(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025086919
(43)【公開日】2025-06-10
(54)【発明の名称】調光ユニット
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20250603BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1339 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201171
(22)【出願日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上村 龍志
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088FA18
2H088FA29
2H088GA10
2H088HA02
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA16
2H189CA33
2H189DA72
2H189EA03Y
2H189FA56
2H189FA81
2H189GA53
2H189HA07
2H189LA04
(57)【要約】
【課題】調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止することができる調光ユニットを提供する。
【解決手段】本実施形態の調光ユニットは、調光フィルムと、前記調光フィルムに駆動電圧を印加する電極部と、前記調光フィルムのうち前記電極部を含む第1領域を挟み込むことによって封止して、前記調光フィルムのうち前記電極部を含まない第2領域を封止せずに露出させる封止部と、を有することを特徴とする。本実施形態の調光ユニットは、前記電極部に接続された配線部をさらに有し、前記封止部は、前記調光フィルムのうち前記電極部と前記配線部を含む前記第1領域を挟み込むことによって封止して、前記調光フィルムのうち前記電極部と前記配線部を含まない前記第2領域を封止せずに露出させてもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光フィルムと、
前記調光フィルムに駆動電圧を印加する電極部と、
前記調光フィルムのうち前記電極部を含む第1領域を挟み込むことによって封止して、前記調光フィルムのうち前記電極部を含まない第2領域を封止せずに露出させる封止部と、
を有することを特徴とする調光ユニット。
【請求項2】
前記電極部に接続された配線部をさらに有し、
前記封止部は、前記調光フィルムのうち前記電極部と前記配線部を含む前記第1領域を挟み込むことによって封止して、前記調光フィルムのうち前記電極部と前記配線部を含まない前記第2領域を封止せずに露出させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の調光ユニット。
【請求項3】
前記封止部は、前記調光フィルムのうち前記電極部を含む前記第1領域を挟み込むことによって封止する一対のヒートシール部から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の調光ユニット。
【請求項4】
前記一対のヒートシール部は、前記調光フィルムと対向する面の反対側の面に位置する、PET(Polyethylene Terephthalate)とHC(Hard-Coating)を含む保護層を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項5】
前記一対のヒートシール部は、前記調光フィルムと対向する面に位置する、プライマ材を含む密着層を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項6】
前記調光フィルムは、液晶層と、前記液晶層の外側に位置する透明導電層と、前記透明導電層の外側に位置する複数層の外側支持層とを有し、
前記外側支持層の少なくとも一層は、前記一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断される、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項7】
前記透明導電層は、前記液晶層の両面の外側に位置する一対が設けられ、
前記外側支持層は、前記一対の透明導電層のそれぞれの外側に位置する一対が設けられ、
前記一対の外側支持層のそれぞれは、その少なくとも一層が、前記一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断される、
ことを特徴とする請求項6に記載の調光ユニット。
【請求項8】
前記調光フィルムは、液晶層と、前記液晶層の外側に位置する透明導電層と、前記透明導電層の外側に位置する第1外側支持層と、前記第1外側支持層の外側に位置する第2外側支持層とを有し、
前記第1外側支持層は、前記一対のヒートシール部により挟み込まれ、
前記第2外側支持層は、前記一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断される、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項9】
前記透明導電層は、前記液晶層の両面の外側に位置する一対が設けられ、
前記第1外側支持層と前記第2外側支持層は、前記一対の透明導電層のそれぞれの外側に位置する一対が設けられ、
前記一対の第1外側支持層は、前記一対のヒートシール部により挟み込まれ、
前記一対の第2外側支持層は、前記一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断される、
ことを特徴とする請求項8に記載の調光ユニット。
【請求項10】
前記一対のヒートシール部の端面と前記第2外側支持層の端面は、両端面の間に空隙をおいて対向する、
ことを特徴とする請求項8に記載の調光ユニット。
【請求項11】
前記一対のヒートシール部は、熱可塑性樹脂製の熱接着フィルムから構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項12】
前記調光フィルムは、液晶層と、前記液晶層の一方の面の外側に順に位置する透明導電層と外側支持層と、前記液晶層の他方の面の外側に順に位置する透明導電層と外側支持層とを有し、
前記液晶層の一方の面の前記透明導電層と前記外側支持層が、前記液晶層の他方の面の前記透明導電層と前記外側支持層よりもせり出した段差部が設けられ、
前記一対のヒートシール部は、前記段差部を越えた前記液晶層の他方の面の前記透明導電層と前記外側支持層への乗り上げ距離が5mm以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【請求項13】
前記調光フィルムの総厚は、400μm以下であり、
前記一対のヒートシール部により前記調光フィルムを挟み込んだ部分の総厚は、500μm以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の調光ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調光シートと、支持基材と、被覆部と、一対の配線部と、防水性粘着層と、を備える調光ユニットが記載されている。調光シートは、高分子ネットワークが有する空隙に液晶組成物を保持する調光層、および、調光層を挟む一対の透明電極層を備える。支持基材は、調光シートよりも大きい外形を有する。被覆部は、支持基材上において調光シートの外縁に沿って延びて調光シートの端面を覆い、調光シートの外部から調光層の内部に向けて水分が浸入することを抑える。一対の配線部は、各透明電極層に1つずつ接続して、支持基材の外側まで延びる。防水性粘着層は、各配線部と支持基材との間に1つずつ位置して、各配線部を支持基材に貼り付ける。特許文献1の調光ユニットは、調光シートの表面と対向する平面視にて調光シートが支持基材の内側に位置した状態で、調光シートが支持基材に取り付けられている。
【0003】
特許文献2には、第1接合面を有した第1透明被覆基材と、第2接合面を有した第2透明被覆基材と、第1接合面と第2接合面との間に位置する調光フィルムと、を備える調光シートが記載されている。調光フィルムは、第1透明電極フィルムと、第2透明電極フィルムと、液晶層と、を備える。第1透明電極フィルムは、第1電極層と、第1電極層を支持する第1支持フィルムとを備え、第1支持フィルムが第1接合面に接合されている。第2透明電極フィルムは、第2電極層と、第2電極層を支持する第2支持フィルムとを備え、第2支持フィルムが第2接合面に接合されている。液晶層は、第1透明電極フィルムと第2透明電極フィルムとの間を埋める液晶組成物を備える。特許文献2の調光シートは、調光フィルムと第1接合面間、および調光フィルムと第2接合面間を接合する透明粘着層をさらに備え、透明粘着層は、厚さ50μm以上100μm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6669218号公報
【特許文献2】特開2021-140076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の鋭意研究によると、特許文献1、2は、調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止するという観点において、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止することができる調光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の調光ユニットは、調光フィルムと、前記調光フィルムに駆動電圧を印加する電極部と、前記調光フィルムのうち前記電極部を含む第1領域を挟み込むことによって封止して、前記調光フィルムのうち前記電極部を含まない第2領域を封止せずに露出させる封止部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止することができる調光ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】調光フィルム及び電極部の構造を示す断面図である。
【
図4】調光ユニットの構造を示す第1の断面図である。
【
図5】調光ユニットの構造を示す第2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「上面」及び「下面」は、例えば、図中における上側の面及び下側の面として定義してもよい(図中の上下方向を基準として定義してもよい)。また、本明細書において、「外側」及び「外側支持層」は、図中の上下方向とは無関係に、ある基準(中心)となる層の外側であること、ある基準(中心)となる層の外側に支持された層として定義してもよい。例えば、ある基準(中心)となる層Aが設けられ、層Aの両面に層Bが設けられ、層Bの両面に層Cが設けられた積層構造を想定する。この場合、層Bは、層Aの「外側」に支持された「外側支持層(例えば第1外側支持層)」であり、層Cは、層Aと層Bの「外側」に支持された「外側支持層(例えば第2外側支持層)」である。その意味で、「外側」及び「外側支持層」は、「上層」及び「上層支持層」と読み替えてもよく、この場合、ある基準(中心)となる層から離れるほど上層側と定義され、ある基準(中心)となる層に近付くほど下層側と定義される。
【0011】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、調光フィルム及び電極部の構造を示す断面図である。
図2は、調光ユニットの構造を示す上面図である。
図3は、ヒートシール部の構造を示す断面図である。
図4は、調光ユニットの構造を示す第1の断面図である。
図5は、調光ユニットの構造を示す第2の断面図である。
【0013】
図1、
図4、
図5に示すように、調光フィルム10は、液晶層(調光層)11を有している。液晶層11は、液晶組成物を含んでいる。液晶層11は、例えば、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、カプセル型ネマティック液晶(NCAP:Nematic Curvilinear Aligned Phase)等から構成される。例えば、高分子ネットワーク型液晶は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークが有する空隙に液晶分子を保持する。液晶層11が含む液晶分子は、例えば、誘電率異方性が正であって、液晶分子の長軸方向の誘電率が液晶分子の短軸方向の誘電率よりも大きい。液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。
【0014】
液晶層11の一方の面(
図1、
図4、
図5の上面)の外側には、透明導電層(透明電極層)12Xが設けられており、透明導電層12Xの外側には、PET(Polyethylene Terephthalate)層13Xが設けられている。また、PET層13Xの外側には、機能性フィルム層14Xが設けられていてもよい。機能性フィルム層14Xは、例えば、HC(Hard-Coating)層、スモーク層、UV(ultraviolet)カット層の少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、機能性フィルム層14Xは、
図1には描いておらず、
図4、
図5に描いている。
【0015】
液晶層11の他方の面(
図1、
図4、
図5の下面)の外側には、透明導電層(透明電極層)12Yが設けられており、透明導電層12Yの外側には、PET(Polyethylene Terephthalate)層13Yが設けられている。また、PET層13Yの外側には、機能性フィルム層14Yが設けられていてもよい。機能性フィルム層14Yは、例えば、HC(Hard-Coating)層、スモーク層、UV(ultraviolet)カット層の少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、機能性フィルム層14Yは、
図1には描いておらず、
図4、
図5に描いている。
【0016】
透明導電層12X、12Yは、導電性を有する透明な層である。透明導電層12X、12Yを構成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含むポリマー、Ag合金薄膜を含む多層膜等が挙げられる。
【0017】
ここで、
図4、
図5では、透明導電層12X、12Yの外側に位置する「外側支持層」として、PET層13X、13Y、及び、機能性フィルム層14X、14Yを例示して説明しているが、透明導電層12X、12Yの外側に位置する「外側支持層」として、PET層13X、13Y、及び、機能性フィルム層14X、14Yに追加/代替の他の層を設けてもよい。つまり、「外側支持層」の数や種類には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【0018】
例えば、透明導電層12X、12Yの外側に位置する「外側支持層」として、透明な基材からなる透明支持層を設けてもよい。透明支持層として、例えば、ガラス基板やシリコン基板、あるいは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース等からなる高分子フィルムが用いられてもよい。
【0019】
さらに、透明導電層12X、12Yの外側に位置する「外側支持層」として、例えば、液晶層11や透明導電層12X、12Yを保護するための層、調光フィルム10における光の透過性の制御に寄与する層、調光フィルム10の強度や耐熱性等の特性を高める層等が用いられてもよい。
【0020】
本実施形態では、透明導電層12X、12Yの外側に位置するPET層13X、13Yを「第1外側支持層」と呼び、PET層13X、13Yの外側に位置する機能性フィルム層14X、14Yを「第2外側支持層」と呼ぶことがある。
【0021】
液晶層11の一方の面(
図1の上面)の外側に順に位置する透明導電層12XとPET層13X、及び、液晶層11の他方の面(
図1の下面)の外側に順に位置する透明導電層12YとPET層13Yは、平面視したときの位置が互いにずれるように配置されている。
【0022】
例えば、
図1の左側に注目したとき、液晶層11の他方の面(
図1の下面)に設けられた透明導電層12YとPET層13Yが、液晶層11の一方の面(
図1の上面)に設けられた透明導電層12XとPET層13Xよりも左側にせり出した段差部DXが設けられている。そして、段差部DXより左側に位置する透明導電層12Yの上面に、調光フィルム10に駆動電圧を印加する電極部20Yが設けられている。電極部20Yには、配線部25Yが接続されている。配線部25Yは、FPC(Flexible Printed Circuits)から構成されていてもよい。
【0023】
さらに、
図1の右側に注目したとき、液晶層11の一方の面(
図1の上面)に設けられた透明導電層12XとPET層13Xが、液晶層11の他方の面(
図1の下面)に設けられた透明導電層12YとPET層13Yよりも右側にせり出した段差部DYが設けられている。そして、段差部DYより右側に位置する透明導電層12Xの上面に、調光フィルム10に駆動電圧を印加する電極部20Xが設けられている。電極部20Xには、配線部25Xが接続されている。配線部25Xは、FPC(Flexible Printed Circuits)から構成されていてもよい。
【0024】
以上のように構成された調光フィルム10は、電極部20X及び配線部25Xを介して透明導電層12Xに駆動電流を流し、電極部20Y及び配線部25Yを介して透明導電層12Yに駆動電流を流すと、透明導電層12X、12Yの間、すなわち液晶層11に駆動電圧が印加される。
【0025】
透明導電層12X、12Yの間(液晶層11)に駆動電圧が印加されていないとき、液晶層11の液晶分子の長軸方向の向きは不規則である。そのため、液晶層11に入射した光は散乱し、調光フィルム10は白濁して見える。すなわち、調光フィルム10は不透明である。
【0026】
一方、透明導電層12X、12Yの間(液晶層11)に駆動電圧が印加されると、液晶層11の液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が透明導電層12X、12Yの間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、液晶層11を光が透過しやすくなり、調光フィルム10は透明となる。
【0027】
なお、調光フィルム10は、液晶層11と透明導電層12X、12Yの間で液晶層11を挟む一対の配光層を備えていてもよい。配光層は、液晶層11が含む液晶分子の配向を制御する層であり、駆動電圧が印加されていないとき、液晶分子を配向層の法線方向に沿って配向させる。配向層を備える構成では、透明導電層12X、12Yの間(液晶層11)に駆動電圧が印加されているとき、調光フィルム10が不透明となり、透明導電層12X、12Yの間(液晶層11)に駆動電圧が印加されていないとき、調光フィルム10が透明となる。配向層を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレートが挙げられる。配向層を形成するための配向処理は、例えば、ラビング処理、偏光照射処理、微細加工処理である。
【0028】
また、液晶層11は、所定の色を有する色素であって、液晶層11に印加された電圧の大きさに応じた液晶分子の運動を妨げない色素を含んでもよい。こうした構成によれば、所定の色を有する調光フィルム10が実現される。
【0029】
調光フィルム10は、例えば、調光フィルム10を構成する各層を備えた多層体からなる大判のシートから所望の形状に切り出されて、各種の用途に使用される。例えば、調光フィルム10は、普段は透明ガラスでよいが、特定の時だけ内部、外部からの視界を遮断するための瞬間調光クリスタルマジックフィルム、オフィスパーテーション、合わせガラス、すりガラス等の各種用途に適用することができる。
【0030】
ところで、本発明者の鋭意研究によると、調光フィルムはその機能を損なわずに電極部を含む必要箇所(例えば電極部及び配線部)を好適に封止することが要求されるところ、従来手法では当該要求に十分に応えることができていない。とりわけ、より大きい調光フィルムを駆動させるための補助電極、調光フィルムを分割駆動させる上での引き回し配線を用いる場合には、それを含む広大なエリアを効果的に封止することが困難となるおそれがある。
【0031】
例えば、調光フィルムの電極部及び配線部の封止手法として、硬化性樹脂等を塗布する方法、防水テープを用いる方法、パウチを用いる方法がある。
【0032】
しかし、硬化性樹脂を塗布する場合、電極部の凹凸や表面の塗れ性などの影響により、塗布膜厚にばらつきが発生したり、最悪の場合塗れていないエリアが発生したりする結果、その際の僅かな隙間から水分が浸入することで封止の信頼性が低下する懸念がある。
【0033】
上述の特許文献1は、防水テープを用いる方法に相当するものであるが、厳しい温湿度耐性(例えば車載信頼性条件としての温度85℃/湿度85%)に応えることが難しい。
【0034】
上述の特許文献2は、パウチを用いる方法に相当するものであるが、調光フィルム及び電極の全体をパウチするので、調光フィルムの機能部分(透明/不透明が切り替わる積層構造部分)である視認エリアの光学性能が低下してしまう。
【0035】
本発明者は、上記の問題点を重要な技術課題として捉えて、調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止するための構造を着想した。
【0036】
より具体的に、調光フィルムを、電極部(及び配線部)を含む第1領域と、電極部(及び配線部)を含まない第2領域とに区画する。例えば、
図1において、右側に位置する電極部20X(及び配線部25X)を含む「第1領域」が区画され、左側に位置する電極部20Y(及び配線部25Y)を含む「第1領域」が区画され、中央に位置する電極部20X(及び配線部25X)並びに電極部20Y(及び配線部25Y)を含まない「第2領域」が区画される。
【0037】
そして、一対のヒートシール部(封止部)30により、調光フィルム10のうち、電極部20X(及び配線部25X)を含む「第1領域」、並びに、電極部20Y(及び配線部25Y)を含む「第1領域」を挟み込むことによって封止する、一方、一対のヒートシール部(封止部)30は、調光フィルム10のうち電極部20X(及び配線部25X)並びに電極部20Y(及び配線部25Y)を含まない「第2領域」を封止せずに露出させる。
【0038】
これにより、電極部(及び配線部)を含んだ第1領域だけをピンポイントで(スポット的に)封止する一方、調光フィルムの機能部分(透明/不透明が切り替わる積層構造部分)である第2領域を封止せずに露出させるので、視認エリアの光学性能を向上(維持)することができる。
【0039】
図2A、
図2B、
図2Cは、上面視矩形の調光フィルム10に各一対の電極部と配線部、すなわち、電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yを設けた場合における、第1領域と第2領域の切り分け方を例示している。
【0040】
図2Aは、上面視矩形の調光フィルム10の下辺に隣接して、電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yが設けられている。電極部20Xは紙面手前側に突出して配置されており、電極部20Yは紙面奥側に突出して配置されている。また、電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yを含む「第1領域(上面視矩形の調光フィルム10の下辺近傍)」をグレーのパターンで塗り潰して描くとともに、当該「第1領域」をヒートシールにより封止している。電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yを含まない「第2領域」は、ヒートシールにより封止されずに露出されている。
【0041】
図2Bは、上面視矩形の調光フィルム10の下辺に電極部20X及び配線部25Xが設けられ、上面視矩形の調光フィルム10の上辺に電極部20Y及び配線部25Yが設けられている。電極部20Xは紙面手前側に突出して配置されており、電極部20Yは紙面奥側に突出して配置されている。また、電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yを含む「第1領域(上面視矩形の調光フィルム10の上辺近傍と下辺近傍)」をグレーのパターンで塗り潰して描くとともに、当該「第1領域」をヒートシールにより封止している。電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yを含まない「第2領域」は、ヒートシールにより封止されずに露出されている。さらに、
図2Bの左側のI-I線に沿う断面図が
図1の断面図に相当してもよい。
【0042】
図2Cは、上面視矩形の調光フィルム10の下辺に隣接して、電極部20X及び配線部25X並びに電極部20Y及び配線部25Yが設けられている。電極部20Xは紙面手前側に突出して配置されており、電極部20Yは紙面奥側に突出して配置されている。また、電極部20Xには、
図2C中の左下隅に位置するL字型の引き回し配線部26Xが接続されており、電極部20Yには、
図2C中の右下隅に位置する逆L字型の引き回し配線部26Yが接続されている。そして、電極部20Xと配線部25Xと引き回し配線部26X及び電極部20Yと配線部25Yと引き回し配線部26Yを含む「第1領域(上面視矩形の調光フィルム10の下辺近傍と左辺近傍と右辺近傍)」をグレーのパターンで塗り潰して描くとともに、当該「第1領域」をヒートシールにより封止している。電極部20Xと配線部25Xと引き回し配線部26X及び電極部20Yと配線部25Yと引き回し配線部26Yを含まない「第2領域」は、ヒートシールにより封止されずに露出されている。
【0043】
図3~
図5を参照して、ヒートシール部(封止部)30の断面構造について説明する。
図3は、一対のヒートシール部(封止部)30の一方を描いており、調光フィルム10の一方の面(
図1、
図4、
図5の上面)に設けられた各層(透明導電層12XとPET層13X又は透明導電層12XとPET層13Xと機能性フィルム層14X)を挟み込むものである。実際には、
図4、
図5に描いた他方のヒートシール部30が、調光フィルム10の他方の面(
図1、
図4、
図5の下面)に設けられた各層(透明導電層12YとPET層13Y又は透明導電層12YとPET層13Yと機能性フィルム層14Y)を挟み込む。
【0044】
ヒートシール部30は、熱可塑性樹脂製の熱接着フィルムから構成されるヒートシール層31を有している。ヒートシール層31は、常温で固体であり、加熱すると液体化する性質を持っており、ヒートシール部30を調光フィルム10の一方の面(
図1、
図4、
図5の上面)に設けられた各層(透明導電層12XとPET層13X又は透明導電層12XとPET層13Xと機能性フィルム層14X)の「第1の領域」に当て付けて加熱した後に冷ますことにより、ヒートシール部30を密着させて「第1の領域」を封止することができる。同様に、ヒートシール部30を調光フィルム10の他方の面(
図1、
図4、
図5の下面)に設けられた各層(透明導電層12YとPET層13Y又は透明導電層12YとPET層13Yと機能性フィルム層14Y)の「第1の領域」に当て付けて加熱した後に冷ますことにより、ヒートシール部30を密着させて「第1の領域」を封止することができる。
【0045】
ヒートシール部30(ヒートシール層31)は、調光フィルム10と対向する面の反対側の面に位置する保護層として、PET(Polyethylene Terephthalate)層32と、HC(Hard-Coating)層33とを有している。保護層としてのPET層32とHC層33とを設けることにより、ヒートシール部30による調光フィルム10の「第1領域」の封止部の強度や耐久性を向上させることができる。
【0046】
ヒートシール部30(ヒートシール層31)は、調光フィルム10と対向する面に位置するプライマ層34を有している。プライマ層34を設けることにより、ヒートシール部30による調光フィルム10の「第1領域」との密着性を向上させ、より優れた封止機能を得ることができる。
【0047】
なお、ヒートシール部30(ヒートシール層31)のPET層32とHC層33とプライマ層34は、必須の構成要素ではなく、これらの少なくとも一部を省略したり、他の層と代替したりしてもよい。
図3の断面図は、PET層32とHC層33とプライマ層34を描いているが、
図4、
図5の断面図は、プライマ層34を省略してPET層32とHC層33のみを描いている。
【0048】
図4を参照して、一対のヒートシール部30による調光フィルム10の「第1領域」の挟み込み封止構造の第1の例について説明する。
図4は、
図1の左側に位置する電極部20Y(及び配線部25Y)を含む「第1領域」の挟み込み封止構造を描いているが、同様の挟み込み封止構造が、
図1の右側に位置する電極部20X(及び配線部25X)を含む「第1領域」にも適用される。
【0049】
図4に示すように、上下一対のヒートシール部30が、調光フィルム10の左端部近傍に位置する「第1領域」の液晶層11とその両面に積層された透明導電層12X、12YとPET層13X、13Yと機能性フィルム層14X、14Yを挟み込んで封止することにより、電極部20Yと配線部25Yを保護している。一方、上下一対のヒートシール部30は、調光フィルム10の中央側に位置する「第2領域」の液晶層11とその両面に積層された透明導電層12X、12YとPET層13X、13Yと機能性フィルム層14X、14Yを挟み込まずに露出させている。
【0050】
上方のヒートシール部30は、段差部DXを越えた「第1領域」の液晶層11とその上面に積層された透明導電層12XとPET層13Xと機能性フィルム層14Xへの乗り上げ距離Aが5mm以下であることが好ましい。乗り上げ距離Aが5mmより大きくなると、「第2領域」が狭くなりすぎて、調光フィルム10の機能部分(透明/不透明が切り替わる積層構造部分)である視認エリアの光学性能が低下するおそれがある。
【0051】
調光フィルム10の総厚h1は、400μm以下であり、一対のヒートシール部30により調光フィルム10を挟み込んだ部分の総厚h2は、500μm以下であることが好ましい。これにより、調光ユニット1の小型化(薄型化)を図って、調光ユニット1の適用対象を広げる(柔軟性を持たせる)ことができる。
【0052】
図5を参照して、一対のヒートシール部30による調光フィルム10の「第1領域」の挟み込み封止構造の第2の例について説明する。
図5は、
図1の左側に位置する電極部20Y(及び配線部25Y)を含む「第1領域」の挟み込み封止構造を描いているが、同様の挟み込み封止構造が、
図1の右側に位置する電極部20X(及び配線部25X)を含む「第1領域」にも適用される。
図4の第1の例と共通する部分については、重複する説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、上下一対のヒートシール部30が、調光フィルム10の左端部近傍に位置する「第1領域」の液晶層11とその両面に積層された透明導電層12X、12YとPET層13X、13Yを挟み込んで封止することにより、電極部20Yと配線部25Yを保護している。一方、上下一対のヒートシール部30は、調光フィルム10の中央側に位置する「第2領域」の液晶層11とその両面に積層された透明導電層12X、12YとPET層13X、13Yと機能性フィルム層14X、14Yを挟み込まずに露出させている。
【0054】
ここで、PET層13X、13Yの外側に位置する機能性フィルム層14X、14Yに注目する。
図4の第1の例では、機能性フィルム層14X、14Yが一対のヒートシール部30によって挟み込み封止されているのに対して、
図5の第2の例では、機能性フィルム層14X、14Yが一対のヒートシール部30によって挟み込み封止されない位置まで、液晶層11とその両面に積層された透明導電層12X、12YとPET層13X、13Yに対して切断(ハーフカット)されている。
【0055】
すなわち、一対の第1外側支持層としてのPET層13X、13Yは、一対のヒートシール部30により挟み込まれ、一対の第2外側支持層としての機能性フィルム層14X、14Yは、一対のヒートシール部30により挟み込まれない位置まで切断(ハーフカット)されている。また、一対のヒートシール部30の端面(右端面)と、一対の第2外側支持層としての機能性フィルム層14X、14Yの端面(左端面)とは、両端面の間に空隙をおいて対向している。
【0056】
これにより、一対のヒートシール部30による挟み込み封止による厚みの増加分を吸収する(一対のヒートシール部30により調光フィルム10を挟み込んだ部分の総厚h2を小さくする)ことができる。また、調光シート10の機能領域(第2領域)と一対のヒートシール部30との段差を小さくすることができる。その結果、調光ユニット1の小型化(薄型化)を図って、調光ユニット1の適用対象を広げる(柔軟性を持たせる)ことができる。また、例えば、合わせガラスやすりガラスへの適用時に段差吸収し易い構造、及び、気泡を抑制し易い構造を提供することができる。
【0057】
上記実施形態では、透明導電層12X、12Yの外側に位置する「複数層の外側支持層」として、PET層13X、13Y(第1外側支持層)と機能性フィルム層14X、14Y(第2外側支持層)を例示して説明した。しかし、「複数層の外側支持層」の数や種類には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【0058】
そして、上下一対の外側支持層のそれぞれは、その少なくとも一層が、上下一対のヒートシール部30により挟み込まれない位置まで切断(ハーフカット)されていてもよい。例えば、「複数層の外側支持層」として第1外側支持層と第2外側支持層と第3外側支持層を設けて、これらの一部又は全部を上下一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断(ハーフカット)してもよい。あるいは、第1外側支持層は上下一対のヒートシール部により挟み込まれ、第2外側支持層と第3外側支持層は上下一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断(ハーフカット)されており、且つ、第2外側支持層と第3外側支持層の切断長(ハーフカット長)を互いに異ならせて滑らかな段差とするようにしてもよい。
【0059】
このように、本実施形態の調光ユニットは、調光フィルムと、調光フィルムに駆動電圧を印加する電極部と、調光フィルムのうち電極部を含む第1領域を挟み込むことによって封止して、調光フィルムのうち電極部を含まない第2領域を封止せずに露出させる封止部と、を有することを特徴とする。これにより、調光フィルムの機能を損なわずに電極部を含む必要箇所を好適に封止することができる。
【0060】
また、調光フィルムにおける補助電極や引き回し配線を含む広大なエリアをまとめて封止でき、かつ封止の信頼性を向上させることができる。さらに、電極部と配線部を含んだ第1領域だけをピンポイントで(スポット的に)封止する一方、調光フィルムの機能部分(透明/不透明が切り替わる積層構造部分)である第2領域を封止せずに露出させるので、視認エリアの光学性能を向上(維持)することができる。
【0061】
加えて、電極部と配線部を含んだ第1領域を挟み込んで封止するに際し、調光フィルムの外側支持層の少なくとも一層を、一対のヒートシール部により挟み込まれない位置まで切断する(ハーフカットする)ことにより、上述した特許文献2の全面パウチと比較して、例えば、合わせガラスやすりガラスへの適用時に段差吸収し易い構造、及び、気泡を抑制し易い構造を提供することができる。
【0062】
本実施形態の調光ユニットは、引き回し配線や補助電極が入るような広いエリア(ディスペンス塗布には不利な条件)も一度にまとめて封止できる。また、広いエリアを硬化性樹脂で封止した場合と比べて、調光フィルムの電極部や配線部の封止性能が向上するので、信頼性向上に繋げることができる。例えば、80V連続通電状態において、温度85℃かつ湿度85%条件での試験を行った結果、硬化性樹脂封止の場合は約500~600時間で点灯NGとなったのに対して、本実施形態のヒートシール封止の場合は1000時間まで点灯OKであった(1000時間以上の点灯も可能だと考えられる)。さらに、調光フィルム全体をカバーするようなパウチ構造の利点を電極部などに活かしつつも、パウチ構造の欠点である視認エリアの光学特性(ヘイズ・透過率など)の低下を起こすことがない。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0064】
例えば、上記実施形態では、「封止部」として、調光フィルムのうち電極部(及び配線部)を含む第1領域を挟み込むことにより封止する一対のヒートシール部を例示して説明した。しかし、ヒートシール部以外であっても、調光フィルムのうち電極部(及び配線部)を含む第1領域を挟み込むことにより封止できるものであればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 調光ユニット(調光デバイス)
10 調光フィルム
11 液晶層(調光層)
12X 12Y 透明導電層(透明電極層)
13X 13Y PET層(外側支持層、第1外側支持層)
14X 14Y 機能性フィルム層(外側支持層、第2外側支持層)
20X 20Y 電極部
25X 25Y 配線部(FPC)
26X 26Y 引き回し配線部(配線部)
30 ヒートシール部(封止部)
31 ヒートシール層
32 PET層(保護層)
33 HC層(保護層)
34 プライマ層
DX DY 段差部