(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025088986
(43)【公開日】2025-06-12
(54)【発明の名称】油化処理粘着ラベル、油化処理粘着ラベル付き容器、油化処理粘着ラベルの油化処理方法、油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/00 20060101AFI20250605BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20250605BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20250605BHJP
B65D 23/08 20060101ALI20250605BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20250605BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
G09F3/00 Z
G09F3/00 E
G09F3/10 C
C08J11/12 ZAB
B65D23/08 B
B65D25/20 Q
B65D77/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203885
(22)【出願日】2023-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将司
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃史
【テーマコード(参考)】
3E062
3E067
4F401
【Fターム(参考)】
3E062AA01
3E062AA03
3E062AA09
3E062AA10
3E062AC02
3E062BA20
3E062BB06
3E062BB10
3E062DA07
3E062JA08
3E062JB30
3E062JC08
3E062JC09
3E067BA03A
3E067BA05A
3E067BA07A
3E067BA10A
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB17A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC07A
3E067EE04
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD09
4F401AA08
4F401AA11
4F401AC10
4F401AC13
4F401BA02
4F401CA70
(57)【要約】
【課題】油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルを提供すること。
【解決手段】油化処理可能な油化処理粘着ラベル(100)は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含み、無機フィラーを含有するか、又は前記無機フィラーを含有しない基材(10)と、前記基材(10)の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層(20)と、を備える。前記基材(10)に前記無機フィラーを含有する場合の含有量が30質量%以下である。油化処理粘着ラベル(100)は、下記数式(数1)により求められる油化率が60質量%以上である。
RO=(PW/AW)×100 ・・・(数1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油化処理可能な油化処理粘着ラベルであって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含み、無機フィラーを含有するか、又は前記無機フィラーを含有しない基材と、
前記基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、
を備え、
前記基材に前記無機フィラーを含有する場合の含有量が30質量%以下であり、
下記数式(数1)により求められる油化率が60質量%以上である、
油化処理粘着ラベル。
RO=(PW/AW)×100 ・・・(数1)
(数式(数1)中、ROは、油化率、PWは、油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の質量、AWは、油化処理に供した油化処理粘着ラベルの質量を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物が、オレフィン系エラストマーを含み、
前記スチレン系ホットメルト粘着剤組成物が、スチレン系エラストマーを含む、
油化処理粘着ラベル。
【請求項3】
請求項1に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記基材に含まれる樹脂が、前記ポリオレフィン系樹脂であり、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、前記オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物である、
油化処理粘着ラベル。
【請求項4】
請求項1に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記基材に含まれる樹脂が、前記スチレン系樹脂であり、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、前記スチレン系ホットメルト粘着剤組成物である、
油化処理粘着ラベル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、粘着付与剤を含み、
前記粘着付与剤が、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂からなる群から選択される少なくも一つを含む、
油化処理粘着ラベル。
【請求項6】
油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器であって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルと、
を備え、
前記油化処理粘着ラベルは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【請求項7】
請求項6に記載の油化処理粘着ラベル付き容器において、
前記容器に含まれる樹脂が、前記ポリオレフィン系樹脂であり、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、ポリオレフィン系樹脂を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えた油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【請求項8】
請求項6に記載の油化処理粘着ラベル付き容器において、
前記容器に含まれる樹脂が、前記スチレン系樹脂であり、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、スチレン系樹脂を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられ、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えた油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【請求項9】
油化処理粘着ラベルを油化する油化処理方法であって、
油化処理粘着ラベルを準備する工程と、
準備した前記油化処理粘着ラベルを加熱して熱分解する工程と、
前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、
を有し、
前記油化処理粘着ラベルは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベルの油化処理方法。
【請求項10】
油化処理粘着ラベル付き容器を油化する油化処理方法であって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルとを備える油化処理粘着ラベル付き容器を準備する工程と、
準備した前記油化処理粘着ラベル付き容器を加熱して熱分解する工程と、
前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、
を有し、
前記油化処理粘着ラベルは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油化処理粘着ラベル、油化処理粘着ラベル付き容器、油化処理粘着ラベルの油化処理方法、油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を目的として、例えば、社会全体としてプラスチック廃棄物の再利用を積極的に推し進めることで、継続的なリサイクル活動を支えることが検討されている。
【0003】
一般的に、プラスチック廃棄物のリサイクル処理方法としては、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、及びケミカルリサイクルの各処理方法が挙げられる。マテリアルリサイクルは、例えば、プラスチック廃棄物を粉砕及び熱溶融等の処理によって再生した樹脂を、樹脂材料として再利用するリサイクル処理方法である。サーマルリサイクルは、例えば、プラスチック廃棄物を燃焼することで発生する熱エネルギーを回収して再利用するリサイクル処理方法である。ケミカルリサイクルは、例えば、プラスチック廃棄物を化学的処理により分解して、燃料として再利用するか、又はモノマー原料等として再利用するリサイクル処理方法である。
【0004】
例えば、ポリエステル製物品の廃棄物におけるリサイクル処理方法には、マテリアルリサイクルの工程的な変形として、メカニカルリサイクルが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂から成る層と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成る層とを有するポリエステル構造体が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献2には、再生樹脂を含有する層を少なくとも1層以上有する基材と、前記基材の一方の側に、直接又はその他の層を介して積層された金属光沢層と、前記金属光沢層上に、直接又はその他の層を介して積層された粘着剤層と、を有する粘着ラベル素材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-256328号公報
【特許文献2】実用新案登録第3217989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラスチック廃棄物のリサイクル処理方法として、ケミカルリサイクルも注目されている。粘着ラベルの廃棄物及び粘着ラベルを含む廃棄物(以下、総称して、粘着ラベルの廃棄物と称する。)においても、ケミカルリサイクルに対する関心が高まっている。しかしながら、粘着ラベルは、粘着剤層を備えることから、従来、粘着ラベルの廃棄物をケミカルリサイクルすることは検討が進んでいない。特に、粘着ラベルの廃棄物におけるケミカルリサイクルの中でも、粘着ラベルの廃棄物を油化処理することはほとんど検討されていない。さらに、粘着ラベルの廃棄物は、油化処理することによって得られた生成油を、燃料又はモノマー原料が得られるナフサとして再利用することに関しては、これまで、ほとんど注目されていなかった。
【0009】
粘着ラベルの廃棄物から得られた生成油を燃料又はナフサとして利用するに当たっては、生成油に含まれる硫黄成分が少ないことが求められる。また、粘着ラベルの廃棄物から得られた生成油を利用するに当たっては、例えば、金属部材等に接触した場合の腐食を抑制するために、酸成分の含有量が少ないことが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベル、当該油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器、当該油化処理粘着ラベルの油化処理方法、及び、当該油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]
油化処理可能な油化処理粘着ラベルであって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含み、無機フィラーを含有するか、又は前記無機フィラーを含有しない基材と、
前記基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、
を備え、
前記基材に前記無機フィラーを含有する場合の含有量が30質量%以下であり、
下記数式(数1)により求められる油化率が60質量%以上である、
油化処理粘着ラベル。
RO=(PW/AW)×100 ・・・(数1)
(数式(数1)中、ROは、油化率、PWは、油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の質量、AWは、油化処理に供した油化処理粘着ラベルの質量を表す。)
【0012】
[2]
[1]に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物が、オレフィン系エラストマーを含み、
前記スチレン系ホットメルト粘着剤組成物が、スチレン系エラストマーを含む、
油化処理粘着ラベル。
【0013】
[3]
[1]に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記基材に含まれる樹脂が、前記ポリオレフィン系樹脂であり、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、前記オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物である、
油化処理粘着ラベル。
【0014】
[4]
[1]に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記基材に含まれる樹脂が、前記スチレン系樹脂であり、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、前記スチレン系ホットメルト粘着剤組成物である、
油化処理粘着ラベル。
【0015】
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルにおいて、
前記ホットメルト粘着剤組成物が、粘着付与剤を含み、
前記粘着付与剤が、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂からなる群から選択される少なくも一つを含む、
油化処理粘着ラベル。
【0016】
[6]
油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器であって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルと、
を備え、
前記油化処理粘着ラベルは、[1]から[5]のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【0017】
[7]
[6]に記載の油化処理粘着ラベル付き容器において、
前記容器に含まれる樹脂が、前記ポリオレフィン系樹脂であり、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、ポリオレフィン系樹脂を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えた油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【0018】
[8]
[6]に記載の油化処理粘着ラベル付き容器において、
前記容器に含まれる樹脂が、前記スチレン系樹脂であり、
前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、スチレン系樹脂を含む基材と、前記基材の一方の面に設けられ、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えた油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器。
【0019】
[9]
油化処理粘着ラベルを油化する油化処理方法であって、
油化処理粘着ラベルを準備する工程と、
準備した前記油化処理粘着ラベルを加熱して熱分解する工程と、
前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、
を有し、
前記油化処理粘着ラベルは、[1]から[5]のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベルの油化処理方法。
【0020】
[10]
油化処理粘着ラベル付き容器を油化する油化処理方法であって、
ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルとを備える油化処理粘着ラベル付き容器を準備する工程と、
準備した前記油化処理粘着ラベル付き容器を加熱して熱分解する工程と、
前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、
を有し、
前記油化処理粘着ラベルは、[1]から[5]のいずれか一項に記載の油化処理粘着ラベルである、
油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベル、当該油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器、当該油化処理粘着ラベルの油化処理方法、及び、当該油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの一例を表す概略断面図である。
【
図2】本実施形態に係る油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベルシートの一例を表す概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の一例を表す概略図である。
【
図4】本実施形態に係る油化処理粘着ラベル又は油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法に適用される油化処理装置の一例を表す概略図である。
【
図5】本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法の一例を表すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[油化処理粘着ラベル]
本発明の第一実施形態は、油化処理粘着ラベルである。以下、本実施形態の好ましい一例について説明する。
【0024】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含み、無機フィラーを含有するか、又は前記無機フィラーを含有しない基材と、前記基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備える。前記基材に前記無機フィラーを含有する場合の含有量が30質量%以下である。当該油化処理粘着ラベルは、下記数式(数1)により求められる油化率が60質量%以上である。
RO=(PW/AW)×100 ・・・(数1)
(数式(数1)中、ROは、油化率、PWは、油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の質量、AWは、油化処理に供した油化処理粘着ラベルの質量を表す。)
【0025】
本明細書において、「油化処理粘着ラベル」は、油化処理が可能であって、油化処理によって得られた生成油として再利用することが可能な粘着ラベルであることを表し、油化処理された粘着ラベルという意味ではない。
本明細書において、「粘着ラベル」は、基材と粘着剤層とを備えており、個別に区画されているか否かにかかわらず、シート状及びテープ状の粘着ラベルを含む概念である。例えば、粘着ラベルが剥離シートに貼付されている場合、粘着ラベルは、剥離シートから、個別に分離された後の粘着ラベルを指すだけでなく、剥離シートから個別に分離される前の粘着ラベル部を包含し、さらに、剥離シート上に貼付された状態の粘着ラベル部を含む粘着ラベル層全体の領域(以下、粘着ラベル領域と称する)も包含する。
【0026】
本実施形態によれば、上記構成を備えることで、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られる。本発明者らは、基材の材料に加え、粘着剤層に含まれる成分に着目し、粘着ラベルを油化処理したときに、油化率が高く、かつ、酸成分が少ない生成油が得られる粘着ラベルの構成について検討した。その結果、本発明者らは、基材と、粘着剤層とを、それぞれ、特定の材料で構成することによって、上記特性が得られることを知見した。したがって、上記構成を備える本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、上記特性が得られるため、油化処理に適した構成であると、本発明者らは考えている。
【0027】
ここで、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルについて図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大、又は縮小して図示した部分がある。
【0028】
図1に示される概略断面図には、油化処理粘着ラベルの一例が示されている。
図1に示されるように、油化処理粘着ラベル100は、基材10と、粘着剤層20とを備えている。油化処理粘着ラベル100は、粘着剤層20が基材10の一方の面に積層されており、基材10の第一基材面11に、粘着剤層20の第二粘着剤層面22が、直接、接している。基材10は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂のうちの一つ又は二つの樹脂を含む。基材10は、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂のみを含んでいてもよく、スチレン系樹脂のみを含んでいてもよい。基材10は、無機フィラーを含有していてもよく、無機フィラーを含有していなくてもよい。基材10が無機フィラーを含有する場合、基材10に含まれる無機フィラーの含有量は、30質量%以下(例えば、0質量%超、30質量%以下)である。油化処理粘着ラベル100において、粘着剤層20は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物のうちの一つ又は二つのホットメルト粘着剤組成物から形成される。粘着剤層20は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物のホットメルト粘着剤組成物により形成されていてもよく、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物のホットメルト粘着剤組成物により形成されていてもよい。油化処理粘着ラベル100において、第二基材面12は、油化処理粘着ラベル100の外表面であり、第一粘着剤層面21は、粘着面である。油化処理粘着ラベル100を油化処理した場合、前述の数式(数1)により求められる油化率は60質量%以上である。
【0029】
図2に示される概略断面図には、油化処理粘着ラベルを備える油化処理粘着ラベルシートの一例が示されている。具体的には、
図2に示される油化処理粘着ラベルシート110には、
図1に示される油化処理粘着ラベル100が、油化処理粘着ラベル部101Aとして、剥離シート30に貼付された状態で設けられている。すなわち、油化処理粘着ラベル部101Aにおける基材10及び粘着剤層20は、
図1に示される油化処理粘着ラベル100と同様の構成であり、油化処理したときの油化率も同様の油化率が得られる。
【0030】
図2に示されるように、油化処理粘着ラベルシート110は、基材10と粘着剤層20とを備える油化処理粘着ラベル領域101と、剥離シート30とを備えており、油化処理粘着ラベル領域101の粘着面(第一粘着剤層面21)が、剥離シート30の剥離処理面32に接して貼付されている。油化処理粘着ラベル領域101において、基材10の外表面である第二基材面12とは反対側の面の第一基材面11に、粘着剤層20の第二粘着剤層面22が、直接、接している。つまり、油化処理粘着ラベル領域101は、基材10の一方の面に、粘着剤層20が設けられており、基材10の外表面である第二基材面12から、粘着面である第一粘着剤層面21の方向に向かって、基材10及び粘着剤層20が、この順で積層されている。したがって、油化処理粘着ラベル部101Aも同様の構成を備えている。
【0031】
油化処理粘着ラベル領域101には、切れ目101X間によって区画された油化処理粘着ラベル部101Aと、切れ目101X間によって区画された油化処理粘着ラベル部101A以外の部分である不要部101Zとが設けられている。油化処理粘着ラベル部101Aにおいて、剥離シート30から不要部101Zを剥離及び除去することによって、剥離シート30の剥離処理面32に、油化処理粘着ラベル部101Aのみを設けることができる。なお、不要部101Zは、油化処理粘着ラベル部101A(すなわち、
図1に示される油化処理粘着ラベル100)と同様の構成であるため、剥離及び除去された不要部101Zを油化処理した場合も油化処理粘着ラベル部101Aと同等の特性が得られる。
【0032】
油化処理粘着ラベル部101Aは、剥離シート30から剥離されることによって、
図1に示される油化処理粘着ラベル100として使用できる。具体的には、油化処理粘着ラベル部101Aは、粘着剤層20の第一粘着剤層面21と剥離シート30の剥離処理面32との間で、油化処理粘着ラベルシート110の剥離シート30から個別に分離されて使用に供される。個別に分離された油化処理粘着ラベル部101Aが使用されるとき、油化処理粘着ラベル部101Aの粘着剤層20が、使用対象となる対象物の表面に貼付される。油化処理粘着ラベルシート110からの油化処理粘着ラベル部101Aの分離は、例えば、自動ラベリング装置を用いることができる。
【0033】
以上、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル及び油化処理粘着ラベルを含む油化処理粘着ラベルシートの一例を説明したが、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、これに限定されない。本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、上記の特定の基材と特定の粘着剤層とを備えていれば、種々の形態を採用し得る。例えば、油化処理粘着ラベル領域101において、切れ目101X間で区画された油化処理粘着ラベル部101Aと、切れ目101X間で区画された不要部101Zとが設けられているが、不要部101Zが設けられず、切れ目101X間で区画された油化処理粘着ラベル部101Aのみが設けられた構成であってもよい。
また、
図2において、油化処理粘着ラベルシート110は、油化処理粘着ラベル領域101が剥離シート30に貼付された構成が示されているが、剥離シート30を有さず、剥離シート30に貼付されない油化処理粘着ラベル領域101で構成されていてもよい。この場合、剥離シート30に貼付されない油化処理粘着ラベル領域101は、不要部101Zが設けられず、切れ目101X間によって区画された油化処理粘着ラベル部101Aのみが設けられた構成であってもよい。
さらに、例えば、
図1に示される油化処理粘着ラベル100及び
図2に示される油化処理粘着ラベル部101Aは、基材10の第二基材面12及び第一基材面11の一方又は両方の面に、装飾層が設けられていてもよい。装飾層は、例えば、印刷層であってもよい。印刷層は、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷等の印刷方式によって、形成することができる。印刷層は、図形、色、文字、記号、写真、及び模様等からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。印刷層は、例えば、ベタ印刷層の上に、図形、色、文字、記号、写真、及び模様等からなる群から選択される少なくとも一種の印刷層を設けることもできる。また、粘着剤層の一部に、印刷等によって糊殺し処理が施されていてもよい。
【0034】
以下、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの構成における好ましい一例について説明する。
【0035】
<基材>
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、基材は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む。基材は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含んでいれば、基材の一方の面(第一基材面)及び他方の面(第二基材面)のうちの少なくとも一方の面に、蒸着膜を有していてもよい。蒸着膜は、金属蒸着膜であってもよく、無機酸化物蒸着膜であってもよい。金属蒸着膜は、例えば、アルミニウム蒸着膜等が挙げられる。無機酸化物蒸着膜は、例えば、アルミナ(AlOx)蒸着膜及びシリカ(SiOx)蒸着膜等からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。本明細書において、基材が蒸着膜を含む場合、蒸着膜は基材の一部として包含される概念である。基材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂フィルムであってもよく、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む金属蒸着フィルムであってもよい。
【0036】
基材は、ポリオレフィン系樹脂又はスチレン系樹脂のいずれか一方の樹脂を単独で用いることができる。基材は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂の両方の樹脂を混合して用いることもできる。基材に含まれる樹脂は、ポリオレフィン系樹脂のみであることが好ましい。基材に含まれる樹脂は、スチレン系樹脂のみであることも好ましい。基材が、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含むことで、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られる。
【0037】
基材に用いられるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリエチレン系樹脂、並びに、ポリプロピレン及びプロピレン-αオレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン及びプロピレン-αオレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
【0038】
エチレン-αオレフィン共重合体は、エチレンの構成単位を最も多く含む共重合体である。プロピレン-αオレフィン共重合体は、プロピレンの構成単位を最も多く含む共重合体である。エチレン-αオレフィン共重合体は、例えば、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる少なくとも一つのαオレフィンと、が共重合されたエチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。プロピレン-αオレフィン共重合体は、例えば、プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる少なくとも一つのαオレフィンと、が共重合されたプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0039】
基材に用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されない。スチレン系樹脂は、スチレン、ο-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、及びα-メチルスチレン等からなる群から選ばれる少なくとも一種のスチレン系単量体を含む単量体から重合された重合体である。スチレン系樹脂は、スチレン系単量体からなる単独重合体、及びスチレン系単量体とスチレン系単量体以外の単量体とからなる共重合体のいずれでもよく、これら単独重合体と共重合体との混合物でもよい。スチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸メチル-スチレン共重合体、ポリスチレンにポリブタジエンをグラフト重合したポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、及びスチレン-ブタジエンブロック共重合体等からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。スチレン系樹脂は、これらのうちの一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン系樹脂は、ポリスチレンにポリブタジエンをグラフト重合したポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、及びスチレン-ブタジエンブロック共重合体等からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0040】
基材には、発泡ポリプロピレン及び発泡ポリエチレン等の発泡ポリオレフィン系樹脂、並びに、発泡ポリスチレン等の発泡スチレン系樹脂からなる群から選択される少なくも一つの発泡樹脂も用いることができる。基材として用いられる発泡樹脂は、一態様として、樹脂を延伸したときに微細な空洞が生成されることで得られる。例えば、基材が後述の無機フィラーを含む場合、無機フィラーを含む基材を延伸すると、基材中の無機フィラーの周辺には、微細な空洞が形成されることによって、白色の紙のような質感が付与され、紙に類似した性質を有する多孔質状の基材が得られる。このような紙に類似した性質を有する発泡基材は、いわゆる合成紙とも称される。
【0041】
基材は、無機フィラーを含有するか、又は無機フィラーを含有しない。基材に用いられる無機フィラーは、特に限定されない。当該無機フィラーとしては、例えば、カオリン、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、及びサチンホワイト等からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。無機フィラーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、油化処理粘着ラベルに装飾層を設けた場合の視認性の観点で、無機フィラーは、白色の無機フィラーであることが好ましい。本明細書において、白色とは、一般的に白色と認識され得る色調であればよい。同様の観点で、無機フィラーは、炭酸カルシウム及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。なお、一般的に白色と認識され得る樹脂フィルムは、白色樹脂フィルムであり、一般的に透明と認識され得る樹脂フィルムは、透明樹脂フィルムである。
【0042】
基材に無機フィラーが含まれる場合、基材に含まれる無機フィラーの含有量は、基材全体に対して、30質量%以下である。油化率をより向上させる観点で、基材に含まれる無機フィラーの割合は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。基材に無機フィラーが含まれる場合の無機フィラーの含有量は、0質量%超であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0043】
基材には、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られるのであれば、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、分散剤、及び滑剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0044】
基材は、未延伸の基材でもよく、一軸延伸された基材でもよく、二軸延伸された基材でもよい。基材は、単層体でもよく、二層以上の積層体でもよい。基材が積層体である場合は、全ての層に、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂が含まれる。
【0045】
基材の厚さは、特に限定されない。基材の厚さは、例えば、10μm以上、300μm以下であることが挙げられる。基材の厚さは、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。基材の厚さは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0046】
<粘着剤層>
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、粘着剤層は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成される。粘着剤層は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物又はスチレン系ホットメルト粘着剤組成物のいずれか一方から形成されていてもよい。粘着剤層は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物の両方によって形成されていてもよい。この場合、粘着剤層は、オレフィン系ベースポリマーとスチレン系ベースポリマーとを併用したホットメルト粘着剤組成物によって形成されていてもよい。粘着剤層が、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成されることで、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られる。
【0047】
本明細書において、ホットメルト粘着剤組成物とは、加熱することにより溶融して展延塗工可能となり、冷却することにより粘着性と凝集力とを発現するタイプの粘着剤組成物を表す。
【0048】
(オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物)
オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物は、特に限定されない。オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物は、例えば、オレフィン系ベースポリマーと、粘着付与剤と、可塑剤とを含むことが好ましい。
【0049】
オレフィン系ベースポリマーは、オレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。オレフィン系エラストマーは、特に限定されない。オレフィン系エラストマーは、例えば、チーグラナッタ触媒を用いて重合されたオレフィン系エラストマーでもよく、メタロセン触媒を用いて重合されたオレフィン系エラストマーでもよい。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、(1)炭素数4以上、10以下のαオレフィンの単独重合体エラストマー、(2)エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、(3)エチレン-炭素数4以上、10以下のαオレフィン共重合体エラストマー、(4)プロピレン-炭素数4以上、10以下のαオレフィン共重合体エラストマー、及び、(5)エチレン-プロピレン-炭素数4以上、10以下のαオレフィン共重合体エラストマーからなる群から選択される少なくとも一つであることが挙げられる。エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、及びエチレン-炭素数4以上、10以下のαオレフィン共重合体エラストマーは、エチレンの構成単位を最も多く含む共重合体エラストマーである。プロピレン-炭素数4以上、10以下のαオレフィン共重合体エラストマーは、プロピレンの構成単位を最も多く含む共重合体エラストマーである。オレフィン系エラストマーは、例えば、具体的には、ポリブテンエラストマー、ポリイソブチレンエラストマー、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-オクテン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体エラストマー等からなる群から選択される少なくとも一つのオレフィン系エラストマーであることが挙げられる。オレフィン系エラストマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。オレフィン系エラストマーは、ブロック共重体体であってもよい。
【0050】
オレフィン系ベースポリマーは、必要に応じて、オレフィン系エラストマー以外に、さらに、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの少なくとも一つのポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。オレフィン系ベースポリマーが、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの少なくとも一つを含む場合、これらのポリオレフィン系樹脂の含有量は、オレフィン系エラストマーよりも少ないほうがよい。具体的には、オレフィン系エラストマーと、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの少なくとも一つとの合計100質量部に対し、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちの少なくとも一つは、50質量%未満であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンは、公知の重合法で合成された樹脂であってよい。ポリエチレン及びポリプロピレンは、例えば、メタロセン触媒で合成された樹脂であってもよく、チーグラナッタ触媒を用いて重合された樹脂であってもよい。
【0051】
オレフィン系ベースポリマーの含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。オレフィン系ベースポリマーの含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、55質量%以下であることが好ましく、53質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
粘着付与剤は、特に限定されない。粘着付与剤は、例えば、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、及びスチレン系樹脂等から選択される少なくも一つが挙げられる。石油樹脂としては、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、粘着付与剤は、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られやすくなる観点で、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂からなる群から選択される少なくも一つを含むことが好ましい。同様の観点で、粘着付与剤は、ロジン系樹脂を含むことも好ましい。同様の観点で、粘着付与剤は、石油樹脂とロジン系樹脂とを含むことも好ましい。より高い油化率が得られやすくなる観点で、粘着付与剤は、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂からなる群から選択される少なくも一つであることが好ましい。ここで、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂は、いずれも、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、脂肪族石油樹脂、及び脂肪族-芳香族共重合体石油樹脂のそれぞれに対して水素添加された水素化石油樹脂も包含する概念である。水素化石油樹脂には、完全水素化石油樹脂だけでなく、部分水素化石油樹脂も含まれる。
【0053】
粘着付与剤の含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、70質量%以下であることが好ましく68質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
可塑剤は、特に限定されない。可塑剤としては、例えば、石油系プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイル等)、天然油(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、及びトール油等)、二塩基酸ジアルキル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、及びアジピン酸ジブチル等)、液状樹脂(液状ポリブテン及び液状ポリイソプレン等)が挙げられる。可塑剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0055】
可塑剤の含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、40質量%以下であることが好ましく、38質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
(スチレン系ホットメルト粘着剤組成物)
スチレン系ホットメルト粘着剤組成物は、特に限定されない。スチレン系ホットメルト粘着剤組成物は、例えば、スチレン系ベースポリマーと、粘着付与剤と、可塑剤とを含むことが好ましい。
【0057】
スチレン系ベースポリマーは、スチレン系エラストマーを含むことが好ましい。スチレン系エラストマーは、特に限定されない。スチレン系エラストマーは、スチレンブロック共重合体であることが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、具体的には、例えば、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、及びスチレン-ブタジエン-ブテン-スチレンブロック共重合体等からなる群から選択される少なくとも一つのスチレン系エラストマーであることが挙げられる。スチレン系エラストマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0058】
スチレン系ベースポリマーの含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。スチレン系ベースポリマーの含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、55質量%以下であることが好ましく、53質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
粘着付与剤は、特に限定されない。粘着付与剤は、前述のオレフィン系粘着剤組成物において説明した粘着剤組成物が使用できる。
【0060】
粘着付与剤の含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、70質量%以下であることが好ましく、68質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
可塑剤は、特に限定されない。可塑剤は、前述のオレフィン系粘着剤組成物において説明した粘着剤組成物が使用できる。
【0062】
可塑剤の含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量は、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物の全体(100質量%)に対して、40質量%以下であることが好ましく、38質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物は、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られるのであれば、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び着色剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0064】
<油化処理粘着ラベルの構成>
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、リサイクル適性向上の観点で、モノマテリアル化されていることが好ましい。油化処理粘着ラベルがモノマテリアル化されている場合、油化率がより高く、かつ、生成油に含まれる酸成分がより少ない油化処理粘着ラベルが得られやすくなる。
【0065】
本明細書において、モノマテリアル化とは、基材と粘着剤層とが同種の材料が用いられて構成されることを表す。本実施形態に係る油化処理粘着ラベルがモノマテリアル化されている場合、基材と、粘着剤層とが同種の材料が用いられていれば、同一の材料が用いられている必要はない。
【0066】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、基材と粘着剤層との組み合わせは、モノマテリアル化の観点で、基材に含まれる樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であり、ホットメルト粘着剤組成物が、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物であることが好ましい。
同様の観点で、基材と粘着剤層との組み合わせは、基材に含まれる樹脂が、スチレン系樹脂であり、ホットメルト粘着剤組成物が、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物であることも好ましい。
【0067】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、油化率がより高く、かつ、生成油に含まれる酸成分がより少ない油化処理粘着ラベルが得られやすくなる観点で、基材と粘着剤層とは、直接、接していることが好ましい。
【0068】
粘着剤層の厚さは、特に限定されない。粘着剤層の厚さは、例えば、1μm以上、100μm以下であることが挙げられる。粘着剤層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。粘着剤層の厚さは、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0069】
<剥離シート>
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、使用されるまでの間、粘着剤層を保護するために、剥離シートに貼付されていてもよい。剥離シートは、必要に応じて設けられる部材である。剥離シートは、公知の剥離シートが用いられる。剥離シートには、剥離紙も含まれる。剥離シートは、例えば、剥離基材の一方の面に剥離剤層を備えることが好ましい。剥離剤層は、剥離剤組成物によって形成できる。剥離基材は、特に限定されない。剥離基材は、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテン等のポリオレフィンフィルム、クレーコート紙、グラシン紙、クラフト紙、上質紙、及び再生紙等の紙基材、並びに、紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙などが挙げられる。剥離剤組成物は、特に限定されず、例えば、シリコーン系樹脂、アルキド樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂、及びワックス等からなる群から選択される少なくとも一つの剥離剤を含む剥離剤組成物が挙げられる。
【0070】
<油化処理粘着ラベルの特性>
次に、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの特性について説明する。
【0071】
(油化率)
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、下記数式(数1)により求められる油化率は60質量%以上である。当該油化率は、63質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、68質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがよりさらに好ましく、75質量%以上であることがさらなお好ましい。当該油化率は、100質量%に近いほうが好ましい。当該油化率は、残渣が生じる場合を考慮すると、99質量%以下であってもよい。
RO=(PW/AW)×100 ・・・(数1)
(数式(数1)中、ROは、油化率、PWは、油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の質量、AWは、油化処理に供した油化処理粘着ラベルの質量を表す。)
【0072】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、残渣を除いた油化率は、80質量%以上であることが好ましい。残渣を除いた油化率は、下記数式(数2)により求められる。
RO=(PW/(AW-RW))×100 ・・・(数2)
(数式(数2)中、ROは、油化率、PWは、油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の質量、AWは、油化処理に供した油化処理粘着ラベルの質量、RWは、残渣の質量を表す。)
【0073】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化率は、例えば、後述の第三実施形態で説明する油化処理方法によって油化処理されたときの油化率であることが好ましい。本実施形態に係る油化処理粘着ラベルを油化処理することによって得られた生成油は、下記の特性を示すことが好ましい。
【0074】
<油化処理粘着ラベルから得られた生成油の特性>
(硫黄成分)
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、熱分解により発生した分解ガスを冷却する油化処理で生成した生成油の硫黄成分が、JIS K2541-3:2003に準拠した分析において、0.05質量%以下であることが好ましい。当該油化処理で生成した生成油の硫黄成分が、JIS K2541-3:2003に準拠した分析において、0.05質量%以下であれば、当該生成油を、ナフサとして利用しやすくなる。
【0075】
(酸成分)
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルにおいて、熱分解により発生した分解ガスを冷却する油化処理で生成した生成油に含まれる酸成分が少ない。当該油化処理で生成した生成油に含まれる酸成分が少ない場合、当該生成油を利用したときに、生成油が接触した金属部材等への腐食が抑制される。生成油に含まれる酸成分は、一例として、生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHを測定することで確認することができる。生成油を洗浄するために用いる水は、中性に近いことがよい。生成油を洗浄するために用いる水は、例えば、イオン交換水、蒸留水、及び精製水等が挙げられる。生成油を水で洗浄した後の洗浄水を測定したpHは、4未満であれば、生成油に含まれる酸成分が多いと判断でき、4以上であれば、生成油に含まれる酸成分が少ないと判断できる。生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHは、4以上、8以下の範囲であることが好ましく、4.5以上、8以下の範囲であることがより好ましく、5以上、7.8以下の範囲であることがさらに好ましい。生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHは、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定できる。なお、生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHが4未満である場合には、当該pHが4以上である場合に比べ、生成油が接触したときの金属部材等の腐食速度が増大しやすいと考えられる。
【0076】
<油化処理粘着ラベルの製造方法>
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、例えば、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含み、30質量%以下で無機フィラーを含有するか、又は前記無機フィラーを含有しない基材を準備する工程と、基材の一方の面に、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層を設ける工程とを有する製造方法によって得られる。基材上に粘着剤層を設ける工程は、例えば、上記の基材上に、上記のホットメルト粘着剤組成物を溶融塗布して粘着剤層を形成することができる。この他、上記の基材上に、上記のホットメルト粘着剤層を設ける工程は、まず、剥離シートを準備する。次いで、剥離シートの剥離性を有する面(剥離処理面)に、ホットメルト粘着剤組成物を溶融塗布して粘着剤層を形成した後、粘着剤層上に、基材を積層して、基材に、粘着剤層を転写する。このような工程でも、上記の基材上に、上記のホットメルト粘着剤層を形成することができる。
溶融塗布する際の加熱温度としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されないが、好ましくは130℃以上、200℃以下であり、より好ましくは150℃以上、190℃以下である。
【0077】
粘着剤組成物を溶融塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、リップコート法、カーテンコート法、ディップコート法、及びスクイーズコート法等の公知の方法が採用できる。
【0078】
なお、油化処理粘着ラベルが剥離シートを備える場合は、油化処理粘着ラベルを有する油化処理粘着ラベルシートとなる。この場合は、油化処理粘着ラベルシートに対して打ち抜きを行う工程を有していてもよい。この工程により、油化処理粘着ラベル部を区画することができる。また、この工程により、油化処理粘着ラベル部と不要部とを区画することもできる。
【0079】
ラベルの平面形状は、円形、楕円形、矩形、多角形、及びこれらの組み合わせでもよい。ラベルの平面形状は、目的に応じて形成すればよい。
【0080】
[油化処理粘着ラベル付き容器]
本発明の第二実施形態は、油化処理粘着ラベル付き容器である。以下、本実施形態の好ましい一例について説明する。
【0081】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、容器の表面に貼付された第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルと、を備える。
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルを備えた油化処理粘着ラベル付き容器であるため、油化処理粘着ラベルを除去せずに、容器ごと油化処理を行うことが可能になる。
【0082】
<容器>
本実施形態において、容器の表面には、第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルが貼付される。本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、容器は、容器本体と蓋体とを有していてもよく、容器本体のみ有していてもよい。容器が蓋体を有する場合、容器は、内容物が収容される容器本体と、容器本体に装着され、容器本体を密封することが可能な蓋体と、を備える。容器が、容器本体及び蓋体を備える場合、第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルは、蓋体及び容器本体の少なくとも一方に貼付される。容器が、蓋体及び容器本体を備える場合、蓋体は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含んでおり、容器本体もポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含んでいる。
【0083】
容器本体の形状は特に限定されない。容器本体の形状は、チューブ状、カップ状、トレー状、パック状、パウチ状、箱状、及びボトル状等の容器本体に収容される内容物に適した形状が挙げられる。容器が蓋体及び容器本体を備える場合、容器本体を開口側から平面視したときの断面形状は、例えば、円形、楕円形、及び矩形等のいずれの形状であってもよく、これらの形状の組み合わせであってもよい。当該断面形状が矩形である場合、矩形の角部は丸みを有していてもよい。蓋体は容器本体の開口の形状に適合するような形状であればよい。
【0084】
容器本体及び蓋体は、それぞれ、圧縮成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、及び熱成形等の各種成形方法によって成形された成形体が挙げられる。容器本体の材料、形状、及び成形方法等は、容器本体に収容される内容物によって決定されてもよい。蓋体の材料、形状、及び成形方法等は、容器本体を密封する形態に応じて決定されればよい。蓋体は、例えば、フィルム状の成形体であってもよく、ブロック状の成形体であってもよい。
【0085】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、リサイクル適性向上の観点で、モノマテリアル化されていることが好ましい。油化処理粘着ラベル付き容器がモノマテリアル化されている場合、油化率がより高く、かつ、生成油に含まれる酸成分がより少ない油化処理粘着ラベル付き容器が得られやすくなる。
【0086】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、油化処理粘着ラベルと、容器との組み合わせは、モノマテリアル化の観点で、容器に含まれる樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であり、容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、ポリオレフィン系樹脂を含む基材と、基材の一方の面に設けられ、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えることが好ましい。
同様の観点で、油化処理粘着ラベルと、容器との組み合わせは、容器に含まれる樹脂が、スチレン系樹脂であり、容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルが、スチレン系樹脂を含む基材と、基材の一方の面に設けられ、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を備えることも好ましい。
【0087】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、油化処理粘着ラベルの粘着剤層を容器の表面に向けて貼付されることにより、油化処理粘着ラベルが容器に固定されることによって得られる。第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルが剥離シートに貼付されている場合は、油化処理粘着ラベルを剥離シートから分離することで、油化処理粘着ラベルの粘着剤層を露出させる。次いで、露出した粘着剤層を容器に向けて貼付されることにより、油化処理粘着ラベルが容器本体に固定されることによって得られる。
【0088】
ここで、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器について図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大、又は縮小して図示した部分がある。
【0089】
図3に示される概略図は、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の一例を表している。
図3に示されるように、油化処理粘着ラベル付き容器300は、容器200と、容器200の表面に貼付された油化処理粘着ラベル100A及び100Bとを備えている。
図3において、容器200は、ボトル状の形状を呈している。容器200は、中空状の容器本体201と、容器本体201に着脱可能に装着された蓋体202とを備えている。容器本体201は、開口を有する口部201Aと、口部201Aに接続している肩部201Bと、肩部201Bに接続している胴部201Cと、胴部201Cの底面を塞いでいる底部201Dとを有している。容器200を蓋体202側から平面視したとき、容器本体201の形状と蓋体202の形状とは、いずれも、ほぼ円形を呈している。容器本体201の内部には、内容物が収容される。蓋体202は、口部201Aに装着されており、蓋体202によって、容器本体201を密封できるように構成されている。油化処理粘着ラベル100Aは、矩形の形状を呈しており、油化処理粘着ラベル100Aの長手方向が胴部201Cの外周面の周方向に沿って貼付されている。油化処理粘着ラベル100Bの平面形状は、円形を呈しており、蓋体202の頂部の表面に貼付されている。油化処理粘着ラベル100A及び100Bは、それぞれ、粘着剤層の粘着面の全面が容器の表面に貼付されている。
【0090】
容器本体201は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む。蓋体202も、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む。油化処理粘着ラベル100A及び100Bは、第一実施形態で説明した油化処理粘着ラベルと同様の構成を有している。すなわち、油化処理粘着ラベル100A及び100Bの基材(不図示)は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含んでおり、粘着剤層(不図示)は、オレフィン系ホットメルト粘着剤組成物及びスチレン系ホットメルト粘着剤組成物からなる群から選択される少なくとも一つであるホットメルト粘着剤組成物から形成されている。油化処理粘着ラベル付き容器300において、油化処理粘着ラベル100A及び100Bの基材(不図示)の外表面には、目的に応じた印刷層(不図示)が形成されている。
【0091】
以上、
図3を参照して、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の一例を説明したが、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、これに限定されない。本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、上記特定の容器と、上記特定の基材及び特定の粘着剤層を備える油化処理粘着ラベルとを有していれば、種々の形態を採用し得る。
例えば、油化処理粘着ラベル付き容器300において、一例としてボトル状の容器本体を説明したが、これに限られず、種々の形状であってもよい。
また、油化処理粘着ラベル付き容器300において、蓋体202が容器本体201に着脱可能な容器200の構成を説明したが、これに限られず、例えば、蓋体がカップ状等の容器本体にヒートシールされた容器の構成であってもよい。
また、
図3においては、蓋体と容器本体とを備えている形態を説明したが、例えば、蓋体は備えておらず、箱状等の容器本体のみで構成された容器であってもよい。
さらに、
図3において、油化処理粘着ラベル100A及び100Bが容器200の表面に貼付されているが、油化処理粘着ラベル100A及び100Bのいずれか一方が貼付されていてもよい。
さらに、
図3において、油化処理粘着ラベルの粘着剤層における粘着面の全面が容器の表面に貼付された形態を説明したが、粘着面の一部が容器の表面に貼付された形態でもよい。この場合、例えば、容器の表面から浮いた状態で貼着する形態も挙げられる。
【0092】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器は、例えば、後述の第四実施形態で説明する油化処理方法によって油化処理されることが好ましい。本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器を油化処理することによって得られた生成油は、下記の特性を示すことが好ましい。
【0093】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、前述の数式(数1)により求められる油化率は、60質量%以上であることが好ましい。当該油化率は、63質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、68質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがよりさらに好ましく、75質量%以上であることがさらになお好ましい。当該油化率は、100質量%に近いほうが好ましい。当該油化率は、残渣が生じる場合を考慮すると、99質量%以下であってもよい。
【0094】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、油化処理することによって得られた生成油の硫黄成分及び生成油に含まれる酸成分は少ないことが好ましい。例えば、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、熱分解により発生した分解ガスを冷却する油化処理で生成した生成油の硫黄成分が、JIS K2541-3:2003に準拠した分析において、0.05質量%以下であることが好ましい。生成油の硫黄成分が、JIS K2541-3:2003に準拠した分析において、0.05質量%以下であれば、当該生成油を、ナフサとして利用しやすくなる。
また、例えば、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器において、熱分解により発生した分解ガスを冷却する油化処理で生成した生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHは、4以上、8以下の範囲であることが好ましく、4.5以上、8以下の範囲であることがより好ましく、5以上、7.8以下の範囲であることがさらに好ましい。当該生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHが、上記範囲であると、当該生成油を利用したときに、生成油が接触した金属部材等への腐食が抑制されやすくなる。
【0095】
[油化処理粘着ラベルの油化処理方法]
本発明の第三実施形態は、油化処理粘着ラベルの油化処理方法である。以下、本実施形態の好ましい一例について説明する。
【0096】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法は、油化処理粘着ラベルを準備する工程と、準備した前記油化処理粘着ラベルを加熱して熱分解する工程と、前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、を有する。油化処理粘着ラベルは、第一実施形態で説明した油化処理粘着ラベルである。
【0097】
ここで、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法について
図4及び
図5を参照して説明する。
【0098】
図4には、油化処理装置の一例を説明する概略図が示されている。
図4においては、説明を容易にするために、簡略化して図示している。
図4に示される油化処理装置は、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法に適用できる油化処理装置の一例である。
図5には、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法における工程を表すフローチャートが示されている。例えば、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法における一態様において、
図4に示される油化処理装置によって、
図5に示されるフローチャートにおける各工程を実現することができる。
【0099】
図4に示されるように、油化処理装置500は、油化処理粘着ラベルを加熱して熱分解する熱分解部501と、熱分解により発生した熱分解ガスを冷却する冷却部502と、熱分解ガスを冷却して得られた生成油を捕集する生成油捕集部503とを備えている。熱分解部501は、一態様において、図示しない熱分解炉等の熱分解手段と、図示しない熱分解手段に熱を供給するヒーター等の熱源とを備えていてもよい。熱分解部501において、熱源を備える場合、熱源は、例えば、熱分解手段の内部及び外部の少なくともいずれかに装着されていてもよく、熱分解手段と熱源とが、それぞれ、個別に備えていてもよい。熱分解部501は、一態様において、熱分解部501の内部に収容された油化処理粘着ラベルを攪拌するための攪拌手段(不図示)を備えていてもよい。熱分解部501は、一態様において、熱分解手段を回転させる回転手段(不図示)を備えていてもよい。冷却部502は、一態様において、公知の冷却手段及び冷媒によって構成されていてもよい。生成油捕集部503は、一態様において、公知の生成油捕集手段によって構成されていてもよい。
【0100】
油化処理装置500は、一態様において、熱分解部501に油化処理粘着ラベルを供給する供給部(不図示)を備えていてもよい。供給部は、公知の供給手段を採用すればよい。供給部は、油化処理粘着ラベルを粉砕する粉砕手段、及び油化処理粘着ラベルを洗浄する洗浄手段を備えていてもよい。油化処理装置500は、一態様において、熱分解処理のときに発生した残渣を回収する残渣回収部(不図示)を備えていてもよい。残渣回収部は、公知の残渣回収手段を採用すればよい。油化処理装置500は、一態様において、冷却部502で熱分解ガスを冷却したときに生成油とならないオフガスを処理するオフガス処理部(不図示)を備えていてもよい。オフガス処理部は、公知のオフガス処理手段を採用すればよい。
【0101】
図5に示されるように、油化処理粘着ラベルの油化処理方法は、油化処理粘着ラベルの準備(工程S101)、油化処理粘着ラベルの熱分解(工程S102)、及び生成油の生成(工程S103)の各工程を有する。すなわち、準備した油化処理粘着ラベルを、
図4に示される油化処理装置500における熱分解部501に供給した後、熱分解部501において工程S102を行い、熱分解により発生した分解ガスを冷却部502に供給して、冷却部502において工程S103を行い、分解ガスを冷却することによって液化した生成油を生成油捕集部503に供給することによって生成油を捕集することができる。
【0102】
<工程S101>
工程S101は、油化処理粘着ラベルを準備する工程である。工程S101において、油化処理に供するために、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルを準備する。油化処理に供するための油化処理粘着ラベルは、廃棄予定の油化処理粘着ラベルが準備される。廃棄予定の油化処理粘着ラベルは、実質的に、油化処理粘着ラベルの廃棄物である。油化処理に供するための油化処理粘着ラベルは、廃棄予定の油化処理粘着ラベルであれば、使用済みの油化処理粘着ラベルであってもよく、未使用の油化処理粘着ラベルであってもよい。準備した油化処理粘着ラベルは、次工程の工程S102に供給される。準備した油化処理粘着ラベルは、
図4に示される熱分解部501における熱分解手段の内部に収容される。
【0103】
<工程S102>
工程S102は、準備した油化処理粘着ラベルを熱分解する工程である。
図4に示される熱分解部501における熱分解手段の内部に収容された油化処理粘着ラベルが熱分解される温度は、油化処理粘着ラベルを熱分解することが可能な温度であれば、特に限定されない。熱分解の条件は、油化処理粘着ラベルの材質等に応じて設定すればよい。熱分解温度は、例えば、340℃以上であってもよく、360℃以上であってもよく、380℃以上であってもよく、400℃以上であってもよい。熱分解温度は、例えば、500℃以下であってもよく、480℃以下であってもよく、460℃以下であってもよく、440℃以下であってもよい。熱分解時間は、油化処理粘着ラベルを熱分解することが可能な時間であれば、特に限定されない。熱分解時間は、例えば、1時間以上であってもよく、2時間以上であってもよく、3時間以上であってもよい。熱分解時間は、例えば、15時間以下であってもよく、10時間以下であってもよく、7時間以下であってもよい。熱分解は、減圧下又は加圧下で行ってもよく、常圧下で行ってもよい。生成油を十分に捕集する観点で、熱分解は、無酸素状態の環境下で行うことが好ましい。ここで、無酸素状態の環境下とは、無酸素ガス雰囲気下であることを表し、無酸素ガスとは、酸素及び酸化物以外のガスを表す。無酸素ガスは、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス、並びに、メタン、エタン等の炭化水素ガス等を挙げることができる。無酸素ガスは、不活性ガスであることが好ましい。熱分解により発生した分解ガスは、次工程の工程S103に供給され、
図4に示される冷却部502において冷却される。
【0104】
<工程S103>
工程S103は、工程S102において熱分解により発生した熱分解ガスを冷却することによって生成油を得る工程である。油化処理粘着ラベルが熱分解された分解ガスは、冷却されることによって液化された生成油と、液化されない気体のオフガスが生成される。
図4に示される冷却部502における分解ガスの冷却温度は、生成油が生成される温度であれば特に限定されない。分解ガスの冷却温度は、例えば、20℃以上であってもよく、30℃以上であってもよい、分解ガスの冷却温度は、例えば、60℃以下であってもよく、50℃以下であってもよい。液化された生成油は、
図4に示される生成油捕集部503に供給され、生成油が捕集される。
【0105】
以上、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法を説明したが、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法は、これに限定されない。本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法は、公知の油化処理装置によって油化処理ができる。
【0106】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法によって、第一実施形態で説明した油化率が得られる。また、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化処理方法によって得られた生成油は、第一実施形態で説明したように、生成油に含まれる硫黄成分が少なく、生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHが4以上、8以下の範囲を満たすことができる。
【0107】
[油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法]
本発明の第四実施形態は、油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法である。以下、本実施形態の好ましい一例について説明する。
【0108】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法は、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む容器と、前記容器の表面に貼付された油化処理粘着ラベルとを備える油化処理粘着ラベル付き容器を準備する工程と、準備した前記油化処理粘着ラベル付き容器を加熱して熱分解する工程と、前記熱分解により発生した熱分解ガスを冷却して生成油を得る工程と、を有する。前記油化処理粘着ラベルは、第一実施形態に係る油化処理粘着ラベルである。
【0109】
ここで、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法について、
図4及び
図6を参照して説明する。
図4には、油化処理装置の一例が表されており、
図4に示される油化処理装置は、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法に適用できる油化処理装置の一例でもある。
図4に示される油化処理装置の詳細は、前述の第三実施形態で説明したとおりである。
図6には、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法における工程を表すフローチャートが示されている。本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法は、第三実施形態で説明した
図4に示される油化処理装置によって、
図6に示されるフローチャートにおける各工程を実現することができる。
【0110】
図6に示されるように、油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法は、油化処理粘着ラベル付き容器の準備(工程S201)、油化処理粘着ラベル付き容器の熱分解(工程S202)、及び生成油の生成(工程S203)の各工程を有する。
【0111】
<工程S201>
工程S201は、油化処理粘着ラベル付き容器を準備する工程である。工程S201において準備する油化処理粘着ラベル付き容器は、廃棄する予定の油化処理粘着ラベル付き容器である。廃棄する予定の油化処理粘着ラベル付き容器は、実質的に、油化処理粘着ラベル付き容器の廃棄物である。準備した油化処理粘着ラベル付き容器は、粉砕してから、次工程の工程S202に供給されてもよく、粉砕せずに、そのままの形態で、次工程の工程S202に供給されてもよい。準備した油化処理粘着ラベル付き容器は、
図4に示される熱分解部501における熱分解手段の内部に収容される。
【0112】
<工程S202>
工程S202は、準備した油化処理粘着ラベル付き容器を熱分解する工程である。
図4に示される熱分解部501における熱分解手段の内部に収容された油化処理粘着ラベル付き容器が熱分解される。油化処理粘着ラベル付き容器が熱分解されるときの熱分解条件は、油化処理粘着ラベル付き容器の材質及び形態等に応じて設定すればよい。熱分解条件は、一態様として、第三実施形態で説明した熱分解条件と同様の条件を採用することができる。熱分解により発生した分解ガスは、次工程の工程S203に供給される。熱分解により発生した分解ガスは、
図4に示される冷却部502において冷却される。
【0113】
<工程S203>
工程S203は、工程S202において熱分解により発生した熱分解ガスを冷却することによって生成油を得る工程である。第三実施形態と同様に、油化処理粘着ラベル付き容器が熱分解された分解ガスは、冷却されることによって液化された生成油と、液化されない気体のオフガスが生成される。
図4に示される冷却部502における分解ガスの冷却条件は、一態様として、第三実施形態で説明した冷却温度と同様の条件を採用することができる。液化された生成油は、
図4に示される生成油捕集部503に供給され、生成油が捕集される。
【0114】
以上、
図4及び
図6を参照して、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法を説明したが、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法は、これに限定されない。本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法は、公知の油化処理装置によって油化処理することができる。
【0115】
本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法によって、第二実施形態で説明した油化率が得られやすい。また、本実施形態に係る油化処理粘着ラベル付き容器の油化処理方法によって得られた生成油は、第二実施形態で説明したように、生成油に含まれる硫黄成分が少なくなりやすく、生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHが4以上、8以下の範囲を満たしやすくなる。
【0116】
本発明は、前記の各実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形および改良などを含むことができる。
【実施例0117】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0118】
各実施例および比較例の油化処理粘着ラベルを作製するための材料として、下記の原材料を準備した。
【0119】
[基材]
「PO-1」:白色ポリプロピレンフィルム(厚さ80μm、無機フィラー30質量%含有)
「PO-2」:透明二軸延伸ポリプロピレン(厚さ50μm、無機フィラーの含有無し)
【0120】
[粘着剤層]
<スチレン系ベースポリマー>
「TPS-1」:スチレン系エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、(旭化成株式会社製、「[アサプレン(登録商標)T]シリーズ」))
「TPS-2」:スチレン系エラストマー(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、(日本ゼオン株式会社製、「[Quintac(登録商標)]シリーズ」))
【0121】
<オレフィン系ベースポリマー>
「POE-1」:オレフィン系エラストマー(エチレン・αオレフィン共重合体、(住友化学株式会社製、「[エクセレン(登録商標) VL/FX]シリーズ」))
【0122】
<アクリル系粘着剤>
「Ac-1」:アクリル系エマルション(東亜合成株式会社製、「HV-C9500」)
【0123】
<粘着付与剤>
「TF-1」:水素化石油樹脂(荒川化学工業株式会社製、「[アルコン]シリーズ」)
「TF-2」:ロジン系樹脂(Kraton社製、「[SYLVALITE]シリーズ」)
【0124】
<可塑剤>
「Oil-1」:プロセスオイル(出光興産株式会社製、「ダイアナフレシア」)
【0125】
[油化処理粘着ラベルの作製]
<実施例1>
固形分換算で、ベースポリマーとしてのスチレン系エラストマー(TPS-1)30質量部、粘着付与剤としての水素化石油樹脂(TF-1)25質量部及びロジン系樹脂(TF-2)25質量部、並びに、可塑剤としてのプロセスオイル(Oil-1)20質量部となるように、各成分を配合して、スチレン系ホットメルト粘着剤組成物を得た。スチレン系ホットメルト粘着剤組成物中の粘着剤と、粘着付与剤と、可塑剤との合計は100質量部である。
基材としての白色PPフィルム(PO-1)に、上記で得られたスチレン系ホットメルト粘着剤組成物を、厚さが15μmとなるように、溶融塗布して塗膜を形成した。塗膜を冷却することで、基材の一方の面に、粘着剤層が形成された油化処理粘着ラベルを得た。
【0126】
<実施例2~実施例6>
表1にしたがって、基材の種類、ベースポリマーの種類、粘着付与剤の種類と組成、及び粘着剤層の厚さのうちの少なくとも一つの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、油化処理粘着ラベルを得た。
【0127】
<比較例1>
固形分換算で、粘着剤としてのアクリル系エマルション(Ac-1)90質量部、粘着付与剤としての水素化石油樹脂(TF-1)5質量部及びロジン系樹脂(TF-2)5質量部となるように、各成分を配合して、アクリル系粘着剤組成物を得た。アクリル系粘着剤組成物中の粘着剤と、粘着付与剤との合計は100質量部である。得られたアクリル系粘着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、油化処理粘着ラベルを得た。なお、表1中、アクリル系粘着剤もベースポリマー欄に記載している。
【0128】
[油化処理粘着ラベルの油化処理試験]
油化処理試験装置を用いて油化処理粘着ラベルの油化処理試験を行った。油化処理試験装置は、ヒーターを備える熱分解容器と、熱分解容器に接続されており、冷却水の流通管路が設けられた冷却器と、冷却器に接続された生成油捕集器とを備える。油化処理試験装置は、熱分解容器を加熱することで、熱分解できるように構成されており、流通管路内に冷却水を通水させることで、冷却できるように構成されており、冷却することで生成した生成油を生成油捕集器で捕集及び貯留できるように構成されている。
【0129】
<油化率の測定>
まず、各例で作製した350gの油化処理粘着ラベルを準備し、準備した油化処理粘着ラベルを油化処理試験装置における熱分解容器の内部に収容した。次いで、熱分解ガスが冷却可能なように冷却器の内部へ、冷却水の通水を開始した。次いで、熱分解容器の内部を無酸素状態の環境下になるように、窒素ガスで置換した。その後、加熱温度を400℃以上、440℃以下になるように調整し、加熱時間を3.5時間として、熱分解を行った。熱分解により発生した熱分解ガスの一部は、冷却器で冷却されることによって液化され、液化された生成油を生成油捕集器で捕集した。油化処理のために準備した油化処理粘着ラベルの量と、捕集した生成油の量から、前述の数式(数1)にしたがって、油化率を算出した。
【0130】
<洗浄水のpH>
捕集した生成油の一部の100mlを、容量500mlの分液ロートに投入し、洗浄水としての精製水100mlを当該分液ロートに投入した。次いで、3分間激しく振った後、10分間静置した。次いで、分液ロートから水層を分取し、分取した水層のpHをpH計(株式会社堀場製作所製、「モノクロ卓上pH計」)で測定した。この水層のpHを測定するまでの操作を3回繰り返し、水層のpHを3回測定した平均値を洗浄水のpHとした。
【0131】
<硫黄成分>
捕集した生成油の一部を採取して分析用試料とし、当該分析用試料を、JIS K2541-3:2003に準拠して分析した。
【0132】
【0133】
【0134】
以上の結果から、各実施例の油化処理粘着ラベルは、比較例1の油化処理粘着ラベルに比べ、油化処理したときの油化率が高く、生成油に含まれる酸成分が少ないことが分かる。したがって、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルを油化処理したときに、油化率が高く、かつ、生成油に含まれる酸成分が少ない油化処理粘着ラベルが得られることが確認できた。
【0135】
なお、実施例1において、残渣が無機フィラーのみであったと仮定した場合の残渣を除いた油化率は、84.0%であり、80%を超えていた。一方、比較例1において、残渣が無機フィラーのみであったと仮定した場合の残渣を除いた油化率は、77.2%であった。したがって、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルの油化率は、比較例に比べ、優れた油化率が得られることが確認できた。残渣を除いた油化率は、前述の数式(数2)によって求められる。
【0136】
各実施例における油化処理粘着ラベルから得られた生成油を水で洗浄した後の洗浄水のpHが4以上を示しているため、各実施例で作製した油化処理粘着ラベルから得られた生成油を利用した場合、金属部材等に接触した場合の腐食を抑制できると推測される。
さらに、各実施例の油化処理粘着ラベルから得られた生成油は、硫黄成分の含有量が少ないため、ナフサとして利用することができる。
このため、本実施形態に係る油化処理粘着ラベルを油化処理して得られた生成油の利用は、燃料への利用として有用であり、モノマー原料への利用として有用である。
10…基材、11…第一基材面、12…第二基材面、20…粘着剤層、21…第一粘着剤層面、22…第二粘着剤層面、30…剥離シート、32…剥離処理面、100,100A,100B…油化処理粘着ラベル、101…油化処理粘着ラベル領域、101A…油化処理粘着ラベル部,101X…切れ目、101Z…不要部、110…油化処理粘着ラベルシート、200…容器、201…容器本体、201A…口部、201B…肩部、201C…胴部、201D…底部、202…蓋体、300…油化処理粘着ラベル付き容器、500…油化処理装置、501…熱分解部、502…冷却部、503…生成油捕集部。