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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008737
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】洗浄装置、および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 19/00 20060101AFI20250109BHJP
   D06F 35/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
D06F19/00
D06F35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111164
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤森 正成
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
【テーマコード(参考)】
3B168
【Fターム(参考)】
3B168AA22
3B168AB04
3B168AE02
3B168AE05
3B168BA08
3B168BA22
3B168BA42
3B168BA43
3B168BA45
3B168BA48
3B168BA52
3B168FA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、洗浄力を向上させると共に、局所的な部分への洗浄を実行でき、水や電力の使用量を抑制する洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄装置は、洗浄液および洗浄対象物17を収容する洗浄容器25と、洗浄対象物17に波長が350nm~450nmの光を照射する光源12と、洗浄容器25及び光源12を収容する本体ケース200と、を備える。洗浄液は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酸化水素尿素の何れか一つ以上を含むようにした。
【選択図】 図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液および洗浄対象物を収容する洗浄容器と、
前記洗浄対象物に波長が350nm~450nmの光を照射する光源と、
前記洗浄容器及び前記光源を収容する本体ケースと、を備え、
前記洗浄液は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酸化水素尿素の何れか一つ以上を含むことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄装置において、
前記本体ケースには、前記光源からの光を遮光すると共に、前記洗浄容器を支持する仕切りを備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄装置において、
前記洗浄対象物に超音波振動を印加する超音波振動子を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄装置において、
前記超音波振動子は、前記洗浄容器の下部に備えられ、前記仕切りには前記超音波振動子の振動子が貫通する貫通孔を形成したことを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の洗浄装置において、
前記洗浄対象物を前記洗浄容器の底部に固定する固定部を備えたことを洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載の洗浄装置において、
前記光源を保持する保持部材を備え、
前記光源は、前記保持部材の外周の一面に備えられ、
前記固定部は、前記光源が備えられた前記保持部材の一面とは異なる他の面に備えられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄装置において、
前記保持部材は、前記光源が備えられた前記一面が前記洗浄対象物と対向する位置と、前記固定部となる前記他の面が前記洗浄対象物と対向する位置とを取り得るように回転可能に設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載の洗浄装置において、
前記保持部材は、前記洗浄対象物に向かって移動可能に設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項9】
請求項5に記載の洗浄装置において、
前記光源が前記洗浄対象物と対向するように保持する保持部材を備え、
前記固定部は、前記洗浄対象物と対向して前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮る位置と、前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
請求項9に記載の洗浄装置において、
前記固定部は、前記保持部材に回転可能に設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項11】
請求項5に記載の洗浄装置において、
前記光源が前記洗浄対象物と対向するように保持する保持部材を備え、
前記固定部は、前記保持部材に接近して前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮る位置と、前記保持部材から離反して前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように移動可能に設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項12】
請求項5に記載の洗浄装置において、
前記光源が前記洗浄対象物と対向するように保持する保持部材を備え、
前記固定部は、前記洗浄対象物と対向する部分に分割部が設けられ、前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮る位置と、前記光源から前記洗浄対象物へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように分割可能に設けられたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項13】
請求項5に記載の洗浄装置において、
前記光源が前記洗浄対象物と対向するように保持する保持部材を備え、
前記固定部は、前記光源と前記洗浄対象物との間に位置し、
前記固定部には、前記光源を透光させる空間を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項14】
請求項3に記載の洗浄装置において、
前記超音波振動子は、ランジュバン型振動子またはホーン型振動子であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14の何れか一項に記載の洗浄装置において、
前記洗浄液は、前記光源から照射された光によってラジカルを発生することを特徴とする洗浄装置。
【請求項16】
請求項15に記載の洗浄装置において、
前記ラジカルはヒドロキシルラジカルであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項17】
洗浄容器内の洗浄対象物に洗浄液を浸漬する工程と、
前記洗浄対象物に波長が350nm~450nmの光を照射する工程と、を備え、
前記洗浄液は、過酸化水素または過炭酸ナトリウム、もしくは過酸化水素尿素を含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項18】
請求項17に記載の洗浄方法において、
前記洗浄対象物に超音波振動を印加する工程を備えることを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカルによる促進酸化を利用して、衣類等の洗浄対象物を洗浄する、洗浄装置、および、洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、衣類等の繊維製品の洗浄は、洗濯機を使って行われる。洗濯機は、被洗浄物を水や有機溶剤に浸漬し、水や有機溶剤を回転・撹拌することで被洗浄物に付着した汚れを機械的に除去する装置である。こうした洗浄方法における汚れ除去効果の源泉は、液体を機械的に動かすことにより繊維類に動きを伝達し、機械的な力で汚れを繊維から剥離させる機械力である。
【0003】
縦型洗濯機では、衣類等の繊維類を比較的多量の液体に浸漬し、洗濯槽内の液体の回転を利用して繊維類の運動と繊維類同士の接触により汚れを洗浄する。一方、ドラム型洗濯機では比較的少量の液体に繊維類を入れ、ドラムの回転に伴う液体を介した繊維類の運動に加え、繊維類をドラム上方から落下させた衝撃により汚れを落とす効果も加味される。両者の動きに多少の違いはあれ、何れにせよ機械力に起因する洗浄効果を利用している点は共通である。
【0004】
一般的な洗濯機では、機械力として回転力が用いられる。例えば、縦型洗濯機であれば、洗濯槽の下部に設置した攪拌翼や洗濯槽自体をモーターによって回転させることで、洗濯槽内の液体を回転させ、繊維類に機械力を伝達させる。モーター技術の進展に伴いモーターの静音化が進んだとはいえ、モーター本体やインバーター駆動回路、周辺の可動部分からの騒音は大きく、人が寛ぐ部屋の中に設置されるほどには静音化が図られていない。また、装置の体積の大半を占める領域が可動部となり、回転するために装置の振動も避けられない。このため、設置場所が限定されたり、洗濯時間が制限されたりするなどの課題を抱えている。
【0005】
洗浄対象の繊維類は洗濯槽へ投入され、洗剤を用いた洗濯や、複数回の濯ぎを経て洗濯終了となる。この間、洗濯後の脱水や、濯ぎ後の脱水も行われる。このため繊維類は洗濯槽へ投入された状態と最後の脱水が終了した時点でその形態が大きく変化している。引き続いて自動乾燥を行い収納する際や、洗濯後に外干しするために絡まった衣類をほどいたり、ねじれた衣類を解きほぐしたりする必要がある。現在、この作業は人が行うしかなく、脱水以降、もしくは自動乾燥以降の作業を自動化することは難しい。
【0006】
更に、繊維には回転による汚れ除去の過程で折れ、曲げ、引っ張り、擦れなど多様な力が印加され、繊維が損傷する原因となる。こうした損傷の発生と共に繊維の破片が洗濯液の中に拡散し、最終的に洗濯機から排出される。綿や絹などの動植物起因の蛋白質であれば微生物などにより分解可能であるが、ポリエステルなどの合成繊維は分解されない。これらは最終的にマイクロプラスチックとなって海洋に排出される。即ち、現状の洗濯では、汚れ除去に必要とされる以上の機械力が印加されるため、過剰に繊維排出物が生成され、結果としてマイクロプラスチックを環境に排出する原因となっている。
【0007】
また、家庭で用いられる一般的な洗濯機は、汚れの剥離を促進するため水に洗剤を溶かした液体で洗濯を行う。洗剤の主成分は界面活性剤で、アルキル基などの高分子を主鎖とした有機分子で構成される。洗濯後、洗剤は液体と共に洗濯機から排出され、下水を通して処理場まで運ばれる。洗剤は石けん、合成洗剤共に主に生物分解処理により分解処理されるが、その過程で微生物に酸素を送り込む曝気処理を必要とする。下水処理過程において、曝気処理を含む水処理工程は最も電力を消費する過程であり、結果的に洗濯機からの洗剤の排水は電力消費の増大をもたらす。
【0008】
更に、一般的な洗濯機では洗濯対象の繊維類を洗濯槽に完全に入れて洗濯を行う必要がある。このため、繊維類全体が洗濯対象となり、例えば一部に汚れのついた衣類であっても全体を洗浄する必要がある。全体を洗浄するため本来洗浄不要な部分も洗浄しなければならず、洗剤使用量や機械力での損傷による繊維排出量の増加を伴う。仮に汚れの付着した部位とその周辺のみを限定して洗浄することができれば、必要な洗剤量の低減、不要な繊維ダメージの防止、洗濯に係る水量の減少、洗濯や排水の処理に係る電力の低減が可能となる。
【0009】
汚れ量に応じて最適な、高洗浄力で洗濯運転を行うドラム式洗濯機として、例えば特許文献1に記載された技術がある。特許文献1に記載のドラム式洗濯機においては、ドラムを回転駆動するドラム駆動部と、ドラム内の洗濯物の汚れを検知する汚れ検知部と、汚れ検知部の出力を入力し、洗い、すすぎ、脱水の各工程を逐次制御する制御部とを備えている。洗い工程は、ドラム内で洗濯物が張り付かない程度の低速でドラムを回転する攪拌工程と、洗濯物がドラムの内周壁面に張り付いた状態となる高速でドラムを回転させ、洗濯物から遠心力で洗濯水を排出する遠心力洗浄工程を実行する。制御部は、汚れ検知部で検知した汚れに応じて、遠心力洗浄工程におけるドラムの回転数を変化するようにしている。そして、特許文献1では、検知した汚れ量に応じて洗浄力を変えることにより、高洗浄力と低消費電力の両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-52058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のドラム式洗濯機のように、回転力による機械的な洗濯では洗浄可能な汚れの種類に制限があるため、機械的な洗浄で落ちにくい汚れ(例えば、分厚い布にしみ込んだ汚れ)が付着した衣類等を洗濯する場合には、汚れ検知機能により一般的な洗濯時間を超えて長時間の洗濯が継続される恐れがある。また、短時間の洗濯だけで汚れが検知されなくなったとしても、汚れの種別が、機械的な洗浄で落ちにくい油汚れであった場合などには、実際には汚れが落ち切らず残存している可能性がある。即ち、特許文献1では、回転力の限定的な洗浄力では落としきれない汚れが残存してしまう可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、前記課題を解決し、洗浄力を向上させると共に、局所的な部分への洗浄を実行でき、水や電力の使用量を抑制する洗浄装置、及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の一態様の洗浄装置は、洗浄液および洗浄対象物を収容する洗浄容器と、前記洗浄対象物に波長が350nm~450nmの光を照射する光源と、前記洗浄容器及び前記光源を収容する本体ケースと、を備え、前記洗浄液は、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酸化水素尿素の何れか一つ以上を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄装置、および、洗浄方法によれば、機械力の使用を抑えつつ、洗浄対象物に付着した局所的な汚れを短時間で洗浄することができる。
【0015】
上記に記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】実施例1に係る洗浄装置の光照射機構が下方を向いている状態を示す模式図である。
図1B】実施例1に係る洗浄装置の振動伝達面が下方を向いている状態を示す模式図である。
図1C】実施例1に係る洗浄装置の振動伝達面が被洗浄物を固定している状態を示す模式図である。
図2A】洗浄機を上方から見た状態で、ケース上面の仕切り板を透過して見た構造を示す図である。
図2B図2AをIIB-IIB’の位置で断面した断面図である。
図3】実施例1の洗浄装置の制御システムの一例を示すブロック図である。
図4A】実施例3に係る洗浄装置の固定台が光源下方の位置にある状態を示す模式図である。
図4B】実施例3に係る洗浄装置の固定台が光源を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
図5A】実施例4に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮る位置にある状態を示す模式図である。
図5B】実施例4に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
図5C】実施例4の変形例を示す図である。
図6A】実施例5に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮る位置にある状態を示す模式図である。
図6B】実施例5に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
図7A】実施例6に係る洗浄装置の固定台が洗浄対象物を固定しない位置にある状態を示す模式図である。
図7B】実施例6に係る洗浄装置の固定台が洗浄対象物を固定する位置にある状態を示す模式図である。
図7C】実施例6に係る洗浄装置の固定台の構造を示す模式図である。
図8A】実施例7に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
図8B】実施例7に係る洗浄装置の固定台が光源からの光を遮り、かつ、洗浄対象物を固定しない位置にある状態を示す模式図である。
図8C】実施例7に係る洗浄装置の固定台が洗浄対象物を固定する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、局所的な汚れが付着した洗浄対象物17を洗浄するための、本発明の洗浄装置、および、洗浄方法の実施例を説明する。
【実施例0018】
まず、図1Aから図1Cを用いて、本発明の実施例1に係る洗浄装置を説明する。図1Aから図1Cでは、左図に正面から見た図を示し、右図に軸方向から見た図を示している。
【0019】
図1Aは、実施例1に係る洗浄装置の光照射機構が下方を向いている状態を示す模式図である。台11(保持部材)は、光源を保持する役割と、布等の洗浄対象物17を押さえて固定する固定部の役割を兼ねた部位である。台11は、外周の或る一面22に光源12を保持すると共に、ヒートシンクとして光源を冷却する役割を兼ねることができる。台11の異なる他の面には概ね平らな面13を有しており、この面が布等の洗浄対象物17を押さえて固定する役割を果たしている。台11は支持機構14と接続され、接続点18を回転中心として回転する機構を有する。すなわち、台11は、光源12が備えられた一面が洗浄対象物17と対向する位置と、固定部となる他の面(面13)が洗浄対象物17と対向する位置とを取り得るように回転可能に設けられている。
【0020】
支持機構14は、台11と接続されている端部とは反対側の端部が装置筐体あるいは筐体内部の部材などに接続される。台11の鉛直下方には、衣類洗浄に用いる洗浄容器25(図2参照)が配置される。洗浄容器25は洗浄液および洗浄対象物17を収容する。洗浄容器25の底部15には、光源12と反対側の面に超音波振動子16が備えられている。超音波振動子16は、例えばランジュバン型振動子またはホーン型振動子、平板型振動子などを用いる。洗浄対象物17は、光源側の面に配置する。すなわち、洗浄対象物17は、光源12と対向するように洗浄容器25の底部15に配置されている。
【0021】
支持機構14は鉛直方向に伸縮する機構を備えており、台11を一軸方向に上下移動させることができる。
【0022】
図1Bは、実施例1に係る洗浄装置の振動伝達面が下方を向いている状態を示す模式図である。図1Bでは、台11が2つの接続点18をつなぐ軸を中心軸として矢印19で示す方向に回転した状態を示している。この状態で台11が保持する光源12は鉛直下方とは別の方向を向いている。台11は、台11の一面にある概ね平らな面13が鉛直下方に向くよう回転し、支持機構14は鉛直下方に延伸する。
【0023】
図1Cは、実施例1に係る洗浄装置の振動伝達面が被洗浄物を固定している状態を示す模式図である。支持機構14が鉛直下方に延伸すると、台11は矢印20(図1B)で示す方向に移動し、図1Cに示すように洗浄対象物17を押さえ、洗浄容器25の底部15に固定される。すなわち、台11は、洗浄対象物17に向かって移動可能に設けられている。そして、この状態で超音波を用いた洗浄対象物17の洗浄を行う。超音波洗浄では、洗浄容器25を介して洗浄対象物17や洗浄液を超音波により振動させ、洗浄対象物17に付着した汚れを洗浄する。
【0024】
超音波洗浄が終了後は、支持機構14を短縮して台11を矢印21で示す方向に移動し洗浄対象物17の固定を解除する。その後、台11を矢印19で示す方向と逆方向に回転することにより光源12が保持された一面22が鉛直下方を向き、図1Aに示す状態に戻る。そして、この状態で促進酸化(AOP:Advanced Oxidation Process)による洗浄を行う。
【0025】
図2に、図1の洗浄装置を筐体に組み込んだ場合の洗浄機100の一例を示す。本体ケース200には、図1の洗浄装置が収められており、本体ケース200は蓋が開くことにより、内部に洗浄対象物17を収納もしくは挟み込むことができるようになっている。
【0026】
図2Aは、洗浄機を上方から見た状態で、ケース上面の仕切り板を透過して見た構造を示す図である。図2Bは、図2AをIIB-IIB’の位置で断面した断面図である。
【0027】
本体ケース200は、ケース上部23とケース下部24が蝶番28で接続され、ケース上部23が蓋となり開閉する。本体ケース200内には、洗浄容器25が収められており、ケース上部23(蓋)を開けると洗浄容器25が露出するようになっている。ケース下部24には、仕切り26を設け、洗浄容器25を支える構造となっている。仕切り26には、洗浄容器25の下部に備えられた超音波振動子16の振動子が貫通する貫通孔が形成されている。また、仕切り26は金属等で構成され、光源12からの光を遮光するようにしている。
【0028】
本体ケース200のケース下部24の内部27には、洗浄装置を駆動するために必要な機器を収納する。これには超音波振動子16の駆動回路、光源12の駆動回路、支持機構14の駆動回路、台11の回転駆動回路、全体の制御回路などが該当する。
【0029】
洗浄に用いる洗浄液やすすぎに用いる水を自動で供給する場合や、更に洗浄後の液体の回収を行う場合は、必要なポンプと液溜用のタンク、これらの液体の給排水に用いる管やバルブ、タンク駆動回路等も内部27に収納する。ケース上部23とケース下部24には、蝶番28の位置にケース上部23とケース下部24をつなぐ配線類を通す配線収納部29を設けており、電気的な接続を行っている。
【0030】
次に、綿の布に中濃ソースを滴下し、乾燥させたものを洗浄対象物17とする場合の、本実施例の洗浄機による洗浄処理を具体的に説明する。
【0031】
<洗浄対象物17の設置>
まず、ケース上部23を開き、洗浄容器25に洗浄対象物17を収容する。その際、汚れを落としたい部分が、洗浄容器25の中央付近、光源12の鉛直下部に位置するように洗浄対象物17を置く。洗浄容器25の中央付近は光源12に近く洗浄時の光照射量が最大となるため最も汚れが落ちる領域であり、汚れが付いた部分がこの位置に来るように配置することにより、洗浄時間を短縮できるからである。その後、ケース上部23を閉じる。この状態で洗浄対象物17の洗浄準備ができたので、以降、機械力、促進酸化による洗浄を行う。
【0032】
<超音波振動による洗浄処理>
次に、支持機構14が短縮した状態で、図1Bに示すように台11の概ね平らな面が鉛直下側に来るよう台11を回転させる。支持機構14が短縮した状態のままタンクに溜めた水(洗浄液)を、ポンプを介して洗浄容器25に給水する。これにより、洗浄容器25に収容した洗浄対象物17が水(洗浄液)に浸漬する(洗浄容器25内の洗浄対象物17を洗浄液に浸漬する工程)。その後、支持機構14を延伸し、台11の面13で洗浄対象物17を洗浄容器25の底部15に押し付け固定する。台11の面13は、洗浄対象物17を洗浄容器25の底部15に固定する固定部として機能する。
【0033】
ここでは洗浄対象物17を固定せずに洗浄容器25に給水を行った。本実施例では洗浄容器25内に完全に収まる大きさの洗浄対象物を用いているが、この場合、ポンプからの給水速度次第では給水によって生じる水の流れで洗浄対象物が初めに置いた位置からずれてしまう恐れがある。こうしたことを避けるために給水速度を十分に落として給水する方法、給水の際に布を固定する方法、給水後に洗浄対象物を入れる方法などがある。本実施例の構成では、支持機構14を延伸させて洗浄対象物17を洗浄容器25の底部15に押し付けた状態で給水することで洗浄対象物17のずれを抑制することができる。
【0034】
洗浄機100では、洗浄対象物17と水を洗浄容器25に入れ、支持機構14で洗浄対象物17を固定した状態で超音波振動子16に電圧を印加し、超音波振動を発生させる。発生した超音波振動は超音波振動子16が固着された洗浄容器25を伝搬し、容器内の水及び洗浄対象物17に印加される(洗浄対象物17に超音波振動を印加する工程)。洗浄対象物17が台11によって洗浄容器25の底部15に固定されているため、印加された超音波振動は洗浄対象物17へ効率よく伝達される。なお、超音波振動を印加する際、台11は必ずしも洗浄対象物17へ押し付けた状態である必要はなく、完全に離れた状態であっても超音波による洗浄の効果はある。ただし、洗浄対象物17と超音波振動を伝達する媒体(図1では洗浄容器25)の距離は近い方が洗浄の効果は高く、接触している状態が最も洗浄効果が高い。一方、汚れによって超音波洗浄による汚れの落ち具合が異なるため、常に接触した状態である必要はない。例えば細かい粉末が混じった汚れは汚れが液中に分散しやすく、押し付けなくともある程度まで汚れを落とすことができる。他方、油脂の様な分散しにくい汚れの場合は押し付けて振動を効率よく伝達することにより効果的に落とすことができる。
【0035】
超音波洗浄では、超音波振動を印加した状態で1~3分程度の間保持する。本実施例では、超音波振動子に発振周波数55 kHz、出力15Wのボルト締めランジュバン型振動子を用いて超音波振動を印加した。この間、可能であれば台11による洗浄対象物17の押し付ける圧力を変えることにより、洗浄対象物17から離脱した汚れの水中への分散や拡散を促進でき、より効率よく汚れを落とすことができる。本実施例では支持機構14にリニアアクチュエータを用い、台11が洗浄対象物17を固定した状態から一方の支持機構14をそのまま保持し、他方の支持機構を3mm短縮(上方に移動)して数秒間保持し、その後短縮した他方の支持機構14が洗浄対象物17を固定(下方に移動)した状態になるように延伸し、一方の支持機構14を同様に短縮(上方に移動)した状態にして同じ時間保持することを交互に繰り返した。超音波洗浄では、所定の時間、超音波による洗浄処理を行った後、支持機構14を短縮し洗浄対象物17の固定を解除する。
【0036】
<超音波洗浄後の排水処理>
超音波による振動が終わった後、洗浄容器25内の液体を排出する。本実施例では排液のためのポンプ類の設置を省略したため、手動で液体の排出を行う。排液にあたっては、ケース上部23を開き、洗浄対象物17を押さえながら洗浄機100を傾け洗浄容器25内の液体を排出する。その後、清浄な水を洗浄容器25に入れ、排出することを1~数回繰り返すことにより洗浄容器25内及び洗浄対象物17の濯ぎを行い、排水時において洗浄容器25内及び洗浄対象物17に再付着した汚れなどが除去される。併せて洗浄対象物17を固定していた台11の概ね平らな面13の表面についても濯ぐか、もしくは布やティッシュなどで汚れを拭き取っておくとよい。これにより汚れの残存が抑制され、次回の洗浄やこの後行う促進酸化洗浄の際に不要な汚れの混入を防ぐことができ、洗浄効果を高めることができる。
【0037】
上記では超音波振動を印加する際に水(洗浄液)を使用したが、水の代わりに過酸化水素水、過酸化水素を成分として含有する液体(過酸化水素洗浄液)、例えば、容易に入手できる過炭酸ナトリウム、更には過酸化水素尿素を使うこともできる。本実施例では、これらの洗浄液の何れか一つ以上を含むようにしている。過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酸化水素尿素を用いた場合、水を使った場合に比べ、超音波振動を印加したことによる洗浄効果が高まる。
【0038】
<促進酸化による洗浄処理>
次に、促進酸化による洗浄を行う。洗浄対象物17が洗浄容器25に入れられ、汚れを落としたい部分が洗浄容器25の中央付近、光源12の鉛直下部に位置するように置かれている状態でタンクに貯留した過酸化水素洗浄液を、ポンプを介して洗浄容器25へ導入する。これにより、洗浄容器25に収容した洗浄対象物17が過酸化水素洗浄液に浸漬する。なお、本実施例では、過酸化水素洗浄液として、濃度3%の過酸化水素水を用いた。液体の導入に伴う洗浄対象物17のずれについては超音波による洗浄の時と同様の注意を払う。
【0039】
次に、光照射を行う(光を照射する工程)。光照射は、台11を図1Aのように位置させて行う。促進酸化による洗浄処理では、支持機構14が短縮状態であり、光源12が洗浄対象物17に面した位置にあることを確認し、必要であれば台11を回転させ所望の位置に光源12を移動する。光源12から洗浄対象物17に対して、波長365 nmの紫外光を照射する。光照射強度は洗浄対象物17の位置で50~100 mW/cmあれば、通常の汚れに対しては十分である。本実施例では、光照射強度を100 mW/cmに設定した。
【0040】
光源12にLED(Light Emitting Diode)を1つだけ使う場合、洗浄対象物17上での光照射強度は、光源真下が最も高い値となる。洗浄機として洗浄領域を想定し、その領域で光源12から最も遠い位置で必要な光強度となるように光源12の駆動条件を設定する必要がある。1つのLEDでは強度や照射領域が不足する場合は複数のLEDを使えばよい。特に広い面積を均一な強度で照射するためには複数のLEDによる照射システムが必須となる。
【0041】
光源12からの光照射は、洗浄対象物17の汚れの程度や種類に応じて時間を変えることが望ましいが、通常は事前に超音波振動による洗浄を実施しておけば10~15分程度で良い。本実施例では12分間光照射を行った。
【0042】
<促進酸化洗浄後の排水処理>
光照射の終了後、超音波による洗浄の後と同様に洗浄容器内の排水を行う。排水後に濯ぎを実施する場合は単なる水で良い。
【0043】
<本実施例による洗浄の効果>
以上で本実施例による洗浄が終了する。洗浄後、光の当たらない場所で自然乾燥させた後、洗浄の効果を評価した。評価は測色計を用い布の色をLab空間での色座標として求め、汚れ前後と洗浄後の夫々の色空間内の点の距離によって評価した。具体的には汚れが付着する前のきれいな状態での綿布の色、汚れが付着した状態で洗浄前の布の色、洗浄後の布の色に対して夫々色座標を計測し、汚れが付着する前のきれいな状態での綿布の色座標との間の距離ΔE(洗浄前)、ΔE(洗浄後)を求め、洗浄率ηを(式1)で定義し、各布のηを比較した。
【0044】
η=1-Δ(洗浄後)/Δ(洗浄前) ・・・ (式1)
その結果、市販の洗濯機と液体洗剤を用いた場合の洗浄率が64%(η=0.64)であったのに対し、本実施例による洗浄では洗浄率は95%(η=0.95)となり、一般的な洗濯機に比べ高い洗浄効果があることが確認できた。
【0045】
上記では超音波振動による機械力洗浄を実施した後、促進酸化洗浄を行ったが、必ずしもこれらの洗浄を別々に実施することが必要というわけではない。汚れの程度が低い場合や、超音波振動による洗浄で水の中に分散・溶解する汚れの量が少ないか、水の濁りが低い場合には超音波振動による洗浄と促進酸化による洗浄を同時に実施しても良い。この場合、超音波振動による洗浄には水ではなく過酸化水素洗浄液を用いる必要がある。この方式による洗浄は処理を同時に進行できるため、洗浄全体にかかる時間が短くなるメリットがある。一方、汚れがUV光を散乱するような大きさの微粒子で過酸化水素洗浄液中に分散する場合、光の透過率が下がるのでその分光照射時間を長めに取らなければならない。
【0046】
光源12にLEDやレーザーダイオードなどの半導体素子を用いる場合、光照射時間と共に光源12の温度が上昇し光出力が低下する。これは半導体素子を用いない放電管式の光源を使う場合も同様である。このため、光照射時間を決めるには一義的に時間で決定するのではなく光照射量(光照射エネルギー)で決める必要がある。また、半導体素子も使用と共に経時劣化し、単位時間当たりの光照射エネルギーが時間と共に減少する。こうしたことから装置には照射した光量をモニタリングするシステムを組み込んでおき、モニタリング量に応じて時間を調整することが望ましい。
【0047】
<本実施例における洗浄の原理>
次に、本実施例で利用する2種類の洗浄方法の原理について説明する。
【0048】
超音波振動による洗浄は、機械的な振動により洗浄対象物17に付着した汚れを剥離したり、水溶性の汚れであれば水への溶解を促進したりすることにより、洗浄効果が発揮される。特に、汚れ成分や汚れ物質の剥離は、汚れ物質を塊として除去することができ、3次元的な汚れ除去効果がある。一方で、洗浄対象物17が衣類であると、繊維のような細かい構造体の隙間に入り込んだ汚れに対する洗浄効果が低くなる傾向にある。
【0049】
このような特性の超音波振動による洗浄に対し、後述する特性の促進酸化による洗浄方法は、強い酸化力を用いた高い汚れ分解能を用いた洗浄方法であるが、汚れ除去は汚れ表面での分解反応によるものであり2次元的な汚れ除去効果に基づいていると言える。従って、洗浄対象物に分厚く付着した汚れや固体状の汚れに対する汚れ除去には長い時間を必要とする傾向があり、洗浄時間を短くすることが難しい。一方、超音波振動による洗浄は3次元的な汚れ除去効果が期待できるため、洗浄対象物に分厚く付着した汚れや固体状汚れに対して促進酸化洗浄を行う前に予備洗いとして実施しておくと促進酸化洗浄の時間を大幅に短くできるメリットがある。
【0050】
促進酸化洗浄は、洗浄液として光源12からの光の照射によって強い酸化力を有するラジカル分子を発生する物質を使用する。この酸化力の強いラジカルを用いて洗浄対象物17の表面の汚れを酸化分解し洗浄効果を発揮する。このようにラジカルを用いた分解は、促進酸化処理(Advanced Oxidation Process)と呼ばれる。ラジカルを発生する物質としては、例えば過酸化水素水が挙げられ、これを含有する液体であってもよい。例えば、炭酸ナトリウム過酸化水素化物(過炭酸ナトリウム)や過酸化水素尿素等を用いることで、ヒドロキシルラジカルを発生することができる。
【0051】
洗浄容器25に供給する液体の濃度は、洗浄対象物の汚れの程度及び洗浄に費やすことのできる時間に依存するが、過酸化水素水の場合、百分率(w/vol%、以下単に%と表記)で1~3%程度の濃度から、高くても15%以下であればよい。これは、濃度が15%よりも高いと、洗浄対象物を構成する繊維と汚れの種類によって、繊維のダメージや衣類の色落ちが顕著になる場合があるからである。過酸化水素水を含有する液体の場合、液体中の過酸化水素濃度が、前記の過酸化水素水濃度と同程度になるように調整する。
【0052】
光源12の波長は、洗浄液の種類にもよるが、過酸化水素からヒドロキルシラジカルを発生するためには、可視光から紫外線の範囲を選択する。ただし、長波長側の光はヒドロキシルラジカルの生成効率が悪いか、或いは生成することができないため、450nmよりも短波長の波長が望ましい。一方、短波長側はヒドロキシルラジカルの生成効率は高くなるものの洗浄対象物の繊維が受けるダメージも大きくなるため、350nmよりも長波長側が望ましい。汚れの種類によっては350nm近辺の波長であってもダメージが大きい場合があるため、360nmより長い波長がより望ましい。本実施例では、波長が350nm~450nmの光を照射する光源12を用いている。光源12は機械的強度や大きさ、電力効率、寿命の観点から放電管式ランプではなくLEDやLD(レーザーダイオード)が適している。LEDの場合、この波長範囲では365nmから5nm刻みで405nmまでの光源12が容易に入手できる。
【0053】
上記のように超音波振動による洗浄は3次元的な洗浄効果により汚れを除去するが、衣類の様な細かい繊維の集合体が洗浄対象物であると、繊維の間に入り込んだ汚れや繊維と比較的強く結合するような汚れに対しては効果が低くなり、汚れが残存しやすくなる。これは回転式の洗濯機に洗剤などの界面活性剤を用いて洗浄した場合も同様である。
【0054】
これに対し、本実施例の促進酸化洗浄は、機械的な洗浄や界面活性剤を用いた洗浄が不得手な上記の汚れに対しても高い洗浄効果を発揮する。これは、洗浄液が細かい繊維の間にもくまなく浸み込む性質があり、そこに光が照射されればラジカルが生成され、近傍の汚れ物質を酸化し分解するからである。洗浄過程がミクロな領域での酸化反応に基づいており、洗浄液と光照射があれば基本的には酸化反応がどこでも生じ得るからである。一般的にラジカルの寿命は10-6~10-9秒程度の極めて短い時間であると言われている。しかし、紫外光の照射を継続することで継続的にラジカル生成を行うことにより、汚れの分解に関係ないラジカルの消滅反応(水との反応に伴うラジカルの消滅)も含め、多数の反応を起こし汚れを分解することができると考えられる。
【0055】
尚、本実施例では機械力による洗浄として超音波振動による洗浄を組み合わせたが、必ずしも機械力洗浄を超音波振動による洗浄に限定するものではない。例えば一般的な洗濯に用いられる回転式の洗濯機も機械力を洗浄の源泉としており、その効果は既に述べたような3次元的な洗浄効果が期待できるものである。従って、促進酸化洗浄と組み合わせる機械力洗浄に回転式の洗濯機を用いて洗濯しても同様の効果が期待できる。本実施例において超音波振動による洗浄を用いた理由は、回転式の洗濯機は局所的な汚れの処理よりも洗浄対象物全体を洗浄することに向いているのに対し、超音波振動による洗浄方法は局所的な洗浄と親和性が高いためである。
【0056】
<洗浄装置の制御システム>
次に、図3を用いて洗浄機の制御システムについて説明する。図3は、洗浄機の制御システムの機能ブロック図である。
【0057】
図中、実線は電力もしくはアナログ信号を伝達する接続であり、点線は制御信号などのデジタル信号を伝達する接続を示している。なお、水や洗浄液の給排水線は省略している。
【0058】
洗浄機の電源入力部E1は、コンセントや電池から入力された電力を、装置内で使用しやすい電力に変換して各構成要素に給電する。直流・交流のどちらで給電を行うか、給電電圧を何Vにするか等は適宜設計すれば良いが、本実施例の構成では直流で駆動する要素が多いため、直流で給電する方が望ましい。
【0059】
制御部E2は、制御システムの全体を制御するコンピューターであり、洗浄対象物毎の洗浄プログラムや、洗浄条件に応じて各所の制御を行う。入力部E3は、洗浄プログラムの選択や洗浄条件の設定など、使用者が洗浄に際して選択したり、設定すべき事項を指示するために用いる。表示部E4は、洗浄に関する選択肢の表示や設定可能事項の表示、洗浄中の状態表示などに用いる。入力部E3や表示部E4は、タッチパネル式の表示装置であってもよいし、表示と入力を別の装置で担ってもよい。
【0060】
本実施例の洗浄機による洗浄の基本的流れは、上述したように洗浄対象物をセットした後、給水、台の回転による押さえ面の位置設定、台の移動による洗浄対象物の固定、超音波振動による洗浄、台の移動、排水、すすぎ、台の回転による光源位置の設定、過酸化水素洗浄液の給水、光源の点灯と消灯、排水、すすぎで構成されている。
【0061】
そこで、制御部E2は、各要素を順次制御してこの一連の手順を実施する。また、特定の手順の条件を変える場合や特定の条件だけを実施するような洗浄にも対応できるようにいくつかの手順を選べるよう制御部内に複数の洗浄プログラムを準備する。表示部E4と入力部E3を使いこれらの洗浄プログラムの選択や条件設定を行う。
【0062】
洗浄容器25に給水する場合は、制御部E2からの指令を受け、バルブセレクタE5が給水バルブE6を選択し、給水バルブE6を開く。給水バルブE6はバルブ電源から電力が供給される。この状態で水を貯留するタンクに接続されたポンプE17のポンプ電源E7を駆動させることによりポンプE17を動作させ、給水する。ポンプ電源E7には、例えばEnable/Disable選択端子付きのDCDCコンバータを使うことにより、ポンプ電源E7へのデジタル制御信号でポンプE17の動作を制御できる。このときの給水量は、ポンプE17の給水スピードと時間から調整する方法が容易である。また、洗浄容器25には、給水バルブE6に加え、過酸化水素洗浄液等の洗浄液を供給する洗浄液バルブを接続するようにしても良い。
【0063】
ポンプE17は、本実施例では55mm角で厚さが10mm程度の小型ダイアフラムポンプを使用したが、駆動に必要な電圧はポンプ電源にて給電された電力を変換する。ポンプに変換器が内蔵されているものを用いると使用空間の低減や回路実装などの点で利点がある。
【0064】
洗浄容器25から排水する場合、排水用のバルブや配管、ポンプ類が設置されている場合、バルブセレクタE5で排水用の排水バルブE18を選択して排水する。排水バルブE18はバルブ電源から電力が供給される。制御部E2では、供給した液体の量が分かっているので、排水に必要な時間も概ね推測できる。なお、センサなどで洗浄容器25内の残液量を測定する方法を組み入れ、そこから得られる情報で制御する方法もある。本実施例では排水用のバルブ類を省略し、手動で排水したため制御部の該当部分も不要となる。
【0065】
光源12の駆動も同様である。光源12を点灯する手順になったら、制御部E2は、光源電源E8を駆動し光源12に電力を供給する。LEDは通常直流入力で駆動するため、電源入力部E1から直流が入力される設計の場合、ポンプ電源E7と同様に、光源電源E8にもEnable信号入力付きのDCDCコンバータを用いればよい。LEDの点灯に合わせて装置外部に設置したパイロットランプE9を点灯すると紫外光の照射中であることを明示でき安全である。図3では、光源12に入力する電力を分岐しパイロットランプE9を点灯させる構成としている。
【0066】
超音波振動子16の駆動には高周波電圧を印加する必要がある。このため、高周波電源E10では、電源入力部E1からの直流入力を交流に変換し、さらに周波数変換する。超音波振動子16による超音波振動は、使用する洗浄容器25や洗浄液量との兼ね合いもあるが、基本的には10W程度の出力があれば十分なので、なるべく小型の電源構成を選ぶと良い。また、超音波周波数も洗浄用に市販されている10kHz~50kHz程度のものであれば安価で入手しやすい。周波数は前記の範囲に限定するものではなくより高いMHz程度の周波数でもよい。
【0067】
支持機構14には、リニアアクチュエータE11を内蔵することにより、台11の上下方向の位置を制御できるようになる。リニアアクチュエータE11は、アクチュエータ電源から電力が供給される。超音波振動による洗浄時に、台11の面13の洗浄対象物17への押し付け具合を調整することにより汚れを効率よく液体中へ逃がすことができるようになり、洗浄の効率が挙げられることを述べた。リニアアクチュエータE11の利用により、押し付け具合の調整をコンピューターにより自動で制御できるようになる。なお、台11の押し付け具合の調整には押し付けている圧力が分かると制御が容易なため、圧力センサE12を用いるとよい。また、台11を洗浄対象物17から離した状態で保持する際は、台11の位置を確認するために位置センサE13があると良い。これらのセンサから出力されるアナログ信号はコンバータE14を介してデジタル信号に変換され、制御部E2で取り込まれ、台11の位置制御に使用される。
【0068】
台11の回転機構にはサーボ制御式のロータリーアクチュエータE19を用いた。ロータリーアクチュエータE19は、アクチュエータ電源から電力が供給される。サーボ制御により回転位置をデジタル制御できるため、初期設定として回転停止位置を決めておけば制御部E2からは位置の指定だけで停止位置を決定できる。尚、リニアアクチュエータもサーボ機構により制御すればアクチュエータの位置をデジタル制御でき、位置センサはもちろんのこと、圧力センサも省略でき、かつ、制御も容易になる。
【0069】
光センサE15は、光源12の熱による出力変動や経時変化による出力低下の影響を排除するために使用する。光センサE15のアナログ出力をコンバータE16によりデジタル信号に変換し、制御部E2に取り込む。制御部E2は、光源12の点灯時に光センサE15の入力を取り込み、促進酸化洗浄中の光源12の光出力をモニタリングする。光照射エネルギーが所定の値に達したら光源12を止め、促進酸化洗浄を終了する。光センサE15による光出力の取り込みは、光源12からの光を直接取り込む必要は無く、反射光を始め光源12の光に比例するなど相関性の高い間接的な光の取り込みから洗浄対象物17への照射エネルギーを算出してもよい。尚、光量モニタリングをせずとも照射時間の制御だけで洗浄は可能であるが、光センサE15を用いることにより光源12の出力変動を補償し、促進酸化洗浄時の汚れ除去を安定して実施することができる。
【0070】
図3中で、一点鎖線で囲んだ圧力/位置センサや光センサ、給排水に関わるバルブやポンプ等は洗浄に必須の要素ではないが、システムに組み込むことにより洗浄力を確実に発揮できるようになる、洗浄における手間が省けるなどの利点がある。
【0071】
以上で説明したように本実施例の洗浄機によれば、機械力の使用を抑えつつ、洗浄対象物に付着した局所的な汚れを短時間で洗浄することができる。
【実施例0072】
次に、本発明の実施例2に係る洗浄機を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0073】
実施例1では、超音波振動による洗浄と、促進酸化による洗浄を併用したが、本実施例(実施例2)の洗浄機では、促進酸化による洗浄のみを用いて洗浄対象物を洗浄する。
【0074】
上記したように、超音波振動による洗浄は、洗浄対象物の表面に分厚くこびりついた汚れの洗浄に特に有効であり、促進酸化による洗浄は、洗浄対象物の繊維にしみ込んだ汚れの洗浄に特に有効である。従って、洗浄対象物の表面に分厚くこびりついた汚れが少なく、繊維にしみ込んだ汚れが多いような場合は、超音波振動による洗浄を省いても十分な洗浄力が得られる。
【0075】
本実施例のように、超音波振動による洗浄を省略することで、水や電力の消費が抑えられるだけでなく、超音波振動子の駆動時に発生する可聴音の発生が無いため、洗浄時の音の発生がほぼ無く、住環境に悪影響を与えない洗浄が提供できる。
【0076】
<本実施例の効果の実証>
以下、本実施例の洗浄機による洗浄対象物の洗浄結果を説明する。
【0077】
まず、実施例1と同様に汚れの付いた洗浄対象物17を装置内にセットする。本実施例では白い綿布に辣油を滴下して汚れを付けた布を洗浄対象物17とした。次に、過酸化水素洗浄液(濃度3%)を導入する。超音波振動による洗浄は行わず、直ちに促進酸化洗浄を行う。波長365nmのUV光を100mW/cmの強度に設定し、30分間光照射を行う。
【0078】
台11は、図1Aに示すように光源12の鉛直下方に洗浄対象物17が位置するように、事前に回転させておく。所望の量の光照射を実施した後、照射を停止し、濯ぎを行う。その後、洗浄対象物17を取出し乾燥させて洗浄が完了する。
【0079】
光が当たらない状態で自然乾燥した洗浄対象物17の汚れの落ち具合を評価したところ、洗浄率は85%(η=0.85)であった。一方、市販の洗濯機に液体洗剤を用いて洗浄したところ、洗浄率は64%(η=0.64)であり、促進酸化洗浄でも高い洗浄力があることが分かる。尚、促進酸化洗浄の前に超音波振動による洗浄を行い、その後促進酸化洗浄を12分行った場合の洗浄率は95%(η=0.95)であった。促進酸化洗浄のみの洗浄に比べ高い洗浄力であるが、汚れによっては促進酸化洗浄のみでも十分高い洗浄力が得られることが分かる。
【0080】
このように、機械力洗浄と促進酸化洗浄を組み合わせた洗浄、促進酸化のみの洗浄の夫々を汚れに応じて選択して洗浄することができる。機械力洗浄と促進酸化洗浄を組み合わせた洗浄は高い洗浄力と短時間での洗浄が特徴であるのに対し、促進酸化だけの洗浄は、同じく高い洗浄力でありながら洗浄時に発生する音が極めて静かであること、洗浄に使用する水量が低減できることなどの特徴を有する。
【実施例0081】
次に、図4を用いて、本発明の実施例3に係る洗浄装置を説明する。なお、実施例1、2との共通する部分については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0082】
実施例1は、光源12及び洗浄対象物17を固定する面13の両方が台11の表面に配置された構成であったが、本実施例では洗浄対象物17を固定する面を台11とは別に設けている。
【0083】
図4Aは、実施例3に係る洗浄装置の固定部が光源下方の位置にある状態を示す模式図である。図4Bは、実施例3に係る洗浄装置の固定部が光源を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
【0084】
本実施例では、図に示すように洗浄対象物17を固定する面を有する固定部41が台11とは別に設けられており、台11と支持機構14の接続点18を支点に回転する構造を有する。固定部41は、支持機構14の伸縮により図4A中の矢印42で示す鉛直上下方向に移動する。超音波振動による洗浄の際には、この固定部41を洗浄対象物に押し付け、超音波振動子からの振動が洗浄対象物に効率よく伝達するように働く。
【0085】
一方、促進酸化洗浄の際は、図4Bに示すように支持機構14が短縮した状態で接続点18を支点として固定部41を図4B中の矢印43に示す方向に回転させ、光源12を下方に向かって露出させる。この状態では、光源12からの光が遮られることなく洗浄対象物に照射できるようになる。光照射後は43で示す方向と逆方向に回転させておくことにより、洗浄対象物の出し入れの際などにおける意図しない光源12への接触などを避けることが出来る。すなわち、固定部41は、洗浄対象物17と対向して光源12から洗浄対象物17へ照射される光を遮る位置と、光源12から洗浄対象物17へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように台11に回転可能に設けられている。
【0086】
尚、図では固定部41と台11の距離を比較的近くに描いているが、この距離と洗浄容器に入れる液体の量によっては固定部41を洗浄対象物に押し付けた状態で光源12や台11も液体に触れたり浸漬した状態になり得るため、これを避けるよう固定部41と台11の距離設定には注意が必要である。また、図では固定部41の洗浄対象物を押さえる面の厚みを比較的薄く描いているが、固定部と布が接する面と反対側の面に液体が侵入すると、本来避けられる部分にも汚れが付着することになるため、この面側に液体が侵入しないような厚みとするか外周に枠をつけるなどにより、液体の侵入を防ぐことが望ましい。
【0087】
ここでは固定部41が台11と共に支持機構14に保持される構成としたが、必ずしもこの構成である必要は無い。本実施例の構成では台11は可動にする必要が無いため、移動機構の無い固定ジグを別途設け、それによってケース内に固定し、可動部分である固定部41のみを伸縮機構のある支持機構14で保持してもよい。また、固定部41の回転機構は接続点18に回転軸を持つロータリーアクチュエータを台11内に設置してもよいが、支持機構14に沿ってベルト、リング状のゴムやチェーンを配置し、接続点18から離れた位置に設置した回転機構の動力を伝達してもよい。前述の様に台11を移動機構の無いジグに固定する場合はこうした動力伝達機構を用いるか、接続点18に直接ロータリーアクチュエータを取り付けるなどすればよい。
【0088】
この方式は固定部41を取り外しし易い構成が可能となるため、固定部41の清掃が容易になる利点がある。また、台11が回転しないため、光源12の配線を動かす必要がないこと、台11を独立して移動機構の無い治具に取り付けることにより支持機構に求められるトルクを小さく抑えられること、熱伝達を大きくする構造をとり易いため、光源で発生する熱の放熱が容易になることも利点である。
【実施例0089】
次に、図5を用いて、本発明の実施例4に係る洗浄装置を説明する。なお、実施例1乃至3との共通する部分については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0090】
図5Aは、実施例4に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮る位置にある状態を示す模式図である。図5Bは、実施例4に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
【0091】
本実施例では、固定部51が矢印52で示す鉛直方向に上下する2方向と、矢印53で示す鉛直方向と直交する一軸方向に左右する2方向に可動出来るようになっている。
【0092】
固定部51は、図5Aに示すように光源12の下側に押さえ板がある状態で洗浄容器の底部15の方向に移動して洗浄対象物を固定する。この状態で超音波振動による洗浄を行う。洗浄後、固定部51は鉛直上方に移動し固定を解除した後、光源12が洗浄対象物に対し露出するように矢印53にて示す左向き方向に移動させる。移動後の状態が図5Bであり、光源12が下方に向けて露出する。この状態で光源12により光照射を行い、促進酸化洗浄を実施する。その後、固定部51を図5Aに示す元に位置に戻す。すなわち、固定部51は、台11に接近して光源12から洗浄対象物17へ照射される光を遮る位置と、台11から離反して光源12から洗浄対象物17へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように移動可能に設けられている。
【0093】
固定部51は、実施例4と同様に洗浄対象物を固定する板の光源側面に液体が回り込まないように、固定する板の厚みを調整するか、固定する板の解放された端部の周囲に仕切りを付けるなどすることが望ましい。
【0094】
この方法は移動に回転機構が不要で直線方向の移動のみで構成でき、駆動部分の部品を共通化したり制御部の駆動回路を共有できる利点がある。尚、固定部51の鉛直部分、洗浄対象物を固定する板を支える部分について、図5では板状の部品で表現しているが、必ずしも板状である必要は無く、支柱などを組み合わせて骨格で支えるような構造でも良い。この場合、可動部の軽量化が図れるメリットがある。本実施例の構成は固定部51が平行移動する構造のため、他の実施例に比べ広い空間を必要とする。しかし、実際の洗浄機は衣類などの洗浄が対象であり、洗浄容器の大きさも本実施例の構成に比べ大きくなることから問題はない。
〔変形例〕
図5Cは、実施例4の変形例を示す図である。変形例では、固定部51に複数の回動軸54,55を備えている。固定部51は、鉛直方向に向かって上下する。
【0095】
固定部51が下方に位置する状態においては、固定部51の押さえ板(第1押さえ板51a、第2押さえ板51b)が水平方向に沿うようにして光源12の下側に位置し、洗浄容器25の底部15の方向に移動して洗浄対象物を固定する。
【0096】
固定部51が上方に移動すると、第1押さえ板51aが回動軸54,55を支点として水平状態から鉛直方向に向かうように折れ曲がる。さらに固定部51が上方に移動すると、第2押さえ板51bが回動軸55を支点として水平状態から鉛直方向に向かうように折れ曲がる。そして、第1押さえ板51aと第2押さえ板51bが鉛直方向に沿うように直線状となり、光源12が下方に向けて露出する。この状態で光源12により光照射を行い、促進酸化洗浄を実施する。
【0097】
変形例では、複数の回動軸54,55を設け、固定部51を上下方向に移動することにより、第1押さえ板51a、第2押さえ板51bを水平方向に沿う位置から鉛直方向に沿う位置、あるいは鉛直方向に沿う位置から水平方向に沿う位置に変更できるので、実施例4に比べ小さい空間で衣類の洗浄ができ、洗浄装置を小型化できる。
【実施例0098】
次に、図6を用いて、本発明の実施例5に係る洗浄装置を説明する。なお、実施例1乃至4との共通する部分については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0099】
図6Aは、実施例5に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮る位置にある状態を示す模式図である。図6Bは、実施例5に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。
【0100】
本実施例の固定部61は、第1固定部61aと第2固定部61bの2つから構成されている。図6Aに示す状態では、第1固定部61aと第2固定部61bが密着しており、この状態において矢印62で示す鉛直方向上下に固定部61を移動させる。
【0101】
超音波振動による洗浄を行う場合は、固定部61を洗浄容器25の底部15方向に移動し、洗浄対象物を固定する。洗浄後は鉛直上方に移動させる。その後図6Bに示すように、第1固定部61a、第2固定部61bを夫々矢印63a、63bの方向に動作させて第1固定部61a、第2固定部61bを分割し、光源12を洗浄対象物に対して露出させる。その後、光源12を点灯し促進酸化洗浄を行う。すなわち、固定部61は、洗浄対象物17と対向する部分に分割部が設けられ、光源12から洗浄対象物へ照射される光を遮る位置と、光源12から洗浄対象物17へ照射される光を遮らない位置とを取り得るように分割可能に設けられている。
【0102】
本実施例においても固定部61の光源側面に液体が回り込まないようにする工夫をすることが望ましい。また、分割する固定部の側面(光源に面していない面)の構成を板状もしくは骨格状にする選択肢があることは実施例4と同様である。
【0103】
本実施例の構成は移動部位が増えるものの、移動物の移動範囲が狭まる点や、固定部側面を板状物で構成した場合に光源のカバーとして働くため、アクシデントによる光源12へのダメージを防げる利点がある。
【実施例0104】
次に、図7を用いて、本発明の実施例6に係る洗浄装置を説明する。なお、実施例1乃至5との共通する部分については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0105】
図7Aは、実施例6に係る洗浄装置の固定部が洗浄対象物を固定しない位置にある状態を示す模式図である。図7Bは、実施例6に係る洗浄装置の固定部が洗浄対象物を固定する位置にある状態を示す模式図である。図7Cは、実施例6に係る洗浄装置の固定部の構造を示す模式図である。本実施例では、固定部74が洗浄対象物を固定する面に空間を持つ構造としている。
【0106】
図7Aの支持機構71は、台11や固定部74を支持する役割のみで短縮などの可動機構を持っていない。固定部74は、軸72により支持機構71と接続され、軸72は支持機構71をピストンガイドとして上下にスライドできるように保持される。台11は支持機構71との接続点を回転軸とする回転部73を有する。回転部73の外周上にはクランク76が接続されており、クランク76のもう一端は軸72に接続される。
【0107】
回転部73が回転するとクランク76が移動し、回転の方向に応じて固定部74が鉛直上方もしくは下方に移動する。回転部73が矢印77で示す方向に回転することにより固定部74が下方に移動し、図7Bに示すように洗浄対象物が洗浄容器の底部15に固定される。この状態で超音波振動を用いた洗浄を行う。このように本実施例は回転運動のみで固定部74を図7Bの矢印78に示すような鉛直上下方向の運動を実現することが出来、機構が単純で構成部品や移動機構に必要なスペースが低減される利点がある。
【0108】
固定部74は、図7Cに示すように梁74aと枠74bにより構成されており、これらにより囲まれる領域75は光源12を透光させる空間となる。このため、光源12からの光は固定部74の位置に関わらず概ね直接洗浄対象物に照射される。超音波による洗浄後、固定部74は固定したままの位置で促進酸化洗浄を行ってもよい。この場合、梁と枠の部分には照射光が当たらないため、望ましくは固定部74を鉛直上方に移動しておくことが望ましい。
【0109】
領域75に光を通しやすい網を張っておくことにより、洗浄対象物が洗浄容器25の底部15に押し付けられる程度が向上し、より洗浄力が発揮される利点がある。一方で光照射量は減少するため、照射時間を長くとるなどの対策が必要となる可能性がある。
【0110】
上記の実施例1~5では例として光源が3つの構成を示したが、光源はより多い場合、逆に少ない場合の両方とも同様の構成が可能である。光源が少ない場合は固定部の平行移動を機構に含む例では回転による移動で代用することもできる。
【0111】
また、台11もしくは固定部が回転する機構を有する場合、促進酸化洗浄の際に台11を僅かに回転させることにより光照射範囲を大きくとることが出来るようになり、比較的簡便な方法で洗浄範囲を広げることが出来る。
【実施例0112】
次に、図8を用いて、本発明の実施例7に係る洗浄装置を説明する。なお、実施例1乃至6との共通する部分については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0113】
図8Aは、実施例7に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮らない位置にある状態を示す模式図である。図8Bは、実施例7に係る洗浄装置の固定部が光源からの光を遮り、かつ、洗浄対象物を固定しない位置にある状態を示す模式図である。図8Cは、実施例7に係る洗浄装置の固定部が洗浄対象物を固定する状態を示す模式図である。
【0114】
本実施例では回転機構を用いて固定部82の回転移動と洗浄対象物を押さえる鉛直上下方向の移動を行う例についての説明を行う。
【0115】
図8(A)は固定部82が光源の光を遮らない位置に退避した状態を示している。固定部82は軸84と接続されており、軸84は支持機構83を介して台81両端にある回転部85に接続されている。支持機構83はピストンガイドを兼ねており、軸84がピストンガイドにはめ込まれたピストンとして働く。ただし、ピストンがピストンガイドに嵌るのは両者が一直線上に位置した場合のみで、それ以外の位置ではピストンはガイドの端部で回転自由度を有する形でガイドに緩く固定される。回転部85にはクランク86が接続されており、クランク86のもう一端は軸84の端部に接続される。
【0116】
図8Aの右図の矢印87で示す回転方向のうち、反時計回り方向に回転部85を回転させると、クランク86が回転部85の外周と同期して回転運動を軸84に伝達する。この回転力により固定部82は同じく反時計回り方向に回転する。固定部82が台81の鉛直下部まで移動した状態が図8Bである。この状態で軸84は支持機構83と一直線上に位置し、ピストン(軸84)がガイドとなる支持機構83の方向に動けるようになる。
【0117】
回転部85を更に回転させるとクランクを介して運動がピストンに伝達され、ピストンはガイド(支持機構83)に沿って鉛直下方へ移動し、最終的に図8Cに示すように洗浄対象物を固定する位置に移動する。ガイドの短軸方向(幅方向)の片側は回転範囲を規定するようにガイドの壁をなくす、もしくは低くしておき、反対側の壁は軸が回転運動から直線運動に変わり、回転運動を行えないように壁を設けておくと良い。回転部85を逆方向に回転することにより固定部82の移動は上記と逆の運動を行うことになり、洗浄対象物の固定を解除し鉛直上方に移動後回転し、台81の下部に固定された光源から発せられる光が洗浄対象物へ照射されるのを妨げない図8Aに示す位置まで移動する。
【0118】
上記のようにして回転部85の回転運動のみで固定部82の回転による退避と直線移動による洗浄対象物の固定が実現できる。図8Cの状態で超音波振動による洗浄を行い、図8Aに示す位置で促進酸化洗浄を行えばよい。
【0119】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0120】
11…台、12…光源、13…面、14…支持機構、15…底部、16…超音波振動子、17…洗浄対象物、18…接続点、19…矢印、20…矢印、21…矢印、22…一面、23…ケース上部、24…ケース下部、25…洗浄容器、26…仕切り、27…内部、28…蝶番、29…配線収納部、41…固定部、42…矢印、43…矢印、51…固定部、51a…第1押さえ板、51b…第2押さえ板、52…矢印、53…矢印、61…固定部、61a…第1固定部、61b…第2固定部、62…矢印、63a…矢印、63b…矢印、71…支持機構、72…軸、73…回転部、74…固定部、74a…梁、74b…枠、75…領域、76…クランク、77…矢印、78…矢印、81…台、82…固定部、83…支持機構、84…軸、85…回転部、86…クランク、87…矢印、100…洗浄機、200…本体ケース
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C