(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008803
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 29/503 20150101AFI20250109BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20250109BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250109BHJP
【FI】
F21V29/503 100
F21V29/70
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111317
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】595034189
【氏名又は名称】日本船燈株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】田口 実
(57)【要約】
【課題】装置内の熱を好適に放熱でき、且つ、着雪、着氷及び結露を防止することができる照明装置の提供。
【解決手段】この照明装置1は、回路用素子であって発熱を伴う発熱性素子10,10…と透光カバー6との間に伝熱部材7が介在され、伝熱部材7を介して発熱性素子10,10…nが発する熱が透光カバー6に伝達され、透光カバー6が温められることによって着氷・着雪を抑制することができるとともに、装置内部への放熱を抑えることができるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子及び該発光素子を駆動する駆動回路を構成する1又は複数の回路用素子が基板に実装されてなる発光ユニットと、該発光ユニットの前面側を覆う透光カバーとを備えた照明装置において、
前記回路用素子であって発熱を伴う発熱性素子と前記透光カバーとの間に伝熱部材が介在され、
前記伝熱部材を介して前記発熱性素子が発する熱が前記透光カバーに伝達されるようにしたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記発熱性素子が前記伝熱部材に埋設されている請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記発光素子と前記発熱性素子とが前記基板の同一面上に実装されている請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記発光素子の電圧をスイッチング素子によって制御するスイッチング回路と、該スイッチング回路のスイッチの遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路とを備え、
前記発熱性素子は、前記保護回路を構成する素子である請求項1又は2に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着雪、着氷や結露を防止する機能を有する発光素子(LED)を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置においては、従来の電球式のものに比べて保守・管理が容易で電力消費量も少ないことから、発光素子(LED)式のものへの交換が進められている。
【0003】
LEDは、電流値を一定にして駆動することが望ましいが、適切に点灯させることができる電圧の範囲がとても狭く、単に発光素子を定電圧の電源に接続するだけでは安定して点灯させることができない。
【0004】
そこで、従来のLED式照明装置では、安定してLEDを点灯させるための駆動回路(点灯回路)を具備することが一般的である。
【0005】
点灯回路には、LEDと直列に抵抗を配置し、LEDに流れる電流の変動を抑えることで安定して点灯するようにした抵抗分圧方式、LEDと直列にバイポーラトランジスタやMOSFET、3端子レギュレータ等の制御素子を配置し、LEDに流れる電流値を一定にすることで安定して点灯するようにしたシリーズレギュレータ方式のもの等が知られている。
【0006】
一方、この種のLED方式の照明装置は、電球式に比べ発熱が少ないことから、豪雪地帯等において屋外で使用される場合、LEDの発熱だけでは雨や雪等で透光カバー等に付着した雪や氷を融解させることできず、付着した雪や氷によってLEDの発光が遮られる虞があった。
【0007】
そこで、近年では、LEDの発熱を利用して透光カバーを温めることにより着雪・着氷を防止する照明装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
この照明装置は、例えば、LEDが実装されている基板と透光カバーとの間に伝熱材を介在させ、LEDの発熱を基板及び伝熱材を介して透光カバーに伝熱されることで透光カバーを温めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、電球に比べてLEDの発熱量が小さいことからLEDの発熱を効率的に利用したとしても透光カバーに付着した雪や氷を融解させるだけの熱量を確保できない虞があった。
【0011】
一方、この種のLED式照明装置では、LEDを安定して駆動させる駆動回路(点灯回路)を構成する回路用素子の中に抵抗分圧方式における抵抗、シリーズレギュレータ方式における制御素子等のように駆動時に発熱を伴うもの(以下、発熱性素子という)がある。
【0012】
LEDは、高温に弱いという問題があり、上述の如き発熱性素子による発熱によって照明装置内が高温になると、明るさや寿命に影響したり、点灯回路の破損を招いたりする虞がある。
【0013】
よって、一般に、この種の発光性素子を具備するLED式照明装置では、ヒートシンク等の発熱性素子による熱を放熱するための構造を設けなければならず、その分、コストの増大や小型化が阻害されるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、装置内の熱を好適に放熱でき、且つ、着雪、着氷及び結露を防止することができる照明装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、発光素子及び該発光素子を駆動する駆動回路を構成する1又は複数の回路用素子が基板に実装されてなる発光ユニットと、該発光ユニットの前面側を覆う透光カバーとを備えた照明装置において、前記回路用素子であって発熱を伴う発熱性素子と前記透光カバーとの間に伝熱部材が介在され、前記伝熱部材を介して前記発熱性素子が発する熱が前記透光カバーに伝達されるようにしたことにある。
【0016】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記発熱性素子が前記伝熱部材に埋設されていることにある。
【0017】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記発光素子と前記発熱性素子とが前記基板の同一面上に実装されていることにある。
【0018】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記駆動回路は、前記発光素子の電圧をスイッチング素子によって制御するスイッチング回路と、該スイッチング回路のスイッチの遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路とを備え、前記発熱性素子は、前記保護回路を構成する素子であることにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る照明装置は、請求項1に記載の構成を具備することによって、駆動回路(点灯回路)を構成する発熱性素子が発する熱が伝熱部材を介して透光カバーに放熱されることで照明装置内の温度上昇を抑制するとともに、透光カバーを温めることによって透光カバーへの着雪、着氷及び結露を防止することができる。
【0020】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、発熱性素子による発熱を透光カバーに効率よく伝達することができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、照明装置全体の小型化を図ることができる。
【0022】
さらにまた、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、点灯回路を構成する主回路のみならず、主回路に付随する回路を構成する素子を着雪、着氷及び結露を防止することに有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る照明装置の一例を示す正面図である。
【
図3】同上の照明装置の駆動回路を示す概略回路図である。
【
図4】本発明に係る照明装置の他の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る照明装置の実施態様を
図1~
図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はLED式の照明装置である。
【0025】
照明装置1は、
図1、
図2に示すように、発光素子(以下、LED2という)及びLED2を駆動する駆動回路(点灯回路3)を構成する1又は複数の回路用素子が基板4に実装されてなる発光ユニット5と、発光ユニット5の前面側を覆う透光カバー6とを備え、点灯回路3により安定してLED2が点灯し、LED2の発光が透光カバー6を通して照射されるようになっている。
【0026】
また、この照明装置1は、回路用素子であって発熱を伴う発熱性素子10,10…と透光カバー6との間に伝熱部材7が介在され、伝熱部材7を介して発熱性素子10,10…が発する熱が透光カバー6に伝達され、透光カバー6への着雪・着氷及び透光カバー6の結露を抑制できるようになっている。
【0027】
発光ユニット5は、LED2からなる発光素子と、LED2を駆動する駆動回路(点灯回路3)を構成する1又は複数の回路用素子と、点灯回路3に電力を供給する電源8とが基板4の同一面上に表面実装され、LED2、回路素子及び電源8が銅箔等からなる配線9によって適宜接続され点灯回路3が形成されている。
【0028】
尚、本実施例では、電源8を基板4上に実装した場合について説明したが、電源8は、基板4に実装されたコネクタやリード線接続部等を介して外部電源から発光ユニット5に電力が供給されるものであってもよい。
【0029】
発光素子は、例えば、パッケージに封入された発光ダイオード(LED2)によって構成され、基板4に表面実装できるようになっている。
【0030】
点灯回路3は、例えば、
図3に示すように、抵抗分圧式の回路によって構成され、LED2と直列に回路用素子として1又は複数の抵抗10が接続され、直流電源8に接続されている。
【0031】
回路用素子である抵抗10は、電流が流れた際に一定以上の発熱量をもって発熱する発熱性素子となっている。
【0032】
この抵抗10は、例えば、角形チップ型の抵抗によって構成され、基板4の外縁部に周方向に間隔をおいて表面実装されている。
【0033】
抵抗10は、伝熱部材7を介して透光カバー6に伝達された際に着氷・着雪を抑制するために十分な熱量を考慮し、抵抗10の個数、各抵抗10の抵抗値及び配置が設定されている。
【0034】
伝熱部材7は、シリコーンゴム等の熱伝導性に優れた材料によって構成され、基板4の周縁部に円環状を成すように形成され、表面部に透光カバー6の裏面が熱伝導性の接着剤等を介して固定され、内部に発熱性素子である抵抗10が埋設されている。
【0035】
伝熱部材7を構成する材料は、高い熱伝導性を有する材料、例えば、シリコーンゴムに無機質充填材の鋼配合によって熱伝導性を向上させた熱伝導性シリコーンゴム(約1.3W/m・K)等を用いることが好ましいが、一定以上の熱伝導性を具備していれば、一般の有機系ゴム(0.12~0.18W/m・K程度)や優れた熱伝導性(約0.2W/m・K)を有するシリコーンゴム等を用いることができる。
【0036】
透光カバー6は、樹脂やガラス等の透明又は半透明な材料によって構成され、板状又は半球状に形成されている。
【0037】
このように構成された照明装置1では、発光素子(LED2)を点灯させる際、駆動回路(点灯回路3)を構成する発熱性素子(抵抗10)に電流が流れ、抵抗10が発熱する。その際、駆動回路(点灯回路3)を構成する発熱性素子(抵抗10)と透光カバー6との間に伝熱部材7が介在されているので、抵抗10による発熱は、伝熱部材7を通して透光カバー6に伝達され、透光カバー6が温められるので透光カバー6への着氷・着雪及び透光カバー6の結露を抑制することができる。
【0038】
また、この照明装置1では、抵抗10による発熱が伝熱部材7を介して透光カバー6に伝達され、基板4やLED2が配置された内部に放熱され難いので、高温に弱いLED2の明るさや寿命への悪影響が抑制され、点灯回路3の破損も防止することができる。
【0039】
さらに、この照明装置1では、基板4やLED2が配置された内部に放熱され難いので、LED2と発熱性素子(抵抗10)とを基板4の同一面上に実装してもLED2への影響が小さく、また、ヒートシンク等の発熱性素子による発熱を放熱させるための構造が不要となり、その分、装置全体の設計の自由度の向上や小型化を図ることができる。
【0040】
尚、上述の実施例では、伝熱部材7を基板4の周縁部を覆う円環状に形成した場合について説明したが、伝熱部材7の態様はこれに限定されず、例えば、
図4、
図5に示すように、発熱性素子10毎に発熱性素子10と透光カバー6との間に伝熱部材7を介在させてもよい。
【0041】
尚、点灯回路3は、上述の実施例に限定されず、照明装置1の性能、用途、設置個所等の諸条件によって複数種の回路用素子によって構成することができ、例えば、特に図示しないが、LED2と直列にバイポーラトランジスタやMOSFET、3端子レギュレータ等の制御素子を配置し、LED2に流れる電流値を一定にすることで安定して点灯するようにしたシリーズレギュレータ方式のものであってもよい。また、発熱性素子は、上述の抵抗に限定されず、シリーズレギュレータ方式の場合、バイポーラトランジスタやMOSFET、3端子レギュレータ等の制御素子を発熱性素子として用いることができる。
【0042】
また、駆動回路には、LED2の電圧をスイッチング素子によって制御するスイッチング回路と、スイッチング回路のスイッチの遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収する保護回路(スナバ回路)とを備えたものであってもよい。
【0043】
この保護回路(スナバ回路)には、例えば、抵抗とコンデンサとが直列に配置されたものなどが知られ、この回路を構成する抵抗が発熱するので、当該抵抗を発熱性素子として用いることができる。
【0044】
尚、上述の実施例では、駆動回路として点灯回路3を例に説明したが、発光素子の点滅、消灯、タイマー制御、その他の全ての駆動に用いられる回路に適応することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 照明装置
2 LED(発光素子)
3 点灯回路
4 基板
5 発光ユニット
6 透光カバー
7 伝熱部材
8 電源
9 配線
10 抵抗