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特開2025-8701トリガスイッチ及び該トリガスイッチを備えた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008701
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】トリガスイッチ及び該トリガスイッチを備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/02 20060101AFI20250109BHJP
   H01H 1/18 20060101ALI20250109BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01H19/02 D
H01H1/18
B25F5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111096
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晃平
(72)【発明者】
【氏名】前田 一志
(72)【発明者】
【氏名】塚中 陽平
(72)【発明者】
【氏名】石井 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓未
【テーマコード(参考)】
3C064
5G051
5G219
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AA03
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC01
3C064BA03
3C064BB52
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
3C064CB92
5G051DA04
5G051DB08
5G219FU04
5G219GS33
5G219KS03
5G219KU44
5G219KW03
(57)【要約】
【課題】摺動電極部の摩耗を抑制することができるトリガスイッチ及び該トリガスイッチを備えた装置を提供する。
【解決手段】トリガスイッチTSは、トリガへの押込操作による当該トリガの移動によって駆動部を駆動させるに当たり、基板SU上のフロントサブ電極82a及びリヤサブ電極82bに接触するオン位置からフロントサブ電極82a及びリヤサブ電極82bに接触しないオフ位置に移動するフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85を備える。フロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85のオン位置からオフ位置への移動に伴って、フロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85と基板SUとの接触が解除される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガへの押込操作による当該トリガの移動によって駆動部を駆動させるに当たり、固定された電極に接触するオン位置から当該電極に接触しないオフ位置に移動する摺動電極部を備えたトリガスイッチであって、
前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記電極を固定している固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のトリガスイッチであって、
前記トリガへの押込操作の進行に伴ってオフ状態からオン状態に遷移して前記駆動部を駆動させる切替回路を備えており、
前記押込操作の進行に伴って前記切替回路がオフ状態からオン状態に遷移する前段階で、前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2記載のトリガスイッチであって、
前記摺動電極部は、前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、前記電極から離れる方向に変形することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項4】
請求項3記載のトリガスイッチであって、
前記摺動電極部が前記オン位置にある状態で、当該摺動電極部を、前記電極に接触する方向へ弾性変形した姿勢に規制する姿勢規制部を備えており、
前記摺動電極部が前記オフ位置となる際、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記摺動電極部が前記弾性変形した姿勢から形状復帰することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項5】
請求項4記載のトリガスイッチであって、
前記トリガへの押込操作及び押込操作の解除に伴って押込位置と押込解除位置との間で移動可能な移動部材と、
前記移動部材が前記押込解除位置にある状態で当該移動部材からの外力を受けて弾性変形された姿勢となり、前記移動部材が前記押込解除位置から前記押込位置に向けて移動することによって前記外力が解除されて当該外力により弾性変形された姿勢から形状復帰する構成とされた弾性板部とを備え、
前記摺動電極部は、前記弾性板部が前記弾性変形された姿勢となっている状態で、前記姿勢規制部によって姿勢が規制されることにより前記電極に接触するオン位置となり、前記弾性板部が前記形状復帰した状態で、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項6】
請求項1または2記載のトリガスイッチであって、
前記固定部材には、前記オフ位置にある前記摺動電極部に対向する領域に開口が形成されていることを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項7】
請求項1または2記載のトリガスイッチであって、
前記固定部材における前記電極の周辺部は、前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記固定部材との接触を解除するための凹み形状を有することを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項8】
請求項1または2記載のトリガスイッチを備えた装置であって、
前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除された状態で前記駆動部が駆動することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガへの押込操作による当該トリガの移動によって装置の駆動部を駆動させるトリガスイッチ及び該トリガスイッチを備えた前記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動工具等の装置の制御に用いられるトリガスイッチは、押込操作を受けるトリガと、トリガを一端側で支持する軸部材と、軸部材の他端側が貫通する貫通孔が開設された筐体と、筐体に収容されると共に軸部材の他端側に接続された切替機構(回路の摺動接点を構成するブラシが備えられた切替機構)とを備えている。このように構成されたトリガスイッチは、トリガへの押込操作によって軸部材が筐体の内部に向かって移動し、この移動に伴って切替機構が筐体の内部で移動することによる摺動接点のオン/オフ切り替えに伴って駆動部が駆動する。また、トリガへの押込操作の解除によって軸部材が筐体の外部に向かって移動し、この移動に伴って切替機構が筐体の内部で移動(前述の押込操作の場合とは逆方向に移動)することによる摺動接点のオン/オフ切り替え(前述の押込操作の場合とは逆の切り替え)に伴って駆動部が停止する。
【0003】
特許文献1には、切替機構(当該特許文献1ではプランジャと称している)に、駆動部のオン/オフ切替機能を有する摺動接点を構成するブラシ、及び、駆動部の出力を調整する摺動接点を構成するブラシが備えられたトリガスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-30999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている摺動接点は、基板上に形成された電極と、切替機構に備えられた摺動電極部であるブラシとにより構成され、前述した切替機構の移動によって、ブラシが電極に接触する状態(電極に接触する位置に移動した状態)と電極に接触しない状態(電極に接触しない位置に移動した状態)とが切り替えられるようになっている。そして、ブラシが電極に接触しない状態にあっては、ブラシが基板の表面(基板上において電極が形成されていない表面であって、以下、樹脂表面という)に接触した状態となる。
【0006】
例えば基板上のマイコンを起動させる摺動接点をNC(Normally Close)接点とした場合、この摺動接点のブラシと樹脂表面との接触が維持された状態で駆動部が駆動することになる。このため、駆動部の駆動に伴う振動がブラシや基板に伝達され、ブラシと樹脂表面との間での摺動によってブラシが摩耗してしまうことが懸念される。ブラシが摩耗(特にブラシにおいて電極に接触する接点部分が摩耗)した場合、ブラシの接点部分を電極に接触させる際の接触信頼性が悪化してしまうことになる。尚、このような課題は、電極(固定電極)を基板上に設けた構成だけでなく、その他の固定構造によって固定された電極を有する場合においても同様に生じるものである。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摺動電極部の摩耗を抑制することができるトリガスイッチ及び該トリガスイッチを備えた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本願開示の解決手段は、トリガへの押込操作による当該トリガの移動によって駆動部を駆動させるに当たり、固定された電極に接触するオン位置から当該電極に接触しないオフ位置に移動する摺動電極部を備えたトリガスイッチであって、前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記電極を固定している固定部材との接触が解除されることを特徴とする。
【0009】
尚、ここでいう摺動電極部の一例としては、固定部材上の電極に接触可能なブラシが挙げられる。また、ここでいう固定部材としては、基板や、電極を固定するその他の部材が挙げられる。
【0010】
また、前記トリガへの押込操作の進行に伴ってオフ状態からオン状態に遷移して前記駆動部を駆動させる切替回路を備えており、前記押込操作の進行に伴って前記切替回路がオフ状態からオン状態に遷移する前段階で、前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除されることを特徴とする。
【0011】
また、前記摺動電極部は、前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、前記電極から離れる方向に変形することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とする。
【0012】
また、前記摺動電極部が前記オン位置にある状態で、当該摺動電極部を、前記電極に接触する方向へ弾性変形した姿勢に規制する姿勢規制部を備えており、前記摺動電極部が前記オフ位置となる際、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記摺動電極部が前記弾性変形した姿勢から形状復帰することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とする。
【0013】
また、前記トリガへの押込操作及び押込操作の解除に伴って押込位置と押込解除位置との間で移動可能な移動部材と、前記移動部材が前記押込解除位置にある状態で当該移動部材からの外力を受けて弾性変形された姿勢となり、前記移動部材が前記押込解除位置から前記押込位置に向けて移動することによって前記外力が解除されて当該外力により弾性変形された姿勢から形状復帰する構成とされた弾性板部とを備え、前記摺動電極部は、前記弾性板部が前記弾性変形された姿勢となっている状態で、前記姿勢規制部によって姿勢が規制されることにより前記電極に接触するオン位置となり、前記弾性板部が前記形状復帰した状態で、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記固定部材との接触が解除されることを特徴とする。
【0014】
尚、ここでいう移動部材の一例としては、前述した切替回路の一部を備えた駆動切替機構が挙げられる。
【0015】
また、前記固定部材には、前記オフ位置にある前記摺動電極部に対向する領域に開口が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記固定部材における前記電極の周辺部は、前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記固定部材との接触を解除するための凹み形状を有することを特徴とする。
【0017】
また、前記トリガスイッチを備えた装置も本願開示の技術的思想の範疇である。つまり、前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除された状態で前記駆動部が駆動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本願開示のトリガスイッチは、摺動電極部のオン位置からオフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と電極(固定電極)を固定している固定部材との接触が解除される。これにより、摺動電極部と固定部材とが接触した状態で駆動部が駆動することが回避され、摺動電極部の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願開示の電動装置の外観の一例を示す概略斜視図である。
図2】本願開示のトリガスイッチの外観の一例を示す概略斜視図である。
図3】本願開示のトリガスイッチの筐体内部の一例を示す概略側面図である。
図4】本願開示のトリガスイッチの解放状態の一例を示す概略側面図である。
図5】本願開示のトリガスイッチの解放状態の一例を示す概略斜視図である。
図6図4におけるVI-VI線に沿った断面図である。
図7】本願開示の電動装置が備える制御構成の一部の例を示す概略ブロック図である。
図8】本願開示のトリガスイッチのトリガへの押込操作が行われた際の一例を示す概略側面図である。
図9】本願開示のトリガスイッチのトリガへの押込操作が行われた際の一例を示す概略斜視図である。
図10図8におけるX-X線に沿った断面図である。
図11】本願開示の電動装置においてトリガへの押込操作が行われる際のサブ摺動接点及び切替部の信号、マイコンの状態、装置回転速度の変化の一例を示すタイムチャート図である。
図12】本願開示のトリガスイッチの変形例におけるトリガスイッチが解放状態にある際のサブブラシとサブ電極との接触状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
[適用例]
本願開示のトリガスイッチは、モータ等の駆動部を備える電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ等の電動工具(装置)をはじめとする様々な電動装置に適用される。
【0022】
また、本願開示のトリガスイッチは、電動装置の内部に備えられた回路の摺動接点を構成する摺動電極部としてのブラシ(固定部材に固定された電極に接触するオン位置と電極に接触しないオフ位置との間で移動可能なブラシ)のオン位置からオフ位置への移動に伴って、当該ブラシと固定部材との接触を解除するようにしたものである。詳細については後述する。また、以下では、固定部材の一例として基板を採用した場合について説明する。
【0023】
[構成例]
<電動装置PT>
図1は、本願開示の電動装置PTの外観の一例を示す概略斜視図である。本願開示の電動装置PTは、本体装置100を備え、本体装置100には、使用者の押込操作を受け付けるトリガスイッチTSが組み込まれている。本体装置100には、開閉可能な扉部110が設けられており、扉部110には、トリガスイッチTSのトリガ1の取付状態を視認可能な窓部120が設けられている。
【0024】
図1に例示する電動装置PTは、略円筒形状の部分に手持ち部分を取り付けた形状を成している。以降の説明では、図示するように、略円筒形状の部分の方向を上、手持ち部分の方向を下として説明する。また、トリガスイッチTSのトリガ1が位置する方向を前、トリガ1を押し込む方向を後として説明する。即ち、電動装置PT及びトリガスイッチTSにおいて、前方から後方へ向かう方向が、押込操作にてトリガ1が押し込まれる操作方向となる。これらは、説明のための便宜上の方向であり、電動装置PT及びトリガスイッチTSの使用の方向を限定するものではない。
【0025】
図1は、使用者が、トリガスイッチTSに対する操作をしていない解放状態を例示している。図1に例示する解放状態から、使用者が、トリガ1に指を掛け、トリガ1を本体装置100側(後方)へ押し込む押込操作をすることにより、本体装置100に内蔵された電動モータ等の駆動部(図示せず)が駆動する。この駆動部の駆動及び停止を行うための回路の摺動接点及び切替部の構成については後述する。
【0026】
<トリガスイッチTS>
次に、電動装置PTに備えられたトリガスイッチTSについて説明する。図2は、本願開示のトリガスイッチTSの外観の一例を示す概略斜視図である。この図2は、本願開示のトリガスイッチTSの外観を斜め上方からの視点で示している。また、図3は、本願開示のトリガスイッチTSの筐体内部の一例を示す側面図である。以下では、図3における紙面に直交する方向をスイッチ左右方向、紙面の手前側をスイッチ左側、紙面の奥側をスイッチ右側として説明する。これも説明のための便宜上の方向であり、電動装置PT及びトリガスイッチTSの使用の方向を限定するものではない。
【0027】
トリガスイッチTSは、電動装置PTの使用者が操作するスイッチであり、使用者が押込操作を行うトリガ1を備えている。トリガスイッチTSは、電動装置PTに組み込まれる筐体2と、トリガ1と、プランジャ3と、トリガ1を付勢する復帰バネ4と、被覆部材5とを備えている。また、トリガスイッチTSは、駆動部の駆動方向、例えば、電動ドライバの回転方向の正逆を切り替える切替レバー6を備えている。
【0028】
トリガ1は、使用者の押込操作を受け付ける部材である。トリガ1の前面は、使用者が操作の際に指を掛ける形状となっている。プランジャ3は、棒状を成す軸部31と該軸部31の後端に連続して形成された駆動切替機構(移動部材)32とを備えている。トリガ1は、軸部31の前端に支持されている。トリガ1は、軸部31の前端に嵌め込まれており、軸部31の前端に対して取り付け及び取り外しが可能である。
【0029】
筐体2は、略直方体状を成す中空のケースであり、スイッチ左側に位置する第1筐体21とスイッチ右側に位置する第2筐体22とが一体的に組み付けられて構成されている。これら第1筐体21と第2筐体22とで構成される筐体2の内部空間に駆動切替機構32が収容されている。また、第1筐体21の内側面(スイッチ右側を向く面)には、基板(固定部材)SU(図6を参照)が取り付けられており、この基板SUに、駆動部を駆動するための回路(図示省略)が配置されている。
【0030】
筐体2の前面には、略円形状の貫通孔23が開設されており、軸部31の後端(他端側)が貫通している。貫通孔23の周縁は、円筒状に前方へ突出している。筐体2の上面には、切替レバー6が取り付けられている。筐体2の内部は、上下二段の下室24及び上室25に区画されている。筐体2内の下室24には、駆動切替機構32が収容されており、上室25には動作方向切替機構61が収容されている。駆動切替機構32は、基板SU上に形成された回路を開閉し、駆動部を制御する機構である。駆動切替機構32は、軸部31の移動に伴って前後に移動する。つまり、駆動切替機構32は、トリガ1への押込操作及び押込操作の解除に伴って押込位置と押込解除位置との間で移動する。図8(本願開示のトリガスイッチTSのトリガ1への押込操作が行われた際の一例を示す概略側面図)に示すようにトリガ1への押込操作によって駆動切替機構32が後方へ移動することにより、駆動部が動作し、図3に示すように駆動切替機構32が前方へ復帰することにより、駆動部が停止するようになっている。
【0031】
復帰バネ4は、圧縮コイルバネ等のバネを用いて形成されている。復帰バネ4は、筐体2の外側で、軸部31を周方向に巻回し、軸部31を押込方向の反対方向である前方へ付勢しており、トリガ1と共に後方へ押し込まれた軸部31を前方の解放位置へ復帰させる。復帰バネ4の前端は、軸部31に係止されており、後端は、筐体2の貫通孔23の周縁に係止されている。
【0032】
被覆部材5は、略円筒形の蛇腹状に形成されており、筐体2の外側で、軸部31及び復帰バネ4を周方向に覆っている。被覆部材5の一端側となる前端は、軸部31に取り付けられている。被覆部材5の他端側となる後端は、筐体2の貫通孔23の周縁の突出した部位を覆うように取り付けられている。被覆部材5は、可撓性及び密閉性を有するゴム等の材料を用いて形成されたパッキンであり、軸方向に伸縮し、内側を密閉している。
【0033】
動作方向切替機構61は、駆動切替機構32にて開閉される回路の配線を切り替える機構である。動作方向切替機構61は、切替レバー6に取り付けられており、切替レバー6の揺動に伴い動作する。動作方向切替機構61が動作することにより、駆動部の動作方向が切り替わる。切替レバー6は、使用者から駆動部の駆動方向を切り替える切替操作を受けて、左右に揺動する部材であり、揺動動作を動作方向切替機構61へ伝達する。また、切替レバー6を揺動範囲の中間に位置するように操作した場合、切替レバー6は、トリガ1に対する押込操作を防止するストッパとして機能する。
【0034】
以上のように構成されたトリガスイッチTSは、電動装置PTに組み込まれ、使用者の操作を受け付ける。電動装置PTを使用する使用者は、トリガ1を押し込む押込操作、切替レバー6を揺動させる切替操作等の操作を行う。押込操作を受け付けたトリガ1は、後方へ移動する。トリガ1の後方への移動に伴い、トリガ1に取り付けられた軸部31が後方へ移動する。軸部31の後方への移動に伴い、軸部31の後端に連続する駆動切替機構32も後方へ移動し、駆動部が駆動する。また、軸部31の後方への移動に伴い、復帰バネ4及び被覆部材5が軸方向に圧縮される。
【0035】
使用者は、駆動部を停止させる場合、トリガ1の押込を解除する。押込が解除されることにより、復帰バネ4の付勢力により、トリガ1、軸部31及び駆動切替機構32が前方へ移動し、解放位置に復帰する。また、軸部31の前方への移動に伴い、復帰バネ4及び被覆部材5が軸方向に伸長する。
【0036】
トリガスイッチTSには、トリガ1の押込時に該トリガ1の移動(又は位置)を検出するセンサ機能を有し、この移動に応じて駆動部の駆動と停止とを切り替える切替部7が設けられている。この切替部7は切替回路を備えている。この切替回路は、トリガ1の移動(又は位置)を非接触で検出する光学センサ、磁気センサ、静電センサ、電気抵抗センサ等のセンサを用いて構成され、センサが検出したトリガ1の位置に応じてオン信号又はオフ信号を出力する。尚、切替回路としては、トリガ1の移動(又は位置)に伴う可動接点及び固定接点の接触に応じてオン信号又はオフ信号を出力するものであってもよい。
【0037】
前記切替部7の具体構成として、駆動切替機構32におけるスイッチ左側の面には、導電性金属で成るセンサ検知用部材71が設けられている。また、第1筐体21の内側面(スイッチ右側を向く面)に取り付けられた基板SU上における後方寄りの位置には、センサ検知用部材71の位置を検知可能な検知部分72(図3及び図4に仮想線で示す)が形成されている。つまり、トリガ1への押込操作が行われていない解放状態にあっては、センサ検知用部材71が検知部分72から外れた位置となるオフ状態となっており、駆動部を駆動するための切替回路が開放された状態となって、駆動部が停止している。
【0038】
この状態から、トリガ1への押込操作によって軸部31及び駆動切替機構32が後方へ移動した際、その移動量が所定量に達した時点で、センサ検知用部材71が検知部分72に重なる(対向する)位置となるオン状態となり(図8を参照)、駆動部が駆動する。また、本実施形態にあっては、トリガ1への押込操作の進行に伴って変化するセンサ検知用部材71の位置をセンシングすることにより駆動部の回転速度が高くなる構成となっている。
【0039】
また、トリガスイッチTSには、基板SU上のマイコン(図示省略)を起動させるためのサブ摺動接点8が設けられている。具体的に、第2筐体22には、導電性金属が折り曲げ加工されて成るサブブラシ81が支持されている。また、第1筐体21の内側面に取り付けられた基板SU上には、サブブラシ81(より具体的には後述するフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85)が接触可能なサブ電極82a,82b(図4に仮想線で示す)が形成されている。トリガ1への押込操作が行われていない解放状態にあっては、サブブラシ81がサブ電極82a,82bに重なる位置(サブ電極82a,82bに接触する位置であるオン位置)となっており、この状態ではマイコンが停止(Sleep)状態となっている。このサブブラシ81の姿勢は、後述するように駆動切替機構32から受ける外力によるものである。
【0040】
この状態から、トリガ1への押込操作によって軸部31及び駆動切替機構32が後方へ移動した際、その移動量が所定量に達した時点で、図8に示すように、サブブラシ81がサブ電極82a,82bから外れた位置(フロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85がサブ電極82a,82bに接触しない位置であるオフ位置)となり、この状態ではマイコンが起動(Wake up)状態となる。このサブブラシ81の姿勢は、後述するように駆動切替機構32から受ける外力が解除されることによるものである。本実施形態にあっては、サブブラシ81が上方へ移動することによって該サブブラシ81がサブ電極82a,82bから外れた位置となるようになっている。このサブブラシ81を上方へ移動させるための構成については後述する。このようにサブ摺動接点8はNC接点として構成されている。このようにトリガ1への押込操作が行われていない解放状態にあってはマイコンを停止(Sleep)状態としていることにより、この解放状態における消費電力を零にすることができ電動装置PT全体としての消費電力の削減を図ることができる。
【0041】
本願開示の特徴として、サブ摺動接点8は、切替部7がオフ状態(センサ検知用部材71が検知部分72に重ならない状態)からオン状態(センサ検知用部材71が検知部分72に重なる状態)に遷移する前段階で、サブブラシ81とサブ電極82a,82bとの接触が解除されるばかりでなく、サブブラシ81と基板SUとの接触も解除される(サブブラシ81と基板SUの樹脂表面との接触が解除される)構成となっている。具体的には、サブブラシ81が、オン位置(図4に示す位置)からオフ位置(図8に示す位置)への移動に伴って、サブ電極82a,82bから離れる方向(基板SUから後退する方向)に変形することによって基板SUとの接触が解除される構成となっている。以下、サブ摺動接点8の構成について具体的に説明する。
【0042】
図4は、トリガスイッチTSが解放状態にある際の一例を示す概略側面図である。また、図5は、トリガスイッチTSが解放状態にある際の一例を示す概略斜視図である。また、図6は、図4におけるVI-VI線に沿った断面図である。図4及び図5は第1筐体21を取り外した状態を示しており、図6は第1筐体21の内側面に取り付けられた基板SU上のサブ電極82a,82bとサブブラシ81とが接触した状態を示している。
【0043】
これらの図に示すように、サブ電極82a,82bは基板SU上における前後2箇所に形成されている。ここでは、前側に位置するサブ電極をフロントサブ電極82aと呼び、後側に位置するサブ電極をリヤサブ電極82bと呼ぶこととする。これらサブ電極82a,82bは、矩形状であり、駆動切替機構32の下端位置よりも僅かに低い位置であって、前後方向に所定間隔を存した位置に配設されている。
【0044】
サブブラシ81は、第2筐体22に支持された弾性板部83と、該弾性板部83に一体的に形成され且つフロントサブ電極82aに接触可能なフロントサブブラシ(摺動電極部)84及びリヤサブ電極82bに接触可能なリヤサブブラシ(摺動電極部)85とを有している。
【0045】
弾性板部83は、係止板部83a、本体部83b、押圧板部83cを備えている。
【0046】
また、筐体2の内部にはサブブラシ支持部26が一体的に形成されている。サブブラシ支持部26は、第2筐体22の縦壁(スイッチ左右方向に対して直交する方向に延在する縦壁)の厚さ寸法が部分的に大きく設定されることで構成されており、係止溝27及び姿勢規制部28を備えている。
【0047】
係止溝27はサブブラシ支持部26の前後方向の略中央部に設けられ、前後方向の幅寸法が弾性板部83の係止板部83aの板厚寸法と同等または係止板部83aの板厚寸法よりも僅かに大きく設定されている。そして、この係止溝27に係止板部83aが挿入され、これによって係止板部83aが係止溝27に係止されている。
【0048】
姿勢規制部28は、サブブラシ81のフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85の姿勢を規制(弾性変形した姿勢に規制)するためのものである。姿勢規制部28は、スイッチ左側に向かって下方に傾斜する傾斜部28aと、該傾斜部28aの下端から鉛直方向(スイッチ左右方向に対して直交する方向)に延在する鉛直部28bとを有している。この姿勢規制部28によるフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85の姿勢の規制については後述する。
【0049】
弾性板部83の本体部83bは、係止板部83aの上端に連続し、前方に向かって上方に傾斜している。
【0050】
弾性板部83の押圧板部83cは、本体部83bの前端に連続している。押圧板部83cは、上方に向けて凸型とされた湾曲形状となっている。図8に示すように、弾性板部83に外力が作用していない場合における押圧板部83cの上端位置は、駆動切替機構32の下端位置よりも僅かに高い位置(駆動切替機構32が移動する場合の当該駆動切替機構32の下端位置の移動軌跡よりも僅かに高い位置)に設定されている。つまり、図8に示すように、トリガ1が押込操作された状態にある際には、駆動切替機構32が後方へ移動していることにより、押圧板部83cに接触することが無く、弾性板部83(押圧板部83c)に外力が作用していない状態となる。一方、図4に示すように、トリガ1が解放状態にある際には、駆動切替機構32が前方へ移動していることにより、押圧板部83cの上面に接触し、この上面から下向きの外力が作用して、押圧板部83cが押し下げられ、本体部83bの後端位置(係止板部83aの上端との境界付近)を揺動中心とするように当該本体部83bが下側に弾性変形することになる。この状態では、本体部83bに上向きの反力が生じている。
【0051】
次に、フロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85について説明する。これらフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85は同一形状となっている。ここでは、フロントサブブラシ84を代表して説明する。図6に示すように、フロントサブブラシ84は、傾斜部84a、電極接触部84b、押圧部84cを備えている。
【0052】
傾斜部84aは、弾性板部83の本体部83bのスイッチ左側の端部に連続し、スイッチ左側に向かって下方に傾斜している。
【0053】
電極接触部84bは、フロントサブ電極82aに接触する部分であって、傾斜部84aの下端に連続し、スイッチ左側に向けて凸型とされた湾曲形状となっている。
【0054】
押圧部84cは、電極接触部84bの下端に連続し、スイッチ右側に向けて凸型とされた湾曲形状となっている。
【0055】
また、フロントサブブラシ84は、外力(スイッチ左側に向かう外力:図6及び図10にあっては右側に向かう外力)が作用していない状態にあっては、本体部83bにおけるスイッチ左側の端部の位置から電極接触部84bにおけるスイッチ左側の端部の位置までの距離(図10における寸法t1)が、本体部83bにおけるスイッチ左側の端部の位置からフロントサブ電極82aの位置までの距離(本体部83bにおけるスイッチ左側の端部の位置から基板SUの表面の位置までの距離に略一致:図10における寸法t2)よりも所定寸法だけ短く設定されている。つまり、フロントサブブラシ84に外力(スイッチ左側に向かう外力)が作用していない状態にあっては、電極接触部84bが基板SUから後退しており(基板SUから離れており)、該基板SUに接触しない姿勢となる。
【0056】
前述したように筐体2の内部に形成されている姿勢規制部28は傾斜部28aと鉛直部28bとを有している。傾斜部28aと鉛直部28bとの境界位置は、電極接触部84bがフロントサブ電極82aに接触する状態(図6に示す状態)における押圧部84cの位置よりも僅かに上側の位置に設定されている。また、鉛直部28bの位置(スイッチ左右方向における位置)は、フロントサブブラシ84に外力が作用していない状態(図10に示す状態)における当該フロントサブブラシ84の押圧部84cの位置よりも所定寸法だけスイッチ左側に位置している。この所定寸法は、フロントサブブラシ84の押圧部84cが鉛直部28bに当接した状態において、電極接触部84bがフロントサブ電極82aに接触する寸法として設定されている。このため、図4図6に示すように、トリガスイッチTSの解放状態にあっては、駆動切替機構32が押圧板部83cの上面に接触していることで、弾性板部83の押圧板部83cが押し下げられる。これに伴ってフロントサブブラシ84が下方に移動した状態となり、押圧部84cが姿勢規制部28の鉛直部28bに当接し、この鉛直部28bからの押圧力を受けることでスイッチ左側に弾性変形(フロントサブ電極82aに向かう方向へ弾性変形)しており、フロントサブ電極82aに接触した(押し付けられた)状態となっている。
【0057】
一方、図8図10に示すように、トリガスイッチTSが押込操作された状態にあっては、駆動切替機構32が押圧板部83cの上面に接触する状態が解除され、弾性板部83が元の形状に復帰する。これに伴ってフロントサブブラシ84が上方に移動した状態となり、押圧部84cが姿勢規制部28の鉛直部28bに当接する位置から該鉛直部28bに当接しない位置(例えば傾斜部28aに当接する位置または傾斜部28aから浮いた位置)に移動し、鉛直部28bからの押圧力が解除されることにより、スイッチ右側に変形(形状復帰)し、基板SUから後退した姿勢(基板SUから離れた姿勢)となる。
【0058】
尚、リヤサブブラシ85もフロントサブブラシ84と同様の構成となっており、トリガスイッチTSの解放状態にあっては、スイッチ左側に弾性変形(リヤサブ電極82bに向かう方向へ弾性変形)しており、リヤサブ電極82bに接触した(押し付けられた)状態となり、トリガスイッチTSが押込操作された状態にあっては、基板SUから後退した姿勢となる。
【0059】
<制御構成>
次に、本願開示の電動装置PTが備える制御構成について説明する。図7は、本願開示の電動装置PTが備える制御構成の一部の例を示す概略ブロック図である。図7に示すように、電動装置PTは、本体装置100とトリガスイッチTSとが信号の送受信が可能に構成されている。本体装置100は、モータ等の駆動部Mを備えている。トリガスイッチTSは、切替部7及びサブ摺動接点8それぞれからの信号に応じて本体装置100へ駆動信号を出力する制御部9を備えている。
【0060】
トリガスイッチTSの制御部9は、例えば、各種LSI、VLSI等の集積回路を用いたマイクロコンピュータ、電子素子及び各種端子を用いて構成された回路であり、筐体2内の基板SU上に配置されている。制御部9は、切替部7及びサブ摺動接点8それぞれからの信号を入力として受け付け、その入力に基づいて各種処理を実行し、電動装置PTの本体装置100が備えるモータ等の駆動部Mを駆動させる駆動信号を本体装置100へ出力する。電動装置PTは、本体装置100に入力された駆動信号に基づいて駆動部Mを駆動する。
【0061】
本実施形態では、トリガ1への押込操作の進行に伴ってサブ摺動接点8から信号(オフ信号)が送信された後、切替部7から信号(オン信号)が送信されるようになっている。つまり、トリガ1への押込操作の進行に伴って切替部7(当該切替部7の切替回路)がオフ状態からオン状態に遷移する前段階で、サブ摺動接点8からオフ信号が出力されると共にフロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85と基板SUとの接触が解除されるようになっている。
【0062】
<トリガへの押込操作>
次に、トリガへの押込操作が行われた際のサブ摺動接点8及び切替部7の状態、マイコンの状態、装置回転速度の変化について説明する。図11は、本願開示の電動装置PTにおいてトリガ1への押込操作が行われる際のサブ摺動接点8及び切替部7の信号、マイコンの状態、装置回転速度の変化の一例を示すタイムチャート図である。
【0063】
図4図6に示すように、トリガスイッチTSが解放状態にある際、サブ摺動接点8はオン状態(フロントサブブラシ84及びリヤサブブラシ85がオン位置にある状態)にある。つまり、駆動切替機構32が前方へ移動していることにより、押圧板部83cの上面に接触し、この上面から下向きの外力が作用して、押圧板部83cが押し下げられ、本体部83bの後端位置を揺動中心とするように当該本体部83bが下側に弾性変形している。この状態では、各サブブラシ84,85の押圧部84cが姿勢規制部28の鉛直部28bに当接し、この鉛直部28bからの押圧力を受けることでスイッチ左側に弾性変形(各サブ電極82a,82bに向かう方向へ弾性変形)しており、各サブブラシ84,85がそれぞれ各サブ電極82a,82bに接触した状態にある。つまり、サブ摺動接点8はオン状態にある。この状態では、マイコンは停止(Sleep)状態となっている。また、切替部7はオフ状態(センサ検知用部材71がオフ位置にある状態)にあり、駆動部Mは停止している。
【0064】
この状態からトリガ1の押込操作が開始されると、図8図10に示すように、その押込操作に伴って、プランジャ3が後方に移動していく。このプランジャ3の後方への移動に伴い、駆動切替機構32が押圧板部83cの上面に接触している状態が解除されると、サブブラシ81の弾性板部83が元の形状に復帰し、それに伴って各サブブラシ84,85が上方へ移動して各サブ電極82a,82bとの接触状態が解除される。これに伴い、各サブブラシ84,85の押圧部84cは姿勢規制部28の鉛直部28bよりも上側に移動し、鉛直部28bからの押圧力が解除される。これにより、各サブブラシ84,85も元の形状に復帰し、基板SUから後退するように変形して(図11における「サブブラシ後退変形」のタイミング)、基板SUとの接触が解除されることになる(図10を参照)。
【0065】
その後、トリガ1への押込操作が継続されて、プランジャ3が更に後方に移動すると、センサ検知用部材71が検知部分72に重なる位置となるオン状態となり(図8を参照)、駆動部Mを駆動するための回路が閉じられた状態となって、駆動部Mの駆動が開始される(図11における「切替部オン」のタイミング)。そして、トリガ1への押込操作の進行に伴って切替部7からの信号が変化し、これに伴って駆動部Mの回転速度が高くなっていく。このようにして駆動部Mの駆動が開始された時点では、各サブブラシ84,85は基板SUから後退するように変形しているため、駆動部Mの駆動に伴う振動が各サブブラシ84,85や基板SUに伝達されたとしても、各サブブラシ84,85と基板SUが摺動することはない。
【0066】
<実施形態の効果>
以上説明したように本実施形態のトリガスイッチTSは、サブ摺動接点8を構成する各サブブラシ84,85のオン位置からオフ位置への移動に伴って、当該各サブブラシ84,85と基板SUとの接触が解除される。これにより、各サブブラシ84,85と基板SUとが接触した状態で駆動部Mが駆動することが回避され、各サブブラシ84,85の摩耗を抑制することができ、各サブブラシ84,85を各サブ電極82a,82bに接触させる際の接触信頼性を良好に維持することができる。また、基板SUの樹脂表面が摩耗することも抑制できるため、この摩耗に起因する樹脂粉が発生し難くなり、これによっても各サブブラシ84,85を各サブ電極82a,82bに接触させる際の接触信頼性を良好に維持することができる。
【0067】
また、本実施形態のトリガスイッチTSは、トリガ1への押込操作の進行に伴って切替部7がオフ状態からオン状態に遷移する前段階で、各サブブラシ84,85と基板SUとの接触が解除される。このため、各サブブラシ84,85と基板SUとが接触した状態で駆動部Mが駆動することが確実に回避され、各サブブラシ84,85の摩耗を確実に抑制することができる。
【0068】
<変形例>
前述した実施形態では、各サブブラシ84,85を、弾性変形した姿勢から形状復帰させることによって基板SUとの接触を解除するようにしていた。つまり、各サブブラシ84,85を基板SUから後退させることによって各サブブラシ84,85と基板SUとの接触を解除するようにしていた。本変形例は、基板SUを改良することによって各サブブラシ84,85と基板SUとの接触を解除するようにしたものである。
【0069】
図12は、本願開示のトリガスイッチTSの変形例における当該トリガスイッチTSが解放状態にある際のサブ摺動接点8の各サブブラシ84,85の位置の一例を示す概略斜視図である。図12に示すように、本変形例における基板SUには、各サブ電極82a,82bの上側に開口29が形成されている。この開口29は、各サブブラシ84,85がオフ位置に移動した状態において、当該各サブブラシ84,85が基板SUに接触することのない形状として設計されている。つまり、各サブブラシ84,85がオフ位置に移動した際、各サブブラシ84,85の電極接触部84bが開口29に対向することで基板SUに接触することがない構成となっている。言い換えると、基板SUにおける各サブ電極82a,82bの周辺部は、各サブブラシ84,85のオン位置からオフ位置への移動に伴って、当該各サブブラシ84,85と基板SUとの接触を解除するための凹み形状を有していることになる。
【0070】
本変形例にあっては、図12に示すように各サブブラシ84,85がオン位置にある状態において当該各サブブラシ84,85を弾性変形させておく必要がない。つまり、トリガ1が押込操作された際に各サブブラシ84,85を基板SUから後退させる必要がないため、押圧部84cが姿勢規制部28の鉛直部28bに当接した状態にあっては、各サブブラシ84,85をスイッチ左側に弾性変形(フロントサブ電極82aに向かう方向へ弾性変形)させておく必要がない。このため、各サブブラシ84,85の設計が容易である。
【0071】
<他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態及び変形例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の技術範囲は、請求の範囲によって説明するものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0072】
例えば、前記実施形態及び変形例では、電動装置PTに適用された場合を例に挙げて説明したが、ウォーターガン、ペイントガン、モデルガン等の装置にも適用することが可能である。
【0073】
また、前記実施形態及び変形例では、センサ検知用部材71が設けられた駆動切替機構32を利用してサブブラシ81を弾性変形させるようにしていたがこれに限定されるものではない。つまり、トリガ1への押込操作及び押込操作の解除に伴って押込位置と押込解除位置との間で移動可能な移動部材であればよい。
【0074】
また、前記実施形態及び変形例では、サブブラシ81の構成として、弾性板部83と各サブブラシ84,85とを一体的に形成していたがこれに限定されるものではない。つまり、弾性板部83と各サブブラシ84,85とを別体で形成することにより、サブブラシ81を複数の部品で構成するようにしてもよい。
【0075】
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
【0076】
(付記1)
トリガへの押込操作による当該トリガの移動によって駆動部を駆動させるに当たり、固定された電極に接触するオン位置から当該電極に接触しないオフ位置に移動する摺動電極部を備えたトリガスイッチであって、前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記電極を固定している固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【0077】
(付記2)
付記1に記載のトリガスイッチであって、前記トリガへの押込操作の進行に伴ってオフ状態からオン状態に遷移して前記駆動部を駆動させる切替回路を備えており、前記押込操作の進行に伴って前記切替回路がオフ状態からオン状態に遷移する前段階で、前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【0078】
(付記3)
付記1または2に記載のトリガスイッチであって、前記摺動電極部は、前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、前記電極から離れる方向に変形することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【0079】
(付記4)
付記3に記載のトリガスイッチであって、前記摺動電極部が前記オン位置にある状態で、当該摺動電極部を、前記電極に接触する方向へ弾性変形した姿勢に規制する姿勢規制部を備えており、前記摺動電極部が前記オフ位置となる際、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記摺動電極部が前記弾性変形した姿勢から形状復帰することによって前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【0080】
(付記5)
付記4に記載のトリガスイッチであって、前記トリガへの押込操作及び押込操作の解除に伴って押込位置と押込解除位置との間で移動可能な移動部材と、前記移動部材が前記押込解除位置にある状態で当該移動部材からの外力を受けて弾性変形された姿勢となり、前記移動部材が前記押込解除位置から前記押込位置に向けて移動することによって前記外力が解除されて当該外力により弾性変形された姿勢から形状復帰する構成とされた弾性板部とを備え、前記摺動電極部は、前記弾性板部が前記弾性変形された姿勢となっている状態で、前記姿勢規制部によって姿勢が規制されることにより前記電極に接触するオン位置となり、前記弾性板部が前記形状復帰した状態で、前記姿勢規制部による前記姿勢の規制が解除されて前記固定部材との接触が解除されることを特徴とするトリガスイッチ。
【0081】
(付記6)
付記1または2に記載のトリガスイッチであって、前記固定部材には、前記オフ位置にある前記摺動電極部に対向する領域に開口が形成されていることを特徴とするトリガスイッチ。
【0082】
(付記7)
付記1または2に記載のトリガスイッチであって、前記固定部材における前記電極の周辺部は、前記摺動電極部の前記オン位置から前記オフ位置への移動に伴って、当該摺動電極部と前記固定部材との接触を解除するための凹み形状を有することを特徴とするトリガスイッチ。
【0083】
(付記8)
付記1乃至7の何れか一つに記載のトリガスイッチを備えた装置であって、前記摺動電極部と前記固定部材との接触が解除された状態で前記駆動部が駆動することを特徴とする装置。
【符号の説明】
【0084】
1 トリガ
28 姿勢規制部
32 駆動切替機構(移動部材)
82a フロントサブ電極(電極)
82b リヤサブ電極(電極)
83 弾性板部
84 フロントサブブラシ(摺動電極部)
85 リヤサブブラシ(摺動電極部)
SU 基板(固定部材)
PT 電動装置(装置)
TS トリガスイッチ
M 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12