(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008907
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250109BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250109BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20250109BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250109BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20250109BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250109BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J7/00 303C
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L58/20
B60L58/12
B60L53/20
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111518
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 浩
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503CA11
5G503FA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC05
5H125BC21
5H125BC28
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE30
(57)【要約】
【課題】外部充電の終了後に走行用の蓄電装置の分極を速やかに緩和する。
【解決手段】車両100は、主電池115と、補機電池140と、充電リレー110と、DC/DCコンバータ135と、ECU170とを備える。充電リレー110は、電力設備200により主電池115を充電する外部充電を実行するために用いられる。DC/DCコンバータ135は、主電池115の放電電力を降圧し、降圧後の電力を補機電池140に供給するように構成されている。ECU170は、DC/DCコンバータ135を制御する。ECU170は、外部充電の終了までに補機電池140の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げ、外部充電の終了後にDC/DCコンバータ135を駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
走行用の第1蓄電装置と、
補機用の第2蓄電装置と、
前記車両の外部の電力設備により前記第1蓄電装置を充電する外部充電を実行するための充電用機器と、
前記第1蓄電装置の放電電力を降圧し、降圧後の電力を前記第2蓄電装置に供給するように構成されたコンバータと、
前記コンバータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記外部充電の終了までに前記第2蓄電装置の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げ、
前記外部充電の終了後に前記コンバータを駆動する、車両。
【請求項2】
前記充電状態を前記第2状態に引き下げて前記コンバータを駆動するときの前記放電電力は、前記充電状態を前記第2状態に引き下げることなく前記コンバータを駆動するときの前記放電電力よりも大きい、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成されており、
前記制御装置は、
前記充電状態を前記第2状態に引き下げて前記コンバータを駆動した場合、前記外部充電が終了してから第1時間以上空けてから前記推定処理を実行し、
前記外部充電の終了後に前記コンバータを駆動しない場合、前記外部充電が終了してから第2時間以上空けてから前記推定処理を実行し、
前記第1時間は、前記第2時間よりも短い、請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1蓄電装置は、全固体電池を含む、請求項1または請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-133689号公報(特許文献1)は、車両を開示する。この車両は、全固体電池(蓄電装置)と、演算装置とを備える。演算装置は、全固体電池の残量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両は、一般的に、走行用の第1蓄電装置と、補機用の第2蓄電装置と、コンバータとを備え、車両の外部の電力設備により第1蓄電装置を充電する外部充電を実行するための充電用機器をさらに備える場合がある。コンバータは、第1蓄電装置の放電電力を降圧し、降圧後の電力を第2蓄電装置に供給する。その結果、第2蓄電装置が充電される。
【0005】
外部充電などの連続充電を実施すると、第1蓄電装置の分極を引き起こす可能性がある。この分極は、第1蓄電装置の満充電容量の推定精度の低下を招くため、外部充電の終了後に速やかに緩和されることが好ましい。
【0006】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部充電の終了後に走行用の蓄電装置の分極を速やかに緩和することができる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両は、走行用の第1蓄電装置と、補機用の第2蓄電装置と、充電用機器と、コンバータと、制御装置とを備える。充電用機器は、車両の外部の電力設備により第1蓄電装置を充電する外部充電を実行するために用いられる。コンバータは、第1蓄電装置の放電電力を降圧し、降圧後の電力を第2蓄電装置に供給するように構成されている。制御装置は、コンバータを制御する。制御装置は、外部充電の終了までに第2蓄電装置の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げ、外部充電の終了後にコンバータを駆動する。
【0008】
上記の構成とすることにより、第1蓄電装置の分極が概ね解消する程度にコンバータを駆動させやすくなる。その結果、第1蓄電装置の分極を速やかに緩和することができる。
【0009】
好ましくは、充電状態を第2状態に引き下げてコンバータを駆動するときの放電電力は、充電状態を第2状態に引き下げることなくコンバータを駆動するときの放電電力よりも大きい。
【0010】
第1蓄電装置の分極は、第1蓄電装置の放電電力が大きいほど早く緩和されやすい。上記の構成とすることにより、外部充電の後に第1蓄電装置の分極をより速やかに緩和(解消)することができる。
【0011】
好ましくは、制御装置は、第1蓄電装置の満充電容量を推定する推定処理を実行するように構成されている。制御装置は、充電状態を第2状態に引き下げてコンバータを駆動した場合、外部充電が終了してから第1時間以上空けてから推定処理を実行する。制御装置は、外部充電の終了後にコンバータを駆動しない場合、外部充電が終了してから第2時間以上空けてから推定処理を実行する。第1時間は、第2時間よりも短い。
【0012】
上記の構成とすることにより、充電状態を第2状態に引き下げてコンバータを駆動した場合に、より確実に分極を解消させつつ、外部充電の終了後にコンバータを駆動しない場合よりも推定処理を早期に開始することができる。
【0013】
好ましくは、第1蓄電装置は、全固体電池を含む。
【0014】
全固体電池において、そのセルの深さ方向における反応ムラ、および、分極が引き起こされやすい。上記の構成とすることにより、第1蓄電装置において全固体電池を含む車両において、第1蓄電装置の分極を速やかに緩和することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、外部充電の終了後に走行用の蓄電装置の分極を速やかに緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に従う車両の全体構成を示す図である。
【
図2】汲み出し充電制御を説明するための図である。
【
図4】ECU(Electronic Control Unit)により実行される処理を説明するための図である。
【
図5】外部充電に関連する処理の一例を表すフローチャートである。
【
図6】外部充電に関連する処理の他の例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰り返さない。実施の形態およびその変形例の各々は、適宜互いに組み合わせられてもよい。
【0018】
図1は、実施の形態に従う車両の全体構成を示す図である。
図1を参照して、車両100は、BEV(Battery Electric Vehicle)であって、電力設備200に接続されている。電力設備200は、車両100の外部に設けられている。
【0019】
車両100は、インレット105と、充電リレー110と、主電池115(第1蓄電装置)と、センサユニット116とを備える。車両100は、SMR(System Main Relay)120と、PCU(Power Control Unit)125と、MG(Motor Generator)130とをさらに備える。車両100は、DC/DCコンバータ135と、補機電池140(第2蓄電装置)と、補機類145と、センサユニット150と、ECU170とをさらに備える。
【0020】
インレット105は、電力設備200のコネクタ205に接続されている。インレット105は、電力設備200の給電装置202からの給電電力を受ける。この例では、給電電力は、直流電力である。充電リレー110は、車両100の外部充電を実行するための充電用機器であり、外部充電中に閉状態に制御される。外部充電は、給電装置202からの給電電力により主電池115を充電することである。
【0021】
主電池115は、車両100の走行用の電力を蓄える。主電池115は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池であって、この例では、全固体電池である。全固体電池とは、その電解質層として固体電解質層を有する電池である。
【0022】
外部充電の終了後には、主電池115の分極が引き起こされる可能性がある。この分極は、主電池115の電圧VBaが一時的に上昇する現象である。分極は、主電池115の満充電容量の推定結果の誤差を増大させる可能性がある。外部充電の終了後、分極は、十分に長い時間が経過すると自然に解消するか、または、主電池115が放電されると緩和(解消)される。分極が解消するとは、分極が十分に緩和されて電圧VBaが安定することをいう。上記の分極は、主電池115の放電電力量が多いほど緩和されやすく、主電池115の放電電力が大きいほど早く緩和されやすい。
【0023】
センサユニット116は、電流センサ117と、電圧センサ118とを含む。電流センサ117は、主電池115の電流IBaを検出する。電圧センサ118は、主電池115の電圧VBaを検出する。
【0024】
SMR120は、主電池115と、PCU125およびDC/DCコンバータ135との間に接続されている。SMR120は、開閉により主電池115とPCU125およびDC/DCコンバータ135との間の電気的な遮断および接続を切り替える。
【0025】
PCU125は、主電池115の放電電力(直流電力)を交流電力に変換する。MG130は、PCU125からの交流電力を受けて車両100の走行駆動力を発生する。
【0026】
DC/DCコンバータ135は、その入力電力IPを降圧する。入力電力IPは、主電池115の放電電力に対応する。DC/DCコンバータ135は、降圧後の電力をその出力電力OPとして補機電池140に供給するように構成されている。出力電力OPは、補機電池140の充電電力に対応する。DC/DCコンバータ135は、SMR120が閉状態にある場合に駆動される。
【0027】
補機電池140は、補機類145の作動電力を蓄える。補機類145は、HMI(Human Machine Interface)装置146と、インパネ147と、ライト148とを含む。これらの補機の各々は、低圧系の電気機器であって、補機電池140の電力を消費して作動する。各補機は、外部充電中に作動し得る。
【0028】
センサユニット150は、電流センサ152と、電圧センサ153とを含む。電流センサ152は、補機電池140の電流IBbを検出する。電圧センサ153は、補機電池140の電圧VBbを検出する。補機電池140の充電量(蓄電量)が多いほど、言い換えれば、補機電池140の充電状態が高いほど、電圧VBbは高い。この充電状態は、例えば、補機電池140のSOC(State Of Charge)により表される。
【0029】
ECU170は、CPU(Central Processing Unit)172と、メモリ174とを含む。CPU172は、各種の演算処理を実行する。メモリ174は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む(いずれも図示せず)。ROMは、CPU172により実行されるプログラムを格納している。
【0030】
ECU170は、電流IBa,IBbおよび電圧VBa,VBbに従って、車両100の各種機器を制御する。当該機器は、充電リレー110と、SMR120と、PCU125と、DC/DCコンバータ135と、補機類145とを含む。
【0031】
ECU170は、インレット105へのコネクタ205の挿入を電力設備200からの信号レベルに基づいて判定する。ECU170は、電流IBaおよび電圧VBaに従って主電池115のSOCを算出する。ECU170は、補機電池140の目標電圧を設定したり、補機電池140の目標SOCを設定したりする。ECU170は、DC/DCコンバータ135を制御することによって入力電力IPおよび出力電力OPを制御する。ECU170は、充電開始指令を電力設備200に送信することによって外部充電の開始を指令する。ECU170は、充電終了指令を電力設備200に送信することによって外部充電の終了を指令する。
【0032】
ECU170は、外部充電の終了後に主電池115の満充電容量を推定する処理を実行可能に構成されている。以下、この処理を「推定処理」とも表す。推定処理は、SMR120が開状態にある時に実行される。推定処理は、主電池115のOCV(Open Circuit Voltage)に基づいて実行される。推定処理は、前回この処理が実行された時(満充電容量が前回推定された時)から所定時間が経過すると予定される。所定時間は、例えば1週間である。推定処理が予定されている場合、主電池115の分極による満充電容量の推定結果への影響を回避するために、分極が十分に緩和(解消)されていることが好ましい。
【0033】
ECU170は、SMR120を閉状態に制御してDC/DCコンバータ135を駆動することによって、汲み出し充電制御または分極緩和制御を実行する。汲み出し充電制御および分極緩和制御は、主電池115の電力をDC/DCコンバータ135を介して補機電池140に供給する点において同じであるが、それらの目的において異なる。
【0034】
汲み出し充電制御は、電圧VBbが低下した場合に、主電池115の電力を用いて補機電池140を充電することを目的として実行される。この制御は、車両100の走行時、または、SMR120のオフ時にも実行され得る。
【0035】
分極緩和制御は、外部充電の終了後に主電池115を放電させてその分極を緩和することを目的として実行される。この制御は、外部充電の終了後に推定処理が予定されている場合に実行される。以下、汲み出し充電制御および分極緩和制御の各々について詳しく説明する。
【0036】
図2は、汲み出し充電制御を説明するための図である。
図2を参照して、(A)~(C)の各々において、縦軸は、電圧VBbを表す。
【0037】
(A)の例では、電圧VBbは、補機電池140の目標電圧TVよりもΔXだけ低い。目標電圧TVは、例えばTV1である。TV1は、補機電池140の上限電圧VUに等しく、例えば13Vである。上限電圧VUは、補機電池140の保護の観点から実験などにより予め定められる。電圧VBbが上限電圧VUに到達した場合、ECU170は、DC/DCコンバータ135を停止する。ΔXは、上限電圧VUと電圧VBbとの間の差分に相当し、補機電池140の充電可能電力量に関係している。言い換えれば、ΔXが大きいほど、この充電可能電力量が多い。
【0038】
(B)の例では、補機電池140の電力が消費されて、電圧VBbが開始電圧VPに低下する。開始電圧VPは、目標電圧TVよりも基準値THだけ低い所定電圧であり、この例ではVP1である。VP1は、例えば12Vである。電圧VBbが開始電圧VPに低下すると、汲み出し充電制御が開始する。
【0039】
(C)の例では、汲み出し充電制御により補機電池140が充電され、電圧VBbが開始電圧VPから目標電圧TVに上昇する。汲み出し充電制御に起因して、電圧VBbは、電圧範囲VR内に制御される。電圧範囲VRは、電圧VBbの範囲であって、その上限および下限が、それぞれ、目標電圧TVおよび開始電圧VPであるように定められる。この例では、電圧範囲VRは、VR1である。
【0040】
汲み出し充電制御中の入力電力IPは、P1である。言い換えれば、電圧VBbが開始電圧VPに低下した場合に、DC/DCコンバータ135は、入力電力IPがP1になるように駆動される。
【0041】
図3は、分極緩和制御を説明するための図である。
図3を参照して、(A)および(B)の各々において、縦軸は、電圧VBbを表す。
【0042】
(A)の例では、外部充電が終了した直後であって、推定処理が予定されている。ECU170は、推定処理に先立って分極緩和制御を実行する。分極緩和制御は、その開始時からの電流IBbの積算値が所定値に到達するまで実行される。所定値は、メモリ174に格納されており、積算値が所定値に到達した時に分極が解消している値として実験により適宜予め定められる。分極緩和制御に起因して補機電池140が充電され、電圧VBbが上昇する((A)→(B))。
【0043】
分極緩和制御中のDC/DCコンバータ135の入力電力IPは、P2である。言い換えれば、外部充電の終了後に電圧VBbが目標電圧TV未満である(かつ開始電圧VPよりも高い)場合、推定処理に先立って、DC/DCコンバータ135は、入力電力IPがP2になるように駆動される。
【0044】
外部充電などの連続充電を実施すると、主電池115において分極を引き起こす可能性がある。この分極は、主電池115の満充電容量の推定精度の低下を招くため、外部充電の終了後に速やかに緩和されることが好ましい。
【0045】
実施の形態では、ECU170は、そのような問題に対処するための構成を有する。以下、この点を説明する。
【0046】
図4は、ECU170により実行される処理を説明するための図である。
図4を参照して、(A)の例では、外部充電が実行中であり、ΔXがΔX1である。ΔXがΔX1であるときの補機電池140の充電状態を「第1状態」とも表す((A)の右側のハッチング部分)。ECU170は、外部充電の終了後に、DC/DCコンバータ135を駆動することによって分極緩和制御を実行して推定処理を実行する予定である。
【0047】
主電池115のSOCが基準SOCに上昇すると、ECU170は、補機電池140の目標電圧TVをTV1からTV2に引き下げる。基準SOCは、主電池115の充電終了SOCよりも低い。例えば、充電終了SOCは、80%であり、基準SOCは、60%である。TV2は、例えば12.5Vである。目標電圧TVがTV2に引き下げられると、開始電圧VPもVP1からVP2(例えば11.5V)に引き下げられる。これにより、電圧範囲VRは、VR2(<VR1)に低下する。その結果、補機電池140の充電状態(蓄電量)が低下しやすくなる。
【0048】
SOCが充電終了SOCに到達するまでの間、補機類145が作動し、それにより補機電池140の電力が消費されて電圧VBbが低下する((A)→(B))。(B)の例では、電圧VBbがVR2内であり、ΔXがΔX2(>ΔX1)である。ΔXがΔX2であるときの補機電池140の充電状態を「第2状態」とも表す((B)の右側のハッチング部分)。目標電圧TVの引き下げに起因して、補機電池140の充電状態が第1状態から第2状態に引き下げられている。
【0049】
このように、ECU170は、外部充電の開始から終了までに、目標電圧TV(電圧範囲VR)を引き下げることによって補機電池140の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げる。
【0050】
SOCが充電終了SOCに到達すると、ECU170は、外部充電を終了する。外部充電の終了後、ECU170は、電流IBbの積算値が所定値に到達するまでDC/DCコンバータ135を駆動して分極緩和制御を実行し、その後、推定処理を実行する。推定処理が完了すると、ECU170は、TV2からTV1に目標電圧TVを引き上げる(戻す)。これにより、電圧範囲VRがVR1からVR2に戻る。
【0051】
目標電圧TVが低いほど電圧範囲VRが低いため、電圧VBbが低くなりやすい。電圧VBbが低いほど、ΔXが大きい傾向にある。ΔXが大きいほど、補機電池140の充電可能電力量が多い。この電力量が大きいほど、主電池115の放電可能電力量が大きい。したがって、主電池115の放電電力量を多くすることができ、主電池115の分極を緩和しやすい。
【0052】
上記のように目標電圧TV(電圧範囲VR)を引き下げることで、補機電池140の充電状態を引き下げる(ΔXを大きくする)ことができる。
【0053】
仮にΔXが小さいと、補機電池140の充電可能電力量が少なく、分岐緩和制御の開始後に電圧VBbが直ちに上限電圧VUに到達してDC/DCコンバータ135が停止される可能性がある。その結果、主電池115の分極が概ね解消する程度にDC/DCコンバータ135を駆動させることができない(主電池115の放電電力量を十分に確保することができない)事態が起こりうる。この場合、DC/DCコンバータ135の停止後に分極が自然に解消するまで一定時間待機することを要する。このように、ΔXが小さいと、分極を速やかに緩和(解消)することができない可能性がある。
【0054】
これに対して、実施の形態では、ΔXが大きくなりやすいため、補機電池140の充電可能電力量が大きくなりやすい。したがって、上記の事態を回避することができる。言い換えれば、主電池115の分極が概ね解消する程度にDC/DCコンバータ135を駆動させやすくなる。その結果、上記の一定時間待機する例と比較して、主電池115の分極を速やかに緩和することができる。よって、外部充電の終了後に推定処理が予定されている場合には、推定処理を早期に開始することができる。
【0055】
補機類145は、外部充電中にも作動し得る。よって、補機電池140の充電量の不足を回避するために、補機電池140の充電状態は、必要な時にのみ引き下げされることが好ましい。実施の形態では、SOCが基準SOCに上昇した時から、推定処理が完了する時までの期間中にのみ、目標電圧TV(電圧範囲VR)が引き下げられる。これにより、補機電池140の充電状態が低い期間の長さを必要最小限にすることができる。したがって、補機電池140の充電量が不足する事態を回避しやすくなる。
【0056】
ECU170は、補機電池140の充電状態を第2状態に引き下げてDC/DCコンバータ135を駆動するときの主電池115の放電電力(分岐緩和制御時の入力電力IPであるP2)が、補機電池140の充電状態を第2状態に引き下げることなくDC/DCコンバータ135を駆動するときの放電電力(汲み出し充電制御時の入力電力IPであるP1)よりも数倍大きくなるようにDC/DCコンバータ135を制御することが好ましい。
【0057】
外部充電の後の主電池115の分極は、主電池115の放電電力(入力電力IP)が大きいほど緩和されやすい。上記のようにDC/DCコンバータ135を制御することで、分岐緩和制御時に主電池115の放電電力が大きくなる。これにより、外部充電の後に主電池115の分極をより速やかに緩和(解消)することができる。
【0058】
推定処理の前、分極緩和制御が実行されるか否かに関わらず、より確実に主電池115の分極を解消させる(電圧VBaを安定化させる)ために、いくらかの時間にわたってSMR120が開かれて主電池115の無負荷状態が継続することが好ましい。
【0059】
目標電圧TVが電圧VBb未満に引き下げられても、短時間で外部充電が終了したり、外部充電中に補機電池140の電力がそれほど消費されなかったりして、外部充電の終了時に補機電池140の充電状態が十分に引き下げられていない(ΔXが小さい)ことがある。その結果、(C)の例のように、外部充電終了時に電圧VBbが目標電圧TV以上であることがある。この場合、ECU170は、補機電池140の過充電防止の観点から分岐緩和制御を実行せず、一定時間にわたってSMR120を開状態に制御する。この一定時間中、主電池115が無負荷状態となる。この一定時間(無負荷状態の継続時間)の長さは、外部充電の終了後にDC/DCコンバータ135の駆動無しで分極が自然に緩和する時間の長さとして予め定められる。
【0060】
他方、(B)の例のように、外部充電終了時に補機電池140の充電状態が十分に引き下げられている場合、分極が概ね解消されるまでDC/DCコンバータ135が駆動される(分岐緩和制御が実行される)。その後、SMR120が開状態に制御され、無負荷状態が継続する。この無負荷状態の継続時間(SMR120の開放時間)は、(C)の例の継続時間よりも短くても分極緩和の観点から問題が無い。これは、分岐緩和制御により主電池115の分極が既に概ね解消されているからである。ECU170は、(B)の場合、(C)の場合よりも無負荷状態の継続時間が短くなるようにSMR120を制御する。
【0061】
ECU170は、(B)の例のように補機電池140の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げてDC/DCコンバータ135を駆動した場合、外部充電が終了してから第1時間以上空けてから推定処理を実行する。他方、(C)の例のように外部充電の終了後にDC/DCコンバータ135を駆動しない場合、外部充電が終了してから第2時間以上空けてから推定処理を実行する。第1時間は、第2時間よりも短い。第1時間は、分岐緩和制御の実行時間と、(B)の場合の無負荷状態の継続時間との合計に相当する。第2期間は、(C)の場合の無負荷状態の継続時間に相当する。
【0062】
このような構成とすることにより、(B)の場合に、分極解消をより確実にしつつ(C)の場合よりも推定処理を早期に開始することができる。
【0063】
図5は、外部充電に関連する処理の一例を表すフローチャートである。このフローチャートは、コネクタ205がインレット105に挿入されると開始する。
【0064】
図5を参照して、ECU170は、推定処理が前回実行された時から所定時間が経過しているか否かを判定する(S105)。所定時間が経過していない場合(S105においてNO)、ECU170は、目標電圧TVをV1に設定し、外部充電の開始を指示するユーザ操作に応答して外部充電を開始する(S111)。その後、処理は、S130に進む。他方、所定時間が経過している場合(S105においてYES)、ECU170は、外部充電後に推定処理が予定されることを確認する(S112)。ECU170は、外部充電を開始する(S115)。
【0065】
ECU170は、主電池115のSOCが基準SOCに上昇したことを、電流IBaおよび電圧VBaに基づいて判定すると(S120)、補機電池140の充電状態を引き下げるためにV1からV2に目標電圧TVを引き下げる(S125)。その後、ECU170は、主電池115のSOCが充電終了SOCに到達したことを判定すると(S130)、外部充電を終了する(S135)。
【0066】
図6は、外部充電に関連する処理の他の例を表すフローチャートである。このフローチャートは、目標電圧TVが引き下げられている(S112,S125が実行されている)場合に、
図5のS135の後に開始する。
【0067】
図6を参照して、ECU170は、外部充電の終了時の電圧VBbが目標電圧TV以上であるか否かを判定する(S205)。
図4(C)の例のように電圧VBbが目標電圧TV以上である場合(S205においてYES)、ECU170は、SMR120を開状態に制御する(S210)。S210の実行期間は、前述の第2期間に相当する。S210の後、処理は、S240に進む。
【0068】
図4(B)の例のように電圧VBbが目標電圧TV未満である場合(S205においてNO)、ECU170は、SMR120を閉状態に制御し(S215)、分極緩和制御を実行する(S220)。この制御は、入力電力IPがP2(>P1)である状態で実行される。
図6の例では、電圧VBbが開始電圧VPに低下しない(汲み出し充電制御が実行されない)ものとする。
【0069】
ECU170は、電流IBbの積算値が所定値に到達したか否かを判定する(S225)。積算値が所定値に到達していない場合(S225においてNO)、処理がS220に戻り、分極緩和制御が継続する。積算値が所定値に到達した場合(S225においてYES)、ECU170は、分極緩和制御を停止し(S230)、SMR120を開状態に制御する(S235)。S215~S235の実行期間は、前述の第1期間に相当する。
【0070】
ECU170は、S210またはS235の後の電圧VBbを主電池115のOCVとして用いて、推定処理を実行する(S240)。S240の後、ECU170は、V2からV1に目標電圧TVを引き上げる(S245)。
【0071】
以上のように、実施の形態によれば、ECU170は、外部充電の終了までに目標電圧TV(電圧範囲VR)を引き下げることによって補機電池140の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げ、外部充電後にDC/DCコンバータ135を駆動して分極緩和制御を実行する。これにより、主電池115の分極が概ね解消する程度にDC/DCコンバータ135を駆動させやすくなる(主電池115の放電電力量を十分に確保しやすくなる)。その結果、主電池115の分極を速やかに緩和することができる。
【0072】
特に、全固体電池は、分極が引き起こされやすい。したがって、実施の形態は、全固体電池を搭載する車両に特に効果的である。
【0073】
外部充電などの連続充電の後には、主電池115のセル(全固体電池)の深さ方向に反応ムラ(リチウムイオンの分布の偏り)が引き起こされることもある。反応ムラが引き起こされると、セルの電極の付近が局所的に高電圧状態になりやすい。そのような高電圧状態が長時間にわたって継続すると、セルの劣化を招く可能性がある。したがって、外部充電の後、分極を緩和(解消)することのみならず、上記の反応ムラを解消することも重要である。実施の形態によれば、外部充電の後に、セルの劣化を防止できる程度にセル電極付近の電圧が下がるまでDC/DCコンバータ135を駆動させやすくなる。したがって、主電池115の分極の緩和に加えて、セルの劣化をも抑制することができる。
【0074】
[その他の変形例]
車両100は、BEVに限定されず、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの他の種類の電動車両であってもよい。
【0075】
給電装置202の給電電力は、交流電力であってもよい。この場合、車両100は、車載充電装置としてのAC/DC変換器を含む。AC/DC変換器は、上記の交流電力を主電池115の充電用の直流電力に変換する。AC/DC変換器および充電リレー110も、本開示の「充電用機器」の一例を形成する。
【0076】
主電池115の各セルは、全固体電池であるものとしたが、液系リチウムイオン電池などの液系電池であってもよい。
【0077】
補機電池140の充電状態を第1状態から第2状態に引き下げることは、目標電圧TVをTV1からTV2に引き下げることに相当するものとしたが、補機電池140の目標SOCを第1SOCから第2SOCに引き下げることであってもよい。第1SOCは、TV1に対応する。第2SOCは、TV2に対応する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
100 車両、105 インレット、115 主電池、120 SMR、135 DC/DCコンバータ、140 補機電池、145 補機類、200 電力設備。