(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088512
(43)【公開日】2025-06-11
(54)【発明の名称】化粧板用裏面防湿紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20250604BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250604BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20250604BHJP
D21H 19/22 20060101ALI20250604BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20250604BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B15/08 E
D21H27/30 C
D21H19/22
D21H21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203258
(22)【出願日】2023-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】古沢 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AA20E
4F100AB10C
4F100AC03A
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4F100AC10A
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4F100AK24C
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4F100YY00
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4F100YY00C
4L055AG03
4L055AG58
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4L055AG71
4L055AG85
4L055AG87
4L055AG89
4L055AJ02
4L055BE08
4L055BE09
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA11
4L055GA40
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】本願は、高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙であって、製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも水蒸気バリア性の低下を抑制できる化粧板用裏面防湿紙を提供することを目的としている。
【解決手段】本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、少なくとも紙基材11と、第1樹脂層12と、アルミニウム蒸着層13とをこの順番に備え、23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される化粧板用裏面防湿紙100の含有水分率が、4.4質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙基材と、第1樹脂層と、アルミニウム蒸着層とをこの順番に備える化粧板用裏面防湿紙であって、
23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される前記化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が、4.4質量%以下である、化粧板用裏面防湿紙。
【請求項2】
前記第1樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項3】
前記第1樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アクリルウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項4】
前記アルミニウム蒸着層の前記第1樹脂層とは反対側の面上に、第2樹脂層を更に備える、請求項1に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項5】
前記第2樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂を含む、請求項4に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項6】
前記アルミニウム蒸着層の厚さが20nm以上100nm以下である、請求項1に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項7】
前記アルミニウム蒸着層の表出面側、若しくは前記アルミニウム蒸着層の前記第1樹脂層とは反対側の面上に備わる第2樹脂層の表出面側に接着用プライマー層を設けた、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項8】
前記紙基材が紙間強化紙である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項9】
前記紙基材に含まれる紙成分の質量が、化粧板用裏面防湿紙全体の質量を基準として、50質量%以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のドアパネルなどに用いる化粧板に用いる防湿紙であって、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを防止するために、化粧板の裏面に貼り合わせて用いる化粧板用裏面防湿紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内のドアパネルなどの用途に用いる化粧板としては、合板、中密度繊維板(MDF)、ベニア板、ボード材、その他の多層構造の木質系基材の表面に、隠蔽性を与えるためのベタ印刷層や意匠性を向上させるための絵柄模様層を印刷した化粧シートを貼り合わせたものが一般的に知られている。
木質系基材は、その含水率が外気条件において、木質系基材の平衡含水率より小さい場合は、化粧板の化粧シートを貼り合せていない面から吸湿して面が膨張し、木質系基材の平衡含水率より大きい場合には、化粧板の化粧シートを貼り合せていない面から放湿して収縮が起こるのに対して、化粧シートを貼り合せた面は、吸放湿がほとんどないため、化粧板に変形(反り、寸法変化)が生じる。
【0003】
この変形を防止するための方法として、表面に化粧シートを貼り合せた化粧板の裏面に塗料を塗布する方法や、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シートを貼り合せる方法や、或いは、紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートを貼り合せる方法等が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、更に高い防湿性が求められる場合は、化粧板の変形を防止するための方法として、合成樹脂基材に蒸着層を設けた防湿シートを貼り合せる方法等が知られている。
高い防湿性能を得るためには、平滑な面に蒸着層を設ける必要があることから、一般的に合成樹脂基材が選択されており、紙基材を用いて高い防湿性能を得ることは、技術的に困難とされている。
また、他方では近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、脱プラスチックの機運が高まっている。プラスチック材料の使用量削減の観点から、種々の分野において、プラスチック材料の代わりに、紙を使用することが検討されている。
また、例えば下記特許文献2では、紙にバリア層を積層した積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3206408号公報
【特許文献2】特許第6668576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の防湿裏面シートでは、防湿性が不十分な場合があり、両面の温湿度環境に大きな差があるドア、引き戸、間仕切り等に長期間使用された場合には、両面の伸縮の度合いが異なり、化粧板に反りが発生する場合がある。
更に、いずれもプラスチック材料が主材料となっており、環境負荷において、その使用量の削減が求められている。
近年では、環境面に配慮して、合成樹脂フィルム等を使用せずに、紙を基材としたガスバリア性材料の開発が進められてきているが、紙にバリア層を積層した積層体は、初期(製造直後)の水蒸気バリア性は良好であるものの、製造されてから長期間経過した場合、水蒸気バリア性が低下するという問題があることを本発明者らは見出した。
【0007】
そこで、本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙であって、製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも水蒸気バリア性の低下を抑制できる化粧板用裏面防湿紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の化粧板用裏面防湿紙の一つは、紙基材と第1樹脂層とアルミニウム蒸着層とをこの順で備えた化粧板用裏面防湿紙、若しくは紙基材と第1樹脂層とアルミニウム蒸着層と第2樹脂層とをこの順で備えた化粧板用裏面防湿紙であって、23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が4.4質量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、紙及びアルミニウム蒸着を使用した化粧板用裏面防湿紙であって、紙成分比率が高く、かつ製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも水蒸気バリア性の低下を抑制できる化粧板用裏面防湿紙を提供することができる。
さらに、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙によれば、プラスチック材料の使用量削減に寄与する化粧板用裏面防湿紙を提供できる。
つまり、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙によれば、高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙であって、製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも水蒸気バリア性の低下を抑制できる化粧板用裏面防湿紙を提供できる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙に接着用プライマー層を設けた構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1、
図2を参照しながら説明を加える。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0012】
<化粧板用裏面防湿紙100>
図1は、本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100の構成を示す模式断面図である。
本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、図示しないが、例えば室内のドアパネルなどに用いる化粧板の裏面に貼り合わせて用いられる防湿紙である。本実施形態において、この化粧板用裏面防湿紙100を、以下、単に「防湿紙100」ともいう。
防湿紙100は、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で、化粧板に発生する反りを防止するために使用される。
【0013】
本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、少なくとも紙基材11と、第1樹脂層12と、アルミニウム蒸着層13とをこの順番に備え、23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される化粧板用裏面防湿紙100の含有水分率が、4.4質量%以下である。
また、本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、アルミニウム蒸着層13の第1樹脂層12とは反対側の面上に、第2樹脂層14を更に備えてもよい。
【0014】
化粧板用裏面防湿紙100によれば、23℃50%RH環境下で48時間以上放置(調湿)した後に測定される化粧板用裏面防湿紙100の含有水分率(以下、単に「含有水分率」という)が4.4質量%以下であることで、化粧板用裏面防湿紙100が有する水蒸気バリア性の長期安定性を向上させることができ、化粧板用裏面防湿紙100が製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも、水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
かかる効果が奏される理由について、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が大きい場合、アルミニウム蒸着層が腐食しやすく、アルミニウム蒸着層に欠陥が生じる。その結果、アルミニウム蒸着層が有する水蒸気バリア性の効果が低下すると考えられる。
【0015】
これに対し、化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が上記範囲であることにより、上述した現象によるアルミニウム蒸着層の水蒸気バリア性の低下が抑制され、化粧板用裏面防湿紙が製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも、化粧板用裏面防湿紙の水蒸気バリア性が維持されると考えられる。
化粧板用裏面防湿紙100を用いることで、脱プラスチックや海洋ごみ問題に対応した防湿紙であって、紙成分の比率が高く、且つ安定して優れた水蒸気バリア性を有する防湿紙を提供することができる。
【0016】
図1は、本開示の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙の構成を示す模式断面図である。本開示の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、例えば、紙基材11と、第1樹脂層12と、アルミニウム蒸着層13と、第2樹脂層14とをこの順に備える。以下、各層について説明する。
【0017】
[防湿紙100の透湿度]
防湿紙100の透湿度は、5g/m2・24hr以下であれば好ましく、3g/m2・24h以下であればさらに好ましい。透湿度が上述した数値以下であれば、一般に優れた防湿性能を備えていると評価される。なお、防湿紙100の透湿度の下限は、0g/m2・24hrであるが、上述した防湿紙100の透湿度の上限以下であれば、例えば、0.1g/m2・24hr以上の透湿度であってもよく、0.3g/m2・24hr以上の透湿度であってもよく、0.5g/m2・24hr以上の透湿度であってもよい。
【0018】
<紙基材>
紙基材11としては、特に限定されるものではなく、適用される化粧板用裏面防湿紙100の用途に応じて適宜選択すればよい。
紙基材11の具体例として、薄葉紙、上質紙、アート紙、キャストコート紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
好ましくは、紙成分(例えば、セルロース繊維)に合成樹脂を混抄させて、紙間強度を強化した薄葉紙(いわゆる紙間強化紙)や紙にラテックスや合成樹脂を含浸したものが、好ましく使用される。
【0019】
紙基材11の坪量としては特に限定されないが、紙基材11の坪量が20g/m2未満の場合は柔軟すぎるため、加工時に皺の発生が起こりやすい。また、紙基材11の坪量が200g/m2超の場合は、紙層からの剥がれが発生しやすい。そのため、紙基材11の坪量は、20g/m2以上200g/m2以下の範囲内が好ましく、20g/m2以上100g/m2以下の範囲内がより好ましく、20g/m2以上50g/m2以下の範囲内がさらに好ましい。
【0020】
紙基材11の坪量が上記範囲内であると、防湿紙100は、初期(製造直後)だけでなく長期間経過(製造後、少なくとも12か月間経過)した後であっても、より良好な水蒸気バリア性を得ることができる。上記坪量が低い方が紙基材11の水分量が少なくなるためアルミニウム蒸着層13の腐食は起こりにくいが、上記坪量が少なすぎると第1樹脂層12の塗工及び乾燥時に紙基材11の寸法変化が起こりやすく、防湿紙100にシワなどの外観不良が生じる場合がある。アルミニウム蒸着層13の腐食抑制と防湿紙100の外観とを両立する上で好ましい紙基材11の厚さ(坪量)の範囲が上記範囲である。
また、これらの紙基材11については、その表面に、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理等の表面処理を行ってもよい。
【0021】
紙基材11には、後述する第1樹脂層12と接する側にコート層(図示せず)を設けてあってもよい。紙基材11がコート層を備える場合、紙基材11は少なくとも紙層とコート層とを備えていてもよい。コート層は、紙基材11の両方の表面(表面及び裏面)に設けられていてもよい。コート層を設けることで、紙基材11に第1樹脂層12を構成する樹脂が染み込むことを防ぐことができるほか、紙基材11の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともできる。そのため、表面にコート層を備えた紙基材11であれば、第1樹脂層12を、塗工ムラ等の欠陥なく均一に製膜することができる。
【0022】
コート層には、バインダー樹脂として、例えば、スチレン-ブタジエン系、スチレン-アクリル系、エチレン-酢酸ビニル系などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等が含まれていてもよい。また、コート層には、填料として、例えばクレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。また、コート層は、少なくとも填料としてクレーを含有するクレーコート層であってもよい。
紙基材11がコート層を備える場合、コート層の厚さは、1.5μm以上15μm以下の範囲内であれば好ましい。また、コート層の厚さは、1.8μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、6μm以上であってもよい。また、コート層の厚さは、12μm以下であってもよく10μm以下であってもよい。コート層の厚さが上記範囲内であると、防湿紙100は、より良好な水蒸気バリア性を得ることができる。
【0023】
コート層の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。コート層の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、紙基材11と第1樹脂層12との接着性が向上する。
紙基材11の質量、より具体的には紙基材11に含まれる紙成分の質量は、化粧板用裏面防湿紙100全体の質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。紙基材11の質量が化粧板用裏面防湿紙100全体の質量を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、化粧板用裏面防湿紙100全体として紙製であるということ(「紙製」である旨の表示をすること)ができるとともに、リサイクル性に優れる。
【0024】
<第1樹脂層12>
第1樹脂層12は、紙基材11の表面上に設けられ、紙基材11と後述するアルミニウム蒸着層13との間の密着性向上や、防湿紙100のバリア性の向上のために設けられるものである。
第1樹脂層12は、極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてよい。また、防湿紙100の含有水分率をより低減し、長期間経過後(少なくとも12か月間経過後)の水蒸気バリア性の低下をより抑制する観点から、第1樹脂層12は、極性基を有するポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アクリルウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
第1樹脂層12が極性基を有するポリオレフィン樹脂を含む場合、第1樹脂層12は柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に後述するアルミニウム蒸着層13の割れを抑制することができるとともに、第1樹脂層12とアルミニウム蒸着層13との密着性を向上させることができる。さらに、極性基を有するポリオレフィン樹脂を含むことで、ポリオレフィン樹脂の結晶性に起因して緻密な膜の形成が可能であり、水蒸気バリア性が発現する。つまり、第1樹脂層12が極性基を有するポリオレフィン樹脂で形成されている場合には、そのポリオレフィン樹脂の結晶性に起因して水蒸気バリア性が発現し、極性基を有することでアルミニウム蒸着層13との密着が発現する。
極性基を有するポリオレフィン樹脂は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有していてもよい。
【0026】
極性基を有するポリオレフィン樹脂として、エチレンやプロピレンに、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等カルボキシル基を有する不飽和化合物)や、不飽和カルボン酸エステルを共重合したもの、及びカルボン酸を塩基性化合物で中和した塩などを用いてもよく、その他、酢酸ビニル、エポキシ系化合物、塩素系化合物、ウレタン系化合物、ポリアミド系化合物等と共重合したものなどを用いてもよい。
極性基を有するポリオレフィン樹脂として、具体的には、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0027】
第1樹脂層12がポリビニルアルコール系樹脂を含む場合、ポリビニルアルコール系樹脂は極性基(水酸基)を有し、この極性基がアルミニウム蒸着層表面の酸化アルミニウムと結合しやすくなるため、アルミニウム蒸着層13と第1樹脂層12との間の密着性を向上させやすくすることができる。また、このような第1樹脂層12は、柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)にアルミニウム蒸着層13の割れを抑制することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂はビニルアルコールを構成単位として含む樹脂であり、ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、完全けん化のポリビニルアルコール樹脂、部分けん化のポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられる。
【0028】
第1樹脂層12には、上述した樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、上記極性基を有するポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂、シランカップリング剤、有機チタネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
第1樹脂層12における、極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂の含有量は、例えば、第1樹脂層12全体の質量に対して50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0029】
第1樹脂層12の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、0.8μm以上であってよく、1μm以上であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってよい。第1樹脂層12の厚さが0.5μm以上であれば、上述した紙基材11の凹凸を効率的に埋めることができ、後述するアルミニウム蒸着層13を均一に積層させることができる。また、第1樹脂層12の厚さが20μm以下であれば、コストを抑えつつアルミニウム蒸着層13を均一に積層させることができる。
【0030】
第1樹脂層12を形成するための塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
第1樹脂層12は、例えば、紙基材11上に、上述した樹脂及び溶媒等を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。なお、第1樹脂層12において、上述した樹脂は粒状であってもよい。
【0031】
塗液の乾燥温度は、105℃~160℃であることが好ましく、110℃~155℃であることがより好ましく、120℃~150℃であることが更に好ましく、130℃~145℃であることが特に好ましい。乾燥温度を105℃以上とすることで、防湿紙100の含有水分率を低下させることができる。紙は環境中の湿度に合わせて吸湿したり、脱湿したりして、湿度に応じて水分量が変わる性質を持つ。この時、オーブンなどの高熱乾燥で急激に水分量が低下すると、その後、紙を湿度環境に放置した際、その水分量は高温乾燥前よりも少なくなる。つまり、高温乾燥させた紙の吸湿量は小さくなる(紙のヒステリシス現象)。
しかし、乾燥温度が高すぎると、急激な水分量の変化で紙が収縮し、シワなどの外観不良が生じる場合がある。乾燥温度を160℃以下とすることで、紙の急激な収縮によるシワなどの外観不良の発生を抑制できる。また、塗膜の乾燥時間は、例えば0.1分間~2分間であってよい。
【0032】
また、第1樹脂層12の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。第1樹脂層12の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、第1樹脂層12とアルミニウム蒸着層13との接着性が向上する。そのため、アルミニウム蒸着層13にクラック等が発生する頻度と低減することができるため、優れたガスバリア性を付与することができる。
【0033】
<アルミニウム蒸着層13>
アルミニウム蒸着層13は、アルミニウム又はアルミニウム化合物を蒸着した層である。アルミニウム蒸着層13としては、アルミニウムを蒸着して得られたものであればよく、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)等を含むものであってもよい。
アルミニウム蒸着層13の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、好ましくは10nm~300nmであり、より好ましくは20nm~100nmであり、更に好ましくは30nm~100nmである。アルミニウム蒸着層13の厚さを10nm以上とすることでアルミニウム蒸着層13の連続性を十分なものとしやすく、300nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。また、アルミニウム蒸着層13の厚さを20nm以上100nm以下とすることで、アルミニウム蒸着層13がより割れにくくなり、折り曲げ後であっても十分な水蒸気バリア性を得ることができる。
【0034】
アルミニウム蒸着層13は、真空成膜手段によって成膜することが、水蒸気及び酸素ガスバリア性能、並びに膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
また、アルミニウム蒸着層13の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。アルミニウム蒸着層13の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、アルミニウム蒸着層13と第2樹脂層14との接着性が向上する。そのため、アルミニウム蒸着層13にクラック等が発生する頻度と低減することができるため、優れたガスバリア性を付与することができる。
【0035】
<第2樹脂層14>
第2樹脂層14は、アルミニウム蒸着層13の表面上に、アルミニウム蒸着層13に接するように設けられる。防湿紙が第2樹脂層14を備えることで、アルミニウム蒸着層13が水分に曝されて水蒸気バリア性が低下することを防ぐことができ、長期間経過後(少なくとも12か月間経過後)における防湿紙の水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。第2樹脂層14は、極性基を有するポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
極性基を有するポリオレフィン樹脂は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有していてもよい。
【0036】
極性基を有するポリオレフィン樹脂として、エチレンやプロピレンに、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等カルボキシル基を有する不飽和化合物)や、不飽和カルボン酸エステルを共重合したもの、及びカルボン酸を塩基性化合物で中和した塩などを用いてもよく、その他、酢酸ビニル、エポキシ系化合物、塩素系化合物、ウレタン系化合物、ポリアミド系化合物等と共重合したものなどを用いてもよい。
極性基を有するポリオレフィン樹脂として、具体的には、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0037】
第2樹脂層14が極性基を有するポリオレフィン樹脂を含むことで、第2樹脂層14は柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)にアルミニウム蒸着層13の割れを抑制することができるとともに、アルミニウム蒸着層13との密着性に優れる。さらに、上述した極性基を有するポリオレフィン樹脂を含むことで、ポリオレフィン樹脂の結晶性に起因して緻密な膜の形成が可能であり、水蒸気バリア性が発現する。また、極性基を有することでアルミニウム蒸着層13との密着が発現する。さらに、第2樹脂層14が上述した極性基を有するポリオレフィン樹脂を含むことで、防湿紙100の含有水分率を低減でき、長期間経過後(少なくとも12か月間経過後)における防湿紙100の水蒸気バリア性の低下をより十分に抑制することができる。
【0038】
第2樹脂層14には、上記極性基を有するポリオレフィン樹脂のほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂系エマルジョン、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
第2樹脂層14における極性基を有するポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、第2樹脂層14全体の質量に対して50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0039】
第2樹脂層14の厚さは、例えば、0.05μm以上であってよく、0.5μm以上であってよく、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってよい。第2樹脂層14の厚さが0.05μm以上であれば、長期間経過後(少なくとも12か月間経過後)における防湿紙100の水蒸気バリア性の低下をより十分に抑制することができる。また、第2樹脂層14の厚さが20μm以下であれば、コストを抑えつつアルミニウム蒸着層13との密着性やバリア性を十分に発揮することができる。また、第2樹脂層14の厚さを2μm以上10μm以下とすることで、アルミニウム蒸着層13がより割れにくくなり、折り曲げ後であっても十分な水蒸気バリア性を得ることができる。
【0040】
防湿紙100において、第2樹脂層14に極性基を有するポリオレフィン樹脂を含有させ、第2樹脂層14の厚さを2μm以上10μm以下とし、且つ、アルミニウム蒸着層13の厚さを20nm以上100nm以下とした場合に、アルミニウム蒸着層13が割れにくくなり、折り曲げ後であっても十分な水蒸気バリア性を得ることができるという効果が特に顕著に奏される。
【0041】
第2樹脂層14を形成するための塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0042】
第2樹脂層14は、例えば、アルミニウム蒸着層13上に上述した極性基を有するポリオレフィン樹脂及び溶媒等を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。なお、第2樹脂層14において、極性基を有するポリオレフィン樹脂は粒状であってもよい。
塗液中における極性基を有するポリオレフィン樹脂の融点は、70℃~160℃が好ましく、80℃~120℃がより好ましい。極性基を有するポリオレフィン樹脂の融点が高いと高温環境下においてブロッキングする恐れが高まる。なお、ブロッキングを防止する観点から、接触面積が小さくなるよう、極性基を有するポリオレフィン樹脂の粒径は大きい方がよい。特に限定されるものではないが、極性基を有するポリオレフィン樹脂の粒径は具体的には1nm以上であってよく、0.1μm以上であってよく、1μm以下であってよく、0.7μm以下であってよく、0.5μm以下であってよい。
【0043】
塗液の乾燥温度は、105℃~160℃であることが好ましく、110℃~155℃であることがより好ましく、120℃~150℃であることが更に好ましく、130℃~145℃であることが特に好ましい。乾燥温度を105℃以上とすることで、防湿紙100の含有水分率を低下させることができる。紙は環境中の湿度に合わせて吸湿したり、脱湿したりして、湿度に応じて水分量が変わる性質を持つ。この時、オーブンなどの高熱乾燥で急激に水分量が低下すると、その後、紙を湿度環境に放置した際、その水分量は高温乾燥前よりも少なくなる。つまり、高温乾燥させた紙の吸湿量は小さくなる(紙のヒステリシス現象)。
しかし、乾燥温度が高すぎると、急激な水分量の変化で紙が収縮し、シワなどの外観不良が生じる場合がある。乾燥温度を160℃以下とすることで、紙の急激な収縮によるシワなどの外観不良の発生を抑制できる。また、塗膜の乾燥時間は、例えば0.1分間~2分間であってよい。
【0044】
また、第2樹脂層14の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。第2樹脂層14の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、第2樹脂層14と接着用プライマー層15との接着性が向上する。そのため、防湿紙100が剥離する頻度と低減することができる。
防湿紙100の含有水分率は、防湿紙100全量を基準(100質量%)として4.4質量%以下である。この含有水分率は、防湿紙100を23℃50%RH環境下で48時間以上放置(調湿)した後に測定される値である。防湿紙100の含有水分率が4.4質量%以下であることで、防湿紙100が製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合でも水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0045】
防湿紙100の含有水分率を上記範囲内とする方法は特に限定されないが、例えば、第1樹脂層12及び第2樹脂層14を形成する際の乾燥温度を高温にして紙の吸湿量を小さくする方法、第1樹脂層12及び第2樹脂層14の材料として水分を吸収し難い材料を使用する方法、紙基材11として水分を吸収し難い材料を使用する方法等が挙げられる。防湿紙100の含有水分率は、長期間経過後(少なくとも12か月間経過した後)における水蒸気バリア性の低下をより十分に抑制する観点から、4.3質量%以下であってよく、4.0質量%以下であってよく、3.9質量%以下であってよい。含有水分率の下限値は特に限定されないが、例えば1.0質量%以上であってよい。
なお、防湿紙100の含有水分率は、JIS P8111:1998に従って23℃、50%RH環境下で防湿紙を48時間以上放置して調湿した後、JIS P8127:2010に従って測定される値である。
【0046】
<接着用プライマー層15>
本実施形態では、アルミニウム蒸着層13の表出面側、若しくは、
図2に示すように、アルミニウム蒸着層13の第1樹脂層12とは反対側の面上に備わる第2樹脂層14の表出面側に接着用プライマー層15を設けてもよい。
接着用プライマー層15は、各種の被貼着基材の表面に積層貼着する際に使用されるものであり、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種のラミネート用接着剤との接着性を十分に確保する目的で設けられるものである。
【0047】
その材質としては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中からラミネート用接着剤の種類に合せたものを選んで使用する。
例えば、ラミネート用接着剤として変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を使用する場合には、ウレタン系接着用プライマー剤で良好な接着が得られる。
なお、接着用プライマー層15に、例えばシリカ等の無機質微粉末を添加しておくと、接着用プライマー層15の表面が粗面化することにより、防湿紙100の巻取り保存時のブロッキングが防止できる他、投錨効果によるラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【0048】
また、これらの接着用プライマー層15は、単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
また、接着用プライマー層15の表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上3μm以下の範囲内でさらに好ましい。接着用プライマー層15の表面粗さ(Ra)が上記数値範囲であれば、投錨効果により、接着用プライマー層15とラミネート用接着剤との接着性が向上する。
【0049】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、少なくとも紙基材11と、第1樹脂層12と、アルミニウム蒸着層13とをこの順番に備え、23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が、4.4質量%以下である。
このような構成であれば、製造されてから長期間経過(少なくとも12か月間経過)した場合であっても水蒸気バリア性の低下を抑制できる。
【0050】
(2)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成する第1樹脂層12は、極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、アルミニウム蒸着層13が水分に曝されて水蒸気バリア性が低下することを防ぐことができる。
【0051】
(3)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成する第1樹脂層12は、極性基を有するポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アクリルウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、アルミニウム蒸着層13が水分に曝されて水蒸気バリア性が低下することをさらに防ぐことができる。
【0052】
(4)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成するアルミニウム蒸着層13の第1樹脂層12とは反対側の面上に、第2樹脂層14を更に備えていてもよい。
このような構成であれば、アルミニウム蒸着層13が水分に曝されて水蒸気バリア性が低下することを防ぐことができる。
【0053】
(5)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成する第2樹脂層14は、極性基を有するポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、アルミニウム蒸着層13が水分に曝されて水蒸気バリア性が低下することをさらに防ぐことができる。
【0054】
(6)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成するアルミニウム蒸着層13の厚さは、20nm以上100nm以下であってもよい。
このような構成であれば、アルミニウム蒸着層13の連続性が十分なものとなり、化粧板用裏面防湿紙100におけるカールやアルミニウム蒸着層13におけるクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能および可撓性を達成することができる。
【0055】
(7)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100は、アルミニウム蒸着層13の表出面側、若しくはアルミニウム蒸着層13の第1樹脂層12とは反対側の面上に備わる第2樹脂層14の表出面側に接着用プライマー層15を設けてもよい。
このような構成であれば、化粧板用裏面防湿紙100とラミネート用接着剤との接着性を十分に確保することができる。
【0056】
(8)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成する紙基材11は、紙間強化紙であってもよい。
このような構成であれば、紙基材11の機械的強度を高めることができる。
【0057】
(9)本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙100を構成する紙基材11に含まれる紙成分の質量は、化粧板用裏面防湿紙100全体の質量を基準として、50質量%以上であってもよい。
このような構成であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができる。
【0058】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0059】
<防湿紙の作製>
(実施例1)
紙基材として50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙(株)製)の表面上に、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィン樹脂(極性基含有ポリオレフィン)の水分散液(住友精化株式会社製、商品名:ザイクセンAC、粒径:0.2μm未満、溶媒:水/IPA=1/1(質量比)、固形分濃度:22.5質量%)をバーコーターで塗工し、オーブン中、140℃で1分間乾燥させ、厚さ3μmの第1樹脂層を形成した。
続いて、第1樹脂層上に真空蒸着法にてAl蒸着を施し、厚さ50nmのAl蒸着層(アルミニウム蒸着層)を形成した。
次に、Al蒸着層上に、カルボキシル基の塩を含むポリオレフィン樹脂(極性基含有ポリオレフィン)の水分散液(三井化学株式会社製、商品名:ケミパールS100、粒径:0.1μm未満、溶媒:水/IPA=1/1(質量比)、固形分濃度:20.0質量%)をバーコーターで塗工し、オーブン中、140℃で1分間乾燥させ、厚さ3μmの第2樹脂層を形成した。これにより、実施例1の防湿紙を得た。
【0060】
(実施例2)
紙基材として、65g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の防湿紙を作製した。
【0061】
(実施例3)
紙基材として50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙(株)製)の表面上に、重合度500、鹸化度98モル%のPVA(ポリビニルアルコール)樹脂(株式会社クラレ製、商品名:ポバール5-98)を水/IPA=8/2(質量比)の溶液に固形分濃度10質量%で溶解した塗液をバーコーターで塗工し、オーブン中、140℃で1分間乾燥させ、厚さ3μmの第1樹脂層を形成した。
次に、実施例1と同様の方法で、第1樹脂層上にAl蒸着層及び第2樹脂層を形成し、実施例3の防湿紙を得た。
【0062】
(実施例4)
紙基材として50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙(株)製)の表面上に、アクリルポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン硬化型アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂)の塗液をバーコーターで塗工し、オーブン中、140℃で1分間乾燥させ、厚さ1μmの第1樹脂層を形成した。
次に、実施例1と同様の方法で、第1樹脂層上にAl蒸着層及び第2樹脂層を形成し、実施例4の防湿紙を得た。
【0063】
(実施例5)
メタノールと酢酸エチルの1:1(質量比)混合溶媒17質量部に、マクシーブC93AT(三菱ガス化学社製、商品名)24質量部と、マクシーブM-100(三菱ガス化学社製、商品名)2質量部とを加えて混合し、エポキシ樹脂の塗液を調製した。
紙基材として50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙(株)製)表面上に、上記エポキシ樹脂の塗液をバーコーターで塗工し、オーブン中、140℃で1分間乾燥させ、厚さ1μmの第1樹脂層を形成した。
次に、実施例1と同様の方法で、第1樹脂層上にAl蒸着層及び第2樹脂層を形成し、実施例5の防湿紙を得た。
【0064】
(比較例1)
第1樹脂層の乾燥条件を、100℃で1分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の防湿紙を作製した。
【0065】
(比較例2)
第1樹脂層及び第2樹脂層の両方の乾燥条件を、100℃で1分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の防湿紙を作製した。
【0066】
(比較例3)
第1樹脂層の乾燥条件を、100℃で1分間に変更したこと以外は実施例3と同様にして、比較例3の防湿紙を作製した。
【0067】
(比較例4)
第1樹脂層及び第2樹脂層の両方の乾燥条件を、100℃で1分間に変更したこと以外は実施例3と同様にして、比較例4の防湿紙を作製した。
【0068】
<含有水分率の測定>
実施例及び比較例で得られた防湿紙をA4サイズにカットし、JIS P8111:1998に従い、23℃、50%RH環境下で48時間放置して調湿した。
その後、防湿紙の含有水分率を、JIS P8127:2010に従い測定した。含有水分率の測定も23℃、50%RH環境下で行い、測定作業中に防湿紙の含有水分率が変わらないようにした。測定結果を表1及び表2に示す。
【0069】
<水蒸気透過度(初期)の測定>
実施例及び比較例で得られた防湿紙について、JIS Z 0208に準拠して40℃、90%RHの条件下での水蒸気透過度(単位:g/m2・day)を測定した。測定は3回行い、その平均値を求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0070】
<水蒸気透過度(12か月後)の測定>
実施例及び比較例で得られた防湿紙をA4サイズにカットし、23℃、50%RH環境下で12か月間放置した。12か月放置後、水蒸気透過度(初期)の測定方法と同様にして、防湿紙の水蒸気透過度(3回測定した平均値)を求めた。また、12か月放置後の水蒸気透過度と、初期の水蒸気透過度との差(増加量)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0071】
<Al蒸着層の欠陥数の測定>
上記<水蒸気透過度(12か月後)の測定>で得られた12か月放置後の防湿紙について、Al蒸着層の欠陥数を以下の方法で測定した。すなわち、光学顕微鏡(オリンパス社製、商品名:BX-51)を用い、防湿紙の紙基材側から最大の光量を当て、防湿紙を透過する光を観察した。得られた透過光画像に関し、600μm2の範囲にて長径3.5μm以下のサイズの透過光の数を欠陥数(透過欠陥数)として数えた。結果を表1及び表2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
なお、各表に示した透湿度(水蒸気透過度)の単位は、「g/m2・24hr」である。
また、本実施例では、防湿紙の12カ月後の透湿度が、5.0g/m2・24hr以下であれば、実際に防湿紙として長期に使用した際に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを防止することができるため、「合格」とした。
一方、防湿紙の透湿度が、5.0g/m2・24hr超であれば、実際に防湿紙として使用した際に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で化粧板に反りが発生する可能性があるため、「不合格」とした。
【0075】
表1~表2の結果から明らかなように、各実施例の化粧板用裏面防湿紙は、各比較例の防湿紙と比べて、12カ月後の透湿度が低い結果が得られた。本実施例の防湿紙は、蒸着層を備えた防湿層を設けたことにより、透湿度の性能向上が認められ、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを従来品に比べて少なくする効果及びプラスチック材料の使用量を削減できる効果が期待できる。
これにより本発明の課題である、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ環境面においても配慮された化粧板用裏面防湿紙を提供することが可能であることを検証することができた。
【0076】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
少なくとも紙基材と、第1樹脂層と、アルミニウム蒸着層とをこの順番に備える化粧板用裏面防湿紙であって、
23℃50%RH環境下で48時間以上放置した後に測定される前記化粧板用裏面防湿紙の含有水分率が、4.4質量%以下である、化粧板用裏面防湿紙。
(2)
前記第1樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、上記(1)に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(3)
前記第1樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、及び、アクリルウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、上記(1)に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(4)
前記アルミニウム蒸着層の前記第1樹脂層とは反対側の面上に、第2樹脂層を更に備える、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(5)
前記第2樹脂層が、極性基を有するポリオレフィン樹脂を含む、上記(4)に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(6)
前記アルミニウム蒸着層の厚さが20nm以上100nm以下である、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(7)
前記アルミニウム蒸着層の表出面側、若しくは前記アルミニウム蒸着層の前記第1樹脂層とは反対側の面上に備わる第2樹脂層の表出面側に接着用プライマー層を設けた、上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(8)
前記紙基材が紙間強化紙である、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
(9)
前記紙基材に含まれる紙成分の質量が、化粧板用裏面防湿紙全体の質量を基準として、50質量%以上であることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【符号の説明】
【0077】
11:紙基材
12:第1樹脂層
13:アルミニウム蒸着層(蒸着層)
14:第2樹脂層
15:接着用プライマー層
100:化粧板用裏面防湿紙(防湿紙)