(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088394
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】電磁波吸収体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20250604BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203073
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 佑太
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 昌也
【テーマコード(参考)】
5E321
5J020
【Fターム(参考)】
5E321AA23
5E321AA44
5E321BB21
5E321BB25
5E321BB32
5E321BB41
5E321BB44
5E321BB51
5E321BB53
5E321BB60
5E321CC16
5E321CC30
5E321GG12
5E321GH10
5J020EA02
5J020EA03
5J020EA04
5J020EA05
5J020EA07
(57)【要約】
【課題】電磁波吸収体の再付着性の向上に有利な技術を提供する。
【解決手段】抵抗層と誘電体層とが積層された電磁波吸収体であって、前記電磁波吸収体は、対象物に対して着脱自在であり、前記誘電体層が、前記対象物に付着するための付着力を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗層と誘電体層とが積層された電磁波吸収体であって、
前記電磁波吸収体は、対象物に対して着脱自在であり、
前記誘電体層が、前記対象物に付着するための付着力を有することを特徴とする電磁波吸収体。
【請求項2】
前記誘電体層が付着した前記対象物を反射層として機能させることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記誘電体層は、誘電体材料と磁力を帯びた磁性体材料とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記誘電体層は、前記磁性体材料として磁性体粉末が前記誘電体材料に添加されたマグネットシートであることを特徴とする請求項3に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記抵抗層は、導電体パターンを備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数の電磁波を吸収する電磁波吸収体が知られている。特許文献1には、電磁波吸収層とスペーサ層と反射層とを積層した電磁波吸収体が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エーミング検査などにおいて一時的に電磁波吸収体を使用する際に、粘着剤などを用いて電磁波吸収体を対象物に貼付し、使用後に電磁波吸収体を剥離する場合がある。電磁波吸収体を再び使用する際に、以前の電磁波吸収体の使用に伴う粘着剤の劣化など、電磁波吸収体の再付着性が乏しい可能性がある
本発明は、電磁波吸収体の再付着性の向上に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る電磁波吸収体は、抵抗層と誘電体層とが積層された電磁波吸収体であって、前記電磁波吸収体は、対象物に対して着脱自在であり、前記誘電体層が、前記対象物に付着するための付着力を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電磁波吸収体の再付着性の向上に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の電磁波吸収体の構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1~
図3を参照して、本開示の実施形態による電磁波吸収体について説明する。以下、本明細書において「導電体パターン」とは、幾何学的な図形である単位の集合体であり、ある周波数の電磁波を選択的に透過する物体を意味する。「導電体パターン」はいわゆるアンテナと同様の機能を有するともいえる。本明細書において「ミリ波領域の電磁波」とは、波長が1mm~10mmの電磁波を意味する。「ミリ波領域の電磁波」とは、周波数が30GHz~300GHzである電磁波ともいえる。本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0010】
図1(a)は、本実施形態の電磁波吸収体100の構成例を示す断面図である。電磁波吸収体100は、抵抗層101と誘電体層102とが積層されている。電磁波吸収体100は、抵抗層101および誘電体層102の2層のみで構成されうる。以下で詳細を説明するが、電磁波吸収体100は、
図2に示されるように、貼付する対象物200に対して着脱自在に構成される。具体的には、電磁波吸収体100のうち誘電体層102が、対象物200に付着するための付着力を有している。
【0011】
ここで、まず、比較例の電磁波吸収体150について説明し、次いで、本実施形態の電磁波吸収体100の構成および効果について説明する。
図1(b)は、比較例の電磁波吸収体150の構成例を示す断面図である。比較例の電磁波吸収体150において、抵抗層101、誘電体層152、反射層153、粘着層154および剥離フィルム155が、この順番に積層されている。
【0012】
抵抗層101は、例えば、単層であってもよく、また、例えば、基材112と基材112上に形成された導電体パターン111とを含んでいてもよい。抵抗層101は、周波数選択表面(FSS)を備えていてもよい。FSSとは、導電性部材などで波長以下の形状の連続構造を形成することによって、特定の周波数の電磁波のみを遮断または透過することができる面のことである。
【0013】
抵抗層101に配される導電体パターン111は、基材112上に、例えば、金属の細線、導電性薄膜、導電性ペーストの定着物などによって形成される。金属として、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金またはこれらの金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステンなど)が挙げられる。
【0014】
導電性薄膜として、金属粒子、カーボンナノ粒子、カーボンファイバーなどが挙げられる。なお、導電体パターン111は、抵抗層101の透過特性を調整するために、複数の材料を使用して形成されてもよい。
【0015】
基材112は、平板状の部材であり、厚みは、例えば、5μm~500μmでもよい。基材112の材料は、電磁波吸収体100の用途に応じて適宜選択できる。
【0016】
例えば、基材112は、樹脂で構成できる。樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。電磁波吸収体100の三次元成形性などを考慮する場合、基材112は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル-ポリエーテル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0017】
基材112は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意成分を含んでもよい。任意成分の例として、例えば、無機充填材、着色剤、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤などが挙げられる。
【0018】
誘電体層152は、抵抗層101と反射層153との間に配される。誘電体層152は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。誘電体層152に用いられる材料は、用途に応じて適宜選択可能であり、プラスチックフィルム、紙、布、不織布、ゴムシート、発泡シートなどが挙げられる。これらの中でも、厚みを増加させつつ、軽量化を図ることが容易な観点から、誘電体層152に発泡シートが用いられてもよい。発泡シートとして、例えば、上述のプラスチックフィルムを構成する樹脂を発泡させ、シート状に形成した発泡シートを用いることができる。発泡シートの具体例としては、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォームなどが挙げられる。
【0019】
また、誘電体層152に、金属フィラーを混錬したプラスチックフィルムが用いられてもよい。プラスチックフィルムとして、熱可塑性樹脂が用いられても熱硬化性樹脂が用いられてもよいが、上述した基材112と同様の熱可塑性樹脂が用いられてもよい。また、金属フィラーとして、誘電率が高い、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン差カルシウム、酸化チタンなどが用いられてもよい。
【0020】
誘電体層152による波長短縮効果を考慮する場合、誘電体層152の厚みは、吸収対象になる電磁波の波長および誘電体層152の比誘電率に合わせて適宜変更される。誘電体層152による波長短縮効果を考慮する場合、誘電体層152の厚みは、以下の式(1)を満たしていてもよい。
(誘電体層152の厚み)=(λ)×(1/4)/(ε)1/2・・・(1)
ここで、λは、誘電体層152に入射する電磁波の波長であり、εは、誘電体層152の比誘電率である。誘電体層152の厚みは、電磁波吸収体100の吸収特性を調整するために適宜調整されてもよい。例えば、誘電体層152の厚みは、式(1)で得られる厚みの、0.1倍から3.0倍の範囲で変更することができる。
【0021】
誘電体層152の厚みと波長λとの関係が式(1)の関係を満たす場合、電磁波吸収体100は、所謂、λ/4構造となる。この場合に、誘電体層152を通過して反射層153で反射する電磁波と、抵抗層101で反射する電磁波との位相が反転、すなわち、位相差が180度になる。それによって、電磁波吸収体100から反射される電磁波の強度を小さくすることができる。
【0022】
反射層153は、電磁波吸収体150の表面に飛来し、誘電体層152を透過した電磁波を反射する。電磁波吸収体150に飛来する電磁波のうち、一部は抵抗層101で反射されるか、抵抗層101に吸収される。一方で、抵抗層101で反射も吸収もされなかった電磁波は、抵抗層101を透過する。抵抗層101を透過した電磁波は、反射層153で抵抗層101に向けて反射される。
【0023】
例えば、反射層153は、誘電体層152および粘着層154にそれぞれ向かい合う2つの面の何れかの面方向において、導電性を具備する形態であれば、抵抗層101を透過した電磁波を反射できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムにアルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、銅板などの金属板を貼り合わせたものを反射層153として使用することができる。金属箔や金属板の代わりに、ITOなどの透明導電膜、金属ワイヤーなどで形成されたメッシュシートが使用されてもよい。
【0024】
比較例の電磁波吸収体150において、電磁波吸収体150を種々の対象物に貼付するために、反射層153の誘電体層152に接する面とは反対側の面に、粘着層154が配される。粘着層154には、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤などが挙げられる。粘着層154の反射層153に接する面とは反対側の面に、剥離フィルム155が配されうる。剥離フィルム155は、電磁波吸収体150の使用時には除去される。剥離フィルム155が粘着層154を覆うことによって、流通時の取扱性が向上する。
【0025】
ところで、エーミング検査などにおいて一時的に電磁波吸収体を使用する場合がある。比較例の電磁波吸収体150は、粘着層154を介して対象物に貼付されるため、予めパーテーションなどに電磁波吸収体150を貼り付けておき使用することが考えられる。その場合、電磁波吸収体150を使用しない場合にパーテーションを収納するスペースが必要になる。また、例えば、電磁波吸収体150を使用時に対象物に貼り付け、不使用時は、電磁波吸収体150を対象物から剥離することが考えられる。その場合、粘着層154の劣化や、対象物に粘着層154の一部が残ってしまい、対象物を汚染するなどの問題が生じうる。つまり、比較例の電磁波吸収体150は、再付着性に乏しい可能性がある。
【0026】
さらに、抵抗層101の基材112および反射層153には、上述したようにポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムが用いられる。これらの樹脂フィルムとして、薄膜フィルムが用いられるものの、誘電体層152の両面に対して樹脂フィルムが貼付されているため、電磁波吸収体150は屈曲性に乏しく、誘電体層152として高誘電率かつ薄膜の誘電体を用いない限り、電磁波吸収体150を曲げることは難しく、曲げた場合に、折り目が付いてしまう可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態の電磁波吸収体100は、
図1(a)に示されるように、抵抗層101および誘電体層102の2層から構成され、さらに、誘電体層102は、対象物に付着するための付着力を有している。具体的には、本実施形態の電磁波吸収体100に配される誘電体層102は、誘電体材料と磁力を帯びた磁性体材料とを含み構成される。例えば、誘電体層102は、磁性体材料として磁性体粉末が誘電体材料に添加され着磁されたマグネットシートである。それによって、
図2に示されるように、貼付できる対象物200は主に鉄製などの部材には限られるものの、粘着層が不要なため再付着性に優れる電磁波吸収体100が実現する。
【0028】
さらに、マグネットシートなどが吸着可能な対象物200の多くは、鉄などの強磁性体を含み、導電性を具備しうる。そのため、本実施形態の電磁波吸収体100は、誘電体層102が付着した対象物200を反射層として機能させることが可能である。つまり、本実施形態の電磁波吸収体100は、粘着層に加えて反射層を備える必要がない。そのため、貼付対象である電波反射物(対象物200)そのものを反射層にすることで、電磁波吸収体150とは異なり誘電体層102の一方の面が固定されない。結果として、電磁波吸収体100は、屈曲性に優れる構成になっている。
【0029】
電磁波吸収体100は、電磁波吸収体150よりも構成がシンプルである。そのため、例えば、電磁波吸収体100を製造する際の製造工程の短縮が可能になる。また、上述したように、電磁波吸収体100は、屈曲性が高く、加工性に優れる。例えば、電磁波吸収体150において巻き取り加工を行うと、屈曲性に乏しくシートが折れてしまう可能性がある。一方、本実施形態の電磁波吸収体100では、ロールtoロールなどの巻き取り加工が可能になり、生産性が向上しうる。
【0030】
誘電体層102に用いる誘電体材料として、ニトリルゴムやアクリルゴムなどの各種のゴム材料や、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、誘電体層102に用いる磁性体材料として、異方性または等方性のバリウムフェライトやストロンチウムフェライトなどの各種の磁性体が挙げられる。
【0031】
誘電体層102における磁性体材料の体積比率は、20%以上であってもよい。誘電体層102に含まれる磁性体材料の比率が少なくなると、対象物200に付着(吸着)することが難しくなり、使用が難しくなる可能性がある。例えば、誘電体層102における磁性体材料の体積比率は、30%以上であってもよい。一方、誘電体層102に含まれる磁性体材料の比率が大きくなると、誘電体層102を形成する際の加工性が低下し、例えば、曲がった際に折れてしまう可能性がある。そのため、誘電体層102における磁性体材料の体積比率は、60%以下であってもよい。さらに、より屈曲性を担保するために、誘電体層102における磁性体材料の体積比率は、50%以下であってもよい。
【0032】
磁性体材料として用いる磁性体粉末は、粒子径が1μm程度以上であってもよい。磁性体粉末を誘電体材料に混ぜる際に、粒子径が小さくなると磁性体粉末が凝集してしまう可能性がある。一方、磁性体材料として用いる磁性体粉末は、粒子径が100μm以下であってもよい。誘電体層102の厚みは、上述の式(1)などを用いて、吸収対象になる電磁波の波長に応じて、適宜設定可能であるが、例えば、200μm~5000μmでもよく、300μm~4000μmでもよく、1000μm~3000μmでもよい。誘電体層102に適当に誘電体材料の粒子が添加されるように、粒子径が選択される。また、誘電体層102の厚みが25μm~200μmのように薄い場合、例えば、誘電体粉末の粒子径は、誘電体層102の厚みの半分以下であってもよい。
【0033】
図3は、
図1(a)に示される電磁波吸収体100の変形例を示す斜視図である。
図1(a)に示される構成では、例えば、基材112の上に導電体パターン111が形成され、導電体パターン111が形成された基材112と誘電体層102とを粘着層などで貼付することによって電磁波吸収体100が作製されうる。一方で、
図3に示される構成では、抵抗層101の導電体パターン111が、誘電体層102上に直接、形成されていてもよい。抵抗層101(導電体パターン111)の上に、薄い保護層が配されていてもよい。保護層には、例えば、基材112の材料として上述した各種の材料を用いることができる。その場合に、保護層は、電磁波吸収体100の製造工程において、基材112のように導電体パターン111を支持する(ハンドリングする)必要がないため、薄くすることができる。例えば、保護層は、フッ素樹脂などをスプレーコーティングすることによって形成することができる。抵抗層101に上述したように平滑な表面を備えうる基材112が配される場合とは異なり、
図3に示される構成では、抵抗層101の表面は、導電体パターン111の形状に応じた凹凸を備えうる。
【0034】
また、
図3に示される構成では、抵抗層101として基材112を配する必要がない。したがって、さらに、屈曲性が高く、加工性に優れる電磁波吸収体100が実現する。
【0035】
上述の実施形態では、誘電体層102が誘電体材料と磁力を帯びた磁性体材料とを含むことによって、対象物200に対して着脱自在な電磁波吸収体100を説明した。しかしながら、電磁波吸収体100の構成は、上述のような構成に限られることはない。上述の電磁波吸収体100では、対象物200を反射層として使用することを説明した。しかしながら、例えば、誘電体層102の抵抗層101が配される面とは反対側の面に、アルミニウムなどの金属(箔または膜)が配されていてもよい。誘電体層102として使用されるマグネットシートの対象物200に付着(吸着)するための磁力が阻害されない範囲で、誘電体層102の抵抗層101が配される面とは反対側の面に、スパッタ法などを用いて金属膜が配される。薄膜状の金属膜が電磁波吸収体100の屈曲性に与える影響は小さい。また、金属膜が配されることによって、金属膜が反射層として機能しうる。つまり、電磁波吸収体100の機能性も向上する。
【0036】
また、誘電体層102の構成は、上述のようなマグネットシートに限られるものではない。誘電体層102が、対象物200に対して付着するための付着力を有していればよい。例えば、誘電体層102としてアクリル樹脂やシリコーン樹脂などが用いられ、対象物200に対して貼付、および、剥離が繰り返されてもよい。それによって、上述の電磁波吸収体100と同様の効果が得られる。誘電体層102としてアクリル樹脂やシリコーン樹脂などが用いられる場合、出荷時などに流通時の取扱性を向上させるために、剥離フィルムが誘電体層102の表面を覆っていてもよい。剥離フィルムは、電磁波吸収体100の使用時には除去される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の電磁波吸収体100は、対象物200に対して脱着自在に構成されている。また、電磁波吸収体100の脱着に際して、対象物200の表面が荒れる可能性や、塵や埃などの付着による付着力の低下の可能性は低い。そのため、電磁波吸収体100の再付着性が、飛躍的に向上しうる。さらに、本実施形態の電磁波吸収体100は、上述したように、高い屈曲性を備えうる。そのため、エーミング検査などにおいて一時的に電磁波吸収体100を使用した後に、例えば、電磁波吸収体100を小さく丸めて収納しておくことができる。比較例の電磁波吸収体150などのように、パーテーションなどに貼り付け、使用するたびにパーテーションの出し入れを行う場合と比較して、収納スペースなどを考量する必要性が格段に小さくなり、ユーザにとって使い勝手がよい電磁波吸収体100を実現することができる。このように、本実施形態の電磁波吸収体100は、電磁波吸収体100の最付着性が向上するだけでなく、ユーザにとっても使い勝手のよい電磁波吸収体100を実現する。
【0038】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
100:電磁波吸収体、101:抵抗層、102:誘電体層、200:対象物