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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008731
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】環境負荷情報連携システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20250109BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20250109BHJP
【FI】
G06Q10/30
B09B3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111154
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 早苗
(72)【発明者】
【氏名】親松 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】森 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】八木 将計
【テーマコード(参考)】
4D004
5L049
【Fターム(参考)】
4D004AA21
4D004BA10
4D004DA16
5L049CC60
(57)【要約】
【課題】製品を再製造する際に生じる環境負荷の効果的な低減を支援する技術を提供する。
【解決手段】
再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携システムが、再生製品を再製造したときに取得された、再生部品を再生するために工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、再生処理が該当する処理目的を示す情報と、再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、再生製品の再製造の再生識別子と再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、処理情報から、処理目的毎に、再生製品の再製造において、対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、処理目的毎に、処理パターンに対して、環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、処理パターンに対する優先度に基づく分析結果情報を提示する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の工程を経て再生される再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携システムであって、
メモリとプロセッサとを有し、
前記メモリは、
前記再生製品を再製造したときに取得された、前記再生部品を再生するために前記工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、該再生処理が該当する処理目的を示す情報と、該再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、前記再生製品の再製造を個々に識別可能にする再生識別子と前記再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、
前記プロセッサは、
分析対象とする部品種別である対象部品種別の指定を受け付け、前記処理情報から、処理目的毎に、前記再生製品の再製造において、前記対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、
処理目的毎に、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、
前記処理パターンに対する前記優先度に基づく分析結果情報を提示する、
環境負荷情報連携システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
抽出した処理パターンの中に、前記順列の再生処理が実施されたときに生じた環境負荷の分散が所定の分散閾値よりも大きい処理パターンがあったとき、その処理パターンについて、当該処理パターンと当該処理パターンの前または後に隣接する処理パターンである隣接処理パターンとの関連が一定以上の強さであれば、当該処理パターンと当該隣接処理パターンを結合した新たな処理パターンを作成する、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記順列の再生処理が実施されたときに生じた環境負荷の分散が前記分散閾値よりも大きい処理パターンについて、当該処理パターンと前記隣接処理パターンとを結合した場合の環境負荷の分散が前記分散閾値以下であれば、前記関連が一定以上の強さであるとして、当該処理パターンと当該隣接処理パターンを結合する、
請求項2に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項4】
前記処理情報には、前記工程の再生処理を実施した主体を示す情報が更に登録されており、
前記プロセッサは、
前記主体のそれぞれに対して、前記処理情報における当該主体自身が実施した再生処理に関する部分を閲覧可能にし、
前記処理パターンが抽出または作成されると、前記処理パターンに含まれる再生処理のそれぞれの主体に対しては、前記処理情報における前記処理パターンに含まれる他の主体の再生処理に関する部分をも閲覧可能にする、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記処理パターンに対して前記環境負荷の代表値が小さいほど高い優先度を付与し、
前記分析結果情報として、前記優先度が上位所定個以内の処理パターンを提示する、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項6】
前記処理情報には、前記再生部品に対して再生処理を実施するのに要したコストを示す情報が更に登録されており、
前記プロセッサは、
前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値と再生処理に要したコストの代表値とに基づく指標値によって優先度を付与する、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項7】
前記処理情報に登録される環境負荷には、前記工程が実施される地理的な場所の間を前記再生部品を輸送することにより生じた環境負荷が含まれる、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記再生識別子毎に、前記対象部品種別の再生部品に対する再生処理により生じた環境負荷の合計値を算出し、
いずれかの再生識別子に対する合計値が所定の環境負荷合計閾値を超えていた場合に、前記処理パターン毎の環境負荷の分析を開始する、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項9】
前記代表値は中央値である、
請求項1に記載の環境負荷情報連携システム。
【請求項10】
メモリとプロセッサとを有するコンピュータにより、1つ以上の工程を経て再生される再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携方法であって、
前記メモリが、前記再生製品を再製造したときに取得された、前記再生部品を再生するために前記工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、該再生処理が該当する処理目的を示す情報と、該再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、前記再生製品の再製造を個々に識別可能にする再生識別子と前記再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、
前記プロセッサが、
分析対象とする部品種別である対象部品種別の指定を受け付け、前記処理情報から、処理目的毎に、前記再生製品の再製造において、前記対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、
処理目的毎に、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、
前記処理パターンに対する前記優先度に基づく分析結果情報を提示する、
環境負荷情報連携方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品を再製造する際に生じる環境負荷を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の深刻化、資源枯渇の懸念、産業革命4.0の推進により消費者の環境に対する認識が変化している。それを背景として、これまでのような線形型の経済ではなく、環境に配慮した循環型経済(サーキュラーエコノミー)システムが求められるようになっている。企業などでは、企業活動に伴う温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量あるいは資源消費などの環境負荷に関するデータを一次データとして取得する動きが加速している。また、GHGプロトコルのScope3として、自社の排出量だけではなく、サプライチェーン全体での環境負荷を削減することが求められるようになっている。
【0003】
GHGプロトコルでは、さらにScope4として削減貢献量の議論も進んでいる。削減貢献量は、環境負荷の削減にどれだけ貢献したかを表す指標である。部品を再生して再利用するリユース、使用済み製品を回収して再利用するリマニュファクチャリング等のサーキュラーエコノミー活動による削減貢献量が、このScope4に関係してくる可能性が大きい。その場合、サーキュラーエコノミー活動における環境負荷を算出することも求められる。
【0004】
しかしながら、製品の再製造に使用する再生部品あるいは再生材によって再利用に至るプロセスが異なるので、サーキュラーエコノミー活動の環境負荷を算出することは容易でない。また、プロセスが同じであってもそれを実施する主体や場所によっても環境負荷が異なることも、環境負荷の算出を更に複雑にする。
【0005】
特許文献1には、資源循環に関わる環境負荷を評価するに際し、リユースに係る環境負荷を評価する手法が開示されている。特許文献1の手法は、再生工程データを入力して記憶し、再生工程係数を記憶し、再生工程データと再生工程係数を用いてリユース対象物の再生負荷を算出する。これにより、部品リユースに関する環境負荷を、個々に再生工程データを実測することなく算出し、かつ複数の再生工場における再生負荷を算出し、最も再生負荷の小さい工場を選定し、さらに複数のリユース部品の各再生工場における再生負荷を算出し、トータルで再生負荷が最も小さくなるように各リユース部品を再生する工場を選定することが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-160504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の手法は、各工場における工程で生じる再生負荷を予め決めておき、それを前提として再生負荷が最小となるように最適な工場の組合せを選定するものである。そのため、特許文献1の手法では、工程自体を見直すことは意図されていない。したがって、複数の異なる事業者により実施される複数の工程を経て最終製品を完成させるサプライチェーンにおいて、各事業者が個々に行う環境負荷の削減の成果を単純に合計した値が全体としての負荷削減量となるので、必ずしも全体の負荷削減量として十分な結果が得られない可能性がある。
【0008】
本開示に含まれるひとつの目的は、製品を再製造する際に生じる環境負荷の効果的な低減を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に含まれるひとつの態様による環境負荷情報連携システムは、1つ以上の工程を経て再生される再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携システムであって、メモリとプロセッサとを有し、前記メモリは、前記再生製品を再製造したときに取得された、前記再生部品を再生するために前記工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、該再生処理が該当する処理目的を示す情報と、該再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、前記再生製品の再製造を個々に識別可能にする再生識別子と前記再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、前記プロセッサは、分析対象とする部品種別である対象部品種別の指定を受け付け、前記処理情報から、処理目的毎に、前記再生製品の再製造において、前記対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、処理目的毎に、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、前記処理パターンに対する前記優先度に基づく分析結果情報を提示する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に含まれるひとつの態様によれば、再生部品を用いて再生製品を再製造する際に生じる環境負荷の観点で好適な処理パターンを提示するので、環境負荷の効果的な低減を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】企業間における環境負荷情報の連携の様子を例示する概念図である。
図2】環境負荷情報企業間連携システムのブロック図である。
図3】処理情報の一例を示す図である。
図4】メンテナンス履歴情報の一例を示す図である。
図5】処理コード情報の一例を示す図である。
図6】目的コード情報の一例を示す図である。
図7】部品属性情報の一例を示す図である。
図8】環境負荷情報企業間連携システムを実現する情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
図9】全体処理のフローチャートである。
図10】改善可能性判定処理のフローチャートである。
図11】結果表示画面の一例を示す図である。
図12】処理情報の登録および閲覧の権限を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態では、複数の企業によって実施される工程を経て再生される部品を用いて、使用済み製品から再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の情報を管理し企業間で連携することにより、サプライチェーン全体としての環境負荷の効果的な低減を支援するシステムが開示される。ここでいう環境負荷は、企業活動に伴う温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量あるいは資源効率などであり、本実施形態では環境負荷として二酸化炭素(CO2)排出量を例示する。
【0014】
図1は、企業間における環境負荷情報の連携の様子を例示する概念図である。
【0015】
図1を参照すると、企業Pおよび企業Qで実施される工程を経て再生される再生部品Bと、企業Rで実施される工程を経て再生される再生部品Cと、企業Sから提供される新品部品とが企業Tに提供され、企業Tにて再生部品B、Cおよび新品部品を用いて再生製品を製造するサプライチェーンが示されている。企業Pは、再生部品Bに対して熱処理と切削加工を実施し、処理後の再生部品Bを企業Qに提供する。企業Qは、提供された再生部品Bに対してコーティングを実施し、処理後の再生部品Bを企業Tに提供する。企業Rは、再生部品Bを清掃し、処理後の再生部品Bをリユース部品として企業Tに提供する。以下、各企業の工程で実施される処理を「再生処理」ともいう。企業Tは、提供された再生部品B、Cおよび新品部品を組み上げて最終製品である再生製品として仕上げる。
【0016】
環境負荷情報企業間連携システム100は、サプライチェーン全体で生じる環境負荷の情報を管理し企業間で連携することにより、サプライチェーン全体としての環境負荷の効果的な低減を支援するシステムである。例えば、環境負荷情報企業間連携システム100は、新品および再生製品を含む全ての製品について、複数の企業によって実施される製造の工程で生じる環境負荷を管理するシステムであり、再生製品の再製造に対して以下に説明する環境負荷の効果的な低減を支援するための機能を提供するものであってもよい。各企業P、Q、R、Sからは、それぞれの工程で再生処理が実施されたときに生じた環境負荷に関する実績の情報(以下「処理情報」ともいう)が、環境負荷情報企業間連携システム100に送られる。例えば、サプライチェーンに属する企業は、環境負荷情報企業間連携システム100にアクセスし、自社の実施した工程についての処理情報をアップロードする。処理情報には、熱処理、切削加工、研削加工、洗浄、コーティングといった再生処理の内容を示す情報およびCO2排出量に加え、その再生処理が該当する処理目的を示す情報が含まれる。例えば、企業Pにおける熱処理の処理目的は強度向上であり、研削加工の処理目的は仕上げである。企業Qにおけるコーティングの処理目的は、劣化防止および仕上げである。企業Rにおける洗浄の処理目的は清掃である。
【0017】
図2は、環境負荷情報企業間連携システムのブロック図である。
【0018】
図2を参照すると、環境負荷情報企業間連携システム100は、記憶部101とデータ処理部102を有している。
【0019】
記憶部101は、環境負荷情報企業間連携システム100としての処理に利用される各種情報を記憶する。データ処理部102は、記憶部101に記憶されている各種情報を用いて環境負荷情報企業間連携システム100の機能を実現する処理を実行する。
【0020】
記憶部101は、処理情報103、メンテナンス履歴情報104、コード情報105、および部品属性情報106を記憶する。
【0021】
処理情報103は、各工程で部品に対して再生処理が実施されたときに生じた環境負荷に関する実績の情報である。
【0022】
図3は、処理情報の一例を示す図である。
【0023】
図3を参照すると、処理情報103には、個々の再生処理に関する、部品ID、部品種別、処理部位、処理ID、目的ID、CO2排出量、処理部門、再生ID、処理日、登録日が登録されている。部品IDは、再生処理が施された部品を識別するための識別子である。部品種別は、再生処理が施された部品の種別を示す情報である。処理部位は、部品における再生処理の対象となった部位を示す情報である。処理IDは、再生処理を識別するための識別子である。目的IDは、再生処理の処理目的を識別するための識別子である。CO2排出量は、再生処理を実施することで生じたCO2の量である。処理部門は、再生処理を実施した主体を示す情報である。再生IDは、再生製品の再製造を識別するための識別子である。ある特定の再生製品の再製造に関連した部品への再生処理には共通の識別子が付与される。処理日は、再生処理が実施された日の日付けの情報である。登録日は、処理情報が登録された日の日付けの情報である。
【0024】
例えば、図3の一行目のレコードは、処理日「20XX/5/17」に、処理部門「企業P」が、部品IDが「1001」であり部品種別が「モーター」である部品の処理部位「シャトル」に対して、処理IDが「S0001」であり目的IDが「P004」である再生処理を実施し、そのときにCO2排出量「15kg」が生じたこと、そしてその処理情報が登録日「20XX/5/18」に登録されたことを表している。
【0025】
メンテナンス履歴情報104は、製品に組み込まれた部品のメンテナンスに関する実績の情報である。
【0026】
図4は、メンテナンス履歴情報の一例を示す図である。
【0027】
図4を参照すると、メンテナンス履歴情報104には、個々のメンテナンスに関する、メンテナンスID、部品ID、対象部位、メンテナンス処理、CO2排出量、コスト、メンテナンス事業者、メンテナンス日が登録されている。メンテナンスIDは、個々のメンテナンスを識別するための識別子である。部品IDは、メンテナンスが実施された部品を識別するための識別子である。対象部位は、部品におけるメンテナンスが実施された部位を示す情報である。メンテナンス処理は、メンテナンスにおいて実施される処理を示す情報である。CO2排出量は、メンテナンスを実施することで生じたCO2の量である。コストは、メンテナンスを実施するのに要したコストを示す情報である。メンテナンス事業者は、メンテナンスを実施した主体を示す情報である。メンテナンス日は、メンテナンスが実施された日の日付けの情報である。
【0028】
例えば、図4の一行目のレコードは、メンテナンス日「200X/10/11」に、メンテナンス事業者「企業U」が、部品IDが「1055」である部品の対象部位「シャトル」に対して、メンテナンスIDが「M2233」であるメンテナンス処理「切削加工」を実施し、そのときにCO2排出量「4kg」が生じ、コスト「10,000円」を要したことを表している。
【0029】
コード情報105は、処理に用いる識別子を定義する情報である。コード情報105には、処理コード情報105Aと目的コード情報105Bが含まれている。処理コード情報105Aは、処理IDを定義する情報である。目的コード情報105Bは、目的IDを定義する情報である。
【0030】
図5は、処理コード情報の一例を示す図である。
【0031】
図5を参照すると、処理コード情報105Aには、個々の再生処理に関する、処理ID、処理名、関連目的IDが定義されている。処理IDは、再生処理を識別するための識別子である。処理名は、再生処理の名称を示す情報である。関連目的IDは、再生処理が該当し得る処理目的を識別するための識別子である。
【0032】
処理目的は、再生処理が実施される目的である。同じ再生処理であっても処理目的が異なる場合がある。例えば、図5の一行目のレコードは、処理名「熱処理」という再生処理は、処理IDが「S0001」であり、関連目的ID「P004」の処理目的と、関連目的IDが「P005」の処理目的とに該当し得ることを表している。図6を参照して後述するように、関連目的ID「P004」の処理目的は「強度向上」であり、関連目的IDが「P005」の処理目的は「組織均一化」である。つまり、熱処理という再生処理は、強度向上を目的として実施されることもあり、組織均一化を目的として実施されることもある。
【0033】
図6は、目的コード情報の一例を示す図である。
【0034】
図6を参照すると、目的コード情報105Bには、個々の処理目的に関する目的IDと目的名が定義されている。目的IDは、処理目的を識別するための識別子である。目的名は、処理目的の名称を示す情報である。
【0035】
例えば、図6の一行目のレコードは、目的名「清掃」という処理目的の目的IDが「P001」であることを表している。
【0036】
部品属性情報106は、部品の属性を示す情報である。
【0037】
図7は、部品属性情報の一例を示す図である。
【0038】
図7を参照すると、部品属性情報106には、個々の部品に関する製造メーカー、製造日、ロット番号が登録されている。製造メーカーは、部品を製造した主体を示す情報である。製造日は、部品が製造された日の日付けの情報である。ロット番号は、部品が属するロットを表す番号である。
【0039】
例えば、図7の一行目のレコードは、部品IDが「1001」である部品が製造メーカー「企業Y」によって製造日「2004/10」に製造されたこと、またその部品がロット番号が「12345」のロットに属することを表している。
【0040】
図2に戻り、データ処理部102は、入力受付部107、登録部108、環境負荷分析部109、処理パターン抽出部110、改善可能性判定部111、および結果表示部112を有している。
【0041】
入力受付部107は、各種処理に関するユーザによる操作入力を受け付ける。
【0042】
登録部108は、コード情報105および部品属性情報106を含む予め入力された各種データを記憶部101に登録する。また、登録部108は、再生処理を実施する各企業から処理情報を受信し処理情報103として登録し、メンテナンスを実施する各企業からメンテナンス履歴情報を受信しメンテナンス履歴情報104として登録する。また、登録部108は、各企業に対して自社の処理情報103を閲覧可能とする。
【0043】
環境負荷分析部109は、過去の再生処理から得られた処理情報103を基にサプライチェーンから生じる環境負荷を評価し、環境負荷の削減が期待される工程のパターンを提示する。処理パターン抽出部110は、環境負荷分析部109による全体処理に含まれる処理パターン抽出処理を実行する。処理パターン抽出処理は、サプライチェーンの過去に処理情報が取得された実績あるルートから互いに関連する連続する1つ以上の工程の部分を処理パターンとして抽出する処理である。改善可能性判定部111は、環境負荷分析部109による全体処理に含まれる改善可能性判定処理を実行する。改善可能性判定処理は、再生処理により生じる環境負荷の観点から処理パターンを優先度付けする処理である。これら環境負荷分析部109、処理パターン抽出部110、および改善可能性判定部111は連動して全体処理を実行する。全体処理およびそれに含まれる処理の詳細については後述する。
【0044】
結果表示部112は、環境負荷分析部109、処理パターン抽出部110、および改善可能性判定部111による一連の処理の結果に基づく分析結果情報をユーザに提示する。
【0045】
図8は、環境負荷情報企業間連携システムを実現する情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。本実施形態では、環境負荷情報企業間連携システム100はサーバ等のコンピュータである情報処理装置200により実現される。ただし、本実施形態の構成は一例であり、環境負荷情報企業間連携システム100は、仮想マシン上に構成されてもよいし、クラウド上に構成されてもよい。
【0046】
図8を参照すると、情報処理装置200は、1つ以上のプロセッサ(CPU)201と、主記憶装置202と、補助記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、通信装置206とを有する。
【0047】
プロセッサ201は、主記憶装置202または補助記憶装置203に格納されている各種ソフトウェアプログラムおよびデータを読み出し、データを用いてソフトウェアプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。図2に示したデータ処理部102、さらにはその内部の入力受付部107、登録部108、環境負荷分析部109、処理パターン抽出部110、改善可能性判定部111、および結果表示部112は、プロセッサ201が、メモリ(主記憶装置202または補助記憶装置203)に記憶されたデータを用いて、プログラムを実行することにより実現される。
【0048】
補助記憶装置203は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)であってよいが、これらには限られない。補助記憶装置203には、環境負荷情報企業間連携システム100が使用するソフトウェアプログラムと実行記録とが保存される。ただし、ソフトウェアプログラムと実行記録は、情報処理装置200内ではなく、ネットワークを介して情報処理装置200に接続される外部の記憶装置に保存されてもよい。
【0049】
入力装置204は、例えばキーボードやマウス、バーコードリーダなどであり、ユーザの操作により入力される情報を取得する。入力された情報はソフトウェアプログラムの処理に供される。
【0050】
出力装置205は、例えばディスプレイであり、ソフトウェアプログラムのGUI(Graphical User Interface)や処理結果を表示する。
【0051】
通信装置206は、環境負荷情報企業間連携システム100と外部装置とを、インターネット等のネットワークを介して通信可能に接続する。
【0052】
図9は、全体処理のフローチャートである。
【0053】
図9を参照すると、まずステップ301にて、入力受付部107にて、ユーザから改善対象とする環境負荷の選択の入力を受け付ける。例えば、CO2排出量が選択されてもよい。更に、ステップ302にて、入力受付部107にて、ユーザから分析対象する部品種別の選択を受け付ける。例えば、モーターが選択されてもよい。ここで選択された部品種別を以下、指定部品種別ともいう。
【0054】
続いて、環境負荷分析部109が、ステップ303にて処理情報103から指定対象部品に該当するレコードを抽出し、ステップ304にて、その抽出したレコードを再生IDでグルーピングする。例えば、処理情報103から部品種別がモーターのレコード抽出してもよい。さらに、環境負荷分析部109は、ステップ305にて、各再生IDにグルーピングされたレコードの再生処理にて生じた環境負荷の合計値を算出し、全ての再生IDについての合計値が所定の閾値以下であるか否か判定する。この閾値を以下、環境負荷合計閾値ともいう。
【0055】
全ての再生IDについての環境負荷の合計値が環境負荷合計閾値以下であれば、処理情報103に記録されている全ての再生製品の再製造において生じた環境負荷が目標とする値以下であることを意味するので、環境負荷分析部109は環境負荷の分析の処理を終了し、ステップ306にて、結果表示部112がその旨の分析結果情報を画面表示によりユーザに提示する。
【0056】
一方、いずれかの再生IDについての環境負荷の合計値が環境負荷合計閾値を超えていたら、ステップ307にて、処理パターン抽出部110と改善可能性判定部111が連携して改善可能性判定処理を実行し、ステップ306にて結果表示部112が改善可能性判定処理の処理結果に基づく分析結果情報を画面表示によりユーザに提示する。以下、改善可能性判定処理について説明する。
【0057】
図10は、改善可能性判定処理のフローチャートである。
【0058】
まず、ステップ401にて、処理パターン抽出部110が、処理情報103から、処理目的毎に、再生製品の再製造において、対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして特定し、処理情報103における各処理パターンに該当する箇所を抽出する。同一の部品IDおよび同一の再生IDを有するレコードを処理日の昇順に並べたときに、選択されている処理目的の目的IDを共通に有して連続しているレコードは、処理パターンを構成する再生処理の順列をなしていると分かる。例えば、図3の処理情報103において、部品IDが「1001」であり再生IDが「R100012」であるレコードを処理日の昇順に並べると、目的IDが「P002(仕上げ)」のレコードを共通に有して連続する、それぞれ処理IDが「S0003(研削加工)」と「S0005(コーティング)」である2つレコードがある。その2つのレコードは、処理パターンを構成する再生処理の順列をなす。
【0059】
続いて、改善可能性判定部111は、ステップ402にて全ての処理目的について演算処理を実行したか否か判定しつつ、ステップ403-408の演算処理を各処理目的のそれぞれについて実行する。
【0060】
ステップ403では、改善可能性判定部111は、選択されている処理目的の各処理パターンの環境負荷の中央値と分散とを算出する。処理情報103における選択されている処理目的の目的IDを有するレコードから各処理パターンに該当する部分を集めて処理パターン毎にグルーピングし、各グループのそれぞれについて環境負荷の中央値と分散を算出すればよい。なお、ここで中央値は代表値の一例であり、平均値や最頻値など他の代表値を用いてもよい。続いて、ステップ404にて、改善可能性判定部111は、環境負荷の分散が所定の閾値よりも大きい処理パターンがあるか否か判定する。この閾値を以下、分散閾値ともいう。
【0061】
環境負荷の分散が分散閾値よりも大きい処理パターンがなければ、改善可能性判定部111は、現在選択されている処理目的に対する演算処理を終了して次の処理目的に対する演算処理に移行する。一方、環境負荷の分散が分散閾値よりも大きい処理パターンがあれば、その処理パターンは、環境負荷の評価に好適な処理パターンとなっていない可能性があるので、以下の処理を実行する。
【0062】
ステップ405では、改善可能性判定部111は、当該処理パターンと、当該処理パターンの処理目的の前後に隣接する処理目的の処理パターンとの関連の強さを推定する。当該処理パターンの前後に隣接する処理パターンを以下、隣接処理パターンともいう。当該処理パターンと隣接処理パターンとの関連が一定以上に強ければ、それらは、一連の再生処理としてひとまとめに扱うことに適していると推定できる。本実施形態では、当該処理パターンと離接処理パターンとを結合した場合の環境負荷の分散が分散閾値以下であれば、当該処理パターンと隣接処理パターンとの関連が一定以上に強いと判定する。ただし、この手法は、処理パターン同士の関連の強さを他の指標で表す手法を用いてもよい。
【0063】
当該処理パターンとの関連が一定以上に強い隣接処理パターンが見つからなければ(ステップ406のNO)、改善可能性判定部111は、改善可能性判定部111は、現在選択されている処理目的に対する演算処理を終了して次の処理目的に対する演算処理に移行する。
【0064】
一方、当該処理パターンとの関連が一定以上に強い隣接処理パターンが見つかれば(ステップ406のYES)、ステップ407にて、改善可能性判定部111は、当該処理パターンと隣接処理パターンとを結合して新たな処理パターンを作成する。ステップ408にて、改善可能性判定部111は、新たに作成された処理パターンの環境負荷の中央値と分散とを算出する。2つの処理パターンを結合するのに伴って、それら処理パターンの処理目的も一組の組み合わせとして扱うものとなる。
【0065】
そして、改善可能性判定部111は、ステップ402の判定にて全ての処理パターンついて演算処理を実行したと判定すると、ステップ409にて、処理目的毎に、処理パターンに対して環境負荷の低減の観点による優先度付けを行う。改善可能性判定部111は、環境負荷の発生が小さい処理パターンほど優先度が高くなるように優先度付けを行う。例えば、改善可能性判定部111は、環境負荷の中央値が小さいほど高い優先度を付与する。ここでの優先度付けの情報が分析結果情報となる。図9のステップ306では、結果表示部112は、この分析結果情報を画面表示によりユーザに提示することになる。
【0066】
図11は、結果表示画面の一例を示す図である。
【0067】
図11には、実行が検討されている再生製品の再製造における計画から、優先度が最も高い処理パターンを採用することで環境負荷がどれだけ改善されるかを可視化した結果表示画面500が示されている。実行が検討されている再生製品の再製造における計画を以下、加工計画ともいう。
【0068】
結果表示画面500には、対象部品選択オブジェクト501、環境負荷選択オブジェクト502、表示方法選択オブジェクト503、詳細設定ボタン504、加工計画選択オブジェクト505、追加ボタン506、実行ボタン507、比較結果表示領域508、およびダウンロードボタン509が含まれている。
【0069】
対象部品選択オブジェクト501は、ユーザから指定部品種別の選択を受け付けるためのユーザインタフェースである。図11の例では、指定部品種別として「モーター」が選択されている。環境負荷選択オブジェクト502は、ユーザから改善対象とする環境負荷の選択を受け付けるためのユーザインタフェースである。図11の例では、改善対象の環境負荷として「CO2排出量」が選択されている。表示方法選択オブジェクト503は、ユーザから分析結果の表示方法の選択を受け付けるためのユーザインタフェースである。図11の例では、「縦棒グラフ」が選択されている。詳細設定ボタン504は、表示方法の詳細設定を行う画面を表示するためのボタンである。このボタンを押下することにより、表示方法の詳細設定を行う画面がポップアップ表示されてもよい。また、その詳細設定の画面では、例えば縦棒グラフの表示形式を更に詳細に設定できてもよい。加工計画選択オブジェクト505は、ユーザから加工計画のファイルの選択を受け付けるためのユーザインタフェースである。図11例ではファイルを検索することができる例が示されている。追加ボタン506は、加工計画のファイルの追加を実行するためのボタンである。実行ボタン507は、ユーザから環境負荷の分析の開始を受け付けるためのボタンである。指定部品種別、改善対象とする環境負荷、および分析結果の表示方法の選択と、加工計画のファイルの追加とが行われた状態で実行ボタン507が押下されると、それらの条件の下で環境負荷の分析が実行される。比較結果表示領域508は、分析の結果が表示される領域である。図11の例では、現在の加工計画におけるCO2排出量と、改善後のCO2排出量とが縦棒グラフにより対比可能に表示されている。そして、CO2排出量が20kg改善されるという予測が表示されている。ダウンロードボタン509は、分析結果データのダウンロードを開始するためのボタンである。
【0070】
また、登録部108は、上述したように各企業に対して自社の処理情報103を閲覧可能とするが、同一の処理パターンに含まれる各再生処理を実施する主体である各企業に対しては、その処理パターンに含まれる他の再生処理の処理情報103を相互に閲覧可能にする。
【0071】
図12は、処理情報の登録および閲覧の権限を表す概念図である。
【0072】
図12を参照すると、横方向に各企業が並べられ縦方向に情報の処理情報の部分が並べられている。企業と処理情報の部分との交点に各企業の権限を示す図形記号が示されている。白丸印は、当該部分の処理情報が当該企業によって登録されたものであることを表している。その企業にとってその部分の処理情報は自身が登録した情報なので閲覧可能である。黒丸印は、当該部分の処理情報は当該企業が登録したものでないが当該企業から閲覧可能であることを表している。
【0073】
図12の例では、CO2排出量の情報については全ての企業P、Q、R、S、Tによって閲覧可能である。一方、部品Bの熱処理および切削加工の情報は、企業Pによって登録されたものである。企業Pだけでなく企業Qも、部品Bに対する熱処理および切削加工の情報を閲覧可能である。また、部品Bのコーティングの情報は、企業Qによって登録されたものである。企業Qだけでなく企業Pも、部品Bに対するコーティングの情報を閲覧可能である。
【0074】
また、改善可能性判定部111は、各処理パターンの環境負荷の中央値および分散を算出するときに、部品属性情報106を参照し、部品属性情報106に基づいて再生処理により生じる環境負荷の値を補正して用いることにしてもよい。例えば、製造日からの経過年数によって再生処理の加工量が異なれば、それだけ環境負荷の発生も異なると想定することができる。また、部品属性情報106に、部品の重量や寸法といったサイズ情報を更に登録することにし、サイズ情報に応じて環境負荷の値を補正して用いることにしてもよい。サイズが大きいほど再生処理にて加工する対象部位の面積が広くなり、それだけ環境負荷の発生も大きくなると想定することができる。
【0075】
なお、上述した本実施形態では、図10にも示したように、全ての処理目的について環境負荷の分析を行うものとしたが、他の例として、選択された指定部品種別と処理目的との組合せの中で環境負荷の合計値が大きいものを優先的に分析の対象としてもよい。例えば、指定部品種別と処理目的との組合せの中で環境負荷の合計値が大きい上位所定個を分析の対象としてもよい。
【0076】
また、上述した本実施形態では、環境負荷の低減の観点で処理パターンに対して優先度を付与することとしたが、他の例として、更にコストを考慮して優先度を付与することにしてもよい。その場合、処理情報103には、再生部品に対して再生処理を実施するのに要したコストを示す情報を更に登録するようにし、改善可能性判定部111は、処理目的あるいは処理目的の組み合わせ毎に、処理パターンに対して環境負荷の中央値と、再生処理に要したコストの中央値とに基づく指標値によって優先度を付与することにしてもよい。例えば、環境負荷に所定の係数を乗算してコストに換算し、再生処理に要した費用のコストと、環境負荷を換算したコストとの合計値を指標値とし、指標値が小さい処理パターンほど優先度が高くなるように優先度付けを行ってもよい。
【0077】
また、上述した本実施形態では、各工程の再生処理にて生じる環境負荷を分析するものとしたが、他の例として、更に、各工程が実施される地理的な場所の間を再生部品を輸送することにより生じた環境負荷を分析の対象に含めることにしてもよい。その場合、処理情報103に登録される環境負荷には、各工程が実施される場所の間を再生部品を輸送することにより生じた環境負荷を含め、改善可能性判定部111は、輸送により生じる環境負荷を含めた処理情報103を基に処理パターンに対する優先度を付与することにすればよい。また、更に、各工程で生じた環境負荷および各工程に要したコストと、各工程の再生処理が実施された場所間の再生部品の輸送により生じた環境負荷および輸送に要したコストとを考慮した指標値により処理パターンに対する優先度を定めることにすればよい。
【0078】
また、上述した本実施形態では、再製造に供された使用済み製品のそれまでの経緯を考慮せずに環境負荷の分析を行っているが、それを考慮することにしてもよい。製品が使用済みに至るまでに部品のメンテナンスが行われている場合がある。環境負荷情報企業間連携システム100は、メンテナンスを実施した企業からメンテナンスにより生じた環境負荷およびメンテナンスに要したコストに関する情報を取得し、メンテナンス履歴情報104として蓄積する。図4の例では、メンテナンス履歴情報104はメンテナンス企業Uから取得されている。
【0079】
改善可能性判定部111は、各処理パターンの環境負荷の中央値および分散を算出するとき、再生の工程における再生処理と同一の処理がメンテナンスにおいて実施されていたら、再生処理の環境負荷にメンテナンスで生じた環境負荷の値を加算して用いることにしてもよい。例えば、メンテナンスでモーターのシャトルに対して切削加工が実施されていたら、そのモーターが再生部品とされる際にシャトルに対する再生処理として切削加工を行う工程で生じた環境負荷に、メンテナンスで実施された切削加工で生じた環境負荷の値を加算することにしてもよい。あるいは、モーターが再生部品とされる際にシャトルに対する再生処理として切削加工を行う工程で生じた環境負荷を、メンテナンスで実施された切削加工で生じた環境負荷の値を基に補正することにしてもよい。
【0080】
以上、本実施形態について述べてきたが、本発明は、これらの実施形態だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、これらの実施形態を組み合わせて使用したり、一部の構成を変更したりしてもよい。
【0081】
また、本実施形態には以下に示す事項が含まれている。ただし、本実施形態に含まれる事項が以下に示すものに限定されることはない。
【0082】
(事項1)
1つ以上の工程を経て再生される再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携システムであって、メモリとプロセッサとを有し、前記メモリは、前記再生製品を再製造したときに取得された、前記再生部品を再生するために前記工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、該再生処理が該当する処理目的を示す情報と、該再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、前記再生製品の再製造を個々に識別可能にする再生識別子と前記再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、前記プロセッサは、分析対象とする部品種別である対象部品種別の指定を受け付け、前記処理情報から、処理目的毎に、前記再生製品の再製造において、前記対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、処理目的毎に、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、前記処理パターンに対する前記優先度に基づく分析結果情報を提示する。これによれば、再生部品を用いて再生製品を再製造する際に生じる環境負荷の観点で好適な処理パターンを提示するので、環境負荷の効果的な低減を支援することができる。
【0083】
(事項2)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記プロセッサは、抽出した処理パターンの中に、前記順列の再生処理が実施されたときに生じた環境負荷の分散が所定の分散閾値よりも大きい処理パターンがあったとき、その処理パターンについて、当該処理パターンと当該処理パターンの前または後に隣接する処理パターンである隣接処理パターンとの関連が一定以上の強さであれば、当該処理パターンと当該隣接処理パターンを結合した新たな処理パターンを作成する。これによれば、一連の再生処理としてひとまとめに扱うことに適した処理パターンを結合するので、適切な単位の処理パターンで環境負荷の効果的な低減を支援することができる。
【0084】
(事項3)
事項2に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記プロセッサは、前記順列の再生処理が実施されたときに生じた環境負荷の分散が前記分散閾値よりも大きい処理パターンについて、当該処理パターンと前記隣接処理パターンとを結合した場合の環境負荷の分散が前記分散閾値以下であれば、前記関連が一定以上の強さであるとして、当該処理パターンと当該隣接処理パターンを結合する。これによれば、環境負荷の分散によって当該処理パターンと隣接処理パターンとの関連の強さを測るので、環境負荷の評価の観点からひとまとめに扱うことに適した処理パターンの結合が可能となる。
【0085】
(事項4)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記処理情報には、前記工程の再生処理を実施した主体を示す情報が更に登録されており、前記プロセッサは、前記主体のそれぞれに対して、前記処理情報における当該主体自身が実施した再生処理に関する部分を閲覧可能にし、前記処理パターンが抽出または作成されると、前記処理パターンに含まれる再生処理のそれぞれの主体に対しては、前記処理情報における前記処理パターンに含まれる他の主体の再生処理に関する部分をも閲覧可能にする。これによれば、処理パターンに含まれる各再生処理の主体に対して他の主体の再生処理の情報を相互に閲覧可能にするので、主体の異なる再生処理にわたる環境負荷の効果的な低減を支援できる。
【0086】
(事項5)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記プロセッサは、前記処理パターンに対して前記環境負荷の代表値が小さいほど高い優先度を付与し、前記分析結果情報として、前記優先度が上位所定個以内の処理パターンを提示する。これによれば、環境負荷が小さくなるような処理パターンによる環境負荷の効果的な低減を支援することができる。
【0087】
(事項6)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記処理情報には、前記再生部品に対して再生処理を実施するのに要したコストを示す情報が更に登録されており、前記プロセッサは、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値と再生処理に要したコストの代表値とに基づく指標値によって優先度を付与する。これによれば、コストを考慮した環境負荷の改善を支援することができる。
【0088】
(事項7)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記処理情報に登録される環境負荷には、前記工程が実施される地理的な場所の間を前記再生部品を輸送することにより生じた環境負荷が含まれる。これによれば、再生部品の輸送により生じる分まで考慮した環境負荷の効果的な低減を支援できる。
【0089】
(事項8)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記プロセッサは、前記再生識別子毎に、前記対象部品種別の再生部品に対する再生処理により生じた環境負荷の合計値を算出し、いずれかの再生識別子に対する合計値が所定の環境負荷合計閾値を超えていた場合に、前記処理パターン毎の環境負荷の分析を開始する。これによれば、再生製品の再製造により生じている環境負荷がある程度高い場合に環境負荷の分析を行うので、高い環境負荷を低減することを支援することができる。
【0090】
(事項9)
事項1に記載の環境負荷情報連携システムにおいて、前記代表値は中央値である。
【0091】
(事項10)
メモリとプロセッサとを有するコンピュータにより、1つ以上の工程を経て再生される再生部品を用いて再生製品を再製造するときに生じる環境負荷の管理を支援する環境負荷情報連携方法であって、前記メモリが、前記再生製品を再製造したときに取得された、前記再生部品を再生するために前記工程のそれぞれにて実施された再生処理を示す情報と、該再生処理が該当する処理目的を示す情報と、該再生処理により生じた環境負荷を示す情報とを、前記再生製品の再製造を個々に識別可能にする再生識別子と前記再生部品の部品種別とに対応付けて蓄積した処理情報を記憶し、前記プロセッサが、分析対象とする部品種別である対象部品種別の指定を受け付け、前記処理情報から、処理目的毎に、前記再生製品の再製造において、前記対象部品種別に該当する再生部品に対して連ねて実施された1つ以上の再生処理の順列を処理パターンとして抽出し、処理目的毎に、前記処理パターンに対して、前記環境負荷の代表値に基づいて優先度を付与し、前記処理パターンに対する前記優先度に基づく分析結果情報を提示する。
【符号の説明】
【0092】
100…環境負荷情報企業間連携システム、101…記憶部、102…データ処理部、103…処理情報、104…メンテナンス履歴情報、105…コード情報、105A…処理コード情報、105B…目的コード情報、106…部品属性情報、107…入力受付部、108…登録部、109…環境負荷分析部、110…処理パターン抽出部、111…改善可能性判定部、112…結果表示部、200…情報処理装置、201…プロセッサ、202…主記憶装置、203…補助記憶装置、204…入力装置、205…出力装置、206…通信装置、500…結果表示画面、501…対象部品選択オブジェクト、502…環境負荷選択オブジェクト、503…表示方法選択オブジェクト、504…詳細設定ボタン、505…加工計画選択オブジェクト、506…追加ボタン、507…実行ボタン、508…比較結果表示領域、509…ダウンロードボタン
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