(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008839
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】昇降装置及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/52 20060101AFI20250109BHJP
A47G 23/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65G47/52 C
A47G23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111390
(22)【出願日】2023-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 出荷日 令和5年6月12日 出荷した場所 株式会社石野製作所 開発センター (石川県白山市八束穂3丁目5番地)
(71)【出願人】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 智史
(72)【発明者】
【氏名】宇枝 孝浩
【テーマコード(参考)】
3B115
3F044
【Fターム(参考)】
3B115CB07
3F044AA01
3F044CA01
3F044CA06
3F044CD01
(57)【要約】
【課題】昇降装置から搬送路へ物品を横移動させる機構に要する設置スペースを可及的に抑制可能な昇降装置及び搬送システムを提供することを解決課題とする。
【解決手段】物品をベルトコンベアで移送する搬送路の始点部分に隣接配置される昇降装置であって、搬送路よりも高い位置から搬送路の高さへ物品を下げることが可能な昇降機構と、昇降装置の下部に設けられており、搬送路の高さに下げた物品を昇降装置から搬送路の方へ横方向に移送可能な移送機構と、昇降機構によって物品が下降する下降経路の途中に設けられており、昇降機構に載置されている物品が接触しながら摺動する傾斜面により物品を搬送路の方へ漸次押すスライダーと、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品をベルトコンベアで移送する搬送路の始点部分に隣接配置される昇降装置であって、
前記搬送路よりも高い位置から前記搬送路の高さへ物品を下げることが可能な昇降機構と、
前記昇降装置の下部に設けられており、前記搬送路の高さに下げた物品を前記昇降装置から前記搬送路の方へ横方向に移送可能な移送機構と、
前記昇降機構によって前記物品が下降する下降経路の途中に設けられており、前記昇降機構に載置されている前記物品が接触しながら摺動する傾斜面により前記物品を前記搬送路の方へ漸次押すスライダーと、を備える、
昇降装置。
【請求項2】
前記昇降機構において前記物品が載置される部位には、前記物品を支持する支持棒が前記昇降装置から前記搬送路の方へ向かう方向に沿って延在するように平行に複数本配置されており、
前記スライダーは、前記支持棒の長手方向に向かって前記物品を押す、
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記スライダーは、前記物品が前記昇降機構によって下降されると前記物品の少なくとも一部が前記搬送路に載る位置まで前記物品を押す、
請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
物品をベルトコンベアで移送する搬送路と、
前記搬送路の始点部分に隣接配置されており、前記搬送路よりも高い位置から前記搬送路の高さへ物品を下げることが可能な請求項1又は2に記載の昇降装置である始点側昇降装置と、
前記搬送路の終点部分において前記搬送路から延在するように隣接配置されており、前記搬送路の高さから前記搬送路よりも高い所定位置へ物品を上げることが可能な終点側昇降装置と、を備える、
搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は労働者の確保が社会的に困難となってきており、例えば、飲食店においても、使用済みの食器を客席から厨房へ搬送する搬送機器等の自動機が普及している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物品の搬送路を形成する場合に、周辺機器の設置状況等により、搬送路を比較的低い位置に設けざるを得ない場合がある。搬送路が比較的低い位置にある場合、搬送路に物品を乗せ降ろしするためには、作業者が物品を上げ下げする必要がある。そこで、搬送路の始点部分や終点部分に昇降装置を隣接配置することが考えられるが、搬送路と昇降装置との間で物品を自動的に横移動させるには、昇降装置の物品が乗る部分に物品を横移動で押し出す機構が必要となる。このため、昇降装置は、このような押し出し機構の設置スペースを確保するために、ある程度の設置スペースを要することになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、昇降装置から搬送路へ物品を横移動させる機構に要する設置スペースを可及的に抑制可能な昇降装置及び搬送システムを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、昇降機構によって物品が下降する下降経路の途中に設けられており、昇降機構に載置されている物品が接触しながら摺動する傾斜面により物品を搬送路の方へ漸次押すスライダーを設けることにした。
【0007】
詳細には、本発明は、物品をベルトコンベアで移送する搬送路の始点部分に隣接配置される昇降装置であって、搬送路よりも高い位置から搬送路の高さへ物品を下げることが可能な昇降機構と、昇降装置の下部に設けられており、搬送路の高さに下げた物品を昇降装置から搬送路の方へ横方向に移送可能な移送機構と、昇降機構によって物品が下降する下降経路の途中に設けられており、昇降機構に載置されている物品が接触しながら摺動する傾斜面により物品を搬送路の方へ漸次押すスライダーと、を備える。
【0008】
上記の昇降装置であれば、物品を昇降機構で下降させている途中で当該物品がスライダーの傾斜面に接触する。よって、昇降装置による下降を続けると、当該物品がスライダーの傾斜面によって搬送路の方へ漸次押される。このため、上記の昇降装置であれば、昇降機構に載置された物品を、昇降機構による下降の途中で搬送路の方へ近づけることが可能である。このため、スライダーが無い装置に比べて、昇降機構による下降完了後に昇降装置から搬送路へ物品を横移動させる機構に要する設置スペースを抑制することが可能となる。
【0009】
なお、昇降機構において物品が載置される部位には、物品を支持する支持棒が昇降装置
から搬送路の方へ向かう方向に沿って延在するように平行に複数本配置されており、スライダーは、支持棒の長手方向に向かって物品を押すものであってもよい。物品が載置される部分がこのような支持棒で形成されていれば、スライダーによって押された当該物品は、支持棒上をスムーズに移動することができる。
【0010】
また、スライダーは、物品が昇降機構によって下降されると物品の少なくとも一部が搬送路に載る位置まで物品を押すものであってもよい。これによれば、物品を昇降装置から搬送路へよりスムーズに移送することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、搬送システムあとして捉えることもできる。例えば、本発明は、物品をベルトコンベアで移送する搬送路と、搬送路の始点部分に隣接配置されており、搬送路よりも高い位置から搬送路の高さへ物品を下げることが可能な上記の昇降装置である始点側昇降装置と、搬送路の終点部分において搬送路から延在するように隣接配置されており、搬送路の高さから搬送路よりも高い所定位置へ物品を上げることが可能な終点側昇降装置と、を備える、搬送システムであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記の昇降装置及び搬送システムであれば、昇降装置から搬送路へ物品を横移動させる機構に要する設置スペースを可及的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る搬送システムの一例を上から見た図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る搬送システムを斜め上から見た図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る搬送システムの一例を横から見た図である。
【
図4】
図4は、物品の下降を司る昇降装置の内部構造を示した斜視図である。
【
図5】
図5は、物品の下降を司る昇降装置の内部構造の要部を示した図である。
【
図6】
図6は、昇降装置の下降動作を示した第1の図である。
【
図7】
図7は、昇降装置の下降動作を示した第2の図である。
【
図8】
図8は、昇降装置の下降動作を示した第3の図である。
【
図9】
図9は、物品の上昇を司る昇降装置の内部構造を示した斜視図である。
【
図10】
図10は、物品の上昇を司る昇降装置の内部構造の要部を示した図である。
【
図11】
図11は、昇降装置の上昇動作を示した第1の図である。
【
図12】
図12は、昇降装置の上昇動作を示した第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げ、天ぷら、パスタ、ピザといった各種の飲食物を提供する飲食店における物品の搬送に好適であるが、飲食店以外の施設における各種物品の搬送にも好適である。以下に示す実施形態では、飲食店に適用する場合について説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る搬送システム1の一例を上から見た図である。また、
図2は、実施形態に係る搬送システム1を斜め上から見た図である。また、
図3は、実施形態に係る搬送システム1の一例を横から見た図である。
【0016】
搬送システム1は、飲食店内において食器を搬送するシステムであり、例えば、
図1に示すように、飲食店内に設定された作業エリアA1、サービスエリアA2、作業エリアA3に跨るように配置される。作業エリアA1(本願でいう「第2のエリア」の一例である
)と作業エリアA3(本願でいう「第1のエリア」の一例である)は、飲食店に勤務するスタッフSが作業を行うエリアである。サービスエリアA2は、飲食店に来店した客Cが飲食等を行うエリアである。
図1では、サービスエリアA2に丸いテーブルTが設置されており、客CがテーブルTの周りに立っている様子が図示されているが、サービスエリアA2には、着座可能な椅子や矩形のテーブル等が配置されていてもよい。
【0017】
図1に示されるように、作業エリアA1とサービスエリアA2との間は壁W1によって仕切られている。また、サービスエリアA2と作業エリアA3との間は壁W2によって仕切られている。よって、
図1に示されるように、スタッフSが作業を行う作業エリアA1と作業エリアA3は、サービスエリアA2によって隔てられている。このため、搬送システム1は、サービスエリアA2によって隔てられている作業エリアA1と作業エリアA3との間において物品を搬送用ボックスBで受け渡しする目的で用いられる。搬送システム1が搬送用ボックスBで搬送する物品としては、例えば、食器、食材、その他各種の物品が挙げられる。
【0018】
なお、本実施形態では、物品を箱状の搬送用ボックスBで搬送する場合を例に説明するが、搬送システム1は、搬送用ボックスBの代わりに薄板状のトレイやその他各種形態の容器を使って物品を搬送するようにしてもよい。
【0019】
搬送システム1は、搬送路2,3,5,7、昇降装置4、昇降装置6を備える。搬送路2と搬送路3は、作業エリアA1から作業エリアA3へ搬送用ボックスBを搬送するための機器である。昇降装置4、搬送路5、昇降装置6、搬送路7は、作業エリアA3から作業エリアA1へ搬送用ボックスBを搬送するための機器である。
【0020】
搬送路2は、作業エリアA1内に設置されたコンベアによって形成される。また、搬送路3(本願でいう「上段搬送路」の一例である)は、作業エリアA1からサービスエリアA2を通って作業エリアA3へ至るように設置されたコンベアによって形成される。搬送路2には、作業エリアA1から作業エリアA3へ搬送する搬送用ボックスBが載せられる。作業エリアA1において搬送路2に載せられた搬送用ボックスBは、搬送路2から搬送路3へ載り移り、搬送路3の終点部分である作業エリアA3に到着する。搬送路2と搬送路3は、搬送用ボックスBが自重で移動するように傾斜角を設けた遊転式のローラコンベアで形成されているが、モータ等の動力源を有するローラコンベアやベルトコンベア等で形成されてもよい。
図2や
図3を見るとわかるように、搬送路2と搬送路3は、比較的高い位置に配置されており、スタッフSが手をやや上にして搬送用ボックスBを載せ下ろしするような形態となっている。
【0021】
昇降装置4と搬送路5と昇降装置6と搬送路7は、作業エリアA3から作業エリアA1へ搬送用ボックスBを搬送するために、次のように構成されている。すなわち、搬送路5は、作業エリアA3からサービスエリアA2を通って作業エリアA1へ至るように設置されたコンベアによって形成されている。このため、作業エリアA3から作業エリアA1への搬送用ボックスBの搬送は、主に搬送路5が担うことになる(よって、搬送路5は、本願でいう「下段搬送路」の一例となる)。搬送路5は、
図2や
図3に示されるように、搬送路3の直下に配置されている。このため、搬送路5は、搬送路3を形成するコンベアへの干渉を避けるために、飲食店の床面付近に配置されている。そして、このような低い位置へのスタッフSによる搬送用ボックスBの載せ下ろし作業を不要とするために、搬送路5の始点部分に昇降装置4が設置され、搬送路5の終点部分に昇降装置6が設置されている。また、昇降装置6には、床面付近から上昇させた搬送用ボックスBを移すための搬送路7が隣接するように延設されている。
【0022】
ところで、
図2に示されるように、昇降装置4は、搬送路5の進行方向に対し搬送路5
の側方に配置されている。このため、搬送用ボックスBが作業エリアA1から作業エリアA3へ自重で移動するように搬送路3が傾斜することにより、床面からの高さが始点側よりも低くなっている搬送路3の終点部分において、搬送路3を形成するコンベアが昇降装置4の搬送用ボックスB等に干渉しない。そして、昇降装置4に載置された搬送用ボックスBは、昇降装置4で床面付近へ下がった後、搬送路5の進行方向に対し側方に向かって移動させられることにより、昇降装置4から搬送路5へ移載される。
【0023】
一方、昇降装置6は、搬送路5の終点部分において搬送路5の進行方向の延長線上に隣接配置されている。しかし、搬送路3の始点部分は、床面からの高さが終点側よりも高くなっている。このため、搬送路3の始点部分の下側に位置する昇降装置6が、搬送路5から昇降装置6へ移載された搬送用ボックスBをスタッフSが起立状態で手に取って持ち上げることができる高さへ上昇させても、昇降装置6の搬送用ボックスBは、搬送路3を形成するコンベアに干渉しない。そして、昇降装置6によって上昇させられた搬送用ボックスBは、搬送路2にも干渉することなく、昇降装置6から搬送路7へ移載される。
【0024】
次に、昇降装置4の詳細について説明する。
図4は、物品の下降を司る昇降装置4の内部構造を示した斜視図である。また、
図5は、物品の下降を司る昇降装置4の内部構造の要部を示した図である。昇降装置4は、棒材や板金等によって形成される矩形の筐体41の内側に、搬送用ボックスBが載置される支持棒42を昇降させるための各種の機構類を内蔵した装置である。
【0025】
支持棒42は、平行に複数本配置されることで、搬送用ボックスBを支持する仮想の支持面を形成する。支持棒42は、支持部材43に固定されている。また、支持部材43は、垂直方向に延在するスライドレール45に対しスライド可能に係合されたスライドブロック44に固定されている。このため、支持部材43に固定された支持棒42は、スライドレール45が形成する軌道に沿って上下にスライドすることができる。
【0026】
支持棒42が固定されている支持部材43は、搬送用ボックスBの下面を左右両側から支持棒42で支持できるようにするために、中空の筐体41内において対向する2つの内壁面のそれぞれに対応するように配置されている。そして、対向する2つの内壁面に対応するように配置された一対の支持部材43が、ベルト係止部46によってベルト48に各々固定されている。ベルト48は、筐体41内の上部に配置されたプーリ47と、筐体41内の下部に配置されたプーリ49との間に架け渡されている。
【0027】
プーリ49は、駆動シャフト4Aを介してモータ4Bに連結されている。このため、モータ4Bが作動すると、駆動シャフト4Aを介して伝達される動力により、プーリ49が回転する。そして、プーリ49に架け渡されているベルト48が回り、支持部材43が上昇又は下降する。モータ4Bの作動により一対の支持部材43が上昇又は下降することで、支持棒42が形成する仮想の支持面において支持されている搬送用ボックスBを下降させることができる。
【0028】
昇降装置4の内壁面には、スライダー4Hが設けられている。スライダー4Hは、支持棒42に支持されて昇降装置4内を下降する搬送用ボックスBが接触すると、搬送用ボックスBを搬送路5の方へ徐々に押し出すようにするための傾斜面を有している。よって、スライダー4Hは、昇降装置4の上部から下部へ向かうに従って昇降装置4の内壁面から漸次突き出すような形状となっている。
【0029】
昇降装置4の下部には、支持部材43が下部に着床した状態で搬送用ボックスBを昇降装置4内から押し出すための押し子4Cが備わっている。押し子4Cは、プーリ4Fやプーリ4Eに架け渡されたベルト4Dに固定されている。また、プーリ4Eは、モータ4G
によって駆動されるようになっている。このため、モータ4Gが作動すると、プーリ4Eを介して伝達される動力によりベルト4Dが回り、押し子4Cが前進又は後退する。支持部材43が昇降装置4の下部に着床した状態においては、一対の支持部材43の間に、押し子4Cが前進したり後退したりするための隙間が形成される形態となる。よって、搬送用ボックスBを支持している支持部材43が昇降装置4の下部に着床した状態でモータ4Gを作動させると、支持部材43に支持されている搬送用ボックスBが押し子4Cによって昇降装置4から押し出されることになる。
【0030】
図6は、昇降装置4の下降動作を示した第1の図である。また、
図7は、昇降装置4の下降動作を示した第2の図である。また、
図8は、昇降装置4の下降動作を示した第3の図である。
図6(A)に示されるように、支持部材43が上部に着床した状態において昇降装置4の支持棒42に搬送用ボックスBが載置されると、昇降装置4は、搬送用ボックスBを下降させる。すなわち、昇降装置4は、支持棒42に搬送用ボックスBが載置されると、モータ4Bを作動させる。モータ4Bが作動すると、搬送用ボックスBを支持している支持棒42が下降する。昇降装置4の内壁面にはスライダー4Hが設けられているため、支持棒42に載置されている搬送用ボックスBは、
図6(B)に示されるように、下降途中でスライダー4Hに接触する。
【0031】
昇降装置4が下降動作を続けると、スライダー4Hに接触した搬送用ボックスBは、
図7(A)に示されるように、スライダー4Hに設けられている傾斜面に押されて徐々に搬送路5の方へ移動する。支持棒42は、搬送用ボックスBがスライダー4Hに押される方向に沿って延在する棒材であるため、スライダー4Hに押される搬送用ボックスBを比較的スムーズに滑らせることができる。したがって、搬送用ボックスBは、昇降装置4内の下降途中で、
図7(B)に示されるように、下降開始前よりも搬送路5の方へ近づいた状態となる。そして、昇降装置4は、支持棒42が下部に着床すると、モータ4Bを停止する。
【0032】
昇降装置4は、支持棒42が下部に着床した後、モータ4Gを作動させる。支持棒42が下部に着床すると、
図8(A)に示されるように、押し子4Cが支持棒42よりも高い箇所に位置する状態となっている。よって、モータ4Gの作動により押し子4Cが前進すると、
図8(B)に示されるように、支持棒42に支持されている搬送用ボックスBが押し子4Cによって押される。そして、搬送用ボックスBは、押し子4Cによって昇降装置4から押し出される。
【0033】
昇降装置4は、搬送用ボックスBを昇降装置4から押し出した後、モータ4Bやモータ4Gを逆動作させる。これにより、昇降装置4は、新たな搬送用ボックスBを上部で受け入れて下降させることが可能な状態となる。昇降装置4は、搬送用ボックスBをスライダー4Hにより搬送路5の方へ下降途中で移動させることができるため、昇降装置4の設置スペースを可及的に抑制することが可能である。また、昇降装置4は、搬送用ボックスBをスライダー4Hにより搬送路5の方へ下降途中で移動させることができるため、障害物が昇降装置4付近に配置されているような場合にも好適である。すなわち、昇降装置4は、搬送用ボックスBをスライダー4Hにより搬送路5の方へ下降途中で移動させることができるため、例えば、
図5に示すような障害物Gが昇降装置4付近に配置されている場合であっても、
図6(A)に示すように、搬送用ボックスBを昇降装置4の上部においてオフセットさせた位置で支持棒42に載置することが可能である。
【0034】
なお、
図8においては、下降完了直後の搬送用ボックスBが昇降装置4内に完全に収まっている様子が図示されていたが、昇降装置4はこのような形態に限定されるものではない。昇降装置4は、例えば、各部の寸法が
図8に示すものより小さくなっており、下降完了した搬送用ボックスBの一部が昇降装置4からはみ出すようになっていてもよい。これ
によれば、例えば、下降完了直後の搬送用ボックスBの一部が搬送路5に載った状態にすることもできる。下降完了直後の搬送用ボックスBの一部が搬送路5に載っていれば、昇降装置4から搬送路5への移送がより容易になる。
【0035】
次に、昇降装置6の詳細について説明する。
図9は、物品の上昇を司る昇降装置6の内部構造を示した斜視図である。また、
図10は、物品の上昇を司る昇降装置6の内部構造の要部を示した図である。昇降装置6は、棒材や板金等によって形成される矩形の筐体61の内側に、搬送用ボックスBが載置される支持ローラ62を昇降させるための各種の機構類を内蔵した装置である。
【0036】
支持ローラ62は、遊転式のローラであり、平行に複数本配置されることで、搬送用ボックスBを載置するためのローラコンベア状の支持面を形成する。各支持ローラ62は、支持部材63に取り付けられている。また、支持部材63は、垂直方向に延在するスライドレール65に対しスライド可能に係合されたスライドブロック64に固定されている。このため、支持部材63に取り付けられている支持ローラ62は、スライドレール65が形成する軌道に沿って上下にスライドすることができる。
【0037】
支持ローラ62が取り付けられている支持部材63は、搬送用ボックスBの下面を支持ローラ62でバランスよく支持できるようにするために、中空の筐体61内において対向する2つの内壁面のそれぞれに対応するように配置されている。そして、対向する2つの内壁面に対応するように配置された一対の支持部材63が、ベルト係止部66によってベルト67に固定されている。ベルト67は、筐体61内の上部に配置されたプーリ68と、筐体61内の下部に配置されたプーリ69との間に架け渡されている。
【0038】
プーリ69は、駆動シャフト6Aを介してモータ6Bに連結されている。このため、モータ6Bが作動すると、駆動シャフト6Aを介して伝達される動力により、プーリ69が回転する。そして、プーリ69に架け渡されているベルト67が回り、支持部材63が上昇又は下降する。モータ6Bの作動により一対の支持部材63が上昇又は下降することにより、支持ローラ62が形成するローラコンベア状の仮想の支持面において支持されている搬送用ボックスBを上昇させることができる。
【0039】
昇降装置6の上部には、支持部材63が上部に着床した状態において搬送用ボックスBを昇降装置6内から押し出すための押し棒6Cが備わっている。押し棒6Cは、昇降装置6の上部に配置されたプーリ6Dや、昇降装置6の下部に配置されたプーリ6Fに架け渡されたベルト6Eに一端が固定されている。また、押し棒6Cは、昇降装置6の上部に配置されたプーリ6Iに架け渡されたベルト6Jに他端が固定されている。支持ローラ62が取り付けられている一対の支持部材63が、昇降装置6内において昇降装置6の左右両側に位置する各内壁面に対応するように配置されているのに対し、ベルト6Eとベルト6Jは、昇降装置6内において昇降装置6の前後両側に位置する各内壁面に対応するように配置されている。また、ベルト6Eが昇降装置6の上部と下部との間に引き回されているのに対し、ベルト6Jは、昇降装置6の上部において引き回されるのみである。ベルト6Jは、プーリ6Dから駆動シャフトを介して回転動力が伝達されるプーリ6Iにより回されるようになっている。よって、モータ6Bが作動してベルト6Eとベルト6Jが回ると、ベルト6Eとベルト6Jに固定されている押し棒6Cが支持ローラ62上を昇降装置6の左右方向へ移動する。このため、昇降装置6は、支持部材63が下部に着床した状態において昇降装置6の正面側から昇降装置6内に受け入れた搬送用ボックスBを、支持部材63が上部に着床した状態において昇降装置6の正面方向に対し側方へ押し出すことができる。
【0040】
図11は、昇降装置6の上昇動作を示した第1の図である。また、
図12は、昇降装置
6の上昇動作を示した第2の図である。
図11(A)に示されるように、支持部材63が下部に着床した状態において昇降装置6の支持ローラ62に搬送用ボックスBが載置されると、昇降装置6は、搬送用ボックスBを上昇させる。すなわち、昇降装置6は、支持ローラ62に搬送用ボックスBが載置されると、モータ6Bを作動させる。モータ6Bが作動すると、
図11(B)に示されるように、搬送用ボックスBを支持している支持部材63が上昇する。そして、昇降装置6は、支持部材63が上部に着床すると、モータ6Bを停止する。
【0041】
昇降装置6は、支持部材63が下部に着床した後、モータ6Gを作動させる。支持部材63が上部に着床すると、
図12(A)に示されるように、押し棒6Cが支持ローラ62よりもやや高い箇所に位置する状態となっている。よって、モータ6Gの作動により押し棒6Cが横移動すると、
図12(B)に示されるように、支持ローラ62に支持されている搬送用ボックスBが押し棒6Cによって押される。そして、搬送用ボックスBは、押し棒6Cによって昇降装置6から押し出される。
【0042】
昇降装置6は、搬送用ボックスBを昇降装置6から押し出した後、モータ6Bやモータ6Gを逆動作させる。これにより、昇降装置6は、新たな搬送用ボックスBを下部で受け入れて上昇させることが可能な状態となる。
【0043】
搬送システム1は、上記のように構成されているため、次のような動作を実現することができる。すなわち、搬送システム1は、
図2において矢印で示したように、搬送路2に載置された搬送用ボックスBを搬送路3で作業エリアA1から作業エリアA3へ移送することができる。また、搬送システム1は、昇降装置4、搬送路5を構成するコンベアのモータ、昇降装置6等を適宜作動させることにより、
図2において矢印で示したように、昇降装置4に載置された搬送用ボックスBを搬送路5で作業エリアA3から作業エリアA1へ移送し、昇降装置6で搬送路5から搬送路7へ載せ替えることができる。
【0044】
より詳細には、スタッフSによって搬送用ボックスBが搬送路2に載置されると、搬送路2に設けられている傾斜角により、搬送用ボックスBが自重で搬送路2から搬送路3の方へ移動する。そして、搬送路2から搬送路3へ載り移った搬送用ボックスBは、搬送路3に設けられている傾斜角により、自重で搬送路3の始点部分から終点部分へ移動する。これにより、作業エリアA1から作業エリアA3への搬送用ボックスBの移送が完了する。
【0045】
また、スタッフSによって搬送用ボックスBが昇降装置4の支持棒42に載置されると、昇降装置4は、モータ4Bを作動させて搬送用ボックスBを下降させる。そして、昇降装置4は、搬送用ボックスBを下降させた後にモータ4Gを作動させ、昇降装置4から搬送用ボックスBを押し出す。昇降装置4から押し出された搬送用ボックスBは、昇降装置4から搬送路5へ載り移る。搬送路5を構成するコンベアは、昇降装置4から載り移った搬送用ボックスBを昇降装置6へ移送する。搬送路5が移送する搬送用ボックスBが昇降装置6の支持ローラ62に載り移ると、昇降装置6は、モータ6Bを作動させて搬送用ボックスBを上昇させる。そして、昇降装置6は、搬送用ボックスBを上昇させた後にモータ6Gを作動させ、昇降装置6から搬送用ボックスBを押し出す。昇降装置6から押し出された搬送用ボックスBは、昇降装置6から搬送路7へ載り移る。これにより、作業エリアA3から作業エリアA1への搬送用ボックスBの移送が完了する。
【0046】
搬送システム1は、上記のとおり、作業エリアA1と作業エリアA3との間に往路と復路を別々に有している。このため、搬送システム1は、作業エリアA1と作業エリアA3との間で物品を効率よく行き来させることができる。また、搬送システム1は、往路と復路を上下2段の階層構造で設けているため、スペースの限られる施設においても占有スペ
ースを可及的に抑制することが可能である。また、搬送システム1は、昇降装置4と昇降装置6を備えているため、階層構造の往路と復路を有しているにも関わらず、スタッフSによる物品の上げ下げの作業量が可及的に抑制される。このため、搬送システム1であれば、占有スペースを可及的に抑制しつつ物品の取り扱いも容易である。
【0047】
また、搬送システム1では、搬送路5の始点部分に隣接配置される昇降装置4に、搬送用ボックスBを昇降装置4から押し出すための押し子4Cが備わっているが、この押し子4Cを動作させる機構は、搬送用ボックスBを支持しながら昇降する支持部材43や支持棒42に設けられていない。このため、押し子4Cを動作させる機構を支持部材43や支持棒42に設ける場合に比べて、昇降装置4が機構的に簡略である。よって、搬送システム1は、昇降装置4から搬送路5へ物品を横移動させる機構を比較的容易に実現可能であるといえる。
【0048】
また、搬送システム1では、搬送路5の終点部分に隣接配置される昇降装置6に、搬送用ボックスBを昇降装置6から押し出すための押し棒6Cが備わっているが、この押し棒6Cを動作させる機構は、搬送用ボックスBを支持しながら昇降する支持部材63や支持ローラ62に設けられていない。このため、押し棒6Cを動作させる機構を支持部材63や支持ローラ62に設ける場合に比べて、昇降装置6が機構的に簡略である。よって、搬送システム1は、昇降装置6から搬送路7へ物品を横移動させる機構を比較的容易に実現可能であるといえる。
【0049】
なお、搬送システム1は、上記の形態に限定されるものではない。搬送システム1は、適宜変形可能である。
【0050】
上記実施形態では、搬送路3や搬送路5が直線状の搬送路を形成する場合を例に説明したが、搬送システム1は、例えば、コンベアを複数組み合わさることにより、搬送路3や搬送路5の途中にコーナーを有する形態であってもよいし、或いは、搬送路3や搬送路5の途中にカーブを有する形態であってもよい。
【0051】
また、昇降装置4は、搬送路5の長手方向の延長線上に位置していてもよいし、或いは、搬送路5の進行方向に対し右側ではなく左側に位置していてもよい。
【0052】
また、昇降装置6は、搬送路5の進行方向に対し右側へ向かって延在する搬送路7へ搬送用ボックスBを移載する形態でもよいし、或いは、搬送路5の進行方向に対し左側へ向かって延在する搬送路7へ搬送用ボックスBを移載する形態でもよい。
【0053】
また、搬送システム1は、更なる変更を加えてもよい。搬送システム1は、例えば、昇降装置4や昇降装置6の昇降機構や押し出し機構をベルトの代わりにボールスクリュー等で実現してもよい。
【符号の説明】
【0054】
S・・スタッフ
C・・客
T・・テーブル
B・・搬送用ボックス
G・・障害物
1・・搬送システム
2・・搬送路
3・・搬送路
4・・昇降装置
5・・搬送路
6・・昇降装置
7・・搬送路
A1・・作業エリア
A2・・サービスエリア
A3・・作業エリア
4H・・スライダー