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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025087583
(43)【公開日】2025-06-10
(54)【発明の名称】水性被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/02 20060101AFI20250603BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20250603BHJP
【FI】
C09D5/02
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174193
(22)【出願日】2024-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2023201227
(32)【優先日】2023-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024058571
(32)【優先日】2024-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】太田 奈津紀
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕司
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG121
4J038CG171
4J038DG022
4J038DG292
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA03
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA05
4J038NA09
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐汚染性とともに耐割れ性に優れる水性被覆材を提供する。
【解決手段】本発明の水性被覆材は、結合剤として、特定粒子径、特定ガラス転移温度を有する3層構造合成樹脂エマルションを用いることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルションを結合剤とする水性被覆材であって、
該合成樹脂エマルションは、
内層のガラス転移温度が35℃超120℃以下、
中間層のガラス転移温度が-10℃超45℃以下、
外層のガラス転移温度が-60℃以上10℃以下であり、
内層のガラス転移温度と中間層のガラス転移温度の差(内層Tg-中間層Tg)が、35℃以上であり、
中間層のガラス転移温度と外層のガラス転移温度の差(中間層Tg-外層Tg)が、-10℃超35℃未満であり、
平均粒子径が50nm以上300nm以下の多層構造合成樹脂エマルションであることを特徴とする水性被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性とともに耐割れ性に優れる水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木構造物に使用する被覆材においては、無公害性や安全性を考慮し、有機溶剤を溶媒とする溶剤型から、水を溶媒とする水性型への転換が図られている。
【0003】
水性型の被覆材としては、例えば、合成樹脂エマルションを結合剤とする技術があり、近年では、多層構造型の合成樹脂エマルションを採用し溶剤型に匹敵する塗膜性能を有するものも登場している。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-97708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1では、内層のガラス転移温度が5~60℃、外層のガラス転移温度が50~100℃である2層構造型の合成樹脂エマルションが採用され、耐汚染性、弾性適性の向上が図られている。しかし、上記の合成樹脂エマルションでは、より高度な弾性適性を得ることは難しい場合があるなど、2層構造型の合成樹脂エマルションでは、耐汚染性、耐割れ性等の物性向上化の点で限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために鋭意検討を行った結果、結合剤として、特定のガラス転移温度、特定の粒子径を有する3層構造型の合成樹脂エマルションを採用することで、優れた耐汚染性、優れた耐割れ性を実現させることに成功し、本発明を完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.合成樹脂エマルションを結合剤とする水性被覆材であって、
該合成樹脂エマルションは、
内層のガラス転移温度が35℃超120℃以下、
中間層のガラス転移温度が-10℃超45℃以下、
外層のガラス転移温度が-60℃以上10℃以下であり、
内層のガラス転移温度と中間層のガラス転移温度の差(内層Tg-中間層Tg)が、35℃以上であり、
中間層のガラス転移温度と外層のガラス転移温度の差(中間層Tg-外層Tg)が、-10℃超35℃未満であり、
平均粒子径が50nm以上300nm以下の多層構造合成樹脂エマルションであることを特徴とする水性被覆材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性被覆材は、優れた耐汚染性とともに、優れた耐割れ性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明は、合成樹脂エマルションを結合剤とする水性被覆材であって、
該合成樹脂エマルションは、
内層のガラス転移温度が35℃超120℃以下(好ましくは40℃以上110℃以下、さらに好ましくは45℃以上100℃以下)、
中間層のガラス転移温度が-10℃超45℃以下(好ましくは-5℃以上35℃以下、さらに好ましくは0℃以上25℃以下)、
外層のガラス転移温度が-60℃以上10℃以下(好ましくは-55℃以上5℃以下、さらに好ましくは-50℃以上0℃以下)であり、
内層のガラス転移温度と中間層のガラス転移温度の差(内層Tg-中間層Tg)が、35℃以上(好ましくは40℃以上130℃以下、さらに好ましくは45℃以上110℃以下)であり、
中間層のガラス転移温度と外層のガラス転移温度の差(中間層Tg-外層Tg)が、-10℃超35℃未満(好ましくは-5℃以上30℃以下、さらに好ましくは0℃超25℃以下)、
平均粒子径が、50nm以上300nm以下(好ましくは50nm以上300nm未満、さらに好ましくは70nm以上250nm以下)の多層構造合成樹脂エマルションであることを特徴とする。
【0011】
本発明の合成樹脂エマルションは、外層と内層の間に中間層を設け、内層と中間層のガラス転移温度差、中間層と外層のガラス転移温度差を設定することによって、優れた耐汚染性と耐割れ性の両立が可能となるものである。
【0012】
また、外層、中間層及び内層のトータルのガラス転移温度は、0℃以上40℃以下(さらには5℃以上35℃以下)であることが好ましい。
【0013】
なお、各層のガラス転移温度は、FOXの計算式より求められる値である。
【0014】
また、本発明の合成樹脂エマルションの平均粒子径は、50nm以上300nm以下であり、
平均粒子径が小さすぎる場合は、各ガラス転移温度による上記効果が得られにくく、製造上現実的でない。平均粒子径が大きすぎる場合は、成膜時及び成膜化後に、ガラス転移温度の差によりムラが目立つ場合があり、成膜物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0015】
なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。具体的には、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-550、株式会社堀場製作所)を用いて測定した値であり、測定温度は25℃である。
【0016】
また、本発明の合成樹脂エマルションの外層、中間層、内層の樹脂構成比率は、内層の樹脂構成比率が合成樹脂エマルション全体に対し10質量%以上60質量%以下(好ましくは15質量%以上55質量%以下)、中間層の樹脂構成比率が合成樹脂エマルション全体に対し5質量%以上50質量%以下(好ましくは10質量%以上45質量%以下)、外層の樹脂構成比率が合成樹脂エマルション全体に対し10質量%以上50質量%以下(好ましくは15質量%以上45質量%以下)であることが好ましい。
なお、本発明では、合成樹脂エマルションの最外層の1層を外層とし、最内層の1層を内層とし、その他の中間に存在する層を中間層とする。即ち、中間に存在する層が2層以上である場合は、それらをすべて合算して中間層とする。
【0017】
本発明の合成樹脂エマルションは、各種単量体を公知の方法で重合することによって製造することができる。
例えば、各種単量体と、必要に応じ各種添加剤を混合し、通常知られる重合法(乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等)で3段階重合することにより得ることができる。また、3段階重合に限定されるものではなく、1段階、2段階の重合、あるいは多段階の重合、また、滴下重合、フィード重合等の方法を用いることもできる。
また重合温度は、特に限定されないが、20℃から90℃程度であればよく、重合時間は、特に限定されないが、1時間から24時間程度であればよい。
【0018】
重合の際に使用する添加剤としては、例えば、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等が挙げられ、各種重合法、目的に応じ、必要量添加すればよい。
【0019】
単量体として、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有単量体、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1-メチル-4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-メチル-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-メチル-8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、7-メチル-8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9-ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクロイルピロリジン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリルアミドグリコール酸、アクリルアミドグリコール酸メチル、ジメトキシヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド基含有単量体、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、t-アミル(メタ)アクリレート、オキチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、トリプロピルメチル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルメチル(メタ)アクリレート、トリブチルメチル(メタ)アクリレート、トリイソブチルメチル(メタ)アクリレート、トリt-ブチルメチル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有単量体、
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有単量体、
(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のアルキレングリコール鎖含有単量体、
ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N-〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4-〔N,N-ジメチルアミノ〕スチレン、4-〔N,N-ジエチルアミノ〕スチレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体、
グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体、
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有単量体、
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体、
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体、
ビニルオキサゾリン、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-プロペニル2-オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体、
プロピレン-1,3-ジヒドラジン及びブチレン-1,4-ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有単量体、
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のアセトアセトキシル基含有単量体、
N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有単量体、
4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1-メチルカルバモイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトニルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のピペリジル基含有単量体、
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体、
スチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系単量体、
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有単量体、
2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-{(メタ)アクリロキシ-エトキシ}ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-{(メタ)アクリロキシ-ジエトキシ}ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-{(メタ)アクリロキシ-トリエトキシ}ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系単量体、
2-{2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロキシエチルフェニル}-2H-ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロキシエチル-3-t-ブチルフェニル}-2H-ベンゾトリアゾール、3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-{3’-(2’’-ベンゾトリアゾール)-4-ヒドロキシ-5-t-ブチル}フェニルプロピオネート等のベンゾトリアゾール系単量体、
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他の単量体、
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
本発明では、特に、カルボキシル基含有単量体、アルキル基含有単量体、シクロアルキル基含有単量体、芳香族ビニル系単量体、アルコキシシリル基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体を用いることによって、耐汚染性、耐割れ性の向上を図ることができ、好ましい。
特に、シクロアルキル基含有単量体、芳香族ビニル系単量体、アルコキシシリル基含有単量体から選ばれる一種以上を用いる場合、耐汚染性の向上を図ることができ、好ましい。
また、カルボキシル基含有単量体を用いる場合、さらに後述する架橋剤を用いることにより、耐汚染性の向上、さらに耐候性、耐水性の向上を図ることができ、好ましい。
また、アミド基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体を用いることによって、耐割れ性、顔料混和性、貯蔵安定性、光沢性の向上を図ることができ、好ましい。
【0020】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、反応性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウリン酸アンモニウム塩、ステアリン酸ナトリウム塩等の脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)スルホン酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級~第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤、
また、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンプロペニルアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンプロペニルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルオキシアルキルアルコキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリルオキシアルキルアルコキシアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリルオキシアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル、アルキルアリルスルホコハク酸エステル塩、アルキルプロペニルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンスルホン酸塩等の反応性乳化剤、具体的には、エレミノールJS-20(三洋化成工業株式会社製)、エレミノールRS-30(三洋化成工業株式会社製)、アクアロンKH-05(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンKH-10(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンAR-10(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンAR-20(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンAR-30(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンBC-10(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンBC-20(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンBC-3025(第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープSR-10(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープSR-20(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープSR-3025(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープSE-10N(株式会社ADEKA製)、アントックスMS-60(日本乳化剤株式会社製)、ラテムルPD-104(花王株式会社製)、ラテムルPD-105(花王株式会社製)、アクアロンKN-10(第一工業製薬株式会社製)アクアロンKN-20(第一工業製薬株式会社製)アクアロンKN-30(第一工業製薬株式会社製)アクアロンKN-5065(第一工業製薬株式会社製)アクアロンAN-10(第一工業製薬株式会社製)アクアロンAN-20(第一工業製薬株式会社製)アクアロンAN-30(第一工業製薬株式会社製)アクアロンAN-5065(第一工業製薬株式会社製)アクアロンRN-20(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンRN-30(第一工業製薬株式会社製)、アクアロンRN-50(第一工業製薬株式会社製)、アデカリアソープER-10(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープER-20(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープER-30(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープER-40(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープNE-10(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープNE-20(株式会社ADEKA製)、アデカリアソープNE-30(株式会社ADEKA製)、ラテムルPD-420(花王株式会社製)、ラテムルPD-430(花王株式会社製)、ラテムルPD-450(花王株式会社製)等の反応性乳化剤等が挙げられる。
本発明では、特に耐候性、耐水性等の面から反応性乳化剤の使用が好ましい。
【0021】
開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の過酸化系開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
【0022】
本発明の水性被覆材は、上記合成樹脂エマルションを結合剤とするもので、上述の成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば、水、溶剤等の分散媒、着色剤、紫外線吸収剤、架橋剤、骨材、分散剤、ゲル化剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、増粘剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、表面調整剤、湿潤剤、pH調整剤、繊維類、酸化防止剤、硬化触媒、艶消し剤、香料、光安定剤、光触媒、難燃剤等が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、例えば、着色顔料、着色骨材、着色樹脂粒子等が挙げられる。
【0024】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、酸化第二鉄(べんがら)、モリブデートオレンジ、黄色酸化鉄、チタンイエロー、群青、紺青、コバルトブルー、コバルトグリーン、鉄クロム複合酸化物、マンガンビスマス複合酸化物、マンガンイットリウム複合酸化物、マンガン鉄コバルト複合酸化物等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンツイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、メタリック顔料等の機能性顔料、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、陶土、チャイナクレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪石粉、珪藻土等の体質顔料、また、パール顔料、アルミニウム顔料、メタリック顔料、蓄光顔料、蛍光顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0025】
着色骨材としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒、雲母、タルク、クレー、珪藻土、貝殻片、珊瑚片、植物片、木材片等の各種骨材、また、このような各種骨材の表面を、例えば顔料、染料、釉薬等で着色コーティングしたもの等も挙げられる。
【0026】
着色樹脂粒子は、例えば、上記着色顔料、着色骨材と合成樹脂等を含むゲル状あるいは固形状の粒子であり、合成樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂・酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂から形成されたもの等が挙げられる。
【0027】
このような着色剤の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上2000質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上1500質量部以下である。
着色剤は、1種または2種以上を用いることができ、また、1色または2色以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、特に、シュウ酸アニリドまたはその誘導体を配合することが好ましく、耐候性、耐汚染性の向上を図ることができる。特に、合成樹脂エマルションを構成する単量体として、シクロアルキル基含有単量体及び/または芳香族ビニル系単量体を含む場合、シュウ酸アニリドまたはその誘導体を組み合わせることでより優れた耐候性、耐汚染性を発揮することができる。
このような紫外線吸収剤は、合成樹脂エマルションの製造中に上記単量体とともに混合することもできる。合成樹脂エマルションの製造中に紫外線吸収剤を混合することによって、より優れた耐候性、耐汚染性を発揮することができる。
【0029】
このような紫外線吸収剤の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。
【0030】
架橋剤としては、例えば、ヒドラジノ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、アミノ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、シラノール基含有化合物、金属錯体等が挙げられ、本発明では、特に、カルボジイミド基含有化合物を含むことが好ましい。カルボジイミド基含有化合物は、特に、合成樹脂エマルションを構成する単量体として、カルボキシル基を有する単量体を含む場合、カルボジイミド基とカルボキシル基との架橋により、強固な塗膜を形成し、優れた耐汚染性、耐割れ性を発揮することができる。
このような架橋剤は、合成樹脂エマルションの製造中に上記単量体とともに混合することもできる。
また本発明では、このような架橋構造中に、上記紫外線吸収剤を取り込むことによって、耐汚染性、さらには耐候性、耐水性に優れる塗膜を形成することができる。
【0031】
カルボジイミド基含有化合物としては、カルボジイミド基(-N=C=N-)、またはその互変異性であるシアナミド基(NC-NH-)を含有する化合物で、ジイソシアネート化合物を原料として得ることができる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
また、カルボジイミド基含有化合物は、一部または全部のイソシアネート基が、該イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物で変性されたものでもよい。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、これらのうち適宜選択して使用することができる。
本発明では、特に、アルキレングリコール、アルキレングリコールアルキルエーテル等のグリコール類を用いることが好ましい。
【0032】
このような架橋剤の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。
【0033】
本発明における水性被覆材は、主に、上塗材、仕上材、保護材等として好適に使用することができ、1回または2回以上の塗り重ねによって仕上げることができ、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、ALC、石膏ボード、パーライト板、タイル、ガラス板、木質板、プラスチック板、金属板等の各種基材に適用することができる。
また、これら基材として、何らかの表面処理(フィラー処理、パテ処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)、あるいは、下塗材、中塗材が施されたものや、既に塗膜が形成された既存塗膜にも適用することができる。
【0034】
塗装方法としては、例えば、刷毛塗装、コテ塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ガン塗装等、種々の方法を採用することができる。塗装時の塗付け量は、1回の塗装当たり、好ましくは0.03から8.0kg/m、より好ましくは0.05から6.0kg/mである。また、一旦塗装を行い、その塗膜が乾燥した後に、次の塗装(重ね塗り)を行うことができる。乾燥温度は、好ましくは-10から50℃、より好ましくは-5から40℃である。
【実施例0035】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、本発明は、ここでの実施例に制限されるものではない。
【0036】
(実施例1~9、比較例1~8)
下記に示す単量体成分を用い、常法の3段階重合により、内層、中間層、外層を有する3層構造合成樹脂エマルション1~17(固形分50質量%)を得た。
なお、内層に使用した単量体は、メチルメタクリレート(ガラス転移温度:105℃)、スチレン(ガラス転移温度:100℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(ガラス転移温度:-70℃)、シクロヘキシルメタクリレート(ガラス転移温度:83℃)、中間層に使用した単量体は、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、外層に使用した単量体は、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート(ガラス転移温度:-56℃)、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸(ガラス転移温度:95℃)である。また、乳化剤は、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルアンモニウム塩、開始剤は、過硫酸アンモニウムを使用した。なお、上記単量体の混合比率を調整し、各内層、中間層、外層のガラス転移温度を設計した。ガラス転移温度は、表1に示す。
さらに、各3層構造合成樹脂エマルション(固形分50質量%)100質量部、酸化チタン60質量部、重質炭酸カルシウム60質量部、水100質量部、添加剤(増粘剤、造膜助剤、消泡剤、分散剤)10質量部を、常法により混合し、各水性被覆材を得た。
【0037】
(実施例10)
乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルアンモニウム塩とポリオキシエチレンアリルオキシアルキルアルコキシアルキルエーテル硫酸エステル塩を質量比1:1で混合したものを使用した以外は、実施例3と同様の方法で3層構造合成樹脂エマルション18を製造し、同様の方法で水性被覆材を得た。
【0038】
(実施例11)
3層構造合成樹脂エマルション3(固形分50質量%)100質量部、酸化チタン60質量部、重質炭酸カルシウム60質量部、水100質量部、添加剤(増粘剤、造膜助剤、消泡剤、分散剤)10質量部とともに、紫外線吸収剤として2-エチル-2’-エトキシオキサルアニリド1質量部を、常法により混合し水性被覆材を得た。
【0039】
(実施例12)
3層構造合成樹脂エマルション3(固形分50質量%)100質量部、酸化チタン60質量部、重質炭酸カルシウム60質量部、水100質量部、添加剤(増粘剤、造膜助剤、消泡剤、分散剤)10質量部とともに、架橋剤として、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートにより得られるポリカルボジイミドのグリコール変性物1質量部を、常法により混合し水性被覆材を得た。
【0040】
(実施例13)
シクロヘキシルメタクリレートを使用せず、シクロヘキシルメタクリレートの替わりに、メチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートを用いた以外は、実施例3と同様の方法で3層構造合成樹脂エマルション19を製造し、同様の方法で水性被覆材を得た。なお、メチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとでガラス転移温度を調整し、内層、中間層、外層のガラス転移温度は実施例3と同じである。
【0041】
(実施例14)
単量体中に、2-エチル-2’-エトキシオキサルアニリド(紫外線吸収剤)を含有して3層構造合成樹脂エマルション19を製造した以外は、実施例3と同様の方法で水性被覆材を得た。なお、紫外線吸収剤の含有量は、全単量体100質量部に対し1質量部である。
【0042】
(実施例15)
単量体中に、2-エチル-2’-エトキシオキサルアニリド(紫外線吸収剤)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートにより得られるポリカルボジイミドのグリコール変性物(架橋剤)を含有して3層構造合成樹脂エマルション20を製造した以外は、実施例3と同様の方法で水性被覆材を得た。なお、紫外線吸収剤の含有量は全単量体100質量部に対し1質量部、架橋剤の含有量は全単量体100質量部に対し2質量部である。
【0043】
(実施例16)
外層に使用した単量体として、さらにアクリルアミド(ガラス転移温度:153℃)を追加した以外は、実施例3と同様の方法で3層構造合成樹脂エマルション21を製造し、同様の方法で水性被覆材を得た。なお、外層に使用した単量体全量のうち、アクリルアミドの含有量は1.3質量%であり、メチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとでガラス転移温度を調整した。内層、中間層、外層のガラス転移温度は実施例3と同じである。
【0044】
(実施例17)
内層に使用した単量体、外層に使用した単量体として、さらにアクリルアミドを追加した以外は、実施例3と同様の方法で、3層構造合成樹脂エマルション22を製造し、水性被覆材を得た。なお、内層に使用した単量体全量のうち、アクリルアミドの含有量は0.6質量%、外層に使用した単量体全量のうち、アクリルアミドの含有量は0.5質量%であり、メチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとでガラス転移温度を調整した。内層、中間層、外層のガラス転移温度は実施例3と同じである。
【0045】
(実施例18)
内層に使用した単量体、外層に使用した単量体として、さらにアクリルアミドを追加した以外は、実施例1と同様の方法で、3層構造合成樹脂エマルション23を製造し、水性被覆材を得た。なお、内層に使用した単量体全量のうち、アクリルアミドの含有量は0.6質量%、外層に使用した単量体全量のうち、アクリルアミドの含有量は0.5質量%であり、メチルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとでガラス転移温度を調整した。内層、中間層、外層のガラス転移温度は実施例1と同じである。
【0046】
得られた水性被覆材に対し、次の耐割れ性試験、耐汚染性試験、貯蔵安定性試験を行った。評価結果は表1に示す。
【0047】
(耐割れ性試験)
シーラー処理を施したスレート板(縦150×横70×厚さ6mm)の横中央部に切り目を入れたものを試験基材として用いた。この試験基材に対し、各水性被覆材を塗装ローラーにて、乾燥膜厚が0.15mmとなるように塗装し、14日間養生した。なお、試験板の作製・養生はすべて標準状態(気温23℃・相対湿度50%)で行った。また、上下の各端部20mmは無塗装の状態とした。
得られた試験板について、引張試験機を用いて耐割れ性を評価した。評価は、試験基材を1.5mm引張ったときに異常が認められなかったものを「◎」、試験基材を1.0mm引張ったときに異常が認められなかったものを「○」、試験基材を0.5mm引張ったときに異常が認められなかったものを「△」、試験基材を0.5mm引張ったときにひび割れが認められたものを「×」として行った。
【0048】
(耐汚染性試験)
予めアクリル樹脂系塗料(白色)が塗装されたスレート板(縦300×横150×厚さ6mm)に対し、各水性被覆材を塗装ローラーにて、乾燥膜厚が0.15mmとなるように塗装し、24時間乾燥させて、試験体を得た。なお、試験板の作製・養生はすべて標準状態(気温23℃・相対湿度50%)で行った。
得られた試験体について、大阪府茨木市で南面向きに、垂直に静置し、屋外暴露を6か月間実施した。6か月後、試験体表面の汚染状態について、目視にて評価した。
評価は、汚染が発生しなかったものを「◎」、著しい汚染が認められたものを「×」とする4段階(優:◎>○>△>×:劣)で行った。
【0049】
(貯蔵安定性試験)
各水性被覆材を、1000mlの容器に入れ密封し、50℃の恒温器で30日間貯蔵した後、貯蔵前及び貯蔵後の粘度を測定し、貯蔵前後での粘度変化を評価した。なお、粘度の測定にはBH型粘度計を用い、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。評価基準は以下の通りである。
◎:粘度変化10%未満
〇:粘度変化10%以上20%未満
△:粘度変化20%以上30%未満
×:粘度変化30%以上
【0050】
その結果、本願発明の規定範囲内である実施例1~18は、耐割れ性試験、耐汚染性試験、貯蔵安定性試験で、良好な結果が得られた。
特に実施例1、2、18は、耐汚染性試験、耐割れ性試験の両方で優れた結果が得られた。
一方、本願発明の規定範囲外である比較例1~8は、実施例1~18と比べて劣る結果となった。
【0051】
【表1】