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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088807
(43)【公開日】2025-06-12
(54)【発明の名称】可変動弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20250605BHJP
   F01L 1/053 20060101ALI20250605BHJP
   F01L 1/12 20060101ALI20250605BHJP
   F01L 1/18 20060101ALI20250605BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
F01L13/00 301V
F01L1/053
F01L1/12 C
F01L1/18 E
F02F1/24 G
F02F1/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203518
(22)【出願日】2023-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
(72)【発明者】
【氏名】香川 祐太
【テーマコード(参考)】
3G016
3G018
3G024
【Fターム(参考)】
3G016AA07
3G016AA12
3G016AA19
3G016BA03
3G016BA06
3G016BA18
3G016BA27
3G016BA46
3G016BA49
3G016BB12
3G016BB19
3G016CA04
3G016CA12
3G016CA21
3G016CA28
3G016CA29
3G016CA36
3G016CA57
3G016DA08
3G016DA22
3G016GA02
3G018AA05
3G018AB05
3G018AB18
3G018BA12
3G018CA19
3G018CB02
3G018DA14
3G018DA18
3G018DA19
3G018DA50
3G018DA51
3G018DA68
3G018FA03
3G018FA06
3G018GA23
3G024AA05
3G024AA14
3G024BA23
3G024DA09
3G024DA18
3G024EA04
3G024FA07
(57)【要約】
【課題】切替機構やロッカーアームの部品に適切に潤滑油を供給して各部品の潤滑性を向上させる。
【解決手段】可変動弁装置(40)には、所定方向に離間した一対のカムハウジング(42a、42b)と、一対のカムハウジングに支持された一対のロッカーシャフト(47、48)と、一対のロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアーム(35a、35b、37)と、吸気用のアームを連結及び分離させる切替機構(50)と、一対のカムハウジング上の上部ハウジング(49)と、が設けられている。上部ハウジングには、切替機構に潤滑油を供給する第1の噴射穴と、複数のロッカーアームに潤滑油を供給する第2の噴射穴と、が形成されている。カムシャフト(41)の周囲の潤滑溝から第2の噴射穴までの通路長が潤滑溝から第1の噴射穴までの通路長よりも長い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドにおいてバルブ動作を変更可能な可変動弁装置であって、
前記シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジングと、
前記シリンダヘッドと前記一対のカムハウジングに支持されたカムシャフトと、
前記一対のカムハウジングの対向箇所に支持された一対のロッカーシャフトと、
前記一対のロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアームと、
前記複数のロッカーアームの吸気用のアームを連結及び分離させる切替機構と、
前記一対のカムハウジングの上面に両持ちで支持された上部ハウジングと、を備え、
前記上部ハウジングには、前記切替機構に潤滑油を供給する第1の噴射穴と、前記複数のロッカーアームに潤滑油を供給する第2の噴射穴と、が形成され、
前記カムシャフトの周囲の潤滑溝から前記第1、第2の噴射穴に向けて潤滑油が圧送され、前記潤滑溝から前記第2の噴射穴までの通路長が、前記潤滑溝から前記第1の噴射穴までの通路長よりも長いことを特徴とする可変動弁装置。
【請求項2】
前記一対のロッカーシャフトは吸気ロッカーシャフトと排気ロッカーシャフトであり、
前記第1の噴射穴には、前記潤滑溝から前記吸気ロッカーシャフト内を通って潤滑油が圧送され、
前記第2の噴射穴には、前記潤滑溝から前記カムシャフト内を通った後に前記排気ロッカーシャフト内を通って潤滑油が圧送されることを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置。
【請求項3】
前記上部ハウジングには、前記第1の噴射穴が前記第2の噴射穴よりも多く形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項4】
前記上部ハウジングには、吸気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する第3の噴射穴と、排気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する第4の噴射穴と、が形成され、
前記第1の噴射穴及び前記第3の噴射穴が同一の潤滑通路に設けられ、前記第2の噴射穴よりも上流の潤滑通路に前記第4の噴射穴が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項5】
前記第1、第2の噴射穴は同径に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項6】
前記第1の噴射穴が前記第2の噴射穴よりも高く位置付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項7】
前記一対のロッカーシャフトは吸気ロッカーシャフトと排気ロッカーシャフトであり、
前記上部ハウジングには、前記第1の噴射穴が設けられた第1の潤滑通路と、前記第2の噴射穴が設けられた第2の潤滑通路と、が形成され、
前記吸気ロッカーシャフトには、前記第1の潤滑通路に直列に連なる第3の潤滑通路が形成され、前記排気ロッカーシャフトには、前記第2の潤滑通路に直列に連なる第4の潤滑通路が形成されており、
前記第1の潤滑通路が前記第3の潤滑通路よりも上方に位置し、前記第2の潤滑通路が前記第4の潤滑通路よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変動弁装置として複数のロッカーアームを連結させてバルブ動作を切り替えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の可変動弁装置には一対のロッカーアームが隣接して設置されており、一方のロッカーアームのピン穴に連結ピンが設置されている。連結ピンの一部が他方のロッカーアームのピン穴に押し込まれることで一対のロッカーアームが連結され、連結ピンの一部が他方のロッカーアームのピン穴から抜け出すことで一対のロッカーアームが分離される。一対のロッカーアームの連結及び分離が切り替わることでバルブリフト用のカムが切り替えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5907552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の可変動弁装置にも潤滑が必要になるが、潤滑先の部品が多くなると共に潤滑通路が複雑になる。潤滑先の部品増加や潤滑通路の複雑化によって各部品に適切に潤滑油を供給し難くなって耐久性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、各部品に適切に潤滑油を供給して各部品の潤滑性を向上させることができる可変動弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の可変動弁装置は、シリンダヘッドにおいてバルブ動作を変更可能な可変動弁装置であって、前記シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジングと、前記シリンダヘッドと前記一対のカムハウジングに支持されたカムシャフトと、前記一対のカムハウジングの対向箇所に支持された一対のロッカーシャフトと、前記一対のロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアームと、前記複数のロッカーアームの吸気用のアームを連結及び分離させる切替機構と、前記一対のカムハウジングの上面に両持ちで支持された上部ハウジングと、を備え、前記上部ハウジングには、前記切替機構に潤滑油を供給する第1の噴射穴と、前記複数のロッカーアームに潤滑油を供給する第2の噴射穴と、が形成され、前記カムシャフトの周囲の潤滑溝から前記第1、第2の噴射穴に向けて潤滑油が圧送され、前記潤滑溝から前記第2の噴射穴までの通路長が、前記潤滑溝から前記第1の噴射穴までの通路長よりも長くなっていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の可変動弁装置によれば、カムシャフトの周囲の潤滑溝から第2の噴射穴までの通路長が潤滑溝から第1の噴射穴までの通路長よりも長いので、切替機構側の第1の噴射穴に連なる潤滑通路の油圧が高められている。切替機構によって潤滑先の部品が増えても、第1の噴射穴から切替機構に適量の潤滑油が供給され、第2の噴射穴から複数のロッカーアームに適量の潤滑油が供給される。よって、切替機構及び複数のロッカーアームの各部品が適切に潤滑される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のエンジン及び車体フレームの右側面図である。
図2】本実施例のシリンダヘッドカバーを取り外したエンジン上部の右側面図である。
図3】本実施例のシリンダヘッドカバーを取り外したエンジン上部の斜視図である。
図4】本実施例の可変動弁装置の上面模式図である。
図5】本実施例の可変動弁装置の模式図である。
図6】本実施例の上部ハウジングの上面図及び下面図である。
図7】本実施例のシリンダヘッド内の上面図である。
図8図7のシリンダヘッドをA-A線に沿って切断した断面図である。
図9図8のシリンダヘッドをB-B線に沿って切断した断面図である。
図10図7のシリンダヘッドをC-C線に沿って切断した断面図である。
図11図7のシリンダヘッドをD-D線に沿って切断した断面図である。
図12図7のシリンダヘッドをE-E線に沿って切断した断面図である。
図13図8のシリンダヘッドをF-F線に沿って切断した断面図である。
図14図13のシリンダヘッドをG-G線に沿って切断した断面図である。
図15図7のシリンダヘッドをH-H線に沿って切断した断面図である。
図16図7のシリンダヘッドをI-I線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の可変動弁装置は、シリンダヘッドでバルブ動作を変更している。シリンダヘッド内には一対のカムハウジングが所定方向に離間しており、シリンダヘッドと一対のカムハウジングにカムシャフトが支持されている。一対のカムハウジングの上面には両持ちで上部ハウジングが支持されている。一対のカムハウジングの対向部分にロッカーシャフトが支持されており、ロッカーシャフトには複数のロッカーアームが揺動可能に支持されている。複数のロッカーアームのうち吸気用アームが切替機構によって連結及び分離されている。上部ハウジングには切替機構に潤滑油を供給する第1の噴射穴と複数のロッカーアームに潤滑油を供給する第2の噴射穴が形成され、カムシャフトの周囲の潤滑溝から第1、第2の噴射穴に向けて潤滑油が圧送されている。カムシャフトの周囲の潤滑溝から2の噴射穴までの通路長が、この潤滑溝から第1の噴射穴までの通路長よりも長くなっており、切替機構側の第1の噴射穴に連なる潤滑通路の油圧が高められている。切替機構によって潤滑先の部品が増えても、第1の噴射穴から切替機構に適量の潤滑油が供給され、第2の噴射穴から複数のロッカーアームに適量の潤滑油が供給される。よって、切替機構及び複数のロッカーアームの各部品が適切に潤滑される。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は本実施例のエンジン及び車体フレームの右側面図である。図2は本実施例のシリンダヘッドカバーを取り外したエンジン上部の右側面図である。図3は本実施例のシリンダヘッドカバーを取り外したエンジン上部の斜視図である。図4は本実施例の可変動弁装置の上面模式図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。なお、図3ではオイルコントロールバルブを省略して記載している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両は、クレードル型の車体フレーム10にエンジン20や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11の上部から後方に延びた後に下方に屈曲したメインチューブ12と、ヘッドパイプ11の下部から下方に延びた後に後方に屈曲したダウンチューブ13とを有している。メインチューブ12の下端部にダウンチューブ13の後端部が接合されて、車体フレーム10の内側にエンジン20の設置空間が形成されている。メインチューブ12によってエンジン20の後側が支持され、ダウンチューブ13によってエンジン20の前側及び下側が支持されている。
【0012】
エンジン20は、クランクケース21と、クランクケース21上に設けられたシリンダ22と、シリンダ22上に設けられたシリンダヘッド23と、シリンダヘッド23上に設けられたシリンダヘッドカバー24と、を有している。クランクケース21の右側面には、クラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー25が取り付けられている。クランクケース21の左側面には、マグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー(不図示)が取り付けられている。クランクケース21の下面には、オイルが貯留されるオイルパン26が取り付けられている。
【0013】
図2及び図3に示すように、エンジン20は4バルブの2気筒エンジンであり、2気筒の中間にカムチェーン27が設置されている。カムチェーン27はカムスプロケット28に巻き掛けられており、カムスプロケット28を挟んで左右の気筒毎に可変動弁装置40が設置されている。可変動弁装置40には、カムスプロケット28と一体に回転するカムシャフト41が設けられている。シリンダヘッド23内には気筒毎にカムハウジング42a、42bが左右方向(所定方向)に離間して設置されており、このカムハウジング42a、42bとシリンダヘッド23の合わせ面によってカムシャフト41が回転可能に支持されている。
【0014】
シリンダヘッド23内には、カムシャフト41の後側に4つの吸気バルブ31が設置され、カムシャフト41の前側に4つの排気バルブ33が設置されている。吸気バルブ31は弁バネ32によって閉弁方向に押し付けられており、排気バルブ33は弁バネ34によって閉弁方向に押し付けられている。カムシャフト41の外周面には低速カム44、高速カム45、排気カム46(いずれも図4参照)が形成されている。各カム44-46はベース円の一部からカム山が突き出した板状に形成されている。低速カム44よりも高速カム45のバルブリフト量が大きくなるように、低速カム44よりも高速カム45のカム山が高くなっている。
【0015】
カムハウジング42a、42bの対向部分には、吸気ロッカーシャフト47及び排気ロッカーシャフト48が支持されている。吸気ロッカーシャフト47及び排気ロッカーシャフト48はカムシャフト41よりも上方に位置しており、吸気ロッカーシャフト47及び排気ロッカーシャフト48がカムシャフト41と平行に延びている。カムハウジング42a、42bの上面には上部ハウジング49が両持ちで支持されており、上部ハウジング49には油圧ピストン53やスプリングピン54(図4参照)が収容されている。シリンダヘッドカバー24の上面後側にはオイルコントロールバルブ60(図3では不図示)が設置されている。
【0016】
図4に示すように、カムシャフト41よりも後側に吸気ロッカーシャフト47が位置し、カムシャフト41よりも前側に排気ロッカーシャフト48が位置している。吸気ロッカーシャフト47には2種類の吸気ロッカーアーム35a、35bが揺動可能に支持され(図4ではそれぞれ1つのみ図示)、排気ロッカーシャフト48には排気ロッカーアーム37が揺動可能に支持されている(図4では1つのみ図示)。吸気ロッカーアーム35a及び排気ロッカーアーム37は、力点と作用点を持ったシーソー状に形成されているが、吸気ロッカーアーム35bは吸気ロッカーアーム35aの力点になるように形成されている。
【0017】
吸気ロッカーアーム35aの一端には低速カム44に転接するローラ36aが回転可能に支持され、吸気ロッカーアーム35aの二股に分かれた他端には一対の吸気バルブ31が連結されている。吸気ロッカーアーム35bの一端には高速カム45に転接するローラ36bが回転可能に支持されており、吸気ロッカーアーム35bの他端には吸気バルブ31は連結されていない。排気ロッカーアーム37の一端には排気カム46に転接するローラ38が回転可能に支持され、排気ロッカーアーム37の二股に分かれた他端には一対の排気バルブ33が連結されている。吸気ロッカーアーム35a、35bは連結可能に形成されている。
【0018】
エンジンの低回転時及び中回転時には、吸気ロッカーアーム35a、35bが連結されていない。このため、低速カム44によって吸気ロッカーアーム35aが揺動され、高速カム45によって吸気ロッカーアーム35bが揺動される。吸気ロッカーアーム35aには一対の吸気バルブ31が連結されているため、低速カム44の回転に応じて一対の吸気バルブ31が動かされる。低速カム44のカム山が低いため、一対の吸気バルブ31のバルブリフト量が低くなっている。なお、吸気ロッカーアーム35bには吸気バルブ31が連結されていないため、高速カム45の回転に応じて吸気ロッカーアーム35bが空振りしている。
【0019】
エンジンの高回転時には、吸気ロッカーアーム35a、35bが連結されている。このため、高速カム45によって吸気ロッカーアーム35a、35bが一体的に揺動される。吸気ロッカーアーム35bには吸気ロッカーアーム35aを介して一対の吸気バルブ31が連結されているため、高速カム45の回転に応じて一対の吸気バルブ31が動かされる。高速カム45のカム山が高いため、一対の吸気バルブ31のバルブリフト量が高くなっている。このように、吸気ロッカーアーム35a、35bの連結状態が切り替わることによって、吸気バルブ31を動かす低速カム44と高速カム45が切り替えられている。
【0020】
各可変動弁装置40には、吸気ロッカーアーム35a、35bを連結及び分離させる切替機構50が設けられている。切替機構50には、吸気ロッカーアーム35bの収容室に設置された連結ピン51と、吸気ロッカーアーム35aの収容室に設置された戻しピン52と、が設けられている。また、切替機構50には、連結ピン51に対して左右方向一方側から接する油圧ピストン53と、戻しピン52に対して左右方向他方側から接するスプリングピン54と、が設けられている。油圧ピストン53は油圧によって進退可能に形成されており、スプリングピン54はバネの伸縮によって進退可能に形成されている。
【0021】
油圧ピストン53に作動油が供給されると、スプリングピン54のバネ力に抗して油圧ピストン53が前進する。油圧ピストン53の前進によって連結ピン51に戻しピン52が押し込まれ、吸気ロッカーアーム35bの収容室から吸気ロッカーアーム35aの収容室に連結ピン51の一部が入り込んで吸気ロッカーアーム35a、35bが連結される。油圧ピストン53から作動油が排出されると、スプリングピン54のバネ力によって油圧ピストン53が後退する。油圧ピストン53の後退によって戻しピン52に連結ピン51が押し戻されて、吸気ロッカーアーム35aの収容室から連結ピン51の一部が抜け出して吸気ロッカーアーム35a、35bが分離される。
【0022】
ところで、クランクケース21からヘッドボルトとボルト穴の隙間を通って可変動弁装置40に向けて潤滑油が供給されている。可変動弁装置40にてカムシャフト41の周囲の潤滑溝を経由して各潤滑先に潤滑油が圧送されている。上部ハウジング49には、潤滑先となる各部品用に大気開放された噴射穴が形成されている。潤滑溝から2方向に潤滑通路が延びており、一方の潤滑通路を通じて吸気バルブ31のステムエンド用及び切替機構50用の噴射穴に潤滑油が送られ、他方の潤滑通路を通じて排気バルブ33のステムエンド用及びロッカーアーム35a、35b、37用の噴射穴に潤滑油が送られている。
【0023】
このとき、一方の潤滑通路には、吸気バルブ31のステムエンド用の2つの噴射穴と切替機構50用の5つの噴射穴が設けられている。他方の潤滑通路には、吸気バルブ31のステムエンド用の2つの噴射穴とロッカーアーム35a、35b、37用の3つの噴射穴が設けられている。これらの噴射穴が同径に形成されているため、一方の潤滑通路で大気開放された噴射穴の合計面積が、他方の潤滑通路で大気開放された噴射穴の合計面積よりも大きい。また、一方の潤滑通路には側面視にて最も高い位置H1(図2参照)に、吸気バルブ31のステムエンド用の噴射穴と切替機構50用の噴射穴が形成されている。
【0024】
このため、一方の潤滑通路の通路長が他方の潤滑通路の通路長が略同じか、一方の潤滑通路の通路長が他方の潤滑通路の通路長よりも長いと一方の潤滑通路内の油圧が低くなる。そして、吸気バルブ31のステムエンドや切替機構50用の噴射穴からの潤滑油の供給量が減少し、特に高油温で低回転時には噴射穴から潤滑油が噴射されずに各部品が適切に潤滑できなくなる。そこで、本実施例では、カムシャフト41内の潤滑通路を利用して他方の潤滑通路の通路長を長くすることで、一方の潤滑通路の油圧を高めて吸気バルブ31のステムエンドや切替機構50を適切に潤滑している。
【0025】
図5を参照して可変動弁装置について説明する。図5は本実施例の可変動弁装置の模式図である。
【0026】
図5に示すように、可変動弁装置40ではオイルパン26からオイルコントロールバルブ60に向けてオイル供給路55が延びている。オイル供給路55の途中のオイルポンプ56によってオイルパン26からオイルが汲み上げられて、オイルフィルタ57を通じてオイルコントロールバルブ60にオイルが供給されている。オイルコントロールバルブ60は、バルブスプール(不図示)が収容されたバルブハウジング61と、バルブスプールを進退するソレノイド62と、によって形成されている。ソレノイド62によってバルブスプールが進退されることで、オイルコントロールバルブ60内のオイル通路が切り替えられる。
【0027】
バルブハウジング61には入力ポート63、低速用ポート64、高速用ポート65、ドレンポート66が形成されている。入力ポート63にはオイル供給路55が連通し、低速用ポート64には行き止まり通路67が連通し、高速用ポート65には切替通路69が連通し、ドレンポート66にはドレン通路68が連通している。行き止まり通路67の出力先は塞がっており、切替通路69はオイルコントロールバルブ60から切替機構50に向かって延びている。ドレン通路68はオイルコントロールバルブ60からオイルパン26の上方まで延びており、ドレン通路68の出口からオイルパン26にオイルを落下させている。
【0028】
オイルコントロールバルブ60のバルブスプールが動かされることで、入力ポート63が低速用ポート64及び高速用ポート65のいずれか一方に連通され、ドレンポート66が低速用ポート64及び高速用ポート65のいずれか他方に連通される。行き止まり通路67及び切替通路69のいずれか一方にオイルコントロールバルブ60からオイルが出力され、行き止まり通路67及び切替通路69のいずれか他方からオイルコントロールバルブ60(ドレン通路68)に余剰オイルが排出される。このように、オイルコントロールバルブ60によって切替機構50に対する油圧が制御される。
【0029】
切替通路69は作動通路71とダイレクト通路74に分かれており、作動通路71及びダイレクト通路74の両方がオイルコントロールバルブ60から切替機構50の油圧ピストン53に延びている。作動通路71の一部がカムシャフト41の所定の回転位相でオイルを通すオイル溝73で形成されている。上記したように、カムシャフト41は低速カム44、高速カム45、排気カム46(図6では不図示)が形成されており、カムシャフト41の外周面に部分的にオイル溝73が形成されている。
【0030】
作動通路71は、カムシャフト41のオイル溝73を挟んで上流側通路72aと下流側通路72bに分かれている。カムシャフト41の回転によって、作動通路71の上流側通路72aと下流側通路72bの連通と分断が交互に繰り返される。ダイレクト通路74は、カムシャフト41のオイル溝73を介さずにオイルコントロールバルブ60から油圧ピストン53にダイレクトに延びている。作動通路71を通じたオイル供給によって油圧ピストン53がトリガとして動かされた後、ダイレクト通路74を通じたオイル供給によって油圧ピストン53が押し出された状態で保持されている。なお、カムシャフト41の所定の回転位相はバルブリフトの終了タイミングから次のバルブリフトの開始前の間に設定されている。
【0031】
吸気ロッカーアーム35bの上部の収容穴には連結ピン51が設置され、吸気ロッカーアーム35aの上部の収容穴には戻しピン52が設置されている。連結ピン51の先端には戻しピン52の先端が接している。上部ハウジング49には油圧室87と収容室88が形成されており、油圧室87には油圧ピストン53が設置され、収容室88にはスプリングピン54が設置されている。油圧ピストン53の押圧面は連結ピン51に接しており、スプリングピン54の押圧面は戻しピン52に接している。また、スプリングピン54から他方側にセンシングアーム78が延びている。
【0032】
切替機構50は、油圧によって連結ピン51が動かされることで、吸気ロッカーアーム35a、35bの連結状態が切り替えられる。上記したように、吸気ロッカーアーム35a、35bの分離状態では低速カム44によって吸気ロッカーアーム35aを介して一対の吸気バルブ31が作動される。吸気ロッカーアーム35a、35bの連結状態では高速カム45によって吸気ロッカーアーム35a、35bを介して一対の吸気バルブ31が作動される。このように、切替機構50では、連結ピン51によって吸気ロッカーアーム35a、35bの連結状態が切り替えられることで、一対の吸気バルブ31を動かすカムが切り替えられている。
【0033】
また、可変動弁装置40には、ECM(Engine Control Module)75、エンジン角センサ76、切替センサ77が設けられている。エンジン角センサ76によってエンジン回転数が検出されて、所定回転数以上になったときにECM75からソレノイド62に連結指令信号が出力され、所定回転数を下回ったときにECM75からソレノイド62に解除指令信号が出力される。切替センサ77によってセンシングアーム78の先端の動きから吸気ロッカーアーム35a、35bの連結状態と分離状態の切替が検出される。ECM75の指令信号と切替センサ77の検出信号が比較されて切替動作不良等の可変動弁装置40の故障が判定される。
【0034】
以下、図6から図16を参照して、潤滑用及び作動用のオイル通路について説明する。図6は本実施例の上部ハウジングの上面図及び下面図である。図7は本実施例のシリンダヘッド内の上面図である。図8図7のシリンダヘッドをA-A線に沿って切断した断面図である。図9図8のシリンダヘッドをB-B線に沿って切断した断面図である。図10図7のシリンダヘッドをC-C線に沿って切断した断面図である。図11図7のシリンダヘッドをD-D線に沿って切断した断面図である。図12図7のシリンダヘッドをE-E線に沿って切断した断面図である。図13図8のシリンダヘッドをF-F線に沿って切断した断面図である。図14図13のシリンダヘッドをG-G線に沿って切断した断面図である。図15図7のシリンダヘッドをH-H線に沿って切断した断面図である。図16図7のシリンダヘッドをI-I線に沿って切断した断面図である。
【0035】
図6(A)、(B)に示すように、上部ハウジング49は、前後に延びるハウジング固定部81a、81bと、左右に延びる第1-第3のブリッジ部82-84と、によってラダー形状に形成されている。ハウジング固定部81a、81bは、カムハウジング42a、42b(図3参照)に固定されている。第1のブリッジ部82は、シリンダヘッド23の吸気側にてハウジング固定部81a、81bを接続している。第2のブリッジ部83は、シリンダヘッド23の吸気側及び排気側の中間にてハウジング固定部81a、81bを接続している。第3のブリッジ部84は、シリンダヘッド23の排気側にてハウジング固定部81a、81bを接続している。
【0036】
第1のブリッジ部82は吸気ロッカーシャフト47(図3参照)に沿って延びており、第1のブリッジ部82内には潤滑油が通る潤滑通路93i(図11参照)が形成されている。第1のブリッジ部82の下面には複数(本実施例では5つ)の噴射穴94bが形成されており、複数の噴射穴94bは切替機構50の部品同士の接触箇所の上方に位置している。第1のブリッジ部82から吸気側に一対のノズル91が突き出しており、一対のノズル91の先端の噴射穴94cは一対の吸気バルブ31(図3参照)の上方に位置している。第1のブリッジ部82は接続部86a、86bを介してハウジング固定部81a、81bに接続されている。
【0037】
第1のブリッジ部82とハウジング固定部81aの接続箇所である接続部86aには油圧室87(図5参照)が形成されている。第1のブリッジ部82とハウジング固定部81bの接続箇所である接続部86bには収容室88(図5参照)が形成されている。油圧室87には油圧ピストン53(図5参照)が設置されており、収容室88にはスプリングピン54(図5参照)が設置されている。油圧室87及び収容室88は同軸上に形成されており、油圧ピストン53とスプリングピン54の平行度が確保されている。油圧室87には潤滑油とは異なる油圧回路を通じて作動油が供給されている。
【0038】
第2のブリッジ部83はカムシャフト41(図3参照)に沿って延びており、第2のブリッジ部83内には潤滑通路93s(図16参照)が形成されている。第2のブリッジ部83の下面には複数の噴射穴94fが形成されており、複数の噴射穴94fはロッカーアーム35a、35b、37の上方に位置している。第3のブリッジ部84は排気ロッカーシャフト48(図3参照)に沿って延びている。第3のブリッジ部84から排気側に一対のノズル92が突き出しており、一対のノズル92の先端の噴射穴94dは一対の排気バルブ33(図3参照)の上方に位置している。
【0039】
ハウジング固定部81aの吸気側にはオイル穴89が形成されており、オイル穴89にはオイルコントロールバルブ60から作動油が供給されている。ハウジング固定部81aの下面にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部81aがカムハウジング42aに固定されることで作動油が通る作動通路71及びダイレクト通路74が形成される。作動通路71及びダイレクト通路74は油圧ピストン53が設置された油圧室87に連通しており、オイルコントロールバルブ60から作動通路71及びダイレクト通路74を通じて油圧室87に作動油が供給されている。
【0040】
ハウジング固定部81aの下面にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部81aがカムハウジング42aに固定されることで潤滑通路93qが形成される。潤滑通路93qから第2のブリッジ部83の潤滑通路93sに潤滑油が送り出されている。ハウジング固定部81bの下面にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部81bがカムハウジング42bに固定されることで潤滑通路93gが形成される。潤滑通路93gから第1のブリッジ部82の潤滑通路93iに潤滑油が送り出されている。このように、上部ハウジング49には、潤滑油及び作動油の油圧回路が形成されている。
【0041】
図7から図9に示すように、シリンダヘッド23がシリンダ22を介してクランクケース21に複数のヘッドボルト79で固定されている。排気側のヘッドボルト79とボルト穴の隙間は潤滑通路93aになっており、潤滑通路93aからカムシャフト41に潤滑通路93bが斜めに延びている。潤滑通路93a、93bを通じてクランクケース21からカムシャフト41の周囲の潤滑溝93cに潤滑油が導かれている。カムシャフト41の周囲の潤滑溝93cから、切替機構50に向かう潤滑経路90aとロッカーアーム35a、35b、37に向かう潤滑経路90bに分かれている。
【0042】
先ず、潤滑経路90aについて説明する。左右方向の中央側のハウジング固定部81aがカムハウジング42aを介してシリンダヘッド23に一対のハウジングボルト95aで固定されている。吸気側のハウジングボルト95aとボルト穴の隙間はカムシャフト41の周囲の潤滑溝93cから吸気ロッカーシャフト47に延びる潤滑通路93dになっている。潤滑通路93dから吸気ロッカーシャフト47内の潤滑通路93eに潤滑油が導かれ、潤滑通路93eの一端から他端に潤滑油が流れている。吸気ロッカーシャフト47内の潤滑通路93eには複数の供給穴94aが設けられており、供給穴94aから吸気ロッカーアーム35a、35bの軸穴に潤滑油が供給されている。なお、供給穴94aは大気開放されていない。
【0043】
図7及び図10に示すように、左右方向の外側のハウジング固定部81bがカムハウジング42bを介してシリンダヘッド23に一対のハウジングボルト95bで固定されている。吸気側のハウジングボルト95bとボルト穴の隙間は吸気ロッカーシャフト47の潤滑通路93eの端部からハウジング固定部81bに延びる潤滑通路93fになっている。ハウジング固定部81bとカムハウジング42bの合わせ面の潤滑通路93gから第1のブリッジ部82に潤滑通路93hが斜めに延びている。第1のブリッジ部82内には潤滑通路93iが形成され、潤滑通路93hから潤滑通路93iに潤滑油が導かれ、潤滑通路93iの他端から一端に潤滑油が流れている。
【0044】
図7及び図11に示すように、潤滑通路93iには大気開放した5つの噴射穴94bが設けられている。各噴射穴94bは油圧ピストン53、連結ピン51、戻しピン52、スプリングピン54の接触箇所の上方に位置付けられている。各噴射穴94bから部品同士の接触箇所に潤滑油が噴射されている。図7及び図12に示すように、第1のブリッジ部82から吸気側に一対のノズル91が突き出し、各ノズル91には大気開放した噴射穴94cが形成されている。各噴射穴94cはシリンダヘッドカバー24の内壁面に対向し、各噴射穴94cから内壁面に吹き付けられた潤滑油が内壁面を伝って一対の吸気バルブ31のステムエンドに供給される。
【0045】
続いて、潤滑経路90bについて説明する。図8及び図13に示すように、左右方向の中央側のカムハウジング42aの下方で、カムシャフト41の周囲の潤滑溝93cからカムシャフト41内に向かって潤滑通路93jが延びている。潤滑通路93jからカムシャフト41内の潤滑通路93kに潤滑油が導かれ、潤滑通路93kの左右方向の中央から左右方向の外側に潤滑油が流れている。カムハウジング42aの下方の潤滑通路93kの左右方向の中央側には潤滑通路93jの出口が設けられており、カムハウジング42bの下方の潤滑通路93kの左右方向の外側には潤滑通路93lの入口が設けられている。
【0046】
図13図14に示すように、左右方向の外側のカムハウジング42bの下方で潤滑通路93lからカムシャフト41の周囲の潤滑溝93mに潤滑油が導かれている。排気側のハウジングボルト95bとボルト穴の隙間はカムシャフト41の周囲の潤滑溝93mから排気ロッカーシャフト48に延びる潤滑通路93nになっている。第3のブリッジ部84から一対のノズル92(特に図7参照)が突き出し、各ノズル92には潤滑通路93nに連なり大気開放した噴射穴94dが形成されている。各噴射穴94dはシリンダヘッドカバー24のリブ96に対向し(図12参照)、各噴射穴94dからリブ96に吹き付けられた潤滑油がリブ96を伝って一対の排気バルブ33のステムエンドに供給される。
【0047】
図9及び図14に示すように、潤滑通路93nから排気ロッカーシャフト48内の潤滑通路93oに潤滑油が導かれ、潤滑通路93oの他端から一端に潤滑油が流れている。排気ロッカーシャフト48内の潤滑通路93oには複数の供給穴94eが設けられており、供給穴94eから排気ロッカーアーム37の軸穴に潤滑油が供給されている。なお、供給穴94eは大気開放されていない。このように、カムシャフト41内の潤滑通路93kと排気ロッカーシャフト48内の潤滑通路93oによって潤滑経路90bが折り返されている。また、潤滑通路93oの出口側の排気側のハウジングボルト95aとボルト穴の隙間は潤滑通路93p(図15参照)になっている。
【0048】
図15及び図16に示すように、ハウジング固定部81aとカムハウジング42aの合わせ面の潤滑通路93qから第2のブリッジ部83に向かって潤滑通路93rが斜めに延びている。潤滑通路93rから第2のブリッジ部83内の潤滑通路93sに潤滑油が導かれ、潤滑通路93sの一端から他端に潤滑油が流れている。潤滑通路93sには大気開放した3つの噴射穴94fが設けられている。各噴射穴94fは吸気ロッカーアーム35a、35b及び排気ロッカーアーム37の上方に位置付けられている。各噴射穴94fから各ロッカーアーム35a、35b、37に潤滑油が噴射されている。
【0049】
このように、カムシャフト41の周囲の潤滑溝93cから各噴射穴94b-94d、94fに向けて潤滑油が圧送されている。潤滑経路90aは、潤滑溝93cから潤滑通路93c-93iを通じて噴射穴94b、94cに流れている。また、潤滑経路90bは、潤滑溝93cから潤滑通路93j、93kを通じて潤滑溝93mを通った後、潤滑溝93mから潤滑通路93n-93sを通じて噴射穴94d、94fに流れている。潤滑経路90bの潤滑溝93cから噴射穴94fまでの通路長が、潤滑経路90aの潤滑溝93cから噴射穴94b、94cまでの通路長よりも長く形成されて潤滑通路93iや噴射穴94b、94cの油圧が高められている。
【0050】
上記したように、上部ハウジング49には、切替機構50用に5つの噴射穴94b、吸気バルブ31のステムエンド用に2つの噴射穴94c、排気バルブ33のステムエンド用に2つの噴射穴94d、ロッカーアーム35a、35b、37用に3つの噴射穴94fが形成されている。潤滑経路90aの噴射穴94b、94cの数が、潤滑経路90bの噴射穴94d、94fの数よりも多く形成されている。潤滑経路90b側の噴射穴94d、94fの数が少なくなることで、潤滑経路90a側の潤滑箇所が多い切替機構50に対する噴射穴94bへの潤滑油の供給量を増やすことができる。
【0051】
上部ハウジング49の全ての噴射穴94b-94d、94fは同径に形成されて、上部ハウジング49に噴射穴94b-94d、94fが加工し易くっている。また、通路長によって潤滑経路90a、90b側の潤滑油の供給量が調整し易くなっている。噴射穴94b、94cが同一の潤滑通路93iに設けられてて、エンジン20の吸気側で噴射穴94b、94cがコンパクトに設置されている。噴射穴94fよりも上流の潤滑通路93oに噴射穴94dが設けられており、噴射穴94dの位置によって噴射穴94fからロッカーアーム35a、35b、37への潤滑油の供給量が調整されている。
【0052】
第1のブリッジ部82内の潤滑通路93iには吸気ロッカーシャフト47内の潤滑通路93eが直列に連なっており、潤滑油が潤滑溝93cから潤滑通路93e、93iを通って噴射穴94b、94cに向かって一方向に流れている。第2のブリッジ部83内の潤滑通路93sには排気ロッカーシャフト48内の潤滑通路93oが直列に連なっており、潤滑油が潤滑通路93o、93sを通って噴射穴94d、94fに向かって一方向に流れている。潤滑経路90a、90b内の潤滑油の流れがそれぞれ一方向になることで、通路の分岐を減らして潤滑油の油量がコントロールし易くなっている。
【0053】
潤滑通路93iが潤滑通路93eよりも上方に位置し、潤滑通路93sが潤滑通路93oよりも上方に位置している。通路数が増えても、潤滑通路がコンパクトにまとめられている。図2に示すように、潤滑通路93iが最も高い位置H1に位置付けられ、潤滑通路93sが2番目に高い位置H2に位置付けられ、潤滑通路93eが3番目に高い位置H3に位置付けられ、潤滑通路93oが最も低い位置H4に位置付けられている。潤滑通路93i内の噴射穴94bが潤滑通路93s内の噴射穴94fよりも高く位置付けられている。切替機構50が高く位置付けられていても、噴射穴94bからの潤滑油の噴射によって切替機構50が適切に噴射される。
【0054】
以上、本実施例の可変動弁装置40によれば、カムシャフト41の周囲の潤滑溝93cからロッカーアーム35a、35b、37用の噴射穴94fまでの通路長が、この潤滑溝93cから切替機構50用の噴射穴94bまでの通路長よりも長いので、噴射穴94bが設けられた潤滑通路の油圧が高められている。切替機構50によって潤滑先の部品が増えても、噴射穴94bから切替機構50に適量の潤滑油が噴射され、噴射穴94fから各ロッカーアーム35a、35b、37に適量の潤滑油が噴射される。よって、切替機構50及び各ロッカーアーム35a、35b、37の各部品が適切に潤滑される。
【0055】
なお、本実施例では、可変動弁装置に一対の吸気ロッカーアームが備えられているが、可変動弁装置に3つ以上の吸気ロッカーアームが備えられてもよい。
【0056】
また、本実施例では、上部ハウジングに切替機構用に5つの噴射穴が形成され、ロッカーアーム用に3つの噴射穴が形成され、各噴射穴が同径に形成されているが、切替機構用の噴射穴の合計面積がロッカーアーム用の噴射穴の合計面積よりも多ければ、噴射穴の数や大きさは限定されない。
【0057】
また、本実施例では、上部ハウジングが第1-第3のブリッジ部を有しているが、上部ハウジングは一対のカムハウジングの上面に両持ち支持可能に形成されていればよい。
【0058】
また、本実施例では、シーソー式のロッカーアームを例示したが、ロッカーアームの種類は特に限定されず、フィンガーフォロアー式のロッカーアームでもよい。
【0059】
また、本実施例では、複数のロッカーアームが隣接しているが、複数のロッカーアームが離間していてもよい。
【0060】
また、本実施例の排気装置は上記の鞍乗型車両のエンジンに限らず、他の乗り物のエンジンに採用されてもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、エンジンが搭載された乗り物であればよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0061】
以上の通り、第1態様は、シリンダヘッド(23)においてバルブ動作を変更可能な可変動弁装置(40)であって、シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジング(42a、42b)と、シリンダヘッドと一対のカムハウジングに支持されたカムシャフト(41)と、一対のカムハウジングの対向箇所に支持された一対のロッカーシャフト(吸気ロッカーシャフト47、排気ロッカーシャフト48)と、一対のロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアーム(吸気ロッカーアーム35a、35b、排気ロッカーアーム37)と、複数のロッカーアームの吸気用のアームを連結及び分離させる切替機構(50)と、一対のカムハウジングの上面に両持ちで支持された上部ハウジング(49)と、を備え、上部ハウジングには、切替機構に潤滑油を供給する第1の噴射穴(噴射穴94b)と、複数のロッカーアームに潤滑油を供給する第2の噴射穴(噴射穴94f)と、が形成され、カムシャフトの周囲の潤滑溝(93c)から第1、第2の噴射穴に向けて潤滑油が圧送され、潤滑溝から第2の噴射穴までの通路長が、潤滑溝から第1の噴射穴までの通路長よりも長く形成されている。この構成によれば、カムシャフトの周囲の潤滑溝から第2の噴射穴までの通路長が、この潤滑溝から第1の噴射穴までの通路長よりも長いので、切替機構側の第1の噴射穴が設けられた潤滑通路の油圧が高められている。切替機構によって潤滑先の部品が増えても、第1の噴射穴から切替機構に適量の潤滑油が噴射され、第2の噴射穴から複数のロッカーアームに適量の潤滑油が噴射される。よって、切替機構及び複数のロッカーアームの各部品が適切に潤滑される。
【0062】
第2態様は、第1態様において、一対のロッカーシャフトは吸気ロッカーシャフトと排気ロッカーシャフトであり、第1の噴射穴には、潤滑溝から吸気ロッカーシャフト内を通って潤滑油が圧送され、第2の噴射穴には、潤滑溝からカムシャフト内を通った後に排気ロッカーシャフト内を通って潤滑油が圧送される。この構成によれば、吸気ロッカーシャフト、排気ロッカーシャフト、カムシャフトの既存部品内を潤滑通路にすることで通路長を容易に調整することができる。
【0063】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、上部ハウジングには、第1の噴射穴が第2の噴射穴よりも多く形成されている。この構成によれば、ロッカーアーム側の第2の噴射穴を減らすことで、潤滑箇所が多い切替機構に対する第1の噴射穴への潤滑油の供給量を増やすことができる。
【0064】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1態様において、上部ハウジングには、吸気バルブ(31)のステムエンドに潤滑油を供給する第3の噴射穴(噴射穴94c)と、排気バルブ(33)のステムエンドに潤滑油を供給する第4の噴射穴(噴射穴94d)と、が形成され、第1の噴射穴及び第3の噴射穴が同一の潤滑通路に設けられ、第2の噴射穴よりも上流の潤滑通路に第4の噴射穴が設けられている。この構成によれば、第1、第3の噴射穴を同一の潤滑通路にコンパクトに形成することができ、第4の噴射穴の位置によって第2の噴射穴からロッカーアームへの潤滑油の供給量を調整することができる。
【0065】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様において、第1、第2の噴射穴は同径に形成されている。この構成によれば、通路長によって潤滑油の供給量を調整し易くなる。また、上部ハウジングに噴射穴を容易に加工することができる。
【0066】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか一態様において、第1の噴射穴が第2の噴射穴よりも高く位置付けられている。この構成によれば、切替機構が高く位置付けられていても、第1の噴射穴からの潤滑油の噴射によって切替機構を適切に潤滑することができる。
【0067】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様において、一対のロッカーシャフトは吸気ロッカーシャフトと排気ロッカーシャフトであり、上部ハウジングには、第1の噴射穴が設けられた第1の潤滑通路(潤滑通路93i)と、第2の噴射穴が設けられた第2の潤滑通路(潤滑通路93s)と、が形成され、吸気ロッカーシャフトには、第1の潤滑通路に直列に連なる第3の潤滑通路(潤滑通路93e)が形成され、排気ロッカーシャフトには、第2の潤滑通路に直列に連なる第4の潤滑通路(潤滑通路93o)が形成されており、第1の潤滑通路が第3の潤滑通路よりも上方に位置し、第2の潤滑通路が第4の潤滑通路よりも上方に位置している。この構成によれば、通路数が増えても、潤滑通路をコンパクトにまとめることができる。第1、第3の潤滑通路が直列に連なり、第2、第4の潤滑通路が直列に連なることで、潤滑溝から第1、第2の供給穴に向かってそれぞれ潤滑油が一方向に流れて潤滑油の油量がコントロールし易くなる。
【0068】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0069】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0070】
23 :シリンダヘッド
31 :吸気バルブ
33 :排気バルブ
35a:吸気ロッカーアーム(ロッカーアーム)
35b:吸気ロッカーアーム(ロッカーアーム)
37 :排気ロッカーアーム(ロッカーアーム)
40 :可変動弁装置
41 :カムシャフト
42a:カムハウジング
42b:カムハウジング
47 :吸気ロッカーシャフト(ロッカーシャフト)
48 :排気ロッカーシャフト(ロッカーシャフト)
49 :上部ハウジング
50 :切替機構
93c:潤滑溝
93e:潤滑通路(第3の潤滑通路)
93i:潤滑通路(第1の潤滑通路)
93o:潤滑通路(第4の潤滑通路)
93s:潤滑通路(第2の潤滑通路)
94b:噴射穴(第1の噴射穴)
94c:噴射穴(第3の噴射穴)
94d:噴射穴(第4の噴射穴)
94f:噴射穴(第2の噴射穴)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16