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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008784
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20250109BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20250109BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20250109BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/62
C11D3/50
C11D3/20
C11D3/43
C11B9/00 L
C11B9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111274
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】舩坂 怜司
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大智
【テーマコード(参考)】
4H003
4H059
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AE05
4H003BA12
4H003BA20
4H003BA21
4H003DA01
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB14
4H003FA26
4H059BA19
4H059BA22
4H059BC10
4H059DA09
4H059EA31
4H059EA35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する水性組成物並びに抑制する方法を提供する。
【解決手段】(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分を0.005質量%以上2質量%以下、(b)メチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上、並びに水を含有する水性組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分[以下、(a)成分という]を0.005質量%以上2質量%以下、(b)下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上[以下、(b)成分という]、並びに水を含有する、水性組成物。
【化1】

[式中、R1bはターシャリーブチル基であり、R2b、R3b、R4b、R5bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6bで示されるエステル基であり、R2b、R3b、R4b及びR5bの少なくとも1つは-C2nCOOR6bで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6bは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【請求項2】
更に(c)界面活性剤[以下、(c)成分という]を含有する、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
(c)成分は、下記一般式(c3-1)で表される化合物から選ばれる1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)であって、下記要件1及び要件2を満たす、請求項2に記載の水性組成物。
【化2】

[式中、R1cは炭素数14以上22以下の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。Yは-COO-基又は-OCO-基である。R2cは炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R3c、R4cは各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2c-OH、又はR1c-Y-R2c-から選ばれる基である。ここで、R3c及び/又はR4cが、R1c-Y-R2c-のとき、R1c及び/又はR2cは同一又は異なっていてもよい。また、R3c及び/又はR4cが、-R2c-OHのとき、R2cは同一又は異なっていてもよい。R5cは炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは陰イオンである。]
要件1:4級アンモニウム化合物(c3-1)が1種の場合、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(c3-1)が2種以上の場合、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
要件2:下記の式(1)により定義される不飽和率が20質量%以上100質量%以下である。
不飽和率(質量%)=[(R1cがアルケニル基であるR1cCOOHの全質量)/(R1cCOOHの全質量)]×100 (1)
【請求項4】
水性組成物は、(b)成分を0.01質量%以上1質量%以下含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の水性組成物。
【請求項5】
(a)成分は、バニリン及びエチルバニリンから選ばれる1種以上を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の水性組成物。
【請求項6】
(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分を0.005質量%以上2質量%以下含有する水性組成物に、(b)下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上を混合する、水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法。
【化3】

[式中、R1bはターシャリーブチル基であり、R2b、R3b、R4b、R5bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6bで示されるエステル基であり、R2b、R3b、R4b及びR5bの少なくとも1つは-C2nCOOR6bで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6bは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物、特に香料を賦香した水性組成物、並びにこれら水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品、化粧品、トイレタリー製品などには消費者の嗜好性を満足させる目的で香料を用いることが一般に行われており、特に近年では洗浄や柔軟剤処理で繊維製品に対して着香させる技術が盛んに行われている。
【0003】
特許文献1には、(a)アルデヒド系香料成分から選ばれる少なくとも1種、(b)酸化防止剤及び(c)油剤を含有する、着香剤組成物が開示され、アルデヒド系香料成分を含有する組成物にブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)などの酸化防止剤を用いる技術が開示されている。
また、特許文献2には、(a)所定の3級アミン又はその4級化物、(b)シリコーン化合物、(c)酸化防止剤、(d)香料を含む柔軟剤組成物が開示され、香料を含有する組成物にブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)などの酸化防止剤を用いる技術が開示されている。
また、特許文献3には、(a)所定の3級アミン又はその酸塩若しくはその4級化物(a-1)及びシリコーン化合物(a-2)から選ばれる少なくとも1種と、(b)酸化防止剤と、(c)アルデヒド系香料と、を含有する柔軟剤組成物が開示され、香料を含有する組成物にブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)などの酸化防止剤を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-37472号公報
【特許文献2】特開2010-37690号公報
【特許文献3】特開2010-37691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、組成物中の不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分の含有量が多くなると、組成物が着色したり、組成物の香りの変調を引き起したりする問題が生じるおそれがあり、従来技術ではこれらを抑制することが難しかった。
本発明は、不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する水性組成物、並びに香料を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分[以下、(a)成分という]を0.005質量%以上2質量%以下、(b)下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上[以下、(b)成分という]、並びに水を含有する、水性組成物に関する。
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、R1bはターシャリーブチル基であり、R2b、R3b、R4b、R5bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6bで示されるエステル基であり、R2b、R3b、R4b及びR5bの少なくとも1つは-C2nCOOR6bで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6bは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【0009】
また、本発明は、上記の(a)成分を0.005質量%以上2質量%以下含有する水性組成物に、上記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上を混合する、水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香料を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する水性組成物、並びに香料を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性組成物が、香料を含有する水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制できる理由は定かではないが、以下のように推察される。
(a)成分は香りの変調及び/又は変色を生じやすい香料成分であることが知られており、それを抑制する目的で以前から酸化防止剤が用いられてきた。しかしながら組成物中の(a)成分の含有量が多くなると、従来の酸化防止剤では満足できる効果が得られない。一般に(a)成分は親油性成分であり、組成物中に油滴や乳化物として存在すると推定されるが、本発明の(b)成分は、従来の酸化防止剤より親油性であるため、より(a)成分と親和性があり油滴や乳化物にとりこまれるか、近接した状態で存在するものと推定される。これにより、(a)成分の含有量が多い水性組成物における、香りの変調及び/又は変色を効果的に抑制できるものと推察される。
なお、本発明の水性組成物及び水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法は、上記の作用機構になんら限定されるものではない。
また、本発明において、香料を含有する水性組成物の香りの変調は、光及び/又は熱による香りの変調であってよく、香料を含有する水性組成物の変色は、光及び/又は熱による水性組成物の変色であってよい。
【0012】
<水性組成物>
本発明の水性組成物は、(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分[(a)成分である]を、0.005質量%以上2質量%以下、上記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上[(b)成分である]、並びに水を含有する。
【0013】
<(a)成分:香料成分>
(a)成分は、不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分である。
不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分は、不飽和アルデヒド系香料成分及び芳香族アルデヒド系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分である。また、不飽和又は芳香族ケトン系香料成分は、不飽和ケトン系香料成分及び芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分である。
不飽和アルデヒド系香料成分とは、香料分子を構成する炭素-炭素原子間に二重結合や三重結合を少なくとも1つもつアルデヒド系香料成分であり、芳香族アルデヒド系香料成分とは、分子中に芳香族炭化水素基とアルデヒド基とをそれぞれ少なくとも1つ有する香料成分である。同様に、不飽和ケトン系香料成分とは、香料分子を構成する炭素-炭素原子間に二重結合や三重結合を少なくとも1つもつケトン系香料成分であり、芳香族ケトン系香料とは、分子中に芳香族炭化水素基とケトン基とをそれぞれ少なくとも1つ有する香料成分である。
【0014】
(a)成分は、シトラス系、グリーン系、フローラル系などの香調を有し、香料組成物の香りの設計に欠かせない香料成分である一方で、酸化や光劣化を引き起こしやすい成分でもある。特に不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、更には芳香族炭化水素基を有するアルデヒド系香料成分から選ばれる1種以上、更にはバニリン及びエチルバニリンから選ばれる1種以上が顕著に酸化、光、熱などの影響を受けやすい。
【0015】
[不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分]
(a)成分の不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分とは、例えば、香料分子内に不飽和炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基とアルデヒド基とをそれぞれ少なくとも1つ有する化合物であり、特にα、β不飽和アルデヒド、分子中に芳香族炭化水素基を有する芳香族アルデヒドが香りの変調及び/又は変色の課題を有する可能性があり、本発明の効果を顕著に実感する観点で好ましい。
具体的には、2,6-ノナジエナール、シス-4-デセナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ミラックアルデヒド、センテナール、ボロナール、セトナール、サリチルアルデヒド、トリプラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、マイラックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール、サフラナール、2,4-デカジエナール、2-トリデセナール、直鎖アルデヒド化合物等を挙げることができる。
【0016】
これらの不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分の中では、2,6-ノナジエナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ミラックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、マイラックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアールが香りの変調及び/又は変色の課題を有する可能性があり、本発明の効果を顕著に実感する観点で好ましく、特にヘキシルシンナミックアルデヒド、マイラックアルデヒド、アニスアルデヒド、ヘリオナール、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、エチルバニリン、バニリン、ヘリオトロピン及びリリアールから選ばれる少なくとも1種が香りの変調及び/又は変色の課題を有する可能性があり、本発明の効果を顕著に実感する観点でより好ましい。
【0017】
[不飽和又は芳香族ケトン系香料成分]
(a)成分の不飽和又は芳香族ケトン系香料成分とは、例えば、香料分子内に不飽和炭化水素及び/又は芳香族炭化水素基とケトン基をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物であり、α、β不飽和ケトン、芳香族ケトンが香りの変調及び/又は変色の課題を有する可能性があり、本発明の効果を顕著に実感する観点で好ましい。
具体的には、α-イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、α-イロン、α-ダマスコン、シス-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、アセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、アセチルセドレン、カシュメラン、i-カルボン、ダマセノン、シクロテン等が挙げられる。
これらの不飽和又は芳香族ケトン系香料成分の中では、香りの変調及び/又は変色の課題を有する可能性があり、本発明の効果を顕著に実感する観点から、α-イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、α-イロン、α-ダマスコンを挙げることができる。
【0018】
<その他の香料成分:(a’)成分>
本発明では水性組成物に好ましい香調を設計する観点から、(a)成分以外の香料成分[以下(a’)成分という]を含有することができる。
【0019】
(a’)成分としては、炭化水素系香料成分、アルコール系香料成分、エーテル系香料成分、エステル系香料成分、二トリル系香料成分、環状エーテル系香料成分、アミン系香料成分、ラクトン系香料成分、環状ケトン系香料成分等が挙げられる。
【0020】
炭化水素系香料成分としては、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、リモネン、ターピネオール、ターピノレン、γ-ターピネン、オレンジペラ等が挙げられる。
【0021】
アルコール系香料成分としては、トランス-2-ヘキセノール、シス-3-ヘキセノール、3-オクタノール、リナロール、ゲラニオール、β-フェニルエチルアルコール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、l-メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、p-t-ブチルシクロヘキサノール、o-t-ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、オイゲノール、ポリサントール、フェニルヘキサノール、ジヒドロミルセノール等が挙げられる。
【0022】
エーテル系香料成分としては、ネロールオキサイド、1,8-シネオール、ローズオキサイド、リメトールメントフラン、リナロールオキサイド、ブチルジメチルジヒドロピラン、セドリルメチルエーテル、メトキシシクロドデカン、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン、アニソール、アセトアニソール、アネトール、ジヒドロアネトール、メチルオイゲノール、フェニルエチルイソアミルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
エステル系香料成分としては、ベンジルアセテート、ギ酸エチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、酢酸シンナミル、酢酸アニシル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸リナリル、酪酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸シトロネリル、イソ吉草酸ゲラニル、桂皮酸エチル、桂皮酸ベンジル、桂皮酸シンナミル、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、フルテート、シクロヘキシルサリチレート等が挙げられる。
【0024】
ニトリル系香料成分、環状エーテル系香料成分、アミン系香料成分、ラクトン系香料成分、環状ケトン系香料成分、その他香料成分としては、シトロネリルニトリル、アンブロキサン、ルボフィックス、メチルアンスラニレイト、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、クマリン、ジャスモノラクトン、ジャスミンラクトン、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、パーライド、アンバーコア、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
【0025】
なお、上記香料成分の名称は「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)の記載に従った。
【0026】
本発明において、(a’)成分は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチルシトレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ベンジルベンゾエート及びフタル酸ジメチルなどの溶剤を含む。これらの成分は、貯蔵安定性や配合容易性の観点から、好ましい成分である。
【0027】
(a)成分は、(a)成分及び任意の(a’)成分からなる香料組成物[以下、香料組成物(A)という]として、水性組成物に配合することができる。
【0028】
香料組成物(A)中、(a)成分と(a’)成分の合計含有量に対する(a)成分の含有量の質量比[(a)/[(a)+(a’)]は、好ましい香調を設計する観点、並びに香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下、更により好ましくは0.3以下である。同様の観点から、本発明の水性組成物中、前記質量比[(a)/[(a)+(a’)]が、上記範囲であることが好ましい。
【0029】
<(b)成分>
(b)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上[以下、(b)成分という]である。
【化2】
【0030】
[式中、R1bはターシャリーブチル基であり、R2b、R3b、R4b、R5bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6bで示されるエステル基であり、R2b、R3b、R4b及びR5bの少なくとも1つは-C2nCOOR6bで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6bは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【0031】
一般式(b1)中、R2bは、ターシャリーブチル基、エチル基、メチル基又は水素原子が好ましく、ターシャリーブチル基又はメチル基がより好ましい。
一般式(b1)中、R3bは、水素原子又は-C2nCOOR6bが好ましく、水素原子がより好ましい。
一般式(b1)中、R4bは、水素原子又は-C2nCOOR6bが好ましく、-C2nCOOR6bがより好ましい。
一般式(b1)中、R5bは、水素原子又は-C2nCOOR6bが好ましく、水素原子がより好ましい。
また、R3b、R4b、R5bの少なくとも1つ、好ましくは1つが-C2nCOOR6bであり、好ましくはR3b、R5bは水素原子であり、R4bが-C2nCOOR6bが好ましい。
nは、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、1以上、好ましくは2以上、そして、5以下、好ましくは4以下である。
6bの炭素数は、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは1以上、そして、18以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下である。R6bは、アルキル基又はアルケニル基であり、アルキル基が好ましい。
【0032】
(b1)成分は、水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、一般式(b1)中、R1b及びR2bがターシャリーブチル基、R3b及びR5bが水素原子、R4bが-CCOOCHで示されるエステル基である化合物が好ましい。
【0033】
<水>
本発明の水性組成物は、水を含有することができる。水は、脱イオン水、水道水、地下水、その他滅菌処理等を施した水などが挙げられる。水は、(a)成分、(b)成分及び下記の任意成分以外の残部として、本発明の水性組成物の組成が100質量%となるような量で用いられる。
本発明の水性組成物は、貯蔵安定性の観点から、水を、組成物中に、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99%質量%以下含有する。
【0034】
<組成等>
本発明の水性組成物は、(a)成分を、好ましい香りを賦香する観点から、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、そして、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下含有する。
【0035】
また、水性組成物は、(a)成分と任意の(a’)成分を合計で、好ましい香りを賦香する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは0.8質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上、そして、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
水性組成物に香料組成物(A)を混合する場合、水性組成物中、香料組成物(A)の含有量が上記範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明の水性組成物は、(b)成分を、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、更により好ましくは0.05質量%以上、更により好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0037】
本発明の水性組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比〔(a)/(b)〕は、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下である。
【0038】
本発明の水性組成物において、香料組成物(A)の含有量と(b)成分の含有量との質量比〔(A)/(b)〕は、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、更により好ましくは50以下である。
【0039】
<(c)界面活性剤>
本発明の水性組成物は、前記(a)成分に起因する組成物の着色又は組成物の香りの変調を、前記(b)成分が抑制する効果をより高める観点から、(c)界面活性剤[以下、(c)成分という]を含有することが好ましい。(c)成分は、(b)成分による、(a)成分が起因する組成物の課題をより抑制させる成分である。
(c)成分は、(c1)アニオン界面活性剤[以下、(c1)成分という]、(c2)ノニオン界面活性剤[以下、(c2)成分という]、(c3)カチオン界面活性剤[以下、(c3)成分という]及び(c4)両性界面活性剤[以下、(c4)成分という]から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
〔(c1)成分〕
(c1)成分は、アニオン界面活性剤である。(c1)成分のアニオン界面活性剤として、下記(c1-1)成分、(c1-2)成分、(c1-3)成分及び(c1-4)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。
(c1-1)成分:アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(c1-2)成分:アルキレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩
(c1-3)成分:スルホン酸塩基を有するアニオン界面活性剤
(c1-4)成分:脂肪酸又はその塩
【0041】
(c1-1)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルキル硫酸エステル塩、及びアルケニル基の炭素数が10以上18以下のアルケニル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。
(c1-1)成分は、アルキル基の炭素数が12以上18以下のアルキル硫酸塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が好ましく、アルキル基の炭素数が12以上18以下のアルキル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより好ましい。
【0042】
(c1-2)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下、アルキレンオキシド平均付加モル数が1以上3以下のポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、及びアルケニル基の炭素数が10以上18以下、アルキレンオキシド平均付加モル数が1以上3以下のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。アルキレンオキシドは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上が好ましい。アルキレンオキシドが異なる複数のアルキレンオキシドを含む場合、異なる複数のアルキレンオキシドはブロック結合であっても、ランダム結合であってもよい。
(c1-2)成分は、エチレンオキシドの平均付加モル数が1以上2.2以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が好ましく、アルキル基の炭素数が12以上14以下で、エチレンオキシドの平均付加モル数が1以上2.2以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸塩がより好ましく、これらのナトリウム塩が更に好ましい。
【0043】
(c1-3)成分であるスルホン酸塩基を有するアニオン界面活性剤とは、親水基としてスルホン酸塩を有するアニオン界面活性剤を表す。
(c1-3)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニル基の炭素数が10以上18以下のアルケニルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルカンスルホン酸塩、α-オレフィン部分の炭素数が10以上18以下のα-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、及び脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩、及び炭素数が12以上16以下の内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。
(c1-3)成分は、アルキル基の炭素数が11以上16以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、アルキル基の炭素数が11以上16以下のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0044】
(c1-4)成分である脂肪酸又はその塩としては、炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩が挙げられる。(c1-4)成分の炭素数は、10以上、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下である。
【0045】
(c)成分のアニオン界面活性剤、更には(c1-1)成分~(c1-4)成分であるアニオン界面活性剤の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0046】
〔(c2)成分〕
(c2)成分は、ノニオン界面活性剤である。(c2)成分としては、平均付加モル数が3モル以上90モルのポリオキシアルキレン基を有するノニオン界面活性剤が好ましい。
(c2)成分としては、下記一般式(c2)で表されるノニオン界面活性剤がより好ましい。
1c-(CO)O-(AO)-R2c (c2)
[式中、R1cは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上のアルキレンオキシ基であり、xは0又は1の数であり、mはAOの平均付加モル数であり、3以上90以下の数であり、R2cは、水素原子又はメチル基である。]
【0047】
一般式(c2)中、R1cの炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下である。また、R1cの脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる脂肪族炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
また、一般式(c2)中、R2cは、水素原子が好ましい。
また、一般式(c2)中、xは、0又は1の数であり、0の数が好ましい。
また、一般式(c2)中、mは、AOの平均付加モル数であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上、更により好ましくは7以上、そして、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。
また、一般式(c2)中、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上のアルキレンオキシ基である。AOが異なる複数のアルキレンオキシ基を含む場合、異なる複数のアルキレンオキシ基はブロック結合であっても、ランダム結合であってもよい。AOは、例えば、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。(a)成分による香りの強さをより向上できる観点から、AOが、エチレンオキシ基を含むアルキレンオキシ基であることが好ましい。AOはエチレンオキシ基が好ましい。
【0048】
〔(c3)カチオン界面活性剤〕
(c3)成分は、カチオン界面活性剤である。(c3)成分は、下記一般式(c3-1)で表される化合物から選ばれる1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)が好ましい。
(c3)成分は、一般式(c3-1)で表される1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)であって、下記要件1及び要件2を満たす、4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム化合物(c3-1)が2種以上の場合、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c及びXは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化3】
【0049】
[式中、R1cは炭素数14以上22以下の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基又はアルケニル基である。Yは-COO-基又は-OCO-基である。R2cは炭素数1以上3以下のアルキレン基である。R3c、R4cは各々独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2c-OH、又はR1c-Y-R2c-から選ばれる基である。ここで、R3c及び/又はR4cが、R1c-Y-R2c-のとき、R1c及び/又はR2cは同一又は異なっていてもよい。また、R3c及び/又はR4cが、-R2c-OHのとき、R2cは同一又は異なっていてもよい。R5cは炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは陰イオンである。]
【0050】
要件1:4級アンモニウム化合物(c3-1)が1種の場合、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である。また、4級アンモニウム化合物(c3-1)が2種以上の場合、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む。
要件2:下記の式(1)により定義される不飽和率が20質量%以上100質量%以下である。
不飽和率(質量%)=[(R1cがアルケニル基であるR1cCOOHの全質量)/(R1cCOOHの全質量)]×100 (1)
【0051】
一般式(c3-1)中、R1cは、直鎖、分岐又は環状の炭素数14以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、増粘抑制の観点から、アルキル基としてはペンタデカニル基又はヘプタデカニル基、アルケニル基としては8-ヘプタデセニル基、8,11-ヘプタデカジエニル基、8,11,14-ヘプタデカトリエニル基、4,7,10,13-ノナデカテトラエニル基、4,7,10,13,16-ノナデカペンタエニル基、又は3,6,9,12,15,18-ヘンエイコサヘキサエニル基が好ましい。
一般式(c3-1)中、Yは、-COO-基又は-OCO-基であり、増粘抑制及び原料入手が容易な観点から、-COO-基が好ましい。
一般式(c3-1)中、R2cは、具体的にはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基であり、原料入手が容易な観点から、エチレン基が好ましい。
一般式(c3-1)中、R3c及びR4cの炭素数1以上3以下のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基又はプロピル基であり、増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(c3-1)中、R3c及びR4cの-R2c-OH基は、具体的にはヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基又は2-ヒドロキシプロピル基である。原料入手が容易な観点から、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
一般式(c3-1)中、R5cは、具体的にはメチル基、エチル基又はプロピル基である。増粘抑制の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(c3-1)中、Xは、対陰イオンであり、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、モノメチル硫酸イオン又はモノエチル硫酸イオンが更に好ましい。
【0052】
<要件1>
(c3)成分は、本発明の課題をより解決できる観点から、4級アンモニウム化合物(c3-1)が1種の場合、上記一般式(c3-1)で表される1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)であって、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である化合物が好ましい。また、(c3)成分は、4級アンモニウム化合物(c3-1)が2種以上の場合、上記一般式(c3-1)で表される1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)であって、R1cの少なくとも1つが直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数14以上22以下のアルケニル基である4級アンモニウム化合物を少なくとも1つ含む化合物が好ましい。
【0053】
<要件2>
(c3)成分は、本発明の課題をより解決できる観点から、上記一般式(c3-1)で表される1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)であって、不飽和率が、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、そして、貯蔵安定性の観点から、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である化合物が好ましい。
【0054】
(c3)成分の不飽和率は、例えば、上記一般式(c3-1)で表される1種以上の4級アンモニウム化合物(c3-1)において、4級アンモニウム化合物(c3-1)を構成するR1c基をR1cCOOHに置き換えたときの、R1cがアルケニル基であるR1cCOOHの全質量と、R1cCOOHの全質量と、に基づいて、上記の式(1)より算出する。
(c3)成分の不飽和率は、例えば、4級アンモニウム化合物(c3-1)の合成に用いられたR1cを含む化合物、例えば、R1cCOOHのうち、R1cがアルケニル基であるR1cCOOHの全質量と、R1cCOOHの全質量と、に基づいて、上記の式(1)より算出できる。
一般式(c3-1)の4級アンモニウム化合物を、アルカノールアミンと、脂肪酸又は脂肪酸クロライドとのエステル化反応若しくは脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、次いで4級化剤による4級化反応で製造する際に、第一段階において、R1cCOX(脂肪酸、脂肪酸クロライド又は脂肪酸の低級アルコールエステル)をアルカノールアミンに対してモル比で1.5倍以上用いる等の条件を最適化することにより、概ね95%以上のR1cCOXがアルカノールアミンと反応して、エステル化物を与える。従って、原料として用いる1種又は2種以上のR1cCOXの不飽和率を、上記不飽和率として差し支えない。
また、不飽和率をヨウ素価の測定で算出することも可能である。その場合も、R1cCOXをアルカノールアミンに対して過剰量用いる場合は、原料として用いる1種又は2種以上のR1cCOXのヨウ素価を測定して算出して差し支えない。なお、R1cCOXのヨウ素価は「岩波理化学辞典第4版」岩波書店に記載された方法により測定することができる。
【0055】
(c)成分は、本発明の課題をより解決できる観点から、(c2)成分であるノニオン界面活性剤及び(c3)成分であるカチオン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましく、(c3)成分がより好ましい。
【0056】
本発明の水性組成物は、(c)成分を、前記(a)成分に起因する組成物の着色又は組成物の香りの変調を前記(b)成分が抑制する効果をより高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
【0057】
本発明の水性組成物が(c)成分を含有する場合、本発明の水性組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比〔(a)/(c)〕は、前記(a)成分に起因する組成物の着色又は組成物の香りの変調を、前記(b)成分が抑制する効果をより高める観観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0058】
本発明の水性組成物は、任意に、泡立ちを抑制する観点から一般的に用いられる消泡剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。また、長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、キレート剤を用いることが好ましい。また、水性組成物のpHを調整する観点から、酸剤、アルカリ剤などのpH調整剤を含有することができる。
【0059】
本発明の水性組成物は、繊維製品等の洗浄用途、繊維製品等の仕上げ用途、芳香剤の用途に用いることができる。したがって、本発明の水性組成物は、洗浄剤組成物、繊維製品用洗浄剤組成物、仕上げ剤組成物、繊維製品用仕上げ剤組成物、柔軟剤組成物、芳香剤組成物から選ばれる1以上であってよい。繊維製品は、繊維、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維で製造された繊維製品であってよい。
また、トイレなどの悪臭の発生する硬質表面用の消臭剤、スプレー消臭剤、芳香剤など、香料組成物を比較的多く含有する組成物に対して有効である。
【0060】
繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
繊維は木綿繊維を含む繊維であることが好ましい。繊維中の木綿繊維の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ等の製品を意味する。繊維製品は木綿繊維を含む繊維製品であることが好ましい。繊維製品中の木綿繊維の含有量の好ましい態様は、前記繊維中の木綿繊維の含有量と同様である。
【0061】
本発明の水性組成物は、例えば、繊維製品等の対象物の処理に用いることができる。本発明の水性組成物は、該組成物若しくは該組成物又は該組成物の濃縮液を水で希釈した希釈液に対象物を浸漬すること、該組成物又は該組成物を水で希釈した希釈液を対象物に噴霧することを行って該組成物を対象物に接触させ、対象物を処理することができる。
本発明の水性組成物又はその希釈液等に対象物に浸漬させる際、対象物に機械力などの外力を加えてもよい。繊維製品に機械力をかける方法としては、業務用洗濯機、家庭用洗濯機を使用して水流により外力を加える方法が挙げられる。
また、本発明の水性組成物又はその希釈液を対象物に噴霧する際、該組成物又はその希釈液をスプレー容器に充填し、スプレー容器から対象物に本発明の水性組成物又はその希釈液を噴霧することができる。
【0062】
<スプレー式芳香剤物品>
本発明の水性組成物をスプレー容器に充填してスプレー式芳香剤物品を得ることができる。本発明のスプレー式芳香剤物品は、本発明の水性組成物と、スプレー容器とを含んで構成される物品である。本発明の水性組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1~3mLに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等が挙げられる。性能を効果的に発現するために、トリガー式スプレーヤーあるいはエアゾールスプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましく、本発明においては、耐久性や布付着性の観点から、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器がより好ましい。
【0063】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10~200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は体積平均粒子径であり、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0064】
本発明の水性組成物及びスプレー式芳香剤物品は、繊維製品用として好適であり、かかる水性組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、繊維製品に香り付けすることができる。前記スプレー式芳香剤物品はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、本発明の水性組成物で記載した、繊維又は繊維製品が挙げられる。
【0065】
<水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法>
本発明は、(a)不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分、及び不飽和又は芳香族ケトン系香料成分から選ばれる1種以上の香料成分[(a)成分である]を、0.01質量%以上2質量%以下含有する水性組成物に、(b)下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上[(b)成分である]を混合する、水性組成物の香りの変調及び/又は変色を抑制する方法[以下、本発明の方法という]を提供する。
【0066】
【化4】
【0067】
[式中、R1bはターシャリーブチル基であり、R2b、R3b、R4b、R5bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は-C2nCOOR6bで示されるエステル基であり、R2b、R3b、R4b及びR5bの少なくとも1つは-C2nCOOR6bで示されるエステル基である。ここでnは1以上5以下の整数であり、R6bは炭素数1以上18以下の炭化水素基である。]
【0068】
本発明の方法における、(a)成分、(b)成分及び香料組成物(A)の好ましい態様は、本発明の水性組成物で記載した(a)成分、(b)成分及び香料組成物(A)の好ましい態様と同じである。また、本発明の方法において、水性組成物は、任意に(c)界面活性剤等の任意成分を含むことができ、それら任意成分の好ましい態様も本発明の水性組成物で記載した任意成分の好ましい態様と同じである。
【0069】
本発明の方法において、本発明の水性組成物は、(a)成分を、好ましい香りを賦香する観点から、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、そして、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下含有する。
【0070】
本発明の方法において、本発明の水性組成物は、香料組成物(A)を、好ましい香りを賦香する観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは0.8質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上、そして、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0071】
本発明の方法において、本発明の水性組成物は、(b)成分を、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、更により好ましくは0.05質量%以上、更により好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0072】
本発明の方法では、本発明の水性組成物中、香料組成物(A)の含有量と(b)成分の含有量との質量比〔(A)/(b)〕は、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは10以上、そして、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、更により好ましくは50以下である。
【0073】
本発明の方法では、本発明の水性組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比〔(a)/(b)〕は、香りの変調及び/又は変色を抑制する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下である。
【0074】
本発明の方法において、本発明の水性組成物が(c)成分を含有する場合、本発明の水性組成物は、(c)成分を、前記(a)成分に起因する組成物の着色又は組成物の香りの変調を、前記(b)成分が抑制する効果をより高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
【0075】
本発明の方法では、本発明の水性組成物が(c)成分を含有する場合、本発明の水性組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比〔(a)/(c)〕は、前記(a)成分に起因する組成物の着色又は組成物の香りの変調を、前記(b)成分が抑制する効果をより高める観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【実施例0076】
下記配合成分を含有する表4~5に記載の水性組成物を調製し、下記の手順にしたがい水性組成物の着色及び香りの評価を行った。
【0077】
<配合成分>
<香料組成物(A)>
香料組成物A-1~A-3は、表1に記載の割合で、アルデヒド系香料及びケトン系香料等の香料成分を含む香料組成物である。
表1のアルデヒド系香料は、(a)成分の不飽和又は芳香族アルデヒド系香料成分に該当する。また、表1のケトン系香料は、(a)成分の不飽和又は芳香族ケトン系香料成分に該当する。
【0078】
【表1】
【0079】
<(b)成分>
・b-1:メチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、Methyl 3-(3,5-Di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate、東京化成工業株式会社製
<(b’)成分>
・b’-1:ジブチルヒドロキシトルエン、BHT(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0080】
<(c)成分>
・c-1:下記の合成例1で合成されたカチオン界面活性剤[以下、(c-1)成分という]である。
・c-2:下記の合成例2で合成されたカチオン界面活性剤[以下、(c-2)成分という]である。
・c-3:ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、花王株式会社製
・c-4:2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、東京化成工業株式会社製
<その他成分>
EtOH:エタノール(関東化学社製)
【0081】
<合成例1:(c-1)成分の合成>
トリエタノールアミンと表2に示した組成のR1cCOOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたR1cCOOHの不飽和率は、27%+3%=30%である。
【0082】
【表2】
【0083】
トリエタノールアミンとR1cCOOHを、反応モル比(R1cCOOH/トリエタノールアミン)=1.65/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み、撹拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のR1cCOOHが5質量%含まれていた。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行った。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら撹拌下50℃まで加熱昇温した。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間撹拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0084】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(c-1)成分を75質量%、エタノール10質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応R1cCOOHを2質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、(c-1)成分のうち一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3c及びR4cが-COHであり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-1)成分中28質量%、一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3cがRc1-COO-C-であり、R4cが-COHであり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-1)成分中56質量%、一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3c及びR4cがR1c-COO-C-であり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-1)成分中16質量%であった。また(c-1)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(75÷(75+12))した4級化率は86質量%であった。
【0085】
<合成例2:(c-2)成分の合成>
トリエタノールアミンと表3に示した組成のR1cCOOHを原料の脂肪酸として用いた。用いたR1cCOOHの不飽和率は、78%+10%+2%=90%である。
【0086】
【表3】
【0087】
トリエタノールアミンとR1cCOOHを、反応モル比(R1cCOOH/トリエタノールアミン)=1.87/1で混合した溶液500gを1Lフラスコに仕込み撹拌下窒素を導入し、生成する水を脱水管で系外に除去しながら約3時間かけて180℃まで加熱した。180~230℃の温度にさらに5時間保持し、反応物の一部を採取し、AV(酸価)を測定し、AV=2.5mgKOH/g以下であることを確認した後、室温まで冷却した。
HPLC分析の結果、エステル化生成物中には、未反応のR1cCOOHが1質量%含まれていた。
得られたエステル化合物の全アミノ基窒素含有量(JIS K7245-2000の全アミノ基窒素含有量の測定方法に従うものとする。)を求め、計算から得られるアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸で4級化反応を行った。具体的にはエステル化反応終了物300gを1Lフラスコに仕込み、窒素を導入しながら撹拌下50℃まで加熱昇温した。滴下ロートより全アミノ基窒素含有量から求めたアミノ基の当量数に対して0.96当量倍のジメチル硫酸を1時間かけて滴下し、50℃でさらに2時間撹拌した。反応終了後、エタノールで希釈した。
【0088】
得られた生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた生成物は、(c-2)成分を66質量%、エタノール15質量%、4級化されていないエステル化反応物(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応R1cCOOH1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3c及びR4cが-COHであり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-2)成分中22質量%、一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3cがR1c-COO-C-であり、R4cが-COHであり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-2)成分中58質量%、一般式(c3-1)において、-Y-R2c-が-COO-C-であり、R3c及びR4cがRc1-COO-C-であり、R5cがメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が(c-2)成分中20質量%であった。また(c-2)成分と4級化されていないエステル化反応物から算出(66÷(66+17))した4級化率は80質量%であった。
【0089】
<水性組成物の評価方法>
[実施例1]
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、水性組成物のできあがり質量が200gになるのに必要な量の90%に相当する量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。
次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、「TYPE HEIDON 1200G」)に装着した撹拌羽根(タービン型撹拌羽根、3枚翼、翼長2cm)を前記ビーカーの底面から1cmの高さに設置し、回転数300rpmで撹拌しながら、あらかじめ65℃で溶融、混合した(b)成分と(c)成分である4級アンモニウム化合物を投入した後、60±2℃加熱下、10分間、300rpmにて撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。香料組成物(A)を投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して、水性組成物を得た。得られた水性組成物に対し、下記の方法で水性組成物の着色の評価及び香りの評価を行った。
【0090】
(1)水性組成物の着色の評価方法
表4の水性組成物30mLをガラス瓶に入れ、60℃で1週間保存した後の水性組成物を目視で観察し、下記の評価指標にしたがって、水性組成物の着色の評価を行った。着色の評価が「○」の組成物は、組成物の着色が優位に抑制され、水性組成物の美観が維持されている。
[着色の評価指標]
○:保存前と比較して、水性組成物の色が変化しなかった。
△:保存前と比較して、水性組成物がやや変色した。
×:保存前と比較して、水性組成物が変色した。
【0091】
(2)水性組成物の香りの評価方法
綿メリヤス布30枚(6cm×6cm、谷頭商店)をターゴトメーター(Ueshima、MS-8212)にて処理をした。処理条件は、市水(20℃)を用い浴比を30に調整し、表4の水性組成物であって、使用前に調製した水性組成物(保存前)と調製後上記(1)と同じ条件で1週間保存した後の水性組成物とを、それぞれ布1.5kg当たり10gとなるよう投入し、85rpmで3分間処理をした。その後、二層式洗濯機を用いてすすぎ後の汚染布の脱水処理を2分間行った後、脱水布について、専門パネルがニオイ評価を行い、下記の評価指標にしたがって、水性組成物の香りの評価を行った。香りの評価が「○」の組成物は、該組成物の香りの変調が顕著に抑制されている。
[香りの評価指標]
○:保存前と比較して、同等の香りだった。
△:保存前と比較して、香りがやや劣っていた。
×:保存前と比較して、香りが劣っていた。
【0092】
【表4】
【0093】
[実施例2]
表5の配合組成で、香料組成物(A)、(b)成分、(c)成分及び水を混合して、表5の水性組成物を調製した。この水性組成物の着色評価を、実施例1の(1)と同様の方法で行った。また、この水性組成物の香りの評価を、綿メリヤス布(6cm×6cm、谷頭商店)に、表5の水性組成物であって、使用前に調製した水性組成物(保存前)と調製後上記実施例1の(1)と同じ条件で1週間保存した後の水性組成物とをそれぞれ100μL塗布し、実施例1の(2)の評価指標にしたがって専門パネルがニオイ評価を行った。
着色の評価が「○」の組成物は、組成物の着色が優位に抑制され、水性組成物の美観が維持されている。また、香りの評価が「○」の組成物は、組成物の香りの変調が顕著に抑制されている。
【0094】
【表5】