IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特開-センサ 図1
  • 特開-センサ 図2
  • 特開-センサ 図3
  • 特開-センサ 図4
  • 特開-センサ 図5
  • 特開-センサ 図6
  • 特開-センサ 図7
  • 特開-センサ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008858
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20250109BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N27/00 B
G01N27/416 341Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111432
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC01
2G060AE12
2G060AF13
2G060AG03
2G060AG10
2G060AG15
2G060FA03
2G060JA03
2G060KA05
(57)【要約】
【課題】電力を消費することなく、水分を検出できるセンサを提供する。
【解決手段】検出対象空間の内部に、イオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極5,6と、水分を吸収して第1,第2電解質溶液となる第1,第2潮解性物質11,12とが、設置され、第1潮解性物質11は、正極となる一方の検出電極5を覆うように配置され、第1電解質溶液は、一方の検出電極5側に析出可能な金属のイオンを含み、第2潮解性物質12は、負極となる他方の検出電極6及び第1潮解性物質11を覆うように配置され、一対の検出電極5,6間には、第1,第2電解質溶液の混合を抑制するセパレータ4cが突設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象空間の水分を検出するセンサであって、
前記検出対象空間の内部に、絶縁性の基体と、該基体の上面に形成されたイオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極と、水分を吸収して第1電解質溶液となる第1潮解性物質と、水分を吸収して第2電解質溶液となる第2潮解性物質とが、設置され、
前記第1潮解性物質は、前記一対の検出電極の内の正極となる一方の検出電極を覆うように配置され、
前記第1電解質溶液は、前記一方の検出電極側に析出可能な金属のイオンを含み、
前記第2潮解性物質は、前記一対の検出電極の内の負極となる他方の検出電極及び前記第1潮解性物質を覆うように配置され、
前記一対の検出電極は、前記基体の上面に間隔をあけて形成され、前記基体の上面の前記間隔があけられた領域に、前記第1電解質溶液と前記第2電解質溶液との混合を抑制するセパレータが突設され、
前記一対の検出電極間に発生する起電力に基づいて、前記検出対象空間への水分の浸入を検出する、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記検出対象空間が、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第2潮解性物質は、その一部が、前記セパレータを越えて、前記第1潮解性物質を覆っている、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記基体の上面は、外周部に比べて中央部が下方へ窪んだ凹部となっており、前記凹部内に、前記セパレータが突設されていると共に、前記第1潮解性物質及び前記第2潮解性物質が配置されている、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記セパレータが、前記基体と同一材料によって一体に形成されている、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項6】
前記基体が、異方性エッチング材料からなり、前記セパレータの、前記一対の検出電極の前記他方の検出電極側に臨む面が、下方へ向かって前記他の検出電極側へ傾斜する傾斜面となっている、
請求項5に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、更に詳しくは、例えば、気密封止されたパッケージの内部空間に浸入した水分の検出に好適なセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水分を検出するセンサ、例えば、湿度センサには、2つの電極間に、感湿膜を介在させ、湿度による前記2つの電極間の容量値またはインピーダンスの変化に基づいて、湿度を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-94663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出するセンサでは、2つの電極間に常時電流を流しておく必要があり、電力を消費するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、電力を消費することなく、水分を検出できるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0007】
(1)本発明に係るセンサは、検出対象空間の水分を検出するセンサであって、前記検出対象空間の内部に、絶縁性の基体と、該基体の上面に形成されたイオン化傾向が異なる金属からなる一対の検出電極と、水分を吸収して第1電解質溶液となる第1潮解性物質と、水分を吸収して第2電解質溶液となる第2潮解性物質とが、設置され、前記第1潮解性物質は、前記一対の検出電極の内の正極となる一方の検出電極を覆うように配置され、前記第1電解質溶液は、前記一方の検出電極側に析出可能な金属のイオンを含み、前記第2潮解性物質は、前記一対の検出電極の内の負極となる他方の検出電極及び前記第1潮解性物質を覆うように配置され、前記一対の検出電極は、前記基体の上面に間隔をあけて形成され、前記基体の上面の前記間隔があけられた領域に、前記第1電解質溶液と前記第2電解質溶液との混合を抑制するセパレータが突設され、前記一対の検出電極間に発生する起電力に基づいて、前記検出対象空間への水分の浸入を検出する。
【0008】
本発明に係るセンサによると、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、第1,第2潮解性物質が水分を吸収して、第1,第2電解質溶液となり、イオン化傾向が大きい他方の検出電極の金属が、第2電解質溶液に溶け出して金属のイオンになると共に、電子を放出し、他方の検出電極が負極となる。負極で放出された電子が、正極となる一方の検出電極へ流れ込んで、一対の検出電極間に起電力が発生する。すなわち、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、化学電池が構成されて一対の検出電極間に起電力が発生するので、この起電力に基づいて、水分を含む大気の浸入を検出することができる。
【0009】
このように本発明に係るセンサでは、2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出する従来のセンサのように、2つの電極間に電流を流しておく必要がないので、電力消費がなく、いわゆる、省エネを図ることができる。
【0010】
また、単純な構成の化学電池を構成して水分を検出するので、当該センサの構成を簡素化することができ、小型化が容易である。
【0011】
更に、正極となる一方の検出電極では、流れ込んだ電子が第1電解質溶液に含まれるイオン化傾向が小さい金属のイオンと結合して金属が析出するので、ボルタ電池のように、正極に水素が発生することはない。これによって、ボルタ電池のように、発生した水素が正極を覆ってしまい、その後の反応を阻害して起電力が急激に低下する分極を防止することができる。
【0012】
また、基体の上面に間隔をあけて形成された一対の検出電極の間には、第1,第2電解質溶液の混合を抑制するセパレータが突設されているので、第1,第2電解質溶液が混合することによる起電力の低下を抑制できる一方、第2潮解性物質は、他方の検出電極及び第1潮解性物質を覆うように配置されているので、第1,第2電解質溶液の混合が完全に阻止されるのではなく、徐々に混合することによって、一方の検出電極側と他方の検出電極側との間に生じる電荷のバランスの崩れを調整することができ、起電力の低下を抑制することができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記検出対象空間が、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間である。
【0014】
この実施態様によると、不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間を検出対象空間とするので、例えば、浸入した水分によって劣化して特性が低下するような各種の素子が収容された電子デバイスのパッケージの内部空間を検出対象空間とし、その気密状態の監視を簡便な構成で行うことができる。
【0015】
(3)本発明の他の実施態様では、前記第2潮解性物質は、その一部が、前記セパレータを越えて、前記第1潮解性物質を覆っている。
【0016】
この実施態様によると、第2潮解性物質は、その一部が、セパレータを越えて、第1潮解性物質を覆っているので、第1,第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液の混合が完全に阻止されることはなく、混合が徐々に進むことで、一方の検出電極側と他方の検出電極側との間に生じる電荷のアンバランスを調整して、起電力の低下を抑制することができる。
【0017】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記基体の上面は、外周部に比べて中央部が下方へ窪んだ凹部となっており、前記凹部内に、前記セパレータが突設されていると共に、前記第1潮解性物質及び前記第2潮解性物質が配置されている。
【0018】
この実施態様によると、第1,第2潮解性物質は、基体の中央部の下方へ窪んだ凹部内に、セパレータで仕切られて配置されるので、第1,第2潮解性物質が水分を吸収して生成された第1,第2電解質溶液を、セパレータで仕切られた各凹部内に安定して保持することができる。
【0019】
(5)本発明の一実施態様では、前記セパレータが、前記基体と同一材料によって一体に形成されている。
【0020】
この実施態様によると、セパレータは、基体と同一材料で一体に形成されるので、基体とは別材料で形成するのに比べて、エッチング加工等によって、精度良く形成することができる。
【0021】
(6)本発明の他の実施態様では、前記基体が、異方性エッチング材料からなり、前記セパレータの、前記一対の検出電極の前記他方の検出電極側に臨む面が、下方へ向かって前記他方の検出電極側へ傾斜する傾斜面となっている。
【0022】
この実施態様によると、セパレータの他方の検出電極側に臨む面が、下方へ向かって前記他方の検出電極側へ傾斜する傾斜面となっているので、第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第2電解質溶液中の陽イオンが、前記傾斜面に沿って一方の検出電極側へ移動しやすくなる。そして、一方の検出電極側の第1潮解性物質が水分を吸収して生成される第1電解質溶液中の金属イオン(陽イオン)は、セパレータを構成する側面のうち一方の検出電極側に臨む側面は傾斜面ではないため、セパレータを越えて反対側である他方の検出電極側へ移動しにくくなる。
【0023】
これによって、第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第2電解質溶液中の陽イオンの、反対側である一方の検出電極側への移動が促進され、安定した起電力の発生に寄与する。また、第1潮解性物質が水分を吸収して生成される第1電解質溶液中の金属イオンが、他方の検出電極側で析出するのを抑制することができるため起電力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、検出対象空間に、水分を含む大気が浸入すると、化学電池が構成されて起電力が発生するので、この起電力に基づいて、検出対象空間への水分を含む大気の浸入を検出することができる。
【0025】
このように本発明に係るセンサでは、単純な構成の化学電池を構成して水分を検出するので、電力消費がなく、省エネを図ることができると共に、当該センサの構成を簡素化して、小型化を図ることができる。
【0026】
また、正極となる一方の検出電極では、第1電解質溶液に含まれる金属イオンが金属として析出され、ボルタ電池のように、正極に水素が発生することはない。これによって、発生した水素が正極を覆ってしまい、その後の反応を阻害して起電力が急激に低下する分極を防止することができる。
【0027】
更に、基体の上面に間隔をあけて形成された一対の検出電極の間には、第1,第2電解質溶液の混合を抑制するセパレータが突設されているので、第1,第2電解質溶液が混合することによる起電力の低下を抑制できる一方、第2潮解性物質は、他方の検出電極及び第1潮解性物質を覆うように配置されているので、第1,第2電解質溶液の混合が完全に阻止されることはなく、一方の検出電極側と他方の検出電極側とに生じる電荷のバランスの崩れを調整することができ、起電力の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は本発明の一実施形態に係るセンサの概略構成を示す模式的な断面図である。
図2図2図1のセンサ本体の概略構成を示す摸式的な平面図である。
図3図3は第1,第2潮解性物質が水分を吸収して混合した状態を示す図1に対応する摸式的な断面図である。
図4図4は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図5図5は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図6図6は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図7図7は本発明の他の実施形態のセンサ本体の概略構成を示す模式的な断面図である。
図8図8図7のセンサ本体の概略構成を示す摸式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサの概略構成を示す模式的な断面図であり、図2は、図1のセンサ本体2の概略構成を示す摸式的な平面図である。
【0031】
この実施形態のセンサ1は、検出対象空間に浸入した水分を検出するものであり、浸入した水分によって起電力を発生するセンサ本体2と、センサ本体2で発生する起電力に基づいて、水分の浸入の有無を判定する判定部3とを備えている。
【0032】
センサ本体2は、平面視の外形が矩形の基体4を備えており、この基体4は、平板状の平面視矩形の底壁部4aと、この底壁部4aの外周部から上方へ突出するように形成された周壁部4bと、底壁部4aの中央部に上方へ突出するように形成された矩形断面のセパレータ4cとを備えている。
【0033】
底壁部4aと、底壁部4aの外周部の周壁部4bと、底壁部4aの中央部のセパレータ4cとによって、基体4には、平面視矩形の窪んだ第1,第2凹部21,22が区画形成される。
【0034】
セパレータ4cは、平面視矩形の底壁部4aの長辺方向(図2の左右方向)の中央部に、対向する周壁部4b間を繋ぐように、短辺方向(図2の上下方向)に沿って形成されている。第1,第2凹部21,22は、平面視矩形であって、セパレータ4cによって、左右対称に仕切られている。
【0035】
第1,第2凹部21,22の内底面には、中央部のセパレータ4cからやや間隔を空けて各短辺へ向かってそれぞれ延びる一対の検出電極5,6が形成されている。すなわち、セパレータ4cは、一対の検出電極5,6の間の領域に突設されている。
【0036】
前記一対の検出電極5,6は、前記各短辺へ向けて延び、更に、各短辺に連なる周壁部4bの内面及び上面までそれぞれ延びている。各検出電極5,6の延出端である各周壁部4bの上面には、導電性のワイヤ-9,10が電気的に接続されており、各検出電極5,6は、各ワイヤ-9,10を介して判定部3に電気的に接続されている。
【0037】
各検出電極5,6は、イオン化傾向が異なる金属でそれぞれ構成されており、
例えば、真空蒸着法やスパッタリング法や、めっき法によって形成されている。
【0038】
各検出電極5,6は、平面視矩形の第1,第2凹部21,22の短辺方向(図2の上下方向)に沿う幅よりもやや狭い幅となっている。
【0039】
第1,第2凹部21,22内には、水分を吸収し、吸収した水分に溶解して第1,第2電解質溶液となる第1,第2潮解性物質11,12がそれぞれ収容されている。
【0040】
センサ本体2は、浸入した水分を検出する検出対象空間内に設置される。検出対象空間は、例えば、浸入した水分によって劣化し、特性が変動するような各種の素子が収容されたパッケージの内部空間などである。
【0041】
このパッケージは、例えば、光トランシーバ等の各種の電子デバイスのパッケージであって、窒素ガス等の不活性ガスや乾燥空気で気密封止されたパッケージである。
【0042】
このような電子デバイスのパッケージ内に設置されるセンサ本体2は小型である。この実施形態では、平面視の外形が矩形の基体4のサイズは、例えば、3mm×2mmである。センサ本体2の外形サイズは、特に限定されず、当該センサ本体2が設置される検出対象空間のサイズなどに応じて適宜選択される。
【0043】
基体4は、絶縁性材料、例えば、水晶、ガラス、セラミック、あるいは、ガラスエポキシ等からなる。
【0044】
この実施形態では、基体4はZ板水晶からなり、大略直方体状であって、エッチング加工によって、中央部のセパレータ4c、外周部の周壁部4b、及び、それらで区画される第1,第2凹部21,22が、一体に成形されている。
【0045】
なお、水晶は、Z板水晶に限らず、ATカット水晶や、その他の切断角度の水晶であってもよい。
【0046】
第1潮解性物質11は、セパレータ4cで仕切られた基体4の第1凹部21内に、一方の検出電極5を覆うように収容されており、その上面は、セパレータ4cの高さより低くなっている。これによって、第1潮解性物質11が水分を吸収して生成される第1電解質溶液が、セパレータ4cを越えて他方の検出電極6へ直接移動できないようにし、後述のように、第1電解質溶液に含まれる金属イオンが、他方の検出電極6から直接電子eを受け取れないようしている。
【0047】
第2潮解性物質12は、その大部分が、セパレータ4cで仕切られた基体4の第2凹部22内に、他方の検出電極6を覆うように収容されると共に、その一部が、セパレータ4cを越えて第1潮解性物質11を覆うように配置されている。
【0048】
第1潮解性物質11は、水分を吸収し、吸収した水分に溶解して第1電解質溶液となって、一方の検出電極5上に広がる。第2潮解性物質12は、水分を吸収し、吸収した水分に溶解して第2電解質溶液となって、他方の検出電極6上に広がると共に、一部が、第1潮解性物質11上に広がる。
【0049】
第1,第2潮解性物質11,12は、基体4の窪んだ各凹部21,22内に収容されているので、水分を吸収して第1,第2電解質溶液となったときには、各凹部21,22内に止まり、第1,第2電解質溶液が、検出電極5,6の外側へ流出するのを防止することができる。
【0050】
水分を吸収した第1,第2潮解性物質11,12が、第1,第2電解質溶液として、検出電極5,6上に円滑に広がるように、第1,第2潮解性物質11,12を配置する前に、検出電極5,6の表面を、予めアッシングやUV照射によって清浄化して濡れ性を向上させてもよい。
【0051】
基体4の第1,第2凹部21,22を仕切るセパレータ4cは、基本的には、各凹部21,22内の第1,第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液が混合するのを抑制する機能を有している。
【0052】
第1,第2凹部21,22内の第1,第2潮解性物質が水分をそれぞれ吸収して第1,第2電解質溶液が生成され、後述のように化学電池が構成された際に、第1,第2電解質溶液が混合され、混合された電解質溶液に含まれる第1電解質溶液の金属イオンが、他方の検出電極6で直接電子eを受け取ってしまうと、外部回路である判定部3へ電流が流れなくなるからである。
【0053】
その一方、第1,第2電解質溶液が全く混合できないとすると、化学電池が構成された際に、後述のように負極となる他方の検出電極6側では陽イオンが増え、正極となる一方の検出電極5側では、陰イオンが増えて電荷のバランスが崩れ、起電力が低下することになる。
【0054】
そこで、この実施形態では、上記のように、第2潮解性物質12の一部を、セパレータ4cを越えて第1潮解性物質11を覆うように配置しており、化学電池が構成された際に、第1,第2電解質溶液の混合を許容して、電荷のバランスを調整できるようにしている。
【0055】
セパレータ4cの基本的な機能は、第1,第2潮解性物質11,12が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液の混合を抑制することであるので、第1,第2凹部21,22に収容される第1,第2潮解性物質11,12の量が少ないような場合には、セパレータ4cの底壁部4aからの高さは、周壁部4bの底壁部4aからの高さに比べて、低くてもよい。
【0056】
水分を吸収して第1電解質溶液となる第1潮解性物質11としては、例えば、塩化銅(CuCl)が好ましい。
【0057】
水分を吸収して第2電解質溶液となる第2潮解性物質12としては、潮解性が高く、水分を吸収して電解質溶液になり易い、例えば、塩化カルシウム(CaCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、塩化マグネシウム(MgCl)、クエン酸(C)、炭酸カリウム(K)のいずれかであるのが好ましい。この実施形態の第2潮解性物質12は、潮解性が非常に高く、安価な塩化カルシウムである。
【0058】
塩化カルシウムは、潮解性が非常に高く、電解質溶液になり易いので、第2潮解性物質12である塩化カルシウムで、第1潮解性物質11を上記のように覆うことによって、第1潮解性物質11が水分を吸収して第1電解質溶液に変化する前に、第2潮解性物質12が水分を吸収して生成される第2電解質溶液で全体を満たすことができる。
【0059】
第1,第2潮解性物質11,12の第1,第2凹部21,22内への収容は、次のようにして行うことができる。すなわち、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、固体状態の第1潮解性物質11を、一方の検出電極5を覆うように第1凹部21内に収容する。次に、固体状態の第2潮解性物質12を、他方の検出電極6を覆うと共に、第1潮解性物質11の一部を覆うように第2凹部22内に収容する。
【0060】
窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で作業できない場合には、各検出電極5,6と判定部3との接続を遮断して電子の移動を禁止した状態で、次のようにして行う。すなわち、水分を含む大気の下で、先ず、第1潮解性物質11を水に溶かした第1電解質溶液を、第1凹部21内の一方の検出電極5上に塗布し、センサ本体2を加熱して第1電解質溶液の水分を蒸発させて固体状態の第1潮解性物質11とする。その後、第2潮解性物質12を水に溶かした第2電解質溶液を、第2凹部22内の他方の検出電極6上及び第1潮解性物質11の一部に重なるように塗布し、センサ本体2を加熱して第2電解質溶液の水分を蒸発させて固体状態の第2潮解性物質12とする。この加熱によって、第2電解質溶液を塗布する際に、第1潮解性物質11の一部が第1電解質溶液となっていても、水分が蒸発して元の固体状態に戻る。
【0061】
このように水分を含む大気の下では、第1,第2潮解性物質11,12を、溶液状態の第1,第2電解質溶液として取り扱い、最後に、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、加熱して第1,第2電解質溶液の水分を蒸発させて固体状態の潮解性物質11,12とし、各検出電極5,6を、判定部3に接続する。
【0062】
一対の検出電極5,6の内の一方の検出電極5は、金(Au)や白金(Pt)等の貴金属、この実施形態では、金からなる。この一方の検出電極5は、金(Au)等に代えて、銅(Cu)で構成してもよい。他方の検出電極6は、イオン化傾向の大きい亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)等の卑金属、この実施形態では、亜鉛からなる。
【0063】
水晶からなる基体4と、各検出電極5,6を構成する金属との密着性を高めるために、基体4上に、クロム(Cr)等の下地金属膜を形成し、下地金属膜上に、各検出電極5,6を構成する金属を形成するのが好ましい。
【0064】
この実施形態のセンサ1は、電子デバイスのパッケージの内部空間に組み込まれ、各検出電極5,6に接続された各ワイヤ-9,10を、例えば、電子デバイスに設けられた判定部3に接続して気密に封止される。なお、判定部3は、一対の検出電極5,6間に起電力が生じたか否かを判定できればよく、電子デバイスのパッケージ内に収容されてもよいし、パッケージ外に設置してもよい。
【0065】
センサ1を、電子デバイスのパッケージの内部空間へ組み込む作業は、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で行う。水分を含む大気の下で組み込み作業を行う場合には、上記のように、第1,第2潮解性物質11,12を、溶液状態の第1,第2電解質溶液として取り扱い、最後に、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で、加熱して第1,第2電解質溶液の水分を蒸発させて固体状態の潮解性物質11,12とし、各検出電極5,6を、判定部3に接続すればよい。
【0066】
この実施形態では、検出対象空間に水分を含む大気が浸入すると、センサ本体2は、後述のように化学電池を構成する。このとき、正極となる一方の検出電極5と、負極となる他方の検出電極6との間に起電力、例えば、1.5V程度の起電力が発生する。この起電力によって、電子デバイスに設けられた判定部3によって、水分が浸入したことを検出することができるので、適宜の報知部、例えば、発光素子(LED)を点灯させて、水分が浸入したことを報知することが可能である。
【0067】
この実施形態では、一方の検出電極5を構成する金属を第1金属M1とし、そのイオン化傾向をIM1、他方の検出電極6を構成する金属を第2金属M2とし、そのイオン化傾向をIM2、第1電解質溶液に含まれて、一方の検出電極5側に析出する金属を第3金属M3とし、そのイオン化傾向をIM3とし、水素のイオン化傾向をIとすると、イオン化傾向IM1、IM2、IM3、Iの大小関係は次のようになる。なお、水素イオンは、水分を吸収して生じる電解質溶液に含まれる。
【0068】
M2>I>IM3>IM1
上記のように、一方の検出電極5を構成する第1金属M1は、金(Au)であり、他方の検出電極6を構成する第2金属M2は、亜鉛(Zn)であり、第1電解質溶液に含まれて、一方の検出電極5側に析出する第3金属M3は、銅(Cu)であるので、それらのイオン化傾向IAu、IZn、ICuの大小関係は下記で示される。
【0069】
Zn>I>ICu>IAu
この実施形態では、検出対象空間に水分を含む大気が浸入すると、第1潮解性物質11である塩化銅と第2潮解性物質12である塩化カルシウムとが、水分を吸収し、吸収した水分に溶解して第1,第2電解質溶液となって、各検出電極5,6上に広がる。
【0070】
一対の検出電極5,6の内、イオン化傾向が大きい他方の検出電極6の亜鉛が、第2電解質溶液に溶け出す。
【0071】
このとき、亜鉛Znが酸化されて亜鉛イオンZn2+になり、電子eを放出する。すなわち、他方の検出電極6は、電子eを放出する負極となる。
【0072】
負極では、次の反応が生じる。
【0073】
Zn→Zn2++2e
他方の検出電極6で発生した電子eが、ワイヤ-10、判定部3、及び、ワイヤ-9を介して一方の検出電極5へ流れ込む。
【0074】
このとき、電子eが判定部3を通過することで、水分の浸入が検出される。
【0075】
一方の検出電極5では、流れ込んできた電子eを受け取り、第1電解質溶液中のイオン化傾向が小さい陽イオンである銅イオンCu2+が電子eと結合し、還元されて銅(Cu)が析出する。すなわち、金からなる一方の検出電極5は、電子eを受け取る正極となる。
【0076】
正極では、次の反応が生じる。
【0077】
Cu2++2e→Cu
以上のように、本実施形態では、検出対象空間に水分を含む大気が浸入すると、下記の電池式で示されるダニエル電池に類似した化学電池が構成される。
【0078】
(-)Zn|CaCl(aq)|CuCl(aq)|Au(+)
このとき、正極となる一方の検出電極5と、負極となる他方の検出電極6との間に起電力が発生し、その起電力によって判定部3は、水分が浸入したと判定する。
【0079】
この実施形態では、基体4の第1,第2凹部21,22を仕切るセパレータ4cによって、第1,第2凹部21,22内の第1,第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液が混合するのを抑制できる。これによって、混合された電解質溶液の第1電解質溶液に含まれる銅イオンCu2+が、他方の検出電極6から直接電子eを受け取って、一対の検出電極5,6間で本来の起電力が得られなくなるのを抑制することができる。
【0080】
本実施形態のセンサ1では、水分を検出して報知できればよく、一般的な化学電池のように電力を長時間に亘って発生させる必要はないので、センサとしての充分な機能を果たすことができる。
【0081】
また、時間の経過に伴って、負極となる他方の検出電極6側では、陽イオンである亜鉛イオンZn2+が増え、正極となる一方の検出電極5側では、陰イオンである塩素イオンClが増えて電荷のバランスが崩れることになるが、この実施形態では、上記のように、第2潮解性物質12の一部を、セパレータ4cを越えて第1潮解性物質11を覆うように配置している。
【0082】
これによって、第1,第2潮解性物質11,12が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液の混合が徐々に進み、図3に示すような混合された電解質溶液25となる。第1,第2電解質溶液の混合によって、亜鉛イオンZn2+は負極から正極に向かって、塩素イオンClは正極から負極に向かってそれぞれ溶液中を移動して電荷のバランスを調整することができ、起電力の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、図1では、固体状態の第1,第2潮解性物質11,12の表面は、平面状であり、図3では、第1,第2電解質溶液が完全に混合した電解質溶液25の表面は、丸味を帯びた曲面状となっている。これは誇張して例示したものであって、第1,第2潮解性物質11,12の量によっては、固体状態あるいは溶液状態によらず、その表面は、平面状、曲面状、あるいは、凹凸状となる場合がある。
【0084】
検出対象空間を、電子デバイスの不活性ガス又は乾燥空気で気密封止されたパッケージの内部空間とし、長期間が経過した後に、本実施形態のセンサ1によって、パッケージの内部空間への水分を含む大気の浸入を検出した場合には、電子デバイスの経年劣化によって水分を含む大気がパッケージ内に浸入し、電子デバイスの寿命であると判断することができる。
【0085】
また、水分を含む空気の浸入を早期に検出した場合には、電子デバイスのパッケージの気密封止が不完全であると判断することができる。
【0086】
このようにして、電子デバイスの気密封止されたパッケージ内への水分を含む大気の浸入を監視することができる。
【0087】
従来の湿度センサでは、2つの電極間の容量値やインピーダンスの変化を検出するので、常に2つの電極間に電圧を印加しなければならず、電力消費が生じる。
【0088】
これに対して、本実施形態のセンサ1では、電力を消費することなく、検出対象空間へ浸入した水分を検出することができ、電源を必要としない。
【0089】
また、センサ本体2は、基体4上の一対の検出電極5,6を覆うように、第1,第2電解質溶液となる第1,第2潮解性物質11,12を、第1,第2凹部21,22内に配置するという簡単な構成であるので、小型化が容易であると共に、安価である。
【0090】
更に、ダニエル電池に類似した化学電池を構成し、正極である一方の検出電極5では、銅が析出し、ボルタ電池のように、正極で水素Hが発生することはない。したがって、本実施形態では、ボルタ電池のように、正極で発生した水素が、正極の周りに溜まって電子の受け渡しを困難にし、起電力が急激に低下する分極が生じることはない。
【0091】
また、基体4の第1,第2凹部21,22を仕切るセパレータ4cによって、第1,第2凹部21,22内の第1,第2潮解性物質が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液が混合するのを抑制できるので、第1電解質溶液に含まれる銅イオンCu2+が、他方の検出電極6から直接電子eを受け取って、起電力が得られなくなるのを抑制することができる。
【0092】
また、第1,第2電解質溶液の混合を完全に阻止するのではなく、両電解質溶液が徐々に混合するのを許容するので、混合によってイオンの移動が可能となり、電荷のバランスを調整することができ、起電力の低下を抑制することができる。
【0093】
[第2実施形態]
図4は、本発明の他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0094】
この実施形態のセンサ本体2は、基体4の第1,第2凹部21,22内に収容された第1,第2潮解性物質11,12を覆うように、透湿性を有する蓋体13が、例えば、接着剤によって基体4の周壁部4bの上面に接合されている。
【0095】
この蓋体13は、透湿性を有する樹脂、例えば、熱可塑性樹脂から構成されるのが好ましい。蓋体13を構成する樹脂としては、例えば、ポリイミド、セロファン、ポリエチレン、アクリルなどであるのが好ましく、この実施形態では、蓋体13は、ポリイミドからなる。
【0096】
その他の構成は、上記図1のセンサ1と同様である。
【0097】
このように基体4の第1,第2凹部21,22内の第1,第2潮解性物質11,12は、透湿性を有する蓋体13によって覆われているので、当該センサ本体2を電子デバイスのパッケージ内に収容する作業を、不活性ガス雰囲気、又は、乾燥空気雰囲気の下で行えないような場合であっても、その作業を行う比較的短い時間、例えば、数時間内に、大気中の水分が蓋体13を透過して基体4の第1,第2凹部21,22内に浸入することはない。
【0098】
一方、電子デバイスのパッケージが経年劣化して、パッケージ内に浸入した大気に含まれる水分を検出するような用途では、パッケージ内に水分を含む大気が浸入したら直ちに検出して報知する必要はなく、水分が、透湿性を有する蓋体13を透過する程度の時間遅れが生じても差支えない。
【0099】
したがって、不活性ガス雰囲気や乾燥空気雰囲気ではなく、大気中でセンサ本体2を、電子デバイスのパッケージの内部空間に組込む作業が必要な場合等に好適である。
【0100】
蓋体13の材質や厚さ等を選択することによって、電子デバイスのパッケージ内に浸入した水分が、蓋体13を透過するのに要する時間を変えることができる。
【0101】
また、蓋体13によって、第1,第2凹部21,22内の第1,第2潮解性物質11,12を物理的に保護することができ、取扱い易いものとなる。
【0102】
なお、蓋体13に、水分を含む大気が流通可能な微小な貫通孔を多数形成し、水分を含む大気の浸入を迅速に検出できるようにしてもよい。
【0103】
また、セパレータ4cの上面に、その両側の第1,第2凹部21,22間を繋ぐように複数の浅い溝を形成してもよい。これによって、第2凹部22内の第2潮解性物質12が、複数の溝を介して第1凹部21側へ移動し易くなるので、セパレータ4cを越えて第1潮解性物質11を覆う第2潮解性物質12を配置しなくてもよく、その分、センサ本体2の高さを低くして低背化を図ることができる。
【0104】
[第3実施形態]
図5は、本発明の更に他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、上記図4に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0105】
上記各実施形態では、一対の検出電極5,6は、導電性のワイヤ-9,10を介して判定部3にそれぞれ電気的に接続されている。
【0106】
この実施形態では、基体4の上面の各検出電極5,6は、底壁部4aを貫通する内部導体14,15によって、基体4の外底面の各外部接続端子16,17にそれぞれ導通接続されている。
【0107】
すなわち、この実施形態では、センサ本体2は、例えば、電子デバイスの検出対象空間であるパッケージ内の基板に、各外部接続端子16,17が接合されて、電子デバイスに設けられた判定部3に電気的に接続される。
【0108】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【0109】
[第4実施形態]
図6は、本発明の更に他の実施形態のセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、上記図4に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0110】
この実施形態のセンサ本体2の基体4は、上記各実施形態と同様に、特定の結晶面がエッチングされ易い異方性エッチング材料である水晶からなり、この例では、ATカットの水晶板を使用している。図6には、このATカットの水晶板の結晶軸X,Y´,Z´を示しており、結晶軸Xは、紙面の手前側が+Xであり、紙面の奥側が-Xである。
【0111】
この実施形態では、水晶板のエッチング異方性を利用して、セパレータ4cは、他方の検出電極6に臨む側の面が、下方へ向けて他方の検出電極6側へ傾斜した傾斜面4c1となっている。
【0112】
このようにセパレータ4cは、他方の検出電極6側に臨む面が、下方へ向かって他方の検出電極6側へ傾斜する傾斜面4c1となっているので、第2潮解性物質12が水分を吸収して生成される第2電解質溶液中の陽イオンが、傾斜面4c1に沿って一方の検出電極5側へ移動しやすくなる。そして、一方の検出電極5側の第1潮解性物質11が水分を吸収して生成される第1電解質溶液中の金属イオン(陽イオン)は、セパレータ4cを構成する側面のうち一方の検出電極5側に臨む側面は傾斜面ではないため、セパレータ4cを越えて反対側である他方の検出電極6側へ移動しにくくなる。
【0113】
これによって、第2潮解性物質12が水分を吸収して生成される第2電解質溶液中の陽イオンの、一方の検出電極5への移動が促進され、安定した起電力の発生に寄与する。また、第1潮解性物質11が水分を吸収して生成される第1電解質溶液中の金属イオンが、他方の検出電極6で析出するのを抑制することができるため起電力の低下を抑制することができる。
【0114】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【0115】
本発明の他の実施形態として、セパレータの一方の検出電極5に臨む面を、上方へ向けて一方の検出電極5側へ傾斜させる、すなわち、傾斜面を、上方へ向けて一方の検出電極5側へせり出すように傾斜させてもよい。
【0116】
この構成によれば、正極となる一方の検出電極5を覆う第1潮解性物質11が水分を吸収して生成される第1電解質溶液が、セパレータの傾斜面を越えて他方の検出電極6側へ移動するのを抑制することができる。これによって、第1電解質溶液に含まれる金属のイオンが、他方の検出電極6側へ移動して他方の検出電極6から直接電子を受け取るのを抑制することができ、起電力の低下を低減することができる。
【0117】
[第5実施形態]
図7は、本発明の他の実施形態に係るセンサ本体2の概略構成を示す模式的な断面図であり、図8は、その模式的な概略平面図である。図7は、図8の切断面線A-Aから見た断面図である。なお、図8では、蓋体13の外形を破線で示している。
【0118】
上記各実施形態のセンサ本体2,2~2は、基体4,4~4の平面視の外形形状が矩形であったが、この実施形態では、基体4の平面視の外形形状は、円形である。すなわち、基体4は、平面視円形の底壁部4aと、この底壁部4aの外周部に立設された平面視円環状の周壁部4bと、周壁部4bの内方の平面視略円環状のセパレータ4cとを備えている。基体4に装着される蓋体13は、平面視円形である。
【0119】
セパレータ4cの内周面は、平面視円形であって、基体4と同心円状である。セパレータ4cの外周面は、平面視略円形であって、周方向の一方側(図7図8の右側)が、外方へ引き出され、段部4dを経て周壁部4bに連なっている。
【0120】
一方の検出電極5は、セパレータ4cの内周面によって区画された平面視円形の検出電極部5aと、この検出電極部5aの周方向の前記一方側から引き出されて、前記段部4d及び周壁部4bの上面に連なる接続電極部5bとを備えている。
【0121】
他方の検出電極6は、セパレータ4cの外周面と周壁部4bの内周面とによって区画される領域にセパレータ4cを囲むように、同心状に形成された平面視C字状の検出電極部6aと、この検出電極部6aから周方向の前記一方に対向する他方側(図7図8の左側)の周壁部4bの上面に引き出された接続電極部6bとを備えている。
【0122】
平面視円形の検出電極部5aの周方向の一方側から引き出された接続電極部5bと、平面視C字状の検出電極6の周方向の他方側から引き出された接続電極部6bとは、導電性のワイヤ-9,10を介して図示しない判定部に電気的に接続されている。
【0123】
第1潮解性物質11は、セパレータ4cの内周面で区画される平面視円形の領域に、一方の検出電極5の検出電極部5aを覆うように、平面視円形に配置される。
【0124】
第2潮解性物質12は、中央部の平面視円形の第1潮解性物質11を覆うと共に、他方の検出電極6の平面視C字状の検出電極部6aを覆うように、周壁部4bの内周面によって区画される領域内に平面視円形に配置される。
【0125】
この実施形態によれば、一方と他方の検出電極部5a,6aが互いに同心円状に形成されているので、第1,第2潮解性物質11,12が水分を吸収して生成される第1,第2電解質溶液の平面視形状を、その表面張力によって円形に近づけることができる。そのため、第1,第2電解質溶液が、検出電極部5a,6aに均等に拡がりやすくなり、起電力を安定して発生させることができる。
【0126】
その他の構成は、図4の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0127】
1 センサ
2,2~2 センサ本体
3 判定部
4,4~4 基体
4c,4c セパレータ
c1 傾斜面
5,5 検出電極(一方)
6,6 検出電極(他方)
11,12 第1,第2潮解性物質
25 電解質溶液
21,22 第1,第2凹部
9,10 ワイヤ-
13 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8