(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008711
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理端末、健康管理機能提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20250109BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111120
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】奥川 美貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠加
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】ユーザーの健康管理に関する機能をユーザーに提供する際に、ユーザーの特性や状態に応じた適切な態様で機能を提供することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末を少なくとも含む情報処理システムであって、前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得する ユーザー情報取得手段と、前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定手段と、前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定手段と、を有する情報処理システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末を少なくとも含む情報処理システムであって、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得手段と、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定手段と、
を有する、情報処理システム。
【請求項2】
前記指標には前記ユーザーの認知機能に係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記健康管理機能の提供にあたり、早期に医師の診察を受けることを促す情報を提示することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記設定手段が早期に医師の診察を受けることを促す情報を提示するように前記健康管理機能の提供の態様を設定した場合において、
前記設定手段は、所定期間内に医師の診察を受けたことを示す情報が入力されない場合には、前記健康管理機能の提供を停止するようにさらに健康管理機能の提供の態様の設定を行う、
ことを特徴とする、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理端末は通信手段を備えており、
前記健康管理機能は、前記通信手段を介して前記ユーザー情報を送信することを含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記適性についての前記判定の結果を前記ユーザー情報に付加して送信するように設定することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記情報処理端末は画像表示手段を備えており、
前記健康管理機能は前記画像表示手段による情報の提示を含み、
前記指標は前記ユーザーの視力に係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記画像表示手段による表示を変更することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記情報処理端末は音声出力手段を備えており、
前記健康管理機能は前記音声出力手段による情報の提示を含み、
前記指標は前記ユーザーの聴力に係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記音声出力手段による出力音声を変更することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記健康管理機能は前記ユーザーの傷病の治療に係る運動の実施方法を前記ユーザーに提示することを含み、
前記指標には前記ユーザーの体温、血圧、脈拍、心電図のうちの少なくともひとつに係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記運動の内容及び/又は強度を変更すること、或いは前記運動を休止すべき旨の情報を提示することを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記情報処理システムは、前記情報処理端末と通信可能に構成された情報処理装置を含んでおり、
前記情報処理装置は、前記アプリケーションプログラムが提供する前記健康管理機能の内容に応じて、前記適性の判定に用いられる前記指標の情報を、前記情報処理端末に提供する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記ユーザーごとかつ前記健康管理機能ごとに対応する認証情報を発行し、前記情報処理端末から前記認証情報を受信した場合に、前記認証情報に対応する前記ユーザー及び前記健康管理機能に係る前記適性の判定に用いられる前記指標の情報を、前記情報処理端末に提供する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項10】
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末であって、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得手段と、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定手段と、
を有する、情報処理端末。
【請求項11】
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末を用いる健康管理機能提供方法であって、
前記情報処理端末が、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得ステップと、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定ステップと、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定ステップと、
を有する、健康管理機能提供方法。
【請求項12】
請求項11に記載の健康管理機能提供方法に記載の各ステップを情報処理装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、情報処理システム、情報処理端末、健康管理機能提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人で行うヘルスケアについての関心が高まっており、患者に対して疾患の治療につながるような行動変容などの情報を提示するなどの健康管理機能を提供することが可能なシステムなども提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、サーバとユーザー端末とを有するシステムであって、患者が自身のバイタルデータなどの医学的情報をユーザー端末(例えばスマートフォンなど)により提供すると、当該医学的情報に基づいて個々の患者に応じた疾病の治療のための情報を、ユーザー端末を介して提示するシステムが開示されている。
【0004】
このようなシステムによれば、(例えば生活習慣病などの)患者の日々の活動内容が治療に影響を及ぼすような疾患について、適切な行動を促す情報を患者に提供することで患者の行動を修正し、疾患の治療につなげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなシステムを用いる場合、例えば患者の認知機能の低下などにより、ユーザー端末を介して患者から提供される情報の信ぴょう性や、システムが患者に提示した疾患の治療に係る情報に対する患者の理解に問題がある場合、間違った治療行動につながる虞がある。また、患者の体調によっては、システムから患者に提供される機能が不適切な内容となる場合(体調不良の患者に健康時と同様の情報を提示してしまうなど)もあり得る。
【0007】
上記のような問題に鑑みて、本発明は、ユーザーの健康管理に関する機能をユーザーに提供する際に、ユーザーの特性や状態に応じた適切な態様で機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末を少なくとも含む情報処理システムであって、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得手段と、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定手段と、
を有する、情報処理システムである。
【0009】
ここで、「健康の管理」とは、健常者のいわゆる予防医療のみを言うのではなく、傷病
を有する患者の診療も含む。また、「健康管理機能」には、医師などの医療従事者向けにユーザーのバイタルデータを送信することも含む。また、「ユーザー情報」は様々な情報を含むものであり、血圧、脈拍、体温、体重、心電図などの生体情報、視力、聴力、筋力、認知機能などの身体機能情報、年齢や性別などの属性情報、傷病を有する場合の症状(例えば痛み、痺れなど)やその部位、強さなどの情報を含む。また、ここでいう「取得する」ことには、ユーザーからの手入力の受付、センサ機器によるセンシング情報の受信、生体情報測定装置による測定結果の受信、などが含まれる。なお、センサ機器、測定装置は情報処理端末と一体に構成されていてもよい。また、「指標」は一つに限られず、取得する情報の種類に応じて複数であってもよい。また、「健康管理機能の提供の態様を設定する」ことには、提供される機能に制限を加えることも含まれる。
【0010】
このような構成であれば、アプリケーションによって提供される機能に対するユーザーの適性をユーザー情報に基づいて判定したうえで、使用時のユーザーに最適化された健康管理機能を提供することができる。具体的には、例えば認知機能の低下が疑われる場合には、健康管理機能の提供に制限を行うなどして、健康管理機能を正しく活用できるユーザーのみに対して機能の提供を行うことができる。
【0011】
また、前記指標には前記ユーザーの認知機能に係る指標を含み、前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記健康管理機能の提供にあたり、早期に医師の診察を受けることを促す情報を提示することを含んでいてもよい。また、前記設定手段が早期に医師の診察を受けることを促す情報を提示するように前記健康管理機能の提供の態様を設定した場合において、前記設定手段は、所定期間内に医師の診察を受けたことを示す情報が入力されない場合には、前記健康管理機能の提供を停止するようにさらに健康管理機能の提供の態様の設定を行うようにしてもよい。
【0012】
これによれば、認知機能に疑いがある状態で健康管理機能の提供が継続されるということを抑止することができ、誤った情報の入力に基づき不適切な行動指針の提案を行ったり、システムから提供される診療情報を正しく理解できないことを原因として、間違った治療行動につながる虞を低減することができる。
【0013】
また、前記情報処理端末は通信手段を備えており、前記健康管理機能は、前記通信手段を介して前記ユーザー情報を送信することを含み、前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記適性についての前記判定の結果を前記ユーザー情報に付加して送信するように設定することを含んでいてもよい。
【0014】
例えば、ユーザーが血圧などのバイタルデータを送信する場合、ユーザーの認知機能が低下している場合には、送信されたバイタルデータの正確性に疑義が生じる。医師が送信されたバイタルデータに基づいてユーザーの治療方針などを検討する場合には、バイタルデータが正確であることが前提となる。このため、認知機能についての判定の結果がバイタルデータに付加されることで、医師はデータの正確性の程度を踏まえて検討を行うことができる。
【0015】
また、前記情報処理端末は画像表示手段を備えており、
前記健康管理機能は前記画像表示手段による情報の提示を含み、
前記指標は前記ユーザーの視力に係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記画像表示手段による表示を変更することを含んでいてもよい。
【0016】
ここで、「表示を変更」することには、文字の大きさの変更、画面(文字を含む)の配色の変更などが、含まれる。このような構成であれば、ユーザーの視力に応じて適切な表
示態様で健康管理に係る情報の提示を行うことが可能になる。
【0017】
また、前記情報処理端末は音声出力手段を備えており、
前記健康管理機能は前記音声出力手段による情報の提示を含み、
前記指標は前記ユーザーの聴力に係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記音声出力手段による出力音声を変更することを含んでいてもよい。
【0018】
ここで、「出力音声を変更」することには、音声の大きさの変更、音の高低の変更、音声の再生速度の変更などが、含まれる。このような構成であれば、ユーザーの聴力に応じて適切な音声を出力することができる。
【0019】
前記健康管理機能は前記ユーザーの傷病の治療に係る運動の実施方法を前記ユーザーに提示することを含み、
前記指標には前記ユーザーの体温、血圧、脈拍、心電図のうち少なくともひとつに係る指標を含み、
前記設定手段が行う前記健康管理機能の提供の態様の設定には、前記運動の内容及び/又は強度を変更すること、或いは前記運動を休止すべき旨の情報を提示することを含んでいてもよい。
【0020】
このような構成であれば、体温などの生体情報を指標としてユーザーが体調不良(発熱状態など)であると判定した場合には、運動療法の実施を休止すべき旨の情報を提示したり、運動内容や強度を適時に変更したうえでユーザーに提示することができる。
【0021】
前記情報処理システムは、前記情報処理端末と通信可能に構成された情報処理装置を含んでおり、
前記情報処理装置は、前記アプリケーションプログラムが提供する前記健康管理機能の内容に応じて、前記適性の判定に用いられる前記指標の情報を、前記情報処理端末に提供するものであってもよい。
【0022】
例えば、健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムが複数あり、それぞれで提供される機能が異なる場合、提供される機能に応じてユーザーの適性判定のために必要な指標(即ち取得すべきユーザー情報)の内容が異なってくる。そして、所望の機能を得るために必要なユーザー情報が何であるかをサーバ(情報処理装置)側で判定して、ユーザー(情報処理端末)に必要なユーザー情報の提案を行うことで、よりユーザーフレンドリーなシステムとすることができる。
【0023】
また、前記情報処理装置は、前記ユーザーごとかつ前記健康管理機能ごとに、対応する認証情報を発行し、前記情報処理端末から前記認証情報を受信した場合に、前記認証情報に対応する前記ユーザー及び前記健康管理機能に係る前記適性の判定に用いられる前記指標の情報を、前記情報処理端末に提供するようにしてもよい。このように、サーバがユーザーごと、健康管理機能ごとの認証情報(アクセスコード)を発行し、ユーザーがこれをユーザー側の情報処理端末で入力するなどしてサーバに送信することを条件として正常な機能がアクティベート(有効化)されるようにすることで、適切な個人認証・情報管理を行うことができる。なお、疾病の治療など医師の監督の下で健康管理機能を利用することが望ましいようなケースでは、認証情報は医師を介してユーザーに伝えられることが望ましい。
【0024】
また、本発明は、
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実
行可能に構成された情報処理端末であって、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得手段と、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定手段と、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定手段と、
を有する、情報処理端末、としても捉えることができる。
【0025】
また、本発明は、
ユーザーの健康の管理に係る健康管理機能を提供するアプリケーションプログラムを実行可能に構成された情報処理端末を用いる健康管理機能提供方法であって、
前記情報処理端末が、
前記ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得するユーザー情報取得ステップと、
前記ユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される前記健康管理機能に対する前記ユーザーの適性を判定する使用者適性判定ステップと、
前記判定の結果に応じて、前記健康管理機能の提供の態様を設定する設定ステップと、
を有する、健康管理機能提供方法、としても捉えることができる。
【0026】
また、本発明は、このような方法に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0027】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ユーザーの健康管理に関する機能をユーザーに提供する際に、ユーザーの特性や状態に応じた適切な態様で機能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る情報処理端末のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る情報処理端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る情報処理端末において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る情報処理システムの概要を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係るユーザー端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態2における使用アプリと使用者適性判定に用いる指標の関係を示す表である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係るサーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る情報処理システム内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態3に係る情報処理システムの概要を示す概略図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係るサーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係る情報処理システム内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素の寸法、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】
図1は、本実施形態に係る情報処理端末9の装置構成の概略を示す概略図である。また、
図2は、情報処理端末9の機能構成の概略を示すブロック図である。情報処理端末9は、ユーザーの健康管理のための機能を提供することが可能に構成された情報処理装置であり、例えばスマートフォンであってもよいが、必ずしもそれに限られず、タブレット端末、スマートディスプレイ、ウェアラブル端末、などであってもよい。
【0032】
なお、情報処理端末9によって提供される健康管理のための機能には、日常的な運動記録や栄養管理など健常者が利用可能な機能も含むが、それに限らず、例えば高血圧患者の血圧管理や、外傷を負った患者のリハビリテーションなど、患者の傷病の診療に係る機能も含まれる。
【0033】
情報処理端末9は、
図1に示すように、接続バス90によって相互に接続されたプロセッサ91、メモリ92、入出力インタフェース(IF)93、通信IF94、を構成要素に含む。
【0034】
プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを採用することができる。
【0035】
メモリ92は、図示しないがフラッシュメモリ、RAM(Random Access
Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶装置と、SSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、SD(Secure Digital)メモリカードなどの補助記憶装置を含む。メモリ92には、プロセッサ91が実行するプログラム、プロセッサ91が処理するデータ、動作の設定情報、後述するユーザー情報や使用者適性判定基準などの各種情報が保存される。メモリ92に保存されたプログラムがプロセッサ91で実行され、これにより情報処理端末9の各構成が制御されることによって、所定の目的を果たす各機能部を実現することができる。
【0036】
入出力IF93は、例えばタッチパネルディスプレイ、スピーカなどの入出力手段を含む。通信IF94は、接続される通信ネットワークとの接続方式(有線・無線の別、接続規格など)に応じて適宜の構成を採用できる。
【0037】
また、情報処理端末9は、主たる機能構成として制御部910、入力部920、出力部930、記憶部940、通信部950を備えている。
【0038】
制御部910はプロセッサ91によって実現され、情報処理端末9全体の制御を司る。また、制御部910は、健康管理に係るアプリケーションプログラムを実行することにより、健康管理機能提供部911、ユーザー情報取得部912、使用者適性判定部913、健康管理機能設定部914、の各機能部を実現することができる。これらについては後に詳しく説明する。
【0039】
入力部920は入出力IF93を介して入力された各種入力信号を制御部910に伝達
する。また、出力部930は入出力IF93を介して、タッチパネルディスプレイ(図示せず)、スピーカ(図示せず)などのデバイスへ各種の情報を出力する。また、通信部950は、通信IF94を(及び通信ネットワーク)を介して他の機器との情報通信を行う。他の機器としては、例えば後述する生体情報測定機器などを例示することができる。
【0040】
健康管理機能提供部911は、メモリ92に記憶された健康管理アプリケーションプログラム(以下、アプリケーションプログラムを単に「アプリ」とも称する)が実行されることにより実現される。例えば、本実施形態において提供される健康管理機能は、「患者のリハビリしたい部位および動きに応じたリハビリ方法を動画で表示して、リハビリ運動を促す」機能である。動画は、情報処理端末9のタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、テレビなどの他の表示装置と通信することにより、当該の他の表示装置に出力されてもよい。
【0041】
ユーザー情報取得部912は、ユーザーの健康に関する指標を含むユーザー情報を取得する。取得したユーザー情報は、記憶部940(メモリ92)に保存されるようになっていてもよい。なお、ここでいうユーザー情報には、血圧、脈拍、体温、体重、心電図などの生体情報、視力、聴力、筋力、認知機能などの身体機能情報、年齢や性別などの属性情報、傷病を有する場合の症状(例えば痛み、痺れなど)やその部位、強さなど、様々な情報が含まれる。
【0042】
ユーザー情報の具体的な取得の態様は、ユーザーからの手入力の受付、センサによるセンシング情報の受信、生体情報測定装置による生体情報測定結果の受信、メモリ92に記憶されている情報の読み出し、などが含まれる。なお、情報処理端末9がウェアラブル端末である場合、センサ(例えば心電図測定用の電極、脈波測定用の光電センサなど)及び心電図や血圧などの生体情報測定機能が内蔵されていてもよい。
【0043】
使用者適性判定部913は、取得されたユーザー情報に含まれる指標に基づいて、提供される健康管理機能に対するユーザーの適性を判定する。なお、ここでいう「指標」は一つに限らず、情報の種類に応じて複数であり得る。また、適性の判定のために用いられる指標は、提供される健康管理機能に応じて異なっていてもよい。具体的には、本実施形態において提供される健康管理機能については、認知機能、体温、血圧、運動能力(歩数、歩行速度から算出)、聴力、視力、年齢、病歴、(リハビリ対象部位の)痛み、の各指標を用いて、使用者適性の判定が行われる。
【0044】
なお、使用者適性判定部913が行う使用者の適性判定には、健康管理機能の使用可否の判定(以下、第1判定ともいう)と、健康管理機能の提供態様の変更が必要か否かの判定(以下、第2判定ともいう)が含まれる。ただし、提供される健康管理機能の内容に応じて、いずれか一方の判定のみを行うようになっていてもよい。
【0045】
健康管理機能設定部914は、使用者適性判定部913の判定結果に応じて、健康管理機能の提供の態様の設定を行う。ここでいう健康管理機能の提供の態様の設定には、健康管理機能の全部または一部に制限を設けることも含む。また、ここでいう「制限」には、何らかの条件を満たすまでは健康管理機能の提供を停止することに限らず、測定した生体情報を外部に送信するような場合において当該生体情報に注釈情報(情報の正確性に疑義があるなど)を付加することも含む。
【0046】
また、健康管理機能の提供の態様の設定には、ユーザーの身体機能に応じて、表示画像の配色を変更する、表示画像(テキスト情報を含む)を大きくする、標準の出力音量のレベルを変更する、など、健康管理機能の提供をユーザーに応じて最適化することも含む。
【0047】
なお、本実施形態においては、上記のユーザー情報取得部912、使用者適性判定部913、健康管理機能設定部914の各機能部は、メモリ92に記憶された使用者適性判定アプリが実行されることにより実現される。
【0048】
(処理の流れ)
次に、本実施形態の情報処理端末9において行われる処理の流れを、
図3を参照して説明する。
図3は、情報処理端末9で行われる健康管理機能提供に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
図3に示すように、健康管理アプリ及び使用者適性判定アプリが起動、即ち補助記憶装置から読み出され、プロセッサ91によって実行されると、制御部910は健康管理機能の提供に係る使用者適性判定に必要な指標を決定する(S101)。そして、ユーザー情報取得部912がS101で決定された指標を含むユーザー情報を取得する(S102)。
【0050】
上述のように、本実施形態においては、使用者適性判定に用いられる指標は、認知機能、体温、血圧、運動能力、聴力、視力、年齢、病歴、痛み、である。各指標の取得方法は、指標に応じてそれぞれ異なっていてもよく、例えば、年齢、病歴、痛み、についてはユーザーにタッチパネルなどでの手入力を求めることで入手してもよい。また、体温、運動能力(歩数、歩行能力により決定)については、情報処理端末9が備えるセンサによって自動的に取得するのであってもよい。また、認知機能、血圧、聴力、視力は、測定を行った結果を取得する。測定結果は、例えば血圧計などの他の機器から通信手段を介して、或いはユーザーに測定結果を手入力させて取得してもよいし、情報処理端末9が測定のための機能を備えている指標については、その測定結果を取得するのであってもよい。また、認知機能についてはこれを測定するための他のサブルーチン(問診フェーズなど。図示せず)を実行するようになっていてもよく、例えば、特開2020-151045号公報に開示されているような公知の認知機能検査方法を用いることができる。
【0051】
次に、使用者適性判定部913が、ステップS102で取得したユーザー情報に含まれる指標毎に、健康管理機能の提供態様の変更に対応する条件を満たしているか判定を行う(S103)。そして、使用者適性判定部913は、ステップS104において、第1判定のための指標がすべて健康管理機能F1の提供が「可」となる条件を満たしているか否かを判定する(S104)。本実施形態においては、認知機能(健康管理機能を使用可能なレベルか否か)、体温(発熱していないか。例えば37.5℃未満か否か)、血圧(所定値以下か否か)、の指標がすべて条件を満たしているか否かを判定する。
【0052】
ステップS104において、使用者適性判定部913が、いずれか一つの指標でも条件を満たしていないと判定した場合には、ステップS105に進み、健康管理機能の提供を禁止するように決定し(S105)、一連の処理を終了する。これにより健康管理機能は何らかの停止条件が解除されるまでは、提供されなくなる。このような処理を行った場合には、健康管理機能が提供できない理由、機能提供を再開できる条件、などの情報をタッチパネルディスプレイに表示するなどして、ユーザーに提示してもよい。
【0053】
一方、ステップS104で、第1判定に係る指標がすべて条件を満たしていた場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、使用者適性判定部913が、第2判定のための各指標に関して、健康管理機能の提供態様の変更が必要か否かを判断する(S106)。ここで、健康管理機能の提供の態様について変更が不要と判断された場合は、ステップS108に進み、健康管理機能提供部911により健康管理機能が提供されて(本実施形態ではリハビリ方法が動画で表示される)、一連の処理が終了する。
【0054】
一方、ステップS106で、健康管理機能の提供の態様について変更が必要と判断された場合には、ステップS107に進む。ステップS107では、健康管理機能設定部914が、ステップS106で健康管理機能の提供態様について変更が必要と判断された指標及びその内容に応じて、健康管理機能の提供態様をデフォルトの内容から変更する(S107)。
【0055】
なお、第2判定では、例えば次のような判定が行われる。即ち、運動機能の指標に基づいて動画で示す運動の強度の変更が必要か判定する。聴力の指標に基づいて動画で流す音量の変更が必要か判定する。視力の指標に基づいて文字のサイズや配色の変更が必要か判定する。年齢の指標に基づいて動画の再生速度の変更が必要か判定する。病歴の指標(例えば、腹部大動脈瘤など激しい運動を避けた方がよい病歴がないかなど)に基づいて動画の再生時間や運動強度の変更が必要か判定する。痛みの指標(例えば、リハビリしたい部位とは異なる場所に痛みがあるかなど)に基づいて、表示する動画の変更(痛みがある部位を動かす運動を避ける内容の動画に変更など)が必要か判定する。
【0056】
ステップS107では、健康管理機能設定部914が、上記のような判定結果に応じて健康管理機能の提供態様(動画の内容など)を変更する。そして、このような変更が反映された健康管理機能を健康管理機能提供部911が提供して(S108)、一連の処理が終了する。
【0057】
以上のような本実施形態係る情報処理端末9によれば、健康管理機能を提供することが適切でない状態のユーザーに対しては、機能の提供を制限することができる。また、ユーザーの状態に応じて、健康管理機能の提供の態様を最適化して機能を提供することができる。このため、医療従事者の監督がない状況下において健康管理機能が提供されることで間違った治療行動につながる可能性を低減することができるとともに、ユーザーにとってより利便性の高い健康管理のツールを提供することができる。
【0058】
<実施形態2>
(システム構成)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る情報処理システム1の構成を示す概略図である。
図4に示すように、本実施形態に係る情報処理システム1は、ユーザーが使用する情報処理端末(以下、ユーザー端末という)100と、サーバ装置200とを含んで構成され、これらが通信ネットワークNを介して相互に通信可能となっている。なお、図示しないが、情報処理システム1には、医師などの医療従事者が用いる医療機関端末や、通信機能を備える生体情報測定装置(血圧計、体組成計など)を含んでいてもよい。
【0059】
(ユーザー端末)
ユーザー端末100は、実施形態1の情報処理端末9と同様に、スマートフォンとすることができるが、必ずしもこれに限定されず、タブレット端末、スマートディスプレイ、ウェアラブル端末、などとすることもできる。即ち、本実施形態に係るユーザー端末100のハードウェア構成は、実施形態1の情報処理端末9と同様にすることができるので、そのハードウェア構成についての改めての説明は行わない。
【0060】
図5は、ユーザー端末100の機能ブロックを示すブロックである。
図5に示すように、ユーザー端末100は、主たる機能構成として制御部110、入力部120、出力部130、記憶部140、通信部150を備えている。なお、本実施形態におけるユーザー端末100は、実施形態1の情報処理端末9と概ね同様の機能構成を有している。即ち、ユーザー端末100の、制御部110、入力部120、出力部130、記憶部140、通信部150が、それぞれ情報処理端末9の、制御部910、入力部920、出力部930、
記憶部940、通信部950に相当する。
【0061】
また、制御部110が備える、健康管理機能提供部111、ユーザー情報取得部112、健康管理機能設定部113の各機能部も、情報処理端末9の対応する各機能部と同様である。ただし、本実施形態においては、制御部110が使用者適性判定部を備えない点において、実施形態1の情報処理端末9とは異なっている。
【0062】
また、本実施形態において、健康管理機能提供部111は、複数の異なる健康管理機能を提供することが可能になっている。即ち、ユーザー端末100には、複数の異なる健康管理アプリがインストールされており、実行されるアプリに応じて異なる健康管理機能が提供される。以下では、健康管理アプリA、健康管理アプリB、健康管理アプリCの3つのアプリがインストールされている場合について説明を行う。
【0063】
なお、健康管理アプリAは、実施形態1で説明したのと同様に「患者のリハビリしたい部位および動きに応じたリハビリ方法を動画で表示して、リハビリ運動を促す」機能(以下、「第1健康管理機能」ともいう)を提供する。一方、健康管理アプリBは「スポーツ等で脳震盪を生じた後の、活動再開時期の判断のために視覚及び言語を用いた認知機能評価を行う」機能(以下、「第2健康管理機能」ともいう)を提供する。また、健康管理アプリCは「生活習慣の改善や薬物療法により血圧の降圧治療を行う」機能(以下、「第3健康管理機能」ともいう)を提供する。
【0064】
各健康管理アプリA乃至Cによって提供される第1乃至第3健康管理機能には、機能の違いに応じて、それぞれ異なる使用者適性判定指標(及び基準)が設けられている。
図6に、各アプリによって提供される機能に対して、使用者適性判定のために用いられる指標と、その取得方法との関係を示す一覧表を示す。
【0065】
図6の表を参照すると、健康管理アプリAにより提供される第1健康管理機能に対する使用者適性判定のための指標は、「認知機能、体温、血圧、運動機能、聴力、視力、年齢、病歴、痛み」であることがわかる。一方、健康管理アプリBにより提供される第2健康管理機能に対する指標は「体温、視力」であり、健康管理アプリCにより提供される第3健康管理機能に対する指標は「認知機能、体温、運動機能、病歴、血糖・脂質」であることがわかる。
【0066】
また、
図6の表によれば、各指標の取得方法もそれぞれ異なっている。具体的には、「認知機能、血圧、聴力、視力」の各指標は測定により取得される。また、「体温、運動機能」については、センシングにより取得される。また、「年齢、病歴、痛み、血糖・脂質」についてはユーザーの手入力により取得される。なお、測定については、他の生体情報測定機器と連携して測定結果を取得するのであってもよいし、ユーザー端末100自体が測定のための構成を有するものであってもよい。また、センシングについては、ユーザー端末100が温度センサや加速度センサを備え、情報を取得する。その他、測定、センシング、手入力について実施形態1において説明したのと重複する説明は省略する。
【0067】
(サーバ装置)
サーバ装置200は、ユーザー端末100と通信連携して、ユーザー端末100において健康管理機能を提供する際の処理をサポートする役割を果たす。
図7は、サーバ装置200の機能構成を示すブロック図である。なお、サーバ装置200には一般的なサーバコンピュータを用いることができる。即ち、図示しないが、サーバ装置200は、ハードウェア構成としてプロセッサ、メモリ、入出力IF、通信IFなどを備える情報処理装置である。そして、
図7に示すように、サーバ装置200は、制御部210、通信部220、記憶部230の各機能ブロックを備えている。また、図示しないが操作入力部、出力部を
備えていてもよい。
【0068】
制御部210はサーバ装置200の制御を司り、例えばCPUなどのプロセッサによって実現される。また、制御部210は、機能モジュールとして、判定指標選択部211、ユーザー情報取得部212、使用者適性判定部213の各機能部を備えている。
【0069】
通信部220は、サーバ装置200を通信ネットワークNに接続するためのハードウェア構成(例えば通信インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路)を含んで構成される。
【0070】
記憶部230は、図示しないが、ROM、RAM等の主記憶装置と、EPROM、HDDまたはSSD、リムーバブルメディア等の補助記憶装置とが含まれている。補助記憶装置には、オペレーティングシステム、各種プログラムなどが格納されている。
【0071】
判定指標選択部211は、ユーザー端末100によって提供される健康管理機能の種類に応じて、使用者適性判定に用いる指標を選択する。
図6で示した通り、提供される健康管理機能に応じて、使用者適性の判定に用いられる指標が異なる。このため、複数の健康管理アプリが利用可能であるユーザー端末100においては、健康管理機能ごと(即ち、使用するアプリごとに)に異なるユーザー情報が必要となる。判定指標選択部211は、ユーザー端末100においていずれの健康管理アプリが使用されるのか(即ち、ユーザーがいずれの健康管理機能の提供を希望しているのか)の情報を取得し、これに基づいて使用される健康管理アプリに応じた使用者適性判定用の指標を決定する。具体的には、例えば、
図6の表のように、健康管理アプリ(これによって提供される健康管理機能)と、その使用者適性判定に必要な指標とを対応付けたデータテーブルを記憶部230に保持しておいて、これを参照することで決定することができる。
【0072】
ユーザー情報取得部212は、通信部220を介してユーザー端末100を使用するユーザーのユーザー情報を取得する。より具体的には、判定指標選択部211が決定した指標を含むユーザー情報を取得する。
【0073】
使用者適性判定部213は、取得されたユーザー情報に含まれる指標に基づいて、ユーザー端末100において提供される健康管理機能に対するユーザーの適性を判定する。上述のように、ユーザー端末100において提供される健康管理機能は使用される健康管理アプリに応じて異なるため、使用者適性判定部213はそれぞれのアプリに応じた判定を行う。また、使用者適性判定部213が行う使用者の適性判定には、実施形態1の場合と同様に、健康管理機能の使用可否の判定(第1判定)と、健康管理機能の提供態様の変更が必要か否かの判定(第2判定)が含まれるが、提供される健康管理機能の内容に応じて、いずれか一方の判定のみを行うこともある。以上のように、本実施形態においては、使用者適性判定部213の機能は、ユーザー端末100ではなく、サーバ装置200において実現される構成となっている。
【0074】
(処理の流れ)
次に、
図8に基づいて、上記のような構成を有する本実施形態に係る情報処理システム1で行われる処理の流れを説明する。
図8は、情報処理システム1内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
図8に示すように、まず、ユーザーがユーザー端末100において機能を利用したい健康管理アプリを実行すると(S201)、いずれの健康管理アプリを実行したかの情報が、通信ネットワークNを介してユーザー端末100からサーバ装置200に送信される(S202)。この際に、ユーザーの属性情報(年齢、性別、ユーザーIDなど)を併せて送信するようになっていてもよい。
【0075】
使用する健康管理アプリの情報を受信したサーバ装置200では、当該アプリに応じた適性判定指標を判定指標選択部211が選択する(S203)。次に、サーバ装置200は、ステップS203で選択された1又は複数の判定指標の情報及び当該判定指標を含むユーザー情報の送信リクエストを、通信ネットワークNを介してユーザー端末100に送信する(S204)。
【0076】
次に、ユーザー端末100ではステップS204で要求された指標を含むユーザー情報を取得するための処理を実行する(S205)。なお、手入力や測定が必要な指標については、例えば情報取得のためのユーザーインターフェース(UI)をディスプレイに表示してユーザーの入力を受け付けたり、測定を促したりすることで、必要なユーザー情報を取得する。そして、ユーザー端末100は、ステップS205で取得したユーザー情報を、サーバ装置200に送信する(S207)。
【0077】
ステップS207で、使用者適性判定に必要な指標を含むユーザー情報を受信したサーバ装置200では、使用者適性判定部213が、ユーザー端末で使用される健康管理アプリに応じた使用者適性の判定を行う(S207)。例えばユーザー端末100で健康管理アプリBが使用される場合には、使用者適性判定部213は、体温と視力の指標を用いて、第1判定のみを行う。具体的には、健康管理アプリBがユーザー端末100で実行された場合には、使用者適性判定部213は、発熱の有無、及び第2健康管理機能を使用可能な眼球運動能力や視野があるかについて判定し、機能を使用できるか否かのみを決定する。
【0078】
一方、ユーザー端末100で、健康管理アプリCが使用される場合には、使用者適性判定部213は、「認知機能(認知機能が低下していると服薬した事実を忘れて過剰に服薬する危険がある)、体温」の指標に基づいて第1判定を行い、さらに「運動機能、病歴、血糖・脂質」の指標について第2判定を行う。
【0079】
より具体的には、運動機能の指標を用いて、数日間の歩行速度から、運動強度の変更を行うか否か(変更する場合はどのように変更するか)を決定する。また、病歴の指標(例えば、腹部大動脈瘤などの激しい運動を避けた方がよい病歴があるか否かなど)を用いて、運動強度の変更の要否(変更する場合の程度)、運動以外の生活習慣改善の提案を行うか否かを決定する。また、血糖・脂質の指標(血糖値やLDLコレステロールの値など)を用いて、食事改善の提案(例えばコレステロールが多く含まれる食品の提示と摂取制限の提案)を行うか否かを決定する。
【0080】
そして、使用者適性判定部213による判定が終了すると、サーバ装置200は判定結果をユーザー端末に送信する(S208)。次に、ユーザー端末100では、健康管理機能設定部113が、送信された判定結果に応じた機能の提供態様を反映させるように設定を行う(S209)。なお、ここでいう「機能の提供態様」には、機能の提供自体を中止することも含め、提供する機能を制限することが含まれる。その後、健康管理機能提供部111が、ステップS209で設定した態様により、ユーザーの使用したアプリによる健康管理機能を提供する(S210)。
【0081】
以上のような本実施形態に係る情報処理システム1によれば、ユーザー端末100が提供可能な健康管理機能の種類が多い場合であっても、処理能力の高いサーバ装置200において使用者適性の判定を行うことで、ユーザー端末100側の負荷(計算負荷、記憶容量など)を削減することができる。
【0082】
<実施形態3>
なお、上記の情報処理システムは、医療従事者が用いる医療機関端末とも通信接続され
る構成であってもよい。このような実施形態に係る情報処理システム2の概略構成を
図9に示す。なお本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、処理、機能については同一の名称及び符号を用い、改めての説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態に係る情報処理システム2は、ユーザー端末100、サーバ装置201、医療機関端末300を含み、これらが通信ネットワークNを介して通信接続される構成となっている。なお、ユーザー端末100は実施形態2で説明したのと同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
医療機関端末300は、プロセッサ、メモリ、入出力IF、通信IF(いずれも図示せず)などを備える汎用的なコンピュータを採用することができる。医療機関端末300は、電子カルテシステムと連携してもよいし、患者のデータを一覧性良く表示して医師による診療を支援する機能を有していてもよい。
【0084】
サーバ装置201は、ハードウェア構成としては実施形態2で説明したのと同様に、プロセッサ、メモリ、入出力IF、通信IFなどを備える情報処理装置である。
図10に本実施形態に係るサーバ装置201の機能構成を示すブロック図を示す。
図10に示すように、本実施形態に係るサーバ装置201は、実施形態2に係るサーバ装置200と比べ、機能部として、機能提供条件設定部214、認証情報処理部215をさらに備えている点が異なっている他は同様である。
【0085】
機能提供条件設定部214は、医療機関端末300から提供される情報に基づいて、ユーザーごと、かつ、健康管理機能(アプリ)ごとの機能提供条件を設定する。ここで、医療機関端末300から提供される情報とは、例えば医師などの医療従事者によって入力される情報であり、患者(即ちユーザー)に使用させる健康管理機能(アプリ)の種類、患者の診療情報、患者の属性情報などの一部のユーザー情報、といったものが含まれる。また機能提供条件には、ユーザー端末100によって提供される健康管理機能が有効な期間(或いは使用期限日)、判定指標選択部が選択した指標などが含まれる。
【0086】
認証情報処理部215は、医療機関端末300から提供される情報及び機能提供条件設定部214によって設定された機能提供条件に基づいて、ユーザー端末100において提供される健康管理機能を有効化するためのアクセスコードを発行する。アクセスコードはユーザー、健康管理機能の種類、(さらに必要に応じて、健康管理機能を利用できる有効期限)、の組み合わせごとに独自なものとなっており、例えば文字列であってもよいし、符号化された二次元コード等であってもよい。発行されたアクセスコードは、例えば通信部220を介して医療機関端末300に送信される。
【0087】
また、認証情報処理部215は、ユーザー端末100においてアクセスコードの入力が行われた場合には、通信ネットワークNを介してアクセスコードを受信し、認証を行ってユーザー端末100での健康管理機能の有効化処理を行う。
【0088】
(処理の流れ)
ユーザー端末100で利用可能な健康管理機能のうち、例えば健康管理アプリCにより提供される「生活習慣の改善や薬物療法により血圧の降圧治療を行う機能」(第3健康管理機能)は、基本的には医師による診断や処方を必要とするものである。このような機能をユーザー端末100で提供する場合には、医師による診察、処方を前提として、医師の監督の下で、ユーザー端末100における機能を有効化することが望ましい。以下では、第3健康管理機能の提供を行う場合を例に、本実施形態に係る情報処理システム2において行われる処理の流れを説明する。
図11は、情報処理システム2内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
【0089】
まず、医療機関において患者が診察を受けた際に、医師が患者に対して健康管理アプリCによる健康管理を行うという治療方針を決定し、医療機関端末300に、使用する健康管理機能(アプリ)の種類、健康管理機能の有効期限、患者の診療情報、患者の属性情報などの一部のユーザー情報、といった情報を入力する。即ち、医療機関端末300が、これら、使用アプリの情報、診療情報などの患者情報を取得する(S301)。なお、健康管理機能の有効期限は、例えば、次回診察予定日にいくらかのマージンを持たせた期間としてもよい。また、診療情報は、例えば、患者の症状の状態、問診内容、処方箋、次回の診察予定日などを含むことができる。また、後述する機能提供条件に含まれる使用者適性判定のための指標及び/又は閾値は、ステップS301で医師が指定するようにしてもよい。
【0090】
次に、医療機関端末300は図示しない通信手段及び通信ネットワークNを介して、ステップS301で取得した情報をサーバ装置201に送信する(S302)。サーバ装置201は、受信した使用アプリの情報、診療情報などの情報を用いて、対象となる患者のユーザー端末100において第3健康管理機能を提供する条件(機能提供条件)を設定するとともに、設定した条件を反映させたアクセスコードを発行する(S303)。具体的には、機能提供条件設定部214が判定指標選択部211によって選択された指標(及び判定閾値)、或いは医師によって入力された判定指標(及び判定閾値)などを含む条件を設定し、認証情報処理部215がアクセスコードを発行する。なお、ここでいう条件には、健康管理機能が利用できる有効期限が含まれていてもよい。
【0091】
そして、サーバ装置201が、通信ネットワークNを介して医療機関端末300にアクセスコードを送信する(S304)。医療機関端末300で受信したアクセスコードは、医師が印刷などの方法で出力し、ユーザー端末100を使用する患者に伝えられる。
【0092】
患者は医療機関での診察を終えた後、医師の指示に従い、自身が用いるユーザー端末100において提供される第3健康管理機能を利用して、血圧の降圧治療を行う。具体的には、ユーザー端末100において健康管理アプリCを起動する(S305)。ここで、健康管理アプリCは初回使用時にアクセスコードの入力を求めるように構成されており、適切なアクセスコードが入力されなければ、第3健康管理機能は提供されない。
【0093】
患者はユーザー端末100の入力手段(例えば、タッチパネルディスプレイやカメラ)を用いて、アクセスコードを入力する。入力したアクセスコードは通信ネットワークNを介してサーバ装置201に送信され(S306)、認証情報処理部215がアクセスコードの認証処理を行う(S307)。そして認証が適切に行われると、患者が入力したアクセスコードに紐づいた機能提供条件がサーバ装置201からユーザー端末に送信される(S308)。
【0094】
ユーザー端末100において機能提供条件を受信すると、当該条件に基づいて健康管理機能提供部111が機能を提供する(S309)。なお、健康管理機能提供の際には使用者適性判定などの処理も実施されるが、このような機能提供時の各処理は実施形態2の情報処理システム1におけるステップS204以降の処理と同様であるため、ここでの説明は省略する。第3健康管理機能は、ユーザーの日々のバイタルデータを収集し、蓄積することも機能の内容として含んでいるため、ユーザー端末100のユーザー情報取得部112が取得した情報は、通信ネットワークNを介してサーバ装置201に送信され(S310)、記憶部230に蓄積される(S311)。
【0095】
そして、患者の次の診察時に(或いは次の診察に備えて)、医師が患者のバイタルデータを含むユーザー情報を参照すべく、医療機関端末300からサーバ装置201に蓄積されているユーザー情報の送信をリクエストする(S312)。リクエストを受けたサーバ
装置201は、要求されたユーザー情報を医療機関端末300に送信する(S313)。なお、ユーザー情報の送信を行う前に、アクセスコード或いは何らかのユーザー情報の入力を求めるなどの認証処理が行われるようになっていてもよい。
【0096】
医師は、サーバ装置201から提供された情報も用いて患者の診察を行い、診療情報、健康管理アプリの次の有効期限などを医療機関端末300に入力する。即ち、医療機関端末300は診療情報を取得する(S314)。医療機関端末300は取得した診療情報を、通信ネットワークNを介してサーバ装置201に送信(S315)する。サーバ装置201において、機能提供条件設定部214が受信した診療情報に基づいて、対象となる患者に提供される健康管理機能の機能提供条件を更新する(S316)。なお、ここでいう更新には、前回と全く同じ条件を継続して設定することも含む。そして、認証情報処理部215が更新された機能提供条件に紐づいたアクセスコードを新たに発行し、医療機関端末300に送信する(S317)。その後の処理は、ステップS305以降と同様である。
【0097】
以上のような情報処理システム2によれば、医師による診療を前提として、医師の監督の下で生活習慣の改善や薬物療法により治療を行うことが可能な疾病について、医療従事者が日常的なケアを行わずとも、患者が治療に適した生活(服薬を含む)を行うことが可能な健康管理機能を提供することができる。また、医師は患者の日々のバイタルデータの推移を患者の診察前など、任意のタイミングで確認することができ、診療の質を向上させるこができる。
【0098】
(変形例)
なお、上記実施形態2のような健康管理機能を提供する場合、患者の認知機能が低下していると、ユーザー端末100からサーバ装置201に送信される日々のバイタルデータの正確性に疑義が生じ、医師の診断に悪影響を及ぼし得る。このため、第3健康管理機能を提供する場合には、使用者適性判定部213による判定において、即時の機能提供を中止するほどではないもののユーザーの認知機能が低下していると判定した場合には、ユーザー端末100の健康管理機能設定部113は、早期に医師の診断を受ける旨の警告メッセージを出力するように設定されていてもよい。
【0099】
そして、患者が所定期間内に医師の診断を受けた場合には、医療機関端末300から診療情報をサーバ装置201に送信することで、機能提供条件の更新を行い、警告メッセージを出力する健康管理機能の提供態様をリセットすることができるアクセスコードを発行するようになっていてもよい。一方、所定期間内に医師の診断を受けなかった場合には、健康管理機能設定部113は機能の提供自体を停止するように提供態様の設定を行うようにしてもよい。
【0100】
このようにしておくことで、仮に予め医師と取り決めた通院スケジュールがあるとしても、それに拘わらず医師の診断を受けることにより、正確でない患者のバイタルデータが長期にわたり取得され続ける、或いはバイタルデータの取得漏れが生じる、といった事態を回避することができる。
【0101】
或いは、認知機能が低下している判定がされた場合には、サーバ装置201に送信されるユーザー情報に、認知機能が低下している旨の付加的情報を併せて送信するようにしておくこともできる。この場合には、医師は送信されたバイタルデータが正確でない可能性を踏まえて診断を行うことができるため、誤った診療が行われる可能性を低減することができる。
【0102】
<その他>
上記各例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記の実施形態1に係る情報処理端末9において、実施形態2のように複数の健康管理アプリが使用可能となっていてもよい。即ち、実施形態2のように、実行する健康管理アプリに応じて、取得するユーザー情報(指標)、使用者適性判定の内容、が異なるように構成されていてもよい。
【0103】
また、上記の実施形態3に係る情報処理システム2において、健康管理アプリの機能としてユーザー端末100から送信されるユーザー情報(特にバイタルデータ)の送信先を、サーバ装置201でなく、医療機関端末300とすることもできる。或いは、サーバ装置201と医療機関端末300のいずれにもユーザー情報を送信するようにしてもよい。
【0104】
また、上記の各実施形態では、健康管理アプリはユーザーが使用する端末の記憶部に格納されている構成であったが、健康管理機能はネットワークを介してSaaS(Software as a Service)の態様で提供されるのであってもよい。また、上記の実施形態1では、健康管理アプリと使用者適性判定アプリは別々のアプリケーションプログラムとして説明を行ったが、これらを含めた一体のアプリケーションプログラムによって、情報処理端末9の各機能部が実現されるのであってもよい。また、上記実施形態2(及びその変形例)において、ユーザー端末とサーバ装置とがそれぞれ一つずつの構成を説明したが、一つのサーバ装置と通信接続するユーザー端末(及び医療機関端末)は複数であっても構わない。
【符号の説明】
【0105】
1、2・・・情報処理システム
9・・・情報処理端末
90・・・バス
91・・・プロセッサ
92・・・メモリ
93・・・入出力IF
94・・・通信IF
100・・・ユーザー端末
200、201・・・サーバ装置
300・・・医療機関端末
110、210、910・・・制御部
120、230、940・・・記憶部
150、220、950・・・通信部
120、920・・・入力部
130、930・・・出力部
N・・・通信ネットワーク