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特開2025-88486還元型酸化グラフェン膜の形成方法、還元型酸化グラフェン膜及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088486
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】還元型酸化グラフェン膜の形成方法、還元型酸化グラフェン膜及び物品
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/198 20170101AFI20250604BHJP
【FI】
C01B32/198
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203212
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】孔 昌一
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ ファンボ
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC01B
4G146AC20B
4G146AC30B
4G146AD22
4G146BA01
4G146BB12
4G146BC25
4G146CB17
(57)【要約】
【課題】ヨウ素系還元剤を用いた効率的な還元型酸化グラフェン膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む還元性雰囲気中に基材を配置することと、酸化グラフェンの分散液を上記還元性雰囲気中の基材上に噴霧することにより、酸化グラフェンを還元するとともに、基材上に酸化グラフェンの還元体である還元型酸化グラフェンを堆積させることと、を含む、還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む還元性雰囲気中に基材を配置することと、
酸化グラフェンの分散液を前記還元性雰囲気中の前記基材上に噴霧することにより、前記酸化グラフェンを還元するとともに、前記基材上に前記酸化グラフェンの還元体である還元型酸化グラフェンを堆積させることと、を含む、還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【請求項2】
前記分散液が水及びエタノールの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【請求項3】
前記分散液中の前記酸化グラフェンの含有量が、0.01~2g/Lである、請求項1又は2に記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【請求項4】
ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む溶液を加熱することにより前記還元性雰囲気を形成する、請求項1又は2に記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【請求項5】
波長550nmの光の透過率が85~99%であり、
表面抵抗率が1500~60000Ω/□であり、
厚さが0.0005~0.1μmである、還元型酸化グラフェン膜。
【請求項6】
基材と、前記基材上に設けられた請求項5に記載の還元型酸化グラフェン膜と、を備える、物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型酸化グラフェン膜の形成方法、還元型酸化グラフェン膜及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
透明電極や電磁波シールド、スーパーキャパシタ等の材料として、酸化グラフェンを還元して得られる還元型酸化グラフェンが注目されている。上記用途では、還元型酸化グラフェンを膜状にして用いることが一般的であり、還元型酸化グラフェンを含む膜(以下、「還元型酸化グラフェン膜」ともいう。)の形成方法が種々検討されている。例えば、非特許文献1には、酸化グラフェンとヒドラジンとを混合して得られた混合液を、あらかじめ加熱した基板上に噴霧することで、膜の形成と酸化グラフェンの還元を同時に行い、還元型酸化グラフェン膜を形成する方法が開示されている。この方法によれば、効率的に還元型酸化グラフェン膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Viet Hung Pham, et al., “Fast and simple fabrication of a largetransparent chemically-converted graphene film by spray-coating”, CARBON, 48,1945-1951, 2010
【非特許文献2】William S. Hummers, et al., “Preparation of Graphitic Oxide”, J. Am. Chem. Soc., 1958, 80, 6, 1339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒドラジンは還元効率に優れた還元剤であるものの、その毒性等の問題から、ヒドラジンの代替となる還元剤が求められている。例えば、ヒドラジンに代えてヨウ化水素(HI)等のヨウ素系還元剤を用いる方法が検討されている。しかしながら、本発明者らの検討の結果、上記非特許文献1の方法でヨウ素系還元剤を用いた場合、酸化グラフェンの還元が急速に進行し、還元型酸化グラフェンの粒子によって噴霧ノズルが目詰まりを起こすという問題が発生することが判明した。そのため、ヨウ素系還元剤を用いて効率的に還元型酸化グラフェン膜を形成するためには、非特許文献1の方法に代わる新たな方法が必要であった。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、ヨウ素系還元剤を用いた効率的な還元型酸化グラフェン膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも下記[1]~[6]を提供する。
【0007】
[1]
ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む還元性雰囲気中に基材を配置することと、
酸化グラフェンの分散液を前記還元性雰囲気中の前記基材上に噴霧することにより、前記酸化グラフェンを還元するとともに、前記基材上に前記酸化グラフェンの還元体である還元型酸化グラフェンを堆積させることと、を含む、還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【0008】
[2]
前記分散液が水及びエタノールの少なくとも一方を含む、[1]に記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【0009】
[3]
前記分散液中の前記酸化グラフェンの含有量が、0.01~2g/Lである、[1]又は[2]に記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【0010】
[4]
ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む溶液を加熱することにより前記還元性雰囲気を形成する、[1]~[3]のいずれかに記載の還元型酸化グラフェン膜の形成方法。
【0011】
[5]
波長550nmの光の透過率が85~99%であり、
表面抵抗率が1500~60000Ω/□であり、
厚さが0.0005~0.1μmである、還元型酸化グラフェン膜。
【0012】
[6]
基材と、前記基材上に設けられた[5]に記載の還元型酸化グラフェン膜と、を備える、物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヨウ素系還元剤を用いた効率的な還元型酸化グラフェン膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、酸化グラフェン及び実施例a3-8の還元型酸化グラフェン膜のFT-IRスペクトルを示す図である。
図2図2の(a)は、酸化グラフェンのXPS(C1s)スペクトルを示す図であり、図2の(b)は、実施例a3-8の還元型酸化グラフェンのXPS(C1s)スペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例a1~a6の還元型酸化グラフェンにおける波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。
図4図4は、実施例b1~b5の還元型酸化グラフェンにおける波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。
図5図5は、実施例c1~c4の還元型酸化グラフェンにおける波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、具体的に明示する場合を除き、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。また、本明細書中において数値範囲が段階的に複数記載されている場合、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてよい。また、数値範囲の上限値又は下限値を実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
<還元型酸化グラフェン膜の製造方法>
本発明の一実施形態は、ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む還元性雰囲気中に基材を配置すること(以下、「第1工程」という。)と、酸化グラフェンの分散液を上記雰囲気中の基材上に噴霧することにより、酸化グラフェンを還元するとともに、基材上に酸化グラフェンの還元体である還元型酸化グラフェンを堆積させること(以下、「第2工程」という。)と、を含む、還元型酸化グラフェン膜の形成方法である。
【0018】
(第1工程)
第1工程では、ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む還元性雰囲気中に基材を配置する。
【0019】
還元性雰囲気は、ガス雰囲気であってよく、エアロゾル雰囲気であってもよい。すなわち、還元性雰囲気中のヨウ素及びヨウ化水素は、ガスとして還元性雰囲気に含まれていてもよいし、エアロゾルとして還元性雰囲気に含まれていてもよい。
【0020】
還元性雰囲気は、還元性成分としてヨウ素及びヨウ化水素の一方を含むものであってもよいし、両方を含むものであってもよい。還元性成分中のヨウ素とヨウ化水素の比率は、特に限定されないが、体積比で、0:1~1:0であってよく、1:3~3:1、1:2~1:2、1:1~1:0又は0:1~1:1であってもよい。
【0021】
還元性雰囲気は、ヨウ素及びヨウ化水素以外の還元性成分を含んでいてもよい。ヨウ素及びヨウ化水素の合計量は、還元性成分の全体積を基準として、80体積%以上であってよく、90体積%以上又は95体積%以上であってもよい。
【0022】
還元性雰囲気中のヨウ素及びヨウ化水素の合計濃度は、所望の還元型酸化グラフェン膜の性質に応じて適宜調整してよく、例えば、1~20体積%であってよく、1~15体積%又は2~10体積%であってもよい。ヨウ素及びヨウ化水素の合計濃度が高いほど、酸化グラフェンの還元が進行しやすくなり、還元型酸化グラフェン膜の表面抵抗率が低くなる傾向がある。本実施形態では、還元性雰囲気中のヨウ素の濃度が上記範囲であってもよく、還元性雰囲気中のヨウ化水素の濃度が上記範囲であってもよい。
【0023】
基材は、還元型酸化グラフェン膜が形成される表面を有する。基材の材質は、特に限定されず、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、金属(白金等)等であってよい。ここで、ガラスとしては、例えば、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。高抵抗、かつ、高透明な還元型酸化グラフェン膜が得られやすい観点では、還元型酸化グラフェン膜が形成される上記表面の材質が、耐酸性を有する(例えば、ガラス等である)ことが好ましい。基材は、多孔体であってよい。基材の形状は、特に限定されないが、シート状、フィルム状、箔状等であってよい。
【0024】
第1工程では、上記還元性雰囲気を形成した後、該還元性雰囲気中に基材を配置してよく、予め基材が配置された空間の雰囲気を上記還元性雰囲気としてもよい。
【0025】
還元性雰囲気は、例えば、ヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む溶液を加熱することにより形成してよい。具体的には、例えば、基材を配置するプレートを加熱し、該プレート上にヨウ素及びヨウ化水素の少なくとも一方を含む溶液を滴下することにより、ヨウ素及び/又はヨウ化水素を気化させて還元性雰囲気を形成してよい。この方法では、プレートの加熱温度、溶液の濃度、溶液の滴下量等を調整することで、雰囲気中の還元性成分の濃度を制御することができる。
【0026】
溶液がヨウ素を含む場合の溶液の加熱温度は、例えば、50~150℃であってよく、溶液がヨウ化水素を含む場合の溶液の加熱温度は、例えば、10~100℃であってよい。上記温度であれば、ヨウ素及びヨウ化水素の気化速度が速くなり過ぎないため、雰囲気中のヨウ素及びヨウ化水素の濃度を制御することが容易となる。
【0027】
(第2工程)
第2工程では、酸化グラフェンの分散液を上記還元性雰囲気中の基材上に噴霧することにより、酸化グラフェンを還元するとともに、基材上に還元型酸化グラフェンを堆積させる。
【0028】
酸化グラフェンの分散液は、酸化グラフェンと、酸化グラフェンを分散する分散媒と、を含む。ここで、「分散」とは、対象物(例えば酸化グラフェン)が懸濁又は浮遊している状態を指すが、対象物の一部は沈殿した状態であってもよい。酸化グラフェンの分散方法は特に限定されず、公知の方法(例えば、ボールミル、ビーズミル、超音波ホモジナイザー等を用いる方法)により酸化グラフェンを分散させてよい。
【0029】
酸化グラフェンは、グラファイトを酸化することによって生成した酸素含有官能基を有する。酸素含有官能基は、例えば、エポキシ基(-COC-)、水酸基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、及びカルボキシ基(-COOH)からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含み得る。
【0030】
酸化グラフェンは、例えば、非特許文献2に記載のHummers法によるグラファイトの酸化によって得たものを使用できる。Hummers法は、一般に、グラファイトを過硫酸アンモニウム、五酸化二リン及び硫酸から選ばれる化合物との反応により前処理する工程(第一段階)と、前処理されたグラファイトを硫酸及び強い酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム)で酸化する工程(第二段階)とを含む。通常、前処理後のグラファイトは水で洗浄し、乾燥してから第二段階に供される。第二段階で酸化されたグラファイト(酸化グラフェン)は、過酸化水素、塩酸及び水等により洗浄してもよい。この方法によれば、粉末状の酸化グラフェンが得られる。
【0031】
分散媒としては、例えば、水、エタノール等のアルコール類、アセトン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化グラフェンとの親和性の観点では、分散媒が、水及びエタノールの少なくとも一方を含むことが好ましく、水を含むことがより好ましい。分散媒は、水とエタノールとを含む混合液であってもよい。分散媒中の水とエタノールの比率は、特に限定されないが、質量比で、0:1~1:0であってよく、1:3~3:1、1:2~1:2、1:1~1:0又は0:1~1:1であってもよい。分散媒中の水及びエタノールの合計量は、分散媒の全質量を基準として、80質量%以上であってよく、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。
【0032】
分散液中の酸化グラフェンの含有量は、十分な処理量を確保する観点、及び、処理効率を高める観点から、0.01g/L以上であってよく、0.05g/L以上又は0.2g/L以上であってもよい。分散液中の酸化グラフェンの含有量は、粒子凝集を抑制する観点から、2g/L以下であってよく、1.5g/L以下又は1g/L以下であってもよい。これらの観点から、分散液中の酸化グラフェンの含有量は、0.01~2g/Lであってよく、0.05~1.5g/L又は0.2~1g/Lであってもよい。
【0033】
分散液には、酸化グラフェン及び分散媒以外の他の成分が配合されていてもよいが、他の成分の配合量は、1g/L以下であってよく、0.1g/L以下又は0.01g/L以下であってもよい。
【0034】
分散液の噴霧は、公知の噴霧器を用いて行ってよい。公知の噴霧器としては、例えば、エアブラシ(スプレーガン)等が挙げられる。一般に、噴霧器は、噴霧ノズルを有しており、分散液は、特定の圧力下でキャリアガスとともに噴霧ノズルから放出され、微細な液滴(エアロゾル)として空気中に散布される。この際、分散液の噴霧量を調整することで、目的の膜厚の還元型酸化グラフェン膜が得られる。また、噴霧ノズルの形状、ノズル口径のサイズ等によって噴霧される液滴のサイズを調整することもできる。さらに、噴霧ノズルから基材表面までの距離を調整することで、液滴の分散時間及び酸化グラフェンの還元時間を十分に確保することができ、均一な膜を形成しやすくなる。噴霧ノズルから基材表面までの距離は、例えば、10~200mmとすることができる。
【0035】
分散液の噴霧に使用するキャリアガスとしては、例えば、二酸化炭素ガス、圧縮空気、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス等が挙げられる。キャリアガスの供給圧力は、例えば、0.2~1.0MPaとすることができる。
【0036】
分散液を噴霧する際には、公知の加熱手段によって、基材及び雰囲気の温度を調整してもよい。分散液を噴霧する際の基材の温度は、例えば、10~150℃又は10~120℃であってよく、分散液を噴霧する際の雰囲気の温度は、例えば、25~100℃であってよい。
【0037】
以上説明した方法によれば、還元型酸化グラフェン膜を形成することができ、基材と、該基材上に設けられた還元型酸化グラフェン膜と、を備える、物品を得ることができる。該物品は、例えば、透明電極、電磁波シールド、スーパーキャパシタ等である。
【0038】
上記実施形態の方法は、第2工程で得られた還元型酸化グラフェン膜を処理する工程を含んでいてもよい。例えば、上記実施形態の方法が、第2工程で得られた還元型酸化グラフェンの堆積物からなる膜を加熱処理することを含んでいてもよい。これにより、膜に残留する還元性成分(ヨウ素又はヨウ化水素)を除去することができる。
【0039】
還元型酸化グラフェン膜の形成方法としては、酸化グラフェン膜を形成した後に、該酸化グラフェン膜を還元する方法や、予め作製した還元型酸化グラフェンの粉末を用いて膜を形成する方法が一般的であったが、上記実施形態の方法では、酸化グラフェンの還元と、該還元により生成する還元型酸化グラフェンを含む膜(還元型酸化グラフェン膜)の形成と、を実質的に同時に進めることができることから、上記従来の方法と比較して、効率的に還元型酸化グラフェン膜を形成することができる。したがって、上記実施形態の方法は、還元型酸化グラフェン膜の大量生産に好適である。
【0040】
また、酸化グラフェン膜は水に溶けやすい性質を有するため、酸化グラフェン膜を還元する上記従来の方法では、酸化グラフェン膜の還元に使用する水溶液によってひび割れを起こすことがあるが、上記実施形態の方法によれば、上記ひび割れの発生を防ぐことができる。
【0041】
また、上記実施形態の方法では、基材の加熱が必須ではなく、高温アニーリングや二次転写プロセスを必要としないため、PET等の耐熱性の低い材料で構成された基材に対する直接成膜が可能である。
【0042】
さらに、上記実施形態の方法によれば、高抵抗であり、かつ、高い透明性を有する還元型酸化グラフェン膜を形成することができる。例えば、上記実施形態の方法では、波長550nmの光の透過率が85~99%であり、表面抵抗率が1500~60000Ω/□であり、厚さが0.0005~0.1μmである、還元型酸化グラフェン膜を形成することもできる。ここで、波長550nmの光の透過率は、JIS Z8722に準拠して、紫外可視赤外分光光度計V-550(日本分光株式会社製)を用いて測定される値である。また、表面抵抗率は、JIS K7194に準拠して、4探針抵抗率測定器Σ-5+(エヌピイエス株式会社製)を用いて測定される値であり、シート抵抗とも呼ばれる。
【0043】
波長550nmの光の透過率、表面抵抗率及び厚さは、還元性雰囲気中のヨウ素及びヨウ化水素の濃度、分散液中の酸化グラフェンの含有量、分散液の噴霧量等によって調整可能であり、波長550nmの光の透過率を0%超99%以下又は85~95.5%とすることもでき、表面抵抗率を200~60000Ω/□又は1800~56000Ω/□とすることもでき、厚さを0.0007~0.1μm又は0.0007~0.01μmとすることもできる。
【0044】
上記のような高抵抗であり、かつ、高い透明性を有する還元型酸化グラフェン膜は、透明電極、電磁波シールド等の材料として好適であり、フレキシブルでウェアラブルなエレクトロニクス、ペロブスカイト太陽電池、燃料電池、バッテリー、スーパーキャパシタ、センサー、触媒、分離膜、薬物送達等の分野への応用も期待できる。
【0045】
上記実施形態の方法で得られる還元型酸化グラフェン膜は、基材上に堆積した還元型酸化グラフェンにより構成される。還元型酸化グラフェンは、酸化グラフェンの部分還元体を含む。すなわち、還元型酸化グラフェンは酸素含有官能基を有する。酸素含有官能基としては、例えば、エポキシ基(-COC-)、水酸基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、カルボキシ基(-COOH)等が挙げられる。還元型酸化グラフェンが上記官能基を有することは、XPS(X線光電子分光法)によって分析して確認することができる。なお、還元型酸化グラフェン膜には、未還元の酸化グラフェンが含まれていてもよいが、未還元の酸化グラフェンは還元型酸化グラフェンの一部とみなす。
【0046】
還元型酸化グラフェンは、例えば、XPSによって測定されるC1sスペクトルにおいて、C=C及C=Oに帰属される結合を有してよい。ここで、C1sスペクトルとは、XPSスペクトルのうち、Cの1s軌道のエネルギーピーク位置に対応する領域を示す。Cの1s軌道のエネルギーピークは、そのピーク位置に基づき、Cを含むいずれかの結合に帰属される。還元型酸化グラフェンは、XPSによって測定されるC1sスペクトルにおいて、C-Oに帰属される結合及びO-C=Oに帰属される結合を有していてもよい。
【0047】
XPSによって測定される還元型酸化グラフェンのC1sスペクトルにおける、C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは2%以上であり、より好ましくは4%以上であり、さらに好ましくは5%以上であり、特に好ましくは6%以上である。上記C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは11%以下であり、より好ましくは9%以下であり、さらに好ましくは7%以下である。これらの観点から、上記C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは2~11%であり、より好ましくは4~9%であり、さらに好ましくは4~7%であり、さらにより好ましくは5~7%であり、特に好ましくは6~7%である。C1sスペクトルにおけるC=Oに帰属される結合の割合とは、C1sスペクトルにおいて観測されるピークから帰属される結合(例えばC=O、C-O及びO-C=O)全体に占める、C=Oに帰属される結合の割合を示す。
【0048】
XPSによって測定される還元型酸化グラフェンのC1sスペクトルにおける、C-Oに帰属される結合の割合は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは2%以上であり、さらにより好ましくは3%以上であり、特に好ましくは4%以上であり、極めて好ましくは5%以上であってもよい。上記C-Oに帰属される結合の割合は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは9%以下である。これらの観点から、上記C-Oに帰属される結合の割合は、好ましくは0~15%であり、より好ましくは1~12%であり、さらに好ましくは2~12%であり、さらにより好ましくは3~11%であり、特に好ましくは4~11%であり、極めて好ましくは5~9%である。C1sスペクトルにおけるC-Oに帰属される結合の割合とは、C1sスペクトルにおいて観測されるピークから帰属される結合(例えばC=O、C-O及びO-C=O)全体に占める、C-Oに帰属される結合の割合を示す。
【0049】
XPSによって測定される還元型酸化グラフェンのC1sスペクトルにおける、O-C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、さらにより好ましくは1.5%以上であり、特に好ましくは2%以上である。上記O-C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。これらの観点から、上記O-C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは0~5%であり、より好ましくは0.5~4%であり、さらに好ましくは1~3.5%であり、さらにより好ましくは1.5~3.5%であり、特に好ましくは2~3.5%である。C1sスペクトルにおけるO-C=Oに帰属される結合の割合とは、C1sスペクトルにおいて観測されるピークから帰属される結合(例えばC=O、C-O及びO-C=O)全体に占める、O-C=Oに帰属される結合の割合を示す。
【0050】
上記C1sスペクトルにおけるC=Oに帰属される結合の割合は、C1sスペクトルのピーク面積比率から求められる値であり、C=O結合を構成する酸素原子の原子濃度(単位atm%)といいかえることもできる。上記C1sスペクトルにおけるC-O及びO-C=Oに帰属される結合の割合についても同様である。上記XPSは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0051】
還元型酸化グラフェンは、XPSによって測定されるO1sスペクトルにおいて、C=Oに帰属される結合を有する。ここで、O1sスペクトルとは、XPSスペクトルのうち、Oの1s軌道のエネルギーピーク位置に対応する領域を示す。Oの1s軌道のエネルギーピークは、そのピーク位置に基づき、Oを含むいずれかの結合に帰属される。還元型酸化グラフェンは、XPSによって測定されるO1sスペクトルにおいて、C-Oに帰属される結合及びC-OHに帰属される結合を有していてもよい。
【0052】
XPSによって測定される還元型酸化グラフェンのO1sスペクトルにおける、C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。上記C=Oに帰属される結合の割合は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは75%以下であり、さらに好ましくは73%以下である。これらの観点から、上記C=Oに帰属される結合の割合は、例えば、25~80%、25~75%、30~75%又は60~73%であってよい。O1sスペクトルにおけるC=Oに帰属される結合の割合とは、O1sスペクトルにおいて観測されるピークから帰属される結合(例えばC=O、C-O及びC-OH)全体に占める、C=Oに帰属される結合の割合を示す。
【0053】
XPSによって測定される還元型酸化グラフェンのO1sスペクトルにおける、C-Oに帰属される結合の割合は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、特に好ましくは5%以上である。上記C-Oに帰属される結合の割合は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。これらの観点から、上記C-Oに帰属される結合の割合は、例えば、20~30%であってよい。O1sスペクトルにおけるC-Oに帰属される結合の割合とは、O1sスペクトルにおいて観測されるピークから帰属される結合(例えばC=O、C-O及びC-OH)全体に占める、C-Oに帰属される結合の割合を示す。
【0054】
上記O1sスペクトルにおけるC=Oに帰属される結合の割合は、O1sスペクトルのピーク面積比率から求められる値であり、C=O結合を構成する酸素原子の原子濃度(単位atm%)といいかえることもできる。上記O1sスペクトルにおけるC-Oに帰属される結合の割合についても同様である。上記XPSは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0055】
還元型酸化グラフェン膜中の還元型酸化グラフェンの還元の程度は、還元性雰囲気中のヨウ素及びヨウ化水素の濃度、噴霧ノズルから基材表面までの距離等により調整することができる。
【実施例0056】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<調製例1>
(酸化グラフェンの分散液の調製)
改良Hummers法により、グラファイト粉末(平均粒子径:45μm)から酸化グラフェン(GO)は合成した。具体的には、まず、60mlの硫酸(HSO、95質量%)を、500mlのビーカーに加えて80℃に加熱した。ここに、過硫酸アンモニウム((NH、98質量%)3.0gを撹拌しながら加えて溶解させ、溶液を得た。その後、五酸化二リン(P、98質量%)3.0gを上記溶液に徐々に加えて混合液を得た。この際、温度が80℃に保たれていることを確認した。次いで、得られた混合液に3.0gのグラファイトを加え、80℃で撹拌しながら4.5時間反応させることで、グラファイト混合液を得た。反応後、これを氷浴で10℃未満に保った。そして、450mlのDI水(脱イオン水)を、急な温度上昇に注意しながら、上記グラファイト混合液中にゆっくりと滴下した。その後、氷浴を外し、室温で一晩静置した。静置後の混合液をろ過し、ろ過物をDI水2000mlで洗浄した後、洗浄後のろ過物を約45℃で一晩乾燥させた。これにより、処理済みグラファイト(treated graphite)を得た。
【0058】
得られた処理済みグラファイト3.0gをビーカーに入れた後、さらなる酸化のために、硫酸150mlを当該ビーカーに加え、氷浴で0℃近くまで冷却した。冷却後の溶液に、10℃を超えないように、18.0gの過マンガン酸カリウム(KMnO、純度99.3%)を徐々に添加し、混合液を得た。得られた混合液を15分間撹拌した後、氷浴を外し、35℃に加熱しながら、2時間撹拌し反応させた。次いで、攪拌後の混合液を再び氷浴で0℃に冷却し、急な温度上昇に注意しながら255mlのDI水をゆっくりと添加した。次に、氷浴を外し、溶液の温度を35℃未満に保ちながら2時間撹拌した。撹拌終了後の溶液に、DI水750mlを撹拌しながら加え、さらに過酸化水素(H、30質量%)を5ml加えて2時間撹拌した後、一晩静置した。その後、上澄みをろ過することによりろ紙沈殿物及びビーカーの底の沈殿物を得た。得られたろ紙沈殿物及びビーカー沈殿物を同じビーカーに入れ、塩酸(10質量%)を250ml添加し、2時間撹拌後にろ過した。同じ操作を2回繰り返した後、ろ紙沈殿物及びビーカー沈殿物として酸化グラフェンを得た。得られた酸化グラフェン200mgを1000mlのDI水に溶解させ、酸化グラフェンの水分散液(酸化グラフェン含有量:0.2mg/ml)を得た。
【0059】
<実施例>
(第1工程)
予熱したホットプレート(モデル:HP-19U300、KPI(小池精密機器製作所)製)上にガラス皿(シャーレ)を配置し、ガラス皿の中に基板を配置した。次いで、ガラス皿を十分に加熱した後、ガラス皿の底にヨウ化水素酸(濃度:約1.6g/ml、55.0~58.0質量%)を滴下してヨウ化水素ガスを発生させ、ヨウ化水素ガスを含む還元性雰囲気を形成した。
【0060】
上記第1工程において、実施例a1~a6では、ホットプレートの予熱温度を90℃とし、基板にはソーダ石灰スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、S202356,MICRO SLIDE GLASS)を用いた。ヨウ化水素の滴下量は、実施例a1(a1-1~a1-7)では0.05mlとし、実施例a2(a2-1~a2-12)では0.1mlとし、実施例a3(a3-1~a3-14)では0.2mlとし、実施例a4(a4-1~a4-9)では0.3mlとし、実施例a5(a5-1~a5-9)では0.6mlとし、実施例a6(a6-1~a6-8)では、1.0mlとした。
【0061】
上記第1工程において、実施例b1~b5では、基板にはソーダ石灰スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、S202356,MICRO SLIDE GLASS)を用い、ヨウ化水素の滴下量は0.2mlとした。ホットプレートの予熱温度は、実施例b1(b1-1~b1-14)では90℃とし、実施例b2(b2-1~b2-8)では100℃とし、実施例b3(b3-1~b3-13)では120℃とし、実施例b4(b4-1~b4-10)では150℃とし、実施例b5(b5-1~b5-12)では200℃とした。なお、実施例b1-1は、実施例a3-1と同一である。
【0062】
上記第1工程において、実施例c1~c4では、ホットプレートの予熱温度を90℃とし、ヨウ化水素の滴下量は0.2mlとした。基板は、実施例c1(c1-1~c1-14)ではソーダ石灰スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、S202356,MICRO SLIDE GLASS)を用い、実施例c2(c2-1~c2-34)では石英スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製)を用い、実施例c3(c3-1~c3-11)ではポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン社製)を用い、実施例c4(c4-1~c4-14)ではポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製)を用いた。なお、実施例c1-1は、実施例a3-1と同一である。
【0063】
(第2工程)
次いで、エアブラシ(ノズル直径0.5mm、Mr. Hobby Procon Boy PS-290 トリガー エアブラシ)を用いて、上記還元性雰囲気下の基板上に、上記調製例1で調製した酸化グラフェンの水分散液(酸化グラフェン含有量:0.2mg/ml)を噴霧した。この際、噴霧量は表1~15に示す膜厚が得られるように実施例毎に調整した。スプレー用のガス(キャリアガス)はCOガスボンベにより供給し、ガス供給圧力は0.4MPaとした。また、エアブラシの噴霧ノズルから基板表面までの距離は、150mmとした。
【0064】
以上の操作により、各実施例の還元型酸化グラフェン膜を形成した。
【0065】
(FT-IR分析)
材料である酸化グラフェンと、各実施例の還元型酸化グラフェンを構成する還元型酸化グラフェンについて、FT/IR―6300(日本分光株式会社製)を用いて、フーリエ変換型赤外分光法による測定を行った。酸化グラフェンのFT-IRスペクトル上では、O-H(3408cm-1及び1269cm-1)、C=O(1720cm-1)、C=C(1622cm-1)及びC-O(1060cm-1)の吸収バンドが確認されたが、いずれの実施例でも、還元型酸化グラフェンのFT-IRスペクトルにおいて、酸化官能基(C=O、C-O、O-H)の吸収バンドが顕著に減少し、特に、3408cm-1近傍のO-Hの吸収バンドが消失していることを確認した。参考までに、酸化グラフェン(GO)及び実施例a3―8の還元型酸化グラフェン(rGO)のFT-IRスペクトルを図1に示す。
【0066】
(XPS分析)
材料である酸化グラフェンと、各実施例の還元型酸化グラフェン膜を構成する還元型酸化グラフェンについて、株式会社島津製作所製のESCA3400分光計を用いてX線光電子分光(XPS)分析を行った。X線源には、MgKα(hv=1.2536keV)を使用した。XPS分析の結果、実施例の還元型酸化グラフェンでは、炭素と酸素の間の結合エネルギーピークが酸化グラフェンにおける炭素と酸素の間の結合エネルギーピークよりもはるかに低くなっており、酸素官能基が大幅に減少していることが確認された。また、酸化グラフェンではC/O比が2.3であったが、実施例の還元型酸化グラフェンではC/O比が約12となっており、このことからも、実施例では、酸素官能基が大幅に減少していることが確認された。参考までに、酸化グラフェン及び実施例a3―8の還元型酸化グラフェンのXPSスペクトルを図2に示す。図2の(a)が、酸化グラフェン(GO)のXPS(C1s)スペクトルを示す図であり、図2の(b)が、実施例a3―8の還元型酸化グラフェン(rGO)のXPS(C1s)スペクトルを示す図である。ここで、XPS(C1s)スペクトルは、XPSスペクトルのうち、Cの1s軌道のエネルギーピーク位置に対応する領域を示している。図2の(a)及び(b)中、生データを〇で示し、生データのフィッティング結果を破線で示している。図2の(a)及び(b)におけるスペクトル(破線)の4つのピークは、それぞれC-C/C=C(284.2eV)、C-O-C/C-OH(286.1eV)、C=O(287.4eV)、COOH(288.6eV)に帰属される。
【0067】
(評価)
上記で得られた還元型酸化グラフェン膜の波長550nmの光の透過率及び表面抵抗率及びを測定した。波長550nmの光の透過率は、JIS Z8722に準拠して、紫外可視赤外分光光度計V-550(日本分光株式会社製)を用いて測定した。表面抵抗率は、JIS K7194に準拠して、4探針抵抗率測定器Σ-5+(エヌピイエス株式会社製)を用いて測定した。結果を表1~15及び図3~5に示す。図3は、実施例a1~a6の還元型酸化グラフェン膜における波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。図4は、実施例b1~b5の還元型酸化グラフェン膜における波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。図5は、実施例c1~c4の還元型酸化グラフェン膜における波長550nmの光の透過率と表面抵抗率との相関を示すグラフである。いずれのグラフにおいても、縦軸が表面抵抗率(Rs)を示し、横軸が波長550nmの光の透過率(Tt)を示す。
【0068】
(滴下量:0.05ml)
【表1】
【0069】
(滴下量:0.1ml)
【表2】
【0070】
(滴下量:0.2ml)
【表3】
【0071】
(滴下量:0.3ml)
【表4】
【0072】
(滴下量:0.6ml)
【表5】
【0073】
(滴下量:1.0ml)
【表6】
【0074】
(予熱温度:90℃)
【表7】
【0075】
(予熱温度:100℃)
【表8】
【0076】
(予熱温度:120℃)
【表9】
【0077】
(予熱温度:150℃)
【表10】
【0078】
(予熱温度:200℃)
【表11】
【0079】
(基板:ソーダ石灰スライドガラス)
【表12】
【0080】
(基板:石英スライドガラス)
【表13】
【0081】
(基板:ポリイミドフィルム)
【表14】
【0082】
(基板:ポリエチレンテレフタレートフィルム)
【表15】
【0083】
(比較例)
非特許文献1に記載の方法と同様にして、ヒドラジンの代わりにヨウ化水素を用いて酸化グラフェン膜の形成を試みた。具体的には、まず、ヨウ化水素酸(濃度:約1.6g/ml、55.0~58.0質量%)0.2mlと、上記調製例1で作製した酸化グラフェンの水分散液(酸化グラフェン含有量:0.2mg/ml)10mlとを混合し、攪拌することにより、酸化グラフェンとヨウ化水素とを含む水分散液を調製した。次いで、エアブラシ(ノズル直径0.5mm、Mr. Hobby Procon Boy PS-290 トリガー エアブラシ)を用いて、ソーダ石灰スライドガラス上に、上記水分散液の噴霧を試みた。しかしながら、噴霧開始後すぐに、スプレーガンの噴霧ノズルがつまり、噴射がストップされたため、還元型酸化グラフェン膜を形成することはできなかった。これは、噴霧ノズル近傍で還元型酸化グラフェンの微粒子が生成したためであると推察される。
図1
図2
図3
図4
図5