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2025-88152ガス化ガスのガス前処理設備、及びガス前処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088152
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】ガス化ガスのガス前処理設備、及びガス前処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10K 1/20 20060101AFI20250604BHJP
   C10L 3/02 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
C10K1/20
C10L3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202652
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 希
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁志
【テーマコード(参考)】
4H060
【Fターム(参考)】
4H060AA01
4H060BB17
4H060DD02
4H060DD22
4H060FF02
(57)【要約】
【課題】ガス化ガスのガス前処理設備、及びガス前処理方法を提供する。
【解決手段】少なくともアセチレンを含む不飽和炭化水素化合物を有するガス化ガスを導入するガス化ガス導入ラインLと、ガス化ガス導入ラインからのガス化ガスを水素添加処理して水添処理ガスとする貴金属系の触媒を備えた水添処理装置13と、水添処理ガス14を改質する改質炉16と、改質炉で改質された改質ガス14cを後流側に送出する改質ガス送出ラインLと、を備えた。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアセチレンを含む不飽和炭化水素化合物を有するガス化ガスを導入するガス化ガス導入ラインと、
前記ガス化ガス導入ラインからのガス化ガスを水素添加処理して水添処理ガスとする貴金属系の触媒を備えた水添処理装置と、
前記水添処理ガスを改質する改質炉と、
前記改質炉で改質された改質ガスを後流側に送出する改質ガス送出ラインと、
を備えたことを特徴とするガス化ガスのガス前処理設備。
【請求項2】
前記水添処理装置からの水添処理ガスを前記ガス化ガス導入ラインにリサイクルするリサイクルラインと、
前記リサイクルラインから水添処理ガスの一部を抜き出すガス抜き出しラインと、を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス化ガスのガス前処理設備。
【請求項3】
前記改質炉の前流側に、抜き出された水添処理ガス中に含まれるCOを変成する変成触媒を有する変成器を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のガス化ガスのガス前処理設備。
【請求項4】
前記改質炉の後流側において、前記改質ガス中の二酸化炭素の含有率を軽減する脱炭酸装置を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のガス化ガスのガス前処理設備。
【請求項5】
ガス化設備から排出されるアセチレンを含む不飽和炭化水素化合物を有するガス化ガスを貴金属系触媒により水添処理して水添処理ガスとする水添処理工程と、
前記水添処理ガスを改質する改質工程と、
を有することを特徴とするガス化ガスのガス前処理方法。
【請求項6】
前記水添処理工程からの水添処理ガスをリサイクルするガスリサイクル工程と、
前記リサイクル工程から水添処理ガスの一部を抜き出し、前記改質工程に送るガス抜き出し工程と、
を有することを特徴とする請求項5記載のガス化ガスのガス前処理方法。
【請求項7】
抜き出された水添処理ガス中に含まれるCOを変成するCO変成工程を有することを特徴とする請求項5又は6記載のガス化ガスのガス前処理方法。
【請求項8】
前記改質工程からの改質ガス中の二酸化炭素の含有率を軽減する脱炭酸工程を有することを特徴とする請求項5又は6記載のガス化ガスのガス前処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化ガスのガス前処理設備、及びガス前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水蒸気改質装置の前工程として、水蒸気改質触媒の触媒毒となる原料ガス中の硫黄分を除去するための設備として水添脱硫(水素化脱硫)反応器を設けている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-226867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、廃棄物やバイオマス等をガス化炉で部分酸化処理して製造または生成されたガス化ガスを有効利用する際、改質装置の前処理として、水添(「水素化」ともいう)反応器を設ける際、ガス化ガス中に、例えばエチレン、アセチレン、プロピレン、ブテン等の不飽和炭化水素を多く含む場合、不飽和炭化水素の水添(水素化)反応による発熱により著しい温度上昇が発生し、水添反応器の運転温度範囲を逸脱してしまうため、原料ガスとして使用できない、という問題がある。併せて使用する水添触媒や反応条件によっては、ガス化ガス中の炭酸ガスや一酸化炭素の水素化(メタネーション)による著しい温度上昇を発生してしまう問題がある。
【0005】
また、ガス化ガス中に一酸化炭素(CO)を多く含むような場合、改質触媒上で、ブーダード反応(2CO→CO+C)により炭素が析出し、改質触媒の割れや粉化、活性低下と、析出した炭素粉により触媒層を閉塞する、という問題がある。
【0006】
また、特に不飽和炭化水素の中でも特にアセチレンは反応性が高く、高温での水添反応の場合、アセチレン同士が重合した重質油成分が発生しやすく、これは改質触媒上で炭素析出を起こし触媒層を閉塞させてしまう問題がある。アセチレンは水添処理しないで改質触媒上に導入した場合、その反応性の高さから改質触媒上に炭素析出を起こし触媒層を閉塞させてしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、例えばアセチレンを含む不飽和化合物の含有量が多いガス化ガスを有価物製造用の原料ガスとして有効活用することができるガス化ガスのガス前処理設備、及びガス前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係るガス化ガスのガス前処理設備は、少なくともアセチレンを含む不飽和炭化水素化合物を有するガス化ガスを導入するガス化ガス導入ラインと、前記ガス化ガス導入ラインからのガス化ガスを水素添加処理して水添処理ガスとする貴金属系の触媒を備えた水添処理装置と、前記水添処理ガスを改質する改質炉と、前記改質炉で改質された改質ガスを後流側に送出する改質ガス送出ラインと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様に係るガス化ガスのガス前処理方法は、ガス化設備から排出されるアセチレンを含む不飽和炭化水素化合物を有するガス化ガスを貴金属系触媒により水添処理して水添処理ガスとする水添処理工程と、前記水添処理ガスを改質する改質工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス化設備から生成されたアセチレンを含むガス化ガスの前処理を効率よく行え、前処理ガスを有価物の原料ガスとして有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施形態1のガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。
図1B】実施形態1のガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。
図2】実施形態2のガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。
図3】実施形態3のガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。
図4】実施形態4のガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。
図5】試験例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0013】
[実施形態1]
図1A図1Bは、実施形態1にかかるガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。図1に示すように、本実施形態1にかかるガス化ガスのガス前処理装置100A-1は、少なくともアセチレンを含む不飽和炭化水素を有するガス化ガス(原料ガス)12を導入するガス化ガス導入ラインLと、ガス化ガス導入ラインLからのガス化ガス(原料ガス)12を水素添加処理(以下「水添処理」という)して水添処理ガスとする水添処理装置13と、水添処理装置13からの水素添加処理ガス(以下「水添処理ガス」という)14を送給する水添処理ガス送給ラインLと、水添処理ガス送給ラインLに介装され、水添処理ガス14を圧縮する昇圧機15と、圧縮された圧縮ガス14bを改質する改質炉16と、改質炉16で改質された改質ガス14cを後流側に有価物17の原料ガスとして送出する改質ガス送出ラインLと、を備えるものである。なお、図1中、符号20は水蒸気、21はブロワ、Fは改質炉16に供給される燃料(油でもガスでも可)を図示する。
【0014】
ここで、不飽和化合物を含むガス化ガス(原料ガス)12としては、図示しないガス化設備において、ガス化炉により例えばバイオマス、廃棄物等の被処理物を高温で部分酸化され塩素等ハロゲン化物および硫黄化合物除去処理をしたガス化ガスであり、このガス化ガスには、例えば水素(H)、飽和炭化水素、不飽和化合物(不飽和炭化水素:例えばエチレン、アセチレン、プロピレン、ブテン等)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、アルゴン(Ar)等を含んでいる。なお、原料ガス中の不飽和化合物の含有量としては、ガス化処理する対象物にもよるが1DRYmol%を超えるものをいう。
【0015】
このガス化ガス12は、ガス化ガス導入ラインL1を介して、水添処理触媒を有する水添処理装置13に送られ、ここでガス化ガス12が水素化処理される。
【0016】
水添処理装置13の入り口温度が所定の触媒設定温度とならない場合には、必要に応じて水添処理装置13の入り口側において、電気ヒータや蒸気加熱器等の予熱器を別途設けるようにしてもよい。
【0017】
また、原料ガス中の不飽和化合物として高濃度で加圧すると爆発する可能性のあるアセチレンが多量に含まれているような場合、改質炉16で改質処理される際には、昇圧機15で圧縮するので、事前に水添処理装置13でアセチレンをエチレンやエタンに転化しておくことが望ましい。
【0018】
ここで、水添処理装置13の水添触媒としては、例えばルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属系触媒を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
ここで、水添触媒として、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の触媒の触媒反応温度としては、室温から約250℃、好ましくは50℃から220℃、より好ましくは150℃から200℃相当とするのがよい。なお、触媒の加熱(温度保持)方法は特に限定されるものではない。
【0020】
これは、250℃を超えての触媒反応の場合、炭酸ガスや一酸化炭素のメタネーションによる急激な発熱が起こるとともに、反応性の高いアセチレン同士が重合し重質油成分が発生する可能性が高まり、好ましくないからである。
【0021】
触媒反応における圧力は大気圧から1MPa程度の任意の圧力で実施可能であるが、大気圧付近とするのが好ましい。
このように貴金属系触媒を用いることで、炭酸ガス、一酸化炭素のメタネーションによる急激な発熱は起きないようにして、重質油成分の発生を抑制しながら選択的にアセチレンの水素化をすることができる。
【0022】
本実施形態によれば、水添処理装置13の出口ガス中のアセチレン(C)濃度はゼロ(検出下限以下)であり、H/CH/CO/CHの組成比率は、水添処理装置13の入口とほぼ変わらないという性能を有する。
【0023】
ガス化ガスである原料ガス12中に硫黄成分や塩素等ハロゲン化物成分が存在する場合は、活性成分で修飾した活性炭や、例えばNaO(酸化ナトリウム)触媒等で、事前に吸着除去等されているガスを原料ガスとするのが好ましい。
【0024】
または、図1Bのガス前処理装置100A-2に示すように、導入される原料ガス12から硫黄成分や塩素成分を除去できない場合には、水添処理装置13の前において、脱硫処理及び脱塩素化処理を行う脱硫または脱塩素(ハロゲン)化処理装置18を設置して除去するのが好ましい。
【0025】
この際には、図1Bに示すように、ガス前処理装置100A-2において、ガス化ガス導入ラインLに原料ガス12中の成分を計測する計測器19を設けている。そして、計測器19において原料ガス12に硫黄成分や塩素成分があると判断された場合には、切換え弁Vを切換えてガス化ガス導入ラインL1AからバイパスラインL1Bに原料ガス12の導入を変更し、脱硫または脱塩処理装置18において脱硫処理または脱塩素化処理するようにすればよい。
なお、脱硫または脱塩前処理装置18は、脱硫処理または脱塩素(ハロゲン)化処理のいずれか一方の処理のみ、脱硫処理及び脱塩素(ハロゲン)化処理を同時に行うようにしてもよい。
【0026】
水添処理ガス14を改質炉16に送る水添処理ガス送給ラインLには、水添処理ガス14を圧縮する昇圧機15が介装されている。なお、昇圧機15の設置はここに限定されるものではない。
【0027】
昇圧機15で圧縮された圧縮ガス14bは水蒸気改質する改質触媒を有する改質炉16に送られ、ここで別途導入される水蒸気20と共に改質される。ここで改質触媒としては、公知の改質触媒を用いることできる。なお、改質触媒としては、例えばNi/Al、Ni/MgOAl、Ru/Al等の触媒が例示されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
改質炉16で改質された水蒸気改質ガス14cは改質ガス送出ラインLを介して後流側に有価物17の原料ガスとして送られる。
ここで、本実施形態の改質炉16としては、水蒸気を用いた水蒸気改質炉を例示しているが、ガスを改質する他の改質装置としては、例えばオートサーマルリフォーマを用いるようにしてもよい。
【0029】
また、不飽和炭化水素のアセチレンは、高濃度で加圧すると爆発する可能性のあるガスで取り扱いには注意が必要であるが、昇圧機15で加圧する前に、常圧に近い低圧で水添反応を行うことにより、例えばアセチレンを含む不飽和炭化水素を水添することができる。
【0030】
<試験例>
ガス成分として「H/CO/CO/CH/C/C=27.2/30.3/22.4/14.2/2.3/3.6%」の混合模擬ガスを供給した場合に、選択的にアセチレン(C)を水素化する反応試験を行った。
本試験のアセチレンの選択水素化に対しては、ガンマアルミナの担体に担持した、パラジウム(Pd)触媒を使用した(試験例1)。
比較触媒として、Co-Mo系触媒(比較例1)、Ni-Mo系の水素化脱硫触媒(比較例2)を用いた。
ここで、本試験例1の触媒としては、「エアロナイトgAl-Pd005-sp2_4」(商品名:伊藤忠セラテック社 製)を用いた。
【0031】
試験装置の触媒反応部の媒層出口の温度(℃)と、出口アセチレン濃度(vol%)との関係を図5に示す。
図5に示すように、試験例1のPd触媒では経時劣化はほとんどなく触媒反応が進行し、200℃以下の低温領域においてアセチレンは完全に反応しており、出口においてアセチレンは全く検出されず、その他の成分比には入口と大きな変化がなかった。
【0032】
これに対して、比較例のCo-Mo系触媒(比較例1)、Ni-Mo系の水素化脱硫触媒(比較例2)においては、低温活性は見られず300℃を超えたあたりからアセチレンは完全に反応していた。ただし両触媒とも若干のアセチレンが重合したためか油状成分(重質油成分と思われる)が発生していた。
【0033】
これに対して、試験例1のPd触媒では液状成分の発生は認められなかった。
【0034】
すべての触媒に関して、メタネーションにより顕著な発熱やメタン濃度が増加は見られなかった。
【0035】
いずれの触媒もC4化合物(例えばC)が1%程度生成していた。これはアセチレン同士が反応しているためと考える。
【0036】
これらの水添化ガスを水蒸気改質反応工程に導入してみたところ、(すべて同じ水蒸気改質触媒を使用)試験例1のパラジウム(Pd)触媒通過ガスにおいては、改質触媒に劣化は認められずに反応を継続し、炭素粉の析出は認められなかった。
【0037】
これに対して、比較例1及び2の触媒通過ガスにおいては、アセチレン有無にかかわらず数時間で水蒸気改質触媒の圧損が上昇し、水蒸気改質触媒上に炭素粉が析出していた。
この結果、アセチレンおよび重質油成分が改質触媒に悪影響を及ぼしているが、C4化合物は水蒸気改質反応に影響を及ぼさないと推測される。
【0038】
以上より、アセチレン含有ガスに関して、水蒸気改質等を行うことで有用物を生成する場合、本発明のように、前処理プロセスとして貴金属系触媒を使用した水素化を行うことにより、後流の改質工程プロセスの触媒保護、長寿命化につながり、安定した装置運転が期待されることが判明した。
【0039】
[実施形態2]
図2は、実施形態2にかかるガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。なお、実施形態1の構成と同一構成については、同一符号を付して、重複した説明は省略する。
本実施形態2にかかるガス化ガスのガス前処理装置100Bは、水素添加処理ガス(以下「水添処理ガス」という)14の一部をリサイクルするリサイクルラインL3-1と、リサイクルラインL3-1から水添処理ガス14の一部14aを抜き出すガス抜き出しラインL3-2と、を備えている。これはガス化ガスである原料ガス12中のアセチレン濃度が想定よりも増加し、水素化反応の発熱により反応器13内の温度が設定温度よりも上がり続けた場合に、冷却した水添処理ガス14の一部を循環することにより反応器内を一定に保つ効果がある。
【0040】
本実施形態のガス化ガスのガス前処理装置100Bでは、水添処理装置13において水添処理ガス14は、水添処理装置13の入り口側にリサイクルするリサイクルラインL3-1が形成されている。このリサイクルラインL3-1には、熱交換器22が設けられており、ガス化ガス導入ラインL1のガス化ガス12と水添処理ガス14とを熱交換している。熱交換後の水添処理ガス14は冷却器23により所定の温度となるように冷却されている。リサイクル比率は0(リサイクルしない)から10倍とすることが望ましい。
【0041】
[実施形態3]
図3は、実施形態3にかかるガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。なお、実施形態1、2の構成と同一構成については、同一符号を付して、重複した説明は省略する。
本実施形態3にかかるガス化ガスのガス前処理装置100Cは、図2に示すガス化ガスのガス前処理装置100Bにおいて、さらにガス抜き出しラインL3―2のガス昇圧機15の後流側に介装され、圧縮された圧縮ガス14b中に含まれるCOを変成する変成触媒を有する変成器30を備えている。ここでCO変成触媒としては、公知の変成触媒を用いることでき、限定されるものではない。ここで、変成触媒としてはFe-Cr触媒を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
ここで、水蒸気改質部に供給するガス中のCO濃度が高い場合、改質触媒の触媒上でブーダード反応(2CO→CO+C)が進行して、炭素析出が生じ、水蒸気改質触媒の活性が低下したり、触媒層を閉塞させてしまうという問題がある。
【0043】
本実施形態のように、CO変成触媒を有するCO変成装置(変成装置)30を、ガス抜き出しラインL3-2の昇圧機15の後流側で改質炉16の前段に配置することで、変成触媒によりシフト反応(CO+HO→CO+H)を進行させて、CO濃度を低減(例えばCO濃度23 DRY mol%→2 DRY mol%に低減)させている。改質炉16に導入される圧縮ガス14b中のCO濃度を低減した後、水蒸気改質触媒へ供給することにより、高濃度のCOを含む原料ガス12であっても、水蒸気改質の原料ガスとして使用することが可能となる。
【0044】
本実施形態によれば、高濃度の不飽和炭化水素と高濃度の一酸化炭素とを含む原料ガスであるガス化ガス12と水添処理装置13からのリサイクルガスである水添処理ガス14とを混合して水添処理装置13へ再度送り、水添することで、発熱を抑えることができる。さらに、変成器30にてCO濃度を低減することで、その後改質炉16で改質処理する際に、改質触媒上でブーダード反応により炭素が析出し、改質触媒の割れや粉化、活性低下と、析出した炭素粉による触媒層の閉塞が生じることがなく、水蒸気改質ガス14cを安定して得ることができ、有価物17の原料ガスを効率よく製造することができる。
【0045】
なお、実施形態1のガス化ガスのガス前処理装置100A-1、100A-2においても、本実施形態と同様に、変成器を設置するようにしてもよい。
【0046】
[実施形態4]
図4は、実施形態4にかかるガス化ガスのガス前処理装置の概略図である。なお、実施形態1~3の構成と同一構成については、同一符号を付して、重複した説明は省略する。
本実施形態4にかかるガス化ガスのガス前処理装置100Dは、図3に示すガス化ガスのガス前処理装置100Cにおいて、さらに改質炉16の後流側において、改質ガス14c中の二酸化炭素(CO)の含有率を軽減する脱炭酸装置31を改質ガス送出ラインLに備えている。
【0047】
本実施形態においては、二酸化炭素(CO)を除去する場合には、例えば水蒸気改質ガス14c中のCOガス濃度を低減する脱炭酸装置31を設置している。
【0048】
脱炭酸装置31としては、アミン吸収法による吸収塔と再生塔とを備えた二酸化炭素回収装置を用いることができる。なお、脱炭酸装置31のアミン吸収装置以外としては、COを液体中に溶解させて、分離回収する物理吸着装置、COの固体吸収材を用いて、分離回収する固体吸着装置、CO分離機能を有する膜を用いて分離回収する膜分離装置等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
なお、脱炭酸処理するには、水蒸気改質ガス14cの「CO/CO/H比率」を、後流側で用いる有価物17の原料ガスとして最適濃度となるように調整している。
【0050】
以上述べたように、本発明によれば、不飽和炭化水素の濃度が高く、しかもCO濃度が高いガス化ガスを処理することで、CO、Hを主成分とするオキソガス等を用いた化学原料の一般的な合成設備の有価物17の原料ガスの前処理とすることができる。
【0051】
有価物17としては、例えばメタノール、エタノール、酢酸、ポリウレタン、合成油等を例示することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
なお、実施形態1のガス化ガスのガス前処理装置100A-1、100A-2においても、本実施形態と同様に、脱炭酸装置31を設置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ガス化炉から排出されるガス化ガスを前処理するガス前処理設備、ガス前処理方法全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
100A-1、100A-2、100B~100D ガス前処理装置
12 ガス化ガス
13 水添処理装置
14 水添処理ガス
14a 抜き出し水添処理ガス
14b 圧縮ガス
14c 水蒸気改質ガス
15 ガス昇圧機
16 改質炉
17 有価物
30 変成器
31 脱炭酸装置
32 炭酸ガス
ガス化ガス導入ライン
水添処理ガス送給ライン
3-1 リサイクルライン
3-2 ガス抜き出しライン
改質ガス送出ライン
F 燃料

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5