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特開2025-8782繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008782
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/152 20060101AFI20250109BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
D06M13/152
D06M13/463
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111272
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】舩坂 怜司
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大智
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC15
4L033BA13
4L033BA86
(57)【要約】
【課題】繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法を提供する。
【解決手段】(a)フェノール系酸化防止剤、及び(b)不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩を含有する水性組成物を繊維製品に接触させる、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノール系酸化防止剤[以下、(a)成分という]、及び(b)不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩[以下、(b)成分という]を含有する水性組成物[以下、水性組成物(A)という]を繊維製品に接触させる、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【請求項2】
(a)成分を、繊維製品1gあたり0.2μg以上20μg以下付着させる、請求項1に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【請求項3】
(a)成分は、下記一般式(a1)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【化1】
[式中、R1aはターシャリーブチル基又は水素原子であり、R2a、R3a、R5aはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は-C2nCOOR6aで示されるエステル基である。R4aは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6aで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6aは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【請求項4】
(b)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上の4級アンモニウム化合物(1b)であり、下記要件1及び要件2を満たす、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【化2】
[式中、R1bは炭素数14以上22以下の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。Yは-COO-基又は-OCO-基である。R2bは炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R3b、R4bは各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2b-OH、又はR1b-Y-R2b-から選ばれる基である。ここで、R3b及び/又はR4bが、R1b-Y-R2b-のとき、R1b及び/又はR2bは同一又は異なっていてもよい。また、R3b及び/又はR4bが、-R2b-OHのとき、R2bは同一又は異なっていてもよい。R5bは炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは陰イオンである。]
要件1:4級アンモニウム化合物(1b)が1種の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1b)が2種以上の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
要件2:下記の式(1)により定義される不飽和率が20質量%以上100質量%以下である。
不飽和率(質量%)=[(R1bがアルケニル基であるR1bCOOHの全質量)/(R1bCOOHの全質量)]×100 (1)
【請求項5】
スプレーヤーを具備した容器に水性組成物(A)を充填し、該容器から水性組成物(A)を噴霧して、水性組成物(A)を繊維製品に接触させる、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【請求項6】
繊維製品を水性組成物(A)に浸漬する、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。
【請求項7】
水性組成物(A)中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比[(a)/(b)]が、0.0001以上0.1以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類などの繊維製品に付着する、人体から出る汗、皮脂、タンパク質などの汚れは通常の洗濯により除去することが行われているが、汚染と洗浄を繰り返すなかで、洗濯では落としきれない汚れが蓄積する。そのような蓄積汚れが原因で菌の代謝による臭いの課題を有することが知られており、殺菌剤などの成分を併用することで対処することが一般的である。しかしながら、殺菌剤を応用するだけでは臭いの発生は抑制することが難しく、特に皮脂の酸化分解による臭いの発生は、通常の洗濯や殺菌剤では抑制することが困難である。
【0003】
特許文献1には、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールなどのフェノール系酸化防止剤を4級アンモニウム塩に代表される二分子膜多層構造に内包した小胞体を分散させた皮脂の酸化が原因となる臭いの抑制技術が記載されている。
特許文献2には、酸化防止剤の吸着量を向上させて自発的自動酸化による悪臭の発生を抑制する技術が開示されており、エラスタンが用いられている繊維が酸化防止剤の吸着を促進することが記載されている。
特許文献3には、エステル型カチオンを含有する柔軟剤組成物に酸化防止剤を応用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-131042号公報
【特許文献2】特表2022-531561号公報
【特許文献3】特開2004-84143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、未だ十分な繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生抑制効果は得られておらず、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を顕著に抑制することが求められている。また、特許文献3に記載の技術は透明柔軟剤の安定性を改善するものであり、繊維製品に残留した皮脂などの酸化を抑制し、皮脂汚れに起因する臭いの発生を防止する技術を開示するものではない。
本発明は、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)フェノール系酸化防止剤[以下、(a)成分という]、及び(b)不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩[以下、(b)成分という]を含有する水性組成物[以下、水性組成物(A)という]を繊維製品に接触させる、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法が、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制できる理由は定かではないが、以下のように推察される。
(a)成分が皮脂の酸化分解を抑制することで、皮脂の酸化分解する過程で発生するにおい物質が低減するが、単独では繊維製品に対する吸着能が小さく、そのため、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する効果を十分発揮しているとは言えないと考えられる。一般の陽イオン界面活性剤はこのような吸着助剤として有効であることは知られているが、まだ効果としては満足できるレベルではない。本発明のように不飽和結合を多く有する(b)成分は、(a)成分の組成物への可溶化と繊維製品への吸着をより促進することができ、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制できるものと考えられる。
本発明では(a)成分と(b)成分の相乗効果により、繊維製品に残存又は繊維製品に付着した皮脂汚れに起因する臭いの発生を効果的に抑制できたものと推察される。
なお、本発明の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法は、上記の作用機構になんら限定されるものではない。
【0009】
<繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法>
本発明の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法[以下、本発明の方法という]は、(a)フェノール系酸化防止剤[以下、(a)成分という]、及び(b)不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩[以下、(b)成分という]を含有する水性組成物[以下、水性組成物(A)という]を繊維製品に接触させる。
本発明の方法は、例えば皮脂汚れが付着した繊維製品からの臭いの発生を抑制することができる。この臭いは、皮脂汚れに起因する臭い、例えば、皮脂の酸化分解に起因する臭いが挙げられる。
【0010】
本発明の方法は、水性組成物(A)を、皮脂汚れが付着した繊維製品に接触させる、皮脂汚れが付着した繊維製品からの皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法であってよい。
皮脂汚れは、人体の皮脂腺から分泌される皮脂が付着した汚れであり、例えば、襟元や袖口などに付着する黄ばみや黒ずみが挙げられる。
【0011】
<(a)成分>
(a)成分は、フェノール系酸化防止剤である。(a)成分は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
(a)成分は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくは2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-エチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ヘキサンジオール-ビス[3'-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェエル)プロピオネート]、2,4-ビス[(N-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)]-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチル)フェノール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチル)フェノール、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、及びメチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス[(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びメチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群より選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス[(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びメチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群より選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはメチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。
【0012】
(a)成分は、下記一般式(a1)で表される化合物から選ばれる1種以上のフェノール系酸化防止剤[以下、(a1)成分という]が挙げられる。
【化1】
[式中、R1aはターシャリーブチル基又は水素原子であり、R2a、R3a、R5aはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は-C2nCOOR6aで示されるエステル基である。R4aは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6aで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6aは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【0013】
一般式(a1)中、R1aはターシャリーブチル基が好ましい。
一般式(a1)中、R2aは、ターシャリーブチル基、エチル基、メチル基又は水素原子が好ましく、ターシャリーブチル基又は水素原子がより好ましい。
一般式(a1)中、R3aは、水素原子、メチル基、又は-C2nCOOR6aが好ましく、水素原子がより好ましい。
一般式(a1)中、R4aは、水素原子、メチル基、メトキシ基又は-C2nCOOR6aが好ましく、メチル基、メトキシ基又は-C2nCOOR6aがより好ましい。
一般式(a1)中、R5aは、水素原子、-C2nCOOR6a又はターシャリーブチル基が好ましく、ターシャリーブチル基又は水素原子がより好ましい。
また、R1a、R2a、R3a、R5aの少なくとも1つはターシャリーブチル基である。
また、R3a、R4a、R5aの少なくとも1つ、好ましくは1つが-C2nCOOR6aであり、好ましくはR3a、R5aは水素原子であり、R4aが-C2nCOOR6aが好ましい。
nは、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、1以上、好ましくは2以上、そして、5以下、好ましくは4以下である。
6aの炭素数は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくは1以上、そして、18以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。R6aは、アルキル基又はアルケニル基であり、アルキル基が好ましい。
【0014】
(a1)成分は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、一般式(a1)中、R1a及びR2aがターシャリーブチル基、R3a及びR5aが水素原子、R4aが-CCOOCHで示されるエステル基である化合物が好ましい。
【0015】
<(b)成分>
(b)成分は、不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩である。(b)成分は、不飽和炭化水素基を有する化合物のみを含む4級アンモニウム塩でも良く、飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物と不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩でも良く、1つの化合物中に不飽和炭化水素基と飽和炭化水素基を有する4級アンモニウム塩でも良く、それらの混合物であっても良い。
【0016】
(b)成分は、組成物の安定性の観点から、不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、そして、100質量%以下、好ましくは95質量%以下含む4級アンモニウム塩である。(b)成分は、不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩の含有量が100質量%、すなわち、不飽和炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩のみからなる4級アンモニウム塩であってよい。また、(b)成分は、飽和炭化水素基のみを有する4級アンモニウム塩を含んでもよい。
【0017】
(b)成分の塩は、不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウムのヨウ化物、臭化物及び塩化物、不飽和炭化水素基を有する4級アンモニウムの炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステル塩、炭素数12以上18以下の脂肪酸塩、並びに炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸塩から選ばれる塩が好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステル塩から選ばれる塩がより好ましく、モノメチル硫酸塩又はモノエチル硫酸塩が更に好ましい。
【0018】
(b)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上の4級アンモニウム化合物(1b)であり、下記要件1及び要件2を満たす、4級アンモニウム塩が挙げられる。4級アンモニウム化合物(1b)が2種以上の場合、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b及びXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化2】
【0019】
[式中、R1bは炭素数14以上22以下の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。Yは-COO-基又は-OCO-基である。R2bは炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R3b、R4bは各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2b-OH、又はR1b-Y-R2b-から選ばれる基である。ここで、R3b及び/又はR4bが、R1b-Y-R2b-のとき、R1b及び/又はR2bは同一又は異なっていてもよい。また、R3b及び/又はR4bが、-R2b-OHのとき、R2bは同一又は異なっていてもよい。R5bは炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは陰イオンである。]
【0020】
要件1:4級アンモニウム化合物(1b)が1種の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(1b)が2種以上の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
要件2:下記の式(1)により定義される不飽和率が20質量%以上100質量%以下である。
不飽和率(質量%)=[(R1bがアルケニル基であるR1bCOOHの全質量)/(R1bCOOHの全質量)]×100 (1)
【0021】
一般式(b1)中、R1bは、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、増粘抑制の観点から、アルキル基としてはペンタデカニル基又はヘプタデカニル基、アルケニル基としては8-ヘプタデセニル基、8,11-ヘプタデカジエニル基、8,11,14-ヘプタデカトリエニル基、4,7,10,13-ノナデカテトラエニル基、4,7,10,13,16-ノナデカペンタエニル基、又は3,6,9,12,15,18-ヘンエイコサヘキサエニル基が好ましい。
一般式(b1)中、Yは、-COO-基または-OCO-基であり、増粘抑制及び原料入手が容易な点で、-COO-基が好ましい。
一般式(b1)中、R2bは、具体的にはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基であり、原料入手が容易な点で、エチレン基が好ましい。
一般式(b1)中、R3b及びR4bの炭素数1以上3以下のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基又はプロピル基である。増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(b1)中、R3b及びR4bの-R2b-OH基は、具体的にはヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基又は2-ヒドロキシプロピル基である。原料入手が容易な点で、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
一般式(b1)中、R5bは、具体的にはメチル基、エチル基又はプロピル基である。増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(b1)中、Xは、対陰イオンであり、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、モノメチル硫酸イオン又はモノエチル硫酸イオンが更に好ましい。
【0022】
<要件1>
(b1)成分は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、4級アンモニウム化合物(1b)が1種の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム塩が好ましい。また、(b1)成分は、4級アンモニウム化合物(1b)が2種以上の場合、R1bの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む4級アンモニウム塩が好ましい。
【0023】
<要件2>
(b1)成分は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、不飽和率が、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、そして、同じ観点から、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0024】
(b1)成分の不飽和率は、(b1)成分を構成するR1b基をR1bCOOHに置き換えたときの、R1bがアルケニル基であるR1bCOOHの全質量と、R1bCOOHの全質量と、に基づいて、上記の式(1)より算出する。
(b1)成分の不飽和率は、(b1)成分の合成に用いられたR1bを含む化合物、例えば、R1bCOOHのうち、R1bがアルケニル基であるR1bCOOHの全質量と、R1bCOOHの全質量と、に基づいて、上記の式(1)より算出できる。
一般式(b1)の4級アンモニウム化合物を、アルカノールアミンと、脂肪酸又は脂肪酸クロライドとのエステル化反応若しくは脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応で製造する際に、第一段階において、R1bCOX(脂肪酸、脂肪酸クロライド又は脂肪酸の低級アルコールエステル)をアルカノールアミンに対してモル比で1.5倍以上用いる等の条件を最適化することにより、概ね95%以上のR1bCOXがアルカノールアミンと反応して、エステル化物を与える。従って、原料として用いる1種又は2種以上のR1bCOXの不飽和率を、上記不飽和率として差し支えない。
また、不飽和率をヨウ素価の測定で算出することも可能である。その場合も、R1bCOXをアルカノールアミンに対して過剰量用いる場合は、原料として用いる1種又は2種以上のR1bCOXのヨウ素価を測定して算出して差し支えない。なお、R1bCOXのヨウ素価は「岩波理化学辞典第4版」岩波書店に記載された方法により測定することができる。
【0025】
<水性組成物(A)の組成等>
水性組成物(A)は、(a)成分を、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.0025質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、そして、同じ観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有する。
【0026】
水性組成物(A)は、(b)成分を、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、そして、同じ観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下含有する。
【0027】
水性組成物(A)において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比〔(a)/(b)〕は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.0002以上、更に好ましくは0.0005以上、より更に好ましくは0.001以上、そして、同じ観点から、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0028】
<水>
水性組成物(A)は、水を含有することができる。水は、脱イオン水、水道水、地下水、その他滅菌処理等を施した水などが挙げられる。水は、(a)成分、(b)成分及び下記の任意成分以外の残部として、水性組成物(A)の組成が100質量%となるような量で用いられる。
本発明の水性組成物は、貯蔵安定性の観点から、水を、組成物中に、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%未満含有する。
【0029】
水性組成物(A)は、(a)成分、(b)成分以外に酵素、その他の布帛柔軟剤物質、界面活性剤、安定化剤、オリゴマー、ポリマー、殺菌剤、抗菌剤、香料、蛍光剤、消泡剤、キレート化剤、着色料、無機塩類などの任意成分〔但し、(a)成分及び(b)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0030】
本発明の方法は、皮脂汚れが付着した及び/又は皮脂汚れが付着するおそれがある繊維製品を対象とすることができる。繊維製品は、繊維、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維で製造された繊維製品であってよい。
【0031】
繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
繊維は木綿繊維を含む繊維であることが好ましい。繊維中の木綿繊維の含有量は、剤の吸着の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ等の製品を意味する。繊維製品は木綿繊維を含む繊維製品であることが好ましい。繊維製品中の木綿繊維の含有量の好ましい態様は、前記繊維中の木綿繊維の含有量と同様である。
【0032】
本発明の方法について、具体的な例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明の繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法は、具体的な例に限定されるものではない。
本発明の方法は、本発明の水性組成物(A)を繊維製品に接触させて、繊維製品の皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する方法である。水性組成物(A)は、原液を直接又は水性組成物(A)の濃縮液を水などで希釈して、繊維製品に接触させることができる。
本発明の水性組成物(A)を繊維製品に接触させる態様としては、例えば、水性組成物(A)又はその希釈液をスプレーヤーを具備した容器に充填し、この容器から水性組成物(A)を繊維製品に噴霧して水性組成物(A)を繊維製品に接触させること、水性組成物(A)又はその濃縮液の希釈液に繊維製品を浸漬して水性組成物(A)と繊維製品とを接触させること、が挙げられる。繊維製品の浸漬工程では、繊維製品に機械力を加えることもできる。繊維製品に機械力をかける方法としては、業務用洗濯機、家庭用洗濯機を使用して水流により外力を加える方法が挙げられる。
繊維製品と水性組成物(A)とを接触した後、繊維製品をすすぐことや繊維製品を乾燥させることを行ってもよく、繊維製品を乾燥させることが好ましい。
【0033】
本発明の方法では、皮脂汚れに起因する臭いの発生を抑制する観点から、(a)成分を、繊維製品1gあたり、好ましくは0.001μg以上、より好ましくは0.005μg以上、更に好ましくは0.2μg以上、そして、その上限値は特に限定されるものではないが、例えば、100μg以下、更には20μg以下付着させる。
繊維製品1gあたりの(a)成分の付着量は、下記の方法により、繊維製品に付着した(a)成分をメタノールで抽出し、メタノールに含まれる(a)成分を高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(HPLC-MS)により測定する。
【0034】
<繊維製品1gあたりの(a)成分の付着量の測定方法>
繊維製品1gあたりの(a)成分の付着量は、繊維製品に付着した(a)成分をメタノールに浸漬して、超音波洗浄機(アズワンASUシリーズ)で30分超音波振動をかけて、繊維製品に付着した(a)成分をメタノールで抽出して測定する。
このメタノールに含まれる(a)成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィー/質量分析計(HPLC-MS)により測定する。具体的には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により(a)成分を分離し、それぞれを質量分析計(MS)にかけることで同定する。結果、そのHPLC-MSピーク面積から(a)成分の含有量を求める。そして、求められた(a)成分の含有量より、繊維製品1gあたりの(a)成分の付着量(μg)を算出する。
なお、測定に使用した装置及び条件は次の通りである。
装置:(株)島津製作所製「LCMS-2020」
カラム:島津製作所製「Shim-packXR-ODS」、2.0×100mm、粒子サイズ:2.2μm
溶離液A:10mM酢酸アンモニウム添加水
溶離液B:10mM酢酸アンモニウム添加メタノール溶液
溶離液C:10mM酢酸アンモニウム添加エタノール溶液
グラジェント:0分(A/B/C=60/20/20)→3.01~10.0分(0/50/50)→10.01~15分(60/20/20)
ESI検出:陽イオン検出 m/z=310.0
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
インジェクション容量:5μL
【0035】
繊維製品と接触させる水性組成物(A)の温度は、液の安定性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
また、繊維製品と水性組成物(A)との接触時間は、剤と処理布の接触の観点から、好ましくは1分以上、そして、その上限は特に限定するものではないが、例えば、60分以下、更には30分以下である。
【0036】
本発明の方法において、繊維製品の質量(kg)と水性組成物(A)又はその希釈液の量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち水性組成物(A)又はその希釈液の量(リットル)/繊維製品の質量(kg)(以下、この比を浴比とする場合もある)の値は、本発明の効果をより発揮させる観点から、2以上、3以上、4以上、5以上、そして、100以下、50以下から選択できる。
【実施例0037】
下記の配合成分を用いて表4~6に記載の各成分を含有する水性組成物を調製し、下記の臭い強度の評価を行った。
【0038】
<配合成分>
<(a)成分>
・(a-1)成分:メチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、Methyl 3-(3,5-Di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate、東京化成工業株式会社製
・(a-2)成分:3-5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(di-t-butyl-4-hydroxytoluene)、東京化成工業株式会社製
【0039】
<(b)成分>
・(b-1)成分:下記の合成例1で合成されたカチオン界面活性剤である。
・(b-2)成分:下記の合成例2で合成されたカチオン界面活性剤である。
・(b-3)成分:下記の合成例3で合成されたカチオン界面活性剤である。
【0040】
<合成例1:(b-1)成分の合成>
トリエタノールアミンと表1に示した組成のR1bCOOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたR1bCOOHの不飽和率は、27%+3%=30%である。
【0041】
【表1】
【0042】
トリエタノールアミンとR1bCOOHを、反応モル比(R1bCOOH/トリエタノールアミン)=1.65/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み、撹拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のR1bCOOHが5質量%含まれていた。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行った。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら撹拌下50℃まで加熱昇温した。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間撹拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0043】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(b-1)成分を75質量%、エタノール10質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応R1bCOOHを2質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、(b-1)成分のうち一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3b及びR4bが-COHであり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-1)成分中28質量%、一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3bがR1b-COO-C-であり、R4bが-COHであり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-1)成分中56質量%、一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3b及びR4bがRb1-COO-C-であり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-1)成分中16質量%であった。また(b-1)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(75÷(75+12))した4級化率は86質量%であった。
【0044】
<合成例2:(b-2)成分の合成>
トリエタノールアミンと表2に示した組成のR1bCOOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたR1bCOOHの不飽和率は、78%+10%+2%=90%である。
【0045】
【表2】
【0046】
トリエタノールアミンとR1bCOOHを、反応モル比(R1bCOOH/トリエタノールアミン)=1.87/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み撹拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のR1bCOOHが1質量%含まれていた。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行った。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら撹拌下50℃まで加熱昇温した。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間撹拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0047】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(b)成分である(b-2)成分を66質量%、エタノール15質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応R1bCOOH1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3b及びR4bが-COHであり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-2)成分中22質量%、一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3bがR1b-COO-C-であり、R4bが-COHであり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-2)成分中58質量%、一般式(b1)において、-Y-R2b-が-COO-C-であり、R3b及びR4bがR1b-COO-C-であり、R5bがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(b-2)成分中20質量%であった。また(b-2)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(66÷(66+17))した4級化率は80質量%であった。
【0048】
<合成例3:(b-3)成分の合成>
トリエタノールアミンとR1bCOOHとして以下の組成の脂肪酸を用いた以外は合成例2と同じ方法で(b-3)成分を合成した。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:55質量%
(b-3)成分において、モノ体/ジ体/トリ体の比率は22質量%/58質量%/20質量%、未反応脂肪酸は0.5質量%、4級化率は80質量%であった。(b-3)成分の合成に用いた脂肪酸の不飽和率は0%である。
【0049】
<(c)成分>
・(c)成分:表3に記載の香料組成物である。
【0050】
【表3】
【0051】
<臭い強度の評価方法>
(1)汚染布の調製方法
6cm×6cmのTCブロード(谷頭商店;ポリエステル65%、綿35%)に、スクアレン(東京化成工業株式会社製)とオレイン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を質量比1:1の割合で混合した液を20μL塗布した布を汚染布として用いた。
【0052】
(2)塗布処理
(1)で調製した汚染布(6cm×6cm)に、表4の水性組成物をイオン交換水で希釈した液を、水性組成物の塗布量が500μLとなるよう塗布し、20℃、43%RHの条件下で18時間放置し乾燥後、汚染布をバイアル瓶に入れて蓋をし、50℃、18時間エージングを行った。
【0053】
(3)浸漬処理
(1)で調製した汚染布(6cm×6cm)5枚を、ターゴトメーター(Ueshima、MS-8212)にて、85rpmで3分間処理をした。すすぎにおける同浴にはTCブロード(谷頭商店;ポリエステル65%、綿35%)を合計15g入れ、市水(20℃)を用い浴比を30に調整した。すすぎ条件は、何れも、表5又は表6に記載の水性組成物を注入し、水温は20℃で行った。その後、二層式洗濯機を用いてすすぎ後の汚染布の脱水処理を2分間行った後、20℃、43%RHの条件下で18時間放置し乾燥させた。乾燥させた汚染布はバイアル瓶に入れて蓋をし、50℃、18時間エージングを行った。
【0054】
(4)臭い強度の評価方法
(2)の処理を行った汚染布、(3)の処理を行った汚染布に対して、専門パネルがニオイ評価を行い、下記評価に基づいて、実施例及び比較例の臭い強度の評価を行った。臭い強度の評価が「○」、「△」の水性組成物は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を顕著に抑制しており、臭い強度の評価が「○」の水性組成物は、皮脂汚れに起因する臭いの発生を特に顕著に抑制している。
[臭い強度の評価指標]
○:不快な臭いがしない 。
△:不快な臭いがややする。
×:不快な臭いがする。
【0055】
(5)布1gあたりの(a)成分の付着量の測定方法
(2)又は(3)で処理をした白布1枚をメタノール10mLに浸漬し、超音波洗浄機(アズワンASUシリーズ)で30分間超音波照射を行った。得られた液を下記条件のLC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)に供し、別途作成した検量線をもとに、布1gに付着した(a)成分の付着量を測定した。
【0056】
<LC/MSの測定条件>
測定に使用した装置及び条件は次の通りである。
装置:(株)島津製作所製「LCMS-2020」
カラム:島津製作所製「Shim-packXR-ODS」、2.0×100mm、粒子サイズ:2.2μm
溶離液A:10mM酢酸アンモニウム添加水
溶離液B:10mM酢酸アンモニウム添加メタノール溶液
溶離液C:10mM酢酸アンモニウム添加エタノール溶液
グラジェント:0分(A/B/C=60/20/20)→3.01~10.0分(0/50/50)→10.01~15分(60/20/20)
ESI検出:陽イオン検出 m/z=310.0
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
インジェクション容量:5μL
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】