有する領域であり、該伸縮性とは伸長可能で伸長を解除すると収縮する性質を言う。この強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cには、前述の、幅方向Xに沿って伸縮可能な状態で延在する弾性部材71、72がそれぞれ身丈方向Yに間隔をあけて複数配置されている。弾性部材71により強伸縮領域14Aは幅方向Xの伸縮性を有し、弾性部材72により弱伸縮性領域14Cは幅方向Xの伸縮性を有する。これにより、着用者に対するフィット性が腹側部10Fに付与される。前記伸縮性に関し、強伸縮領域14Aは、弱伸縮領域14Cよりも幅方向Xの伸縮応力が強くされている。すなわち、強伸縮領域14Aは、弱伸縮領域14Cよりの幅方向Xに沿って内方へ収縮する力が強く、前記フィット性がより高められている。なお、腹側部10Fの伸縮性及び伸縮応力は、前述の通り弾性部材71及び72によるものであり、弾性部材71及び72が伸縮可能な状態で配される前側外装体21の伸縮性よりなる。
【0020】
前記伸縮応力の相違は、強伸縮領域14Aと弱伸縮領域14Cとにおいて、弾性部材71、72それぞれの伸縮率、本数、ピッチ、種類(直径、素材)等を互いに異ならせること等によって形成することができる。なお、弾性部材71、72の本数やピッチは、
図2に限定されるものでなく、種々の形態をとり得る。また、弾性部材71、72は、この種の物品において通常用いられるものを種々採用できる。例えば糸状、紐状(平ゴム等)のものが挙げられる。弾性部材71、72は、好ましくは、外装体2を構成する2層の不織布等のシートに挟持されて伸縮可能な状態で固定される。
【0021】
非伸縮領域14Bは、弾性部材の伸縮性を発現しない領域である。非伸縮領域14Bは、弾性部材を含まない領域、または弾性部材を含んでも該弾性部材を切断して幅方向Xの伸縮性が発現しないようにして形成することができる。後述のように、おむつ10の着用操作時に指で掴みやすくする観点、着用操作時の掴みしろとして安定的に機能させる観点から、弾性部材を含まない領域であることが好ましい。
【0022】
腹側部10Fにおいて、強伸縮領域14Aがウエスト開口部12周りで締め付けが強く(
図3の矢印F1)、その下側に非伸縮領域14Bがあることで伸縮応力差による掴みやすさ(
図3の手Wの指による掴みやすさ)が高められる。すなわち、強伸縮領域14Aが幅方向Xの内方にウエスト開口部12の口を縮めながら、その隣接下方の非伸縮領域14Bは幅方向Xの長さ全体が保持されやすく、あたかも袋内部の窪みのようになって指を引っ掛けやすい。また、前記伸縮応力差で、おむつ10の着用操作時に指がウエスト開口部12側に抜け難くなる。この指が抜け難いことと、非伸縮領域14Bが弾性部材の伸縮性を発現しない領域であることにより、掴んだ非伸縮領域14Bに対して安定的に穿き上げ力を付与することができる。このように、非伸縮領域14Bは、着用操作時の掴みしろ、言い換えると、おむつ10全体を掴み引き上る基部(幅方向Xに延びる板状の掴み穿き上げ基部)として機能する。
また、非伸縮領域14Bの下側に弱伸縮領域14Cがあることで、非伸縮領域14Bをしっかりと掴んで幅方向Xの外方へと引っ張る力を加えると、該力は上側よりも下側に伝搬しやすくなる。この力の伝搬の方向性は、非伸縮領域14Bが伸縮性を発現しない領域であることと、弱伸縮領域14Cが強伸縮領域14Aよりも伸縮応力が弱くて幅方向Xの外方に伸長しやすいことにより、発現しやすい。これにより、おむつ10の着用操作時に、伸縮性の発現しない非伸縮領域14Bが板状の力点となって弱伸縮領域14Cを幅方向Xの外方に十分広げ得るよう好適に作用する(
図3の矢印F2)。これにより、幅方向Xの外方へ広げる操作性が向上し、おむつ10の着用操作時のおむつ10と身体との摩擦の高まりを抑えて掴んだ指がすべったり抜けたりすることを防止することが可能となる。すなわち、おむつ10全体の着用操作性(穿き上げ操作性)を高めることができる。前述の幅方向Xの外方へ広げる操作性の向上は、着用者自身による場合だけでなく、介護者よる場合でも良好発現し得、またおむつ10を上げ下げする場合でも良好に発現し得る。
更に、非伸縮領域14Bを介してその上下に強伸縮領域14Aと弱伸縮領域14Cがあることで、着用操作後の着用者の身丈方向Yに対するおむつ10の良好なフィット性を維持してズレ落ちを防止するよう、前記2つの領域の間で伸縮応力を制御することが可能となる。
なお、強伸縮領域14Aと弱伸縮領域14Cは、上記の構成であることで上記作用が良好に発現するものである。すなわち、強伸縮領域14Aと弱伸縮領域14Cとが逆の配置である場合、非伸縮領域14Bを掴んだ際に手Wの指がするっと抜けてしまいやすい(
図4)。したがって、上記の着用操作性は、強伸縮領域14Aと弱伸縮領域14Cが上記の配置であることで良好に発現し得る。
【0023】
加えて、弱伸縮領域14Cにおけるサイドシール部11の幅方向内側(幅方向内側端部11B)に隣接する位置に、弱伸縮領域14Cの中で最も伸縮応力が小さい最弱伸縮領域14Dが存在する。すなわち、最弱伸縮領域14Dは、弱伸縮領域14Cの中で、伸縮性を有しながらも幅方向Xに沿って内方に収縮する力が最も弱くされている。これにより、最弱伸縮領域14Dは、弱伸縮領域14Cの中で、より少ない力で幅方向Xの外方に向かって更に広げやすい(
図3の矢印F2)。特に、最弱伸縮領域14Dがサイドシール部11の幅方向内側に隣接する位置にあることで、伸縮性を発現しない非伸縮領域14Bに加えた力がサイドシール部11を介して最弱伸縮領域14Dの身丈方向Y全体に波及しやすく、より広げやすくなる。これにより、おむつ10の着用操作時の身体との摩擦の低減をより確実に発現させて、掴んだ指がすべったり抜けたりすることをより確実に防止することができる。
更に、弱伸縮領域14Cの中でサイドシール部11に接する最弱伸縮領域14Dとその幅方向Xの内方側の内方弱伸縮領域14Eとで伸縮応力を異ならせたことで、最弱伸縮領域14Dでの前述の広げやすさと共に、これよりも相対的に伸長応力の強い内方弱伸縮領域14E及び吸収性本体1の配された領域全体の上方への穿き上げ操作性を高めることができる。加えて、着用操作後の着用者の腹側に対するおむつ10の良好なフィット性を維持するよう前記2つの領域の間で伸縮応力を制御することが可能となる。
【0024】
この最弱伸縮領域14Dは、通常用いられる種々の手段により付与することができる。例えば、最弱伸縮領域14Dと内方弱伸縮領域14Eとで、弾性部材72の伸縮率、本数、ピッチ、種類(直径、素材)等を互いに異ならせることで形成してもよい。また、弱伸縮領域14Cの幅方向X全体に連続した弾性部材72を配し、弱伸縮領域14Cの中でサイドシール部11の幅方向内側に隣接する位置において、弾性部材72にホットメルト型等の接着剤を配して最弱伸縮領域14Dを形成してもよい。前記接着剤の塗工はスプレーやノズルを用いて行うことが、塗工量を好適に制御する点で好ましい。これにより、最弱伸縮領域14Dに伸長性を残しながら抑制された所望の伸縮応力を付与する接着部を好適に形成することが可能となる。前記接着部は、弾性部材72に対して連続的に形成してもよく、間欠的に形成してもよい。より最弱伸縮領域14Dを形成しやすくする観点から、前記接着部は弾性部材72に対して連続的に形成することが好ましい。
【0025】
更に、非伸縮領域14Bの身丈方向Yの幅が、強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cそれぞれにおける弾性部材71、72のピッチ間隔よりも広い。これにより、非伸縮性領域14Bを前述の掴みしろ、すなわち、幅方向Xに延びる板状の掴み穿き上げ基部として身丈方向Yに十分な幅を確保することができる。
【0026】
このようにして、おむつ10は、着用操作後の着用者の身体へのフィット性を維持したまま、着用操作時における指をひっかける掴みやすさと穿き上げる際の幅方向への広げやすさとを両立できる。
【0027】
(強伸縮領域14A、弱伸縮領域14C、最弱伸縮領域14D、内側弱伸縮領域14Eの伸縮応力の測定方法)
(1)
上述したおむつ10を例に挙げて説明すると、おむつ10のサイドシール部11を引き剥がして、おむつ10を展開状態(
図2)とし、外装体2から、伸縮応力の測定対象部位を、平面視長方形形状のサンプルとして切り出す。先ず、腹側部10Fにおいて吸収性本体1の外縁を身丈方向Yに延長させた位置から左右外方の領域を区画する。該領域において、ウエスト開口部12から身丈方向Yに向かって、最も下側に位置する胴回り弾性部材72よりも下側に5mm離間した位置との間の領域までを切り出す。ただし、下側の切り出し位置については、例えば、レッグ周り弾性部材78などが重なる場合は、重ならないところまでとする。得られるサンプルは、幅方向Xの一端にサイドシール部11を含み、他端に吸収性本体1に外接していた領域を含む。
(2)
前記(1)のサンプルから、強伸縮領域14Aおよび弱伸縮領域14Cについてそれぞれ切り出す身丈方向Yの長さを記録しておく。その際、強伸縮領域14Aおよび弱伸縮領域14Cは、下記の通り非伸縮領域14Bの領域を基準にした各領域区分に基づき、更にチャックで掴む部分を含めた領域として身丈方向Yの幅を記録する。具体的には、強伸縮領域14Aの身丈方向Yの長さは、ウエスト開口部12の位置から強伸縮領域14Aの一番下のウエスト開口部周り弾性部材71の5mm下の位置までとする。弱伸縮領域14Cの身丈方向Yの長さは、弱伸縮領域14Cの一番上(ウエスト開口部12側)の胴回り弾性部材72の5mmm上の位置から、弱伸縮領域14Cの一番下(股下側)の胴回り弾性部材72の5mm下の位置までとする。ただし、5mmに満たない場合は端部まで、レッグ周り弾性部材78と重なる場合は重ならないところまでとする。この領域で、前記(1)のサンプルから強伸縮領域14Aおよび弱伸縮領域14Cの各測定サンプルを切り出す。
[非伸縮領域14Bについて]
非伸縮領域14Bは、幅方向Xに延在する弾性部材の身丈方向Yのピッチが最も広い領域とする。
図2に示す本実施形態においては、ウエスト開口部周り弾性部材71のうち最も下側にあるものの下方際から、胴回り弾性部材72のうちもっとも上側にあるものの上方際までの領域とする。
[強伸縮領域14Aについて]
強伸縮領域14Aは、非伸縮領域14Bの身丈方向Yの上端からウエスト開口部12までの領域とする。
図2に示す本実施形態においては、ウエスト開口部周り弾性部材71のうち最も下側にあるものの配置位置からウエスト開口部12までの領域とする。
[弱伸縮領域14Cについて]
弱伸縮領域14Cは、非伸縮領域14Bの身丈方向Yの下端から弾性部材の配される領域の身丈方向Yの下端までの領域とする。
図2に示す本実施形態においては、胴回り弾性部材72のうちもっとも上側にあるものの配置位置から、胴回り弾性部材72のうち最も下側にあるものの配置位置までとする。
(3)
切り出した各測定サンプルに関し、おむつ10の身丈方向Yに対応する方向の長さと、幅方向Xに対応する方向の長さとを測定しておく。次に、測定サンプルを、該測定サンプルの幅方向Xと引張方向とが一致するように、引張試験機(例えば、株式会社島津製作所製の「AUTOGRAPH AGX-V」(商品名)等)のチャック間に固定する。チャック間距離は、30mmとする(サンプルの大きさにより、チャック間距離は短くすることは可能である)。そして、チャック間に測定サンプルを固定し、チャック間距離が180%(この場合54mm)となる長さまで伸長させた後、チャック間距離まで戻し、再度180%となる長さまで伸長させた後、チャック間距離が160%(この場合48mm)となる長さまで減少させたときの引張り荷重(N)を測定し、これを測定サンプルの応力(N)とする。測定は、全て300mm/minで行う。そして、得られた応力(N)を予め記録しておいた身丈方向Yの長さで除して得られる値を、当該測定サンプルの伸縮応力(N/mm)とする。
(4)
弱伸縮領域14Cにおける内方伸縮領域14E、最弱伸縮領域14Dの伸縮応力の測定は、前記(2)にて切り出した弱伸縮領域14Cの測定サンプルから、身丈方向Yに30mm、幅方向Xに70mmとする平面視長方形形状の測定サンプルを切り出す。
この測定サンプルにおいて、最弱伸縮領域14Dは、弱伸縮領域14Cの測定サンプルのサイドシール部11の内側5mmの場所から幅方向Xに20mmの幅の領域(領域D)とする。また、内方伸縮領域14Eは、弱伸縮領域14Cの測定サンプルのサイドシール部11とは反対側(吸収性本体1側)の端部から5~10mmの場所から幅方向Xに20mmの幅の領域(領域E)とする。
前記(3)に示した引張試験機を用いて、上記の領域D及び領域Eそれぞれの幅方向Xの両側外方をチャックし、チャック間距離を20mmとする。どちらも自然状態から300mm/secで160%(この場合32mm)まで伸長させた際の引張り加重(N)を測定し、最弱伸縮領域14Dおよび内方伸縮領域14Eそれぞれの測定サンプルの伸縮応力(N/mm)とする。
【0028】
強伸縮領域14Aは、前述の、着用操作時の掴みやすさや広げやすさを含む円滑な着用操作性をより高める観点から、吸収性本体1と重ならない位置、すなわち吸収性本体1よりもウエスト開口部12側にあることが好ましい。これにより、弾性部材本来の持つ収縮力が最大限に発揮され、掴みやすさの向上につながる。
また同様の観点から、強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cは、サイドシール部11、11間(幅方向内側端部11B、11B)の幅方向X全域を含むことが好ましい。
【0029】
非伸縮領域14Bは、円滑な着用操作性をより高める観点から、サイドシール部11、11間(幅方向内側端部11B、11B)の幅方向X全域を含むことが好ましい。この場合、非伸縮領域14Bは、幅方向Xに沿って連続的に配置されてもよく、断続的に配置されてもよい。円滑な着用操作性をより高める観点から、非伸縮領域14Bは、幅方向Xに沿って連続的に配置されていることが好ましい。
【0030】
腹側部10Fにおいて、各領域の前述の機能をより良好に発現させる観点から、強伸縮領域14A、非伸縮領域14B及び弱伸縮領域14Cの身丈方向Yの幅は、弱伸縮領域14C>強伸縮領域14A≧非伸縮領域14Bの関係になっていることが好ましい。
【0031】
腹側部10Fにおいて、強伸縮領域14Aの身丈方向Yの幅H1の、腹側部10Fの身丈方向Yの幅(H1+H2+H3)に対する比(H1/(H1+H2+H3))は、指が抜けにくくなる観点から、0.1以上が好ましく、0.13以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましい。
また、前記比(H1/(H1+H2+H3))は、掴みしろにしっかりと指がかかる観点から、0.41以下が好ましく、0.35以下がより好ましく、0.30以下が更に好ましい。
【0032】
非伸縮領域14Bの身丈方向Yの幅H2の、強伸縮領域14Aの身丈方向Yの幅H1に対する比(H2/H1)は、掴みしろとしてより掴みやすくする観点、幅方向Xの外方へと広げる力をより好適に加えやすくする観点から、0.33以上が好ましく、掴んだ指がより抜け難くなるようにする観点から、1以下が好ましい。
【0033】
弱伸縮領域14Cの身丈方向Yの幅H3の、強伸縮領域14Aの身丈方向Yの幅H1に対する比(H3/H1)は、着用操作時の広げやすさをより高めて着用者の身体との摩擦をより小さくする観点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上が更に好ましい。
また、前記比(H3/H1)は、着用操作後のフィット性をより高める観点から、6以下が好ましく、5.5以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
【0034】
なお、強伸縮領域14Aの身丈方向Yの幅H1及び弱伸縮領域14Cの身丈方向Yの幅H3は、前述の(強伸縮領域14A、弱伸縮領域14C、最弱伸縮領域14D、内側弱伸縮領域14Eの伸縮応力の測定方法)に示すサンプルの切り出し方法に基づいて特定される。
【0035】
強伸縮領域14Aの身丈方向Yの幅H1は、20mm以上45mm以下が好ましい。
非伸縮領域14Bの身丈方向Yの幅H2は、15mm以上40mm以下が好ましい。
弱伸縮領域14Cの身丈方向Yの幅H3は、50mm以上120mm以下が好ましい。
【0036】
弱伸縮領域14Cにおいて、吸収性本体1と重なる位置の左右外方の幅方向Xの長さW1に対する、最弱伸縮領域14Dの幅方向Xの長さW2の比(W2/(W1=W2+W3))は、幅方向Xの外方への広げやすさをより高める観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
また、前記比(W2/(W1=W2+W3))は、着用操作後の着用者の腹側へのフィット性をより高める観点から、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0037】
腹側部10Fにおいて、弱伸縮領域14Cの伸縮応力の、強伸縮領域14Aの伸縮応力に対する比は、幅方向Xの外方への広げやすさをより高める観点から、0.75以下が好ましく、0.65以下がより好ましい。
また、弱伸縮領域14Cの伸縮応力の、強伸縮領域14Aの伸縮応力に対する比は、着用操作後のフィット性をより高める観点から、0.05以上が好ましく、0.15以上がより好ましい。
【0038】
弱伸縮領域14Cにおいて、最弱伸縮領域14Dの伸縮応力の、内方弱伸縮領域14Eの伸縮応力に対する比は、幅方向Xの外方への広げやすさをより高める観点から、0.95以下が好ましい。
また、最弱伸縮領域14Dの伸縮応力の、内方弱伸縮領域14Eの伸縮応力に対する比は、着用操作後のフィット性をより高める観点から、0.50以上が好ましい。
【0039】
なお、前述の伸縮応力の関係は、強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cそれぞれの領域全体で把握される値である。このように各領域全体で把握される伸縮応力の関係である限り、強伸縮領域14A及び弱伸縮領域14Cのそれぞれ中に複数の伸縮領域を含んでもよい。
【0040】
更に、腹側部10Fにおいて、掴みしろとしての非伸縮領域14Bを視覚的に目立たせる観点から、強伸縮領域が着色されていることが好ましい。また、同様の観点から、最弱伸縮領域14Dが着色されていることが好ましく、弱伸縮領域14Cが着色されていることがより好ましい。前記着色は、この種の物品において通常用いられる種々の方法によりなされる。例えば、着色した接着剤を塗工してもよく、着色した弾性部材を用いてもよい。
【0041】
おむつ10において、前述の腹側部10Fが有する強伸縮領域14A、非伸縮領域14B及び弱伸縮領域14C、並びに弱伸縮領域14Bに含まれる最弱伸縮領域14D及び内方弱伸縮領域14Eの構成の構成が、背側部10Rにも配されていることが好ましい(
図2)。すなわち、背側部10Rにおいて、強伸縮領域15A、非伸縮領域15B及び弱伸縮領域15C、並びに弱伸縮領域に含まれる最弱伸縮領域15D及び内方弱伸縮領域15Eが、腹側部10Fが有する強伸縮領域14A、非伸縮領域14B及び弱伸縮領域14C、並びに弱伸縮領域14Bに含まれる最弱伸縮領域14D及び内方弱伸縮領域14Eと同様に構成されていることが好ましい。これにより、おむつ10の着用操作後の着用者の身体へのフィット性をより高く維持したまま、着用操作時における指をひっかける掴みやすさと幅方向への広げやすさとを共により高めて、おむつ10の着用操作性をより向上させることができる。
この観点から、腹側部10Fが有する強伸縮領域14A、非伸縮領域14B及び弱伸縮領域14Cに係る前述した各種の構成を、背側部10Rが有することが好ましい。
【0042】
更におむつ10において、外装体2を構成する最外装シート21の折り返し部21Aと非伸縮領域14Bとの重なりが、非伸縮領域14Bの身丈方向Yの幅の2分の1未満であることが好ましい(
図5)。すなわち、最外装シート21の折り返し部21Aにおける非伸縮領域14Bとの重なり部21Bの身丈方向Yの幅H21が、非伸縮領域14Bの身丈方向Yの幅H2の2分の1未満であることが好ましい。
これにより、掴みしろとなる非伸縮領域14Bに指が入り込む段差が生じ、より掴みやすくなる。また、非伸縮領域14Bにおいて折り返し部21Aの捲れの増加を抑えて、掴んだ際の不快感を抑え、捲れによる掴み操作に対する阻害を回避することができる。
【0043】
外装体2を構成する最外装シート21とは、外装体2が複数のシートの積層体である場合に、該積層体における最も外側のシートを意味し、最も非肌面側のシート及び最も肌面側のシートを含む。最外装シート21の折り返し部21Aとは、外装体2がウエスト開口部12側の端部10Eから肌面側に折り返された部分であって、外装体2の中で最も肌面側に位置するシートを意味する。
【0044】
おむつ10を構成する部材を構成素材は、この種の物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。
例えば、各種の弾性部材には、この種の物品に用いられる通常のものを用いることができ、例えば素材としては、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、もしくはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。具体的に糸ゴムについては前述したような繊度のものが用いられる。
【0045】
外装体2は、1層からなる構成でも2層以上からなる構成でもよく、いずれの場合もその構成部材としては、不織布、不織布と樹脂フィルムとの積層材、多孔性フィルム等が挙げられる。また外装体2は液不透過性を有していた方が防漏性の観点から好ましく、通気性及び水蒸気の透過性を有していた方が、おむつ内の過度の湿度の上昇を防ぐために好ましい。
【0046】
吸収性本体1をなす表面シート3は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水性のサーマルボンド不織布が好ましく、特にエアスルー不織布が好ましい。表面シート3は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0047】
裏面シート4としては、液の透過を防ぎ透湿性を有していれば特に限定されないが、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高~低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0048】
吸収性コア5としては、親水性繊維と高吸水性ポリマー粒子との混合物、親水性繊維と高吸水性ポリマー粒子と熱可塑性合成樹脂繊維との混合物、または、複数の繊維シートの間に高吸水性ポリマー粒子が挟まれた吸水性シートなどが挙げられる。前記親水性繊維としては、親水性表面を有する繊維を用いることができ、例えばセルロース繊維や、合成繊維を必要に応じ界面活性剤等により親水化処理したものが挙げられる。前記混合物の場合、その型崩れやポリマー粒子の脱落を防ぐため、その全体がティッシュペーパーや親水性繊維不織布等の透液性シートに被覆されている。ポリマー粒子としては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のものを使用することができる。
【0049】
サイドシート6としては、撥水性の不織布が好ましく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)、スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド(SMMS)、スパンボンド-スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SSMS)不織布等が用いられる。
【0050】
本発明のパンツ吸収性物品は、乳幼児用のものであっても、成人用のものであってもよく、おむつ以外の形態のものであってもよい。例えば、おむつ以外の形態として、生理用ショーツ、ショーツ型ナプキン、使い捨てショーツ等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 吸収性本体
2 外装体
10 パンツ型おむつ
10F 腹側部
10C 股下部
10R 背側部
11 サイドシール部
12 ウエスト開口部
13 レッグ開口部
14A、15A 強伸縮領域
14B、15B 非伸縮領域
14C、15C 弱伸縮領域
14D、15D 最弱伸縮領域
14E、15E 内方弱伸縮領域
71 (ウエスト開口部周り)弾性部材
72 (胴回り)弾性部材