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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008842
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111399
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】岩出 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】栗田 昌直
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC02
3H067CC32
3H067CC33
3H067CC34
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067EA14
3H067EA24
3H067EA33
3H067EA34
3H067EA38
3H067EA39
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】製造コストをアップさせることなくシール手段のシール性を確保すること。
【解決手段】流路切替装置は、ステータ11,50と、ステータに対し相対的に駆動する弁体40と、ステータ及び弁体は、それぞれ連通路20,30,60,70を含むことと、ステータと弁体との間に設けられ、弁体の駆動に伴いステータ又は弁体に対し摺動する環状のシール手段81とを備え、弁体を駆動することで弁体の連通路60とステータの連通路20,30,70とを選択的に接続することにより一連の流路を切り替えて形成するように構成される。シール手段は、弁体又はステータに形成された環状の溝91の内側に配置され、シール手段の径方向における少なくとも二つの方向上で、シール手段の外周部が対向する溝の外周壁91bに当接、及びシール手段の内周部が対向する溝の内周壁91aに当接する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのステータと、
前記ステータに対して相対的に駆動する弁体と、
前記ステータ及び前記弁体は、それぞれ少なくとも一つの連通路を含むことと、
前記ステータと前記弁体との間に設けられ、前記弁体の駆動に伴い前記ステータ又は前記弁体に対し摺動する環状のシール手段と
を備え、
前記弁体を駆動することで前記弁体の前記連通路と前記ステータの前記連通路とを選択的に接続することにより一連の流路を切り替えて形成するように構成した流路切替装置において、
前記シール手段は、前記弁体又は前記ステータに形成された環状の溝の内側に配置され、前記シール手段の径方向における少なくとも二つの方向上で、前記シール手段の外周部が対向する前記溝の外周壁に当接、及び前記シール手段の内周部が対向する前記溝の内周壁に当接する
ことを特徴とする流路切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流路切替装置において、
前記弁体は、回転駆動するように構成され、
前記溝は、前記弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲したトラック形状をなし、前記弁体の径方向と交差する径方向外側に位置する外側溝部と、径方向内側に位置する内側溝部と、前記外側溝部と前記内側溝部の一方の端をつなぐ第1連結溝部と、前記外側溝部と前記内側溝部の他方の端をつなぐ第2連結溝部とを含み、
前記シール手段は、前記外側溝部の前記内周壁と、前記内側溝部の前記外周壁の一部とに当接する
ことを特徴とする流路切替装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流路切替装置において、
前記弁体は、回転駆動するように構成され、
前記溝は、前記弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲したトラック形状をなし、前記弁体の径方向と交差する径方向外側に位置する外側溝部と、径方向内側に位置する内側溝部と、前記外側溝部と前記内側溝部の一方の端をつなぐ第1連結溝部と、前記外側溝部と前記内側溝部の他方の端をつなぐ第2連結溝部とを含み、
前記シール手段は、前記外側溝部の前記外周壁と、前記内側溝部の前記外周壁の一部とに当接する
ことを特徴とする流路切替装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流路切替装置において、
前記溝は、略円形をなし、半円状の半円溝部と、略楕円状の半楕円溝部とからなり、
前記シール手段の外周部は、前記半円溝部の前記外周壁に倣うように当接し、前記半楕円溝部の前記外周壁とは離間する
ことを特徴とする流路切替装置。
【請求項5】
請求項1に記載の流路切替装置において、
前記溝は、略円形をなし、半円状の半円溝部と、略楕円状の半楕円溝部とからなり、
前記シール手段の内周部は、前記半円溝部の前記内周壁に倣うように当接し、前記半楕円溝部の前記内周壁とは離間する
ことを特徴とする流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、流体の流路を切り替えるための流路切替装置に係り、特に、その弁体の摺動部に使用されるシール手段の組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、流体の流路を切り替える流路切替装置として、ステータと、ステータに対して相対的に駆動する弁体と、ステータと弁体との間に設けられ、弁体の駆動に伴いステータ又は弁体に対し摺動するシール手段とを備え、ステータは弁体に対し開口する複数の連通路を有し、弁体とシール手段により、複数の連通路のうち二つ以上を選択的に接続することにより一連の流路を形成するように構成した流路切替装置の開発を進めている。
【0003】
ここで、シール手段に関する技術として、例えば、下記の特許文献1には、流体(潤滑油)の流路の途中に組み付ける変形Oリング及びシール構造に関する技術が開示される。このシール構造は、長円形の凹嵌部に嵌め込んで流路をシールする変形Oリングを有する。変形Oリングは、凹嵌部の内周長よりわずかに長い外周長を有し、凹嵌部に嵌め込んだときに、この凹嵌部の内周壁から離れて内側に凹むように変形し易い第1部分と、第1部分と比較して変形し難い第2部分と、第1部分の変形を防止する変形防止手段とを備える。このシール構造によれば、変形Oリングを凹嵌部に嵌め込むと、変形し難い第2部分に作用した外力が、比較的変形し易い第1部分に応力集中し、第1部分を内側に凹ませようとする。しかし、第1部分が変形防止手段として機能し、第1部分の凹みを防止することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-106485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載のシール構造によれば、変形Oリングの外周が、凹嵌部の内周壁に密着するので、第1部分につき応力集中による変形を防止でき、所望のシール性を発揮できる。また、凹嵌部に変形Oリングを組み付けるとき、凹嵌部を下向きにしても変形Oリングの脱落を防止できる。しかしながら、第1部分に変形防止手段を設ける必要があり、変形Oリングに特別な加工が必要になり、製造コストがアップする問題があった。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造コストをアップさせることなくシール手段のシール性を確保することを可能とした流路切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、少なくとも一つのステータと、ステータに対して相対的に駆動する弁体と、ステータ及び弁体は、それぞれ少なくとも一つの連通路を含むことと、ステータと弁体との間に設けられ、弁体の駆動に伴いステータ又は弁体に対し摺動する環状のシール手段とを備え、弁体を駆動することで弁体の連通路とステータの連通路とを選択的に接続することにより一連の流路を切り替えて形成するように構成した流路切替装置において、シール手段は、弁体又はステータに形成された環状の溝の内側に配置され、シール手段の径方向における少なくとも二つの方向上で、シール手段の外周部が対向する溝の外周壁に当接し、又はシール手段の内周部が対向する溝の内周壁に当接することを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、弁体又はステータに形成される環状の溝の内側に配置されるシール手段につき、その径方向における少なくとも二つの方向上で、シール手段の外周部が対向する溝の外周壁に当接し、又はシール手段の内周部が対向する溝の内周壁に当接する。従って、シール手段に特別な加工を施さなくても、シール手段の組み付け時に、溝からのシール手段の脱落が抑えられ、シール手段の摺動による位置ずれ及び捩れが抑えられる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、弁体は、回転駆動するように構成され、溝は、弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲したトラック形状をなし、弁体の径方向と交差する径方向外側に位置する外側溝部と、径方向内側に位置する内側溝部と、外側溝部と内側溝部の一方の端をつなぐ第1連結溝部と、外側溝部と内側溝部の他方の端をつなぐ第2連結溝部とを含み、シール手段は、外側溝部の内周壁と、内側溝部の外周壁の一部とに当接することを趣旨とする。
【0010】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁体に設けられるトラック形状をなす溝が、弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲するので、その外側溝部と内側溝部も外側へ凸状に緩やかに湾曲する。そして、溝の内側に配置されるシール手段は、緩やかに湾曲した外側溝部の内周壁と、緩やかに湾曲した内側溝部の外周壁の一部に当接する。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、弁体は、回転駆動するように構成され、溝は、弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲したトラック形状をなし、弁体の径方向と交差する径方向外側に位置する外側溝部と、径方向内側に位置する内側溝部と、外側溝部と内側溝部の一方の端をつなぐ第1連結溝部と、外側溝部と内側溝部の他方の端をつなぐ第2連結溝部とを含み、シール手段は、外側溝部の外周壁と、内側溝部の外周壁の一部とに当接することを趣旨とする。
【0012】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁体に設けられるトラック形状をなす溝が、弁体の回転中心から外側に凸状に湾曲するので、その外側溝部と内側溝部も外側へ凸状に緩やかに湾曲する。従って、溝の内側に配置されるシール手段は、緩やかに湾曲した外側溝部の外周壁と、緩やかに湾曲した内側溝部の外周壁の一部に当接する。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、溝は、略円形をなし、半円状の半円溝部と、略楕円状の半楕円溝部とからなり、シール手段の外周部は、半円溝部の外周壁に倣うように当接し、半楕円溝部の外周壁とは離間することを趣旨とする。
【0014】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁体に設けられる溝が、半円溝部と半楕円溝部とから略円形をなす。従って、溝の内側に配置されるシール手段の外周部が、半円溝部の外周壁に倣うように当接し、半楕円溝部の外周壁とは離間する。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、溝は、略円形をなし、半円状の半円溝部と、略楕円状の半楕円溝部とからなり、シール手段の内周部は、半円溝部の内周壁に倣うように当接し、半楕円溝部の内周壁とは離間することを趣旨とする。
【0016】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、弁体に設けられる溝が、半円溝部と半楕円溝部とから略円形をなす。従って、溝の内側に配置されるシール手段の内周部が、半円溝部の内周壁に倣うように当接し、半楕円溝部の内周壁とは離間する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の技術によれば、流路切替装置の製造コストをアップさせることなくシール手段のシール性を確保することができる。
【0018】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール手段に作用する引張応力集中を抑制することができ、シール手段の摺動時の側面応力集中を緩和することができる。
【0019】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール手段に作用する圧縮応力集中を抑制することができ、シール手段の摺動時の側面応力集中を緩和することができる。
【0020】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール手段に作用する圧縮応力集中を抑制することができ、略円形の溝へはシール手段を容易に組み付けることができる。
【0021】
請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、シール手段に作用する引張応力集中を抑制することができ、略円形の溝へはシール手段を容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係り、流路切替装置の外観を示す斜視図。
図2】第1実施形態に係り、流路切替装置を示す分解斜視図。
図3】第1実施形態に係り、流路切替装置を示す断面図。
図4】第1実施形態に係り、回転ディスクを示す上面図。
図5】第1実施形態に係り、固定ディスクを示す上面図。
図6】第1実施形態に係り、流路パターンAを模式的に示すイメージ図。
図7】第1実施形態に係り、流路パターンBを模式的に示すイメージ図。
図8】第1実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細を示す平面図。
図9】第1実施形態に係り、弁シール部材を組み付けるために回転ディスクに形成された一つの組付け溝を示す平面図。
図10】第1実施形態に係り、組付け溝に組み付ける前の弁シール部材の形状を示す平面図。
図11】第1実施形態に係り、図8のA1-A1線、A2-A2線及びA3-A3線に沿った断面図。
図12】第1実施形態に係り、図8のB-B線に沿った断面図。
図13】第2実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細を示す平面図。
図14】第2実施形態に係り、組付け溝に組み付ける前の弁シール部材の形状を示す平面図。
図15】第3実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細を示す平面図。
図16】第3実施形態に係り、組付け溝に組み付ける前の弁シール部材の形状を示す平面図。
図17】第3実施形態に係り、図15のC1-C1線、C2-C2線及びC3-C3線に沿った断面図。
図18】第3実施形態に係り、図15のD-D線に沿った断面図。
図19】第4実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細(公差下限の場合)を示す平面図。
図20】第4実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細(公差上限の場合)を示す平面図。
図21】第5実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細(公差下限の場合)を示す平面図。
図22】第5実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細(公差上限の場合)を示す平面図。
図23】第6実施形態に係り、回転ディスクにおける一つの弁シール部材の組み付け構造の詳細を示す平面図。
図24】第6実施形態に係り、組付け溝に組み付ける前の弁シール部材の形状を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、流路切替装置を具体化したいくつかの実施形態につき詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
第1実施形態について図1図12を参照して説明する。
【0025】
[流路切替装置の概要について]
図1に、この実施形態の流路切替装置1の外観を斜視図により示す。図2に、この実施形態の流路切替装置1を分解斜視図により示す(駆動部13の図示は省略)。図3に、この実施形態の流路切替装置1を断面図により示す(駆動部13の図示は省略)。図1図3に示すように、流路切替装置1は、ハウジング11と、弁体部12と、駆動部13とを備える。
【0026】
[ハウジングについて]
図1図3に示すように、ハウジング11は、上ハウジング11Aと下ハウジング11Bを複数のネジ16で締結することで構成される。ハウジング11は、流体が流入する流入路20と、流体が流出する流出路30とを含む。この実施形態では、流路切替装置1は、一例として六方弁として構成され、ハウジング11は、3つの流入路20と3つの流出路30とを有する。3つの流入路20として、上ハウジング11Aには、第1流入路21、第2流入路22及び第3流入路23が設けられる。図3に示すように、後述する回転ディスク40と対向する流入路20の一端には、後述する回転長孔60に連通可能な開口部20aが設けられる。また、3つの流出路30として、下ハウジング11Bには、第1流出路31、第2流出路32及び第3流出路33が設けられる。
【0027】
なお、ハウジング11は、例えば樹脂により形成される。ハウジング11(上ハウジング11A及び下ハウジング11B)は本開示技術の「ステータ」の一例に相当し、流入路20(第1流入路21、第2流入路22及び第3流入路23)と、流出路30(第1流出路31、第2流出路32及び第3流出路33)は本開示技術の「ステータの連通路」の一例に相当する。
【0028】
[弁体部について]
弁体部12は、ハウジング11の内部に設けられる。この弁体部12は、図2図3に示すように、回転しない固定ディスク50と、固定ディスク50に積層して配置され、上ハウジング11A及び固定ディスク50に対し回転駆動する回転ディスク40と、回転ディスク40の中心にて同ディスク40と一体に設けられる回転軸42とを含む。
【0029】
なお、回転ディスク40(回転軸42を含む)と固定ディスク50は、例えば樹脂により形成される。回転ディスク40は本開示技術の「弁体」の一例に相当し、固定ディスク50は本開示技術の「ステータ」の一部を構成する。
【0030】
[回転ディスクについて]
図4に、回転ディスク40の上面図を示す。図2図4に示すように、回転ディスク40は、上ハウジング11Aと固定ディスク50との間に配置される。回転ディスク40は、円板部41と回転軸42を含む。回転ディスク40(円板部41)は、円板状に形成されており、複数の回転長孔60を含む。この回転長孔60は、回転ディスク40を板厚方向(軸方向)に貫通し、板面方向に沿って伸び、流入路20や後述する固定通路70と連通可能である。この実施形態で、回転ディスク40は、3つの回転長孔60を含む。図2図4に示すように、3つの回転長孔60として、第1回転長孔61、第2回転長孔62及び第3回転長孔63を含む。回転長孔60(第1回転長孔61、第2回転長孔62及び第3回転長孔63)は、本開示技術の「弁体の連通路」の一例に相当する。
【0031】
[回転軸について]
回転軸42は、その軸方向一端側にて回転ディスク40(円板部41)に接続され、他端側にて駆動部13に接続される。この回転軸42は、その中心軸が回転ディスク40の中心軸Lと一致するように円板部41と一体に形成される。そして、駆動部13から回転駆動力を得て回転軸42が回転することにより、回転ディスク40が回転する。
【0032】
[固定ディスクについて]
図5に、固定ディスク50の上面図を示す。図2図3及び図5に示すように、固定ディスク50は、円板部51と、円板部51と一体に形成された複数の円筒部52とを含む。固定ディスク50と下ハウジング11Bとの間には、固定ディスク50を回転ディスク40の方向へ付勢し保持するための保持スプリング87が設けられる。保持スプリング87は、固定ディスク50の下面にて、各円筒部52を内包するように配置される。
【0033】
円板部51は、円板状に形成され、軸方向に貫通する固定通路70を含む。この実施形態では、3つの固定通路70として、第1固定通路71、第2固定通路72及び第3固定通路73を含む。3つの固定通路70は、互いに等角度間隔空けて配置される。なお、固定通路70は、本開示技術の「ステータの連通路」の一例に相当する。
【0034】
円筒部52は、固定通路70を囲うようにして円板部51から軸方向に延びるようにして形成される。この実施形態では、円筒部52は、3つの固定通路70のそれぞれに対応するようにして、3つ形成される。これら固定通路70の先端は、下ハウジング11Bに形成された流出路30に接続される。図2図4に示すように、回転ディスク40と対向する固定通路70の一端には、回転長孔60に連通可能な開口部70aが設けられる。
【0035】
[駆動部について]
駆動部13は、回転軸42に回転駆動力を与えるためのモータ及び減速機構等(図示略)を含む。
【0036】
上記のように構成した流路切替装置1は、流入路20と回転長孔60と固定通路70(流出路30)とを連通させることで、流体が流れる一連の流路を形成する。そして、流路切替装置1は、駆動部13により回転軸42を介し回転ディスク40を回転駆動させ、3つの回転長孔60(61~63)と、3つの流入路20(21~23)と、3つの固定通路70(71~73)と、3つの流出路30(31~33)とを選択的に接続することにより、流体のための一連の流路を切り替えて形成するように構成される。
【0037】
[流路パターンについて]
例えば、流路パターンAとして、図6に示すように、3つの回転長孔60(61~63)により、第1流入路21と第1固定通路71と第1流出路31とを連通させ、第2流入路22と第2固定通路72と第2流出路32とを連通させ、第3流入路23と第3固定通路73と第3流出路33とを連通させる。図6は、流路パターンAを模式的なイメージ図により示す。
【0038】
そして、図6に示す流路パターンAの状態から、駆動部13により回転ディスク40を時計回りに「60°」回転させることで、図7に示す流路パターンBに切り替えることができる。図7は、流路パターンBを模式的なイメージ図により示す。
【0039】
すなわち、流路パターンBでは、3つの回転長孔60(61~63)により、第1流入路21と第3固定通路73と第3流出路33とを連通させ、第2流入路22と第1固定通路71と第1流出路31とを連通させ、第3流入路23と第2固定通路72と第2流出路32とを連通させる。
【0040】
なお、図7に示す流路パターンBの状態から、駆動部13により回転ディスク40を反時計回りに「60°」回転させることで、図6に示す流路パターンAに切り替えることもできる。又は、回転ディスク40を更に時計回りに「60°」回転させることで、図6に示す流路パターンAに切り替えることもできる(この場合、回転長孔60の組み合わせは異なる)。
【0041】
[弁シール部材について]
この実施形態で、図3に示すように、流路切替装置1において、上ハウジング11Aと回転ディスク40との間及び回転ディスク40と固定ディスク50との間には、流路における流体の漏れを抑制するための弁シール部材81が設けられる。ここで、弁シール部材81として、上ハウジング11Aと回転ディスク40との間には、上弁シール部材81Aが設けられ、回転ディスク40と固定ディスク50との間には、下弁シール部材81Bが設けられる。
【0042】
この弁シール部材81は、図2図4に示すように、回転ディスク40(円板部41)の上面41aと下面41bにて、回転長孔60の開口縁60aの周囲を囲むようにして突条に設けられる。回転ディスク40の上面41aに設けられる上弁シール部材81Aは、上ハウジング11Aへ向けて突出するように設けられ、上ハウジング11Aの内面11aに接触して、流入路20とその流入路20に連通する回転長孔60との間に形成される一連の流路を外部からシールするようになっている。また、回転ディスク40(円板部41)の下面41bに設けられる下弁シール部材81Bは、固定ディスク50に接触して、固定通路70とその固定通路70に連通する回転長孔60との間に形成される一連の流路を外部からシールするようになっている。
【0043】
なお、この実施形態では、各弁シール部材81(81A,81B)は、例えば、弾性体であるゴム材により形成される。この他、各弁シール部材81は、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))により形成したり、フッ素樹脂を貼付したゴムにより形成したり、フッ素樹脂やゴム以外の材料により形成したりすることもできる。これら弁シール部材81は、この開示技術の「シール手段」の一例に相当する。
【0044】
[その他のシール部材]
図3に示すように、上ハウジング11Aと回転軸42との間には、リップシール88が設けられる。また、固定ディスク50の各円筒部52と下ハウジング11Bとの間には、別のリップシール89が設けられる。
【0045】
[弁シール部材の組み付け構造について]
図8には、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図8に示す複数の内向き及び外向きの矢印は、弁シール部材81の復元応力を示す。(後述する図13図15図19図21において同様。)図9には、弁シール部材81を組み付けるために回転ディスク40に形成された一つの組付け溝91を平面図により示す。図10には、組付け溝91に組み付ける前の弁シール部材81の形状を平面図により示す。なお、図8図10では、組付け溝91より内側において回転ディスク40(円板部41)に形成される回転長孔60の図示は省略する。図8と異なり、図2図4図6及び図7には、回転ディスク40における弁シール部材81の組み付けが概略的に示される。
【0046】
弁シール部材81は、回転ディスク40の円板部41に形成された環状の組付け溝91の内側に配置され、弁シール部材81の径方向における少なくとも二つの方向上(図8に一例を示す矢印RDの延長線上)で、弁シール部材81の外周部が対向する組付け溝91の外周壁91bに当接、及び弁シール部材81の内周部が対向する組付け溝91の内周壁91aに当接している。
【0047】
この実施形態において、組付け溝91は、図9に示すように、回転ディスク40の回転中心RCからその径方向外側(矢印M1で示す方向)に凸状に湾曲したトラック形状をなし、回転ディスク40の径方向と交差する径方向外側に位置する外側溝部92(図9に矢印範囲K1で示す)と、径方向内側に位置する内側溝部93(図9に矢印範囲K2で示す)と、外側溝部92と内側溝部93の一方の端をつなぐ第1連結溝部94(図9に矢印範囲K3で示す)と、外側溝部92と内側溝部93の他方の端をつなぐ第2連結溝部95(図9に矢印範囲K4で示す)とを含む。すなわち、図9に示すように、組付け溝91は、回転ディスク40の回転方向Y(駆動方向)に沿って伸びる一対をなす外側溝部92及び内側溝部93と、回転ディスク40の回転方向Yと交差する方向に配置され、外側溝部92及び内側溝部93の両端を繋ぐ第1連結溝部94及び第2連結溝部95とを含む。ここで、内側溝部93は、外側溝部92よりも、特に矢印M1の方向へ向けて凸に湾曲する小径な円弧状をなしており、その円弧は回転ディスク40の円周軌跡と一致する。
【0048】
この実施形態において、組付け溝91に組み付ける前の弁シール部材81は、図10に示すように、組付け溝91の平面形状に近い形状を有する。すなわち、弁シール部材81は、外側溝部92に対応する外側シール部82と、内側溝部93に対応する内側シール部83と、第1連結溝部94に対応する第1連結シール部84と、第2連結溝部95に対応する第2連結シール部85とを含む。ただし、内側シール部83は、内側溝部93とは異なり湾曲しない直線形状を有する。そして、図8に示すように、弁シール部材81は、その外側シール部82及び両連結シール部84,85のそれぞれが、外側溝部92及び両連結溝部94,95の内周壁91aに当接し、その内側シール部83の一部が内側溝部93の外周壁91bの一部に当接するように組付け溝91に組み付けられる。
【0049】
この実施形態では、組付け溝91に組み付けられた弁シール部材81の落下及び摺動に対応するために、弁シール部材81を、組付け溝91の内側溝部93以外の部分の内周壁91aとの面圧と、内側溝部93の外周壁91bとの面圧とで保持している。そのために、弁シール部材81は、内側シール部83以外の部分を、組付け溝91の内周壁91aの形状及び長さに整合させ、内側シール部83を、図10に示すように湾曲させない直線形状としている。これにより、弁シール部材81の組付け溝91への組み付け時には、弁シール部材81の復元力を活用し、弁シール部材81を、内側シール部83以外の部分では組付け溝91の内周壁91aに当接させ、内側シール部83では外周壁91bに圧接させて、組付け溝91の内周壁91a及び外周壁91bとの間で面圧を形成している。これにより、組み付け後に組付け溝91を下向きにしても、弁シール部材81を脱落さることなく組付け溝91に保持可能となっている。また、弁シール部材81の内側シール部83は、内側溝部93の外周壁91bに当接して円周に近似した形状となるので、その部分の摺動時に側面応力集中の緩和が可能となっている。
【0050】
図11は、図8のA1-A1線、A2-A2線及びA3-A3線に沿った断面図を示す。図12は、図8のB-B線に沿った断面図を示す。図11図12に示すように、この実施形態で、弁シール部材81は、未使用の断面形状が円形をなしている(以下の各実施形態において同じ。)。図8におけるA1-A1線、A2-A2線及びA3-A3線の部分では、図11に示すように、弁シール部材81は、組付け溝91の内周壁91aに当接し、外周壁91bからは離間している。弁シール部材81は、内周壁91aと当接し押し付けられることで、その内周面圧が高くなっている。また、図8におけるB-B線の部分では、図12に示すように、弁シール部材81は、組付け溝91の外周壁91bに当接し、内周壁91aからは離間している。弁シール部材81は、外周壁91bと当接し押し付けられることで、その外周面圧が高くなっている。
【0051】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、回転ディスク40に形成される環状の組付け溝91の内側に配置される弁シール部材81につき、その径方向における少なくとも二つの方向上で、弁シール部材81の外周部が対向する組付け溝91の外周壁91bに当接及び弁シール部材81の内周部が対向する組付け溝91の内周壁91aに当接する。従って、弁シール部材81に特別な加工を施さなくても、弁シール部材81の組付け溝91への組み付け時に、組付け溝91からの弁シール部材81の脱落が抑えられ、特に、この実施形態のように回転ディスク40の上面41a及び下面41bの両面に弁シール部材81を組み付ける場合は、流路切替装置1全体を組み付ける際に組み付け方向を一方向に設定することができる。また、弁シール部材81の摺動による位置ずれ及び捩れが抑えられる。このため、流路切替装置1の製造コストをアップさせることなく弁シール部材81のシール性を確保することができる。
【0052】
この実施形態の構成によれば、回転ディスク40に設けられるトラック形状をなす組付け溝91が、回転ディスク40の回転中心RCから外側に凸状に湾曲するので、その外側溝部92と内側溝部93も外側へ凸状に緩やかに湾曲する。そして、組付け溝91の内側に配置される弁シール部材81は、緩やかに湾曲した外側溝部92の内周壁91aと、緩やかに湾曲した内側溝部93の外周壁91bの一部に当接する。このため、回転ディスク40の回転時に弁シール部材81に作用する引張応力集中を抑制することができ、弁シール部材81の摺動時の側面応力集中を緩和することができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図13図14を参照して説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0054】
[弁シール部材の組み付け構造について]
この実施形態では、弁シール部材81の組み付け構造の点で前記第1実施形態と異なる。図13には、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図14には、組付け溝91に組み付ける前の弁シール部材81の形状を平面図により示す。第1実施形態では、組み付け前の弁シール部材81の平面形状を、組付け溝91の平面形状に近い略トラック形状としたが、この実施形態では、図14に示すように、組み付け前の弁シール部材81の平面形状を円形状としている。そして、この円形状の弁シール部材81を、引き伸ばしながら組付け溝91に組み付けることにより、図13に示すように、第1実施形態の図8と同じ組み付け状態にしている。
【0055】
すなわち、この実施形態でも、組付け溝91に組み付けられた弁シール部材81の落下及び摺動に対応するために、弁シール部材81を、組付け溝91の内側溝部93以外の部分の内周壁91aとの面圧と、内側溝部93の外周壁91bとの面圧とで保持するようにしている。そのために、円形状の弁シール部材81の周長を、組付け溝91の内周壁91aの周長より短く設定している。そして、組付け溝91への弁シール部材81の組み付け時には、弁シール部材81の復元力を活用し、弁シール部材81を、その内側シール部83以外の部分では組付け溝91の内周壁91aに当接させ、内側シール部83では外周壁91bに圧接させ、組付け溝91の内周壁91a及び外周壁91bとの間で面圧を形成している。これにより、弁シール部材81を組み付けた後に組付け溝91を下向きにしても、弁シール部材81を脱落さることなく組付け溝91に保持可能となる。また、弁シール部材81の内側シール部83は、内側溝部93の外周壁91bに当接してその円弧に近似した形状となるので、その部分の摺動時に側面応力集中が緩和可能となる。
【0056】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、第1実施形態と異なり、組み付け前の弁シール部材81の平面形状が円形状をなすことで組付け時の方向性を考慮する必要がなくなり製造性が向上し、基本的には、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図15図16を参照して説明する。
【0058】
[弁シール部材の組み付け構造について]
この実施形態では、弁シール部材81の組み付け構造の点で前記各実施形態と異なる。図15に、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図16には、組み付け前の弁シール部材81の形状を平面図により示す。この実施形態では、第1実施形態と同様、組み付け前の弁シール部材81の形状が、組付け溝91の平面形状に近似する略トラック形状となっている。
【0059】
この実施形態では、図15図16に示すように、組付け溝91の形状は第1実施形態のそれと同じであり、弁シール部材81の形状は、第1実施形態のそれと近似する形状を有する。そして、弁シール部材81は、組付け溝91の内側溝部93以外の外周壁91bと、内側溝部93の外周壁91bの一部とに当接している。すなわち、図15に示すように、弁シール部材81は、その外側シール部82及び両連結シール部84,85のそれぞれが、外側溝部92及び両連結溝部94,95の外周壁91bに当接し、その内側シール部83の一部が内側溝部93の外周壁91bの一部に当接するように組付け溝91に組み付けられる。
【0060】
この実施形態では、組付け溝91に組み付けられた弁シール部材81の落下及び摺動に対応するために、弁シール部材81を、組付け溝91の内側溝部93以外の部分の外周壁91bとの面圧と、内側溝部93の外周壁91bとの面圧とで保持している。そのために、弁シール部材81は、その内側シール部83以外の部分を、組付け溝91の外周壁91bの形状及び長さに整合させ、内側シール部83を、図16に示す湾曲させない直線形状としている。これにより、弁シール部材81の組付け溝91への組み付け時には、弁シール部材81の復元力を活用し、弁シール部材81を、その内側シール部83以外の部分では組付け溝91の外周壁91bに当接させ、内側シール部83では外周壁91bに圧接させて、組付け溝91の外周壁91bとの間で面圧を形成し、また、組付け溝94と組付け溝93及び組付け溝95と組付け溝93の境界部では内周壁91aに当接させて、組付け溝91の内周壁91aとの殿間で面圧を形成している。これにより、組み付け後に組付け溝91を下向きにしても、弁シール部材81を脱落させることなく組付け溝91に保持可能となっている。また、弁シール部材81の内側シール部83は、内側溝部93の外周壁91bに当接して円周に近似した形状となるので、その部分の摺動時に側面応力集中の緩和が可能となっている。
【0061】
図17は、図15のC1-C1線、C2-C2線及びC3-C3線に沿った断面図を示す。図18は、図15のD-D線に沿った断面図を示す。図15におけるC1-C1線、C2-C2線及びC3-C3線の部分では、図17に示すように、弁シール部材81は、組付け溝91の外周壁91bに当接し、内周壁91aからは離間している。弁シール部材81は、外周壁91bと当接し押し付けられることで、その外周面圧が高くなっている。また、図15におけるD-D線の部分では、図18に示すように、弁シール部材81は、組付け溝91の内周壁91aに当接し、外周壁91bからは離間している。弁シール部材81は、内外周壁91aと当接し押し付けられることで、その内周面圧が高くなっている。
【0062】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、回転ディスク40に設けられるトラック形状をなす組付け溝91が、回転ディスク40の回転中心RCから外側に凸状に湾曲するので、その外側溝部92と内側溝部93も外側へ凸状に緩やかに湾曲する。従って、組付け溝91の内側に配置される弁シール部材81は、前記各実施形態と異なり、緩やかに湾曲した外側溝部92の外周壁91bと、緩やかに湾曲した内側溝部93の外周壁91bの一部に当接する。このため、前記各実施形態と異なり、回転ディスク40の回転時に弁シール部材81に作用する圧縮応力集中を抑制することができ、弁シール部材81の摺動時の側面応力集中を緩和することができる。
【0063】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図19図20を参照して説明する。
【0064】
[弁シール部材の組み付け構造について]
この実施形態では、弁シール部材81の組み付け構造の点で前記各実施形態と異なる。図19図20には、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図19は、公差下限の場合を示し、図20は、公差上限の場合を示す。図19図20に示すように、この実施形態では、組み付け前の弁シール部材81は、平面視で真円形状をなし、組付け溝91は、平面視で略円形状をなし、その半周が真半円形状をなし、残りの半周が真半円形状より外側へ膨らませた微少楕円形状をなしている。すなわち、図19図20において、組付け溝91は、略円形をなし、組付け溝91の中心P1を通る補助線L2,L3につき、縦の補助線L2を中心に、組付け溝91の左半分が真半円状の半円溝部96なし、右半分が横の補助線L3に沿って外方へ膨らんだ略楕円(微少楕円)の半楕円溝部97をなしている。そして、弁シール部材81の外周部は、半円溝部96の外周壁91bに倣うように当接し、半楕円溝部97の外周壁91bとは離間するようになっている。図19図20において、半楕円溝部97に示す2点鎖線は、真円の弁シール部材81の外周を示す。
【0065】
この実施形態では、弁シール部材81と組付け溝91の公差による、弁シール部材81の外周長の最大値が、組付け溝91の外周壁91bの長さの最小値より大きくなる条件下で生じる、弁シール部材81の長さの余り分を、組付け溝91の半楕円溝部97の微少楕円部分で吸収するようになっている。これにより、弁シール部材81の組み付け時の捩じれを抑制すると共に、摺動時に弁シール部材81の外周に掛かる応力集中を緩和するようになっている。
【0066】
ここで、図19に示す「公差下限」の場合は、組付け溝91が真円の場合の外周壁91bの長さが最大になり、弁シール部材81の外周長が最小になる。この場合は、弁シール部材81の外周長が、真円の場合の組付け溝91の外周壁91bの長さより、公差下限分だけ長くなる。このとき、図19において、弁シール部材81の左半周部分の外周が、組付け溝91の半円溝部96の外周壁91bに押し当てられ、弁シール部材81の落下を防止することができる。
【0067】
ここで、図20に示す「公差上限」の場合は、組付け溝91が真円の場合の外周壁91bの長さが最小になり、弁シール部材81の外周長が最大になる。この場合は、組付け溝91の半楕円溝部97の膨らみ部分に弁シール部材81の長さの余り分を逃がして吸収させ、弁シール部材81の捩れを防止する。
【0068】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、前記各実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、この実施形態では、回転ディスク40に設けられる組付け溝91が、半円溝部96と半楕円溝部97とから略円形をなす。従って、組付け溝91の内側に配置される弁シール部材81の外周部が、半円溝部96の外周壁91bに倣うように当接し、半楕円溝部97の外周壁91bとは離間する。このため、回転ディスク40の回転駆動時に弁シール部材81に作用する圧縮応力集中を抑制することができ、略円形の組付け溝91へは弁シール部材81を容易に組み付けることができる。
【0069】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図21図22を参照して説明する。
【0070】
[弁シール部材の組み付け構造について]
この実施形態では、弁シール部材81の組み付け構造の点で前記第4実施形態と異なる。図21図22には、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図21は、公差下限の場合を示し、図22は、公差上限の場合を示す。図21図22に示すように、この実施形態では、第4実施形態と同様、組み付け前の弁シール部材81は、平面視で真円形状をなし、組付け溝91は、平面視で略円形状をなし、その半周が真半円形状をなし、残りの半周が真半円形状より内側へ縮ませた微少楕円形状をなしている。すなわち、図21図22において、組付け溝91は、略円形をなし、縦の補助線L2を中心に、組付け溝91の左半分が真半円状の半円溝部96をなし、右半分が略楕円(微少楕円)の半楕円溝部97をなしている。そして、弁シール部材81の内周部は、半円溝部96の内周壁91aに倣うように当接し、半楕円溝部97の内周壁91aとは離間するようになっている。図21図22において、半楕円溝部97に示す2点鎖線は、真円の弁シール部材81の内周を示す。
【0071】
この実施形態では、弁シール部材81と組付け溝91の公差による、弁シール部材81の内周長の最小値が、組付け溝91の内周壁91aの長さの最大値より小さくなる条件下で生じる、弁シール部材81の過剰引張応力を、組付け溝91の半楕円溝部97の微少楕円部分で吸収するようになっている。これにより、弁シール部材81の組み付け時の過剰な引っ張りを抑制すると共に、摺動時に弁シール部材81の内周に掛かる応力集中を緩和するようになっている。
【0072】
ここで、図21示す「公差下限」の場合は、組付け溝91が真円の場合の内周壁91aの長さが最小になり、弁シール部材81の内周長が最大になる。この場合は、弁シール部材81の内周長が、真円の場合の組付け溝91の内周壁91aの長さより、公差下限分だけ短くなる。このとき、図21において、弁シール部材81の左半周部分の内周が、組付け溝91の半円溝部96の内周壁91aがくわえられ、弁シール部材81の落下を防止することができる。
【0073】
ここで、図22に示す「公差上限」の場合は、組付け溝91が真円の場合の内周壁91aの長さが最大になり、弁シール部材81の内周長が最小になる。この場合は、組付け溝91の半楕円溝部97の縮み部分により弁シール部材81の長さの余り分を吸収させ、弁シール部材81の捩れを防止する。
【0074】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、前記各実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、この実施形態では、回転ディスク40に設けられる組付け溝91が、半円溝部96と半楕円溝部97とから略円形をなす。従って、組付け溝91の内側に配置される弁シール部材81の内周部が、半円溝部96の内周壁91aに倣うように当接し、半楕円溝部97の内周壁91aとは離間する。このため、回転ディスク40の回転駆動時に弁シール部材81に作用する引張応力集中を抑制することができ、略円形の組付け溝91へは弁シール部材81を容易に組み付けることができる。
【0075】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について図23図24を参照して説明する。
【0076】
[弁シール部材の組み付け構造について]
この実施形態では、弁シール部材81の組み付け構造の点で前記第4及び第5の実施形態と異なる。図23には、回転ディスク40における一つの弁シール部材81の組み付け構造の詳細を平面図により示す。図24には、組付け溝91に組み付ける前の弁シール部材81の形状を平面図により示す。図24に示すように、この実施形態では、第4及び第5の実施形態とは異なり、平面視で全体が真円形状をなす組付け溝91に対し、組み付け前に平面視で全体が楕円形状をなす弁シール部材81を組み付けるようになっている。この実施形態では、図24に示すように、弁シール部材81は、低ヤング率のゴム材により形成され、その短軸が組付け溝91の内径よりも短く、その長軸が組付け溝91の外径よりも長くなるように設定される。
【0077】
[流路切替装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流路切替装置1の構成によれば、第4及び第5の実施形態と同様、組付け溝91が円形をなすものの、第4及び第5の実施形態と異なり次のような作用及び効果が得られる。すなわち、この実施形態では、上記設定により、図23に示すように、縦の補助線L2上にて破線長円で示す第1部位E1と第2部位E2では、弁シール部材81の内周と組付け溝91の内周壁91aが面当接し、横の補助線L3上にて破線長円で示す第3部位E3と第4部位E4では、弁シール部材81の外周と組付け溝91の外周壁91bが面当接する。一方、図23に示すように、補助線L2,L3から離れたその他の部位、破線長円で示す第5~第8の部位E5~E8では、弁シール部材81の内周及び外周と組付け溝91の内周壁91a及び外周壁91bが接触せず、弁シール部材81の伸び縮みが吸収される。この場合、楕円形の弁シール部材81を、その長軸と短軸の向きを任意に変えて真円形の組付け溝91に組み付けたとしても、面当接する第1部位E1~第4部位E4は、変わらず等角度(90°)間隔をなすように配置することができる。
【0078】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して次のように実施することもできる。
【0079】
(1)前記各実施形態では、回転ディスク40の円板部41の上面41aと下面41bに弁シール部材81を組み付けたが、回転ディスクに対向する上ハウジングや固定ディスクに弁シール部材を組み付けてもよい。
【0080】
(2)前記第6実施形態では、組付け溝91を真円形に形成し、弁シール部材81を楕円に形成して組付け溝91に組み付けるように構成した。これに対し、組付け溝を楕円形に形成し、弁シール部材を真円に形成して組付け溝に組み付けるように構成してもよい。
【0081】
(3)前記各実施形態では、組み付け前の弁シール部材81の断面形状を円形としたが、断面形状を円形以外の各種形状にしてもよい。
【0082】
(4)前記第4及び第5の実施形態では、半円溝部96と半楕円溝部97とから略円形をなすとしたが、異なる半楕円溝部の構成及び円溝部が半分以上の構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この開示技術は、例えば、流体が流れる流体回路において流体の流路を切り替えるために利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 流路切替装置
11 ハウジング(ステータ)
20 流入路(連通路)
30 流出路(連通路)
40 回転ディスク(弁体)
50 固定ディスク(ステータ)
60 回転長孔(連通路)
70 固定通路(連通路)
81 弁シール部材(シール手段)
91 組付け溝(溝)
91a 内周壁
91b 外周壁
92 外側溝部
93 内側溝部
94 第1連結溝部
95 第2連結溝部
96 半円溝部
97 半楕円溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24