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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025087018
(43)【公開日】2025-06-10
(54)【発明の名称】肉厚測定方法および肉厚測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20250603BHJP
【FI】
G01B17/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201367
(22)【出願日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】中原 崇
(72)【発明者】
【氏名】矢敷 達朗
(72)【発明者】
【氏名】福原 良純
(72)【発明者】
【氏名】石井 健裕
【テーマコード(参考)】
2F068
【Fターム(参考)】
2F068AA28
2F068BB09
2F068CC01
2F068DD11
2F068DD13
2F068SS01
(57)【要約】
【課題】減肉がピンポイントである位置の真値を捕捉する確率を上げることが可能な肉厚測定システムを提供する。
【解決手段】肉厚測定システムは、配管系統の形状情報を保存する配管系統形状情報保存部B10と、配管系統の形状情報から流体解析により減肉位置を予測する減肉位置予測部B11と、予測した減肉位置の付近を肉厚測定位置とする肉厚測定位置決定部B12と、肉厚測定位置決定部B12が決定した肉厚測定位置の肉厚を肉厚測定器から受信する肉厚測定部B14と、肉厚測定位置の肉厚実測値から求めた実測減肉位置に予測した減肉位置が近づくように減肉位置予測部B11の減肉位置予測モデルを補正する予測モデル補正部B15と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管系統の形状情報を配管系統形状情報保存部に保存し、
前記配管系統の前記形状情報から流体解析により減肉位置を予測し、
予測した前記減肉位置の付近を肉厚測定位置とし、
前記肉厚測定位置の肉厚を肉厚測定器から受信し、
前記肉厚測定位置の肉厚実測値から求めた実測減肉位置に予測した前記減肉位置が近づくように減肉位置予測モデルを補正する、
ことを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の肉厚測定方法において、
配管壁面における減肉速度分布の予測値と実測値との差分分布を用いて前記減肉位置予測モデルを補正することを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の肉厚測定方法において、
正規化された液滴径分布を用いて前記減肉位置を予測することを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の肉厚測定方法において、
配管壁面における減肉速度分布の予測値と実測値の差分分布から機械学習により、正規化された液滴径分布を算出し、前記正規化された前記液滴径分布を用いて前記減肉位置を予測することを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項5】
請求項1、2、4のうちのいずれか一項に記載の肉厚測定方法において、
前記配管系統の前記形状情報から前記配管系統の立体形状画像を生成して前記肉厚測定位置を重畳し、表示出力部に表示することを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項6】
請求項2に記載の肉厚測定方法において、
減肉速度分布の予測値と前記実測値との差分が一定値以上であった場合、前記減肉位置予測モデルの調整パラメータを補正することにより、前記減肉位置予測モデルを補正することを特徴とする肉厚測定方法。
【請求項7】
配管系統の形状情報を保存する配管系統形状情報保存部と、
前記配管系統の前記形状情報から流体解析により減肉位置を予測する減肉位置予測部と、
予測した前記減肉位置の付近を肉厚測定位置とする肉厚測定位置決定部と、
前記肉厚測定位置決定部が決定した前記肉厚測定位置の肉厚を肉厚測定器から受信する肉厚測定部と、
前記肉厚測定位置の肉厚実測値から求めた実測減肉位置に予測した前記減肉位置が近づくように前記減肉位置予測部の減肉位置予測モデルを補正する予測モデル補正部と、
を備えることを特徴とする肉厚測定システム。
【請求項8】
請求項7に記載の肉厚測定システムにおいて、
前記予測モデル補正部は、配管壁面における減肉速度分布の予測値と実測値との差分分布を用いて前記減肉位置予測モデルを補正することを特徴とする肉厚測定システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の肉厚測定システムにおいて、
前記予測モデル補正部は、正規化された液滴径分布を算出して前記減肉位置予測部に出力し、前記減肉位置予測部は、前記正規化された前記液滴径分布を用いて前記減肉位置を予測することを特徴とする肉厚測定システム。
【請求項10】
請求項8に記載の肉厚測定システムにおいて、
前記予測モデル補正部は、配管壁面における減肉速度分布の予測値と実測値の差分分布から機械学習により、正規化された液滴径分布を算出することを特徴とする肉厚測定システム。
【請求項11】
請求項7、8、10のうちのいずれか一項に記載の肉厚測定システムにおいて、
肉厚測定ガイダンス部と、
表示出力部と、
を備え、前記肉厚測定ガイダンス部は、前記配管系統の前記形状情報から前記配管系統の立体形状画像を生成して前記肉厚測定位置を重畳し、前記表示出力部に表示することを特徴とする肉厚測定システム。
【請求項12】
請求項8に記載の肉厚測定システムにおいて、
前記予測モデル補正部は、減肉速度分布の予測値と前記実測値との差分が一定値以上であった場合、前記減肉位置予測モデルの調整パラメータを補正することにより、前記減肉位置予測モデルを補正することを特徴とする肉厚測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管系統において配管の肉厚を測定する肉厚測定方法および肉厚測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配管系統、例えば原子力発電プラントの配管系統において、液滴の配管壁面への衝突や水の流れの乱れにより配管の肉厚が薄くなる現象を減肉と呼ぶ。減肉による配管破断を防ぐため、時間基準保守手段である肉厚定期測定の他に、状態基準保守手段として流体解析を用いた減肉予測技術がある。
【0003】
特許文献1には、肉厚定期測定において減肉予測技術で得られた減肉位置を使用する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-46116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減肉予測技術で得られた減肉位置と減肉位置の真値のずれが大きいと、予測減肉位置を中心に測定位置の分解能を上げた領域でも減肉位置の真値を捕捉できないことがある。
【0006】
特許文献1には、ピンポイントである減肉部位の位置の真値を捕捉できているか否かの評価についての技術は記載されていない。
【0007】
このため、ピンポイントである減肉部位の位置の真値を捕捉する確率を向上することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、減肉がピンポイントである位置の真値を捕捉する確率を上げることが可能な肉厚測定方法および肉厚測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は次の様に構成される。
【0010】
肉厚測定方法において、配管系統の形状情報を配管系統形状情報保存部に保存し、前記配管系統の前記形状情報から流体解析により減肉位置を予測し、予測した前記減肉位置の付近を肉厚測定位置とし、前記肉厚測定位置の肉厚を肉厚測定器から受信し、前記肉厚測定位置の肉厚実測値から求めた実測減肉位置に予測した前記減肉位置が近づくように減肉位置予測モデルを補正する。
【0011】
また、肉厚測定システムにおいて、配管系統の形状情報を保存する配管系統形状情報保存部と、前記配管系統の前記形状情報から流体解析により減肉位置を予測する減肉位置予測部と、予測した前記減肉位置の付近を肉厚測定位置とする肉厚測定位置決定部と、前記肉厚測定位置決定部が決定した前記肉厚測定位置の肉厚を肉厚測定器から受信する肉厚測定部と、前記肉厚測定位置の肉厚実測値から求めた実測減肉位置に予測した前記減肉位置が近づくように前記減肉位置予測部の減肉位置予測モデルを補正する予測モデル補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
減肉がピンポイントである位置の真値を捕捉する確率を上げることが可能な肉厚測定方法および肉厚測定システムを提供することができる。
【0013】
本発明では、細かい分解能で測定した肉厚測定実測値を使って予測減肉位置を補正することにより、予測減肉位置の高精度化を図ることができ、実際のピンポイントである減肉位置を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施例における肉厚測定方法を実行するハードウェア構成を示した図である。
図2】一実施例における肉厚測定方法を実行するためのCPU内の機能ブロック図である。
図3】一実施例における減肉位置予測部の機能ブロック図である。
図4】一実施例における液滴衝撃壊食予測部の機能ブロック図である。
図5】一実施例における流れ加速型腐食予測部の機能ブロック図である。
図6】一実施例における肉厚測定位置決定部の機能ブロック図である。
図7】一実施例における肉厚測定ガイダンス部の機能ブロック図である。
図8】一実施例における肉厚測定部の機能ブロック図である。
図9】一実施例における予測モデル補正部の機能ブロック図である。
図10】一実施例における肉厚測定方法の処理フローである。
図11】一実施例における減肉位置予測処理の処理フローである。
図12】一実施例における肉厚測定位置の配管系統立体形状への重畳表示処理の処理フローである。
図13】一実施例における肉厚測定および減肉位置の実測値算出処理の処理フローである。
図14】一実施例における減肉位置の実測値と予測値の差分の閾値判定処理と予測モデル調整パラメータ補正処理の処理フローである。
図15】一実施例における記憶装置内の各種データの構成図である。
図16】一実施例における配管系統メッシュデータの構成図である。
図17】一実施例における解析条件のデータ構成図である。
図18】一実施例における調整パラメータのデータ構成図である。
図19】一実施例における減肉速度分布予測値のデータ構成図である。
図20】一実施例における減肉速度分布実測値のデータ構成図である。
図21】一実施例における肉厚測定分布のデータ構成図である。
図22】一実施例における肉厚測定位置重畳配管系統立体形状のデータ構成図である。
図23】一実施例における肉厚測定位置群のデータ構成図である。
図24】一実施例における肉厚測定ガイダンスの画面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例0016】
(実施例)
本発明の一実施例は配管系統において流体解析により予測された減肉位置を中心に肉厚測定位置の分解能を向上する肉厚測定方法において、肉厚測定結果を用いて減肉位置の予測モデルを補正する実施例である。
【0017】
図1は一実施例における肉厚測定方法を実行するハードウェア構成を示した図である。
【0018】
肉厚測定方法を実行するハードウェアは、肉厚測定管理端末1、肉厚測定器2、操作入力部3、表示出力部4から成り立っている。
【0019】
肉厚測定管理端末1は、肉厚測定位置を表示出力部4に表示することで肉厚測定者に肉厚測定位置を提示する。肉厚測定者から肉厚測定位置と肉厚測定値の登録に関する操作入力を受け付けることにより、肉厚測定位置と肉厚測定値の組を記録し、次の肉厚測定位置の決定に使用する。
【0020】
肉厚測定管理端末1は、CPU(Central Processor Unit)5、RAM(Random Access Memory)6、記憶装置、I/F(Interface)7から成り立っている。CPU5は肉厚測定位置の表示や減肉位置の予測、肉厚測定位置の決定などのプログラムに従って演算処理を実行するものである。RAM6は肉厚測定位置の表示や減肉位置の予測、肉厚測定位置の決定などのプログラムを実行するにあたり、データを一時記憶しておくものである。
【0021】
記憶装置7は肉厚測定位置の表示や減肉位置の予測、肉厚測定位置の決定などのプログラムP1~P5と各種データD1を記録しておくものであり、ハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)などが該当する。記憶装置7には、肉厚測定プログラムP1、減肉位置予測プログラムP2、減肉予測モデル補正プログラムP3、肉厚測定位置決定プログラムP4、肉厚測定ガイダンスプログラムP5から成り立っている。
【0022】
肉厚測定プログラムP1は、肉厚測定値を肉厚測定器2から、肉厚測定者からの肉厚測定位置と肉厚測定値の登録に関する操作入力を操作入力部3から、それぞれI/F8を介して受け付けることにより、肉厚測定位置と肉厚測定値の組を記録するプログラムである。
【0023】
減肉位置予測プログラムP2は、配管系統形状情報である配管系統メッシュデータD100(図15に示す)を入力として、流体解析により配管系統上の減肉位置を予測するプログラムである。減肉位置とは、減肉速度が閾値以上である場所を指す。
【0024】
減肉予測モデル補正プログラムP3は、肉厚測定結果を用いて減肉位置予測プログラムP2における減肉位置予測モデルを補正するプログラムである。
【0025】
肉厚測定位置決定プログラムP4は、減肉位置予測プログラムP2から出力された予測減肉位置を中心とした肉厚測定位置を決定するプログラムである。
【0026】
肉厚測定ガイダンスプログラムP5は、肉厚測定位置決定プログラムP4により出力された肉厚測定位置を、配管系統メッシュデータD100から生成された配管系統の立体形状へ重畳表示するプログラムである。
【0027】
各種データD1は肉厚測定結果や減肉速度分布、中間データなどのデータが含まれる。
【0028】
I/F8は、肉厚測定器2からの肉厚測定値や操作入力部3からの操作入力を受信し、肉厚測定位置を重畳表示した配管系統の立体形状を表示出力部4へ出力する。
【0029】
肉厚測定器2は超音波の反射などを用いて配管系統上の部品における所定箇所の肉厚を計測するものである。操作入力部3は、ユーザからの操作入力を電気信号に変えて肉厚測定管理端末1へ送信するものであり、キーボードやタッチパネル、マウスなどが該当する。表示出力部4は、配管系統の立体形状へ肉厚測定位置を重畳表示するためのものであり、ディスプレイやプリンタのことを指す。
【0030】
図2は一実施例における肉厚測定方法を実行するためのCPU5内の機能ブロック図である。
【0031】
肉厚測定方法の機能ブロックは、 配管系統の形状情報を保存する配管系統形状情報保存部である配管系統メッシュ保存部B10と、減肉位置予測部B11と、肉厚測定位置決定部B12と、肉厚測定ガイダンス部B13と、肉厚測定部B14と、予測モデル補正部B15と、肉厚測定値分布履歴保存部B16と、減肉速度分布実測値履歴保存部B17と、から成り立つ。
【0032】
配管系統メッシュ保存部B10は、肉厚測定の対象となる配管系統の解析領域を分割したメッシュと呼ばれる小空間毎に保存したものである。
【0033】
減肉位置予測部B11は、配管系統メッシュデータD100と予測モデル補正部B15からの調整パラメータD102(図15に示す)を入力として、流体解析により配管系統上の減肉位置を予測して減肉速度分布予測値D103(図15に示す)として出力する。
【0034】
肉厚測定位置決定部B12は、減肉位置予測部B11から出力された減肉速度分布予測値D103を用いて、減肉速度分布のうち減肉速度が閾値以上である減肉位置を中心とした肉厚測定位置を決定して肉厚測定ガイダンス部B13や肉厚測定部B14へ出力する。
【0035】
肉厚測定ガイダンス部B13は、配管系統メッシュデータD100から配管系統の立体形状画像を生成し、肉厚測定位置決定部B12により出力された肉厚測定位置を重畳し、表示出力部4に表示する。
【0036】
肉厚測定部B14は、肉厚測定値を肉厚測定器2から、肉厚測定者からの肉厚測定位置と肉厚測定値の登録に関する操作入力を操作入力部3から、それぞれI/F8を介して受け付ける(受信する)ことにより、肉厚測定位置と肉厚測定値の組を肉厚測定値分布履歴保存部B16へ送信する。また、減肉速度分布実測値D104(図15に示す)を肉厚測定値分布D105(図15に示す)から計算し、減肉速度分布実測値履歴保存部B17へ送信する。
【0037】
減肉予測モデル補正部B15は、肉厚測定部B14からの肉厚測定分布D106(図15に示す)を用いて、減肉位置予測部B11における減肉位置予測モデルを補正するため調整パラメータD102を出力する。
【0038】
肉厚測定値分布履歴保存部B16は、肉厚測定位置と肉厚測定値の組を各時刻毎に保存することにより配管系統表面における肉厚測定値分布D105として保存し、必要に応じて出力する。
【0039】
減肉速度分布実測値履歴保存部B17は、肉厚測定部B14で計算した減肉速度分布実測値D104を時刻毎に保存し、必要に応じて出力する。
【0040】
図3は一実施例における減肉位置予測部B11の機能ブロック図である。
【0041】
減肉位置予測部B11は、液滴衝撃壊食予測部B110と、流れ加速型腐食予測部B111と、から成り立つ。
【0042】
液滴衝撃壊食予測部B110は、配管形状メッシュデータD100と、予測モデル補正部B15により正規化された液滴径分布と、を入力として、液滴衝撃壊食に起因する減肉位置の変化を予測し、液滴衝撃壊食による減肉速度分布予測値として肉厚測定位置決定部12に出力する。
【0043】
流れ加速型腐食予測部B111は、配管形状メッシュデータD100と、予測モデル補正部B15から出力される乱流の強さを示すパラメータを入力として、流れ加速型腐食に起因する減肉位置の変化を予測し、流れ加速型腐食による減肉速度分布予測値として肉厚測定位置決定部12出力する。
【0044】
図4は一実施例における液滴衝撃壊食予測部B110の機能ブロック図である。
【0045】
液滴衝撃壊食予測部B110は、蒸気流れ解析部B1101と、液滴発生計算部B1102と、液滴飛跡解析部B1103と、減肉速度計算部B1104と、から成り立つ。
【0046】
蒸気流れ解析部B1101は、配管系統メッシュデータD100と解析条件D101から配管系統における蒸気の挙動、具体的には蒸気の圧力と温度と流速ベクトルを流体解析により求め、蒸気流れ解析結果として出力する。
【0047】
液滴発生計算部B1102は、蒸気が液化した液滴に関して配管系統の所定管軸座標断面において液滴代表径で正規化された液滴径分布と、蒸気流れ解析結果を入力として、蒸気流れ解析結果により液滴代表径を計算して正規化液滴径分布を掛け合わせることにより、実数の液滴径分布を計算し出力する。
【0048】
液滴飛跡解析部B1103は、液滴径分布と蒸気流れ解析結果を入力として、液滴の飛跡を流体解析により予測し液滴飛跡として出力する。
【0049】
減肉速度計算部B1104は、液滴飛跡から液滴が配管系統の壁面に衝突して発生する減肉の速度を各壁面の小空間毎に計算し、液滴衝撃壊食による減肉速度分布予測値として出力する。
【0050】
図5は一実施例における流れ加速型腐食予測部B111の機能ブロック図である。
【0051】
流れ加速型腐食予測部B111は、非圧縮性流れ解析部B1111と、形状因子計算部B1112と、材料劣化解析部B1113と、から成り立つ。
【0052】
非圧縮性流れ解析部B1111は、配管系統メッシュデータD100と解析条件D101を入力として、流体解析により配管系統を流れる水の流速や乱流分布を計算し出力する。
【0053】
形状因子計算部B1112は、流速と乱流分布と、乱流の強さを示すパラメータと、を入力として、流れ加速型腐食において形状に起因する形状因子を計算し出力する。
【0054】
材料劣化解析部B1113は、形状因子から配管系統における材料の劣化を解析し、流れ加速型腐食による減肉速度分布予測値を計算して出力する。
【0055】
図6は一実施例における肉厚測定位置決定部B12の機能ブロック図である。
【0056】
肉厚測定位置決定部B12は、減肉速度閾値処理部B121と、高解像度肉厚測定位置設定部B122と、から成り立つ。
【0057】
減肉速度閾値処理部B121は、減肉速度分布予測値と肉厚測定分布を入力として配管余寿命を求め、配管余寿命が閾値以下かどうかを判定する。ある位置の配管余寿命は式(1)で算出する。
配管余寿命=肉厚測定値÷減肉速度分布予測値 ・・・(1)
【0058】
肉厚測定値のない位置は減肉が発生していないと仮定して公称肉厚値を使用する。配管余寿命が閾値以下である位置を減肉位置群と定義して出力する。
【0059】
高解像度肉厚測定位置設定部B122は、減肉位置群を中心に肉厚測定位置の分解能を上げ、肉厚測定位置群D107として出力する。
【0060】
図7は一実施例における肉厚測定ガイダンス部B13の機能ブロック図である。
【0061】
肉厚測定ガイダンス部B13は、配管系統立体形状作成部B131と、肉厚測定位置重畳表示部B132と、から成り立つ。
【0062】
配管系統立体形状作成部B131は、配管系統メッシュデータD100から配管系統の立体形状を作成して出力する。
【0063】
肉厚測定位置重畳表示部B132は、肉厚測定位置群D107を読み込み、配管系統の立体形状へ重畳表示する。
【0064】
図8は一実施例における肉厚測定部B14の機能ブロック図である。
【0065】
肉厚測定部B14は、肉厚測定位置番号入力受付部B141と、肉厚測定結果集計部B142と、減肉速度計算部B143と、から成り立つ。
【0066】
肉厚測定位置番号入力受付部B141は、操作入力部3により測定者からの肉厚測定位置番号に関する入力を受け付け、肉厚測定結果集計部B142へ出力する。
【0067】
肉厚測定結果集計部B142は、入力である肉厚測定位置番号と肉厚測定結果を紐づけ、位置番号付肉厚測定結果として肉厚測定値分布履歴保存部B16へ出力する。
【0068】
減肉速度計算部B143は、肉厚測定値分布履歴保存部B16から今回と前回の肉厚測定分布を入力として、肉厚測定分布の今回と前回の差分を計算して時間で割ることにより減肉速度分布を計算して出力し、減肉速度分布実測値履歴保存部B17へ保存する。減肉速度分布実測値履歴保存部B17から減肉速度分布実測値履歴を読み込むことにより、減肉速度分布実測値の時間的な平滑化を行うこともできるようにする。
【0069】
図9は一実施例における予測モデル補正部B15の機能ブロック図である。予測モデル補正部B15は、配管壁面における減肉速度分布の予測値と実測値との差分分布を用いて予測モデルを補正する。
【0070】
予測モデル補正部B15は、液滴衝撃壊食および流れ加速型腐食成分分離部B151と、液滴衝撃壊食予測モデル補正部B152と、流れ加速型腐食予測モデル補正部B153と、から成り立つ。
【0071】
液滴衝撃壊食および流れ加速型腐食成分分離部B151は、減肉速度分布実測値を、液滴衝撃壊食成分と流れ加速型腐食成分に分離する。具体的には例えば周囲の減肉速度が小さい減肉位置を液滴衝撃壊食成分とし、そうでないものを流れ加速型腐食成分とする。
【0072】
液滴衝撃壊食予測モデル補正部B152は、液滴衝撃壊食成分減肉速度分布の予測値と実測値の差分を用いて、機械学習のうちの例えば強化学習により液滴代表径で正規化された液滴径分布を算出する。液滴分布の算出は、その他の機械学習、他の統計学的学習の手法、数式モデルの手法を用いてもよい。
【0073】
流れ加速型モデル補正部B153は、流れ加速型腐食成分減分布実測値および予測値を用いて、乱流の強さを示すパラメータを変化させる。
【0074】
図10は一実施例における肉厚測定方法の処理フローである。
【0075】
処理FAにて定期肉厚測定を行わず(Noの場合)、処理FBで運転条件を変更する場合(Yesの場合)、減肉位置予測部B11が減肉位置予測処理F1を実行し、減肉速度分布予測値D103を肉厚測定位置決定部B12へ出力する。減肉速度分布予測値D103出力後、もしくは定期肉厚測定を行う場合、肉厚測定位置決定部B12は、現状の減肉速度分布予測値と前回の肉厚測定分布結果から配管余寿命を計算して一箇所でも閾値以下であれば予測減肉位置周囲の測定位置の分解能を向上し、肉厚測定ガイダンス部B13と肉厚測定部B14へ肉厚測定位置群D107を出力する。
【0076】
肉厚測定ガイダンス部B13は、肉厚測定位置を配管系統立体形状に重畳表示し、表示出力部4へ出力する(処理F2)。
【0077】
一方、肉厚測定位置群D107を受信した肉厚測定部B14は、肉厚測定値と減肉速度分布実測値を算出する(処理F3)。ここで肉厚測定値と減肉速度分布実測値により配管余寿命を計算し、該当部品のうち一箇所でも閾値以下であれば肉厚測定位置における部品を交換する。前回の予測減肉位置の周囲において減肉速度分布実測値が所定値以下の場合、肉厚測定位置決定部B12は前回の予測減肉位置を解除し、付近の測定位置分解能を元に戻す。
【0078】
肉厚測定位置決定部B12において、処理F6にて、配管余寿命が閾値より上だった場合、または前回の予測減肉位置を解除し付近の測定位置分解能を元に戻した後、または肉厚測定部B14で前回の予測減肉位置で減肉速度分布が所定値より上だった場合、予測モデル補正部B15の処理に移る。
【0079】
予測モデル補正部B15では、測定位置分解能を向上した領域に実測減肉位置が存在し(処理F7でYes)、かつ減肉速度分布の実測値と予測値の差分が一箇所でも一定値以上であった場合(処理F4でYes)、予測モデルの調整パラメータを補正する(処理F5)。測定位置分解能を向上した領域に実測減肉位置が存在しなかった場合(処理F7でNo)、もしくは減肉速度分布の実測値と予測値の差分が全ての箇所で一定値未満だった場合(処理F4でNo)、処理を終了する。なお、定期肉厚測定を行わず運転条件を変更しない場合、何もせずに処理を終了する。
【0080】
図11は一実施例における減肉位置予測処理F1の処理フローである。
【0081】
処理F101において、減肉位置予測部B11は、まず蒸気流れ解析部B1101を用いて、配管系統メッシュデータD100と解析条件D101から配管系統における蒸気の挙動、具体的には蒸気の圧力と温度と流速ベクトルを流体解析により求め、蒸気流れ解析結果として出力する。
【0082】
次に、処理F102において、液滴発生計算部B1102を用いて、液滴径ピーク位置と液滴径ばらつきと蒸気流れ解析結果を入力として、蒸気が液化した液滴に関して配管系統の所定管軸座標断面における液滴径分布を作成し出力する。
【0083】
次に、処理F103において、液滴飛跡解析部B1103を用いて、液滴径分布と蒸気流れ解析結果を入力として、液滴の飛跡を流体解析により予測する液滴飛跡解析を実行し、液滴飛跡として出力する。
【0084】
次に、処理F104において、減肉速度計算部B104を用いて、液滴飛跡から液滴が配管系統の壁面に衝突して発生する減肉の速度を、液滴衝撃壊食による減肉速度分布予測値として計算し出力する。
【0085】
次に、処理F105において、非圧縮性流れ解析部B1111を用いて、配管系統メッシュデータD100と解析条件D101を入力として、非圧縮性流れ解析により配管系統を流れる水の流速や乱流分布を計算し出力する。
【0086】
次に、処理F106において、形状因子計算部B1112を用いて、流速と乱流分布と乱流の強さを示すパラメータを入力として、流れ加速型腐食において形状に起因する形状因子を計算し出力する。
【0087】
次に、処理F107において、材料劣化解析部B1113を用いて、形状因子から配管系統における材料の劣化を解析し、流れ加速型腐食による減肉速度分布予測値を計算して出力する。
【0088】
図12は肉厚測定位置の配管系統立体形状への重畳表示処理F2(図10に示す)の処理フローである。
【0089】
まず、処理F201において、肉厚測定ガイダンス部B13は、配管系統立体形状作成部B131を用いて配管系統メッシュデータD100から配管系統の立体形状を作成して出力する。
【0090】
最後に、処理F202において、肉厚測定位置重畳表示部B132を用いて、肉厚測定位置群D107を読み込み配管系統の立体形状へ重畳表示する。
【0091】
図13は肉厚測定および減肉速度分布実測値の算出処理F3の処理フローである。
【0092】
まず、処理F301において、肉厚測定者が肉厚測定器2で所定の箇所の肉厚を測定する。次に、処理F302において、肉厚測定者が操作入力部3を用いて、肉厚測定位置の番号を肉厚測定管理端末1へ入力する。このときの肉厚測定管理端末1内の肉厚測定部B14は、肉厚測定位置番号入力受付部141を用いて肉厚測定位置番号に関する入力を受け付け、肉厚測定結果集計部B142へ出力する。
【0093】
次に、処理F303において、肉厚測定結果集計部B142を用いて、肉厚測定位置番号と肉厚測定結果を紐づけることで集計し、位置番号付肉厚測定結果として肉厚測定値分布履歴保存部B16へ出力し保存する。
【0094】
次に、処理F304において、減肉速度計算部B143を用いて、肉厚測定値分布履歴保存部B16から今回と前回の肉厚測定分布を入力として、肉厚測定分布の今回と前回の差分を計算して時間で割ることにより減肉速度分布実測値を計算して出力し、減肉速度分布実測値履歴保存部B17へ出力し保存する。
【0095】
図14は、減肉速度分布の実測値と予測値の差分の閾値判定処理F4(図10に示す)と、予測モデル調整パラメータ補正処理F5(図10に示す)の処理フローである。
【0096】
まず、処理F41において、液滴衝撃壊食の減肉速度分布について、実測値と予測値の差分が一定値以上であれば、処理F51に進み、予測モデル補正部B15は、液滴衝撃壊食液滴衝撃壊食の予測モデルに関して液滴代表径で正規化された液滴径分布を補正する。
【0097】
最後に、処理F42において、流れ加速型腐食の減肉速度分布について、実測値と予測値の差分が一定値以上であれば、処理F52に進み、予測モデル補正部B15は、流れ加速型腐食予測モデル補正部B153を用いて流れ加速型腐食の予測モデルに関して乱流の強さを示すパラメータを補正する。
【0098】
図15は一実施例における記憶装置7内の各種データD1のデータ構成図である。各種データD1は、複数の配管系統メッシュデータD100と、配管系統メッシュデータ数と配管系統メッシュデータカレントIDと、複数の解析条件D101と、解析条件数と解析条件カレントIDと、複数の調整パラメータD102と、調整パラメータ数と調整パラメータカレントIDと、を有する。
【0099】
さらに、各種データD1は、複数の減肉速度分布予測値D103と、減肉速度分布予測値サンプル数と減肉速度分布予測値サンプルカレントIDと、複数の減肉速度分布実測値D104と、減肉速度分布実測値サンプル数と減肉速度分布実測値サンプルカレントIDと、複数の肉厚測定分布D105と、肉厚測定位置群サンプル数と肉厚測定カレントIDと、複数の肉厚測定位置重畳配管系統立体形状D106と、肉厚測定位置重畳配管系統立体形状数と肉厚測定位置重畳配管系統立体形状カレントIDと、複数の肉厚測定位置群D107と、肉厚測定サンプル数と肉厚測定サンプル数カレントIDと、肉厚測定位置群サンプル数と肉厚測定位置群カレントIDと、その他変数から成り立っている。以上のデータにおいてカレントIDは、配管系統メッシュデータD100など複数のデータのうち、現在使用しているもののIDを示す。
【0100】
配管系統メッシュデータD100は、配管系統の形状を小空間に分割して格納したものである。解析条件D101は、配管系統において蒸気流れ解析や非圧縮性流体解析などの流体解析を行う際の初期条件を示すものであり、例えば配管系統流入面流速や流出面圧力、温度初期値や解法の種類などが該当する。
【0101】
調整パラメータD102は減肉位置予測部B11の予測モデルを修正するために予測モデル補正部B15において計算されるパラメータのことであり、液滴径ピーク位置や液滴径ばらつき、乱流の強さを示すパラメータなどを含む。
【0102】
減肉速度分布予測値D103は、減肉位置予測部B11により計算された、配管系統壁面における減肉速度予測値の分布を示したものである。減肉速度分布実測値D104は、肉厚測定部B14により肉厚測定分布D105を用いて計算された、配管系統壁面における減肉速度実測値の分布を示したものである。肉厚測定分布D105は、肉厚測定部B14により集計された、配管系統壁面における肉厚測定分布を示したものである。
【0103】
肉厚測定位置重畳配管系統立体形状D106は、配管系統メッシュデータD100を用いて作成された配管系統の立体形状に、肉厚測定位置決定部B12で計算された肉厚測定位置を重畳表示したものである。
【0104】
図16は、一実施例における配管系統メッシュデータD100のデータ構造図である。
【0105】
配管系統メッシュデータD100は、配管系統メッシュデータIDと、データ内点数と、複数の点情報と、データ内メッシュ数と、複数のメッシュ情報から成り立っている。
【0106】
配管系統メッシュデータIDは、複数ある配管系統メッシュデータD100を識別する番号である。
【0107】
データ内点数は、配管系統メッシュデータD100の対象とする配管系統の領域をメッシュに分割したときの、メッシュを構成する頂点の数である。
【0108】
点情報は配管系統のメッシュを構成する頂点の情報であり、点IDとX座標と、Y座標と、Z座標と、から成り立つ。点IDは頂点を識別するためのIDであり、X座標とY座標とZ座標はメッシュの存在する空間の座標系における位置をX座標とY座標とZ座標で示したものである。
【0109】
データ内メッシュ数は配管系統メッシュデータD100内におけるメッシュの数を示したものである。
【0110】
メッシュ情報は、配管系統メッシュデータD100内におけるメッシュの情報を示したものであり、メッシュIDとメッシュ構成点数と複数の点IDから成り立つ。メッシュIDは配管系統メッシュデータD100内において複数のメッシュを識別するための番号である。メッシュ構成点数は、メッシュを構成する頂点の数である。複数の点IDは、メッシュを構成する複数の頂点における点IDである。
【0111】
図17は一実施例における解析条件D101のデータ構成図である。
【0112】
解析条件D101は、複数の解析条件定数と、解析条件定数の数と、解析条件IDと、解析条件名称と、から成り立っている。
【0113】
解析条件定数は解析条件の具体的な値を示したものであり、解析条件定数IDと名称と条件から成り立つ。解析条件定数IDは複数の解析条件定数を識別するためのIDである。解析条件名称は解析条件定数の名称を示したものであり、例えば流入面流速(m/s)、流出面圧力(MPa)、解法の種類(圧力ベース=0/密度ベース=1)などが入る。値は解析条件定数の値を示したものであり、例えば名称が流入面流速(m/s)の場合は値に100が入り、流出面圧力(MPa)の場合は値に0.15が入り、名称が解法の種類(圧力ベース=0/密度ベース=1)の場合は値に0が入る。解析条件定数の数は、解析条件D101に含まれる解析条件定数の数を示したものである。解析条件IDは、複数ある解析条件D101を識別するための番号である。解析条件名称は、解析条件が何であるかを示す文字列であり、例えば蒸気流れ解析条件1、非圧縮性流れ解析条件2などの文字列が入る。
【0114】
図18は一実施例における調整パラメータD102のデータ構成図である。
【0115】
調整パラメータD102は、調整パラメータIDと、乱流の強さを示すパラメータと、正規化液滴径分布と、から成り立つ。
【0116】
調整パラメータIDは、複数ある調整パラメータD102を識別するための番号である。
【0117】
乱流の強さを示すパラメータは、流れ加速型腐食の減肉位置予測において、形状因子を計算するために使用するパラメータである。
【0118】
正規化液滴径分布は、配管系統において流入面や特定部品の流出面など所定の断面における液滴径分布を液滴代表径で正規化したものである。正規化液滴径分布は、データ内点数と、データ内メッシュ数と、複数の点情報と、複数のメッシュ情報と、から成り立つ。
【0119】
データ内点数は、液滴径分布の対象である所定の断面におけるメッシュを構成する点の数である。
【0120】
データ内メッシュ数は、液滴径分布の対象である所定の断面におけるメッシュの数である。
【0121】
点情報は、液滴径分布の対象である所定の断面におけるメッシュを構成する頂点に関する情報である。点情報は、点IDとX座標とY座標とZ座標から成り立つ。点IDは頂点を識別するためのIDであり、X座標とY座標とZ座標はメッシュの存在する空間の座標系における位置をX座標とY座標とZ座標で示したものである。
【0122】
メッシュ情報は、液滴径分布の対象となる特定の断面におけるメッシュの情報を示したものであり、メッシュIDと、メッシュ構成点数と、複数の点IDと、正規化液滴径と、から成り立つ。メッシュIDは減肉速度分布予測値D103内において複数のメッシュを識別するための番号である。メッシュ構成点数は、メッシュを構成する頂点の数である。複数の点IDは、メッシュを構成する複数の頂点における点IDである。正規化液滴径は各メッシュにおいて液滴代表径で正規化された液滴径を示したものである。
【0123】
図19は一実施例における減肉速度分布予測値D103のデータ構成図である。
【0124】
減肉速度分布予測値D103は、減肉速度分布予測値IDと、予測日時と、データ内点数と、データ内メッシュ数と、複数の点情報と、複数のメッシュ情報と、解析条件IDと、配管系統メッシュデータIDと、調整パラメータIDと、から成り立つ。
【0125】
減肉速度分布予測値IDは、複数ある減肉速度分布予測値D103を識別するための番号である。
【0126】
予測日時は、減肉速度分布予測値が出力された日時を示す。
【0127】
データ内点数は、減肉速度分布予測値の対象となる配管系統の壁面におけるメッシュを構成する点の数である。
【0128】
データ内メッシュ数は、減肉速度分布予測値D103の対象となる配管系統の壁面におけるメッシュの数である。
【0129】
点情報は、減肉速度分布予測値D103の対象となる配管系統の壁面におけるメッシュを構成する頂点に関する情報である。点情報は、点IDとX座標とY座標とZ座標と減肉速度から成り立つ。点IDは頂点を識別するためのIDであり、X座標とY座標とZ座標はメッシュの存在する空間の座標系における位置をX座標とY座標とZ座標で示したものである。
【0130】
減肉速度は各頂点における減肉速度を示したものであり、液滴衝撃壊食予測から計算した液滴衝撃壊食成分と流れ加速型腐食予測から計算した流れ加速型腐食成分から成り立つ。
【0131】
メッシュ情報は、減肉速度分布予測値の対象となる配管系統の壁面におけるメッシュの情報を示したものであり、メッシュIDとメッシュ構成点数と複数の点IDと減肉速度から成り立つ。メッシュIDは減肉速度分布予測値D103内において複数のメッシュを識別するための番号である。メッシュ構成点数は、メッシュを構成する頂点の数である。複数の点IDは、メッシュを構成する複数の頂点における点IDである。
【0132】
減肉速度は各メッシュにおける減肉速度を示したものであり、液滴衝撃壊食予測から計算した液滴衝撃壊食成分と流れ加速型腐食予測から計算した流れ加速型腐食成分から成り立つ。
【0133】
配管系統メッシュデータIDは、減肉速度分布予測値D103の対象となる配管系統の配管系統メッシュデータD100のIDを示したものである。
【0134】
解析条件IDは、減肉速度分布予測値を求めたときに使用した解析条件D101のIDを示したものである。
【0135】
調整パラメータIDは、減肉速度分布予測値を求めたときに使用した調整パラメータD102のIDを示したものである。
【0136】
図20は一実施例における減肉速度分布実測値D104のデータ構成図である。
【0137】
減肉速度分布実測値D104は、減肉速度分布実測値IDと、測定日時と、測定点情報数と、複数の測定点情報と、から成り立つ。
【0138】
減肉速度分布実測値IDは、複数ある減肉速度分布実測値D104を識別するための番号である。
【0139】
測定日時は、減肉速度分布実測値D104の算出元となる肉厚を測定したときの日時を示す。
【0140】
測定点情報数は、肉厚測定点の数を示したものである。
【0141】
測定点情報は、肉厚測定点の情報を示したものであり、測定点IDと、表示用点番号と、角度座標と、管軸座標と、減肉速度実測値と、液滴衝撃壊食成分減肉速度実測値と、流れ加速型腐食成分減肉速度実測値と、から成り立つ。
【0142】
測定点IDは、複数ある測定点情報を識別するための番号である。
【0143】
表示用点番号は、肉厚測定ガイダンス部B13で測定点の位置と共に表示する測定点の番号である。
【0144】
角度座標は、肉厚測定の対象となる断面を極座標系にした場合の、測定点の角度座標である。
【0145】
管軸座標は、肉厚測定の対象となる断面の管軸座標である。
【0146】
減肉速度実測値は、測定点における減肉速度の実測値である。
【0147】
液滴衝撃壊食成分減肉速度実測値と、流れ加速型腐食成分減肉速度実測値と、は、測定点における減肉速度の実測値をそれぞれ液滴衝撃壊食成分と流れ加速型腐食成分に分離したものである。
【0148】
図21は一実施例における肉厚測定分布D105のデータ構成図である。
【0149】
肉厚測定分布D105は、肉厚測定分布IDと、測定日時と、測定点情報数と、複数の測定点情報と、から成り立つ。
【0150】
肉厚測定分布IDは、複数ある肉厚測定分布D105を識別するための番号である。
【0151】
測定日時は、肉厚を測定したときの日時を示す。
【0152】
測定点情報数は、肉厚測定点の数を示したものである。
【0153】
測定点情報は、肉厚測定点の情報を示したものであり、測定点IDと、表示用点番号と、角度座標と、管軸座標と、肉厚測定値と、から成り立つ。測定点IDは、複数ある測定点情報を識別するための番号である。表示用点番号は、肉厚測定ガイダンス部B13で測定点の位置と共に表示する測定点の番号である。角度座標は、肉厚測定の対象となる断面を極座標系にした場合の、測定点の角度座標である。管軸座標は、肉厚測定の対象となる断面の管軸座標である。肉厚測定値は、測定点における肉厚の測定値である。
【0154】
図22は一実施例における肉厚測定位置重畳配管立体形状D106のデータ構成図である。
【0155】
肉厚測定位置重畳配管立体形状D106は、配管系統立体形状IDと、全体画面情報と、詳細画面情報と、から成り立っている。
【0156】
配管系統立体形状IDは、複数ある肉厚測定位置重畳配管立体形状D106を識別するための番号である。
【0157】
全体画面情報は、配管系統立体形状の全体図を示したものであり、詳細画面情報は、配管系統立体形状のうち一部の箇所の図を示したものである。
【0158】
全体画面情報および詳細画面情報は、いずれもオフセットX座標と、オフセットY座標と、幅と、高さと、幅×高さのドット数分のドット情報と、から構成される。
【0159】
オフセットX座標とオフセットY座標は、表示画面上における全体画面または詳細画面の左上の位置を示す。
【0160】
幅は全体画面または詳細画面の横方向のドット数を、高さは全体画面または詳細画面の縦方向のドット数を、それぞれ示す。
【0161】
ドット情報は各ドットの位置と色の情報であり、X座標と、Y座標と、色情報と、から成り立っている。X座標とY座標は各ドットの位置を示す。色情報は各ドットにおける色であり、R(赤)の度合いとG(緑)の度合いとB(青)の度合いから成り立っている。
【0162】
図23は一実施例における肉厚測定位置群D107のデータ構成図である。
【0163】
肉厚測定位置群D107は、肉厚測定位置群IDと、変更日時と、測定点情報数と、複数の測定点情報と、から成り立つ。
【0164】
肉厚測定位置群IDは、複数ある肉厚測定位置群D107を識別するための番号である。
【0165】
変更日時は、肉厚を変更したときの日時を示す。
【0166】
測定点情報数は、肉厚測定点の数を示したものである。
【0167】
測定点情報は、肉厚測定点の情報を示したものであり、測定点IDと、表示用点番号と、角度座標と、管軸座標と、から成り立つ。
【0168】
測定点IDは、複数ある測定点情報を識別するための番号である。
【0169】
表示用点番号は、肉厚測定ガイダンス部B13で測定点の位置と共に表示する測定点の番号である。
【0170】
角度座標は、肉厚測定の対象となる断面を極座標系にした場合の、測定点の角度座標である。
【0171】
管軸座標は、肉厚測定の対象となる断面の管軸座標である。
【0172】
図24は一実施例における肉厚測定ガイダンスの画面構成図である。
【0173】
肉厚測定ガイダンスは、全体画面と、詳細画面と、肉厚測定位置設定箇所と、メッセージ表示箇所と、から成り立っている。
【0174】
全体画面は配管系統立体形状の全体図を示したものであり、配管系統の立体形状の全体図に加えて流れ方向と詳細画面の領域を示したカーソルが表示される。
【0175】
詳細画面は配管系統立体形状のうち一部の箇所の図を示したものであり、配管系統の立体形状上に肉厚測定箇所(黒丸で示す)と、肉厚測定箇所番号と、減肉予測位置(星印)が表示される。肉厚測定位置設定箇所は肉厚測定器2で測定した肉厚の測定位置を設定する箇所である。肉厚測定値の表示と肉厚測定位置の角度座標と管軸座標に関して選択入力を受け付け、設定ボタンで肉厚測定位置と肉厚測定値を肉厚測定管理端末に登録する。メッセージ表示箇所は余寿命が閾値を下回る箇所と余寿命を表示する。
【0176】
本発明の一実施例によれば、減肉がピンポイントである位置の真値を捕捉する確率を上げることが可能な肉厚測定方法および肉厚測定システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0177】
1・・・肉厚測定管理端末、2・・・肉厚測定器、3・・・操作入力部、4・・・表示出力部、5・・・CPU、6・・・RAM、7・・・記憶装置、8・・・I/F、B10・・・配管系統メッシュ保存部、B11・・・減肉位置予測部、B12・・・肉厚測定位置決定部、B13・・・肉厚測定ガイダンス部、B14・・・肉厚測定部、B15・・・予測モデル補正部、B16・・・肉厚測定値分布履歴保存部、B17・・・減肉速度分布実測値履歴保存部、B110・・・液滴衝撃壊食予測部、B111・・・流れ加速型腐食予測部、B121・・・減肉速度閾値処理部、B122・・・高解像度肉厚測定位置設定部、B131・・・配管系統立体形状作成部、B132・・・肉厚測定位置重畳表示部、B141・・・肉厚測定位置番号入力受付部、B142・・・肉厚測定結果集計部、B143・・・減肉速度計算部、B151・・・液滴衝撃壊食および流れ加速型腐食成分分離部、B152・・・液滴衝撃壊食予測モデル補正部、B153・・・流れ加速型腐食予測モデル補正部、B1101・・・蒸気流れ解析部、B1102・・・液滴発生計算部、B1103・・・液滴飛跡解析部、B1104・・・減肉速度計算部、B1111・・・非圧縮性流れ解析部、B1112・・・形状因子計算部、B1113・・・材料劣化解析部、D100・・・配管系統メッシュデータ、D101・・・解析条件、D102・・・調整パラメータ、D103・・・減肉速度分布予測値、D104・・・減肉速度分布実測値、D105・・・肉厚測定分布、D106・・・肉厚測定位置重畳配管系統立体形状、D107・・・肉厚測定位置群、F1・・・減肉位置予測部、F2・・・肉厚測定位置の配管系統立体形状への重畳表示処理、F3・・・肉厚測定および減肉速度分布の実測値算出処理、F4・・・減肉速度分布の実測値と予測値の差分の閾値判定処理、F5・・・予測モデル調整パラメータ補正処理、H1・・・肉厚測定管理端末、H2・・・肉厚測定器、H3・・・操作入力部、H4・・・表示出力部H10・・・記憶装置、H100・・・各種データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24