(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008778
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20250109BHJP
A45D 40/00 20060101ALI20250109BHJP
A45D 40/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A45D40/04 B
A45D40/00 Q
A45D40/00 T
A45D40/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111263
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】久我 渉
(57)【要約】
【課題】描画材の残量を把握できるとともに、衛生的にでき、気密を確保することができる塗布容器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る塗布容器1は、先筒2と、外側筒状部材4と、外側筒状部材4に固定された内側筒状部材7と、内側筒状部材7の内部において前進して描画材Mを押すことにより、先筒2の開口2bから描画材Mを出現させる押棒6とを備える。外側筒状部材4は、外側筒状部材4の側面4cに形成された貫通孔4dを有する。内側筒状部材7の少なくとも貫通孔4dから露出する部分は透明部7bとされており、透明部7bを介して内側筒状部材7の内部が視認可能とされている。押棒6は、透明部7bを介して内側筒状部材7の外側から視認可能とされた視認部6dを有する。透明部7bを介して視認可能とされた視認部6dの状態を視認することによって描画材Mの残量が把握可能とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画材を収容するとともに、先端に前記描画材を出現させるための開口を有する先筒と、
前記先筒における前記開口とは反対側に連結された外側筒状部材と、
前記外側筒状部材の内部において前記外側筒状部材に固定された内側筒状部材と、
前記内側筒状部材の内部において前記内側筒状部材と同期回転可能とされており、前記内側筒状部材に対して前進して前記描画材を押すことにより、前記開口から前記描画材を出現させる押棒と、
を備え、
前記外側筒状部材は、前記外側筒状部材の側面に形成された貫通孔を有し、
前記内側筒状部材の少なくとも前記貫通孔から露出する部分は透明部とされており、前記透明部を介して前記内側筒状部材の内部が視認可能とされており、
前記押棒は、前記透明部を介して前記内側筒状部材の外側から視認可能とされた視認部を有し、前記透明部を介して視認可能とされた前記視認部の状態を視認することによって前記描画材の残量が把握可能とされている、
塗布容器。
【請求項2】
前記先筒の内部において前記先筒と同期回転可能とされており、内部に雌螺子を有する筒状の雌螺子部材を備え、
前記押棒は、前記雌螺子に螺合する雄螺子を有し、
前記外側筒状部材は、前記先筒に対して相対回転可能とされており、
前記先筒に対する前記外側筒状部材の相対回転によって前記雄螺子と前記雌螺子の螺合作用が働くことにより、前記雌螺子部材に対して前記押棒が前進する、
請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記内側筒状部材は、前記透明部から見て前記貫通孔とは反対側に位置する印字部を有し、
前記印字部を視認することによって前記描画材の残量が把握可能とされている、
請求項1または請求項2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記内側筒状部材は、前記外側筒状部材に対向する外面と、前記押棒に対向する内面とを有し、
前記透明部は、前記貫通孔から露出する第1面と、前記第1面とは反対を向く第2面とを有し、
前記第2面は、前記内面に沿って延びる仮想の延長面に対して前記内側筒状部材の内側に突出する凸面部を有する、
請求項3に記載の塗布容器。
【請求項5】
前記先筒に対する前記外側筒状部材の一方向への相対回転を許容し、前記先筒に対する前記外側筒状部材の前記一方向の反対方向への相対回転を規制するラチェット機構を備え、
前記透明部は、前記先筒に対する前記外側筒状部材の前記一方向への相対回転によって前進のみを行う前記押棒を視認可能とする、
請求項2に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、描画材を塗布するための塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固形内容物を繰り出すケース体を有する繰出し容器が記載されている。ケース体は、軸線に沿って延びる円筒状のケース本体部と、ケース本体部の上部に装着された円筒状のノズル体とを有する。ケース本体部の下端には、ケース本体部の下端開口を閉塞する底蓋体が装着されている。
【0003】
ケース体の内部には、軸線に沿って真っ直ぐに延びる軸体が配置されている。軸体は、上端に、固形内容物を保持する保持部を備える。軸体がケース体に対して上方に移動すると、保持部により下端側部分が保持された固形内容物が軸体とともに上方に移動してノズル体の上端に形成された繰出し口から外部に繰り出される。
【0004】
繰出し容器は、ケース本体部において上下方向に延びる残量確認用の窓部と、窓部を通して外部から軸体を視認可能とする残量表示部とを有する。窓部は、ケース体を内外に貫通するスリット状の孔となっている。窓部の上下方向の寸法は、ケース体の内部における軸体の上方への移動可能距離に対応している。残量表示部は、軸体の下端から拡径するとともに軸体から下方に延びる筒状を呈する。底蓋体は底蓋体から上方に延びる円筒状の内壁を有し、内壁は残量表示部の内側に位置する。
【0005】
固形内容物が新品であって軸体が下方側のストローク端位置である初期位置にあるときには、残量表示部の下端は窓部の下端よりも僅かに下方にあり、窓部はその全体が残量表示部によって閉じられた状態となっている。使用者は、窓部の全体が残量表示部によって閉じられていることから、固形内容物が新品であることを確認できる。
【0006】
一方、固形内容物の繰出しに伴って軸体がケース本体部に対して上方に相対移動すると、軸体とともに残量表示部が上方に相対移動することによって、残量表示部の内側に位置する内壁が見え始める。使用者は、窓部に露出する残量表示部の長さ、および内壁の長さを視認することによって固形内容物の残量を確認できる。
【0007】
さらに、軸体が上方のストローク端位置にまで移動して繰出し可能な固形内容物がなくなると、残量表示部の下端が窓部の上方に移動し、内壁のみが窓部に露出する。このとき、内壁のみが窓部から視認できるようになり、これにより、使用者は固形内容物がなくなったことを確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した繰出し容器では、窓部がケース体を内外に貫通するスリット状の孔とされており、孔の内側に移動する残量表示部が配置されている。そして、移動する残量表示部のさらに内側に内壁が配置されている。したがって、窓部と内壁との間に位置する残量表示部が移動するので、移動に伴って窓部の縁と残量表示部の間、および残量表示部と内壁の間に埃等の異物が入り込む可能性がある。よって、窓部の内部に埃等が溜まる可能性があるので、衛生面の点で改善の余地がある。
【0010】
ところで、塗布容器では、揮発性が高い描画材が用いられることがある。しかしながら、前述した繰出し容器のように、内外を貫通する窓部の内側に位置する残量表示部が移動する場合には、内部の気密を維持できないということが起こりうる。したがって、気密を確保できることが求められる。
【0011】
本開示は、描画材の残量を把握できるとともに、衛生的にでき、気密を確保することができる塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本開示に係る塗布容器は、描画材を収容するとともに、先端に描画材を出現させるための開口を有する先筒と、先筒における開口とは反対側に連結された外側筒状部材と、外側筒状部材の内部において外側筒状部材に固定された内側筒状部材と、内側筒状部材の内部において内側筒状部材と同期回転可能とされており、内側筒状部材に対して前進して描画材を押すことにより、開口から描画材を出現させる押棒と、を備える。外側筒状部材は、外側筒状部材の側面に形成された貫通孔を有する。内側筒状部材の少なくとも貫通孔から露出する部分は透明部とされており、透明部を介して内側筒状部材の内部が視認可能とされている。押棒は、透明部を介して内側筒状部材の外側から視認可能とされた視認部を有する。透明部を介して視認可能とされた視認部の状態を視認することによって描画材の残量が把握可能とされている。
【0013】
この塗布容器は、透明部を介して視認可能とされた押棒の視認部を見ることによって、描画材の残量を把握することができる。この塗布容器では、透明部を有する内側筒状部材が外側筒状部材に固定されており、内側筒状部材は外側筒状部材に対して移動しない。よって、外側筒状部材の貫通孔と押棒との間に位置する内側筒状部材が移動しないことにより、貫通孔の内側に異物が入り込む可能性を低減できるので衛生的な塗布容器とすることができる。さらに、貫通孔の内側で内側筒状部材が外側筒状部材に固定されていることにより、貫通孔の内側における気密を確保することができる。
【0014】
(2)上記(1)において、塗布容器は、先筒の内部において先筒と同期回転可能とされており、内部に雌螺子を有する筒状の雌螺子部材を備えてもよい。押棒は、雌螺子に螺合する雄螺子を有してもよい。外側筒状部材は、先筒に対して相対回転可能とされていてもよい。先筒に対する外側筒状部材の相対回転によって雄螺子と雌螺子の螺合作用が働くことにより、雌螺子部材に対して押棒が前進してもよい。この場合、先筒に対して外側筒状部材が相対回転することによって押棒を前進させ、押棒によって描画材を開口から出現させることができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)において、内側筒状部材は、透明部から見て貫通孔とは反対側に位置する印字部を有してもよい。印字部を視認することによって描画材の残量が把握可能とされていてもよい。この場合、塗布容器を使用する使用者が印字部を視認することによって描画材の残量をより直接的に把握できる。よって、描画材の残量をより分かりやすくすることができる。
【0016】
(4)上記(3)において、内側筒状部材は、外側筒状部材に対向する外面と、押棒に対向する内面とを有してもよい。透明部は、貫通孔から露出する第1面と、第1面とは反対を向く第2面とを有してもよい。第2面は、内面に沿って延びる仮想の延長面に対して内側筒状部材の内側に突出する凸面部を有してもよい。この場合、透明部の第2面が内側に突出することにより、透明部はレンズ形状を呈する。したがって、透明部を介して前述した印字部を視認するときに、印字部が拡大して見えるので、描画材の残量をよりわかりやすく表示できる。
【0017】
(5)上記(2)において、塗布容器は、先筒に対する外側筒状部材の一方向への相対回転を許容し、先筒に対する外側筒状部材の一方向の反対方向への相対回転を規制するラチェット機構を備えてもよい。透明部は、先筒に対する外側筒状部材の一方向への相対回転によって前進のみを行う押棒を視認可能としてもよい。この場合、押棒は後退しないので、押棒の視認部による描画材の残量の表示をより正確にすることができる。したがって、描画材の残量をより適切に把握できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、描画材の残量を把握できるとともに、衛生的にでき、気密を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、実施形態に係る塗布容器を示す側面図である。(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【
図3】(a)は、実施形態に係る塗布容器の内側筒状部材を示す側面図である。(b)は、
図3(a)の内側筒状部材を
図3(a)とは異なる方向から見た側面図である。
【
図5】(a)は、実施形態に係る塗布容器の押棒を示す側面図である。(b)は、
図5(a)のD-D線断面図である。
【
図6】(a)は、実施形態に係る塗布容器の雌螺子部材を示す側面図である。(b)は、
図6(a)とは異なる方向から見た雌螺子部材を示す側面図である。
【
図8】(a)は、
図1(a)の塗布容器のキャップが外されて描画材を使いきった状態における塗布容器を示す側面図である。(b)は、
図8(a)のF-F線断面図である。
【
図9】(a)は、
図8(a)のG-G線断面図である。(b)は、変形例に係る塗布容器を示す断面図である。
【
図10】(a)、(b)、(c)および(d)は、実施形態に係る塗布容器の貫通穴、透明部または視認部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る塗布容器の実施形態について説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0021】
図1(a)は、本実施形態に係る塗布容器を示す側面図である。
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図1(a)および
図1(b)に示されるように、本実施形態に係る塗布容器1は、例えば、塗布容器1の内部に収容された描画材Mを使用者の操作によって繰り出す(押し出す)ペンシルである。
【0022】
本実施形態において、描画材Mは化粧料である。「化粧料」は、例えば、口紅、リップスティック、リップライナー、リップグロス、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、コンシーラー、または美容スティックである。「化粧料」は、柔軟性材料(例えば、半固形状、軟固形状、ゼリー状、ムース状、またはこれらを含む練り物等)を含む棒状物であってもよい。例えば、描画材Mは揮発性を有する。一例として、描画材Mは棒状化粧料である。
【0023】
塗布容器1は、描画材Mを収容する先筒2と、先筒2を覆うキャップ3と、先筒2のキャップ3とは反対側に位置する外側筒状部材4とを有する。塗布容器1では、先筒2、キャップ3および外側筒状部材4を含め、一部の部品が筒状とされている。塗布容器1では、部品が組み立てられた状態において筒状の各部品の軸線Lが延びる方向が一致する。以下では、この軸線Lが延びる方向を軸線方向D1とする。例えば、軸線方向D1は、塗布容器1の長手方向と一致する。
【0024】
「前」、「前側」および「前方」は軸線方向D1において外側筒状部材4から先筒2に向かう方向を示しており、「後」、「後側」および「後方」は軸線方向D1において先筒2から外側筒状部材4に向かう方向を示している。「径方向」は軸線Lに直交する方向を示しており、「周方向」は軸線Lを中心とする環に沿う方向(回転方向)を示している。本実施形態では、描画材Mの押出方向が前方(前進する方向)であり、その反対方向が後方である。
【0025】
先筒2は、先端(先筒2の前側の端部)に描画材Mを出現させるための開口2bを有する。先筒2は、キャップ3が外されたときに露出する前側筒部2Aと、外側筒状部材4の内側に挿入される後側筒部2Bと、前側筒部2Aおよび後側筒部2Bの間に介在する鍔部2Cとを備える。前側筒部2Aは、軸線方向D1の一端に位置する開口2bと、開口2bから離れるにしたがって先筒2が拡径するように傾斜するテーパ面2cとを有する。
【0026】
開口2bは、先筒2における描画材Mが露出する部位であって、開口2bから描画材Mが突出して描画材Mが使用に供される。テーパ面2cは、例えば、開口2bから先筒2の軸線方向D1の中央を越える位置まで延在している。前側筒部2Aは、テーパ面2cの後側に位置する凸部2dを有する。凸部2dは、後述するキャップ3の凹部3bに係合する。鍔部2Cにキャップ3の開口を画成する端面3cが軸線方向D1に沿って対向した状態で先筒2にキャップ3が装着される。鍔部2Cは、キャップ3が先筒2に装着された状態で露出している。
【0027】
先筒2の内部空間2fは、開口2bから後方に延在している。内部空間2fは、先筒2を軸線方向D1に貫通している。内部空間2fには、描画材M、ピストン5および押棒6が収容される。ピストン5は、例えば、前端において窪む第1凹部5bと、後端において窪む第2凹部5cとを有する。描画材M、ピストン5および押棒6は、この順で並ぶように配置される。
【0028】
後側筒部2Bは、鍔部2Cの後側に位置する環状凹部2gと、環状凹部2gよりも後方に位置する第1環状凸部2hと、第1環状凸部2hの後方に位置する第2環状凸部2jとを有する。第1環状凸部2hは、外側筒状部材4の内面4bに軸線方向D1に係合する。これにより、先筒2は、外側筒状部材4に軸線方向移動不能かつ相対回転可能に連結される。
【0029】
キャップ3は、有底円筒状の外キャップ3Aと、外キャップ3Aの底部に保持される段付き円筒状の内キャップ3Bとを含む。例えば、外キャップ3AはPP(ポリプロピレン)によって構成されており、内キャップ3BはTPEE(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)によって構成されている。しかしながら、外キャップ3Aの材料、および内キャップ3Bの材料は、上記の例に限定されない。
【0030】
例えば、外側筒状部材4は、有底筒状(一例として有底円筒状)を呈する。外側筒状部材4は、先筒2における開口2bとは反対側に連結されている。外側筒状部材4は、軸線方向D1に交差する方向を向く側面4cを有する。外側筒状部材4は、側面4cに形成された貫通孔4dを有する。例えば、貫通孔4dは、外側筒状部材4の軸線方向D1の中央から外側筒状部材4の軸線方向D1の端部(後端部)まで延在している。
【0031】
貫通孔4dは、外側筒状部材4の内外を連通している。すなわち、貫通孔4dは、外側筒状部材4を径方向に貫通している。例えば、貫通孔4dは、軸線方向D1に沿って延びる長軸4fと、外側筒状部材4の周方向D2に沿って延びる短軸4gとを有する。一例として、貫通孔4dは、隅丸長方形状を呈する。
【0032】
貫通孔4dは、例えば、軸線方向D1に沿って延びる直線部4hと、直線部4hの両端のそれぞれにおいて貫通孔4dが外側に膨らむように湾曲する一対の湾曲部4jとによって画成されている。この場合、貫通孔4dは、周方向D2に沿って並ぶ一対の直線部4h、および軸線方向D1に沿って並ぶ一対の湾曲部4jによって画成されている。
【0033】
外側筒状部材4は、先筒2の一部(後側筒部2B)が入り込む開口4rを有する。外側筒状部材4は、外側筒状部材4の内面4bにおいて、外側筒状部材4の径方向外側に窪む環状凹部4qと、環状凹部4qの前側に位置する環状凸部4sとを有する。環状凹部4qには、先筒2の第1環状凸部2hが軸線方向D1に係合する。
【0034】
塗布容器1は、外側筒状部材4の内部において外側筒状部材4に固定された内側筒状部材7を有する。外側筒状部材4は、外側筒状部材4の内面4bにおいて外側筒状部材4の径方向内側に突出する突起4pを有する。突起4pには内側筒状部材7が周方向に係合する。これにより、内側筒状部材7は外側筒状部材4に同期回転可能に係合する。
【0035】
押棒6は、内側筒状部材7の内部において内側筒状部材7と同期回転可能とされている。押棒6は、内側筒状部材7に対して前進して描画材Mを押すことにより、先筒2の開口2bから描画材Mを出現させる。押棒6は、押棒6の外周に形成された雄螺子6bと、内側筒状部材7に周方向D2に係合する係合部6cとを有する。雄螺子6bおよび係合部6cは軸線方向D1に沿って並んでいる。雄螺子6bは、係合部6cの前方に位置する。
【0036】
塗布容器1は、筒状の雌螺子部材8を有する。雌螺子部材8は先筒2の内部に設けられている。より具体的には、雌螺子部材8は先筒2の後側筒部2Bの内部に収容されている。例えば、雌螺子部材8の軸線方向D1の端部8cは、先筒2の軸線方向D1の一端に形成された開口2pから突出している。雌螺子部材8は、先筒2と同期回転可能とされている。雌螺子部材8は、内部に雌螺子8bを有する。雌螺子8bには押棒6の雄螺子6bが螺合する。押棒6および雌螺子部材8については、後に詳述する。
【0037】
図2は、
図1(a)のB-B線断面図である。
図1(a)、
図1(b)および
図2に示されるように、押棒6は内側筒状部材7に収容されており、内側筒状部材7は外側筒状部材4に収容されている。内側筒状部材7の一部は、外側筒状部材4の貫通孔4dから露出している。
【0038】
内側筒状部材7は、透明部7bを有する。「透明部」は透明とされている部分または部品を示しており、「透明」は可視光線における平均透過率が一定値以上であることを示している。上記の「一定値」は、例えば、60%、80%または90%である。「透明」は、無色透明、着色透明または半透明であってもよい。本実施形態では、透明部7bを介して内側筒状部材7の内部が視認可能とされている。
【0039】
例えば、内側筒状部材7は、PET(ポリエチレンテレフタレート)によって構成されている。本実施形態では、内側筒状部材7は透明な部品によって構成されている。すなわち、内側筒状部材7は透明部材である。この場合、透明部7bは内側筒状部材7の全体である。しかしながら、透明部7bは、内側筒状部材7の一部に設けられていてもよい。内側筒状部材7の少なくとも貫通孔4dから露出する部分は透明部7bとされている。よって、透明部7bを介して内側筒状部材7の内部は視認可能とされている。
【0040】
例えば、外側筒状部材4は複数の突起4pを有し、内側筒状部材7は内側筒状部材7の径方向内側に窪む凹部7cを有する。複数の突起4pは、周方向D2に沿って並んでいる。内側筒状部材7は複数の凹部7cを有し、複数の凹部7cは、周方向D2に沿って並んでいる。複数の突起4pのうちの少なくともいずれかが凹部7cに入り込んでいる。
【0041】
図2の例では、3つの突起4pのうちの2つが凹部7cに入り込んでいる。これにより、外側筒状部材4は内側筒状部材7に固定されている。なお、塗布容器1の内部における気密を確保するために、外側筒状部材4の内面4b、および内側筒状部材7の外面7dのいずれかに気密用の突起を設けてもよい。
【0042】
押棒6は、透明部7bを介して内側筒状部材7の外側から視認可能とされた視認部6dを有する。視認部6dは、押棒6のうち、透明部7bを介して内側筒状部材7の外から視認される部位を示している。例えば、視認部6dは、雄螺子6bの一部(後側部分)と、内側筒状部材7に係合する係合部6cとを含んでいる。
【0043】
係合部6cは、押棒6の径方向外側に突出する複数の突起6fを有する。複数の突起6fは、周方向D2に沿って並んでいる。内側筒状部材7は、内側筒状部材7の内面7fに径方向内側に突出する突起7gを有する。例えば、内側筒状部材7は、周方向D2に沿って並ぶ複数の突起7gを有する。周方向D2に沿って並ぶ2つの突起6fの間に突起7gが入り込んでいる。
【0044】
塗布容器1は、内側筒状部材7の前端、および雌螺子部材8の後端に位置するラチェット機構9を有する。ラチェット機構9により、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向への相対回転は許容され、先筒2に対する外側筒状部材4の当該一方向の反対回転への相対回転は規制される。
【0045】
先筒2に対して外側筒状部材4が一方向に相対回転すると、外側筒状部材4とともに内側筒状部材7および押棒6が先筒2および雌螺子部材8に対して相対回転する。押棒6が雌螺子部材8に対して相対回転し、雄螺子6bと雌螺子8bとの螺合作用が働くことにより、雌螺子部材8に対して押棒6が前進する。一方、先筒2に対して外側筒状部材4は反対方向に相対回転しないので、押棒6は後退しない。
【0046】
前述したように、押棒6は、内側筒状部材7に対して前進して描画材Mを押す。本実施形態では、押棒6は、内側筒状部材7に対して前進のみが可能とされており、内側筒状部材7に対して後退しない。例えば、初期状態、すなわち描画材Mを使っていない(描画材Mが未使用である)ときに、押棒6の後端6gの軸線方向D1における位置は、貫通孔4dの後端4kの軸線方向D1における位置と一致している。
【0047】
したがって、初期状態では貫通孔4dから押棒6の視認部6dの全体が透明部7bを介して視認可能とされており、透明部7bの軸線方向D1の全体において視認部6dが視認可能とされている。この透明部7bにおいて視認部6dの全体が見えていることにより、塗布容器1の使用者は、押棒6が前進しておらず描画材Mが使われていないことを把握できる。
【0048】
押棒6が前進して描画材Mが使用されると、透明部7bにおいて視認部6dが前進し、視認可能な視認部6dの軸線方向D1における長さが減少する。透明部7bを介して見えている視認部6dの長さが短くなった状態を見ることにより、使用者は、描画材Mの量が減っていることを把握できる。
【0049】
描画材Mがさらに使用されて描画材Mがなくなりそうになると、透明部7bにおいて視認部6dがさらに前進する。そして、押棒6の後端6gの軸線方向D1における位置が貫通孔4dの前端4tの軸線方向D1における位置と一致して、透明部7bを介して視認部6dが見えなくなる(
図8(b)参照)。透明部7bを介して視認部6dが見えなくなったことにより、使用者は、描画材Mがなくなりかけていることを把握できる。
【0050】
以上のように、透明部7bを介して視認可能とされた視認部6dの状態を視認することによって描画材Mの残量が把握可能とされている。なお、透明部7bを介した視認部6dの表示をわかりやすくするために、視認部6dは着色されていてもよい。この場合、着色された視認部6dの長さを視認することによって残された描画材Mの量を一層分かりやすく表示できる。
【0051】
次に、塗布容器1の各部品の詳細構造について説明する。
図3(a)は、内側筒状部材7を示す側面図である。
図3(b)は、
図3(a)とは異なる方向から見た内側筒状部材7を示す側面図である。
図4は、
図3(a)のC-C線断面図である。
図2、
図3(a)、
図3(b)および
図4に示されるように、内側筒状部材7は、例えば、軸線方向D1に沿って延びる円筒状を呈する。
【0052】
内側筒状部材7は、外面7dにおいて軸線方向D1に沿って延びる凹部7cと、外面7dに形成された平坦面7hとを有する。平坦面7hは、軸線方向D1に直交する内側筒状部材7の断面の中心から見て内側筒状部材7の貫通孔4dから露出する部分とは反対側に位置する。平坦面7hは、例えば、外側筒状部材4の突起4pに対向している。内側筒状部材7の外方から見たときに、例えば、平坦面7hは長方形状を呈する。平坦面7hは、内側筒状部材7の軸線方向D1の一端7kから内側筒状部材7の軸線方向D1の他端7q付近にまで延在している。
【0053】
凹部7cは、内側筒状部材7の軸線方向D1の一端7kから内側筒状部材7の軸線方向D1の中央付近にまで延在している。凹部7cは、軸線方向D1の一端7kから延びる拡幅部7jと、拡幅部7jの一端7kとは反対側の端部から軸線方向D1に沿って延びる直線状部7pとを有する。直線状部7pの幅(周方向D2への長さ)は一定であり、拡幅部7jの幅は直線状部7pから一端7kに向かうにしたがって広くなっている。
【0054】
内側筒状部材7は、内面7fにおいて一端7kから軸線方向D1に沿って延在する突起7gと、他端7qから一端7kに向かって延びる凸部7rとを有する。突起7gは、直線状に延在している。内側筒状部材7は複数の凸部7rを有し、複数の凸部7rは周方向D2に沿って並んでいる。複数の凸部7rはラチェット機構9を構成する。ラチェット機構9の機能については後に詳述する。
【0055】
図5(a)は、押棒6を示す側面図である。
図5(b)は、
図5(a)のD-D線断面図である。
図5(a)および
図5(b)に示されるように、押棒6は、雄螺子6bと、係合部6cと、後端6gに位置する拡径部6hと、前端6jに位置する押圧部6kとを有する。押圧部6kは、ピストン5の第2凹部5c(
図1(b)参照)に入り込んでピストン5を前方に押圧する部位である。
【0056】
前述したように、係合部6cは突起6fを有する。突起6fは、拡径部6hから軸線方向D1に沿って延びる第1部分6pと、第1部分6pの拡径部6hとは反対の端部から雄螺子6bに向かって延びる第2部分6qとを有する。例えば、押棒6の径方向外側への第1部分6pの突出高さは、押棒6の径方向外側への第2部分6qの突出高さよりも高い。
【0057】
図6(a)は、雌螺子部材8を示す側面図である。
図6(b)は、
図6(a)とは異なる方向から見た雌螺子部材8を示す側面図である。
図7は、
図6(b)のE-E線断面図である。
図6(a)、
図6(b)および
図7に示されるように、雌螺子部材8は、前側筒部8dと、後側筒部8fと、前側筒部8dおよび後側筒部8fの間に位置するバネ部8gとを有する。
【0058】
前側筒部8dは、例えば、円筒状を呈する。前述した雌螺子部材8の雌螺子8bは、例えば、前側筒部8dの内部に形成されている。前側筒部8dは、前側筒部8dの外面8hから雌螺子部材8の径方向外側に突出するとともに軸線方向D1に沿って延在する凸部8jを有する。凸部8jは、先筒2の内面2q(
図1(b)参照)に周方向D2に係合する。これにより、雌螺子部材8は、先筒2に同期回転可能、かつ先筒2に対して軸線方向D1に移動可能に係合する。
【0059】
前側筒部8dは、周方向D2に沿って並ぶ複数の凸部8jを有する。例えば、複数の凸部8jは、第1凸部8kと、軸線方向D1への長さが第1凸部8kよりも長い第2凸部8pとを含む。第1凸部8kおよび第2凸部8pは、周方向D2に沿って交互に並ぶように配置されている。
【0060】
バネ部8gは、前側筒部8dから後側筒部8fまで延びる筒状部8qと、筒状部8qにおいて雌螺子部材8の径方向に貫通するとともに螺旋状に形成されたスリット8rとを有する。例えば、筒状部8qの外径は、前側筒部8dの外径より小さく、かつ後側筒部8fの外径より小さい。バネ部8gは、筒状部8qに螺旋状に形成されたスリット8rを有することにより、軸線方向D1に伸縮可能とされている。
【0061】
後側筒部8fは、例えば、円筒状を呈する。後側筒部8fは、後側筒部8fの外面8sから雌螺子部材8の径方向外側に突出するとともに軸線方向D1に沿って延在する凸部8tを有する。凸部8tは、前述した凸部8jと同様、先筒2の内面2qに周方向D2に係合する。後側筒部8fは、例えば、周方向D2に沿って並ぶ複数の凸部8tを有する。
【0062】
雌螺子部材8は、軸線方向D1の一端に形成された突部8vを有する。例えば、雌螺子部材8は複数の突部8vを有し、各突部8vは後側筒部8fから軸線方向D1に突出している。突部8vは、軸線方向D1および周方向D2の双方に対して傾斜する傾斜面8wと、軸線方向D1および雌螺子部材8の径方向に延びる当接面8xとによって形成されている。
【0063】
複数の突部8vは、周方向D2に沿って並んでいる。当接面8xは、傾斜面8wの後端から前方に延びている。複数の突部8vは、前述した内側筒状部材7の複数の凸部7r(
図4参照)に係合する。複数の突部8vは、複数の凸部7rとともにラチェット機構9を構成する。
【0064】
凸部7rが突部8vの傾斜面8wに接触する方向(一方向)に雌螺子部材8に対して内側筒状部材7が相対回転する場合、凸部7rが傾斜面8wを周方向D2に乗り越えて、内側筒状部材7および押棒6が雌螺子部材8に対して相対回転する。このとき、前述した螺合作用が働くことによって雌螺子部材8に対して押棒6が前進し、描画材Mが押棒6に押されて先筒2の開口2bから繰り出される。
【0065】
これに対し、凸部7rが突部8vの当接面8xに接触する方向(反対方向)に雌螺子部材8に対して内側筒状部材7が相対回転しようとする場合、凸部7rは当接面8xを乗り越えないので、雌螺子部材8に対して内側筒状部材7は相対回転しない。したがって、本実施形態では、雌螺子部材8に対して押棒6が後退しないので、描画材Mも後退しない。以上のように、ラチェット機構9は、雌螺子部材8に対する内側筒状部材7の一方向への相対回転を許容し、雌螺子部材8に対する内側筒状部材7の反対方向への相対回転を規制する。
【0066】
次に、使用時における塗布容器1の各部の動作について説明する。まず、
図1(b)に示される状態において、先筒2からキャップ3を外して、先筒2のテーパ面2cと開口2bを露出させる。この状態で先筒2に対して外側筒状部材4を一方向に相対回転すると、先筒2および雌螺子部材8に対して、外側筒状部材4、内側筒状部材7および押棒6が一方向に相対回転する。このとき、雌螺子8bと雄螺子6bの螺合作用が働いて雌螺子部材8に対して押棒6が前進することによって描画材Mが先筒2の開口2bから繰り出され、描画材Mが使用に供される。
【0067】
前述したように、初めて描画材Mを使うとき(初期状態)には、押棒6の後端6gの軸線方向D1における位置が貫通孔4dの後端4kの軸線方向D1における位置と一致している。この状態で描画材Mが先筒2の開口2bから繰り出されると、内側筒状部材7の透明部7bに対して押棒6の視認部6dが前進し、視認部6dの透明部7bから見える部分の長さが短くなる。
【0068】
描画材Mの使用が継続されると、
図8(a)および
図8(b)に示されるように、透明部7bに対して視認部6dがさらに前進し、描画材Mがなくなりかけるときに押棒6の後端6gの軸線方向D1における位置が貫通孔4dの前端4tの軸線方向D1における位置と一致する。このとき、
図8(b)および
図9(a)に示されるように、押棒6が前進することによって貫通孔4dの内側に押棒6(視認部6d)が存在しなくなるので、透明部7bから視認部6dが見えなくなる。
【0069】
例えば、内側筒状部材7は、透明部7bから見て貫通孔4dとは反対側に位置する印字部7sを有する。
図8(b)、
図9(a)および
図10(a)に示されるように、印字部7sは、例えば、内側筒状部材7の貫通孔4dから露出した部分である露出部7tにおける前側の端部に設けられている。
【0070】
印字部7sは、平坦面7hに設けられている。例えば、印字部7sは、インクによって形成されている。印字部7sは、文字情報である。例えば、印字部7sは、描画材Mが間もなくなくなる旨の表示(一例として「おわり」という文字)を示している。印字部7sは、露出部7tの内側に押棒6が存在するときには、押棒6に隠されていて視認不能とされている。
【0071】
しかしながら、描画材Mが使われて押棒6が前進して押棒6の後端6gが露出部7tの前端部に達すると、押棒6によって隠されていた印字部7sが後側から見え始める。そして、後端6gが露出部7tの前端部よりも前進して全ての印字部7sが視認されることによって、使用者は描画材Mがなくなりそうであることを把握できる。
【0072】
図9(b)は、変形例に係る内側筒状部材7Aを示す断面図である。内側筒状部材7Aは透明部7bとは形状が異なる透明部7vを有しており内側筒状部材7Aの透明部7v以外の構成は内側筒状部材7と同一である。内側筒状部材7および内側筒状部材7Aのそれぞれは、外側筒状部材4に対向する外面7wと、押棒6に対向する内面7fとを有する。
【0073】
透明部7bおよび透明部7vのそれぞれは、貫通孔4dから露出する第1面7yと、第1面7yとは反対を向く第2面7zとを有する。軸線方向D1に直交する断面において、透明部7bの第1面7y、および透明部7bの第2面7zは、円弧状とされており、互いに平行に延びている。
【0074】
軸線方向D1に直交する断面において、透明部7vの第1面7yは、円弧状とされている。軸線方向D1に直交する断面において、透明部7vの第2面7zは、内面7fに沿って延びる仮想の延長面Sに対して内側筒状部材7Aの内側に突出する凸面部7z1を有する。
【0075】
例えば、凸面部7z1は、内側筒状部材7の径方向に直交する方向に延在する平坦状を呈する。しかしながら、凸面部7z1は、内側筒状部材7Aの径方向内側に突出していてもよい。透明部7vが凸面部7z1を有することにより、貫通孔4dから印字部7sを見たときに、レンズ効果によって凸面部7z1を有しない場合よりも印字部7sが大きく見えることとなる。
【0076】
次に、本実施形態に係る塗布容器1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。
図1(b)および
図8(b)に示されるように、塗布容器1は、透明部7bを介して視認可能とされた押棒6の視認部6dを見ることによって、描画材Mの残量を把握することができる。
【0077】
塗布容器1では、透明部7bを有する内側筒状部材7が外側筒状部材4に固定されており、内側筒状部材7は外側筒状部材4に対して移動しない。よって、外側筒状部材4の貫通孔4dと押棒6との間に位置する内側筒状部材7が移動しないことにより、貫通孔4dの内側に異物が入り込む可能性を低減できるので衛生的な塗布容器1とすることができる。さらに、貫通孔4dの内側で内側筒状部材7が外側筒状部材4に固定されていることにより、貫通孔4dの内側における気密を確保することができる。
【0078】
本実施形態において、塗布容器1は、先筒2の内部において先筒2と同期回転可能とされており、内部に雌螺子8bを有する筒状の雌螺子部材8を備える。押棒6は、雌螺子8bに螺合する雄螺子6bを有する。外側筒状部材4は、先筒2に対して相対回転可能とされている。先筒2に対する外側筒状部材4の相対回転によって雄螺子6bと雌螺子8bの螺合作用が働くことにより、雌螺子部材8に対して押棒6が前進する。この場合、先筒2に対して外側筒状部材4が相対回転することによって押棒6を前進させ、押棒6によって描画材Mを開口2bから出現させることができる。
【0079】
本実施形態において、内側筒状部材7は、
図8(b)、
図9(a)、
図9(b)および
図10(a)に示されるように、透明部7bから見て貫通孔4dとは反対側に位置する印字部7sを有し、印字部7sを視認することによって描画材Mの残量が把握可能とされている。この場合、塗布容器1を使用する使用者が印字部7sを視認することによって描画材Mの残量をより直接的に把握できる。
図10(a)に示される例の場合、使用者は、描画材Mがなくなりかけていることを印字部7sを見ることによって把握できる。よって、描画材Mの残量をより分かりやすくすることができる。
【0080】
前述したように、内側筒状部材7Aは、外側筒状部材4に対向する外面7wと、押棒6に対向する内面7fとを有し、透明部7vは、貫通孔4dから露出する第1面7yと、第1面7yとは反対を向く第2面7zとを有する。第2面7zは、内面7fに沿って延びる仮想の延長面Sに対して内側筒状部材7Aの内側に突出する凸面部7z1を有してもよい。この場合、透明部7vの第2面7zが内側に突出することにより、透明部7vはレンズ形状を呈する。したがって、透明部7vを介して印字部7sを視認するときに、印字部7sが拡大して見えるので、描画材Mの残量をよりわかりやすく表示できる。
【0081】
本実施形態において、塗布容器1は、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向への相対回転を許容し、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向の反対方向への相対回転を規制するラチェット機構9を備える。透明部7bは、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向への相対回転によって前進のみを行う押棒6を視認可能とする。この場合、押棒6は後退しないので、押棒6の視認部6dによる描画材Mの残量の表示をより正確にすることができる。したがって、描画材Mの残量をより適切に把握できる。
【0082】
以上、本開示に係る塗布容器の実施形態および変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る塗布容器は、前述した実施形態または変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内においてさらに変形されたものであってもよい。すなわち、本開示に係る塗布容器の各部の形状、大きさ、材料、数および配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0083】
例えば、前述した実施形態では、
図10(a)に示されるように、内側筒状部材7の露出部7tにおける前側の端部に形成された文字情報である印字部7sについて説明した。しかしながら、印字部の態様は、
図10(a)の例に限定されない。
図10(b)に示されるように、内側筒状部材7は、印字部7sに代えて、描画材Mの残量割合を示す印字部17sを有していてもよい。
【0084】
例えば、印字部17sは、露出部7tの軸線方向D1の中央に位置する第1印字部17s1と、露出部7tの前側の端部に位置する第2印字部17s2とを含む。第1印字部17s1は描画材Mの残量が半分程度(50%程度)であることを示す文字情報であり、第2印字部17s2は描画材Mがなくなりかけている(0%程度に近い)ことを示す文字情報である。
【0085】
印字部17sを有する内側筒状部材を備えた塗布容器では、描画材Mの使用に伴って後方から徐々に現れる第1印字部17s1および第2印字部17s2を使用者が見ることによって、描画材Mの残量をより高精度に把握できる。したがって、使用者は、塗布容器1の買い換え時期をより高精度に予測できる。
【0086】
なお、
図10(b)の例では、「50%」と表示された第1印字部17s1、および「0%」と表示された第2印字部17s2について説明した。しかしながら、第1印字部17s1および第2印字部17s2に代えて、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%と表示された印字部が設けられていてもよい。
【0087】
さらに、印字部は「0%」等の文字情報でなくてもよく、例えば、描画材Mの残量割合を示す目盛りであってもよい。この目盛りは、透明部7bに形成されていてもよいし、側面視の外側筒状部材4における透明部7bの上または下の位置に形成されていてもよい。このように、描画材Mの残量を示す印字部の態様は適宜変更可能である。
【0088】
さらに、
図10(c)および
図10(d)に示されるように、印字部を有しない内側筒状部材を備えた塗布容器であってもよい。この場合、透明部7bの長さA1に対する押棒6の視認部6dの長さA2の割合が描画材Mの残量を示している。
図10(c)には描画材Mの残量が90%程度であることを示しており、
図10(d)には描画材Mの残量が5%程度であることを示している。このように印字部を省略することも可能である。
【0089】
前述した実施形態では、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向への相対回転のみを許容するラチェット機構9を有し、前進のみを行う押棒6を視認可能とする塗布容器1について説明した。しかしながら、ラチェット機構9を有しない塗布容器であってもよい。先筒に対する外側筒状部材の一方向および反対方向への相対回転を許容し、前進および後退を行う押棒を視認可能とする塗布容器であってもよい。この場合も、先筒の開口に描画材の先端が露出している状態における押棒の位置を透明部から見ることにより、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0090】
前述した実施形態では、内側筒状部材7と、雌螺子8bおよびバネ部8gを有する雌螺子部材8とを備える塗布容器1について説明した。しかしながら、塗布容器は、内側筒状部材7および雌螺子部材8に代えて、雌螺子およびバネ部を有する内側筒状部材を備えていてもよい。この場合、塗布容器の部品の数を減らすことができる。
【0091】
前述した実施形態では、先筒2に対する外側筒状部材4の一方向への相対回転によって描画材Mの繰り出しを行う塗布容器1について説明した。しかしながら、塗布容器は、相対回転によらない塗布容器であってもよい。すなわち、塗布容器は、ノック式等の機械的な押出機構を有し、当該押出機構によって描画材を押し出すものであってもよいし、スクイーズ式の押出機構を備えたものであってもよい。
【0092】
前述した実施形態では、化粧料である描画材Mを備える塗布容器1について説明した。しかしながら、描画材は、化粧料以外のものであってもよい。例えば、描画材は、クレヨン等の筆記用具に用いられる芯材であってもよい。このように、本開示に係る塗布容器は、化粧料に限られず、筆記用具または文房具等、種々の描画材に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…塗布容器、2…先筒、2A…前側筒部、2b…開口、2B…後側筒部、2C…鍔部、2c…テーパ面、2d…凸部、2f…内部空間、2g…環状凹部、2h…第1環状凸部、2j…第2環状凸部、2p…開口、2q…内面、3…キャップ、3A…外キャップ、3b…凹部、3B…内キャップ、3c…端面、4…外側筒状部材、4b…内面、4c…側面、4d…貫通孔、4f…長軸、4g…短軸、4h…直線部、4j…湾曲部、4k…後端、4p…突起、4q…環状凹部、4r…開口、4s…環状凸部、4t…前端、5…ピストン、5b…第1凹部、5c…第2凹部、6…押棒、6b…雄螺子、6c…係合部、6d…視認部、6f…突起、6g…後端、6h…拡径部、6j…前端、6k…押圧部、6p…第1部分、6q…第2部分、7,7A…内側筒状部材、7b…透明部、7c…凹部、7d…外面、7f…内面、7g…突起、7h…平坦面、7j…拡幅部、7k…一端、7p…直線状部、7q…他端、7r…凸部、7s…印字部、7t…露出部、7v…透明部、7w…外面、7y…第1面、7z…第2面、7z1…凸面部、8…雌螺子部材、8b…雌螺子、8c…端部、8d…前側筒部、8f…後側筒部、8g…バネ部、8h…外面、8j…凸部、8k…第1凸部、8p…第2凸部、8q…筒状部、8r…スリット、8s…外面、8t…凸部、8v…突部、8w…傾斜面、8x…当接面、9…ラチェット機構、17s…印字部、17s1…第1印字部、17s2…第2印字部、D1…軸線方向、D2…周方向、L…軸線、M…描画材、S…延長面。