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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008703
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】非耐力壁及び非耐力壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20250109BHJP
   E04G 9/10 20060101ALI20250109BHJP
   E04G 15/02 20060101ALI20250109BHJP
   E04B 2/86 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04B2/56 601A
E04G9/10 104D
E04G15/02
E04B2/86 611S
E04B2/56 604A
E04B2/56 643A
E04B2/56 603A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111103
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】591082487
【氏名又は名称】一般社団法人日本建設業経営協会
(71)【出願人】
【識別番号】506326017
【氏名又は名称】南海辰村建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 協三
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【テーマコード(参考)】
2E002
2E150
【Fターム(参考)】
2E002EA01
2E002EC01
2E002FB02
2E002MA12
2E150GA05
2E150HF14
2E150JA01
2E150LA24
2E150MA02Y
2E150MA12Z
2E150MA41Z
(57)【要約】
【課題】非耐力壁の品質を向上させることを課題とする。
【解決手段】構造部材20の隣りに構造スリット30を介して配置されるコンクリート造の非耐力壁1であって、複数の壁部10と、横方向に隣り合う壁部10同士の間を分断するスリット材12とを備えることを特徴とする。少なくとも一つの壁部10は、開口部11の下側に形成された腰壁部10cであり、腰壁部10cの側縁部に配置されるスリット材12は、開口部11の端部から下方に向けて延設されていることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材の隣りに構造スリットを介して配置されるコンクリート造の非耐力壁であって、
複数の壁部と、
横方向に隣り合う前記壁部同士の間を分断するスリット材とを備えることを特徴とする非耐力壁。
【請求項2】
少なくとも一つの前記壁部は、開口部の下側に形成された腰壁部であり、
前記腰壁部の側縁部に配置される前記スリット材は、前記開口部の端部から下方に向けて延設されていることを特徴とする請求項1に記載の非耐力壁。
【請求項3】
少なくとも一つの前記壁部は、開口部の上側に形成された垂れ壁部であり、
前記垂れ壁部の側縁部に配置される前記スリット材は、前記開口部の端部から上方に向けて延設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非耐力壁。
【請求項4】
開口部を備えた非耐力壁の構築方法であって、
構造部材との境界に構造スリットを設置する工程と、
前記開口部となる位置に開口型枠を設置する工程と、
前記開口部の左右両側の壁部となる第一領域と、前記開口部の下側の腰壁部となる第二領域との間に、第一領域と第二領域を仕切るスリット材を配置する工程と、
前記第一領域および前記第二領域にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする非耐力壁の構築方法。
【請求項5】
前記第二領域に、先送りモルタルを打設することを特徴とする請求項4に記載の非耐力壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非耐力壁及び非耐力壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する場合には、コンクリート打設場所に型枠を組み立てて、型枠内部にコンクリートを打ち込む作業が行われている。非耐力壁を構築するための型枠は、横長になる場合がある。横長の型枠に対して、コンクリートを打設すると、型枠内で横方向に移動する過程でコンクリートが分離し、強度及び耐久性が低下する虞がある。そのため、数回に分けてコンクリートを打設する方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-54579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同じ型枠内で数回に分けてコンクリートを打設する場合、時間をかけすぎると打継面にコールドジョイントが形成されるなど、コンクリート製の非耐力壁の品質低下を招くといった問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、非耐力壁の品質を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の非耐力壁構造は、構造部材の隣りに構造スリットを介して配置されるコンクリート造の非耐力壁であって、複数の壁部と、横方向に隣り合う前記壁部同士の間を分断するスリット材とを備えることを特徴とする。
【0007】
本願発明によれば、非耐力壁を構築する際にスリット材が型枠として作用するため、一回あたりのコンクリート量を少なくすることができ、型枠内で横方向に移動する過程でコンクリートが分離するのを防ぐことができる。また、スリット材が誘発目地として機能するため、ひび割れを防ぐことができる。これにより、非耐力壁の品質を向上させることができる。
【0008】
また、少なくとも一つの前記壁部は、開口部の下側に形成された腰壁部であり、前記腰壁部の側縁部に配置される前記スリット材は、前記開口部の端部から下方に向けて延設されていることが好ましい。
【0009】
また、少なくとも一つの前記壁部は、開口部の上側に形成された垂れ壁部であり、
前記垂れ壁部の側縁部に配置される前記スリット材は、前記開口部の端部から上方に向けて延設されていることが好ましい。
【0010】
本願発明によれば、開口部の上部又は下部の領域をスリット材によって囲むことができるため、腰壁部及び垂れ壁部の品質を向上させることができる。また、スリット材を用いることで、この部位が誘発目地として機能するため開口部角部のひび割れを防ぐことができる。
【0011】
また、開口部を備えた非耐力壁の構築方法であって、構造部材との境界に構造スリットを設置する工程と、前記開口部となる位置に開口型枠を設置する工程と、前記開口部の左右両側の壁部となる第一領域と、前記開口部の下側の腰壁部となる第二領域との間に、第一領域と第二領域を仕切るスリット材を配置する工程と、前記第一領域および前記第二領域にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする。なお、構造スリットを設置する工程、開口型枠を設置する工程、スリット材を配置する工程の順序は限定されず、現場の状況等に応じて適宜変更してもよく、並行して行ってもよい。
【0012】
本願発明によれば、開口部を有する非耐力壁であっても、品質を向上させることができる。
【0013】
また、前記第二領域に、先送りモルタルを打設することが好ましい。
【0014】
本願発明によれば、先送りモルタルを使用した場合であっても品質を確保することができるため、廃棄物の低減を図ることができる。
【0015】
本発明に係る非耐力壁によれば、非耐力壁の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る非耐力壁を示す斜視図である。
図2】スリット材を示す斜視図である。
図3】スリット材の取付状態を示す斜視図である。
図4】非耐力壁を構築する際の型枠を示す正面図である。
図5】非耐力壁を構築する際の型枠を示す側面図である。
図6図4のV-V矢視断面図である。
図7】非耐力壁の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。以下の説明において、「前後」、「左右」、「上下」は、図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上用いるものであって、本発明の方向を限定するものではない。
【0018】
図1に示すように、非耐力壁1は、例えば鉄筋コンクリート造によって形成された柱や壁等の構造部材20に隣接し、構造スリット30を介して配置される壁である。非耐力壁1は例えばバルコニーやマンションの共用廊下等の構造上主要な部分とはならない部分の壁構造である。非耐力壁1は、複数の壁部10と、開口部11と、スリット材12と、を備えている。さらに、非耐力壁1の下側には水平スリット31が配置されている。
【0019】
図1に示すように、壁部10は型枠にコンクリートを打設することで形成されるコンクリート部材である。非耐力壁1には前後方向に貫通する矩形状の開口部11が形成されている。複数の壁部10は、開口部11の周囲に配置されている。以下では、開口部11の左側の壁部10を左壁部10a、開口部11の右側の壁部10を右壁部10b、開口部11の下側の壁部10を腰壁部10c、開口部11の上側の壁部10を垂れ壁部10dと称する。
【0020】
隣接する壁部10,10は、スリット材12によって分断されている。つまり、スリット材12は、左壁部10aと腰壁部10cとの間、左壁部10aと垂れ壁部10dとの間、右壁部10bと腰壁部10cとの間、右壁部10bと垂れ壁部10dとの間の合計4か所に配置されている。
【0021】
図2に示すように、スリット材12は、板状のスリット芯材12aと、スリット芯材12aの側部に配置された左右一対の力骨材12b,12bとを備えている。スリット芯材12aの材料は特に制限はないが、例えば、ロックウールやグラスウール等の繊維や発泡体等で構成されている。左右一対の力骨材12b,12bは略同形に形成されている。力骨材12bは、例えば硬質ビニル、ポリプロピレン等の合成樹脂の押出し成形により形成されている。それぞれの力骨材12bの内側(他の力骨材12bに対向する側)は、断面略コ字状の溝部12cが形成されている。スリット芯材12aの側部は、溝部12cに嵌合されている。それぞれの力骨材12bの外側には、断面略コ字状の外溝部12dが形成されている。
【0022】
図3に示すように、外溝部12dは、型枠40の内側に設けた凸部41aに嵌合する。スリット材12は、対向する型枠40,40の間に配置され、外溝部12d,12dを凸部41a,41aに嵌合することで、型枠40,40に固定される。そして、スリット材12を型枠40,40の間に配置した状態でコンクリートを打設することで、壁部10(図1参照)を形成する。
【0023】
スリット芯材12aの大きさは特に制限はないが、例えば、長手方向(施工時においては高さ方向)の寸法1000~2500mm、短手方向の寸法100~300mm、厚み20~50mm程度である。
【0024】
次に、非耐力壁1の構築方法について図1図6を参照して説明する。本実施形態の非耐力壁の製造方法は、準備工程と、スリット配置工程と、開口型枠配置工程と、第一打設工程と、第二打設工程と、を行う。
【0025】
準備工程は、壁部10及び構造部材20を形成する一対の型枠40,40を対向させ、構造スリット30を設置する工程である。図1に示すように、構造スリット30は、構造部材20と壁部10との境界に配置する。なお、構造スリット30の構成は、スリット材12と同じでもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0026】
図4に示すように、型枠40は、コンクリートに接触するせき板41と、横方向に延在する外端太42と、上下方向に延在する内端太43と、を備えている。外端太42及び内端太43は、打設するコンクリートの荷重を支持するために配置されている。本実施形では、外端太42は丸鋼管で形成され、内端太43は木材によって形成されている。なお、外端太42は他の材料や形状でもよく、例えば、角型鋼管等を用いることができる。図5に示すように、型枠40同士を対向させた状態で、型枠締結金具44を用いて締結固定している。
【0027】
スリット配置工程は、図1及び図4に示すように、開口部11の上下にスリット材12を配置する工程である。開口部11の左右領域(左壁部10a及び右壁部10bとなる領域)を第一領域S1、開口部11の下側の領域(腰壁部10cとなる領域)を第二領域S2、開口部11の上側の領域(垂れ壁部10dとなる領域)を第三領域S3とすると、スリット材12は、第一領域S1と第二領域S2との境界、および、第一領域S1と第三領域S3との境界に配置する。下側のスリット材12は、開口部11の端部から下方に向けて延設されており、上側のスリット材12は、開口部11の端部から上方に向けて延設されている。
【0028】
開口型枠配置工程は、図4に示すように開口部を形成する位置に開口型枠50を配置する工程である。開口型枠50は板状の型枠部材51,52,53,54を矩形状に連結して構成されている。図5に示すように、下枠である型枠部材53は、第二領域S2を挟んで対向する型枠40a,40bの上部の隙間を塞ぐように配置される。上枠である型枠部材54は、第三領域S3を挟んで対向する型枠40c,40dの下部の隙間を塞ぐように配置される。上枠である型枠部材54は、下枠である型枠部材53に立設されたパイプサポート55により支持されている。
なお、スリット配置工程と開口型枠配置工程の順序は現場の状況等に応じて適宜変更することができ、並行して行ってもよい。
【0029】
第一打設工程は、第二領域S2にコンクリートを打設する工程である。図5に示すように、本実施形態の第一打設工程では、対向する型枠40a,40bの上部の開口からコンクリートの打設を行う。図6に示すように、第二領域S2は、対向する型枠40,40と、スリット材12とで囲われた領域であり、腰壁部10cとなる部位である。第一領域S1と第二領域S2との間がスリット材12で分断されているため、第二領域S2に打設したコンクリートは、第二領域S2に留まり、第一領域S1に流れ込むことはない。第二領域S2には、先送りモルタルを打設してもよい。
【0030】
図4に示すように、第一領域S1は、構造スリット30(図1参照)に隣接するとともに、スリット材12及び開口型枠50(型枠部材51)に隣接する。第三領域S3は、左右のスリット材12及び下部の開口型枠50(型枠部材54)によって分断された領域となる。
【0031】
最後に、第二打設工程を行う。第二打設工程では、左右の第一領域S1および第三領域S3にコンクリートを打設する。第一領域S1と第三領域S3との間がスリット材12で分断されているため、第三領域S3に打設したコンクリートは、第三領域S3に留まり、第一領域S1に流れ込むことはない。コンクリートが所定時間養生されてから型枠40を取り外すことで、図1に示すような開口部11を有する非耐力壁1が形成される。なお、第三領域S3に先送りモルタルを打設してもよい。
【0032】
以上説明した本実施形態の非耐力壁によれば、複数の壁部10と、横方向に隣り合う壁部10同士の間を分断するスリット材12とを備えるため、スリット材12が型枠として機能し、コンクリートを打設する領域を区分けすることができる。そのため、一回あたりのコンクリート量を少なくすることができ、型枠40内で横方向に移動する過程でコンクリートが分離することを防ぐことができる。これにより、非耐力壁1の品質を向上させることができる。
【0033】
また、少なくとも一つの壁部10は、開口部11の下側に形成された腰壁部10cであり、腰壁部10cの側縁部に配置されるスリット材12は、開口部11の端部から下方に向けて延設されている。
また、少なくとも一つの壁部10は、開口部11の上側に形成された垂れ壁部10dであり、垂れ壁部10dの側縁部に配置されるスリット材12は、開口部11の端部から上方に向けて延設されている。
これにより第二領域S2,第三領域S3をスリット材12によって囲むことができるため、コンクリートを打設し難い開口部11の周囲であっても、容易にコンクリートを打設することができる。そのため、腰壁部10c及び垂れ壁部10dの品質を向上させることができる。また、スリット材12を用いることで、この部位にひび割れを集中させることができるため、開口部11の角部のひび割れを防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態の非耐力壁の構築方法によれば、構造部材20との境界に構造スリット30を設置する準備工程と、開口部11となる位置に開口型枠50を設置する開口型枠配置工程と、開口部11の左右両側の壁部(左壁部10a,右壁部10b)となる第一領域S1と開口部11の下側の腰壁部10cとなる第二領域S2との間に、第一領域S1と第二領域S2を仕切るスリット材12を配置する配置工程と、第二領域S2にコンクリートを打設する第一打設工程と、第一領域S1及び第三領域S3にコンクリートを打設する第二打設工程と、を行うため開口部11を有する非耐力壁1であっても品質を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態の非耐力壁の構築方法によれば、構造部材20と非耐力壁1のコンクリートを厳密に区別して、コンクリートを打設することが可能である。そのため、第二領域S2に、先送りモルタルを打設しても、構造部材20の品質が損なわれることはない。これにより、廃棄物の低減を図ることができる。
【0036】
また、非耐力壁に開口部が無い場合でも、図7に示すように、スリット材12を型枠内部に配置してコンクリートを打設してもよい。このような場合であっても、スリット材12により、非耐力壁を複数の壁部10に分割することができ、一度に充填するコンクリートの量を減らすことができる。これにより、壁部10のコンクリートの品質を向上させることができる。また、スリット材12は、断面欠損率100%のひび割れ誘発目地として機能する。これにより、壁部10の壁面のひび割れ防止することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、腰壁部10c及び垂れ壁部10dをどちらも形成したが、どちらか一方のみ形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 非耐力壁
10 壁部
10a 左壁部
10b 右壁部
10c 腰壁部
10d 垂れ壁部
11 開口部
12 スリット材
20 構造部材
30 構造スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7