(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088322
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】防湿化粧紙、防湿化粧板及び建具
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250604BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20250604BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20250604BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/10
B32B7/027
B27M3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202961
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】古沢 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
【テーマコード(参考)】
2B250
4F100
【Fターム(参考)】
2B250AA11
2B250BA05
2B250CA11
2B250DA03
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2B250GA03
2B250HA01
4F100AA20
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4F100JA04
4F100JA04D
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4F100JD04C
(57)【要約】
【課題】本願は、プラスチックの使用量を低減しつつ、化粧板等における反りの発生をより防止することができる防湿化粧紙、防湿化粧板及び建具を提供することを目的としている。
【解決手段】本実施形態に係る防湿化粧紙10は、化粧層a1と防湿層a2とを備え、化粧層a1は、紙基材3と、紙基材3の一方の面上に、印刷柄層2と、保護樹脂層1とをこの順で備え、防湿層a2は、紙基材3の他方の面上に、アンカーコート層4と、シリカ蒸着層5と、オーバーコート層6とをこの順で備え、アンカーコート層4とオーバーコート層6はそれぞれシリカ蒸着層5と直接に接しており、防湿化粧紙10の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定されたアンカーコート層4の軟化温度は180℃以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧層と防湿層とを備えた防湿化粧紙であって、
前記化粧層は、紙基材と、前記紙基材の一方の面上に、印刷柄層と、保護樹脂層とをこの順で備え、
前記防湿層は、前記紙基材の他方の面上に、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備え、
前記アンカーコート層と前記オーバーコート層は、それぞれ前記シリカ蒸着層と直接に接しており、
局所熱分析法により測定された前記アンカーコート層の軟化温度は180℃以上である、ことを特徴とする防湿化粧紙。
【請求項2】
紙基材と、前記紙基材の一方の面上に化粧層と、前記紙基材の他方の面上に防湿層とをこの順で備え、
前記化粧層は、前記紙基材の一方の面上に、印刷柄層と、保護樹脂層とをこの順で備え、
前記防湿層は、前記紙基材の他方の面上に、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備える防湿化粧紙であって、
前記アンカーコート層は、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びポリエーテル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一種を有することを特徴とする防湿化粧紙。
【請求項3】
前記オーバーコート層が、極性基を少なくとも一種を有するポリオレフィンを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿化粧紙。
【請求項4】
前記シリカ蒸着層の厚みが10nm以上100nm以下の範囲内である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿化粧紙。
【請求項5】
前記オーバーコート層の厚みが2μm以上10μm以下の範囲内である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿化粧紙。
【請求項6】
前記紙基材に含まれる紙成分の質量が、防湿化粧紙全体の質量を基準として、50質量%以上である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿化粧紙。
【請求項7】
前記紙基材が紙間強化紙である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿化粧紙。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の防湿化粧紙の前記オーバーコート層側の面が、板基材の一方の面に貼着されており、透湿度が5(g/m2・24h)以下である裏面防湿シートが、前記板基材の他方の面に貼着されている、ことを特徴とする防湿化粧板。
【請求項9】
前記裏面防湿シートが、紙基材と、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備える、ことを特徴とする請求項8に記載の防湿化粧板。
【請求項10】
請求項9に記載の防湿化粧板の前記裏面防湿シート側の面が、木質系の芯組部材の表面及び裏面にそれぞれ貼着されている、ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内扉、キッチン扉、収納扉、襖などの建具に用いられる防湿化粧紙、それを用いた防湿化粧板及び扉などの建具に関し、詳しくは湿度変化、温度変化等によって発生する化粧板等の反りを防止する機能を有する防湿化粧紙と、それを用いた防湿化粧板と、それを用いた扉などの建具とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内扉、キッチン扉、収納扉などの建具において、湿度、温度の関係で使用中に徐々に反りが発生することがあった。これは、主として、室内外に湿度差や温度差が生じることで、木質建具内部の含水率分布に偏りが生じるために発生する現象である。すなわち、湿度差が生じると、木質建具表裏面における吸放湿量に差が生じ、湿度の高い側では高含水率になるために膨張し、湿度の低い側では低含水率になるために収縮することにより反りが発生する。また、温度差が生じると、木質基材中では冷たい側に含有水分が移動するため、厚み方向に含水率の傾斜ができ、反りが発生する。通常、低温側が高湿度、高含水率になることが多く、この場合、前記2つの作用が同方向に働くことになるため、反りが最も顕者になると考えられる。
【0003】
こうした木質建具の反りを抑制する方法として、扉などの建具の表裏面に、同じ材質シートを用いることで、片方に反らないようにしたもの、また、建具の枠体に金属製の支持体を使用する等の対策が取られている。また、透湿度が低い防湿シートを建具の部材に用いることで、部材の吸放湿量を小さくする方法が広く用いられている。また、特許文献1には、合板などの板基材の表面側に、表面側から保護樹脂層/印刷柄層/紙間強化紙/合成樹脂層/紙間強化紙の5層構造を有する防湿化粧シートを、接着剤を介して貼着すると共に、該板基材の裏面側には、紙間強化紙/合成樹脂/紙間強化紙の3層構造を有する防湿裏面シートを、接着剤を介して貼着して防湿化粧板とし、この防湿化粧板をフラッシュ扉の表裏にそれぞれ接着剤を介して貼着することが提案されている。この時の防湿シートの透湿度は、5(g/m2・24h)以上30(g/m2・24h)以下がよいとされている。この構成によれば、フラッシュ扉の表裏化粧面材として使用される防湿化粧板において、板基材の表裏に貼着される防湿シート及び防湿裏面シートが、高い防湿機能を有する為、フラッシュ扉の表面側と裏面側との温度差・湿度差による防湿化粧板の板基材の含水率変化が抑制され、その結果として反り防止効果を発揮するものとされている。
【0004】
また、更に高い防湿性が求められる場合は、化粧板の変形を防止するための方法として、合成樹脂基材に蒸着層を設けた防湿シートを貼り合せる方法等が知られている。
高い防湿性能を得るためには、平滑な面に蒸着層を設ける必要があることから、一般的に合成樹脂基材が選択されており、紙基材を用いて高い防湿性能を得ることは、技術的に困難とされている。
また他方では近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、脱プラスチックの機運が高まっている。プラスチック材料の使用量削減の観点から、種々の分野において、プラスチック材料の代わりに、紙を使用することが検討されている。
【0005】
例えば下記特許文献2では、紙にバリア層を積層するガスバリア積層体が開示されており、紙基材上に、アンカーコート層、蒸着層、オーバーコート層がこの順で設けられた紙製バリア材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3206408号
【特許文献2】特許第6944022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年において、扉のデザイン性の観点から、高さが2mを超えるような扉が採用される事が多くなっている。扉が高くなったことにより、わずかな反り量でも、扉全体としては反りが大きくなってしまう為に、扉等に用いられるシートにはより高い防湿性が求められている。高い防湿性を有するシートとして、合成樹脂基材に金属蒸着膜とコート層とを有する防湿シートが提案されている。透湿度としては、5(g/m2・24h)未満で、反り防止効果も高いとされている。
【0008】
しかしながら、これらの防湿シートは、いずれもプラスチック材料を使用している為、環境面を考慮した場合、プラスチック使用量の削減が望まれる。また、これらの防湿シートを貼り合せた化粧板や扉などの建具等のリサイクルにおいては、木質基材とプラスチック部分(合成樹脂層や合成樹脂基材)を分離する必要があり、リサイクルには適していない場合が多い。
【0009】
近年では、環境面に配慮して、合成樹脂フィルム等を使用せずに、紙を基材としたガスバリア性材料の開発が進められてきているが、その材料の取り扱い時にシワを伸ばしたり、しごきなどの圧着方法を用いたりすると、バリア層にクラックが生じてガスバリア性が低下する課題がある。
【0010】
特許文献2では、その段落0021に「アンカーコート層には、極性基を有する第一のポリオレフィンを含む。このようなアンカーコート層は柔軟性に優れ、屈曲後に蒸着層の割れを抑制することができるとともに、アンカーコート層と蒸着層との密着性を向上させることができる」旨が記載されており、屈曲後の蒸着層の割れを抑制する試みはされている。
しかし、上記特許文献2においては、蒸着膜として無機酸化物を蒸着した際に、金属を蒸着した際よりもバリア性が安定しないことについての検討はなされていない。
【0011】
本発明は上記未解決の課題を解決するためになされたものであり、プラスチック使用量をより低減し、化粧板等の両側(表面側及び裏面側)の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板等の反りを防止することの可能な防湿化粧紙、それを用いた防湿化粧板、及びそれを用いた扉などの建具を提供することを目的としている。つまり、本願は、プラスチックの使用量を低減しつつ、化粧板等における反りの発生をより防止することができる防湿化粧紙、防湿化粧板及び建具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、化粧紙(化粧層)と防湿層とを備えた防湿化粧紙であって、化粧紙は、紙基材の一方の面に印刷柄層と保護樹脂層とがこの順に設けられてなり、防湿層は、紙基材の他方の面にアンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備えた防湿化粧紙であって、アンカーコート層とオーバーコート層はそれぞれシリカ蒸着層と直接に接しており、かつ、該防湿化粧紙の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定されたアンカーコート層の軟化点が180℃以上であることを特徴とする、防湿化粧紙が提供される。つまり、本発明の一態様に係る防湿化粧紙は、化粧層と防湿層とを備えた防湿化粧紙であって、前記化粧層は、紙基材と、前記紙基材の一方の面上に、印刷柄層と、保護樹脂層とをこの順で備え、前記防湿層は、前記紙基材の他方の面上に、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層と、をこの順で備える。
【0013】
また、本発明の他の態様によれば、上記態様の防湿化粧紙を、この防湿化粧紙のオーバーコート層側を合板等の板基材の表面に向けて貼着し、透湿度が5(g/m2・24h)以下である裏面防湿シートを、板基材の裏面に貼着した、防湿化粧板が提供される。つまり、本発明の一態様に係る防湿化粧板は、上記態様の防湿化粧紙の前記オーバーコート層側の面が、板基材の一方の面に貼着されており、透湿度が5(g/m2・24h)以下である裏面防湿シートが、前記板基材の他方の面に貼着されている。
【0014】
さらに、本発明の他の態様によれば、上記態様の防湿化粧板が、この防湿化粧板の裏面防湿シート側が表裏面に接するようにして圧着された木質系の芯組部材を含む、反り防止が施された扉などの建具が提供される。つまり、本発明の一態様に係る建具は、上記態様の防湿化粧板の前記裏面防湿シート側の面が、木質系の芯組部材の表面及び裏面にそれぞれ貼着されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、プラスチックの使用量を低減しつつ、化粧板等における反りの発生をより防止することができる防湿化粧紙、防湿化粧板及び建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防湿化粧紙の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る防湿化粧紙の構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る防湿化粧板の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る防湿化粧板の構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る扉の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る扉の構成の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などを下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
<構成>
図1に示すように、本実施形態に係る防湿化粧紙10は、保護樹脂層1と、印刷柄層2と、紙基材3と、アンカーコート層4と、シリカ蒸着層5と、オーバーコート層6とが、この順に積層されて形成されている。
本実施形態においては、保護樹脂層1と印刷柄層2と紙基材3とが化粧紙(化粧層)a1を構成し、アンカーコート層4と、シリカ蒸着層5と、オーバーコート層6とが防湿層a2を構成している。
なお、アンカーコート層4とオーバーコート層6は、それぞれ蒸着層(シリカ蒸着層)5と直接に接していてもよい。
【0019】
本実施形態に係る防湿化粧紙10は、
図2に示すように、防湿化粧紙10の、オーバーコート層6の表出面、つまり、シリカ蒸着層5とは反対側の面に接着用プライマー層7を設けることも可能である。
【0020】
図3は、防湿化粧板21の一例を示す概略断面図である。防湿化粧板21は、板基材Sと、板基材Sの一方の面に設けられた防湿化粧紙10と、板基材Sの他方の面に設けられた裏面防湿シート11と、を備える。防湿化粧紙10は、オーバーコート層6が、板基材Sの一方の面に接するように設けられている。裏面防湿シート11は、防湿化粧紙10の透湿度と同等の特性を持つ裏面防湿シートが適しており、透湿度が5g/m
2・24h以下の裏面防湿シートが好ましく、3g/m
2・24h以下の裏面防湿シートがより好ましい。
【0021】
なお、例えば、裏面防湿シート11として、合成樹脂基材上に金属蒸着膜とコート層とを有する防湿シートを使用することができる。
しかし、プラスチック使用量削減という環境面においては、紙基材上に防湿層を有する防湿シートが好ましい。
【0022】
裏面防湿シート11としては、
図4の防湿化粧板22に示すように、防湿化粧紙10の防湿層a2と同等の特性を持つ防湿層を備える裏面防湿シート12を適用することもできる。すなわち、裏面防湿シート12は、紙基材3上に、アンカーコート層4と、シリカ蒸着層5と、オーバーコート層6と、がこの順で積層されてなり、オーバーコート層6が板基材Sに接して設けられている。なお、裏面防湿シート12におけるオーバーコート層6の表出面、つまりシリカ蒸着層5とは反対側の面に接着用プライマー層(図示せず)を設けることも可能である。
【0023】
図3及び
図4に示すように、防湿化粧紙10を板基材Sの表面(一方の面)に、また、裏面防湿シート11又は裏面防湿シート12を板基材Sの裏面(他方の面)側に接着剤を介して貼着することで、反り止め防止が施された防湿化粧板21、22を得ることができる。なお、本実施形態で用いる板基材Sは、中密度繊維強化板(MDF:medium-density fiberboard)、合板、パーティクルボード等の木質系板基材を使用することができる。
【0024】
図5及び
図6は、
図3及び
図4に示す防湿化粧板21、22を表裏に用いてフラッシュ加工を行ったフラッシュ扉などの建具30の一部を模式的に示すものである。
図5及び
図6に示す建具30は、木質系の芯組部材SSの表裏面に、防湿化粧板21(
図5)又は防湿化粧板22(
図6)を構成する裏面防湿シート11又は裏面防湿シート12を内側(芯組部材SS側)にして接着剤を用いて圧着することで形成されている。こうして、反り防止が施されたフラッシュ扉などの建具30が形成される。
【0025】
なお、
図5には一対の防湿化粧板21を用いた形態が示されており、
図6には一対の防湿化粧板22を用いた形態が示されているが、本実施形態では、防湿化粧板21と防湿化粧板22とを一対の防湿化粧板として使用することもできる。
【0026】
なお、本実施形態で用いる芯組部材SSは、中密度繊維強化板(MDF)、合板、パーティクルボード等の木質系板基材を使用することができ、フラッシュ扉の場合にはハニカムパネルなどのコア材なども芯組部材SSとして使用できる。
【0027】
なお、本実施形態で用いる接着剤は、例えば、水性系接着剤、溶剤系接着剤、化学反応系接着剤、ホットメルト系接着剤等に限定されるものではなく、いずれのタイプであっても適用することができる。接着剤としては、公知のもの、または市販品を適宜選択して使用することができる。
【0028】
次に、各層の構成について説明する。
<保護樹脂層>
表面保護層として機能する保護樹脂層1は、防湿化粧紙10の表面を保護するための層であり、防湿化粧紙10及び防湿化粧板21、22や扉などの建具30に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐侯性等の表面物性を付与するために設けられるものである。保護樹脂層(表面保護層)1の形成は、特に限定されるものではなく、グラビアコート等の公知の塗工方法で形成することができる。
【0029】
保護樹脂層(表面保護層)1の材料としては、特に制限は無く、従来の化粧紙で表面保護層として使用されている材料と同様のものを使用することができる。保護樹脂層(表面保護層)1に使用可能な材料としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂、電離放射線硬化型樹脂を用いることができる。アクリルウレタン系樹脂としては、例えば、アクリルポリオール化合物を主剤とし、イソシアネート化合物を硬化剤とした反応生成物を採用できる。また、電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、電子線や紫外線等の電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を採用することができる。
【0030】
保護樹脂層(表面保護層)1は、単層でもよく、2又は3層の複層でもよい。保護樹脂層1を複層とした場合、マット樹脂とグロス樹脂との塗り分けによって、グロスマット表現を付与することもできる。また、部分的に樹脂を盛り上げた凹凸表現を付与することもできる。更に抗菌剤や抗ウイルス剤等を添加することもできる。
【0031】
<印刷柄層>
印刷柄層2は、意匠性を付与するためのものであり、絵柄としては任意の絵柄を用いることができる。印刷柄層2の絵柄としては、例えば木目柄、石目柄、布目柄、コルク柄、抽象柄等或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることができる。
また、印刷柄層2と紙基材3との間に、隠蔽性を確保するために、ベタインキ層(図示せず)を設けることができる。これらの印刷方法は、特に限定されるものでは無く、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷など、公知の印刷方法を用いることができる。
【0032】
印刷インキ等としては、特に制限は無く、油性、水性のいずれでも特に問題はない。印刷柄層2に用いる印刷インキ等は、従来の化粧紙において印刷柄層に使用されている印刷インキ等と同様のものを使用することができ、例えば、アクリルインキを用いることができる。アクリルインキとしては、例えば、アクリルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキを使用することができる。
【0033】
なお、印刷柄層2の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。印刷柄層2の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、印刷柄層2と保護樹脂層1との接着性が向上する。
【0034】
<紙基材3>
紙基材3としては、特に限定されるものではなく、適用される防湿化粧紙10や裏面防湿シート12の用途に応じて適宜選択すればよい。
紙基材3の具体例として、薄葉紙、上質紙、アート紙、キャストコート紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、コート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
【0035】
好ましくは、紙成分(例えば、セルロース繊維)に合成樹脂を混抄させて、紙間強度を強化した薄葉紙(いわゆる紙間強化紙)や紙にラテックスや合成樹脂を含浸したものが好ましく使用される。
紙基材3の坪量としては特に限定されないが、紙基材3の坪量が20g/m2未満の場合は柔軟すぎるため、加工時に皺の発生が起こりやすい。また、紙基材3の坪量が200g/m2超の場合は紙層からの剥がれ(所謂、層間剥離)が発生しやすい。そのため、紙基材3の坪量は、20g/m2以上200g/m2以下の範囲内が好ましく、20g/m2以上100g/m2以下の範囲内がより好ましく、20g/m2以上50g/m2以下の範囲内が更に好ましい。
【0036】
さらに、これらの紙基材3については、その表面に、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理等の表面処理を行ってもよい。
なお、裏面防湿シート12を構成する紙基材3の坪量は、防湿化粧紙10を構成する紙基材3の坪量と同じであれば好ましいが、防湿化粧紙10を構成する紙基材3の坪量より大きくてもよいし、防湿化粧紙10を構成する紙基材3の坪量より小さくてもよい。例えば、裏面防湿シート12を構成する紙基材3の坪量は、防湿化粧紙10を構成する紙基材3の坪量の1.1倍以上2.0倍以下の範囲内であってもよい。あるいは、裏面防湿シート12を構成する紙基材3の坪量は、防湿化粧紙10を構成する紙基材3の坪量の0.5倍以上0.9倍以下の範囲内であってもよい。
【0037】
<コート層>
紙基材3には、後述するアンカーコート層4と接する側の面にコート層(図示せず)を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙基材3にアンカーコート層4が染み込むことを防ぐことができるほか、紙基材3表面の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともできる。そのため、表面にコート層を備えた紙基材3であれば、アンカーコート層4を、塗工ムラ等の欠陥なく均一に製膜することができる。
【0038】
コート層には、バインダー樹脂として、例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等が含まれていてもよい。また、コート層には、填料として、例えばクレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
【0039】
コート層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば、1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、3μm以上8μm以下の範囲内であればさらに好ましい。
また、コート層の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。コート層の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、紙基材3とアンカーコート層4との接着性が向上する。
【0040】
紙基材3の質量は、防湿化粧紙10全体の質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。紙基材3の質量が防湿化粧紙10全体の質量を基準として、50質量%以上であれば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シート(プラスチック材料90質量%以上)あるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シート(ポリエチレンの厚みにもよるが、防湿性能を有するためには、50質量%以上がポリエチレン)等といった従来の防湿用部材に比較して、使用するプラスチックの量が少ない為、防湿化粧紙に含まれるプラスチック材料の割合を十分に削減することができる。また、50質量%以上が紙材料であることから、本実施形態に係る防湿化粧紙10や裏面防湿シート12は、紙製であるということ(「紙製」である旨の表示をすること)ができる。
【0041】
また、紙基材3に含まれる紙成分の質量は、防湿化粧紙10全体の質量を基準として、あるいは裏面防湿シート12全体の質量を基準として、50質量%以上であってもよく、70質量%以上であれば好ましく、80質量%以上であれば更に好ましい。
【0042】
<アンカーコート層>
アンカーコート層4は、紙基材3の表面上に設けられた層であって、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びポリエーテル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一種を有していてもよい。アンカーコート層4のおける上記樹脂の含有量は、例えば、50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0043】
また、アンカーコート層4は、紙基材3の表面上に設けられた層であって、少なくとも一種の極性基を有する樹脂を含んでいてもよく、少なくとも一種の極性基を有するポリオレフィンを含んでいてもよい。また、アンカーコート層4は、ポリビニルアルコール系樹脂を含んでいてもよい。
【0044】
アンカーコート層4における極性基を有する樹脂(例えば、極性基を有するポリオレフィン)の合計の含有量は、アンカーコート層4全体の質量に対して、例えば50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0045】
極性基を有するポリオレフィンは、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基およびカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも一種を有していてもよい。例えば、エチレンやプロピレンに、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する不飽和化合物)や、不飽和カルボン酸エステルを共重合したもの、あるいはカルボン酸を塩基性化合物で中和した塩などを用いてもよく、その他、酢酸ビニル、エポキシ系化合物、塩素系化合物、ウレタン系化合物、ポリアミド系化合物等と共重合したものなどを用いてもよい。
【0046】
具体的には、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0047】
ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、完全けん化のポリビニルアルコール樹脂、部分けん化のポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂である。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、300以上1700以下が好ましい。重合度が300以上であれば、防湿化粧紙10や裏面防湿シート12のガスバリア性および屈曲耐性が良好となり、重合度が1700以下であれば、後述するポリビニルアルコール系樹脂の塗液の粘度が低くなり、塗布性が良好になる。
【0048】
アンカーコート層4は、上記極性基を有するポリオレフィンおよびポリビニルアルコール系樹脂のほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、上記極性基を有するポリオレフィン以外のポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、メラミン、フェノール、ポリエチレンイミン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド、でんぷんおよびその誘導体、およびセルロース誘導体等の樹脂、並びにシランカップリング剤、有機チタネート、グリセリン、グリコール類、カゼイン及びワックス等の添加剤が挙げられる。
【0049】
アンカーコート層4は、紙基材3との密着性の向上や、防湿化粧紙10や裏面防湿シート12のガスバリア性向上のために設けられるものである。
アンカーコート層4が少なくとも一種の極性基を有する樹脂を含むことで、防湿化粧紙10や裏面防湿シート12はガスバリア性に優れ、ポリビニルアルコール系樹脂を含むことで、水蒸気バリア性および酸素バリア性にいっそう優れ、ポリオレフィンを含むことで、ポリオレフィンの結晶性による緻密な膜の形成が可能であり、水蒸気バリア性が発現する。
【0050】
アンカーコート層4の厚さの下限は、例えば、1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。またその上限は、例えば、20μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。アンカーコート層4の厚さが1μm以上であれば、蒸着層5を均一に積層させることができる。アンカーコート層4が厚いほど、紙基材3の凹凸を効率的に埋めることができ、蒸着層5をさらに均一に積層させることができる。また、アンカーコート層4の厚さが20μm以下であれば、コストを抑えつつ上記の各層を均一に積層させることができる。
【0051】
アンカーコート層4における、局所熱分析法により測定される軟化温度は180℃以上であり、さらに好ましくは185℃以上であり、190℃以上であればさらに好ましい。なお、軟化温度の上限については、特に制限されない。
アンカーコート層4の軟化温度が180℃以上であれば、蒸着層5の緻密さの低下を抑制することができる。軟化温度が高いほど、蒸着の際にSiOx粒子等の蒸着材料の熱により、アンカーコート層4が軟化し伸びるのを低減することができるため、蒸着層(シリカ蒸着層)5に発生するマクロなクラックや、蒸着層5の緻密さの低下をさらに抑制することができる。
【0052】
なお、アンカーコート層4の軟化温度の調整は、アンカーコート層4の構成材料や組み合わせる樹脂の比率を調整することで行うことができる。
また、アンカーコート層4における、局所熱分析法により測定される軟化温度は、防湿化粧紙10の厚み方向の断面において180℃以上であればより好ましい。
このように、アンカーコート層4における、局所熱分析法により測定される軟化温度は、測定箇所に依らず180℃以上であれば好ましく、防湿化粧紙10の厚み方向の断面において測定された軟化温度が180℃以上であればより好ましい。
【0053】
アンカーコート層4を設ける方法としては、例えば、紙基材3上に上述したアンカーコート層4の構成材料及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。アンカーコート層4を形成するための塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0054】
また、アンカーコート層4の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。アンカーコート層4の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、アンカーコート層4と蒸着層5との接着性が向上する。そのため、蒸着層5にクラック等が発生する頻度と低減することができるため、優れたガスバリア性を付与することができる。
【0055】
<蒸着層>
蒸着層5は、無機化合物であるシリカを蒸着した層であり、酸化ケイ素(SiOx)等を含むものであってもよい。また、蒸着層5は、アンカーコート層4の表面上にアンカーコート層4に接するように設けられていてもよい。
【0056】
蒸着層5の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、その下限は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。蒸着層5の厚さの上限は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは80nm以下である。蒸着層5の厚さを10nm以上とすることで蒸着層5の連続性を十分なものとしやすく、100nm以下とすることで防湿化粧紙10や裏面防湿シート12におけるカールや蒸着層5におけるクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能および可撓性を達成しやすい。
【0057】
蒸着層5は、真空成膜手段によって成膜することが、水蒸気および酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法のなかでも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで抑制しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0058】
また、蒸着層5の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。蒸着層5の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、蒸着層5とオーバーコート層6との接着性が向上する。そのため、蒸着層5にクラック等が発生する頻度と低減することができるため、優れたガスバリア性を付与することができる。
【0059】
<オーバーコート層>
オーバーコート層6は、蒸着層5の表面上に蒸着層5に接するように設けられる。オーバーコート層6は、例えば、少なくとも一種の極性基を有するポリオレフィンを含んでいてよい。
【0060】
極性基を有するポリオレフィンは、例えば、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基およびカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも一種を有していてもよい。
具体的には、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等を用いてもよい。
【0061】
オーバーコート層6が上述した極性基を有するポリオレフィンを含むことで、オーバーコート層6は柔軟性に優れ、屈曲後に蒸着層5の割れを抑制することができるとともに、蒸着層5との密着性に優れる。さらに、オーバーコート層6が上述した極性基を有するポリオレフィンを含むことで、水蒸気バリア性に優れる防湿化粧紙10や裏面防湿シート12を得ることができる。
【0062】
オーバーコート層6における極性基を有するポリオレフィンの含有量は、例えば、50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0063】
オーバーコート層6は、上記極性基を有するポリオレフィンのほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール等が挙げられる。
【0064】
オーバーコート層6の厚さの下限は、例えば、2μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。オーバーコート層6の厚さの上限は、例えば、10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。また、オーバーコート層6の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ蒸着層5との密着性やバリア性を十分に発揮することができる。また、オーバーコート層6の厚さが2μm以上であれば、オーバーコート層6の連続性を十分なものとしやすくなる。
【0065】
オーバーコート層6の厚さはアンカーコート層4の厚さと同じである形態が好ましいが、アンカーコート層4の厚さよりも薄い形態であってもよいし、厚い形態であってもよい。
【0066】
オーバーコート層6を設ける方法としては、例えば、蒸着層5上に上述したポリオレフィン及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。オーバーコート層6を形成するための塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0067】
アンカーコート層4及びオーバーコート層6にそれぞれ含まれる極性基を有するポリオレフィンは、それぞれ同種のものであっても異種のものであってもよいが、製造の容易性等を考慮すれば、それぞれ同種のものであることが好ましい。
また、アンカーコート層4を、2種以上の極性基を有するポリオレフィンで形成し、オーバーコート層6を、1種の極性基を有するポリオレフィンで形成してもよい。
【0068】
あるいは、アンカーコート層4を、1種の極性基を有するポリオレフィンで形成し、オーバーコート層6を、2種以上の極性基を有するポリオレフィンで形成してもよい。
アンカーコート層4及びオーバーコート層6を互いに異なるポリオレフィンで形成した場合であっても、互いに同じポリオレフィンで形成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、オーバーコート層6の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。オーバーコート層6の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、オーバーコート層6と接着用プライマー層7との接着性が向上する。
【0070】
<接着用プライマー>
接着用プライマー層7は、各種の被貼着基材の表面に積層貼着する際に使用されるものであり、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種のラミネート用接着剤との接着性を十分に確保する目的で設けられるものである。
その材質としては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中からラミネート用接着剤の種類に合せたものを選んで使用する。
【0071】
例えば、ラミネート用接着剤として変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を使用する場合には、ウレタン系接着用プライマー剤を用いれば良好な接着が得られる。
【0072】
なお、接着用プライマー層7に、例えばシリカ等の無機質微粉末を添加しておくと、接着用プライマー層7の表面が粗面化することにより、防湿化粧紙10や裏面防湿シート12の巻取り保存時のブロッキングを防止できる他、投錨効果によるラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
また、これらの接着用プライマー層7は、単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0073】
また、接着用プライマー層7の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。接着用プライマー層7の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、接着用プライマー層7とラミネート用接着剤との接着性が向上する。
【0074】
<効果>
本実施形態の防湿化粧紙10や裏面防湿シート12は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて、透湿度(JIS Z 0208)をより小さくすることができる。そのため、優れた防湿性能を有する防湿化粧紙や裏面防湿シートを得ることができる。また、この防湿化粧紙10や裏面防湿シート12を用いた防湿化粧板21、22を用いて扉等の建具30を形成することによって、扉等の建具の反り防止効果を得ることができる。具体的には、扉等の建具30に、この防湿化粧紙10や裏面防湿シート12を用いることによって、反り防止効果が高いとされる、透湿度が5(g/m2・24h)以下程度の建具30を得ることができる。
【0075】
また、防湿化粧紙10や裏面防湿シート12において、紙基材3の質量は、防湿層a2全体の質量を基準として50質量%以上としているため、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シート(プラスチック材料90質量%以上)あるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シート(プラスチック材料50質量%以上)等といった従来の防湿用部材と比較して、使用するプラスチックの質量(含有率)が少ない為、防湿化粧紙や裏面防湿シートとして使用するプラスチック材料を十分に削減することができる。
【0076】
そのため、この防湿化粧紙10や裏面防湿シート12を用いて防湿化粧板21、22を形成し、この防湿化粧板21、22を用いて扉等の建具30を形成することによって、プラスチック材料の使用量を削減することができる。また、この防湿化粧紙10や裏面防湿シート12を用いた防湿化粧板21、22及び扉等の建具30は、高い防湿性能を有すると共に、木質材料と紙成分とで構成されるため、リサイクル性にも優れる。
【0077】
[実施例]
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
<防湿化粧紙の作製>
(実施例1)
坪量50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)の片面に、ポリエポキシ樹脂の溶液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのアンカーコート層を形成した。当該溶液は、メタノールと酢酸エチルの1:1(質量比)混合溶媒17質量部に、マクシーブC93AT(三菱ガス化学社製)を24質量部と、マクシーブM-100(三菱ガス化学社製)を2質量部とを混合して調製した。
続いて、アンカーコート層上に厚さ30nmのSiOx蒸着を施し、シリカ蒸着層を形成した。
その上に、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィン(極性基含有ポリオレフィン)の水分散液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのオーバーコート層を形成した。
これにより実施例1に係る防湿紙を得た。
【0079】
(実施例2)
アンカーコート層として、アクリルポリオールとポリイソシアネートとの硬化物であるウレタン硬化型アクリル樹脂(アクリルウレタン系樹脂)を、厚さ1μmで塗工した以外は、実施例1と同様の操作によって実施例2に係る防湿紙を得た。
【0080】
(実施例3)
アンカーコート層として、アクリルポリオールとポリイソシアネートとの硬化物であるウレタン硬化型アクリル樹脂(アクリルウレタン系樹脂)を、厚さ3μmで塗工した以外は、実施例1と同様の操作によって実施例3に係る防湿紙を得た。
【0081】
(実施例4)
シリカ蒸着層の厚さを、10nmとした以外は、実施例1と同様の操作によって実施例4に係る防湿紙を得た。
【0082】
(実施例5)
シリカ蒸着層の厚さを、100nmとした以外は、実施例1と同様の操作によって実施例5に係る防湿紙を得た。
【0083】
(実施例6)
シリカ蒸着層の厚さを、10nmとし、オーバーコート層の厚さを、2μmとした以外は、実施例1と同様の操作によって実施例6に係る防湿紙を得た。
【0084】
(実施例7)
シリカ蒸着層の厚さを、10nmとし、オーバーコート層の厚さを、10μmとした以外は、実施例1と同様の操作によって実施例7に係る防湿紙を得た。
【0085】
(比較例1)
紙間強化紙の片面に、けん化度98%、重合度500のポリビニルアルコール樹脂(PVA樹脂)を、水・IPA=8/2(質量比)の溶媒に溶解した塗液をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、厚さ3μmのアンカーコート層を得た。
なお、シリカ蒸着層とオーバーコート層は、実施例1と同様の操作によって比較例1に係る防湿紙を形成した。
【0086】
(比較例2)
アンカーコート層の厚さを、6μmとした以外は、比較例1と同様の操作によって比較例2に係る防湿紙を得た。
【0087】
(比較例3)
アンカーコート層の構成樹脂を、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィン(極性基含有ポリオレフィン)とした以外は、比較例1と同様の操作によって比較例3に係る防湿紙を得た。
【0088】
(比較例4)
アンカーコート層の構成樹脂を、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィン(極性基含有ポリオレフィン)とし、その厚さを6μmとした以外は、比較例1と同様の操作によって比較例4に係る防湿紙を得た。
【0089】
<局所熱分析の測定>
[軟化温度測定]
以下に示す方法で、樹脂層(アンカーコート層)の軟化温度を測定した。
【0090】
試料(各実施例及び各比較例に係る防湿層のみを備えた防湿紙)を底辺1.0mm×高さ5.0mmの短冊型にカミソリにて裁断し、光硬化樹脂で包理し、ハロゲンランプKTX-100Rにて硬化した。光硬化樹脂には東亜合成製のD-800を用いた。
光硬化後の試験片をAFM試料ホルダー用インサートで固定し、常温(25℃)においてガラスナイフでフィルム(試料)の断面切削を行った。
【0091】
その後、常温においてダイヤモンドナイフで切削スピード2.0mm/s、切削膜厚200nmの設定で最終的な断面切削を実施し、鏡面となったところで切削終了とした。断面切削装置として、ウルトラミクロトーム(ライカ社製EM UC7)、クライオシステム(ライカ社EM FC7)を用いた。また、ナイフの切削方向は、層(試料)の膜厚方向に対し垂直とした。断面出しした試験片はAFM試料ホルダー用インサートで固定して軟化温度測定に用いた。
【0092】
軟化温度を測定するために用いた原子間力顕微鏡(AFM)はオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社性のMFP-3D-SA、局所熱分析オプションはZtermシステム、カンチレバーはばね定数:0.5~3.5N/mの仕様のアナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200を用いて、軟化温度測定と形状測定を行った。
【0093】
カンチレバーの触圧(カンチレバーのたわみ量(Deflectin)の変化量)を2.0V、電圧印加速度(昇温速度)を0.5V/秒、最大印加電圧を7.1Vとして、Detrend補正後に測定面、すなわち、アンカーコート層の断面を加熱したところ、測定面が膨張し、カンチレバーの高さが上昇した。さらに、測定面を加熱すると、測定面が軟化しカンチレバーの高さ位置が20nm下降したところで、測定終了とした。高さ位置が変化点から20nm下降せずに最大印加電圧に達した場合は、Detrend補正時と測定時の最大印加電圧を0.5V昇圧して再度実施した。
【0094】
カンチレバーの垂直方向の高さ位置が最大の地点における印加電圧を、軟化温度を算出するため電圧値(軟化点の印加電圧)として読み取った。
【0095】
次に、アンカーコート層の軟化温度を算出するため、構成曲線の作成を行った。校正用試料としては、ポリカプロラクトン(融点:60℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点112℃)、ポリプロピレン(PP,融点:166℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点250℃)とした。カンチレバーの触圧(カンチレバーのたわみ量(Deflection)の変化量)を2.0V、電圧印加速度(昇温速度)を0.5V/秒とした。校正用試料の測定位置を変えて10回測定し、軟化点の印加電圧の平均値と融点とを最小二乗法により3次関数で近似した検量線を作成して、校正曲線を作成した。また、この時軟化温度の誤差として±10℃が考えられる。
【0096】
印加電圧と融点(融解ピーク温度)との構成曲線を用いて、樹脂層(アンカーコート層)の軟化点の印加電圧を温度に換算し、本実施例における軟化温度とした。こうして得られた結果を表1~表3に表記した。
【0097】
次に、紙基材3上に積層された防湿層a2を形成した面とは反対側の面に、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にてベタインキ層を形成した。
その上には同じく、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にて絵柄インキ層(印刷柄層2)を形成した。
【0098】
続いて、ウレタン系アクリルポリオールとイソシアネートとを用いて、グラビア印刷にて表面保護層(保護樹脂層1)を形成し、実施例1~7及び比較例1~4の防湿化粧紙10を得た。
【0099】
<フラッシュ扉の作製>
(実施例8)
実施例1において、印刷柄層2と表面保護層(保護樹脂層1)を形成せず、紙基材3上に防湿層a2のみを備えた裏面防湿シート12を得た。
【0100】
実施例1で得られた防湿化粧紙10の防湿層a2側を接着側として、MDFの板基材S(ホクシン株式会社製:厚み:3mm)の表面に、また、実施例8で得られた裏面防湿シート12の防湿層a2側を接着側として、板基材Sの裏面に、それぞれ酢酸ビニル樹脂系接着剤(コニシ株式会社製)(ウェット状態で5g/尺角塗布)を介してラミネートし、反り止め防止が施された防湿化粧板22を得た。
【0101】
次に、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材、ファーストウッド株式会社製:27mm×26mm)で芯組した4方枠(芯材SS)の表裏に、防湿化粧板22の裏面防湿シート12側をそれぞれ内側(4方枠側)にして、それぞれ酢酸ビニル系樹脂接着剤(コニシ株式会社製)を用いて、フラッシュ扉(810mm×2030mm)を作製した。
【0102】
<フラッシュ扉の作製>
(比較例5)
従来品の防湿シートとして、一方の面にコロナ処理を施した坪量30g/m2の2枚の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)のコロナ処理面同士を、Tダイ押出し機より押出した溶融したポリエチレン樹脂50μmでサンドラミネートを行い、防湿シート(紙間強化紙/ポリエチレン/紙間強化紙)を作製した。
【0103】
次に、防湿シートの表出面に、実施例1と同様の手順で、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にてベタインキ層を形成した。
その上には同じく、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にて絵柄インキ層(印刷柄層2)を形成した。
【0104】
続いて、ウレタン系アクリルポリオールとイソシアネートとを用いて、グラビア印刷にて表面保護層(保護樹脂層1)を形成し、比較例5の防湿化粧シートを得た。
【0105】
比較例5で得られた防湿化粧シートをMDFの板基材S(ホクシン株式会社製:3mm)の表面に、また、上述した工程で作製された裏面防湿シートを板基材Sの裏面に、それぞれ酢酸ビニル樹脂系接着剤(コニシ株式会社製)(ウェット状態で5g/尺塗布)を介してラミネートし、反り止め防止が施された防湿化粧板を得た。
【0106】
次に、LVL(ファーストウッド株式会社製:27mm×26mm)で芯組した4方枠(芯材SS)の表裏に、防湿化粧板の裏面防湿シート側をそれぞれ内側(4方枠側)にして、それぞれ酢酸ビニル樹脂系接着剤(コニシ株式会社製)を用いて、フラッシュ扉(810mm×2030mm)を作製した。
【0107】
<フラッシュ扉の作製>
(比較例6)
坪量50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)の片面に、実施例1と同様の手順で、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にてベタインキ層を形成した。
その上には実施例1と同様に、硝化綿とアクリル樹脂とをバインダーとするインキを用いて、グラビア印刷にて絵柄インキ層(印刷柄層2)を形成した。
【0108】
続いて、ウレタン系アクリルポリオールとイソシアネートとを用いて、グラビア印刷にて表面保護層(保護樹脂層1)を形成し、比較例6の化粧紙を得た。
【0109】
比較例6で得られた化粧紙をMDFの板基材S(ホクシン株式会社製:3mm)の表面に、また、坪量50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)をMDFの裏面に、それぞれ酢酸ビニル樹脂系接着剤(コニシ株式会社製)(ウェット状態で5g/尺角塗布)を介してラミネートし、比較例6の化粧板を得た。
【0110】
次に、LVL(ファーストウッド株式会社製:27mm×26mm)で芯組した4方枠(芯材SS)の表裏に、化粧板の紙間強化紙側をそれぞれ内側(4方枠側)にして、それぞれ酢酸ビニル樹脂系接着剤(コニシ株式会社製)を用いて、フラッシュ扉(810mm×2030mm)を作製した。
【0111】
[評価]
<評価1>
上記で作製した実施例1~7、及び比較例1~4の各防湿化粧紙について、JIS Z 0208に準拠して透湿度(水蒸気透過度)を算出し、それぞれ透湿度の比較を行った。その結果を表1~表3に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表1~表3の結果から明らかなように、各実施例の防湿化粧紙は、各比較例の防湿化粧紙と比べて、透湿度(水蒸気透過度)が低い結果が得られた。本実施例の防湿化粧紙は、防湿層を設けたことにより、透湿度(水蒸気透過度)の性能向上が認められ、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを従来品に比べて少なくする効果及びプラスチック材料の使用量を削減できる効果が期待できる。
【0116】
<評価2>
【0117】
実施例8及び比較例5、6で作製したフラッシュ扉について、2室1体型環境試験室にて、反り試験を行った。
試験方法として、フラッシュ扉を2室の境界に設置し、一方の面を高湿環境下、他方の面を低湿環境下にし、フラッシュ扉の反り量の測定を行った。試験方法の詳細として、高湿側の環境を湿度90%±5%、温度20℃とし、低湿側の環境を湿度50%±5%、温度20℃として8時間静置し、その後両室とも湿度50%±5%、温度20℃の環境で16時間静置した。この24時間を1サイクルとして、5サイクルの加湿繰り返しを行った。この時のフラッシュ扉の縦方向、横方向、対角線方向の最大変位量の測定を行った。その結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
表4の結果から、実施例8のフラッシュ扉は、高さ方向、幅方向及び対角線方向のいずれの場合も、比較例5、6の各フラッシュ扉に比較して、最大変位量がより小さいことが確認された。
【0120】
表1~表4から、本発明の課題である、化粧板等の両側(表面側及び裏面側)の温湿度環境に大きな差がある場所で化粧板等を用いても、反りを防止することのできる防湿化粧板及び扉などの建具を提供することが可能であることを検証することができた。
【0121】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
化粧層と防湿層とを備えた防湿化粧紙であって、
前記化粧層は、紙基材と、前記紙基材の一方の面上に、印刷柄層と、保護樹脂層とをこの順で備え、
前記防湿層は、前記紙基材の他方の面上に、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備え、
前記アンカーコート層と前記オーバーコート層は、それぞれ前記シリカ蒸着層と直接に接しており、
前記防湿化粧紙の厚み方向の断面において、局所熱分析法により測定された前記アンカーコート層の軟化温度は180℃以上である、ことを特徴とする防湿化粧紙。
(2)
紙基材と、前記紙基材の一方の面上に化粧層と、前記紙基材の他方の面上に防湿層とをこの順で備え、
前記化粧層は、前記紙基材の一方の面上に、印刷柄層と、保護樹脂層とをこの順で備え、
前記防湿層は、前記紙基材の他方の面上に、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備える防湿化粧紙であって、
前記アンカーコート層は、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びポリエーテル系ポリウレタン樹脂の少なくとも一種を有することを特徴とする防湿化粧紙。
(3)
前記オーバーコート層が、極性基を少なくとも一種を有するポリオレフィンを含む、ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の防湿化粧紙。
(4)
前記シリカ蒸着層の厚みが10nm以上100nm以下の範囲内である、ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(5)
前記オーバーコート層の厚みが2μm以上10μm以下の範囲内である、ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(6)
前記紙基材に含まれる紙成分の質量が、防湿化粧紙全体の質量を基準として、50質量%以上である、ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(7)
前記紙基材が紙間強化紙である、ことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙。
(8)
上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の防湿化粧紙の前記オーバーコート層側の面が、板基材の一方の面に貼着されており、透湿度が5(g/m2・24h)以下である裏面防湿シートが、前記板基材の他方の面に貼着されている、ことを特徴とする防湿化粧板。
(9)
前記裏面防湿シートが、紙基材と、アンカーコート層と、シリカ蒸着層と、オーバーコート層とをこの順で備える、ことを特徴とする上記(8)に記載の防湿化粧板。
(10)
上記(8)又は(9)に記載の防湿化粧板の前記裏面防湿シート側の面が、木質系の芯組部材の表面及び裏面にそれぞれ貼着されている、ことを特徴とする建具。
【0122】
1・・・保護樹脂層(表面保護層)
2・・・印刷柄層
3・・・紙基材
4・・・アンカーコート層
5・・・シリカ蒸着層(蒸着層)
6・・・オーバーコート層
7・・・接着用プライマー層
10・・防湿化粧紙
11・・裏面防湿シート
12・・裏面防湿シート
21・・防湿化粧板
22・・防湿化粧板
30・・建具
a1・・化粧層(化粧紙)
a2・・防湿層
S・・・板基材
SS・・芯材