IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2025-88097液体組成物、絶縁性樹脂層、電気化学素子用電極、電極積層体及びその製造方法、電気化学素子、電気機器、並びに移動体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088097
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】液体組成物、絶縁性樹脂層、電気化学素子用電極、電極積層体及びその製造方法、電気化学素子、電気機器、並びに移動体
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20250604BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20250604BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250604BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250604BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250604BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20250604BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20250604BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20250604BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20250604BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20250604BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20250604BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
C08L33/08
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M50/586
H01M50/591 101
C08L33/10
C08K5/101
C08K5/103
C08F265/06
C08K5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202560
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大屋 彼野人
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BG04W
4J002BG05X
4J002EA018
4J002EA028
4J002EA058
4J002EH018
4J002EH106
4J002EH107
4J002FD147
4J002FD206
4J002FD208
4J002GQ00
4J026AA45
4J026BA27
4J026BA30
4J026DA02
4J026DA12
4J026DB02
4J026DB11
4J026FA05
4J026GA06
5H043AA20
5H043BA19
5H043GA22
5H043HA22E
5H043JA23E
5H043KA22E
5H043KA34E
5H043LA15E
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA13
5H050EA15
5H050FA08
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体積収縮によるカール抑制効果に優れた樹脂層を形成することができる液体組成物の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルで示される重合性化合物又は特定の構造単位を有するジ(メタ)アクリル酸エステル重合性化合物とアクリル酸エステルからなる非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、前記溶媒は、前記重合性化合物が可溶な良溶媒と、前記重合性化合物が不溶な貧溶媒とを含む混合溶媒であり、前記溶媒は、下記式(1)を満たすことを特徴とする液体組成物である。

(前記式(1)における混合比Xは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、重合性化合物可溶点は、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、下記一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、
【化1】
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは、2以上6以下の整数を示す。)
【化2】
(前記一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【化3】
(前記一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
前記溶媒は、前記重合性化合物が可溶な良溶媒と、前記重合性化合物が不溶な貧溶媒とを含む混合溶媒であり、
前記溶媒は、下記式(1)を満たすことを特徴とする液体組成物。
【数1】
(前記式(1)における混合比Xは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、重合性化合物可溶点は、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【請求項2】
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、下記一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、
【化4】
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【化5】
(前記一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【化6】
(前記一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
前記重合性化合物は、前記溶媒に可溶な可溶性重合性化合物、及び前記溶媒に不溶な不溶性重合性化合物を含む混合化合物であり、
前記重合性化合物は、下記式(2)を満たすことを特徴とする液体組成物。
【数2】
(前記式(2)における混合比Yは、混合化合物における不溶性重合性化合物の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、溶媒可溶点は、溶媒に可溶な混合化合物における、不溶性重合性化合物の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【請求項3】
前記液体組成物は、前記一般式(1)におけるR2が、ポリエステル鎖である重合性化合物、又は前記一般式(2)で示される重合性化合物を含む、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記液体組成物は、前記一般式(1)におけるR2が、ポリカプロラクトン鎖である重合性化合物を含む、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記一般式(3)におけるR6が、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルである、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記非架橋型樹脂は、2種以上の構造単位からなる共重合体である、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記非架橋型樹脂は、下記一般式(4)で示される構造単位をさらに有する、請求項6に記載の液体組成物。
【化7】
(前記一般式(4)中、R7は、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルを示す。)
【請求項8】
前記共重合体は、ブロック共重合体である、請求項6に記載の液体組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の液体組成物を硬化してなる絶縁性樹脂層であって、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする絶縁性樹脂層。
【請求項10】
基体と、
前記基体上に配される電極合材層と、
前記電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、を有する電気化学素子用電極であって、
前記絶縁性樹脂層は、請求項1又は2に記載の液体組成物の硬化物であり、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする電気化学素子用電極。
【請求項11】
前記基体と前記電極合材層との間に、リチウムと合金化する金属を含む接着層が配される、請求項10に記載の電気化学素子用電極。
【請求項12】
前記電極合材層は開口部を有する、請求項10に記載の電気化学素子用電極。
【請求項13】
前記開口部には、硫化物固体電解質が充填されている、請求項12に記載の電気化学素子用電極。
【請求項14】
基体と、
前記基体上に配される電極合材層と、
前記電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、
前記電極合材層および前記絶縁性樹脂層上に配され、固体電解質を含む固体電解質層と、を有する電極積層体であって、
前記絶縁性樹脂層は、請求項1又は2に記載の液体組成物の硬化物であり、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする電極積層体。
【請求項15】
前記基体と前記電極合材層との間に、リチウムと合金化する金属を含む接着層が配される、請求項14に記載の電極積層体。
【請求項16】
前記電極合材層は開口部を有する、請求項14に記載の電極積層体。
【請求項17】
前記開口部には、硫化物固体電解質が充填されている、請求項16に記載の電極積層体。
【請求項18】
請求項14に記載の電極積層体を有することを特徴とする電気化学素子。
【請求項19】
請求項18に記載の電気化学素子を有することを特徴とする電気機器。
【請求項20】
請求項18に記載の電気化学素子を有することを特徴とする移動体。
【請求項21】
車両である、請求項20に記載の移動体。
【請求項22】
基体上に電極合材層を形成する電極合材層形成工程と、
前記電極合材層の外周部に絶縁性樹脂層を形成する絶縁性樹脂層形成工程と、
前記絶縁性樹脂層及び前記電極合材層上に、固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程と、を含む電極積層体の製造方法であって、
前記絶縁性樹脂層形成工程は、請求項1又は2に記載の液体組成物を基体上に付与する液体組成物付与工程と、前記液体組成物に対して熱又は光を付与して硬化する液体組成物硬化工程とを含むことを特徴とする電極積層体の製造方法。
【請求項23】
前記液体組成物付与工程は、インクジェット方式によって実施される、請求項22に記載の電極積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、絶縁性樹脂層、電気化学素子用電極、電極積層体及びその製造方法、電気化学素子、電気機器、並びに移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池に比べて、温度変化に強く、発火リスクが小さいことから安全面に優れており、また急速充電が可能なことから性能面にも優れている。このことから、電気自動車等へ搭載等、需要が拡大することが予想されている。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、全固体二次電池に対する要求が多様化している。
【0003】
全固体二次電池としては、例えば、製造時の積層プレスの際に発生するクラックを抑制するとともに、タブ接触による短絡を抑制することができる固体電池を提供する目的で、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層と、を含む固体電池用正極であって、正極活物質層の外周部の2辺に活物質層ガイドが配置されている固体電池用正極が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、膜形成時におけるカール抑制効果に優れた樹脂層を形成することができる液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、
【化1】
(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【化3】
(一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
溶媒は、重合性化合物が可溶な良溶媒と、重合性化合物が不溶な貧溶媒とを含む混合溶媒であり、
溶媒は、式(1)を満たす。
【数1】
(式(1)における混合比Xは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、重合性化合物可溶点は、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、膜形成時におけるカール抑制効果に優れた樹脂層を形成することができる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略断面図である。
図2A図2Aは、本発明の一実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。
図2B図2Bは、本発明の他の実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。
図2C図2Cは、本発明のさらに他の実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である
図4図4は、本発明の他の実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である。
図5図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である。
図6A図6Aは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その1)である
図6B図6Bは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その2)である
図6C図6Cは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その3)である。
図6D図6Dは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その4)である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略上面図である。
図8A図8Aは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その1)である。
図8B図8Bは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その2)である。
図8C図8Cは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その3)である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す概略図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)における他の一例を示す概略図である。
図11図11は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極の製造方法を説明するための概略図(その1)である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)におけるさらに他の一例を示す概略図である。
図13図13は、本発明の一実施形態に係る絶縁性樹脂層の製造装置における液体組成物付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図(その1)である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る絶縁性樹脂層の製造装置における液体組成物付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図(その2)である。
図15図15は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子を示す概略断面図である。
図16図16は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子である全固体電池の一例を示す概略断面図である。
図17図17は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子である移動体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来、全固体電池の作製時には、全固体電池の性能を向上させる目的、即ち高い密度を有する全固体電池を得ることを目的として、正極、固体電解質層、及び負極を含む積層体を非常に高い圧力でプレスする場合がある。このとき、固体電解質層におけるクラック等の破損が生じるといった懸念があった。
【0009】
このような全固体電池における破損を防止するために、特許文献1に記載されている発明のように、活物質層ガイドが配置された固体電池用正極が提案されている。活物質層ガイドは、短絡防止のために設けられるものであるため、絶縁性が求められるとともに、電極合材層と同程度の厚さである必要がある。また、活物質層ガイドは、高圧力のプレスに耐えられるように、ある程度の粘弾性が求められることから、樹脂由来のものであることが好ましいとされる。
樹脂を溶解させた液体組成物を塗工し、硬化させることで活物質層ガイドを形成する場合、所望の活物質層ガイドの厚さよりも厚い液膜厚で塗工する必要がある。このとき、エッジ端部の垂れが懸念されるため、活物質層ガイドの作製時には、液体組成物として光硬化型液体組成物を用いることが一般的である。
【0010】
光硬化型液体組成物は、光重合開始剤とアクリル系多官能重合性化合物とで構成される場合が多い。このような多官能重合性化合物を含む光硬化型液体組成物を用いた光硬化の場合、液体組成物が液体から固体に変化する過程で、多数の重合性化合物が重合して1つの分子となるため、ファンデルワールス距離と共有結合距離とのギャップから体積収縮が生じる。また、希釈溶剤が含まれている状態で硬化させた場合、希釈溶剤の含浸によって大きく膨潤した状態で重合されるため、溶媒除去工程において体積収縮が生じる。これらの体積収縮は、基体からの活物質層ガイドの剥離や、基体が反りあがってしまうカール現象が生じ、またそれに起因して、隣接する電極合材層の損壊を招いてしまうという懸念があった。
【0011】
このような体積収縮を抑制することを目的として、液体組成物に対してフィラーや添加液体を加えることが広く行われている(例えば、非特許文献1参照)。特に、沸点が300℃以下の添加液体(一般的に溶媒と呼ばれる)を用いると、常圧下での加熱乾燥により添加液体の除去が可能となる。しかしながら、現状、溶媒種の変化に伴う体積収縮の抑制効果の差異は、明確に提示されていない。
【0012】
また、全固体二次電池用に特化した材料系の場合、液体組成物は、モノマーと、分子間相互作用が比較的小さい非極性溶媒とを含むことが多く、このような組成の液体組成物は粘度が低下する傾向にある。低粘度の液体組成物を用いて作製した液膜は、基材上で流れやすく、厚い液膜を形成し難いことが懸念されている。例えば、特許文献1に記載されている活物質層ガイドには、短絡を抑制する目的から、活物質層と同等の膜厚(例えば、100μm以上)が要求されるが、低粘度の液体組成物では、この要求を満たすことが困難となる場合がある。
【0013】
樹脂を液体組成物に添加すると増粘することは、一般的に知られている(例えば、非特許文献2参照)が、多くの樹脂では、体積収縮時に樹脂層の形状が変化するため、目的とする形状の樹脂層が得られない懸念や、体積収縮により樹脂層が変形することに起因して、基材から樹脂層が剥離する懸念がある。
【0014】
本発明の液体組成物は、従来技術における各種懸念事項を十分に解消することができる。より具体的には、膜形成時におけるカール抑制効果に優れた樹脂層を形成することができる液体組成物を実現することができる。
【0015】
以下に、本発明の詳細を記載する。
【0016】
(液体組成物)
本発明の液体組成物における第一の態様としては、一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、溶媒は、重合性化合物が可溶な良溶媒と、重合性化合物が不溶な貧溶媒とを含む混合溶媒であり、溶媒は、式(1)を満たす。
【0017】
【化4】
(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【0018】
【化5】
(一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【0019】
【化6】
(一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
【0020】
【数2】
(式(1)における混合比Xは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、重合性化合物可溶点は、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【0021】
本発明の液体組成物における第二の態様としては、一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、重合性化合物は、溶媒に可溶な可溶性重合性化合物、及び溶媒に不溶な不溶性重合性化合物を含む混合化合物であり、重合性化合物は、式(2)を満たす。
【0022】
【化7】
(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【0023】
【化8】
(一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【0024】
【化9】
(一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
【0025】
【数3】
(式(2)における混合比Yは、混合化合物における不溶性重合性化合物の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、溶媒可溶点は、溶媒が可溶な混合化合物における、不溶性重合性化合物の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
【0026】
本明細書においては、「第一の態様の液体組成物」及び「第二の態様の液体組成物」は、単に「液体組成物」と称することがある。
本明細書においては、「一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物」は、単に「重合性化合物」と称することがある。
本明細書においては、「一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂」は、単に「非架橋型樹脂」と称することがある。
【0027】
<重合性化合物>
本発明における重合性化合物は、一般式(1)又は一般式(2)で示され、かつラジカル重合が可能な、一置換エチレン、1,1-二置換エチレン、1,2-二置換エチレン、及び/又はジエン化合物を複数有する化合物である。
【0028】
【化10】
(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【0029】
【化11】
(一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【0030】
一般式(1)におけるnとしては、液体組成物の硬化時に生じるカール抑制の観点から、2又は3が好ましく、2がより好ましい。
【0031】
本発明の液体組成物は、より優れたカール抑制効果が得られる観点から、一般式(1)におけるR2が、ポリエステル鎖である重合性化合物、又は一般式(2)で示される重合性化合物を含むことが好ましく、一般式(1)におけるR2が、ポリカプロラクトン鎖である重合性化合物を含むことがより好ましい。
【0032】
重合性化合物としては、重合速度の観点から、アクリル基を有する化合物であること、即ち一般式(1)におけるR1、並びに一般式(2)におけるR3及びR4が水素原子であることが好ましい。
一般にアクリル基は、高いラジカル重合性を有するため、液体組成物中で光重合開始剤や熱重合開始剤を併用することにより、短時間で硬化物を得ることができる。重合開始剤を併用せずとも硬化物を得ることができるが、重合性化合物としてアクリル基を有する重合性化合物を用いる場合、即ち一般式(1)におけるR1、並びに一般式(2)におけるR3及びR4が水素原子である場合、重合速度や装置コストの観点から、液体組成物中で重合性化合物と熱重合開始剤または光重合開始剤とを併用することが好ましく、重合性化合物と光重合開始剤とを併用することがより好ましい。
【0033】
重合性化合物の具体例としては、2官能アルキルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物、2官能ポリエチレングリコールアクリレート、2官能ポリプロピレングリコールアクリレート、2官能ポリテトラメチレングリコールアクリレート、2官能環状アクリレート、2官能アルコキシ化芳香族系アクリレート、2官能アクリル酸多量体エステルアクリレート、2官能カプロラクタム変性アクリレート、3官能トリメチロールプロパンアクリレート、3官能アルコキシ化グリセリンアクリレート、3官能イソシアネートアクリレート、4官能ペンタエリスリトールアクリレート、4官能ジトリメチロールプロパンアクリレート、4官能ジグリセリンテトラアクリレート、6官能ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも、体積収縮の観点から、2官能アルキルアクリレート、2官能ポリエチレングリコールアクリレート、2官能アルコキシ化芳香族系アクリレート、2官能アクリル酸多量体エステルアクリレート、3官能トリメチロールプロパンアクリレート、3官能アルコキシ化グリセリンアクリレート、3官能イソシアネートアクリレートが好ましく、2官能アルキルアクリレート、2官能ポリエチレングリコールアクリレート、2官能アルコキシ化芳香族系アクリレート、2官能アクリル酸多量体エステルアクリレートがより好ましい。
また、2官能アルキルアクリレート、2官能ポリエチレングリコールアクリレート、2官能アルコキシ化芳香族系アクリレート、2官能アクリル酸多量体エステルアクリレートの中でも、2官能ポリエチレングリコールアクリレート、2官能アクリル酸多量体エステルアクリレート、2官能ポリエステルアクリレートがより好ましい。
【0034】
2官能アルキルアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-HD-N、A-NON-N、A-DOD-N、A-NPG(以上、新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートNP-A、MPD-A、1,6HX-A、1,9ND-A(以上、共栄社化学株式会社製)、KAYARAD NPGDA(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物としては、例えば、商品名で、ライトアクリレートHPP-A(共栄社化学株式会社製)、ビスコート#195、ビスコート#230、ビスコート#260(以上、大阪有機化学株式会社製)、Miramer M210、Miramer M216(以上、Miwow社製)、KAYARAD FM-400(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
2官能ポリエチレングリコールアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-200、NKエステルA-400、NKエステルA-600、NKエステルA-1000(以上、新中村化学株式会社製)、ライトアクリレート3EG-A、ライトアクリレート4EG-A、ライトアクリレート9EG-A、ライトアクリレート14EG-A(以上、共栄社化学株式会社製)、ブレンマーADE-200、ブレンマーADE-300、ブレンマーADE-400A(以上、日油株式会社製)、Miramer M202(Miwow社製)などが挙げられる。
【0037】
2官能ポリプロピレングリコールアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルAPG-200、NKエステルAPG-400、NKエステルAPG-700(以上、新中村化学株式会社製)、ビスコート#310HP(大阪有機化学株式会社製)、ブレンマーADP-400(日油株式会社製)、Miramer M210、Miramer M216、Miramer M220(以上、Miwow社製)などが挙げられる。
【0038】
2官能ポリテトラメチレングリコールアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-PTMG65(新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートPTMGA-250(共栄社化学株式会社製)、ブレンマーADT-250(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0039】
2官能環状アクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-DCP(新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学株式会社製)、KAYARAD R-604、KAYARAD R-684(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
2官能アルコキシ化芳香族系アクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20(以上、新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートBP-4EAL、BA-134、BP-10EA(以上、共栄社化学株式会社製)、ビスコート#540(大阪有機化学株式会社製)、KAYARAD R-551、KAYARAD R-712(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
2官能アクリル酸多量体エステルアクリレートとしては、例えば、商品名で、ビスコート#230D(大阪有機化学株式会社製)などが挙げられる。
【0042】
2官能カプロラクタム変性アクリレートとしては、例えば、商品名で、KAYARAD HX-220、KAYARAD HX-620(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0043】
3官能トリメチロールプロパンアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-TMPT、A-TMPT-9EO、AT-20E(以上、新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートTMP-3EO-A、ライトアクリレートTMP-6EO-3A(以上、共栄社化学株式会社製)、ビスコート#295(大阪有機化学株式会社製)などが挙げられる。
【0044】
3官能アルコキシ化グリセリンアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-GLY-3E、A-GLY-9E、A-GLY-20E(以上、新中村化学株式会社製)などが挙げられる。
【0045】
3官能イソシアネートアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-9300、A-9200YN(以上、新中村化学株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
4官能ペンタエリストールアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルA-TMMT、ATM-35E(以上、新中村化学株式会社製)、ライトアクリレートPE-3A、ライトアクリレートPE-4A(以上、共栄社化学株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
4官能ジトリメチロールプロパンアクリレートとしては、例えば、商品名で、NKエステルAD-TMP(新中村化学株式会社製)などが挙げられる。
【0048】
4官能ジグリセリンテトラアクリレートとしては、例えば、商品名で、ライトアクリレートDGE-4E(共栄社化学株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
6官能ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとしては、例えば、商品名で、ライトアクリレートDPE-6A(共栄社化学株式会社製)などが挙げられる。
【0050】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、商品名で、アロニックスM-6100、アロニックスM-6200、アロニックスM-6250、アロニックスM-6500、アロニックスM-7100、アロニックスM-8030、アロニックスM-8060、アロニックスM-8100、アロニックスM-8530、アロニックスM-8560、アロニックスM-9050(以上、東亜合成株式会社製)、Ebecryl 81、Ebecryl 88、Ebecryl 80、Ebecryl 657、Ebecryl 1657、Ebecryl 800、Ebecryl 805、Ebecryl 808、Ebecryl 810、Ebecryl 1810、Ebecryl 450、Ebecryl 1830、Ebecryl 1870、Ebecryl 2870、Ebecryl 830、Ebecryl 835、Ebecryl 870、Ebecryl 84、IRR 302(以上、ダイセル・オルネクス社製)、RCC13-429(サンノプコ株式会社製)、ダイヤビームUK-4003、ダイヤビームUK-4203(以上、三菱ケミカル株式会社製)、CN2203、CN2270、CN2271、CN2273、CN2274(以上、アルケマ社製)、KAYARAD HX-220、KAYARAD HX-620(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0051】
重合性化合物としては、一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物が少なくとも1種含まれていればよい。即ち、液体組成物に含まれる重合性化合物は、一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物のみが含まれていてもよく、一般式(1)又は一般式(2)で示される2種以上の異なる重合性化合物が含まれていてもよい。なお、いずれでの場合であっても、一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物の他に、一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物が含まれていてもよい。
ここで、本発明の液体組成物は、硫化物固体電解質の劣化を抑制することができる観点から、一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物を含まないことが好ましい。さらに、本発明の液体組成物は、絶縁性樹脂層の物性(例えば、弾性率)を制御し得る範囲が拡大できるという観点から、一般式(1)又は一般式(2)で示される2種以上の異なる重合性化合物を含むことが好ましい。
【0052】
光重合開始剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルフェノン系重合開始剤、アシルフォスフィンスルファイト系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。
アルキルフェノン系重合開始剤の具体例としては、商品名で、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。
アシルフォスフィンスルファイト系重合開始剤の具体例としては、商品名で、Omnirad TPO、Omnirad 819(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤の具体例としては、商品名で、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASFJapan社製)などが挙げられる。
【0053】
重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、十分な硬化速度が得られる観点から、重合性化合物の全量を100.0質量%としたとき、0.05質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
【0054】
<非架橋型樹脂>
本発明における非架橋型樹脂は、一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型高分子化合物である。換言すると、本発明における非架橋型樹脂は、構造単位としてアクリル酸エステル基を有するアクリルモノマーを含む非架橋型高分子化合物である。
【0055】
【化12】
(一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
【0056】
ここで、「非架橋型高分子化合物」とは、架橋による三次元網目構造を有さない高分子化合物を意味し、ネットワーク構造を有していない分岐型高分子、グラフトポリマー、及びデンドリマー等を含むものではない。
【0057】
一般式(3)で示される構造単位におけるqとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、液体組成物の粘度を制御する観点から、100以上100,000以下が好ましく、1,000以上100,000以下がより好ましい。
【0058】
一般式(3)で示される構造単位におけるR6としては、アルキル基であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、ガラス転移点を高める観点から、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルであることが好ましい。一般式(3)で示される構造単位におけるR6がこれらの構造を有すると、ガラス転移点が室温に対して低くならないため、固体の樹脂層を得ることができる。固体の樹脂層は、十分な強度を有することから電気化学素子を製造する過程で圧縮等の工程があった場合でも、形状を維持することができるとともに、基材からの剥離を抑制することができる。
【0059】
非架橋型樹脂としては、一般式(3)で示される構造単位が少なくとも1種含まれていればよい。即ち、液体組成物に含まれる非架橋型樹脂は、一般式(3)で示される構造単位のみが含まれていてもよく、一般式(3)で示される2種以上の異なる構造単位が含まれていてもよい。なお、いずれでの場合であっても、一般式(3)で示される構造単位の他に、一般式(3)を満たさないその他の構造単位が含まれていてもよい。
【0060】
本発明における非架橋型樹脂は、ガラス転移温度を高める観点から、2種以上の構造単位からなる共重合体であることが好ましい。換言すると、本発明における非架橋型樹脂は、一般式(3)で示される構造単位と、その他の構造単位とを含む共重合体であることが好ましい。非架橋型樹脂が2種以上の構造単位からなる共重合体であると、ガラス転移点が室温に対して低くならないため、固体の樹脂層を得ることができる。固体の樹脂層は、十分な強度を有することから電気化学素子を製造する過程で圧縮等の工程があった場合でも、形状を維持することができるとともに、基材からの剥離を抑制することができる。
【0061】
その他の構造単位としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、体積収縮によるカール抑制効果に優れる観点から、一般式(4)で示される構造単位であることが好ましい。
【0062】
【化13】
(一般式(4)中、R7は、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルを示す。)
【0063】
一般式(4)で示される構造単位におけるrとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、液体組成物の粘度を制御する観点から、100以上100,000以下が好ましく、1,000以上100,000以下がより好ましい。
【0064】
本発明における非架橋型樹脂に係る共重合体は、体積収縮によるカール抑制効果の観点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
ブロック共重合体を得る方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(配位アニオン重合を含む)アニオン重合法、カチオン重合法、(原子移動ラジカル重合法、可逆的付加開裂型重合法を含む)ラジカル重合法、開環メタシス重合法、末端ジオール、ジアミンポリマーに対する重縮合又は付加反応を用いて段階的にブロックポリマーを作製する方法などが挙げられる。
【0065】
本発明における非架橋型樹脂に係る共重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。共重合体の市販品としては、例えば、商品名で、クラリティLA4285、クラリティLA2270、クラリティLA2250、クラリティLA2140、クラリティLA2330、クラリティLA3320、クラリティLA3710、クラリティLK9243(以上、株式会社クラレ製)などが挙げられる。
【0066】
本発明の非架橋型樹脂の平均重量分子量(Mw)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、増粘性の観点から、5,000以上であることが好ましい。
【0067】
<溶媒>
本発明における溶媒は、水分量が1w%以下である有機溶媒であり、固体電解質層との反応性が低い、低極性の疎水性溶媒が好ましい。
溶媒は、重合時の溶媒-溶媒間、又は樹脂-溶媒間において、分子間距離の変動がないため、硬化収縮の緩衝材として働いているものと予想される。
【0068】
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、フェネトール等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、デカン、メンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、p-メンタン等の炭化水素系溶媒、酪酸エチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、ウンデカン酸エチル、ラウリン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、オクタン酸メチル、ノナン酸メチル、デカン酸メチル、ウンデカン酸メチル、ラウリン酸メチル、イソ吉草酸エチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、3-メトキシイソ酪酸メチル、イソ酪酸ブチル、イソ吉草酸イソブチル、2-メチル酪酸ブチル、イソ吉草酸ブチル、酢酸ヘプチル、イソ吉草酸イソアミル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸ヘキシル、安息香酸エチル、ヘキサン酸ヘキシル、n-オクタン酸アミル、酢酸へキシル等のエステル系溶媒、石油系混合溶媒などが挙げられる。
【0069】
石油系混合溶媒としては、例えば、商品名で、ISOPAR E、ISOPAR G、ISOPAR H、ISOPAR H BHT、ISOPAR L、ISOPAR M、EXXSOL D40、EXXSOL D80、EXXSOL D110、EXXSOL D130、EXXSOL DSP80/100、EXXSOL DSP145/60(いずれも、安藤バラケミー株式会社製)などが挙げられる。
【0070】
溶媒の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、カール抑制効果の観点から、液体組成物の全量に対して30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、膜厚制御の観点から、70質量%以下であることが好ましい。
【0071】
本発明における溶媒は、重合性化合物選択の多様性の観点から、複数の溶剤を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
[液体組成物の第一の態様]
本発明の液体組成物における第一の態様として、液体組成物における溶媒は、体積収縮によるカール抑制効果の観点から、良溶媒及び貧溶媒を含む混合溶媒であり、式(1)を満たす。
【0073】
【数4】
【0074】
本明細書における「良溶媒」とは、重合性化合物が可溶である溶媒を示す。本明細書における「貧溶媒」とは、重合性化合物が不溶である溶媒を示す。なお、本明細書において「混合溶媒」と記載する場合は、良溶媒および貧溶媒を含む溶媒を示す。
本明細書における「混合比X」とは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものである。
本明細書における「重合性化合物可溶点」とは、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。
【0075】
ここで、第一の態様における「可溶」について説明する。「可溶」とは、溶媒と重合性化合物とを混合し、超音波攪拌機(USS-1)で15分間超音波攪拌した後、所定の温度で10分間静置後に白濁または相分離が生じない性質を示す。なお、所定の温度とは、実使用時の環境温度であれば特に制限はないが、例えば、25℃などが挙げられる。
なお、液体組成物の組成に応じて可溶/不溶の判断を行う。例えば、次のパターン1~3などが挙げられる。
【0076】
[パターン1]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物1種と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの混合溶媒と、1gの一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物とを含む液体組成物における溶媒比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0077】
[パターン2]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物2種(混合化合物)と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの混合溶媒と、1gの混合化合物とを含む液体組成物における溶媒比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0078】
[パターン3]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物2種(混合化合物)と、一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの混合溶媒と、1gの、混合化合物および一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物の混合物とを含む液体組成物におけるモノマー比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0079】
式(1)は、式(1)’に式変形することもできる。
【0080】
【数5】
【0081】
第一の形態の液体組成物が、式(1)又は式(1)’を満たすことにより、相分離速度に基づき高い空隙率を有する樹脂層を形成することができるため、液体組成物硬化時における体積収縮を抑制することができ、高品質な樹脂層を形成することができる。
また、式(1)’における「混合比X-重合性化合物可溶点」が、0に近づくにつれて体積収縮によるカールをより抑制することができる。
【0082】
[液体組成物の第二の態様]
本発明の液体組成物における第二の態様として、液体組成物における重合性化合物は、体積収縮によるカール抑制効果の観点から、可溶性重合性化合物及び不溶性重合性化合物を含む混合化合物であり、式(2)を満たすことが好ましい。
【0083】
【数6】
【0084】
本明細書における「可溶性重合性化合物」とは、溶媒に可溶である重合性化合物を示す。本明細書における「不溶性重合性化合物」とは、溶媒に不溶である重合性化合物を示す。なお、本明細書において「混合化合物」と記載する場合は、可溶性重合性化合物および不溶性重合性化合物を含む重合性化合物を示す。
本明細書における「混合比Y」とは、混合化合物における不溶性重合性化合物の質量に基づく含有量比を百分率で示したものである。
本明細書における「溶媒可溶点」とは、溶媒が可溶な混合化合物における、不溶性重合性化合物の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。
【0085】
ここで、第二の態様における「可溶」について説明する。「可溶」とは、重合性化合物と、溶媒とを混合し、超音波攪拌機(USS-1)で15分間超音波攪拌した後、所定の温度で10分間静置後に白濁または相分離が生じない性質を示す。なお、所定の温度とは、実使用時の環境温度であれば特に制限はないが、例えば、25℃などが挙げられる。
なお、液体組成物の組成に応じて可溶/不溶の判断を行う。例えば、次のパターン4~6などが挙げられる。
【0086】
[パターン4]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物1種と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、1gの混合溶媒とを含む液体組成物におけるモノマー比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0087】
[パターン5]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物2種(混合化合物)と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの混合化合物と、1gの混合溶媒とを含む液体組成物における溶媒比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0088】
[パターン6]
一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物2種(混合化合物)と、一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物と、溶媒2種(混合溶媒)とを含む液体組成物の場合、10gの、混合化合物および一般式(1)又は一般式(2)を満たさない重合性化合物の混合物と、1gの混合溶媒とを含む液体組成物におけるモノマー比に基づいて、可溶/不溶の判断を行う。
【0089】
式(2)は、式(2)’に式変形することもできる。
【0090】
【数7】
【0091】
第二の形態の液体組成物が、式(2)又は式(2)’を満たすことにより、相分離速度に基づき高い空隙率を有する樹脂層を形成することができるため、液体組成物硬化時における体積収縮を抑制することができ、高品質な樹脂層を形成することができる。
また、式(2)’における「混合比Y-溶媒可溶点」が、0に近づくにつれて体積収縮によるカールをより抑制することができる。
【0092】
<液体組成物の製造方法>
本発明における液体組成物の製造方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、重合性化合物を混合する工程、重合性化合物を溶媒と混合する工程、重合開始剤を溶剤に溶解させる工程、非架橋型樹脂を液体組成物に溶解させる工程、及び均一な溶液とするために撹拌する工程などを経て作製することが好ましい。
【0093】
(絶縁性樹脂層)
本発明の絶縁性樹脂層は、液体組成物を硬化してなり、かつ多孔質構造を有する。
なお、液体組成物は(液体組成物)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
【0094】
絶縁性樹脂層が多孔質構造を有すると、体積収縮による残留応力が発生しづらくなるため、カールを抑制することができる。特に、平均厚みが100μm以上の絶縁性樹脂層を形成する場合において、より効果的である。
【0095】
多孔質構造としては、樹脂を骨格とする共連続構造であることが好ましい。
ここで「共連続構造」とは、2種以上の物質乃至相がそれぞれ連続構造を有し、かつ界面を形成しない構造を意味し、本実施形態においては、樹脂相と空孔相とがともに三次元分岐網目連続相である構造を意味する。
これらの構造は、重合誘起相分離によって形成することができる(例えば、特開2003-1911628号公報、国際公開第97-044363号公報、特開2005-298757号公報、特表2010-513589号公報、特開2001-163907号公報、及び特開2001-138504号公報等参照)。
【0096】
[重合誘起相分離]
重合誘起相分離は、重合開始前においては、重合性化合物と溶媒とが相溶しており、重合開始後においては、重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と溶媒とが相溶せず、相分離を生じている状態を表す。相分離により多孔質構造を得る方法は他にも存在するが、重合誘起相分離法によって得られる、共連続構造を有する多孔質構造は、薬品や熱に対する耐性が高いというメリットがある。また、他の方法と比較して、プロセス時間が短く、表面修飾が容易といったメリットも挙げられる。
次に、重合性化合物を含む液体組成物による、重合誘起相分離法を用いた多孔質構造の形成プロセスについて説明する。重合性化合物は、光照射等により重合反応を生じて樹脂を形成する。このプロセスの間、成長中の樹脂における溶媒に対する溶解度が減少し、樹脂と溶媒との間における相分離が生じる。最終的に、樹脂は、溶媒等が孔を満たし、樹脂骨格による共連続構造を有する多孔質構造を形成する。これを乾燥すると、溶媒等が除去され、三次元網目構造の共連続構造を有する多孔質樹脂が残る。
【0097】
このことから液体組成物は、インクの好ましい形態として、重合性化合物(モノマー)と溶媒とが混用しており、重合後の樹脂が溶剤に対して不溶、又はゲル若しくはゾルを形成しないものであることが好ましい。
【0098】
絶縁性樹脂層が、共連続構造を有し、空孔が連通していることを確認する方法としては、例えば、絶縁性樹脂層断面を走査電子顕微鏡(SEM)等により画像観察し、空孔同士の繋がりが連続していることを確認する方法が挙げられる。
[走査電子顕微鏡(SEM)による画像観察方法の一例]
絶縁性樹脂層に対してオスミウム染色を施した後で、エポキシ樹脂で真空含浸し、集束イオンビーム(FIB)で内部の断面構造を切り出し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。
【0099】
絶縁性樹脂層の空隙率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。また、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。
絶縁性樹脂層の空隙率が30%以上であることで、固体電解質層形成後のプレス工程において、絶縁性樹脂層から固体電解質層にかかる圧力を緩和することができ好適である。
絶縁性樹脂層の空隙率が90%以下であることで、絶縁性樹脂層の強度が向上し、プレス工程を経たときに、絶縁性樹脂層の形状を十分に保つことができ好適である。
絶縁性樹脂層の空隙率の測定方法としては、[走査電子顕微鏡(SEM)による画像観察方法の一例]の項目で記載したものと同様の方法で測定することができる。
【0100】
絶縁性樹脂層の透気度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1,000秒/100mL以下が好ましく、500秒/100mL以下がより好ましく、300秒/100mL以下がさらに好ましい。
透気度は、JIS P8117に準拠して測定され、例えば、ガーレー式デンソメーター(株式会社東洋精機製作所製)等を用いて測定することができる。一例として、透気度が1,000秒/100mL以下であることをもって空孔が連通していると判断してもよい。
【0101】
絶縁性樹脂層が有する空孔の断面形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略円形状、略楕円形状、略多角形状などが挙げられる。ここで、空孔の大きさとは、絶縁性樹脂層の断面形状における最も長い部分の長さを指すものとする。絶縁性樹脂層の空孔の大きさは、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から求めることができる。
【0102】
絶縁性樹脂層が有する空孔の大きさとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、空孔の大きさと、絶縁性樹脂層上に設けられる固体電解質層を形成するための液体組成物(固体電解質層用液体組成物)に含まれる固体電解質のメジアン径との比が、1よりも小さいことが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
絶縁性樹脂層が有する空孔の大きさが、固体電解質のメジアン径よりも大きい場合、絶縁性樹脂層の空孔内に固体電解質が含まれやすくなってしまう。絶縁性樹脂層が有する空孔の大きさを、固体電解質のメジアン径よりも小さくすることで、絶縁性樹脂層内に固体電解質が含まれにくい構成とすることができ、プレス時の圧力分散や、絶縁性樹脂層から固体電解質層にかかる圧力緩和の点で有利である。
【0103】
絶縁性樹脂層が有する空孔の大きさや空隙率を制御する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体組成物中における重合性化合物の含有量を調整する方法、液体組成物中における溶媒の含有量を調整する方法、及び活性エネルギー線の照射条件を調整する方法などが挙げられる。
【0104】
絶縁性樹脂層の体積抵抗値としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1012Ω・cm以上であることが好ましい。また、導電性フィラー等を添加して、導電パスを有さない樹脂層が好ましい。
【0105】
(電気化学素子用電極)
本発明の電気化学素子用電極は、基体と、基体上に配される電極合材層と、電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、を有し、絶縁性樹脂層は液体組成物を硬化してなり、多孔質構造を有する。
なお、液体組成物は(液体組成物)の項目に記載したものと同様であり、絶縁性樹脂層は(絶縁性樹脂層)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
本明細書においては、負極と正極とを「電極」と称し、負極用電極基体と正極用電極基体とを「基体」と称し、負極合材層と正極合材層とを「電極合材層」と称することがある。
また、第1の電極が負極であった場合は第2の電極は正極を指し、第1の電極が正極であった場合は第2の電極は負極を指す。
【0106】
(電極積層体)
本発明の電気化学素子用電極は、電極積層体に好適に適用することができる。
本発明の電気化学素子用電極は、基体と、基体上に配される電極合材層と、電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、電極合材層および絶縁性樹脂層上に配される固体電解質層と、を有し、絶縁性樹脂層は液体組成物を硬化してなり、多孔質構造を有する。
なお、液体組成物は(液体組成物)の項目に記載したものと同様であり、絶縁性樹脂層は(絶縁性樹脂層)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
【0107】
ここで、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0108】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略断面図である。電気化学素子用電極25は、第1の基体21、及び第1の基体21上に配される第1の電極合材層20と、第1の電極合材層20の外周部に配される絶縁性樹脂層10と、を有する。
なお、図1では、第1の基体21の片面に電極合材層20及び絶縁性樹脂層10が設けられた構成を図示しているが、第1の基体21の対向する両面に、電極合材層20及び絶縁性樹脂層10が設けられていてもよい。
【0109】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。図2Bは、本発明の他の実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。図2Cは、本発明のさらに他の実施形態に係る電極積層体を示す概略断面図である。電極積層体35は、第1の基体21と、第1の基体21上に配される第1の電極合材層20と、第1の電極合材層20の外周部に配される絶縁性樹脂層10と、第1の電極合材層20及び絶縁性樹脂層10上に配される固体電解質層30と、を有する。
なお、図2A~Cでは、第1の基体21の片面に電極合材層20と、絶縁性樹脂層10と、固体電解質層30とが設けられた構成を図示しているが、第1の基体21の対向する両面に、電極合材層20と、絶縁性樹脂層10と、固体電解質層30が設けられていてもよい。
また、図2Bに示される通り、基体21と電極合材層20との間には、リチウムと合金化する金属を含む接着層22を設けてもよい。
【0110】
<基体>
基体としては、電子伝導性を有し、印加される電位に対して安定であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、それらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔、表層をカーボン含有樹脂層でコートしたカーボンコート箔、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき基体などが挙げられる。
【0111】
<電極合材層>
電極合材層(以下、「活物質層」と称することがある)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質(負極活物質又は正極活物質)を含んでいてもよく、更に必要に応じて、導電助剤、バインダ、分散剤、固体電解質、その他の成分を含んでもよい。
固体電解質層が硫化物固体電解質層である場合、本発明の液体組成物の硬化物(絶縁性樹脂層)は、硫化物固体電解質層のイオン電導性の劣化を抑制することができる。そのため、電気化学素子用電極、乃至電極積層体における電極合材層は、活物質及び硫化物固体電解質を含有することが好ましい。
【0112】
電極合材層は、図2Cで示すような開口部23を有していてもよい。
開口部23の数としては、1つ以上であることが好ましく、複数であることがより好ましい。
開口部23は、電極合材層表面から基体表面まで電極合材層を貫通するものであってもよく、基体表面まで貫通していなくてもよい。
開口部23は、空洞であっても、材料24が充填されていてもよい。開口部23に材料24が充填される場合、材料24は、1種単独であってもよいし、2種以上を混合したものであってもよいが、いずれの場合であっても、電極合材層を構成する材料とは材質(化合物又は組成)が異なるものである。材料24としては、イオン電導性を向上させる観点から、固体電解質層が含む固体電解質を有する材料であることが好ましく、固体電解質層と組成が同じ材料であることがより好ましい。
開口部23を有する電極合材層は、塗布制御が容易であることから、電極合材層形成手段としてのインクジェットを用いることで好適に作製することができる。
【0113】
<<活物質>>
活物質としては、正極活物質又は負極活物質を用いることができる。なお、正極活物質又は負極活物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
―正極活物質―
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素と、リチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物などが挙げられる。
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。
【0115】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン系化合物を用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の観点からは、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数及び出力特性の観点からは、リン酸バナジウムリチウムがより好ましい。
なお、ポリアニオン系化合物を用いる場合は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0116】
アルカリ金属含有遷移金属化合物は、その表面の少なくとも一部をイオン伝導性酸化物で被覆されていることが好ましい。イオン伝導性酸化物としては、リチウムイオン伝導性酸化物が好ましい。
リチウムイオン伝導性酸化物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式LixAOy(Aは、B、C、Al、Si、P、S、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Sc、V、Y、Ca、Sr、Ba、Hf、Ta、Cr又はWであり、x及びyは正の数である。)で表される酸化物などを挙げることができる。
リチウムイオン伝導性酸化物の具体例としては、LiBO、LiBO、LiCO、LiAlO、LiSiO、LiSiO、LiPO、LiSO、LiTiO、LiTi12、LiTi、LiZrO、LiNbO、LiTaO、LiMoO及びLiWOなどが挙げられる。これらの中でも、LiTi12、LiZrO、又はLiNbOが好ましい。
また、リチウムイオン伝導性酸化物は、複合酸化物であってもよい。複合酸化物としては、リチウムイオン伝導性酸化物の任意の組み合わせを採用することができ、例えば、LiSiO-LiBO、及びLiSiO-LiPOなどが挙げられる。
【0117】
―負極活物質―
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
炭素材料以外の材料としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用することができる。
【0118】
<<導電助剤>>
導電助剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により製造されるカーボンブラックや、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子等の炭素材料などを用いることができる。
炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維などを用いることができる。なお、導電助剤は予め活物質と複合化されていてもよい。
【0119】
活物質に対する導電助剤の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、電極合材層用液体組成物の全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
活物質に対する導電助剤の含有量が、電極合材層用液体組成物の全量に対して10質量%以下であると、電極合材層用液体組成物の安定性が向上するため好適である。
活物質に対する導電助剤の含有量が、電極合材層用液体組成物の全量に対して8質量%以下であると、電極合材層用液体組成物の安定性が更に向上するため好適である。
【0120】
<<バインダ>>
バインダは、負極材料同士、正極材料同士、負極材料と負極基体、正極材料と正極基体を結着することが可能であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。なお、電極合材層形成用液体組成物をインクジェット吐出に用いる場合は、液体吐出ヘッドのノズル詰まりを抑制する観点から、バインダは、電極合材層形成用液体組成物の粘度を上昇させにくいものであることが好ましい。
【0121】
バインダとしては、高分子化合物を用いることができる。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレート等の熱可塑性樹脂、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール(PEO)ポリメチルメクリル酸(PMMA)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)などが挙げられる。
【0122】
活物質に対するバインダの含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、電極合材層用液体組成物の全量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量以上10質量%以下であることがより好ましい。活物質に対するバインダの含有量が、電極合材層用液体組成物の全量に対して1質量%以上であると、活物質を基体に強固に結着させることができ好適である。
【0123】
<<分散剤>>
分散剤としては、電極合材層用液体組成物中の活物質の分散性を向上させることが可能であれば、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤;アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤;ポリリン酸塩系分散剤等の無機分散剤などが挙げられる。
【0124】
<<固体電解質>>
固体電解質としては、電子絶縁性を有し、かつイオン電導性を示す固体物質であれば、特に制限はないが、高いイオン電導性を有する観点から、硫化物固体電解質、酸化物系固体電解質が好ましい。
【0125】
硫化物固体電解質としては、例えば、Li10GeP12、アルジロダイト型結晶構造を有するLiPSX(X=F、Cl、Br、I)などが挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型結晶構造を有するLLZ(LiLaZr12)、NASICON型結晶構造を有するLATP(Li1+xAlxTi20x(PO)(0.1≦x≦0.4)、ペロブスカイト型結晶構造を有するLLT(Li0.33La0.55TiO)、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.30.4)などが挙げられる。
これらの固体電解質は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
これらの固体電解質層を構成するために液体に溶解又は分散させる電解質材料としては、例えば、固体電解質の前駆体となる材料であるLiSとP、LiCl、固体電解質の材料であるLiS-P系ガラス、Li11ガラスセラミクスなどが挙げられる。
【0127】
<絶縁性樹脂層>
本発明の電気化学素子用電極及び電極積層体における絶縁性樹脂層は、基体上に設けられた電極合材層の外周部に配される。また、絶縁性樹脂層は、基体上かつ基体の外周部に配されていてもよい。
【0128】
ここで、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0129】
図3は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である。図4は、本発明の他の実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である。図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る電気化学素子用電極を示す概略上面図である。
図3において、絶縁性樹脂層10は、電極合材層20外周部における2辺に隣接するように設けられている。
図4において、絶縁性樹脂層10は、電極合材層20外周部における2つの長辺と、その長辺の2つの角とに隣接して設けられている。
図5において、絶縁性樹脂層10は、電極合材層20外周部における4辺全てに連続的に隣接して設けられている。なお、絶縁性樹脂層は、断続的に隣接して設けられてもよい。
【0130】
本明細書において「電極合材層の外周部に配される」とは、電極合材層における外周部の少なくとも2辺に絶縁性樹脂層が配されていてもよいし、電極合材層における外周部の3辺に絶縁性樹脂層が配されていてもよいし、電極合材層における外周部の4辺すべてに絶縁性樹脂層が配されていてもよい。また、絶縁性樹脂層は、任意の辺において、電極タブを突出させるための凹部や、切り欠き部を有していてもよい。
【0131】
本明細書において「基体の外周部に配される」とは、基体の端部を含むように絶縁性樹脂層が配されてもよいし、図3~5に示すように基体が露出するように絶縁性樹脂層が配されてもよい。
【0132】
図6Aは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その1)である。図6Bは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その2)である。図6Cは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その3)である。図6Dは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略断面図(その4)である。
絶縁性樹脂層10は、図6Aに示すように電極合材層20と離間していてもよいし、図6B~6Dに示すように電極合材層20と接していてもよい。これらの中でも、絶縁性樹脂層10は電極合材層20と接していることが好ましい。
絶縁性樹脂層10が電極合材層20と接している場合、図6Bに示すように絶縁性樹脂層10と電極合材層20との対面が互いに一部領域で接触していてもよく、図6C~6Dに示すように絶縁性樹脂層10と電極合材層20との対面が全面接触していてもよい。
ここで、絶縁性樹脂層10形成後に電極合材層20を設けた場合には、図6Cに示すように電極合材層20が絶縁性樹脂層10側に重なる。同様に、電極合材層20形成後に絶縁性樹脂層10を設けた場合には、図6Dに示すように絶縁性樹脂層10が電極合材層20側に重なる。
【0133】
図7は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との位置関係を示す概略上面図である。
ここで、絶縁性樹脂層10と電極合材層20とが離間している場合、絶縁性樹脂層10と電極合材層20との距離d(電極合材層20の外周部と絶縁性樹脂層との距離)は、図7に示す通り定義される。即ち、絶縁性樹脂層10と電極合材層20とが隣接する状態をd=0とし、図7に示す矢印の間を電極合材層と絶縁性樹脂層との距離dとする。なお、図6C~Dに示すように、絶縁性樹脂層が電極合材層側に重なっている場合、及び電極合材層が絶縁性樹脂層側に重なっている場合は、マイナス値で示す。
【0134】
絶縁性樹脂層10と電極合材層20との距離d(電極合材層20の外周部と絶縁性樹脂層との距離)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
絶縁性樹脂層10と電極合材層20との距離dが10mm以下であると、プレス工程を経た後に絶縁性樹脂層と電極合材層とが接触しやすくなるため、固体電解質層を絶縁性樹脂層及び電極合材層上に均一に形成することができ好適である。また、固体電解質層をプレスした際に、固体電解質層に対して均一に圧力を付加することができるため好適である。
【0135】
図8Aは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その1)である。図8Bは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その2)である。図8Cは、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極における絶縁性樹脂層と電極合材層との平均厚みの関係を示す概略断面図(その3)である。
本発明に関する電極積層体における、電極合材層の平均厚みA、及び絶縁性樹脂層の平均厚みBの関係性としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図8A~8Cに示すように、A<Bであっても、A=Bであっても、A>Bであってもよい。これらの中でも、A=B乃至A<Bであることが好ましい。
【0136】
絶縁性樹脂層の平均厚みとしては、特に制限はなく、電極合材層の平均厚み等の各種条件に応じて適宜選択することができるが、1.0μm以上150.0μm以下が好ましく、10.0μm以上100.0μm以下がより好ましい。
絶縁性樹脂層の平均厚みが10.0μm以上であると、プレス時の圧力負荷を分散することができるとともに、正極と負極との短絡を防止することができ好適である。
絶縁性樹脂層の平均厚みが100.0μm以下であると、密度が高く電池特性に優れる電気化学素子を製造することができる。
【0137】
本発明に関する電極積層体において、電極合材層の平均厚みAに対する、絶縁性樹脂層の平均厚みBの比(B/A)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.97以上1.03以下が好ましく、0.98以上1.02以下がより好ましい。
【0138】
電極合材層の平均厚みA、及び絶縁性樹脂層の平均厚みBの測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、それぞれ任意の3点以上の厚みを測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。
【0139】
本発明に関する電極積層体における絶縁性樹脂層は多孔質構造を有するため、電極合材層の厚みと、絶縁性樹脂層の厚みとは、プレスにより容易かつ高精度に制御することができる。
また、絶縁性樹脂層は、塗布及び重合誘起相分離法により形成できるため、容易に厚みを制御することができる。共連続構造を有する絶縁性樹脂層であれば、プレスした際に生じる圧力を効率よく分散させることができ、絶縁性樹脂層の破壊や高低差ムラ等といった不具合の発生を抑制し、品質のよい絶縁性樹脂層を得ることができる。
【0140】
絶縁性樹脂層における圧縮率(500MPa、5分間の押圧後)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1%以上50%以下が好ましく、5%以上20%以下がより好ましい。
絶縁性樹脂層の圧縮率が50%以下であると、絶縁性樹脂層の強度が向上し、プレス工程を経たときに、絶縁性樹脂層の形状を十分に保つことができる。
絶縁性樹脂層の圧縮率が1%以上であると、固体電解質層形成後のプレス工程において、絶縁性樹脂層から固体電解質層にかかる圧力を緩和することができる。
【0141】
<固体電解質層>
固体電解質層の固体電解質としては、電極合材層の固体電解質として説明した材料を適宜選択して用いることができる。
本発明の液体組成物の硬化物(絶縁性樹脂層)は、硫化物固体電解質層のイオン電導性の劣化を抑制することができる。そのため、固体電解質層は、硫化物固体電解質を含有する硫化物固体電解質層であることが好ましい。
【0142】
固体電解質層はバインダを含んでもよい。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレート等の熱可塑性樹脂、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール(PEO)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)などが挙げられる。
【0143】
(電気化学素子用電極の製造方法、及び電気化学素子用電極の製造装置)
本発明に関する電気化学素子用電極の製造方法は、絶縁性樹脂層形成工程と、電極合材層形成工程と、を有していてもよく、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
本発明に関する電気化学素子用電極の製造装置は、収容容器と、絶縁性樹脂層形成手段と、電極合材層形成手段と、を有していてもよく、必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
【0144】
<収容容器>
収容容器は、絶縁性樹脂層を形成するための液体組成物と、容器とを含み、液体組成物が容器中に収容された収容容器である。
容器としては、例えば、ガラス瓶、プラスチック容器、プラスチックボトル、ステンレスボトル、一斗缶、ドラム缶などが挙げられる。
【0145】
<絶縁性樹脂層形成工程、及び絶縁性樹脂層形成手段>
絶縁性樹脂層形成工程は、基体上に絶縁性樹脂層を形成する工程である。絶縁性樹脂層形成工程は、液体組成物付与工程と、液体組成物硬化工程とを有することが好ましい。
絶縁性樹脂層形成手段は、基体上に絶縁性樹脂層を形成する手段である。絶縁性樹脂層形成手段は、液体組成物付与手段と、液体組成物硬化手段とを有することが好ましい。
絶縁性樹脂層形成工程は、絶縁性樹脂層形成手段によって好適に実施することができ、液体組成物付与工程は、液体組成物付与手段によって好適に実施することができ、液体組成物硬化工程は、液体組成物硬化手段によって好適に実施することができる。
【0146】
<<液体組成物付与工程、及び液体組成物付与手段>>
液体組成物付与工程は、液体組成物を基体上に付与する工程である。
液体組成物付与手段は、収容容器に収容された液体組成物を、基体上に付与する手段である。
液体組成物付与工程及び液体組成物付与手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の印刷装置を用いることができる。これらの中でも、高精度で絶縁性樹脂層を形成することできる観点から、インクジェット印刷法(方式)が好ましい。
【0147】
<<液体組成物硬化工程、及び液体組成物硬化手段>>
液体組成物硬化工程は、液体組成物に対して熱又は光を付与して硬化する工程である。
液体組成物硬化手段は、液体組成物に対して熱又は光を付与して硬化する手段である。
液体組成物に対して熱又は光を付与することで、液体組成物中の重合性化合物が重合するとともに重合誘起相分離が生じ、多孔質構造を有する絶縁性樹脂層が得られる。
【0148】
液体組成物硬化工程、及び液体組成物硬化手段における光としては、活性エネルギー線であることが好ましい。
活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0149】
活性エネルギー線の照射強度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1W/cm以下であることが好ましく、300mW/cm以下であることがより好ましく、100mW/cm以下であることがさらに好ましい。
なお、活性エネルギー線の照射強度が低すぎると、重合誘起相分離が過度に進行して多孔質構造のばらつきや粗大化が生じやすくなり、また、照射時間が長くなることで生産性が低下することから、10mW/cm以上であることが好ましく、30mW/cm以上であることがより好ましい。
【0150】
<電極合材層形成工程、及び電極合材層形成手段>
電極合材層形成工程は、基体上に電極合材層を形成する工程である。
電極合材層形成手段は、基体上に電極合材層を形成する手段である。
電極合材層形成工程及び電極合材層形成手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉体状の活物質や結着剤、導電材等を液体中に分散して得られた分散液を基体上に塗布し、固定して乾燥する方法などが挙げられる。このとき、スプレー、ディスペンサ、ダイコーター、引き上げ塗工などの塗布方法を好適に用いることができる。
【0151】
<その他の工程、その他の手段>
電気化学素子用電極の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒除去工程などが挙げられる。
電気化学素子用電極の製造装置におけるその他の手段としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒除去手段などが挙げられる。
【0152】
<<溶媒除去工程、溶媒除去手段>>
溶媒除去工程は、絶縁性樹脂層から溶媒を除去する工程である。
溶媒除去手段は、絶縁性樹脂層から溶媒を除去する手段である。
溶媒除去工程及び溶媒除去手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱により絶縁性樹脂層から溶媒を除去する方法などが挙げられる。このとき、減圧下で加熱することで溶媒の除去が促進され、絶縁性樹脂層における残存溶媒の量を低減することができるため好ましい。
加熱する際には、ステージにより加熱してもよいし、ステージ以外の加熱機構により加熱してもよい。加熱機構は、基体の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。加熱機構としては、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。このときの加熱温度としては、特に制限はないが、使用エネルギーの観点から、70℃~150℃が好ましい。
【0153】
電気化学素子用電極の製造方法において、絶縁性樹脂層形成工程と、電極合材層形成工程との順序は、特に制限されない。即ち、電極合材層形成工程が絶縁性樹脂層形成工程の前に実施され、電極合材層を形成した後に、電極合材層の外周部に絶縁性樹脂層を形成してもよい。その場合、電気化学素子用電極の製造方法は、電極合材層形成工程、絶縁性樹脂層形成工程、溶媒除去工程の順に実施される。
同様に、電極合材層形成工程が絶縁性樹脂層形成工程の後に実施され、絶縁性樹脂層を基体上の外周部に形成した後に、絶縁性樹脂層の内側に電極合材層を形成してもよい。その場合、電気化学素子用電極の製造方法は、絶縁性樹脂層形成工程、電極合材層形成工程、溶媒除去工程の順に実施される。
【0154】
(電極積層体の製造方法、及び電極積層体の製造装置)
本発明の電極積層体の製造方法は、絶縁性樹脂層形成工程と、電極合材層形成工程と、固体電解質層形成工程と、を有し、必要に応じて、プレス工程と、その他の工程を有していてもよい。
本発明に関する電極積層体の製造装置は、収容容器と、絶縁性樹脂層形成手段と、電極合材層形成手段と、固体電解質層形成手段と、を有することが好ましく、必要に応じて、プレス手段と、その他の手段を有していてもよい。
なお、収容容器、絶縁性樹脂層形成工程、絶縁性樹脂層形成手段、電極合材層形成工程、電極合材層形成手段、その他の工程、及びその他の手段は、(電気化学素子用電極の製造方法、および電気化学素子用電極の製造装置)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
【0155】
<プレス工程、プレス手段>
プレス工程は、電極合材層および絶縁性樹脂層をプレスする工程である。
プレス手段は、電極合材層および絶縁性樹脂層をプレスする手段である。
プレス工程は、プレス手段によって好適に実施することができる。
【0156】
プレス工程およびプレス手段としては、特に制限はなく、市販の加圧成型装置を用いて行うことができ、電極合材層及び絶縁性樹脂層を基体方向にプレスすればよく、例えば、一軸プレス、ロールプレス、冷間静水等方圧プレス(CIP)、ホットプレスなどが挙げられる。これらの中でも、等方加圧することができる冷間静水等方圧プレス(CIP)が好ましい。
【0157】
プレス工程を行うタイミングとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基体上に電極合材層及び絶縁性樹脂層を形成した後に、電極合材層及び絶縁性樹脂層をプレスしてもよく、固体電解質層を設けた後にプレスしてもよいし、両タイミングで行ってもよい。
基体上に電極合材層及び絶縁性樹脂層を形成した後、かつ固体電解質層を形成する前にプレス工程を実施することによって、電極合材層の平均厚みと、絶縁性樹脂層の平均厚みとを略同等とすることができ、電極上に設けられた固体電解質層をプレスする際に高い圧力がかかった場合でも、圧力負荷を分散させることができる。
【0158】
プレス圧力としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、基体と電極合材層とを圧着しつつ、電極合材層を圧密化することができる圧力で行うことが好ましい。より具体的には、1MPa以上900MPa以下が好ましく、250MPa以上700MPa以下より好ましい。
【0159】
<固体電解質層形成工程、及び固体電解質層形成手段>
電極積層体の製造方法における固体電解質層形成工程は、電極合材層及び絶縁性樹脂層上に固体電解質層を形成する工程である。
電極積層体の製造装置における固体電解質層形成手段は、電極合材層及び絶縁性樹脂層上に固体電解質層を形成する手段である。
【0160】
固体電解質層を形成する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体電解質、及び必要に応じてバインダを含む液体組成物を、電極合材層及び絶縁性樹脂層上に塗布し、固化して乾燥させる方法などが挙げられる。
塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット法やスプレーコート法、ディスペンサ法などの液体吐出方法や、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法などが挙げられる。
【0161】
電極積層体の製造方法において、絶縁性樹脂層形成工程と、電極合材層形成工程との順序は、特に制限されない。即ち、電極合材層形成工程が絶縁性樹脂層形成工程の前に実施され、電極合材層を形成した後に、電極合材層の外周部に絶縁性樹脂層を形成してもよい。その場合、電極積層体の製造方法は、電極合材層形成工程、絶縁性樹脂層形成工程、溶媒除去工程、プレス工程、及び固体電解質層形成工程の順に実施される。
同様に、電極合材層形成工程が絶縁性樹脂層形成工程の後に実施され、絶縁性樹脂層を基体上の外周部に形成した後に、絶縁性樹脂層の内側に電極合材層を形成してもよい。その場合、電極積層体の製造方法は、絶縁性樹脂層形成工程、溶媒除去工程、電極合材層形成工程、プレス工程、及び固体電解質層形成工程の順に実施される。
【0162】
[基体に液体組成物を直接的に付与することで絶縁性樹脂層、乃至電極積層体を形成する実施形態]
図9は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す概略図である。
絶縁性樹脂層の製造装置500は、搬送部5と、印刷部100と、重合部200と、加熱部300と、ローラ7とを備える。
【0163】
搬送部5は、印刷部100、重合部200、加熱部300の順に、印刷基体をあらかじめ設定された速度で搬送する。
印刷基体は、基体上に電極合材層が設けられた基体であってもよいし、電極合材層を有しない基体であってもよい。電極合材層を有しない基体である場合は、絶縁性樹脂層形成後に電極合材層が設けられる。
【0164】
-印刷部100-
印刷部100は、印刷基体上に、液体組成物を付与する液体組成物付与工程を実施する液体組成物付与手段の一例である印刷装置1aと、液体組成物6を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cとを備える。
【0165】
印刷部100は、印刷装置1aから液体組成物6を印刷基体上に吐出して、液体組成物を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、絶縁性樹脂層の製造装置と一体化した構成であってもよいし、絶縁性樹脂層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、絶縁性樹脂層の製造装置と一体化した収容容器や、絶縁性樹脂層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0166】
収容容器1b及び供給チューブ1cは、液体組成物6を安定して貯蔵及び供給できるものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
収容容器1b及び供給チューブ1cを構成する材料は、紫外線及び可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物6が外光により重合が開始されることが防止されるため好ましい。
【0167】
-重合部200-
重合部200は、図9に示すように、光重合の場合、液体組成物硬化工程を実施する液体組成物硬化手段の一例である光照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bとを有する。
【0168】
光照射装置2aは、重合不活性気体存在下において、印刷部100により形成された、薄膜状の液体組成物に対して光を照射し、光重合させて絶縁性樹脂層前駆体を得る。
光照射装置2aとしては、液体組成物中の化合物の重合を開始及び進行可能であれば、特に制限されず、液体組成物に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択することができ、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源などが挙げられる。ただし、照射する光が短波長であるほど、深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する絶縁性樹脂層の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
【0169】
重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性を有する酸素の濃度を低下させることで、液体組成物の表面近傍に存在する重合性化合物の重合反応が阻害されることを防ぐ役割を担う。ここで、重合不活性気体としては、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどが挙げられる。
重合不活性気体中のO濃度としては、阻害低減効果がより得られることを考慮して、20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることがさらに好ましい。
また、重合不活性気体循環装置2bは、安定した重合進行条件を実現させるために、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
【0170】
重合部200は、熱重合の場合は、加熱装置であってもよい。加熱装置としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱(例えば、ホットプレート)、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
また、加熱温度や時間、又は光照射の条件に関しては、液体組成物に含まれる重合性化合物や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0171】
重合部200としては、特に制限はなく、用いる重合開始剤や重合様式などの目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合の場合、波長365nmの紫外線を3秒間照射する光照射装置、熱重合の場合、150℃真空乾燥で12時間加熱する加熱装置などが挙げられる。
【0172】
-加熱部300-
加熱部300は、溶媒除去工程を実施する溶媒除去手段の一例である加熱装置3aを有する。
加熱装置3aは、図9に示すように、重合部200により形成した絶縁性樹脂層前駆体を加熱して、残存する溶媒を乾燥させて除去する。このとき、溶媒除去は減圧下で実施してもよい。
【0173】
加熱部300においては、絶縁性樹脂層前駆体を加熱装置3aにより加熱して、重合部200で実施した硬化(重合)反応を更に促進させる重合促進工程、及び絶縁性樹脂層前駆体に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する開始剤除去工程をも行う。なお、これらの重合促進工程及び開始剤除去工程は、溶媒除去工程と同時でなくてもよく、溶媒除去工程の前又は後に実施されてもよい。
加熱部300は、溶媒除去工程後に、絶縁性樹脂層を減圧下で加熱する重合完了工程を行う。加熱温度や時間に関しては、絶縁性樹脂層前駆体に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0174】
図10は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)における他の一例を示す概略図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311及びバルブ312とを制御することで、液体組成物が液体吐出ヘッド306、液体吐出ヘッドタンク307、及びチューブ308を循環することを可能としている。
液体吐出装置300’には、外部タンク313が設けられており、液体吐出ヘッドタンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、バルブ312、及びバルブ314とを制御することで、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
【0175】
絶縁性樹脂層の製造装置を用いると、付与対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0176】
絶縁性樹脂層の製造装置500は、液体組成物6が液体吐出ヘッドから吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0177】
図11は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子用電極の製造方法を説明するための概略図(その1)である。
基体上に絶縁性樹脂層が設けられた電気化学素子用電極210の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、基体211上に、液体組成物12Aを順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の基体211を準備する。そして、基体211を筒状の芯に巻き付け、絶縁性樹脂層212を形成する側が、図11中上側となるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転して、図11中右から左の方向に基体211を搬送する。そして、図10と同様にして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305との間の基体211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される基体211上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、基体211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に複数個設置されていてもよい。
次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された基体211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305とによって、重合部309に搬送される。その結果、液体組成物12Aが重合されて絶縁性樹脂層212が形成され、また基体上に絶縁性樹脂層が設けられた電気化学素子用電極210が得られる。その後、電気化学素子用電極210は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0178】
重合部309は、基体211の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
重合部309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合の場合、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられ、光重合の場合、紫外線照射装置などが挙げられる。なお、重合部309は、複数個設置されていてもよい。
加熱又は光照射の条件としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0179】
図12は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の製造方法を実施するための、絶縁性樹脂層の製造装置(液体吐出装置)におけるさらに他の一例を示す概略図である。
液体吐出装置300A’及び液体吐出装置300B’を組み合わせて使用してもよい。即ち、タンクは、タンク307A及びタンク307Bに接続された外部タンク313A及び外部タンク313Bから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッドは、複数のヘッド306A及びヘッド306Bを有してもよい。それに合わせて、チューブ308A及びチューブ308B、バルブ311A、バルブ311B、バルブ312A、バルブ312B、バルブ314A、及びバルブ314B、並びにポンプ310A及び310Bを有していてもよい。
【0180】
[基体に液体組成物を間接的に付与することで絶縁性樹脂層、乃至電極積層体を形成する実施形態]
図13は、本発明の一実施形態に係る絶縁性樹脂層の製造装置における液体組成物付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図(その1)である。図13の印刷部には、ドラム状の中間転写体が用いられている。
印刷部400´は、中間転写体4001を介して基体に液体組成物、乃至絶縁性樹脂層を転写することで基体上に絶縁性樹脂層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004、及び清掃ユニット4005を備える。
【0181】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。
ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物膜を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基体の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面にノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0182】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。
【0183】
吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物から液体成分を吸収する。
【0184】
加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物を加熱する。液体組成物を加熱することで、液体組成物を熱重合させて絶縁性樹脂層を形成する。また、溶媒が除去され、基体への転写性が向上する。
【0185】
清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0186】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基体が通過するときに、中間転写体4001上の絶縁性樹脂層が基体に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基体の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0187】
図14は、本発明の一実施形態に係る絶縁性樹脂層の製造装置における液体組成物付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図(その2)である。図14の印刷部には、無端ベルト状の中間転写体が用いられている。
印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して、液体組成物、乃至絶縁性樹脂層を基体上に転写することで絶縁性樹脂層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400´´は、インクジェット部420、転写ローラ622、中間転写ベルト4006、加熱ユニット4007、清掃ローラ4008、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、形状維持ローラ4009c、形状維持ローラ4009d、形状維持ローラ4009e、形状維持ローラ4009fを備える。
【0188】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物の液滴を吐出する。中間転写ベルト4006上の液体組成物は、加熱ユニット4007によって加熱され、熱重合することで絶縁性樹脂層を形成する。中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の絶縁性樹脂層は基体に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0189】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数の形状維持ローラ4009c、形状維持ローラ4009d、形状維持ローラ4009e、形状維持ローラ4009f、および複数の支持ローラ4009gに架け渡され、図14中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0190】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、電極積層体を有することが好ましく、さらに必要に応じて、外装を有していてもよい。
なお、電極積層体は、(電極積層体)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
【0191】
ここで、本発明に関する電気化学素子の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0192】
図15は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子を示す概略断面図である。電気化学素子45は、第1の基体21と、第1の基体21上に配される第1の電極合材層20と、第1の電極合材層20の外周部に配される絶縁性樹脂層10と、第1の電極合材層20及び絶縁性樹脂層10上に配される固体電解質層30と、固体電解質層30上に配される第2の電極合材層40と、第2の電極合材層上に配される第2の基体41とを有する。電気化学素子45は、単電池層であり、これを積層して積層電池とすることができる。
なお、図15では、第1の基体21の片面に電極合材層20と、絶縁性樹脂層10と、固体電解質層30とが設けられた構成を図示しているが、第1の基体21の対向する両面に、電極合材層20と、絶縁性樹脂層10と、固体電解質層30が設けられていてもよく、この構成が積層された積層電池としてもよい。
【0193】
図16は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子である全固体電池の一例を示す概略断面図である。
図16に示す全固体電池は、正極(電極合材層)20、負極(電極合材層)40、固体電解質層30、引き出し線50、引き出し線51、及び外装60を備えている。
正極(電極合材層)20は、正極基体21と、正極基体21上に配される絶縁性樹脂層10とを備えている。正極基体21には、引き出し線50が接続されており、負極基体41には、引き出し線51が接続されている。引き出し線50及び51は、外装60の外部に引き出されている。
ここで、全固体電池は、固体電解質層30を介して、正極(電極合材層)20と負極(電極合材層)40とが積層されており、正極(電極合材層)20は負極(電極合材層)40の両側に配されている。なお、正極(電極合材層)20と負極(電極合材層)40の積層数は、特に制限は無い。また、正極(電極合材層)20の個数と負極(電極合材層)40の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0194】
外装としては、電極積層体を封止することができれば、特に制限はなく目的に応じて公知の外装を適宜選択することができる。
【0195】
電気化学素子の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネートタイプ、シリンダタイプ、コインタイプなどが挙げられる。
【0196】
デンドライド析出による短絡が生じ得る電気化学素子においては、通常、正極合材層よりも負極合材層を大きくする構成が一般的である。このとき、正極集電体及び負極集電体が略同等の大きさであると、正極集電体上において、負極の負極合材層が対向する領域において、正極合材層が形成されない余剰部が発生する。電気学素子特性の観点から、絶縁性樹脂層は、正極の余剰部、即ち正極合材層の外周部に設けられることが好ましい。なお、電気化学素子としたときに、正極合材層よりも負極合材層を小さくする構成がとられる場合であれば、絶縁性樹脂層は負極の余剰部、即ち負極合材層の外周部に設けられることが好ましい。
【0197】
(電気化学素子の製造方法、及び電気化学素子の製造装置)
本発明に関する電気化学素子の製造方法は、絶縁性樹脂層形成工程と、電極合材層形成工程と、プレス工程と、固体電解質層形成工程と、素子化工程と、電極加工工程とを含むことが好ましく、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
本発明に関する電気化学素子の製造装置は、絶縁性樹脂層形成手段と、電極合材層形成手段と、プレス手段と、固体電解質層形成手段と、素子化手段と、電極加工手段とを含むことが好ましく、必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
なお、絶縁性樹脂層形成工程、絶縁性樹脂層形成手段、電極合材層形成工程、電極合材層形成手段、プレス工程、プレス手段、固体電解質層形成工程、固体電解質層形成手段、その他の工程、及びその他の手段は、(電気化学素子用電極の製造方法、及び電気化学素子用電極の製造装置)並びに(電極積層体の製造方法、及び電極積層体の製造装置)の項目に記載したものと同様であるため、重複する記載を省略する。
【0198】
<素子化工程、及び素子化手段>
素子化工程は、電極積層体を用いて電気化学素子を製造する工程である。
素子化手段は、電極積層体を用いて電気化学素子を製造する手段である。
電極積層体を用いて電気化学素子を製造する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜公知の電気化学素子の製造方法を選択することができ、例えば、対向電極の設置、巻回又は積層、容器への収容の少なくともいずれかを行い蓄電素子とする方法が挙げられる。
なお、素子化工程としては、素子化の全行程を備える必要はなく、素子化の一部の工程を含むものであってもよい。
【0199】
<電極加工工程、及び電極加工手段>
電極加工工程は、絶縁性樹脂層形成工程における液体組成物付与工程よりも後に行われる、絶縁性樹脂層が形成された電極を加工する工程である。電極加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
電極加工手段は、絶縁性樹脂層が形成された電極を加工する手段である。電極加工手段は、裁断手段、折り畳み手段、及び貼り合わせ手段の少なくとも1つを含んでもよい。
電極加工手段は、例えば、絶縁性樹脂層が形成された電極を裁断し、電極の積層体を作製することができる。電極加工手段は、例えば、絶縁性樹脂層が形成された電極の積層体を巻回又は積層することができる。電極加工手段は、例えば、電極加工装置を有し、絶縁性樹脂層が形成された電極の積層体の裁断やつづら折り、積層や巻回を目的の電池形態に応じて実施する。
【0200】
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、車両等の移動体;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が好ましい。
移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0201】
ここで、本発明に関する電気化学素子である移動体の一実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0202】
[移動体]
図17は、本発明の一実施形態に係る電気化学素子である移動体の一例を示す概略図である。
移動体70は、例えば電気自動車である。移動体70は、モーター71と、電気化学素子72と、車輪73とを備える。
【0203】
電気化学素子72は、本発明に関する電気化学素子である。電気化学素子72は、モーター71に電力を供給することでモーター71を駆動する。駆動されたモーター71は、車輪73を駆動させることができ、その結果、移動体70は移動することができる。
移動体70は、電気化学素子72を備えるため、正極と負極との短絡を防止するとともに、電池特性に優れる電気化学素子からの電力により駆動し、安全かつ効率よく移動体を移動させることができる。
【0204】
移動体70としては、電気自動車に限られず、PHEVやHEV、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。また、移動体70は、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体70は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0205】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、別段の断りない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0206】
[共重合体の製造]
<樹脂製造例1>
1000質量部のアクリル酸メチル(東京化成株式会社製)、及び1000質量部のトルエン(東京化成株式会社製)を窒素気流下、25℃で8時間攪拌を行った。攪拌終了後、3質量部のアゾビスイソブチロニトリル(東京化成株式会社製)を加えて、100℃で加熱攪拌し重合させた。このとき、重合反応は、ゲル浸透クロマトグラフィーで重量平均分子量が50,000になるまで行った。重合反応終了後、(1)大量のメタノールを用いた再沈殿、(2)酢酸エチルを用いて沈殿物を溶解、(3)メタノールを用いた再沈殿、の一連の操作を3回行うことで重合物の精製を行った。80℃減圧下で、再沈殿後の沈殿物を乾燥し、ポリアクリル酸メチル(Mw=50,000)を得た。
【0207】
<樹脂製造例2>
アクリル酸メチルの代わりに、アクリル酸エチル(東京化成株式会社製)を用い、アゾビスイソブチロニトリルを4質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸エチル(Mw=50,000)を得た。
【0208】
<樹脂製造例3>
アクリル酸メチルの代わりに、アクリル酸-n-ブチル(東京化成株式会社製)を用い、アゾビスイソブチロニトリルを4質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸プロピル(Mw=50,000)を得た。
【0209】
<樹脂製造例4>
アクリル酸メチルの代わりに、アクリル酸-n-ブチルを用い、アゾビスイソブチロニトリルを12質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸-n-ブチル(Mw=18,000)を得た。
【0210】
<樹脂製造例5>
アクリル酸メチルの代わりに、アクリル酸iso-ブチル(東京化成株式会社製)を用い、アゾビスイソブチロニトリルを4質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、ポリアクリル酸-iso-ブチル(Mw=50,000)を得た。
【0211】
<樹脂製造例6>
アクリル酸メチルの代わりに、561質量部のアクリル酸-n-ブチル、及び439質量部のメタクリル酸メチル(東京化成株式会社製)を用いたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で50:50のポリ(アクリル酸-n-ブチル-co-メタクリル酸メチル)ランダム共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0212】
<樹脂製造例7>
アクリル酸メチルの代わりに、657質量部のアクリル酸-n-ブチル、及び343質量部のメタクリル酸メチル(東京化成株式会社製)を用いたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で60:40のポリ(アクリル酸-n-ブチル-co-メタクリル酸メチル)ランダム共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0213】
<樹脂製造例8>
アクリル酸メチルの代わりに、837質量部のアクリル酸-n-ブチル、163質量部のメタクリル酸メチルを用いたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で80:20のポリ(アクリル酸-n-ブチル-co-メタクリル酸メチル)ランダム共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0214】
<樹脂製造例9>
アクリル酸メチルの代わりに、837質量部のアクリル酸-n-ブチル、及び163質量部のメタクリル酸メチルを用い、アゾビスイソブチロニトリルを2質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で80:20のポリ(アクリル酸-n-ブチル-co-メタクリル酸メチル)ランダム共重合体(Mw=100,000)を得た。
【0215】
<樹脂製造例10>
アクリル酸メチルの代わりに、837質量部のアクリル酸-n-ブチル、及び163質量部のメタクリル酸メチルを用い、アゾビスイソブチロニトリルを1質量部加えたこと以外は、樹脂製造例1と同様の方法で、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で80:20のポリ(アクリル酸-n-ブチル-r-メタクリル酸メチル)ランダム共重合体(Mw=180,000)を得た。
【0216】
<樹脂製造例11>
2.23質量部の臭化第一銅(CuBr;富士フイルム和光純薬株式会社製)、1.04質量部の2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル(DBADE;東京化成工業株式会社製)、85.14質量部のアクリル酸-n-ブチル(BA;東京化成工業株式会社製)、及び15.64質量部のアセトニトリル(ACN;東京化成工業株式会社製)を仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.35質量部のN,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA;富士フイルム和光純薬株式会社製)と、2.00部のACNとの混合液を加え、ゲル浸透クロマトグラフィーで重量平均分子量が25,000になるまで重合反応を行った。反応溶液を活性アルミナでろ過し、触媒残渣を除去した後、2.6kPa、80℃で約2時間、残存モノマーおよび溶媒を除去し、ポリアクリル酸ブチル(Mw=25,200)のポリマーブロックを得た。
得られたポリマーブロック50質量部、1.3質量部の臭化第一銅、50質量部のメタクリル酸メチル、及び重合溶媒としてトルエン20質量部を混合し、攪拌下窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.1質量部のPMDETAと、2.3部のトルエンとの混合液を加え、80℃で重量平均分子量が50,000になるまで重合反応を行った。樹脂製造例1と同様の方法で、触媒除去を行った。得られた反応溶液を、(1)大量のメタノールを用いた沈殿、(2)酢酸エチルを用いて沈殿物を溶解、(3)メタノールを用いた再沈殿、の一連の操作を3回行うことで重合物の精製を行った。再沈殿後の沈殿物を濾過、乾燥することで、アクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で50:50の(アクリル酸-n-ブチル-b-メタクリル酸メチル)ブロック共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0217】
<樹脂製造例12>
2.23質量部の臭化第一銅、1.04質量部の2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル、102.17質量部のアクリル酸-n-ブチル、15.64質量部のアセトニトリルを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.35質量部のPMDETAと、2.00質量部のACNとの混合液を加え、ゲル浸透クロマトグラフィーで重量平均分子量が30,000になるまで重合反応を行った。反応溶液を活性アルミナでろ過し、触媒残渣を除去した後、2.6kPa、80℃で約2時間、残存モノマーおよび溶媒を除去し、ポリアクリル酸ブチルのポリマーブロック(Mw=29,800)を得た。
得られたポリマーブロック78質量部、1.3質量部の臭化第一銅、35質量部のメタクリル酸メチル、及び重合溶媒としてトルエン20質量部を混合し、攪拌下窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.1質量部のPMDETAと、2.3質量部のトルエンとの混合液を加え、80℃で重量平均分子量が50,000になるまで重合反応を行った。樹脂製造例1と同様の方法で、触媒除去を行った。得られた反応溶液を、(1)大量のメタノールを用いた沈殿、(2)酢酸エチルを用いて沈殿物を溶解、(3)メタノールを用いた再沈殿、の一連の操作を3回行うことで重合物の精製を行った。再沈殿後の沈殿物を濾過、乾燥することでアクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で60:40の(アクリル酸-n-ブチル-b-メタクリル酸メチル)ブロック共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0218】
<樹脂製造例13>
1.39質量部の臭化第一銅、0.65質量部の2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル、136.22質量部のアクリル酸-n-ブチル、及び15.64質量部のアセトニトリルを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.28質量部のPMDETAと、2.00質量部のACNとの混合液を加え、ゲル浸透クロマトグラフィーで重量平均分子量が30,000になるまで重合反応を行った。反応溶液を活性アルミナでろ過し、触媒残渣を除去した後、2.6kPa、80℃で約2時間、残存モノマーおよび溶媒を除去し、ポリアクリル酸ブチルのポリマーブロック(Mw=29,800)を得た。
得られたポリマーブロック104質量部、1.3質量部の臭化第一銅、35質量部のメタクリル酸メチル、及び重合溶媒としてトルエン20質量部を混合し、攪拌下窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。次いで、開始剤として0.1質量部のPMDETAと、2.3質量部のトルエンとの混合液を加え、80℃で重量平均分子量が50,000になるまで重合反応を行った。樹脂製造例1と同様の方法で、触媒除去を行った。得られた反応溶液を、(1)大量のメタノールを用いた沈殿、(2)酢酸エチルを用いて沈殿物を溶解、(3)メタノールを用いた再沈殿、の一連の操作を3回行うことで重合物の精製を行った。再沈殿後の沈殿物を、濾過、乾燥することでアクリル酸-n-ブチルとメタクリル酸メチルの理論共重合比が物質量比で60:40の(アクリル酸-n-ブチル-b-メタクリル酸メチル)ブロック共重合体(Mw=50,000)を得た。
【0219】
<樹脂製造例14>
窒素置換した内容積が200mlの三口フラスコ内に、トルエン92ml、濃度0.7mol/Lのイソブチルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液4.5ml、及び極性添加剤としての1,2-ジメトキシエタン2.4gを加え、溶液が均一になるまで撹拌した後、重合開始剤としてsec-ブチルリチウムの溶液(濃度1.3mol/Lのシクロヘキサン溶液)0.15mlを加えた。
次いで、0℃で、第1番目の単量体としてメタクリル酸メチル(MMA)を2.48g加え、0℃で重合させた。重合系より溶液の一部(2ml)をサンプルとして抜き取って、H-NMRで測定し、MMAの転化率は99%以上となることを確認した。その後、メタノール20ml中に注いで、析出した重合体(ポリメタクリル酸メチル)(PMMA)を取り出し、減圧乾燥した。テトラヒドロフラン(THF)に溶かし、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、重合体の数平均分子量は25,000であることが判明した。
次いで、MMAの重合後、溶液を-30℃まで冷却し、第2番目の単量体としてアクリル酸-n-ブチル(n-BA)6.30gを約30分間かけて添加した。添加終了後、-30℃でさらに撹拌を継続し、重合系より溶液の一部(2ml)をサンプルとして抜き取り、H-NMRで測定し、n-BAの転化率は99%以上であることを確認した。また、得られたサンプルを同様の方法で、GPC分析したところ、得られた重合体の数平均分子量は106,300であった。
n-BAの重合後、この溶液に、-30℃で第3番目の単量体としてMMAを2.48g添加して溶液を撹拌した。溶液が均一になった後も-30℃で1時間撹拌し、0℃に昇温してさらに撹拌を継続して重合を行った。その後、重合系より溶液の一部(2ml)を抜き取り、H-NMRで測定し、MMAの転化率は90%であることを確認した。重合系にメタノールを10ml加え、室温で1時間撹拌下に反応させることによって、重合体の活性末端を失活させ、重合を停止させた。得られた溶液全量を2リットルのメタノール中に注ぎ、得られた析出物を回収し、減圧下に低沸点物を除去することで目的とする樹脂を得た。
【0220】
<樹脂製造例15>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ1.98gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を7.56gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0221】
<樹脂製造例16>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ1.49gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を8.82gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0222】
<樹脂製造例17>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ1.00gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を10.08gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0223】
<樹脂製造例18>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ2.30gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を20.16gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0224】
<樹脂製造例19>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ3.00gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を26.21gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0225】
<樹脂製造例20>
<樹脂製造例14>において、第1番目と第3番目の単量体(MMA)の量をそれぞれ4.14gに変更し、第2番目の単量体(n-BA)の量を36.29gに変更すること以外は、樹脂製造例14と同様の方法によって目的とする樹脂を得た。
【0226】
樹脂製造例1~20における材料、及び結果物の詳細を表1にまとめて示す。なお、表1に記載のポリメタクリル酸メチルのMwは、得られたブロックポリマーのMwから、ポリアクリル酸-n-ブチルの分子量の差であり、ポリアクリル酸-n-ブチルの両末端に形成される、2つのポリメタクリル酸メチル鎖のMwの合計と推測される。
【0227】
【表1】
【0228】
(実施例1~134、及び比較例1~8)
[絶縁性樹脂層の形成]
<液体組成物の調製>
表2~5に示す通り、重合性化合物及び溶媒を混合し混合液1を調製した。次いで、表6~8に示す通り、混合液1、樹脂製造例20で得られた樹脂、及び光重合開始剤(1-Benzoylcyclohexanol、東京化成株式会社製)を混合することで、液体組成物1を調製した。なお、光重合性化合物の添加量は、重合性化合物全量に対して1質量%とした。
実施例2~134、及び比較例1~8の液体組成物は、表2~8に記載の組成に変更すること以外は、実施例1と同様にして調整した。
【0229】
【表2】
【0230】
【表3】
【0231】
【表4】
【0232】
【表5】
【0233】
【表6】
【0234】
【表7】
【0235】
【表8】
【0236】
表2~8に記載の各材料の詳細は、次の通りである。
・PEG200DA(PEG200ジアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製)
・A-200(ポリエチレングリコール♯200ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・A-400(ポリエチレングリコール♯400ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・ビスコート♯230D(1,6-ヘキサンジオール アクリル酸多量体エステル、大阪有機化学工業株式会社製)
・KAYARAD HX220(6-(プロペノイルオキシ)ヘキサン酸3-[2,2-ジメチル-3-[[1-オキソ-6-(プロペノイルオキシ)ヘキシル]オキシ]プロポキシ]-2,2-ジメチル-3-オキソプロピル、日本化薬株式会社製)
・KAYARAD HX620(ポリ[オキシ(1-オキソ-1,6-ヘキサンジイル)],a-ヒドロ-w-[(1-オキソ-2-プロペニル)オキシ]-,3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル 3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノエート(9CI)とのジエステル、日本化薬株式会社製)
・9G(ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・14G(ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・CN2270NS(ポリエステルアクリレート、Sartomer社製)
・CN2273NS(ポリエステルアクリレート、Sartomer社製)
・CN2283NS(ポリエステルアクリレート、Sartomer社製)
・M6100(ポリエステルアクリレート、東亜合成株式会社製)
・M6500(ポリエステルアクリレート、東亜合成株式会社製)
・APG-200(トリプロピレングリコール ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・APG-400(トリプロピレングリコール ♯400ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・MIRAMER M216(フェノールEO変性アクリレート、東洋ケミカルズ株式会社製)
・ライトアクリレートHPP-A(ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物、共栄社化学株式会社製)
・M-310(トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、東亜合成株式会社製)
・M-321(トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、東亜合成株式会社製)
・ADTMP(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・A-NPG(ネオペンチルグリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
・LOTRYL35BA40((エチレン-アクリル酸-n-ブチル)ランダム共重合体、アルケマ社製)
【0237】
<絶縁性樹脂層の形成>
アルミ箔(5cm×5cm、厚さ:20μm)上に、各液体組成物をバーコータ―を用いて塗布した後、塗布領域に対して紫外線照射(光源:UV-LED(商品名:FJ800、Phoseon社製)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)することで硬化させた。次に、ホットプレートを用いて、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去した後、さらに120℃で10分間乾燥させることで、平均厚みが100μmである各絶縁性樹脂層を得た。
【0238】
[カール抑制効果の評価方法]
水平面に置かれた、各絶縁性樹脂層を水平面方向から見たとき、水平面と絶縁性樹脂層における下面との最大距離(最大反り上がり高さ)を測定した。なお、絶縁性樹脂層における下面とは、水辺面と対向する面のことである。最大反り上がり高さの測定値に基づき、カール抑制効果を評価した。測定サンプル数としては、3であり、測定値はそれらサンプルの平均値を採用した。なお、「△」以上、使用上の問題がないものである。結果は、表6~8に示した。
―カール抑制効果の評価基準―
○:最大反り上がり高さが3mm以下
△:最大反り上がり高さが3mm超過5mm未満
×:最大反り上がり高さが5mm以上
【0239】
実施例の結果から、本発明の液体組成物によって形成される絶縁性樹脂層は、体積収縮によるカール抑制効果に優れていることが明らかである。
【0240】
比較例1~2は、液体組成物に含まれる非架橋型樹脂が一般式(3)で示される構造を有さず、液体組成物の硬化物である絶縁性樹脂層に多孔質構造が形成されないため、体積収縮による残留応力を分散させることができず、絶縁性樹脂層にカールが生じた。
比較例3は、液体組成物93が式(1)の関係式を満たさないため、材料混合後の液体組成物に分離が生じ、絶縁性樹脂層を形成することができなかった。
比較例4~6は、液体組成物94~96が式(2)の関係式を満たさないため、材料混合後の液体組成物に分離が生じ、絶縁性樹脂層を形成することができない、又は液体組成物の硬化物である絶縁性樹脂層に多孔質構造が形成されないため、体積収縮による残留応力を分散させることができず、絶縁性樹脂層にカールが生じた。
比較例7は、液体組成物97が、式(1)及び式(2)の関係式を満たさないため、液体組成物の硬化物である絶縁性樹脂層に多孔質構造が形成されないため、体積収縮による残留応力を分散させることができず、絶縁性樹脂層にカールが生じた。
比較例8は、液体組成物98が、式(1)の関係式を満たさないため、液体組成物の硬化物である絶縁性樹脂層に多孔質構造が形成されないため、体積収縮による残留応力を分散させることができず、絶縁性樹脂層にカールが生じた。
【0241】
(実施例135)
[全固体電池の作製]
<活物質の作製>
正極活物質としては、ニッケル系正極活物質(NCM、株式会社豊島製作所製)を用いた。NCM粒子を表面被覆するイオン伝導性酸化物としては、LiNbOを用いた。LiNbO被覆層は、J.Mater.Chem.A.2021,9,4117-4125に基づき、リチウムとニオブとを含有するアルコキシド溶液を、NCM粉末粒子表面で加水分解することにより形成した。具体的には、次の通りである。
まず、無水エタノール(関東化学株式会社製)中に金属リチウム(本城金属株式会社製)を溶解させて、リチウムエトキシドのエタノール溶液を調製した。この溶液に、ニオビウムペンタエトキサイド(Nb(OC)(株式会社高純度化学研究所製)を加え、リチウムとニオブとを含有するアルコキシド溶液とした。転動流動装置を用いてNCM1粉末を流動層とし、アルコキシド溶液を噴霧することでNCM粉末粒子表面をアルコキシドで被覆した前駆体粉末を得た。この前駆体粉末をドライ空気雰囲気下350℃で加熱することにより、NCM1表面にLiNbO層を形成したLNO/NCMを合成した。
【0242】
<固体電解質層用液体組成物の調製>
硫化物固体電解質として、J.Power Sources.2018,396,33-40に記載の合成方法に基づき、アルジロダイト型硫化物固体電解質LiPSCl(LPSC)を合成した。具体的には、0.5gのLiS(99.9%、三津和化学薬品株式会社製)、0.5gのP(99%、シグマアルドリッチ社製)、及び0.5gのLiCl(99%、シグマアルドリッチ社製)を、遊星ボールミル(PULVERISETTE、Fritsch,Germany社製)を用いて、40時間粉砕して硫化物固体電解質を得た。粉砕は、ジルコニアポット(45mL)内で15個のジルコニアボール(直径:10mm)を用いて、600RPMの条件にて実施した。
固体電解質層用液体組成物の調製には、溶媒としてオクタン(東京化成工業株式会社製)を用いた。このとき、溶媒であるオクタンは、モレキュラーシーブ 4A 1/16(関東化学株式会社製)を100ml当たり10g添加した後、12時間静置により脱水を行い、カールフィッシャー水分濃度計により、100ppm以下の水分含有量であることを確認したものを用いた。この溶媒100質量部に対し、合成した硫化物固体電解質100質量部、及び分散剤(Lubrizol社製、Solspersetm(登録商標))21000)1質量部を添加して混合し、固体電解質層用液体組成物を得た。
【0243】
<正極の作製>
正極活物質としてLNO/NMC 45.3質量%、導電材としてアセチレンブラック2.2質量%(DENKA社製)、バインダとしてポリブチルメタクリレート(PBMA、アルドリッチ社製)1.4質量%、及び硫化物固体電解質14.7質量%を、アニソール(東京化成工業株式会社製)36.4質量%中に分散させて正極塗料を作製した。
この正極塗料をアルミニウム箔基体の両面に塗布後、乾燥させて20mm×20mmの正極を得た。平均厚さは95μmであり、単位面積あたりの電池容量は2.91mAh/cmであった。
【0244】
<負極の作製>
ステンレス箔上に、平均厚さ50μmのリチウム金属(本城金属株式会社製)を貼り付けた後、その上から、さらに50μmのインジウム箔(ニラコ社製)を貼り付けて、25mm×25mmの負極を得た。
【0245】
<全固体電池の作製>
液体組成物1を、GEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。
ステージに正極を設置し、正極の外周部と絶縁性樹脂層との距離が0.5mmとなるように設定し、絶縁性樹脂層の幅が10mmとなるよう液体組成物1を塗布した。その後、直ちに、窒素雰囲気下で、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(商品名:FJ800、Phoseon社製)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し硬化させた。次に、ホットプレートを用いて、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去し、正極-絶縁性樹脂層とした。
このとき、絶縁性樹脂層の平均厚さは124μmであり、絶縁性樹脂層のカールは0mmであった。
【0246】
正極-絶縁性樹脂層をアルミラミネートで封止した後、冷間静水等方圧プレス(CIP)で500MPa、5分間加圧した。加圧後、正極-絶縁性樹脂層をアルミラミネートから取り出した。
固体電解質層用液体組成物を、バーコート法で正極上に塗布した。塗布後、再度アルミラミネートで封止しCIPで500MPa、5分間加圧した。正極-絶縁性樹脂層と負極とを対向させるとともに、それぞれ引き出し線を付けた後、ラミネートで真空封止をして全固体電池1を作製した。
作製した全固体電池1の電池電圧を計測すると2.05Vであった。単位面積当たりの容量は、正極活物質の理論容量から算出される、単位面積当たりの容量の20%の電流値で3.6Vまで定電流充電が問題なくでき、短絡も見られなかった。
【0247】
(実施例136)
液体組成物5をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。ステージに正極を設置し、正極の外周部と絶縁性樹脂層との距離が0.5mmとなるように設定し、樹脂枠10mmとなるよう吐出させて塗布した。その後、直ちに、窒素雰囲気下で、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(商品名:FJ800、Phoseon社製)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し硬化させた。次に、ホットプレートを用いて、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去し、正極-絶縁性樹脂層とした。
このとき、絶縁性樹脂層の平均厚さは113μmであり、絶縁性樹脂層のカールは0mmであった。
【0248】
実施例135と同様にして全固体電池2を作製した。作製した全固体電池2の電池電圧を計測すると2.09Vであった。その後、単位面積当たりの容量は、正極活物質の理論容量から算出される、単位面積当りの容量の20%の電流値で3.6Vまで定電流充電が問題なくでき、短絡も見られなかった。
【0249】
(実施例137)
液体組成物11をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填した。ステージに正極を設置し、正極の外周部と絶縁性樹脂層との距離が0.5mmとなるように設定し、樹脂枠10mmとなるよう吐出させて塗布した。その後、直ちに、窒素雰囲気下で、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(商品名:FJ800、Phoseon社製)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)し硬化させた。次に、ホットプレートを用いて、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去し、正極-絶縁性樹脂層とした。
このとき、絶縁性樹脂層の平均厚さは121μmであり、絶縁性樹脂層のカールは0mmであった。
【0250】
実施例135と同様にして全固体電池3を作製した。作製した全固体電池3の電池電圧を計測すると2.09Vであった。その後、単位面積当たりの容量は、正極活物質の理論容量から算出される、単位面積当りの容量の20%の電流値で3.6Vまで定電流充電が問題なくでき、短絡も見られなかった。
【0251】
[単位面積当たりの容量の測定方法]
電極の単位面積当たりの容量は、充放電測定装置TOSCAT3001(東洋システム株式会社製)を用いて計測した。
【0252】
まず、作製した電極を直径10mmの丸型に打ち抜いた。
次に、正極に固体電解質を含む電極は次の方法で容量評価を実施した。
アルゴン雰囲気下にて、正極を直径10mmの丸型電極の単位面積当たりの容量に打ち抜き加工した。
二極式セル(宝泉株式会社製)のポリエチレンテレフタレート(PET)管に、硫化物固体電解質を80g入れた後、プレスピンを載せて、一軸プレス機(P-6、理研精機株式会社製)を用いて表示圧力10MPaで1分間成型した。次に、直径10mmに打抜いた正極を、活物質面とPET管内の硫化物固体電解質面に接触するように載せて、プレスピンをセットし、一軸プレス機を用いて表示圧力30MPaで1分間成型した。
平均厚さ10μmのSUS箔上に、平均厚さ50μmのリチウム(本庄金属株式会社製)、平均厚さ50μmのインジウム(株式会社ニラコ製)を順に重ねたものを、正極合材層とは逆側の面に配し、一軸プレス機を用いて表示圧力12MPaで3秒間成型した。プレスピンを載せた状態でPET管を二極式セルの中に入れ、デジタルトルクラチェット(KTCツール)で表示圧力25N・mに密封して電気化学素子を作製した。
この電気化学素子を、室温(25℃)において、正極活物質の理論容量から算出される単位面積当たりの容量の20%の電流値で3.6Vまで定電流充電した後、2.4Vまで定電流放電して初期充放電を実施した。さらに、同様の充放電を2回実施し、2回目の放電容量を、初期の正極の単位面積当たりの容量として計測した。
【0253】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1>
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、下記一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、
【化14】
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは、2以上6以下の整数を示す。)
【化15】
(前記一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【化16】
(前記一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
前記溶媒は、前記重合性化合物が可溶な良溶媒と、前記重合性化合物が不溶な貧溶媒とを含む混合溶媒であり、
前記溶媒は、下記式(1)を満たすことを特徴とする液体組成物である。
【数8】
(前記式(1)における混合比Xは、混合溶媒における良溶媒の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、重合性化合物可溶点は、重合性化合物が可溶な混合溶媒における、良溶媒の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
<2>
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される重合性化合物と、下記一般式(3)で示される構造単位を有する非架橋型樹脂と、溶媒と、を含む液体組成物であって、
【化17】
(前記一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭化水素鎖、アルキレンオキサイド鎖、ポリエステル鎖、又はアクリル多量体エステル誘導体を示し、nは2以上6以下の整数を示す。)
【化18】
(前記一般式(2)中、R3及びR4は、水素原子またはメチル基を示す。)
【化19】
(前記一般式(3)中、R6は、アルキル基を示す。)
前記重合性化合物は、前記溶媒に可溶な可溶性重合性化合物、及び前記溶媒に不溶な不溶性重合性化合物を含む混合化合物であり、
前記重合性化合物は、下記式(2)を満たすことを特徴とする液体組成物である。
【数9】
(前記式(2)における混合比Yは、混合化合物における不溶性重合性化合物の質量に基づく含有量比を百分率で示したものであり、溶媒可溶点は、溶媒に可溶な混合化合物における、不溶性重合性化合物の質量に基づく最小含有量比を百分率で示したものである。)
<3>
前記液体組成物は、前記一般式(1)におけるR2が、ポリエステル鎖である重合性化合物、又は前記一般式(2)で示される重合性化合物を含む、前記<1>又は前記<2>に記載の液体組成物である。
<4>
前記液体組成物は、前記一般式(1)におけるR2が、ポリカプロラクトン鎖である重合性化合物を含む、前記<1>から前記<3>のいずれかに記載の液体組成物である。
<5>
前記一般式(3)におけるR6が、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルである、前記<1>から前記<4>のいずれかに記載の液体組成物である。
<6>
前記非架橋型樹脂は、2種以上の構造単位からなる共重合体である、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7>
前記非架橋型樹脂は、下記一般式(4)で示される構造単位をさらに有する、前記<6>に記載の液体組成物である。
【化20】
(前記一般式(4)中、R7は、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、tert-ブチル、iso-ブチル、又はn-ブチルを示す。)
<8>
前記共重合体は、ブロック共重合体である、前記<6>又は前記<7>に記載の液体組成物である。
<9>
前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の液体組成物を硬化してなる絶縁性樹脂層であって、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする絶縁性樹脂層である。
<10>
基体と、
前記基体上に配される電極合材層と、
前記電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、を有する電気化学素子用電極であって、
前記絶縁性樹脂層は、前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の液体組成物の硬化物であり、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする電気化学素子用電極である。
<11>
前記基体と前記電極合材層との間に、リチウムと合金化する金属を含む接着層が配される、前記<10>に記載の電気化学素子用電極である。
<12>
前記電極合材層は開口部を有する、前記<10>又は前記<11>に記載の電気化学素子用電極である。
<13>
前記開口部には、硫化物固体電解質が充填されている、前記<12>に記載の電気化学素子用電極である。
<14>
基体と、
前記基体上に配される電極合材層と、
前記電極合材層の外周部に配される絶縁性樹脂層と、
前記電極合材層および前記絶縁性樹脂層上に配され、固体電解質を含む固体電解質層と、を有する電極積層体であって、
前記絶縁性樹脂層は、前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の液体組成物の硬化物であり、
前記絶縁性樹脂層は、多孔質構造を有することを特徴とする電極積層体である。
<15>
前記基体と前記電極合材層との間に、リチウムと合金化する金属を含む接着層が配される、前記<14>に記載の電極積層体である。
<16>
前記電極合材層は開口部を有する、前記<14>又は前記<15>に記載の電極積層体である。
<17>
前記開口部には、硫化物固体電解質が充填されている、前記<16>に記載の電極積層体である。
<18>
前記<14>から前記<17>のいずれかに記載の電極積層体を有することを特徴とする電気化学素子である。
<19>
前記<18>に記載の電気化学素子を有することを特徴とする電気機器である。
<20>
前記<18>に記載の電気化学素子を有することを特徴とする移動体である。
<21>
車両である、前記<20>に記載の移動体である。
<22>
基体上に電極合材層を形成する電極合材層形成工程と、
前記電極合材層の外周部に絶縁性樹脂層を形成する絶縁性樹脂層形成工程と、
前記絶縁性樹脂層及び前記電極合材層上に、固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程と、を含む電極積層体の製造方法であって、
前記絶縁性樹脂層形成工程は、前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の液体組成物を基体上に付与する液体組成物付与工程と、前記液体組成物に対して熱又は光を付与して硬化する液体組成物硬化工程とを含むことを特徴とする電極積層体の製造方法である。
<23>
前記液体組成物付与工程は、インクジェット方式によって実施される、前記<22>に記載の電極積層体の製造方法である。
【0254】
<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物、<9>に記載の絶縁性樹脂層、<10>から<13>に記載の電気化学素子用電極、<14>から<17>に記載の電極積層体、<18>に記載の電気化学素子、<19>に記載の電気機器、<20>から<21>に記載の移動体、及び<22>から<23>に記載の電極積層体の製造方法は、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0255】
10 絶縁性樹脂層
20 第1の電気合材層
21 第1の基体
22 接着層
23 開口部
24 材料
25 電気化学素子用電極
30 固体電解質層
31 第2の基体
35 電極積層体
40 第2の電極合材層
41 第2の電極
45 電気化学素子
500 絶縁性樹脂層の製造装置
100 印刷部
1a 印刷装置
1b 収容容器
1c 供給チューブ
200 重合部
2a 光照射装置
2b 重合不活性気体循環装置
300 加熱部
3a 加熱装置
5 搬送部
6 液体組成物
7 ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0256】
【特許文献1】国際公開第2020-022111号公報
【特許文献2】特願2023-009731号
【非特許文献】
【0257】
【非特許文献1】ネットワークポリマー,Vol.36,No.6(2015)
【非特許文献2】高分子論文集,Vol.69,No.11,613-622(2012)
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17