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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088326
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】プレス加工装置及びプレス加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20250604BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20250604BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
H01M8/0202
B21D28/00 B
B30B13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202967
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】小田 晴嵩
【テーマコード(参考)】
4E048
4E090
5H126
【Fターム(参考)】
4E048AB03
4E090AB01
4E090FA02
4E090GA03
4E090HA04
5H126AA12
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126HH02
(57)【要約】
【課題】セパレータの第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成する際、その形成の高い精度を維持する。
【解決手段】プレス加工装置は、型締めと型開きとの繰り返しに基づくプレス加工によって素材27から燃料電池用のセパレータを形成する。同装置は、型締め時に素材27の第1部位を打ち抜くことにより、セパレータの第1箇所を形成する第1打ち抜き部32を備える。更に、同装置は、型締め時に素材27の第1部位とは別の第2部位を打ち抜くことにより、セパレータにおける第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成する第2打ち抜き部33を備える。同装置は、型締め時に第1打ち抜き部32が素材27の第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部33が素材27の第2部位の打ち抜きを行うよう構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めと型開きとが繰り返される固定型と可動型との対向する箇所に設けられた打ち抜き部を備え、型締めと型開きとの繰り返しに基づくプレス加工によって素材から燃料電池用のセパレータを形成するに当たり、型締め時に前記打ち抜き部により前記素材の一部の打ち抜きを行うプレス加工装置において、
前記打ち抜き部は、第1打ち抜き部及び第2打ち抜き部であり、
前記第1打ち抜き部は、前記素材の第1部位を打ち抜くことによって前記セパレータの第1箇所を形成するものであり、
前記第2打ち抜き部は、前記素材の前記第1部位とは別の第2部位を打ち抜くことによって前記セパレータにおける前記第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成するものであり、
型締め時に前記第1打ち抜き部が前記素材の前記第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に前記第2打ち抜き部が前記素材の前記第2部位の打ち抜きを行うよう構成されているプレス加工装置。
【請求項2】
前記素材は、前記固定型と前記可動型との間で延びるとともに、前記セパレータを形成するための形成領域が長手方向に沿って並ぶ帯状をなし、前記固定型と前記可動型との間において型開き毎に隣合う前記形成領域の距離に対応したピッチで長手方向に送られ、
前記固定型と前記可動型との対向する箇所には前記素材の長手方向に沿って形成部、前記第1打ち抜き部、前記第2打ち抜き部、及び分断部が順に設けられ、
前記固定型と前記可動型との型締め時、前記形成部は前記素材の前記形成領域の一部に形状加工を施し、前記第1打ち抜き部は前記素材の前記第1部位を打ち抜き、前記第2打ち抜き部は前記素材の前記第2部位を打ち抜き、前記分断部は前記素材から前記形成領域を分断して前記セパレータとする請求項1に記載のプレス加工装置。
【請求項3】
前記セパレータの前記第1箇所は、前記セパレータの外周面であり、
前記セパレータの前記第2箇所は、前記セパレータの前記外周面から内側に向けて凹む凹部であり、
前記凹部における前記外周面に対する開口部は、R形状となって前記セパレータの前記外周面に繋がっており、
前記素材の前記第1部位は、前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置よりも外側に位置し、
前記素材の前記第2部位は、前記素材の前記第1部位と隣合い、且つ前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置よりも内側に位置し、
前記第1打ち抜き部は、前記第1部位を打ち抜くためのパンチとして、前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置に沿った形状のパンチを備え、
前記第2打ち抜き部は、前記第2部位を打ち抜くためのパンチとして、前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置に重なることのない形状であって、且つ前記セパレータの前記凹部に対応した形状のパンチを備えている請求項2に記載のプレス加工装置。
【請求項4】
前記セパレータの前記第1箇所は、前記セパレータの外周面であり、
前記セパレータの前記第2箇所は、前記セパレータの前記外周面から内側に向けて凹む凹部であり、
前記凹部における前記外周面に対する開口部は、R形状となって前記セパレータの前記外周面に繋がっており、
前記素材の前記第1部位は、前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置よりも外側、及び、前記凹部の前記開口部に対応して位置し、
前記素材の前記第2部位は、前記素材の前記第1部位と隣合い、且つ前記素材における前記セパレータの前記外周面に対応する位置よりも内側であって前記凹部の前記開口部と重ならないように前記開口部よりも内側部分に位置し、
前記第1打ち抜き部は、前記第1部位を打ち抜くためのパンチとして、前記素材における前記セパレータの前記外周面及び前記凹部の前記開口部に対応する位置に沿った形状のパンチを備え、
前記第2打ち抜き部は、前記第2部位を打ち抜くためのパンチとして、前記素材における前記セパレータの前記外周面及び前記凹部の前記開口部に対応する位置に重なることのない形状であって、且つ前記セパレータの前記凹部における前記開口部よりも内側部分に対応した形状のパンチを備えている請求項2に記載のプレス加工装置。
【請求項5】
前記セパレータは、四隅がR形状となる長方形板状であり、
前記セパレータの前記第1箇所は、前記セパレータの前記外周面における短辺であり、
前記セパレータの前記第2箇所は、前記外周面における前記短辺から内側に向かって凹む前記凹部であり、
前記形成領域は、前記セパレータに対応した長方形状であり、前記素材の長手方向に沿って短辺方向に並び、
前記素材の前記第1部位は、前記素材における前記形成領域の長辺方向の外側に位置して前記短辺に対応する位置に沿って延びる短辺部と、その短辺部の長手方向の両端部から隣合う前記形成領域の間に向けて前記形成領域の長辺との間に間隔をもって延びる突出部と、を有しており、
前記第1打ち抜き部の前記パンチは、前記第1部位の前記短辺部及び前記突出部に対応した形状とされており、
前記第1打ち抜き部は、前記パンチに対応したダイを備えており、
前記分断部は、前記素材における隣合う前記形成領域の間を前記形成領域の長辺に沿って打ち抜くパンチを備えている請求項3又は4に記載のプレス加工装置。
【請求項6】
前記セパレータの前記第1箇所は、流体を流す通路を形成するための孔を含み、
前記セパレータの前記第2箇所は、前記セパレータを燃料電池セルに組み込む際に用いられる基準穴、及び、前記セパレータの前記外周面における長辺から内側に向かって凹む端子部を含み、
前記第1打ち抜き部は、前記素材における前記第1部位を打ち抜く際、前記素材の形成領域における前記孔に対応する箇所を打ち抜くパンチも備えており、
前記第2打ち抜き部は、前記素材における前記第2部位を打ち抜く際、前記素材の形成領域における前記基準穴及び前記端子部に対応する箇所も打ち抜くパンチも備えている請求項5に記載のプレス加工装置。
【請求項7】
前記セパレータの前記端子部における前記外周面の前記長辺に対する開口部は、R形状となって前記長辺に繋がっており、
前記第2打ち抜き部における前記素材の前記端子部に対応する部位を打ち抜くための前記パンチは、前記素材における前記セパレータの前記外周面の前記長辺に対応する位置に重なることのない形状であって、且つ前記セパレータの前記端子部に対応した形状とされている請求項6に記載のプレス加工装置。
【請求項8】
前記セパレータの前記端子部における前記外周面の前記長辺に対する開口部は、R形状となって前記長辺に繋がっており、
前記第2打ち抜き部における前記素材の前記端子部に対応する部位を打ち抜くための前記パンチは、前記素材における前記セパレータの前記外周面の前記長辺に対応する位置及び前記端子部の前記開口部に重なることのない形状であって、且つ前記セパレータの前記端子部における前記開口部よりも内側部分に対応した形状とされ、
前記分断部のパンチは、前記素材における隣合う前記形成領域の間を前記形成領域の長辺に沿って打ち抜く際、前記セパレータの前記端子部における前記開口部よりも内側部分と重ならないよう前記開口部に対応する部分も打ち抜く形状とされている請求項6に記載のプレス加工装置。
【請求項9】
固定型及び可動型の型締めと型開きとの繰り返しに基づくプレス加工によって素材から燃料電池用のセパレータを形成するに当たり、型締め時に固定型と可動型との対向する箇所に設けられた打ち抜き部によって前記素材の一部の打ち抜きを行うプレス加工方法において、
前記打ち抜き部は、第1打ち抜き部及び第2打ち抜き部であり、
前記第1打ち抜き部は、前記素材の第1部位を打ち抜くことによって前記セパレータの第1箇所を形成するものであり、
前記第2打ち抜き部は、前記素材の前記第1部位とは別の第2部位を打ち抜くことによって前記セパレータにおける前記第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成するものであり、
型締め時に前記第1打ち抜き部によって前記素材の前記第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に前記第2打ち抜き部によって前記素材の前記第2部位の打ち抜きを行うプレス加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレス加工装置及びプレス加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のセルスタックは、燃料電池セルを厚さ方向に重ねることによって形成されている。燃料電池セルは、膜電極ガス拡散層接合体をセパレータで挟み込むことによって形成されている。セパレータは、例えば特許文献1に示されるプレス加工装置によって製造される。このプレス加工装置は、型締めと型開きとを繰り返す固定型及び可動型を備えている。プレス加工装置の固定型と可動型との間には、セパレータの形成に用いられる素材が送られる。そして、プレス加工装置の型締めにより、上記素材におけるセパレータの形成領域の一部に対し形状加工を施したり、上記形成領域の一部に対し打ち抜きを行ったり、上記素材からのセパレータの分断を行ったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-78336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、セパレータには、型締め時に素材の打ち抜きによって形成される箇所のうち、高い精度で形成する必要のある箇所と、そうではない箇所とが存在する。例えば、素材の第1部位を打ち抜くことによってセパレータの第1箇所を形成するとともに、素材の第2部位を打ち抜くことによってセパレータの上記第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成する場合がある。
【0005】
この場合、一度の型締め時に第1部位と第2部位とがそれぞれ打ち抜かれると、次のようなことが生じる。すなわち、素材における第1部位及び第2部位の打ち抜き後、素材には上記打ち抜きによるプレス歪みに伴う縮みが生じる。そして、その縮みの影響が素材における第2部位の周辺、言い換えればセパレータにおける第2箇所に及ぶことにより、その第2箇所を形成する際の高い精度を維持することが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するプレス加工装置は、型締めと型開きとが繰り返される固定型と可動型との対向する箇所に設けられた打ち抜き部を備える。上記プレス加工装置は、型締めと型開きとの繰り返しに基づくプレス加工によって素材から燃料電池用のセパレータを形成するに当たり、型締め時に上記打ち抜き部により素材の一部の打ち抜きを行う。上記打ち抜き部は、第1打ち抜き部及び第2打ち抜き部とされる。第1打ち抜き部は、素材の第1部位を打ち抜くことによってセパレータの第1箇所を形成する。第2打ち抜き部は、素材の第1部位とは別の第2部位を打ち抜くことによってセパレータにおける第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成する。上記プレス加工装置は、型締め時に第1打ち抜き部が素材の第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部が素材の第2部位の打ち抜きを行うよう構成されている。
【0007】
上記構成によれば、型締め時に第1打ち抜き部が素材の第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部が素材の第2部位の打ち抜きを行う。その結果、素材における第1部位の打ち抜きによるプレス歪み及びそれに伴う縮みが生じてから、素材における第2部位の打ち抜きが行われる。このため、素材における第2部位の打ち抜きによってセパレータの第2箇所が形成される際、素材における第1部位の打ち抜きに伴う上記縮みの影響が及ぶことはない。このように素材における第1部位の打ち抜きに伴う上記縮みがセパレータにおける第2箇所の形成に影響を及ぼすことはないため、セパレータにおける第2箇所を形成する際の高い精度を維持することができる。
【0008】
上記課題を解決するプレス加工方法は、固定型及び可動型の型締めと型開きとの繰り返しに基づくプレス加工によって素材から燃料電池用のセパレータを形成するに当たり、型締め時に固定型と可動型との対向する箇所に設けられた打ち抜き部によって素材の一部の打ち抜きを行う。打ち抜き部は、第1打ち抜き部及び第2打ち抜き部である。第1打ち抜き部は、素材の第1部位を打ち抜くことによってセパレータの第1箇所を形成するものである。第2打ち抜き部は、素材の第1部位とは別の第2部位を打ち抜くことによってセパレータにおける第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所を形成するものである。そして、型締め時に第1打ち抜き部によって素材の第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部によって素材の第2部位の打ち抜きを行う。
【0009】
上記方法によれば、型締め時に第1打ち抜き部が素材の第1部位の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部が素材の第2部位の打ち抜きを行う。その結果、素材における第1部位の打ち抜きによるプレス歪み及びそれに伴う縮みが生じてから、素材における第2部位の打ち抜きが行われる。このため、素材における第2部位の打ち抜きによってセパレータの第2箇所が形成される際、素材における第1部位の打ち抜きに伴う上記縮みの影響が及ぶことはない。このように素材における第1部位の打ち抜きに伴う上記縮みがセパレータにおける第2箇所の形成に影響を及ぼすことはないため、セパレータにおける第2箇所を形成する際の高い精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料電池セルを示す分解斜視図である。
図2図1の燃料電池セルに組み込まれたセパレータを示す正面図である。
図3図2のセパレータを製造するためのプレス加工装置を概略的に示す側面図である。
図4図3のプレス加工装置における第1打ち抜き部、第2打ち抜き部、及び分断部を概略的に示す平面図である。
図5図4の第1打ち抜き部のパンチを拡大して示す断面図である。
図6図4の第2打ち抜き部のパンチ、及び、分断部のパンチを拡大して示す断面図である。
図7】第1打ち抜き部のパンチの他の例を示す断面図である。
図8】第2打ち抜き部のパンチ、及び、分断部のパンチの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、プレス加工装置及びプレス加工方法の第1実施形態について、図1図6を参照して説明する。
【0012】
図1は、燃料電池のセルスタックを形成するための燃料電池セル11を示している。燃料電池セル11は、樹脂プレート12と、膜電極ガス拡散層接合体13と、セパレータ14と、を備えている。樹脂プレート12は長方形の枠状に形成されている。樹脂プレート12には膜電極ガス拡散層接合体13の外縁が接合されている。そして、樹脂プレート12及び膜電極ガス拡散層接合体13は、それらの厚さ方向両側からセパレータ14によって挟まれている。
【0013】
こうした燃料電池セル11を厚さ方向に積層することによって、燃料電池のセルスタックが形成されている。燃料電池セル11の樹脂プレート12及び一対のセパレータ14には、孔16~21が形成されている。孔16~21は、燃料電池セル11における長辺方向の両端部に位置している。孔16~21は、燃料ガス(水素等)、酸化ガス(空気等)、及び冷媒(冷却水等)といった流体を、セルスタックに流入させたり同セルスタックから流出させたりする通路を形成するためのものである。
【0014】
そして、燃料電池セル11のセルスタックに流入した燃料ガスと酸化ガスとは膜電極ガス拡散層接合体13のアノード側とカソード側とに供給され、それら燃料ガスと酸化ガスとの膜電極ガス拡散層接合体13での反応に基づき発電が行われる。膜電極ガス拡散層接合体13を通過した燃料ガス及び酸化ガスは、上述したようにセルスタックから流出する。また、セルスタックに流入した冷媒は、隣合う燃料電池セル11のセパレータ14同士の間に流される。その結果、セルスタックが冷却される。
【0015】
<セパレータ14の詳細>
図2に示すように、セパレータ14は長方形板状に形成されている。セパレータ14の長辺方向の両端部には上記孔16~21が形成されている。セパレータ14の長辺方向の中央部には、複数の溝22がセパレータ14の長辺方向に延びるように形成されている。溝22は、膜電極ガス拡散層接合体13のアノード側への燃料ガスの供給、あるいは膜電極ガス拡散層接合体13のカソード側への酸化ガスの供給を行うためのものである。
【0016】
セパレータ14の四つの隅14aはR形状となってセパレータ14の外周面に繋がっている。セパレータ14における長辺方向の両端部には、セパレータ14の外周面のうちの短辺14bから内側に向けて凹む凹部23が形成されている。この凹部23における上記短辺14bに対する開口部23aは、R形状となって上記短辺14bに繋がっている。セパレータ14の外周面のうちの短辺14bは第1箇所としての役割を担い、上記凹部23は第1箇所よりも高い精度で形成する必要のある第2箇所としての役割を担う。
【0017】
セパレータ14の長辺方向の両端部には基準穴24が形成されている。また、セパレータ14には、その外周面のうちの長辺14cから内側に向けて凹む端子部26が形成されている。端子部26における長辺14cに対する開口部26aは、R形状となって長辺14cに繋がっている。図1に示すように、樹脂プレート12にも、セパレータ14の凹部23、基準穴24、及び端子部26に対応する位置にそれぞれ、凹部23、基準穴24、及び端子部26が形成されている。
【0018】
セパレータ14において、上述した第1箇所には上記孔16~21も含まれている。また、セパレータ14において、上述した第2箇所には基準穴24及び端子部26も含まれている。
【0019】
<基準穴24、凹部23、端子部26>
セパレータ14及び樹脂プレート12の基準穴24は、燃料電池セル11におけるセパレータ14と樹脂プレート12及び膜電極ガス拡散層接合体13との相対位置を適正な位置とするためのものである。すなわち、燃料電池セル11を製造する際、位置決めピンをセパレータ14及び樹脂プレート12の基準穴24に通した状態で、樹脂プレート12及び膜電極ガス拡散層接合体13を厚さ方向両側からセパレータ14で挟む。更に、膜電極ガス拡散層接合体13の厚さ方向両側の上記セパレータ14は、膜電極ガス拡散層接合体13に当たりつつ樹脂プレート12に対し接合される。これにより、セパレータ14と樹脂プレート12及び膜電極ガス拡散層接合体13との相対位置を適正な位置としつつ、燃料電池セル11が製造される。
【0020】
セパレータ14及び樹脂プレート12の凹部23は、燃料電池セル11を厚さ方向に積層することによってセルスタックを形成する際、積層された燃料電池セル11の位置ずれが生じることを抑制するためのものである。すなわち、各燃料電池セル11の凹部23に位置決めのためのレールが通るよう燃料電池セル11を積層することにより、各燃料電池セル11の位置ずれが生じることなくセルスタックが形成される。各燃料電池セル11における凹部23の開口部23aが上述したR形状となっているのは、凹部23に対し位置決めのための上記レールを円滑に挿入できるようにするためである。
【0021】
セパレータ14及び樹脂プレート12の端子部26には、セルスタックから電力を取り出すためのレール状の端子が通される。この端子は、燃料電池セル11のセパレータ14に対し絶縁されるとともに、燃料電池セル11の樹脂プレート12に形成された電気回路を介して膜電極ガス拡散層接合体13に対し電気的に接続される。各燃料電池セル11における端子部26の開口部26aが上述したR形状となっているのは、端子部26に対し上記レール状の端子を円滑に挿入できるようにするためである。
【0022】
凹部23、基準穴24、端子部26は、上述した各々の役割から分かるように、高い精度で形成する必要がある。
<プレス加工装置>
次に、セパレータ14を製造するためのプレス加工装置について説明する。
【0023】
図3に示すプレス加工装置は、セパレータ14の形成に用いられる素材27に対し、順送プレス加工を行う。こうした順送プレス加工を通じてセパレータ14が製造される。プレス加工装置は、型締めと型開きとを繰り返す固定型28及び可動型29を備えている。プレス加工装置は、型開きの際に可動型29を固定型28から離れさせる一方、型締めの際に可動型29を固定型28に対し接近させる。
【0024】
図4に示すように、素材27は帯状をなしている。素材27にはセパレータ14を形成する予定の長方形状の形成領域30が素材27の長手方向に沿って並んでいる。図3に示すように、素材27は、プレス加工装置の固定型28と可動型29との間に配置される。素材27は、固定型28及び可動型29の型開きと型締めとを繰り返す際の型開き毎に、素材27における隣合う形成領域30の距離に対応したピッチで、素材27の長手方向であって図3及び図4の右側に向けて送られる。
【0025】
プレス加工装置は、固定型28と可動型29との対向する箇所に設けられた形成部31、第1打ち抜き部32、第2打ち抜き部33、及び分断部34を備えている。詳しくは、プレス加工装置における固定型28と可動型29との対向する箇所には、素材27の送り方向の後側から前側、すなわち図3及び図4の左側から右側に向けて、形成部31、第1打ち抜き部32、第2打ち抜き部33、及び分断部34が設けられている。これら形成部31、第1打ち抜き部32、第2打ち抜き部33、及び分断部34は、型締め毎に素材27の形成領域30及びその周辺に対するプレス加工を行う。そうしたプレス加工を通じてセパレータ14が形成される。
【0026】
次に、プレス加工装置における形成部31、第1打ち抜き部32、第2打ち抜き部33、及び分断部34の詳細について個別に説明する。
<形成部31>
形成部31は、型締め時に素材27の形成領域30にセパレータ14の輪郭、並びに、その孔16~21、凹部23、基準穴24、及び端子部26の輪郭を形成するとともに、セパレータ14の溝22を形成するための形成面35を有している。形成部31は、型締め時に形成面35によって形成領域30の一部に形状加工を施すことにより、図4に示すように素材27の形成領域30に上記各種の輪郭及び溝22を形成する。
【0027】
<第1打ち抜き部32>
図3に示す第1打ち抜き部32は、型締め時に素材27の所定部位を打ち抜くためのパンチ36,37及びダイ38を備えている。図4及び図5に示すように、パンチ36は、素材27の第1部位39を打ち抜く。また、パンチ37は、素材27における形成領域30内であって、セパレータ14の孔16~21に対応する箇所を打ち抜く。
【0028】
第1部位39は、素材27における形成領域30よりも外側、言い換えればセパレータ14の外周面の短辺14bに対応する位置よりも外側に位置している。第1部位39は、短辺部40と突出部41とを有している。短辺部40は、素材27における形成領域30の長辺方向の外側に位置し、形成領域30の短辺方向に沿って延びている。突出部41は、短辺部40の長手方向の両端部から隣合う形成領域30の間に向けて、形成領域30の長辺との間に間隔を持って延びている。
【0029】
パンチ36は、こうした形状の第1部位39を打ち抜くため、第1部位39の短辺部40及び突出部41に対応した形状とされている。その結果、パンチ36の形状は、素材27におけるセパレータ14の外周面の短辺14bに対応する位置に沿ったものとなる。そして、型締め時、パンチ36で素材27の第1部位39を打ち抜くとともに、パンチ37で素材27における形成領域30内の孔16~21に対応する箇所を打ち抜くことにより、セパレータ14の第1箇所が形成される。
【0030】
<第2打ち抜き部33>
図3に示す第2打ち抜き部33は、型締め時に素材27における形成領域30の所定箇所を打ち抜くためのパンチ42~44及びダイ45を備えている。図4及び図6に示すように、パンチ42は、素材27における第1部位39とは別に位置する第2部位46を打ち抜く。また、パンチ43及びパンチ44は、素材27における形成領域30であって、基準穴24に対応する箇所及び端子部26に対応する箇所を打ち抜く。
【0031】
第2部位46は、素材27における第1部位39と隣合い、且つ素材27におけるセパレータ14の外周面に対応する位置よりも内側に位置している。詳しくは、第2部位46は、素材27におけるセパレータ14の凹部23に対応する箇所に位置している。そして、素材27の第2部位46を打ち抜くパンチ42は、セパレータ14の外周面の短辺14bに重なることのない形状であって、且つセパレータ14の凹部23に対応した形状とされている。このパンチ42で素材27の第2部位46を打ち抜くことにより、セパレータ14の凹部23が形成される。
【0032】
そして、型締め時、パンチ42で素材27の第2部位46を打ち抜くとともに、パンチ43,44で素材27における形成領域30であって基準穴24に対応する箇所及び端子部26に対応する箇所を打ち抜くことによって、セパレータ14の第2箇所が形成される。
【0033】
<分断部34>
図3に示す分断部34は、型締め時に素材27から形成領域30を分断してセパレータ14とするためのパンチ47及びダイ48を備えている。図4及び図6に示すように、パンチ47は、素材27における隣合う形成領域30の間を形成領域30の長辺に沿って打ち抜くためのものであり、そうしたことを可能とする形状とされている。このパンチ47で素材27における隣合う形成領域30の間を打ち抜くことにより、素材27からセパレータ14が分断される。
【0034】
次に、本実施形態のプレス加工装置の動作、及び、その動作に基づくプレス加工方法について説明する。
図3に示すように、帯状の素材27は、プレス加工装置の固定型28と可動型29との間に配置される。プレス加工装置の型締め時、形成部31では、図4に示すように素材27の形成領域30に対し、セパレータ14の輪郭、並びに、孔16~21、凹部23、基準穴24、及び端子部26の輪郭が形成されるとともに、セパレータ14の溝22が形成される。その後の型開きの際、素材27が図3及び図4の右側に向けて上述したピッチで送られる。
【0035】
続くプレス加工装置の型締め時、第1打ち抜き部32では、図4及び図5に示すようにパンチ36による素材27における第1部位39の短辺部40及び突出部41の打ち抜きが行われる。これにより、セパレータ14の外周面の短辺14bが形成される。更に、このときには、パンチ37による素材27の孔16~21に対応する箇所の打ち抜きも行われる。これにより、セパレータ14の孔16~21が形成される。その後の型開きの際、素材27が図3及び図4の右側に向けて上述したピッチで送られる。
【0036】
続くプレス加工装置の型締め時、第2打ち抜き部33では、図4及び図6に示すようにパンチ42による素材27の形成領域30における第2部位46の打ち抜きが行われる。これにより、セパレータ14の凹部23が形成される。更に、このときには、パンチ43による上記形成領域30における基準穴24に対応する箇所の打ち抜き、及び、パンチ44による上記形成領域30における端子部26に対応する箇所の打ち抜きも行われる。これにより、セパレータ14の基準穴24及び端子部26が形成される。その後の型開きの際、素材27が図3及び図4の右側に向けて上述したピッチで送られる。
【0037】
続くプレス加工装置の型締め時、分断部34では、図4及び図6に示すようにパンチ47による素材27における隣合う形成領域30の間の打ち抜きが行われる。これにより、素材27からセパレータ14が分断される。こうして帯状の素材27から多数のセパレータ14が製造される。
【0038】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1-1)プレス加工装置の型締め時に第1打ち抜き部32のパンチ36が素材27における第1部位39の打ち抜きを行い、その後の型締め時に第2打ち抜き部33のパンチ42が素材27の第2部位46の打ち抜きを行う。詳しくは、プレス加工装置は、セパレータ14の製造を順送プレス加工によって行うものとされている。そして、そうした順送プレス加工の工程において、第1打ち抜き部32のパンチ36による素材27に対する第1部位39の打ち抜きを行った後、第2打ち抜き部33のパンチ42による素材27に対する第2部位46の打ち抜きを行う。
【0039】
素材27における第1部位39の打ち抜きの際、素材27には上記打ち抜きによるプレス歪み及びそれに伴う縮みが生じる。上記プレス加工装置によれば、素材27の上記縮みが生じた後、素材27における第2部位46の打ち抜きが行われる。このため、素材27における第2部位46の打ち抜きによってセパレータ14の凹部23が形成される際、素材27における第1部位39の打ち抜きに伴う上記縮みの影響が及ぶことはない。このように素材における第1部位39の打ち抜きに伴う上記縮みがセパレータ14における凹部23の形成に影響を及ぼすことはないため、セパレータ14における凹部23を形成する際の高い精度を維持することができる。
【0040】
(1-2)図4及び図5に示すように、第1部位39は、素材27におけるセパレータ14の外周面の短辺14bに対応する位置よりも、セパレータ14の長辺方向の外側に位置する。図4及び図6に示すように、第2部位46は、素材27におけるセパレータ14の外周面の上記短辺14bに対応する位置から内側に向けて凹むセパレータ14の凹部23に対応して位置する。セパレータ14の上記凹部23の開口部23aは、図6に示すようにR形状となってセパレータ14の上記外周面の短辺14bに繋がっている。このため、図5に示す素材27における第2部位46も、セパレータ14の上記凹部23に対応した形状となっている。
【0041】
第1打ち抜き部32のパンチ36が素材27の第1部位39を打ち抜いてセパレータ14における第1箇所である上記外周面の短辺14bを形成した後、第2打ち抜き部33のパンチ42が素材27の第2部位46を打ち抜く。第2打ち抜き部33のパンチ42は、素材27におけるセパレータ14の外周面に重なることのない形状であって、且つセパレータ14の凹部23に対応した形状とされている。このため、パンチ42は、素材27におけるセパレータ14の上記外周面の短辺14bに対応する位置、言い換えればセパレータ14の第1箇所である上記外周面の短辺14bに重なることなく、素材27の第2部位46を打ち抜く。これにより、セパレータ14における第2箇所である上記凹部23が形成される。
【0042】
従って、開口部23aにR形状を有する上記凹部23に対応した形状である第2部位46を第2打ち抜き部33のパンチ42によって打ち抜く際、素材27における第1打ち抜き部32のパンチ36で打ち抜かれた箇所、すなわちセパレータ14の第1箇所である上記外周面の短辺14bに対し第2打ち抜き部33のパンチ42が擦れることはない。このため、上記外周面の短辺14bに対しパンチ42が擦れることに伴い、バリ等が発生することを抑制できる。
【0043】
(1-3)図4及び図5に示すように、素材27の第1部位39は、短辺部40と突出部41とを有している。短辺部40は、素材27における形成領域30の長辺方向の外側に位置して短辺に対応する位置に沿って延びる。突出部41は、短辺部40の長手方向の両端部から隣合う形成領域30の間に向けて形成領域30の長辺との間に間隔をもって延びる。そして、第1打ち抜き部32は、図3に示すように、第1部位39の短辺部40及び突出部41を打ち抜くためのパンチ36及びダイ38を備えている。パンチ36は、第1部位39の短辺部40及び突出部41に対応した形状とされている。
【0044】
第1打ち抜き部32のパンチ36及びダイ38により、素材27に対する図5に示す第1部位39の短辺部40及び突出部41の打ち抜きが行われるとき、打ち抜かれたスクラップは第1部位39に対応した形状となる。このため、上記打ち抜きによって生じるスクラップがダイ38から外れることは、スクラップにおける上記突出部41に相当する箇所がダイ38に引っ掛かることによって抑制される。従って、素材27に対する第1部位39の打ち抜きの際、その打ち抜きによって生じるスクラップがダイ38から外れたときの対策を講じる必要がなくなる。
【0045】
(1-4)図5に示す第1部位39の突出部41は、素材27における形成領域30の長辺との間に間隔をもたされている。このため、第1打ち抜き部32のパンチ36によって素材27の第1部位39を打ち抜いたとき、形成領域30の長辺における上記突出部41に対応する位置では、素材27が上記長辺から外側にはみ出した状態となる。このため、セパレータ14の四隅がR形状であるとき、そのR形状に沿って第1打ち抜き部32のパンチ36による素材27の打ち抜きを行いつつ、素材27における形成領域30の長辺に沿っては上記打ち抜きが行われないようにすることができる。
【0046】
そして、パンチ36による第1部位39の打ち抜き後の素材27における形成領域30の長辺からはみ出した部分は、図6に示すように分断部34のパンチ47が素材27における隣合う形成領域30の間を形成領域30の長辺に沿って打ち抜く際、それと同時に打ち抜かれる。これにより、分断部34のパンチ47が素材27における隣合う形成領域30の間を打ち抜く際、素材27における形成領域30の長辺で、分断部34のパンチ47が素材27における打ち抜き済みの箇所を擦ることは抑制される。従って、分断部34のパンチ47が素材27における打ち抜き済みの箇所を擦ることにより、バリ等が発生することを抑制できる。
【0047】
(1-5)セパレータ14の第1箇所には、セパレータ14の外周面における短辺14bだけでなく、流体を流すための孔16~21も含まれる。このため、第1打ち抜き部32のパンチ36,37によって素材27が多く打ち抜かれるため、その打ち抜きの際のプレス歪みに伴う素材27の縮みが大きくなりやすい。
【0048】
また、セパレータ14の第2箇所には、凹部23だけでなく基準穴24及び端子部26が含まれる。このようにセパレータ14における第2箇所の数が多くなる場合、第1打ち抜き部32のパンチ36,37による素材27の打ち抜きと、第2打ち抜き部33のパンチ42~44による素材27の打ち抜きとが同時に行われると、次のようなことが生じる。すなわち、第2打ち抜き部33のパンチ42~44での素材27の打ち抜きによる第2箇所の形成に対し、上述した素材27の大きな縮みが影響を及ぼす。
【0049】
しかし、プレス加工装置では、図4及び図5に示す第1打ち抜き部32のパンチ36,37による素材27の打ち抜きが行われた後、図4及び図6に示す第2打ち抜き部33のパンチ42~44による素材27の打ち抜きが行われる。このため、第2箇所の形成に対し、上述した素材27の大きな縮みが影響を及ぼすことを抑制できる。
【0050】
(1-6)第2打ち抜き部33は、パンチ42で素材27の第2部位46を打ち抜くだけでなく、パンチ44で素材27の端子部26に対応する部位も打ち抜く。セパレータ14の外周面の長辺14cに対する端子部26の開口部26aは、R形状となって上記外周面の長辺14cに繋がっている。図4及び図6に示すように、素材27の上記端子部26に対応する部位を打ち抜くためのパンチ44は、素材27におけるセパレータ14の外周面の長辺14cに対応する位置と重なることのない形状とされている。このため、第2打ち抜き部33のパンチ44による素材27の打ち抜き後、分断部34のパンチ47によって素材27における隣合う形成領域30の間を打ち抜く際、素材27における第2打ち抜き部33のパンチ44で打ち抜かれた箇所が分断部34のパンチ47によって擦れることはない。このため、素材27における第2打ち抜き部33のパンチ44で打ち抜かれた箇所が分断部34のパンチ47によって擦れることに伴い、バリ等が発生することを抑制できる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、プレス加工装置及びプレス加工方法の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。
【0052】
この実施形態のプレス加工装置は、セパレータ14における凹部23及び端子部26を形成する構造、言い換えれば第1打ち抜き部32、第2打ち抜き部33、及び分断部34が第1実施形態と異なっている。
【0053】
上記第1打ち抜き部32のパンチ36は、次のような形状のものとされる。すなわち、上記パンチ36の形状は、図7に示すように素材27におけるセパレータ14の外周面の短辺14bに対応する位置に沿ったものとされるだけでなく、上記セパレータ14の図8に示す凹部23の開口部23aに対応する位置に沿ったものともされる。従って、この実施形態での素材27の第1部位39は、素材27における形成領域30の外側、すなわちセパレータ14の外周面に対応する位置よりも外側に位置するだけでなく、セパレータ14における凹部23の開口部23aにも対応して位置するものとなる。
【0054】
上記第2打ち抜き部33のパンチ42,44の形状は、それぞれ次のようなものとされる。すなわち、上記パンチ42は、図8に示すように、素材27におけるセパレータ14の外周面の短辺14b及び凹部23の開口部23aに対応する位置に重なることのない形状とされる。更に、上記パンチ42の形状は、素材27におけるセパレータ14の凹部23の開口部23aよりも内側部分に対応した形状ともされる。従って、この実施形態での素材27の第2部位46は、図7に示すように上記第1部位39と隣合い素材27におけるセパレータ14の外周面に対応する位置よりも内側であって凹部23の開口部23aと重ならないように開口部23aよりも内側部分に位置するものとなる。
【0055】
上記パンチ44は、図8に示すように素材27におけるセパレータ14の外周面の長辺14c及び端子部26の開口部26aに対応する位置に重なることのない形状とされる。更に、上記パンチ44は、素材27におけるセパレータ14の端子部26の開口部26aよりも内側部分に対応した形状ともされる。
【0056】
上記分断部34のパンチ47は、素材27における隣合う形成領域30の間を形成領域30の長辺に沿って打ち抜く際、次のようなことが実現できる形状とされる。すなわち、パンチ47の形状は、セパレータ14における端子部26の開口部26aよりも内側部分と重なることのない形状、且つ、上記端子部26における開口部26aに対応した形状とされる。
【0057】
次に、本実施形態のプレス加工装置の動作、及び、その動作に基づくプレス加工方法について説明する。
プレス加工装置の型締め時、第1打ち抜き部32では、図7に示すようにパンチ36による素材27の第1部位39の打ち抜き、及び、パンチ37による素材27の孔16~21に対応する箇所の打ち抜きが行われる。これにより、セパレータ14の外周面の短辺14bが形成されるとともに、セパレータ14の孔16~21が形成される。その後の型開きの際、素材27が図7の右側に向けて上述したピッチで送られる。
【0058】
続くプレス加工装置の型締め時、第2打ち抜き部33では、図8に示すパンチ42による素材27の形成領域30における第2部位46の打ち抜きが行われる。これにより、セパレータ14の凹部23が形成される。更に、このときには、パンチ43による上記形成領域30における基準穴24に対応する箇所の打ち抜き、及び、パンチ44による上記形成領域30における端子部26に対応する箇所の打ち抜きも行われる。そして、パンチ43による上記形成領域30における基準穴24に対応する箇所の打ち抜きにより、セパレータ14の基準穴24が形成される。その後の型開きの際、素材27が図8の右側に向けて上述したピッチで送られる。
【0059】
続くプレス加工装置の型締め時、分断部34では、図8に示すパンチ47による素材27における隣合う形成領域30の間の打ち抜きが行われる。その際、パンチ47は、セパレータ14の端子部26における開口部26aよりも内側部分と重ならないよう上記開口部26aに対応する部分も打ち抜く。こうしたパンチ47による素材27の上記打ち抜きにより、セパレータ14の端子部26が形成されるとともに、素材27からセパレータ14が分断される。このようにして帯状の素材27から多数のセパレータ14が製造される。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)、(1-3)、(1-4)、及び(1-5)に示す効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(2-1)図7に示すように、第1部位39は、素材27におけるセパレータ14の外周面の短辺14bに対応する位置よりも外側に位置するとともに、凹部23の開口部23aに対応して位置する。一方、第2部位46は、素材27におけるセパレータ14の凹部23の開口部23aよりも内側部分に対応して位置する。
【0061】
第1打ち抜き部32のパンチ36は、素材27の第1部位39を打ち抜くことにより、セパレータ14における第1箇所である上記外周面の短辺14b、及び、セパレータ14における凹部23の開口部23aを形成する。その後、図8に示す第2打ち抜き部33のパンチ42は、次のように素材27の第2部位46を打ち抜く。すなわち、パンチ42は、素材27におけるセパレータ14の上記凹部23の開口部23aに重なることなく、素材27の第2部位である上記凹部23における開口部23aよりも内側部分を打ち抜く。これにより、セパレータ14における第2箇所である上記凹部23が形成される。
【0062】
従って、第2部位46を第2打ち抜き部33のパンチ42によって打ち抜く際、素材27における第1打ち抜き部32のパンチ36で打ち抜かれた箇所、すなわちセパレータ14の上記外周面の短辺14b及び上記凹部23の開口部23aに対し、第2打ち抜き部33のパンチ42が擦れることはない。このため、上記外周面の短辺14b及び上記凹部23の開口部23aに対しパンチ42が擦れることに伴い、バリ等が発生することを抑制できる。
【0063】
(2-2)図8に示すように、第2打ち抜き部33は、パンチ42で第2部位46を打ち抜くだけでなく、パンチ44で端子部26における開口部26aよりも内側部分も打ち抜く。パンチ44は、素材27におけるセパレータ14の外周面の長辺14c及び端子部26の開口部26aに重なることのない形状とされている。そして、第2打ち抜き部33のパンチ44による素材27の打ち抜き後、分断部34のパンチ47によって素材27における隣合う形成領域30の間が形成領域30の長辺に沿って打ち抜かれるとともに、上記端子部26の開口部26aに対応する部分が上記端子部26における開口部26aよりも内側部分と重ならないよう打ち抜かれる。その結果、素材27における第2打ち抜き部33のパンチ44で打ち抜かれた箇所が分断部34のパンチ47によって擦れることはなくなる。従って、素材27における第2打ち抜き部33のパンチ44で打ち抜かれた箇所が分断部34のパンチ47によって擦れることに伴い、バリ等が発生することを抑制できる。
【0064】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・第1実施形態において、セパレータ14における凹部23の開口部23aは、必ずしもR形状となっている必要はない。例えば、開口部23aの内側面がセパレータ14の外周面の短辺14bに対し直交していてもよい。
【0066】
・第1実施形態において、セパレータ14における端子部26の開口部26aは、必ずしもR形状となっている必要はない。例えば、開口部26aの内側面がセパレータ14の外周面の長辺14cに対し直交していてもよい。
【0067】
・第1実施形態及び第2実施形態において、セパレータ14の四隅は必ずしもR形状となっている必要はない。
・第1実施形態及び第2実施形態において、第1部位39は必ずしも突出部41を有している必要はない。この場合、第1打ち抜き部32のパンチ36は、上記第1部位39に対応した形状とされる。
【0068】
・基準穴24に変えて凹部23のような凹部を形成し、その凹部に基準穴24の機能を持たせるようにしてもよい。
・第2打ち抜き部33のパンチ42~44による素材27の打ち抜きは、必ずしも同じ型締め時に行われる必要はない。例えば、パンチ42~44を複数の第2打ち抜き部33に振り分ける。更に、複数の上記第2打ち抜き部33については、素材27の送り方向において上記ピッチに対応する間隔をおいて隣に並ぶように配置する。この場合、型締め毎に素材27が上記ピッチで送られることに伴い、型締め毎にパンチ42~44が素材27における異なる形成領域30に対応する箇所を打ち抜く。
【0069】
・第1実施形態及び第2実施形態のプレス加工装置及びプレス加工方法として順送プレス加工を行うものを例示したが、トンランスファープレス加工やタンデムプレス加工といった順送プレス加工以外のプレス加工を行うプレス加工装置及びプレス加工方法に適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
11…燃料電池セル
14…セパレータ
14a…隅
14b…短辺
14c…長辺
16~21…孔
23…凹部
23a…開口部
24…基準穴
26…端子部
26a…開口部
27…素材
28…固定型
29…可動型
30…形成領域
31…形成部
32…第1打ち抜き部
33…第2打ち抜き部
34…分断部
35…形成面
36,37…パンチ
38…ダイ
39…第1部位
40…短辺部
41…突出部
42~44…パンチ
45…ダイ
46…第2部位
47…パンチ
48…ダイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8