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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008692
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】通船ゲート装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/40 20060101AFI20250109BHJP
   E02B 15/06 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111072
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000111395
【氏名又は名称】株式会社テクアノーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸治
【テーマコード(参考)】
2D019
2D025
【Fターム(参考)】
2D019CA00
2D025AA01
2D025AA02
2D025BA01
(57)【要約】
【課題】船外機を水上にあげたりする必要がなく、船外機やゲート施設を損傷させることなくスムーズに通船可能な通船ゲート装置を提供する。
【解決手段】船が通過するゲート間隙20を有する枠体12と、該ゲート間隙を開閉する扉体であり、枠体12に下端側を揺動軸を介して揺動可能に設けられ船の通過時に該船に押されることにより傾倒されて該ゲート間隙20を開く扉体14と、扉体14に設置され該扉体14がゲート間隙20を閉鎖する直立状態となるように浮力支持する浮力体16と、を備え、扉体14には、船の通過に応じて該扉体が傾倒する際に該扉体14の一部分に空隙を形成させる空隙形成手段18が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船が通過するゲート間隙を有する枠体と、
該ゲート間隙を開閉する扉体であり、枠体に下端側を揺動軸を介して揺動可能に設けられ船の通過時に該船に押されることにより傾倒されて該ゲート間隙を開く扉体と、
扉体に設置され該扉体がゲート間隙を閉鎖する直立状態となるように浮力支持する浮力体と、を備え、
扉体には、船の通過に応じて該扉体が傾倒する際に該扉体の一部分に空隙を形成させる空隙形成手段が設けられたことを特徴とする通船ゲート装置。
【請求項2】
扉体は、扉本体部となる第1扉部材と、傾倒する際の空隙形成位置を開閉する第2扉部材と、に分割して構成され、
空隙形成手段は、扉体が傾倒する際に、該第1扉部材の傾倒角度よりも大きい角度で第2扉部材を傾倒させる差動機構を有することを特徴とする請求項1記載の通船ゲート装置。
【請求項3】
扉体は、幅方向中央位置に第2扉部材が形成されるとともに、該第1扉部材の左右両側に第1扉部材が形成された3分割構成であることを特徴とする請求項2記載の通船ゲート装置。
【請求項4】
差動機構は、第1扉部材を揺動可能に枠体に軸支させる第1揺動軸と、
該第1揺動軸よりも上方に配置され第2扉部材を揺動可能に枠体に軸支させる第2の揺動軸と、
第1扉部材又は第2扉部材に船が当接された際に、該第1扉部材と該第2扉部材とを互いに連動させてそれぞれ傾倒動作させて該空隙を形成させる連動機構と、を有することを特徴とする請求項2又は3記載の通船ゲート装置。
【請求項5】
ゲート間隙を通過する船の進行方向をガイドするように左右に対向配置されたガイド部を有することを特徴とする請求項1記載の通船ゲート装置。
【請求項6】
ガイド部は、対向間隙幅を調整可能に設けられたことを特徴とする請求項5記載の通船ゲート装置。
【請求項7】
扉体には船の通過時に該船が当接する押し当て部が設けられ、押し当て部は横軸周りに船の進行方向に向けて揺動可能に設けられており、
該扉体を閉鎖状態でロックするとともに、船の通過時の押し当て部の横軸周り揺動に対応してロックを解除して該扉体を開閉可能とするロック装置を有することを特徴とする請求項1記載の通船ゲート装置。
【請求項8】
ロック装置は、扉体の押し当て部と、
枠体側に上下方向に揺動可能に設けられたロック部材と、
扉体側に固定され、ロック部材を下から受けて係止するロック受部と、
押し当て部の横軸回りの揺動に伴ってロック部材を上方向に揺動させてロック受部から離脱させる変換機構と、を有することを特徴とする請求項7記載の通船ゲート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや貯水池、河川等に設置される流水制御フェンスや流木止め設備等に設けられる通船ゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムや貯水池等には、富栄養化防止対策や水環境の保全を目的として表層側の水の流れを堰き止めるための流水制御フェンスや、上流から流れてくる流木やゴミ等を堰き止めて下流へ流れ出るのを防止するための流木止め設備等が設置される場合がある。流水制御フェンスや流木止め設備等の所定の位置には、集塵船や監視船が通過することができるように通船ゲートが設けられている。通船ゲートは、通常は扉が閉鎖されており、船が通過する際に扉が開放されるとともに、船が通過した後には再び閉鎖される。
【0003】
従来の通船ゲートは、例えば、扉体が片開き又は観音開き式に開閉するタイプや、レールに沿って上下摺動式に開閉するタイプ、扉体が船によって押し倒されて開閉するプッシュダウンタイプ等、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1の遮水フェンス用船通しでは、遮水フェンスに設けられる船通しは、遮水フェンスシートと、遮水フェンスシートの上端のベルトラインに連結された扉体とを有しており、通船時は船舶等で扉体を押す事によって、扉体7はメインベルトの上端付近を中心として船舶等の進行方向に転倒し、船舶等が該扉体の上を通過するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-328343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等のように扉体が転倒して船舶が通過するタイプの従来の通船ゲート等では、船がゲートを通過する際に、船の船底よりも下方に突出しているスクリュー等の船外機が当たり、遮水フェンスや船外機等を損傷するおそれがあった。よって、船が通過する際に船外機等を上方にあげる操作が必要となり、煩雑かつ危険な操作となる問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、船外機を水上にあげたりする必要がなく、船外機やゲート施設を損傷させることなくスムーズに通船可能な通船ゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、船が通過するゲート間隙を有する枠体と、該ゲート間隙を開閉する扉体であり、枠体に下端側を揺動軸を介して揺動可能に設けられ船の通過時に該船に押されることにより傾倒されて該ゲート間隙を開く扉体と、扉体に設置され該扉体がゲート間隙を閉鎖する直立状態となるように浮力支持する浮力体と、を備え、扉体には、船の通過に応じて該扉体が傾倒する際に該扉体の一部分に空隙を形成させる空隙形成手段が設けられた通船ゲート装置から構成される。
【0009】
また、扉体は、扉本体部となる第1扉部材と、傾倒する際の空隙形成位置を開閉する第2扉部材と、に分割して構成され、空隙形成手段は、扉体が傾倒する際に、該第1扉部材の傾倒角度よりも大きい角度で第2扉部材を傾倒させる差動機構を有することとしてもよい。
【0010】
また、扉体は、幅方向中央位置に第2扉部材が形成されるとともに、該第1扉部材の左右両側に第1扉部材が形成された3分割構成であることとしてもよい。
【0011】
また、差動機構は、第1扉部材を揺動可能に枠体に軸支させる第1揺動軸と、該第1揺動軸よりも上方に配置され第2扉部材を揺動可能に枠体に軸支させる第2の揺動軸と、第1扉部材又は第2扉部材の押し当て部に船が当接された際に、該第1扉部材と該第2扉部材とを互いに連動させてそれぞれ傾倒動作させて該空隙を形成させる連動機構と、を有することとしてもよい。
【0012】
また、ゲート間隙を通過する船の進行方向をガイドするように左右に対向配置されたガイド部を有することとしてもよい。
【0013】
また、ガイド部は、対向間隙幅を調整可能に設けられたこととしてもよい。
【0014】
また、 扉体には船の通過時に該船が当接する押し当て部が設けられ、押し当て部は横軸周りに船の進行方向に向けて揺動可能に設けられており、該扉体を閉鎖状態でロックするとともに、船の通過時の押し当て部の横軸周り揺動に対応してロックを解除して該扉体を開閉可能とするロック装置を有することとしてもよい。
【0015】
また、ロック装置は、扉体の押し当て部と、枠体側に上下方向に揺動可能に設けられたロック部材と、扉体側に固定され、ロック部材を下から受けて係止するロック受部と、押し当て部の横軸回りの回動に伴ってロック部材を上方向に揺動させてロック受部から離脱させる変換機構と、を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の通船ゲート装置によれば、船が通過するゲート間隙を有する枠体と、該ゲート間隙を開閉する扉体であり、枠体に下端側を揺動軸を介して揺動可能に設けられ船の通過時に該船に押されることにより傾倒されて該ゲート間隙を開く扉体と、扉体に設置され該扉体がゲート間隙を閉鎖する直立状態となるように浮力支持する浮力体と、を備え、扉体には、船の通過に応じて該扉体が傾倒する際に該扉体の一部分に空隙を形成させ、扉体の直立状態では該空隙を閉鎖される空隙形成手段が設けられた構成であるから、船外機を水上にあげたりする必要がなく、船外機やゲート施設を損傷させることなく安全かつスムーズに船を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る通船ゲート装置の正面図である。
図2図1の通船ゲート装置のA-A線断面説明図である。
図3図2の通船ゲート装置の扉体を傾倒した状態の説明図である。
図4図1の通船ゲート装置の斜視図である。
図5図1の通船ゲート装置の作用説明図である。
図6図1の通船ゲート装置を設置した流水制御フェンスの概略図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る通船ゲート装置の正面図である。
図8】(a)は図7の通船ゲート装置のロック装置周辺の拡大図、(b)はロック装置周辺の平面説明図である。
図9図8の通船ゲート装置のB-B線断面の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しつつ本発明の通船ゲート装置の実施形態について説明する。本発明に係る通船ゲート装置は、例えば、ダムや貯水池等に、表層側の水の流れをせき止めるための流水制御フェンスやオイルフェンス、上流側から流れてくる流木やゴミが流れ入るのを防止するための流木止め設備等の水上の区画設備の一部に設けられ、必要に応じて船を通過させる通船用のゲート装置である。図1ないし図6は、本発明の通船ゲート装置の第1の実施形態を示している。図1図2図3に示すように、本実施形態に係る通船ゲート装置10は、船BTが通過するゲート間隙を有する枠体12と、ゲート間隙を開閉する扉体14と、扉体14に設置された浮力体16と、を備えている。さらに、通船ゲート装置10の扉体14には、空隙形成手段18が設けられている。
【0019】
本実施形態の通船ゲート装置10は、例えば、図6に示すように、ダム等の水域Wに設置された流水制御フェンス100の中間位置に設けられた例で説明する。流水制御フェンス100は、例えば、従来周知のものであり、ポリエステルやターポリンあるいはそれらの複合素材等の遮水性素材からなる遮水性シートの上端側に発泡スチロール等のフロート体を取付けて水上に浮力支持されているとともに、該遮水性シートの下端には、金属チェーンからなるウェイトが取り付けられ、水面から一定の水深までの間に張設されている。流水制御フェンス100は、その長手方向の両端側を陸地に固定されたコンクリートアンカーブロック102に固定されてダムの水域の表層側を区画するように設置され、ダム表層側の水の流れを堰き止めるようになっている。流水制御フェンス100の一部に通船ゲート装置10が設けられている。
【0020】
枠体12は、流水制御フェンス100等の中間部分に連結され、船が通過するゲート間隙20を形成するゲート枠である。図1図2図4に示すように、本実施形態では、枠体12は、例えば、防錆めっきを施した鉄鋼やステンレス鋼等の金属角管等からなるフレームを組み付けて設けられており、正面視で上側を開放した略コ字形状に形成され、その中央部分の略矩形状の間隙をゲート間隙20としている。枠体12のゲート間隙20は、船が通過しうる幅と深さに設定される。枠体12の左右両外側に該枠体12を水上に浮力支持するためのフロート22が取り付けられている。
【0021】
枠体12を浮力支持するフロート22は、本実施形態では、枠体12から左右両外方に横方向に突設した支持アーム24に交差して船の進行方向Xに沿って前後に長く設けられたフロート支持フレーム26を介して枠体12と組み付けられている。フロート22は、例えば、発泡樹脂等の浮力作用が大きな素材からなり、所定の浮力に設計された所定の大きさ形状で設けられている。フロート22は、左右のフロート支持フレーム26の前後端部にそれぞれ取り付けられている。よって本実施形態では、枠体12の左右両側で、かつ枠体12を挟んだ前後の位置に配置される合計4個のフロート22が協働することにより、枠体12は、略下半部を水中に没しつつ、略上半部を水面WLよりも上に露出させた状態で安定的に直立した姿勢で水上に浮力支持されている。
【0022】
枠体12の左右両側方には、補強のための三角フレーム28が固定されている。枠体12の幅方向両側と下方側の外周囲には、流水制御フェンス100の遮水性シートと同素材の遮水性シートが張設されている。
【0023】
扉体14は、枠体12の該ゲート間隙20を開閉可能に閉鎖する開閉扉である。図1図2図3図4に示すように、扉体14は、その下端側を枠体12に船の進行方向に交差する横方向の揺動軸を介して揺動可能に設けられている。よって扉体14は、常時は、直立状態でゲート間隙20を閉鎖しているとともに、船が通過する際には、該船によって進行方向に向けて押されることにより下端側の揺動軸周りに傾倒されて該ゲート間隙20を開く、いわゆる押し倒し(プッシュダウン)式の構造となっている。本実施形態では、扉体14は、後述のように第1扉部30と、第2扉部32とに分割されて構成されており、扉体14が傾倒する際に、空隙形成手段18を介して、一部に空隙Gを形成しうる構成となっている。
【0024】
本実施形態では、扉体14は、左右両側部分に扉本体部をなす2つの第1扉部30が設けられるとともに、中央部分に該2つの第1扉部30の間に挟まれて第2扉部32が設けられている。図1図4に示すように、各第1扉部30は、例えば、矩形枠状の金属製フレームで外枠が形成され、遮水シートが張設されている。第1扉部30の枠内部の下部側は、梯子状に補強フレームが組付けられている。第1扉部30は、下端側に船の進行方向に交差する横方向の第1揺動軸34を介して枠体12に横軸周りに揺動自在に取り付けられている。第1揺動軸34は、一つの揺動軸で左右両側の2つの第1扉部30の下端に固定されて共通軸となっている。第1揺動軸34は、その両端を枠体12の左右両側に立設された枠体に支持されるとともに、同枠体12の下枠の幅方向中間位置に立設された2個1対の軸支板36を貫通して支持されている。なお、第1揺動軸34は、上記のような共通軸構成に限らず、左右それぞれの第1扉部30に別々に取り付けることとしてもよい。
【0025】
図1図2図4に示すように、第1扉部30には、船が通過する際に船が当接する押し当て部38が設けられている。押し当て部38は、例えば、左右の2つの第1扉部30の対向内側位置で中央部分の第2扉部32に隣接した位置で、該第1扉部30の前後面部にそれぞれ設けられている。本実施形態では、押し当て部38は、第1扉部30の外枠から上方に突設された突出部40全長と、第1扉部30の外枠の縦部分の中間位置までにわたって縦長に設置されたゴム等からなる弾性体を含む。押し当て部38は、第1扉部30の扉面よりも略半円状に突出するように設けられている。押し当て部38の上半部が取り付けられる突出部40は、例えば、第1扉部の外枠と同じ金属製フレームで一体的に形成される。
【0026】
第1扉部30には、該第1扉部30を直立状態として、ゲート間隙20を閉鎖するように浮力支持する浮力体16が設置されている。浮力体16は、浮力体16は、例えば、発泡樹脂等の浮力作用が大きな素材からなり、俵状に形成されて、第1扉部30の上下中間位置に架設された支持棒42に横方向に貫通された状態で支持されている。
【0027】
図1図2図3図4に示すように、第2扉部32は、左右の2つの第1扉部30の間の空間を開閉する分割扉体部であり、例えば、縦長矩形枠状の金属製フレームで外枠が形成され、遮水シートが張設されている。具体的には、第2扉部32の外枠を構成しているフレームは、断面略コ字状のチャンネル材で設けられており、外側に該チャンネル材の開口を向けて組付けられている。よって、第2扉部32の外周には、直線状の長溝が形成される。第2扉部30は、下端側に船の進行方向に交差する横方向の第2揺動軸44を介して枠体12に横軸周りに揺動自在に取り付けられている。第2揺動軸は、前記第1扉部30の第1揺動軸34よりも上方位置で、該第1揺動軸34と平行に配置され、軸支板36に支持されている。第2揺動軸44が第1揺動軸34よりも上方位置に配置された構成により、第2扉部32は、第1扉部30のよりも小さな回転半径で揺動するようになっている。第2扉部32は、船の通過時に船に押されて傾倒する際に、第1扉部30とは異なる角度で傾倒し、第1扉部30との間に船の船外機の通過空間となり得る空隙Gを形成するようになっている。
【0028】
第2扉部32には、該第2扉部32を直立状態として、ゲート間隙20を閉鎖するように浮力支持する浮力体16が設置されている。浮力体16は、例えば、第1扉部30同様に、例えば、発泡樹脂等の浮力作用が大きな素材からなり、俵状に形成されて、第2扉部32の上下中間位置に架設された支持棒42に横方向に貫通された状態で支持されている。
【0029】
第2扉部32の上端には、船の船首を傷つけることなくスムーズに当接させるためのガイドローラ46が横軸周りに転動自在に軸支されている。ガイドローラ46は、例えば、塩化ビニル樹脂の発泡体からなり、第2扉部32の外枠の上方に突設された軸支部によって、ローラ回転軸が軸支されている。
【0030】
上記した第1扉部30と第2扉部32にそれぞれ設置される浮力体16は、該1扉部30と第2扉部32で構成される扉体14を、常時はゲート間隙を閉鎖する直立状態となるように浮力支持し、船が通過する際に該扉体14が傾倒してゲート間隙20が開放した後、浮力により同扉体14を直立状態に復帰させてゲート間隙を閉鎖させる。すなわち浮力体16は、浮力によって扉体14を直立状態で保持する手段及び、船の通過後に傾倒した扉体14を浮力によって再び直立状態に復帰させる手段として機能する扉体14の閉鎖保持手段ともいえる。これにより、扉体14は、船の通過によって自動的にゲート間隙20が開閉される。
【0031】
空隙形成手段18は、船の通過に応じて該扉体が傾倒する際に該扉体の一部分に該船の船外機を通過させ得るような空隙G(間隙)を形成させる船外機通過用の空隙形成手段である。船の船外機は、船底よりも下方に突出しているため、扉体14が同一面のみで形成される場合には、船外機が扉体14に接触するおそれが生じる。本実施形態では、扉体14に空隙形成手段18を有することにより、船の通過時に、扉体が傾倒した際には、該船の船外機を通過させる空隙Gを設けることができる。その結果、船がゲートを通過する際に船外機を跳ね上げたりする必要がなく、安全かつスムーズに通過することができる。
【0032】
図2図3に示すように、本実施形態では、空隙形成手段18は、複数に分割した扉部(30,32)を傾倒する際に異なる角度で傾倒動作させることによりそれらの分割扉部(30,32)どうしの間に船のスクリュー等の船外機を通過させうる空隙Gを形成させる。詳細には、空隙形成手段18は、前記のように扉体14を第1扉部30と第2扉部32とに分割した構成とし、扉体14(第1扉部30及び第2扉部32)が傾倒する際に、該第1扉部材30の傾倒角度(直立位置からの回転角度α)よりも大きい傾倒角度(直立位置からの回転角度β)で第2扉部材32を傾倒させ、扉体14の該2扉部34部分に空隙Gを形成させる差動機構48を有する。本実施形態では、差動機構48は、第1扉部30の第1揺動軸34と第2扉部32の第2揺動軸44とを上下に位置をずらして設定するとともに、第1扉部30の傾倒動作を第2扉部32の傾倒動作に連動させる連動機構50を有している。すなわち、差動機構48は、第1揺動軸34と、該第1揺動軸34よりも上方に配置された第2揺動軸44と、連動機構50と、を有する。
【0033】
図1図4にも示すように、連動機構50は、例えば、第1扉部30の外枠の下部側に固定され、第2扉部32の外枠に向けて横方向に突設された係合子52と、第2扉部32の長溝内にスライド可能に収容されたスライダ53と、を有している。第1扉部30の係合子52は、第2扉部34の外枠の長溝内に挿入されたスライダ53に固定され、該スライダ53を介して該第2扉部34の長溝に沿って相対的にスライド可能に係合されている。第1扉部30の係合子52は、第2扉部34の第2回転軸44よりも上方位置で長溝に係合している。これにより、船が通過する際には、該船が第1扉部30の押し当て部38にあたって同第1扉部30を傾倒させると同時に、係合子52とスライダ53を介して第2扉部32を連動させて傾倒させる。この際、第1扉部30と第2扉部32の揺動軸が上下に位置ずれしているとともに、係合子52に連係したスライダ53が第2扉部32に対してスライドすることにより、第2扉部32は第1扉部30よりも大きな角度でかつ第1扉部30に先行するように傾倒し、該船の船外機を通過させうる空隙Gを形成する。船が通過した後は、第1扉部30と第2扉部32の各浮力体16により直立状態に復帰して扉体14の空隙Gは閉鎖される。
【0034】
なお、空隙形成手段18は、該第1扉部材30の傾倒角度よりも大きい角度で第2扉部材32を傾倒させ、扉体14の該2扉部34部分に空隙Gを形成させる構成であれば任意でよく、例えば、リンク機構やカム機構等を有する構造としてもよい。
【0035】
さらに本実施形態では、図1図2図4に示すように、ゲート間隙20を通過する船の進行方向をガイドするガイド部54が枠体12の前方及び後方に設けられている。ガイド部54は、正面視でゲート間隙20の左右に船の幅に対応した間隙で対向配置される。ガイド部54は、例えば、船の通過方向となる前後方向に沿って略水平状に横向きに配置された細長棒状に設けられており、ゴム等の弾性体が取り付けられている。ガイド部54は、フロート支持フレーム26の前後端部位置にそれぞれ位置調整手段58を介して固定されたガイド支持部材56で支持され、対向するガイド部54どうしを平行にして配置されている。ガイド支持部材56は、例えば、一端側をフロート支持フレーム26に固定された2本の平行な直管部材を有しており、該直管部材の先端側にガイド部54が支持されている。
【0036】
ガイド支持部材56をフロート支持フレーム26に固定する位置調整手段58は、例えば、直管部材を上下から挟持する挟持板と、該挟持板を締結するボルト・ナットと、を含む。ボルト・ナットをある程度緩めた状態でガイド支持部材56を幅方向にスライド移動させることで、ガイド部54の対向間隙を調整することができる。ガイド部54の対向間隙を設定した位置で位置調整手段58のボルト・ナットを締結して固定することで、ガイド部54は位置決めされた状態で固定される。例えば、ガイド部54の対向間隙の幅は、流水制御フェンス100とともに通船ゲート装置10を水上に設置する際に、船の幅に合わせて予め調整するとよい。なお、ガイド部54は、例えば、ガイド支持部材58を伸縮できるように構成し、ガイド支持部材56を伸縮することにより対向間隙を調整する構成等、その他任意の構成でガイド対向間隙を調整する構造としてもよい。
【0037】
次に図5をも参照しつつ本実施形態に係る通船ゲート装置10の作用について説明する。通船ゲート装置10は、常時は、図5(a)に示すように、扉体14を構成する第1扉部30及び第2扉部34の浮力体16の浮力作用により、第1扉部30と第2扉部32はそれぞれ直立状態で保持されて枠体12のゲート間隙20を閉鎖している。例えば、集塵船等の船が通過する際には、船は、ガイド部54を介してゲート間隙20すなわち扉体14にガイドされながら進行する。そして、図5(b)に示すように、船は第1扉部30の上部側の押し当て部38に当接し、船の推進力により、第1扉部30を押し倒して、第1揺動軸34の横軸周りに揺動し傾倒させる。第1扉部30の傾倒動作に連動して、間隙形成手段18の差動機構56により、第2扉部32は、該第1扉部30の傾倒角度αよりも大きな傾倒角度βで傾倒する。これにより、扉体14には、第1扉部30の間、すなわち第2扉部32の位置に空隙Gが生じる。さらに船がゲート間隙を進むと、図5(c)に示すように、船の船底で押し当て部38を押しながら進み第1扉部30の傾倒角度が大きくなるのに連動して、第2扉部32は、船外機のスクリュー等よりも十分に深い水深位置で略横倒し状に揺動し、該スクリュー等が扉体14に当たることがないように該第1扉部30の間に船の船外機を通過させる空隙Gを形成する。これにより、船の通過時にいちいち船外機を跳ね上げる必要がなく、扉体や船外機を損傷させることなく安全に船を通過させることができる。船がゲートを通過した後が、ガイド部54でガイドされながら通過する。船が完全に通過した後では、第1扉部30及び第2扉部32の浮力体16の浮力作用により、図5(a)に示すように、自動的に第1扉部30と第2扉部32は直立状態に復帰し、枠体12のゲート間隙20を閉鎖する。また、通船ゲート装置10に逆方向から船が通過する場合には、上記とは対称に反対側に第1扉部30、第2扉部32が開閉する。
【0038】
次に、図7図8図9を参照しつつ本発明の通船ゲート装置の第2の実施形態について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。上記実施形態同様に、本実施形態の通船ゲート装置10-2は、枠体12と、扉体14と、浮力体16と、を備え、さらに扉体14には、間隙形成手段18が設けられている。
【0039】
本実施形態では、上記構成に加えて、該扉体14を閉鎖状態でロックするとともに、船の通過時にロックを解除して該扉体を開閉可能とするロック装置60が設けられている。これにより、船が通過しない状態で扉体14が傾倒してゲート間隙が開放するのを防止できる。
【0040】
図7図8図9に示すように、本実施形態では、ロック装置60は、例えば、第1扉部30に横軸周りに揺動可能に設けられた押し当て部38aと、枠体12側に上下方向に揺動可能に設けられたロック部材62と、第1扉部30側に固定され該ロック部材62を下から受けて係止するロック受部64と、押し当て部38aの横軸回りの揺動に伴ってロック部材62を上方向に揺動させてロック受部64から離脱させる変換機構66と、を有する。
【0041】
本実施形態では、押し当て部38aは、例えば、第1扉部30の外枠とは別部材となる直杆部材71に固定されており、該外枠の上端に固定された軸支部68に支持され船の進行方向Xとは交差する方向に伸びる横軸70に下端が固定され、前後に揺動可能に設けられている。押し当て部38aは、巻きばね等の付勢部材72により、直立状態に戻るように付勢されており、船が押しあたるとその前方に向けて揺動し、船の通過後は付勢部材74により戻るようになっている。
【0042】
ロック部材62は、例えば、一端を自由端として揺動可能な細長帯板状部材からなり、基部側に船の進行方に沿って前後方向に軸を向けた揺動軸が固定され、該揺動軸を枠体12の上端に固定された軸受に枢支されている。ロック部材62は、一端側が第1扉部30の上方にまで延設されており、該第1扉部30のロック受部64に係止される。
【0043】
ロック受部64は、例えば、上端側にロック部材62を受け入れように開口した凹部64aが設けられた略T字板状部材から設けられている。ロック受部64は、略T字状の前後に突設された部分には傾斜部64bが設けられている。ロック部材62が上方に移動すると該ロック受部62がロック受部64から離脱しロック状態が解除される。この解除状態で第1扉部30は船の進行によって傾倒するが、船の通過後に該第1扉部30が直立状態に復帰する際に、ロック部材62は、ロック受部64の傾斜部64bに沿って案内された後、再び開口64aに落下して係止されロック状態となる。
【0044】
変換機構66は、押し当て部38aの横軸周り回転動作をロック部材62の自由端側の上方への揺動動作に変換する変換機構である。変換機構66は、例えば、押し当て部38aの横軸70と、横軸70の押し当て部38aとは他端側に設けられた2個のピン部74と、基部側をピン部74に当接するとともに先端側をロック部材62の先端に当接させて揺動可能に支持されたシーソー部材76と、を含む。
【0045】
ピン部74は、船の進行方向に沿った前後方向に所定の間隔をあけて2個設けられており、横軸70と平行に横方向に突設されている。押し当て部38aの揺動に伴って横軸70が軸周り回転する際に、2個のピン部74のいずれかが下方に移動することにより、シーソー部材76の基部側を下方に押動する。
【0046】
シーソー部材76は、基部側の揺動軸を第1扉部30の外枠の上端部に固定された軸支部に枢支されて、自由端側の上下方向に揺動自在に設けられている。シーソー部材76は、横軸70の端部に設けられたピン部74による基部側の下方への押動作によって、自由端側を上方へ揺動させる。このシーソー部材76の上方への揺動に伴って、ロック部材62を上方に揺動させて該ロック部材62をロック受部64から離脱させてロックを解除させる。
【0047】
なお、変換機構66は、例えば、2個のピン部74をロック部材62の端部に係合させ、横軸70周り回転に伴ういずれかのピン部74の上方への回転動作によってロック部材64を上方に揺動させる構成としてもよい。またロック装置60は、任意の構成としてもよい。
【0048】
本実施形態でも、上記実施形態同様の作用効果を奏しうるとともに、ロック装置60により、常時は確実に扉体を閉鎖させて確実に流水制御できる。特に、船の進行によって押し当て部に押し当てるだけで自動的にロックを解除できるので、ロック装置を備えた通船ゲートであっても使い勝手もよく円滑に船を通過させることができる。
【0049】
以上説明した本発明の通船ゲート装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の通船ゲート装置は、例えば、ダムや貯水池等に設置される流水制御フェンスや流木止め設備等の水上設備の一部に設置される。
【符号の説明】
【0051】
10 通船ゲート装置
12 枠体
14 扉体
16 浮力体
18 空隙形成手段
20 ゲート間隙
30 第1扉部
32 第2扉部
34 第1揺動軸
38、38a 押し当て部
44 第2揺動軸
48 差動機構
50 連動機構
54 ガイド部
58 位置調整手段
60 ロック装置
62 ロック部材
64 ロック受部
66 変換機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9