(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008902
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】クレーン用吊具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/34 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B66C1/34 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111512
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】321010807
【氏名又は名称】株式会社愛岐電機
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100223907
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 静夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 年彦
(72)【発明者】
【氏名】松波 英二
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩一
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004CD03
3F004EA21
(57)【要約】
【課題】遠隔操作のみで容器のシャックルに引っ掛けることができるクレーン用吊具を提供する。
【解決手段】クレーン用吊具100は、アーム101と、アーム101の下端部に揺動可能に取り付けられ、下端部の前方にフック156が設けられている係合部150とを有している。係合部150の上部には、カム穴154aが形成され、アーム101の下端部に取り付けられたシャフト157が、カム穴154aに挿通して、係合部150がアーム101の下端に揺動可能に取り付けられている。カム穴154aは、第1カム穴154a1と、第2カム穴154a2とから構成され、第1カム穴154a1は、長穴形状であり、長手方向が鉛直線方向と一致し、第2カム穴154a2は、第1カム穴154a1よりも長い長穴形状であり、第1カム穴154a1との接続部分から下前方に向かって形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム(101)と、
前記アームの下端部に揺動可能に取り付けられ、下端部の前方にフック(156)が設けられている係合部(150)と、を有することを特徴とするクレーン用吊具。
【請求項2】
前記係合部の上部には、カム穴(154a)が形成され、
前記アームの下端部に取り付けられたシャフト(157)が、前記カム穴に挿通して、前記係合部が前記アームの下端に揺動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン用吊具。
【請求項3】
前記カム穴は、第1カム穴(154a1)と、第2カム穴(154a2)とから構成され、
前記第1カム穴は、長穴形状であり、長手方向が鉛直線方向と一致し、
前記第2カム穴は、長穴形状であり、上後端が前記第1カム穴の下端に接続し、前記第1カム穴との接続部分から下前方に向かって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクレーン用吊具。
【請求項4】
前記第1カム穴と前記第2カム穴の接続部の後側の内面には、下方に位置するに従って前側に位置する傾斜面(154a3)が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のクレーン用吊具。
【請求項5】
前記傾斜面の断面形状は円弧形状であることを特徴とする請求項4に記載のクレーン用吊具。
【請求項6】
前記シャフトには、円筒形状のブッシュ(166)が、前記シャフトに対して回転可能に取り付けられ、
前記ブッシュは、前記カム穴の内周面と当接することを特徴とする請求項2に記載のクレーン用吊具。
【請求項7】
前記係合部の上後部には、上部ウエイト(155)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン用吊具。
【請求項8】
前記係合部の下後端には、傾動用切欠(151b、158a)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン用吊具。
【請求項9】
前記係合部の下端部には、下部ウエイト(158)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン用吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン用吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1の
図5に示されるように、溶鉱炉から溶融金属を受ける上方が開口した耐火容器で構成された取鍋が有る。このような取鍋は、その外周面に形成された一対のトラニオン軸が搬送用クレーンで吊り下げられて鋳型に搬送される。そして、取鍋の外周面の下部に設けられたシャックルにフック状の吊具を引っ掛け、この吊具を補助クレーンで釣り上げることにより、取鍋をトラニオン軸を回転中心に傾かせて、取鍋に収容された溶融金属を鋳型に流し込んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような取鍋は、上方に位置するに従って幅が広くなる形状である場合がある。このような形状の取鍋では、補助クレーンの遠隔操作だけでは、吊具をシャックルに引っ掛けることが難しかったため、人がワイヤーロープとフック等を使用して介入することによって、吊具をシャックルに引っ掛けていた。ところが、取鍋の近くで人が作業することは危険であった。このため、遠隔操作のみで、取鍋等の容器のシャックルに引っ掛けることができるクレーン用吊具が望まれていた。
【0005】
本発明は、遠隔操作のみで容器のシャックルに引っ掛けることができるクレーン用吊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた、請求項1に記載の発明であるクレーン用吊具は、
アーム(101)と、
前記アームの下端部に揺動可能に取り付けられ、下端部の前方にフック(156)が設けられている係合部(150)と、を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、係合部の下端を容器のシャックルの側方の地面に当接させ、更にアームを下方に移動させて、係合部を回動させることにより、フックをシャックルに引っ掛けることができる回動位置に係合部を回動させることができる。このため、遠隔操作のみで、フックをシャックルに引っ掛けることができる。よって、容器の近くで人が介入することによりクレーン用吊具をシャックルに引っ掛ける作業が不要となり、フックをシャックルに引っ掛かる作業の安全性を確保できる。また、上記作業のロスタイムの削減と省力化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記係合部の上部には、カム穴(154a)が形成され、
前記アームの下端部に取り付けられたシャフト(157)が、前記カム穴に挿通して、前記係合部が前記アームの下端に揺動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、係合部を地面に当接させた後において、アームを下方に移動させた場合に、カム穴によって、フックをシャックルに引っ掛けることができる回動位置に係合部を適切に回動させることができる。このため、確実にフックをシャックルに引っ掛けることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記カム穴は、第1カム穴(154a1)と、第2カム穴(154a2)とから構成され、
前記第1カム穴は、長穴形状であり、長手方向が鉛直線方向と一致し、
前記第2カム穴は、長穴形状であり、上後端が前記第1カム穴の下端に接続し、前記第1カム穴との接続部分から下前方に向かって形成されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、シャフトが第1カム穴から第2カム穴に侵入すると、係合部の上部が容器から離れる方向に回動する。このため、フックをシャックルに引っ掛けることができる回動位置に係合部をより確実に回動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記第1カム穴と前記第2カム穴の接続部の後側の内面には、下方に位置するに従って前側に位置する傾斜面(154a3)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、シャフトが第1カム穴から傾斜面に達すると、係合部の上部が容器から離れる方向に回動する。このため、フックをシャックルに引っ掛けることができる回動位置に係合部をより確実に回動させることができる。また、係合部をスムーズに回動させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記傾斜面の断面形状は円弧形状であることを特徴とする。
【0015】
これによれば、係合部をよりスムーズに回動させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記シャフトには、円筒形状のブッシュ(166)が、前記シャフトに対して回転可能に取り付けられ、
前記ブッシュは、前記カム穴の内周面と当接することを特徴とする。
【0017】
これによれは、シャフトがカム穴と直接当接する構造と比較して、シャフトの摩耗を低減させることができる。また、カム穴と当接するブッシュがシャフトに対して回転可能となっているので、カム穴と当接するブッシュの摩耗も低減させることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、係合部の上後部には、上部ウエイト(155)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、係合部が地面に当接後に回動を開始した際に、上部ウエイトによって、係合部の上部が容器から離れる方向への力が係合部に作用する。このため、より確実に係合部を回動させることができる。また、係合部の回動後に、アームを上方に移動させた際に、上部ウエイトの作用により、係合部が回動した状態が維持される。このため、係合部に形成されたフックをシャックルに確実に引っ掛けることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記係合部の下後端には、傾動用切欠(151b、158a)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、係合部が地面に当接してから、より確実に係合部を回動させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記係合部の下端部には、下部ウエイト(158)が設けられていることを特徴とする。
【0023】
これによれば、係合部の重心をより下方に下げることができ、係合部の回動時に、より確実に係合部を地面に接地させることができ、より安定して係合部を回動させることができる。
【0024】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態のクレーン用吊具と容器の正面図である。
【
図3】
図2のA矢視図であり、クレーン用吊具の係合部の側面図である。
【
図5】本実施形態のクレーン用吊具の動作を示した説明図である。
【
図6】本実施形態のクレーン用吊具の動作を示した説明図である。
【
図7】本実施形態のクレーン用吊具の動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(容器の説明)
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態のクレーン用吊具100によって傾かせる容器500について説明する。容器500は、本実施形態では溶融金属を収容する取鍋である。容器500は、有底筒状の容器本体501を有している。容器本体501は、鉄等の金属で構成された外皮部と、この外皮部に内張りされた耐火レンガ等の耐火物で構成された耐火部とから構成されている。容器500の外径及び内径は、容器500の上方に位置するに従って大きくなっている。つまり、容器500の外周面は、上方に位置するに従って容器500の中心部から離れるように(外側に位置するように)、鉛直線から傾いている。
【0027】
容器本体501の両側面には、一対のトラニオン軸502が容器本体501の外皮部から突出して形成されている。容器本体501の外周面の下端よりも上方部分には、シャックル取付部503が形成されている。シャックル取付部503には、鉄鋼等の金属で構成されたU字形状のシャックル504が揺動可能に取り付けられている。
【0028】
一対のトラニオン軸502のそれぞれには、トラニオンリング601が回転可能に取り付けられている。トラニオンリング601は、搬送用クレーン(不図示)のワイヤー602と連結されている。容器500は、搬送用クレーンによって水平方向及び垂直方向に移動可能となっている。
【0029】
(クレーン用吊具の説明)
次に、
図1を用いて、本発明の一実施形態のクレーン用吊具100について説明する。なお、
図1において、紙面右側をクレーン用吊具100の前側、紙面左側をクレーン用吊具100の後側、紙面上側をクレーン用吊具100の上側、紙面下側をクレーン用吊具100の下側とする。
【0030】
図1に示すように、クレーン用吊具100は、アーム101、アームウエイト102、一対のフックガイド103、アームシャフト104、係合部150を有しており、これらは、鉄鋼等の金属で構成されている。
【0031】
アーム101は、鉛直部101aと連結部101bとから構成されている。鉛直部101aは、鋼板等の金属板を溶接することによって上下方向に長尺な箱型に構成されている。より詳細には、鉛直部101aの上下方向の中央部から上端部は鉛直線に沿って延在しており、鉛直部101aの上下方向の中央部から下端部までは下方に位置するに従って前側に位置するように鉛直線から傾いて形成されている。鉛直部101aの下端部は、一対の板状の部材が対向して構成されている。鉛直部101aの下端には、係合部150が揺動可能に取り付けられている。
【0032】
連結部101bは、補助クレーン(不図示)のワイヤーの先端に取り付けられた補助クレーンフック701が引っ掛けられて連結される部分である。連結部101bは、その後側の端部が鉛直部101aの上端に接続され、鉛直部101aの上端との接続部分から前方に延在している。連結部101bは、一対の金属板が奥行き方向に間隔をおいて対向配置されて、鉛直部101aの上端に接続している。
【0033】
連結部101bの前後方向の中央部には、連結部101bを構成する一対の金属板を連結するアームシャフト104が取り付けられている。補助クレーンフック701は、連結部101bを構成する一対の金属板の間に上方から侵入して、アームシャフト104を引っ掛けている。このような構成によって、アーム101が補助クレーンの補助クレーンフック701に連結されている。
【0034】
連結部101bを構成する一対の金属板の上側の外縁部のそれぞれには、一対の板状のフックガイド103が取り付けられている。この一対のフックガイド103は、連結部101bから離れるに従って、互いの間隔が広くなっている。補助クレーンフック701をアームシャフト104に連結させる際には、補助クレーンフック701が、フックガイド103によってガイドされて、連結部101bを構成する一対の金属板の間に導かれる。
【0035】
連結部101bの前側の端部には、鉄等の金属で構成されたブロック状のアームウエイト102が取り付けられている。本実施形態では、アームウエイト102は、連結部101bを構成する一対の金属板の間に挿入された状態で、連結部101bに取り付けられている。このアームウエイト102は、クレーン用吊具100を補助クレーンフック701で吊り下げた際に、鉛直部101aが直立するように、クレーン用吊具100のバランスを取るためのものである。
【0036】
(係合部の説明)
次に、
図2~
図3を用いて、クレーン用吊具100の係合部150について説明する。
図2において、紙面右側を係合部150の前側、紙面左側を係合部150の後側、紙面上側を係合部150の上側、紙面下側を係合部150の下側とする。なお、
図2において、後述するカム穴154aを見やすくするために、アーム101の鉛直部101aを一点鎖線で表している。
【0037】
係合部150は、一対の本体部材151、第1巾決ブロック152、第2巾決ブロック153、4枚のガイドプレート154、上部ウエイト155、フック156、シャフト157、一対の下部ウエイト158、フック取付シャフト159を有している。
【0038】
一対の本体部材151は、上下方向を長辺とする略長方形板状である。一対の本体部材151は、奥行方向に離間して対向して配置されている。一対の本体部材151の後端の間には、上下方向に縦長な第1巾決ブロック152が配置されている。複数のボルト161によって、手前側の本体部材151及び奥側の本体部材151が第1巾決ブロック152に連結されている。一対の本体部材151の前端の間には、複数(本実施形態では2つ)の円柱形状の巾決ピン172(
図3示)が配置されている。ボルト173によって、手前側の本体部材151及び奥側の本体部材151が巾決ピン172に連結されている。
【0039】
一対の本体部材151上部のそれぞれの両面には、これらの面に重ね合わされて、2枚のガイドプレート154が複数のボルト165及びこれらに締結される複数のナット177によって取り付けられている。つまり、一対の本体部材151には、4枚のガイドプレート154が取り付けられている。一対の本体部材151には、干渉防止穴151dが連通形成されている。4枚のガイドプレート154のそれぞれには、正面視した場合において干渉防止穴151dの内側の位置に、カム穴154aが連通形成されている。
【0040】
カム穴154aは、第1カム穴154a1と第2カム穴154a2とから構成されている。第1カム穴154a1は、長穴形状であり、その長手方向が鉛直線方向と一致している。第2カム穴154a2は、第1カム穴154a1よりも長い長穴形状である。第2カム穴154a2は、その上後端が第1カム穴154a1の下端に接続し、第1カム穴154a1との接続部分から下前方に向かって形成されている。第1カム穴154a1と第2カム穴154a2の接続部の後ろ側の内面には、下方に位置するに従って前側に位置する傾斜面154a3が形成されている。本実施形態では、傾斜面154a3の断面形状は円弧形状である。
【0041】
一対の本体部材151及び4枚のガイドプレート154には、係合部150を正面視した場合の同一位置に、位置決め穴154b、151eが連通形成されている。これらの位置決め穴154b、151eには、位置決めピン171の両端部が挿通している。このような構造によって、本体部材151に取り付けられた4枚のガイドプレート154のそれぞれに形成されたカム穴154aがずれないようになっている。
【0042】
一対の板状の部材で構成されたアーム101の鉛直部101aの下端部の間に、一体となった一対の本体部材151及び4枚のガイドプレート154の上端部が差し込まれている。一対の板状の部材で構成されたアーム101の鉛直部101aの下端部には、第1シャフト穴101cが連通形成されている。第1シャフト穴101c及びカム穴154aには、シャフト157が挿入されている。シャフト157には、円筒形状のブッシュ166が回転可能に取り付けられている。ブッシュ166の外周面は、カム穴154aの内周面に接触する。カム穴154aの幅寸法は、ブッシュ166の直径よりも僅かに大きくなっている。このような構成によって、係合部150が、アーム101の下端部に揺動可能に取り付けられている。また、シャフト157及びブッシュ166は、カム穴154aに沿って摺動する。
【0043】
図3に示すように、シャフト157の外周面には、奥行き方向の中央部から両端部の手前に至るまで、第1油溝157bが形成されている。シャフト157の一端部の軸心には、円柱形状に凹陥した第1凹陥部157cが形成されている。シャフト157の第1凹陥部157cの底部には、第1注油ニップル169が取り付けられている。このように、第1凹陥部157cの底部に第1注油ニップル169が取り付けられているので、第1注油ニップル169がシャフト157の一端部から大きく突出していない。シャフト157には、第1注油ニップル169と第1油溝157bとを接続する第1油路157dが形成されている。第1注油ニップル169から、グリス等の潤滑油を注入すると、第1油溝157bに潤滑油が供給されて、シャフト157とブッシュ166及び第1シャフト穴101cとの間に潤滑油が封入される。このため、シャフト157、ブッシュ166、及び第1シャフト穴101cの摩耗が抑制される。
【0044】
図4に示すように、シャフト157の両端部の外周面には、第1キー溝157aが形成されている。シャフト157の側方の鉛直部101aには、長方形板状の第1キープレート167が複数のボルト168によって取り付けられている。第1キープレート167は、シャフト157の第1キー溝157aに侵入し、シャフト157の本体部材151からの脱落が防止されている。
【0045】
図2に示すように、4枚のガイドプレート154及び一対の本体部材151の上前端部は、直角三角形状に切り欠かれている。4枚のガイドプレート154及び一対の本体部材151の前面上端の角部150aの断面形状は、円弧状となっている。この角部150aにおいて、対向するガイドプレート154の間には、補強部材175が挟み込まれている。
図3に示すように、補強部材175は、円柱形状の当接部175aと、この当接部175aの両端の軸心から突出した当接部175aよりも小さい外径の円柱形状の突出部175bとから構成されている。角部150aの内側位置において、対向する一対のガイドプレート154のそれぞれには、嵌合穴154cが形成されている。これら嵌合穴154cに、補強部材175の両端に形成された突出部175bがそれぞれ挿通して嵌合している。ボルト176によって、本体部材151と、この両面に配置された一対のガイドプレート154と、補強部材175とが連結されている。本体部材151の角部150aの曲率半径と補強部材175の当接部175aの曲率半径は一致している。そして、本体部材151の角部150aの外縁面と当接部175aの外周面は、隣接し、連続した面を形成している。
【0046】
一対の本体部材151の下端部の前部には、フック部切欠151aが切欠形成されている。一対の本体部材151のフック部切欠151aの上方には、補強板151fが溶接によって取り付けられている。この補強板151fの中心部には、補強板151f及び本体部材151を連通する第2シャフト穴151cが形成されている。
【0047】
フック156は、1対の本体部材151の間に挟み込まれて、一対の本体部材151の下部の前方側(容器500の下部にあるシャックル504の対向位置となる一端側)に取り付けられている。フック156は、取付部156a、シャンク部156b、ベント部156c、先端部156dとから構成されている。取付部156aは円環状であり、その中心には取付穴156a1が形成されている。シャンク部156bは、棒形状であり、その上端が取付部156aの下端に接続し、取付部156aの下端から後下方に延在している。ベント部156cは、その円弧角が約180°の円弧形状であり、その上端がシャンク部156bの下端に接続している。ベント部156cは、前方側に開口している。先端部156dは、棒状であり、後端がベント部156cの前端に接続し、ベント部156cの前端から上前方側に延出している。先端部156dは、先端側(上前方側)に位置するに従って、断面積が小さくなっている。
【0048】
フック部切欠151aは、フック156のベント部156cに対応した形状となっていて、少なくともベント部156cの前側及び先端部156dが本体部材151から露出するように切り欠かれている。
【0049】
第2シャフト穴151c及びフック156の取付部156aには、フック取付シャフト159が挿入されている。フック取付シャフト159の両端は、補強板151fの表面から僅かに突出している。フック取付シャフト159の両端部の外周面には、第2キー溝159aが形成されている。
【0050】
補強板151fには、長方形板状の第2キープレート160が複数のボルト162によって取り付けられている。第2キープレート160は、フック取付シャフト159の第2キー溝159aに侵入し、フック取付シャフト159の本体部材151からの脱落が防止される。フック156は使用に伴って摩耗するが、フック156が摩耗した場合には、ボルト162、第2キープレート160、及びフック取付シャフト159を着脱することにより、フック156を容易に交換することができる。
【0051】
図3に示すように、フック取付シャフト159の外周面には、奥行き方向の中央部から両端部の手前に至るまで、第2油溝159bが形成されている。フック取付シャフト159の一端部の軸心には、円柱形状に凹陥した第2凹陥部159cが形成されている。フック取付シャフト159の第2凹陥部159cの底部には、第2注油ニップル170が取り付けられている。このように、第2凹陥部159cの底部に第2注油ニップル170が取り付けられているので、第2注油ニップル170がフック取付シャフト159の一端部から大きく突出していない。フック取付シャフト159には、第2注油ニップル170と第2油溝159bとを接続する第2油路159dが形成されている。第2注油ニップル170から、グリス等の潤滑油を注入すると、第2油溝159bに潤滑油が供給されて、フック取付シャフト159と取付穴156a1及び第2シャフト穴151cとの間に潤滑油が封入される。このため、フック取付シャフト159、取付穴156a1、及び第2シャフト穴151cの摩耗が抑制される。
【0052】
図2に示すように、一対の本体部材151の下後端の角部が直角三角形状に切り欠かれて、第1傾動用切欠151bが形成されている。直角三角形状に切り欠かれた第1傾動用切欠151bの斜辺は、第1面151gとなっている。
【0053】
一対の下部ウエイト158は、板状であり、一対の本体部材151の下後端部上にそれぞれ重ね合わされて取り付けられている。一対の本体部材151の下後端部の間には、第2巾決ブロック153が配置されている。手前側の下部ウエイト158、手前側の本体部材151、及び第2巾決ブロック153は、複数のボルト162によって連結されている。また、奥側の下部ウエイト158、奥側の本体部材151、及び第2巾決ブロック153は、複数のボルト162によって連結されている。
【0054】
下部ウエイト158の下後端は、直角三角形状に切り欠かれて、第2傾動用切欠158aが形成されている。第2傾動用切欠158aは、第1傾動用切欠151bと同一形状に切り欠かれている。直角三角形状に切り欠かれた第2傾動用切欠158aの斜辺は、第2面158bとなっている。第1面151gと第2面158bは、隣り合っており、連続した平面を形成している。地面Gと第1面151gや第2面158bとのなす角αは、45°以上であり、50°~75°であることが好ましく、本実施形態では60°である。角αをこのような角度に設定することにより、後述するように、より好適に係合部150を回動させることができる。
【0055】
一対の本体部材151の上後端部には、上部ウエイト155が複数のボルト164によって取り付けられている。上部ウエイト155は、シャフト157が第1カム穴154a1の上端に位置している状態では、係合部150が直立するようにバランスを取るものである。また、上部ウエイト155は、シャフト157が第2カム穴154a2の前端に位置している状態では、
図5の(D)に示すように、係合部150の上部が容器500から離れる方向に係合部150が傾いた状態でバランスを取ってこの状態を維持するためのものである。本実施形態では、上部ウエイト155は、複数の金属板を重ね合わせて構成されているが、ブロック状であってもよい。上部ウエイト155の上端は、本体部材151及びガイドプレート154の上端よりも上方に位置している。また、上部ウエイト155の下端は、カム穴154aの下端よりも下方に位置している。
【0056】
(クレーン用吊具の動作)
次に、
図5~
図7を用いて、クレーン用吊具100のフック156を容器500のシャックル504に引っ掛けた後に、容器本体501を回動させて、容器本体501内に収容された内容物を排出し、容器本体501を元の直立した状態に戻すクレーン用吊具100の動作について説明する。なお、クレーン用吊具100を移動させる補助クレーンは、遠隔操作によって操作される。
【0057】
図5の(A)に示すように、クレーン用吊具100の係合部150を、シャックル504近傍の容器500側方に移動させて、係合部150の下端を地面Gに接地させる。係合部150が地面Gに接地するまでは、シャフト157は、第1カム穴154a1(
図2参照)の上端部に位置し、係合部150が直立している。
【0058】
図5の(A)の状態から、アーム101を下方に移動させると、シャフト157が、第1カム穴154a1内を下方に移動する。そして、シャフト157が、傾斜面154a3(
図2示)に達して、傾斜面154a3を摺動すると、係合部150の下端の角部Cを支点に、係合部150の上部が容器本体501から離れる方向に、係合部150が回動し始める(
図5の(B)の状態)。なお、係合部150の下端の角部Cとは、第1面151g及び第2面158b(
図2示)と地面Gが接する点である。
【0059】
図5の(B)の状態から、更に、アーム101を下方に移動させると、シャフト157が、第2カム穴154a2に侵入して、第2カム穴154a2の前端方向側に摺動し、係合部150が更に回動する。係合部150が直立している状態から、係合部150の上部が容器本体501から離れるように傾くと、係合部150が直立している状態でバランスを保っている状態からこのバランスが崩れて、上部ウエイト155によって、係合部150の上部が容器本体501から離れる方向に回動する力が係合部150に作用する。そして、シャフト157が第2カム穴154a2の前端に達すると、アーム101の下方への移動を停止させる(
図5の(C)の状態)。この状態では、フック156が上方に開口し、フック156の開口部がシャックル504の下端部側を向いている。なお、フック156の開口位置がシャックル504の直下位置に位置するように、アーム101を水平方向に移動させてもよい。
【0060】
次に、アーム101を上方に移動させて、シャックル504にフック156を引っ掛ける(
図5の(D)の状態)。なお、シャフト157が第2カム穴154a2の前端に位置している状態では、上部ウエイト155の作用によって、係合部150が傾いている状態が維持される。
【0061】
更に、アーム101を上方に移動させると(
図6の(E)→(F))、係合部150の補強部材175の当接部175a(
図3示)が容器本体501の外周面に当接する。このように、円柱形状の当接部175aと容器本体501の外周面とが面接触するので、係合部150及び容器本体501の損傷が抑制される。更に、アーム101を上方に移動させると、容器本体501がトラニオン軸502を中心に回動し(
図6の(G)→(H))、容器本体501内に収容された内容物が排出される。
【0062】
次に、アーム101を下方に移動させると、容器本体501が回動して直立した状態となり(
図7の(I)の状態)、フック156がシャックル504から外れる(
図7の(J)の状態)。
【0063】
(本実施形態のクレーン用吊具の効果)
以下に、クレーン用吊具100の効果について説明する。
図1に示すように、本実施形態のクレーン用吊具100は、アーム101と、アーム101の下端部に揺動可能に取り付けられ、下端部の前方にフック156が設けられている係合部150とを有する。
【0064】
これによれば、係合部150の下端を容器500のシャックル504の側方の地面Gに当接させ、更にアーム101を下方に移動させることにより、係合部150を回動させることにより、
図5の(C)に示すように、フック156をシャックル504に引っ掛けることができる回動位置に係合部150を回動させることができる。このため、遠隔操作のみで、フック156をシャックル504に引っ掛けることができる。よって、容器500の近くで人が介入することによりクレーン用吊具をシャックル504に引っ掛ける作業が不要となり、フック156をシャックル504に引っ掛かる作業の安全性を確保できる。また、上記作業のロスタイムの削減と省力化を図ることができる。
【0065】
また、
図2に示すように、係合部150の上部には、カム穴154aが形成されている。そして、アーム101の下端部に取り付けられたシャフト157が、カム穴154aに挿通して、係合部150がアーム101の下端に揺動可能に取り付けられている。
【0066】
これによれば、係合部150を地面Gに当接させた後において、アーム101を下方に移動させた場合に、カム穴154aによって、フック156をシャックル504に引っ掛けることができる回動位置に係合部150を適切に回動させることができる。このため、確実にフック156をシャックル504に引っ掛けることができる。
【0067】
また、
図2に示すように、カム穴154aは、第1カム穴154a1と、第2カム穴154a2とから構成されている。そして、第1カム穴154a1は、長穴形状であり、長手方向が鉛直線方向と一致している。また、第2カム穴154a2は、第1カム穴154a1よりも長い長穴形状であり、上後端が第1カム穴154a1の下端に接続し、第1カム穴154a1との接続部分から下前方に向かって形成されている。
【0068】
これによれば、シャフト157が第1カム穴154a1から第2カム穴154a2に侵入すると、係合部150の上部が容器500から離れる方向に回動する。このため、フック156をシャックル504に引っ掛けることができる回動位置に係合部150をより確実に回動させることができる。
【0069】
また、
図2に示すように、第1カム穴154a1と第2カム穴154a2の接続部の後側の内面には、下方に位置するに従って前側に位置する傾斜面154a3が形成されている。
【0070】
これによれば、シャフト157が第1カム穴154a1から傾斜面154a3に達すると、係合部150の上部が容器500から離れる方向に回動する。このため、フック156をシャックル504に引っ掛けることができる回動位置に係合部150をより確実に回動させることができる。また、係合部150をスムーズに回動させることができる。
【0071】
また、
図2に示すように、傾斜面154a3の断面形状は円弧形状である。
【0072】
これによれば、係合部150をよりスムーズに回動させることができる。
【0073】
また、
図2に示すように、シャフト157には、円筒形状のブッシュ166が、シャフト157に対して回転可能に取り付けられている。そして、ブッシュ166は、カム穴154aの内周面と当接する。
【0074】
これによれは、シャフト157がカム穴154aと直接当接する構造と比較して、シャフト157の摩耗を低減させることができる。また、カム穴154aと当接するブッシュ166がシャフト157に対して回転可能となっているので、カム穴154aと当接するブッシュ166の摩耗も低減させることができる。
【0075】
また、
図2に示すように、係合部150の上後部には、上部ウエイト155が設けられている。
【0076】
これによれば、係合部150が地面Gに当接後に回動を開始した際に(
図5の(B)の状態)、上部ウエイト155によって、係合部150の上部が容器500から離れる方向への力が係合部150に作用する。このため、より確実に係合部150を回動させることができる。また、
図5の(D)に示すように、係合部150の回動後に、アーム101を上方に移動させた際に、上部ウエイト155の作用により、係合部150が回動した状態が維持される。このため、フック156をシャックル504に確実に引っ掛けることができる。
【0077】
また、
図2に示すように、係合部150の下後端には、第1傾動用切欠151b及び第2傾動用切欠158aが形成されている。
【0078】
これによれば、係合部150が地面Gに当接してから、より確実に係合部150を回動させることができる。
【0079】
また、
図2に示すように。係合部150の下後端部には、下部ウエイト158が設けられている。
【0080】
これによれば、係合部150の重心をより下方に下げることができ、係合部150の回動時に、より確実に係合部150を地面Gに接地させることができ、より安定して係合部150を回動させることができる。つまり、係合部150の下端が地面Gから滑る等によって、急激に係合部150が回動して、第1面151gと第2面158bと地面Gとが急激に衝突することに起因する意図しない係合部150の回動を抑制することができる。よって、フック156が確実にシャックル504に引っ掛かる回動位置に係合部150を回動させることができる。
【0081】
(他の実施形態)
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うクレーン用吊具100もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0082】
以上説明した実施形態では、容器500は溶融金属を収容する取鍋であるが、容器500は、取鍋に限定されず、原材料、飼料、廃棄物等の物体を収容し運搬する容器であってもよい。また、容器500の形状は、箱型等であってもよい。
【0083】
以上説明した実施形態では、本体部材151とガイドプレート154は別体であるが、本体部材151とガイドプレート154が一体であってもよい。
【0084】
以上説明した実施形態では、本体部材151とフック156は別体であるが、本体部材151とフック156が一体であってもよい。
【0085】
以上説明した実施形態では、本体部材151と上部ウエイト155は別体であるが、本体部材151が上部ウエイト155とが一体であってもよい。例えば、本体部材151の上後端部を他の部分と比べて肉厚にしたり、本体部材151の上後端部から更に後部に突出した部位を形成したりすることにより、本体部材151の上後端部に上部ウエイト155と同様の役割を果たす部位を形成することにしてもよい。
【0086】
以上説明した実施形態では、本体部材151と下部ウエイト158は別体であるが、本体部材151と下部ウエイト158とが一体であってもよい。例えば、本体部材151の下端部の肉厚を他の部分と比べて肉厚にすることにより、本体部材151の下端部に下部ウエイト158と同様の役割を果たす部位を形成することにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
100 クレーン用吊具
101 アーム
150 係合部
151 本体部材
151b 第1傾動用切欠
154a カム穴
154a1 第1カム穴
154a2 第2カム穴
154a3 傾斜面
155 上部ウエイト
156 フック
157 シャフト
158 下部ウエイト
158a 第2傾動用切欠
166 ブッシュ