(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008914
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ガラス板の検査方法及び検査装置並びにガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111536
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大庭 直樹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 敏裕
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA20
2F065AA53
2F065FF41
2F065FF61
2F065GG04
2F065MM13
2F065MM23
2F065PP03
2F065PP22
2F065RR08
2F065UU04
(57)【要約】
【課題】ガラス板の形状を精度良く検査する。
【解決手段】 ガラス板の検査方法は、複数の凸部5により形成される載置面5aに載置したガラス板Gの形状を検査する。ガラス板Gは、基準ガラス板G1と、サンプルガラス板G2とを含む。ガラス板Gの検査方法は、サンプルガラス板G2の形状を測定する測定工程S63と、基準ガラス板G1により定められる基準形状とサンプルガラス板G2の形状の測定値との比較により、サンプルガラス板G2の形状を評価する評価工程S64と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に載置したガラス板の形状を検査する方法であって、
前記載置面は、複数の凸部により形成され、
前記ガラス板は、基準ガラス板と、サンプルガラス板と、を含み、
前記サンプルガラス板の形状を測定する測定工程と、前記基準ガラス板により定められた基準形状と前記サンプルガラス板の形状の測定値との比較により、前記サンプルガラス板の形状を評価する評価工程と、を備えることを特徴とするガラス板の検査方法。
【請求項2】
複数枚の前記基準ガラス板の形状を測定する準備工程と、前記準備工程で得られた測定値から前記基準形状を演算する演算工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の検査方法。
【請求項3】
前記演算工程では、前記基準形状として、複数枚の前記基準ガラス板の形状の平均値を演算することを特徴とする請求項2に記載のガラス板の検査方法。
【請求項4】
前記準備工程では、前記載置面に前記基準ガラス板を載置した状態で前記基準ガラス板の上面の形状を測定し、
前記測定工程では、前記載置面に前記サンプルガラス板を載置した状態で前記サンプルガラス板の上面の形状を測定することを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板の検査方法。
【請求項5】
前記凸部は、長尺の部材により形成され、
前記載置面は、前記長尺の部材を所定間隔で並べて配置することによって構成され、
前記凸部の幅は、50mm以上200mm以下であり、
前記凸部の間隔は、50mm以上200mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の検査方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の検査方法を用いて検査工程を行うことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項7】
ガラス板を載置する載置面と、前記載置面に載置した前記ガラス板の形状を測定する測定部を備えるガラス板の検査装置であって、
前記載置面は、複数の凸部により構成され、
前記ガラス板は、基準ガラス板と、サンプルガラス板と、を含み、
前記基準ガラス板により定められる基準形状を記憶する記憶部と、前記サンプルガラス板の形状と前記基準形状との比較により、前記サンプルガラス板の形状を評価する評価部と、を備えることを特徴とするガラス板の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の検査方法及び検査装置並びにガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイにおいては、軽量で可撓性を有する薄肉のガラス基板が使用されている。ディスプレイに使用されるガラス基板の表面には、各種の膜を均一に塗布した後に、フォトプロセスの手法(露光工程、現像工程等)を用いて薄膜トランジスタ(TFT)が形成される。
【0003】
薄膜トランジスタを精度良く形成するために、ガラス基板に対して高い寸法精度が要求される。このため、ガラス板の製造工程では、製造されたガラス板の形状を検査する工程が実施される。
【0004】
このような検査工程で使用される装置として、例えば特許文献1には、ガラス板を載せる定盤と、光の照射及び反射を測定に利用した光学測定手段とを備える検査装置(ガラス板測定装置)が開示されている。この検査装置における定盤は、その表面に横方向に延びる複数の溝を有している(同文献の段落0030参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の検査装置では、定盤の表面が溝により凹凸状に構成されていることから、この表面に薄肉のガラス板が載置されると、溝の位置においてガラス板に撓みが生じ、ガラス板の反り等の形状について精度の高い検査を行うことができなかった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板の形状を精度良く検査することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、載置面に載置したガラス板の形状を検査する方法であって、前記載置面は、複数の凸部により形成され、前記ガラス板は、基準ガラス板と、サンプルガラス板と、を含み、前記サンプルガラス板の形状を測定する測定工程と、前記基準ガラス板により定められた基準形状と前記サンプルガラス板の形状の測定値との比較により、前記サンプルガラス板の形状を評価する評価工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、測定工程によって測定されたサンプルガラス板の形状を、評価工程において、基準ガラス板により定められた基準形状と比較することにより、載置面に複数の溝等の凹部が存在する場合であっても、サンプルガラス板の形状を精度良く検査することが可能となる。
【0010】
(2) 上記(1)に記載のガラス板の検査方法において、複数枚の前記基準ガラス板の形状を測定する準備工程と、前記準備工程で得られた測定値から前記基準形状を演算する演算工程と、を備えてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、準備工程において、複数枚の基準ガラス板に基づいて基準形状を演算することにより、サンプルガラス板の評価基準となる基準形状の精度を高めることができる。
【0012】
(3) 上記(2)に記載のガラス板の検査方法において、前記演算工程では、前記基準形状として、複数枚の前記基準ガラス板の形状の平均値を演算してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、複数枚の基準ガラス板の形状の平均値を基準形状とすることで、サンプルガラス板の評価基準となる基準形状の精度をさらに高めることができる。
【0014】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス板の検査方法において、前記準備工程では、前記載置面に前記基準ガラス板を載置した状態で前記基準ガラス板の上面の形状を測定し、前記測定工程では、前記載置面に前記サンプルガラス板を載置した状態で前記サンプルガラス板の上面の形状を測定してもよい。
【0015】
(5) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス板の検査方法において、前記凸部は、長尺の部材により形成され、前記載置面は、前記長尺の部材を所定間隔で並べて配置することによって構成され、前記凸部の幅は、50mm以上200mm以下であり、前記凸部の間隔は、50mm以上200mm以下であってもよい。
【0016】
(6) 本発明に係るガラス板の製造方法は上記の課題を解決するためのものであり、上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス板の検査方法を用いて検査工程を行うことを特徴とする。
【0017】
(7) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板を載置する載置面と、前記載置面に載置した前記ガラス板の形状を測定する測定部を備えるガラス板の検査装置であって、前記載置面は、複数の凸部により構成され、前記ガラス板は、基準ガラス板と、サンプルガラス板と、を含み、前記基準ガラス板により定められる基準形状を記憶する記憶部と、前記サンプルガラス板の形状と前記基準形状との比較により、前記サンプルガラス板の形状を評価する評価部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、測定部によって測定されたサンプルガラス板の形状を、評価部により、基準形状と比較することで、載置面に複数の溝等の凹部が存在する場合であっても、サンプルガラス板の形状を精度良く検査することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガラス板の形状を精度良く検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図2のIII-III矢視線に係る載置部の断面図である。
【
図4】検査装置の位置決め部の動作を示す側面図である。
【
図5】検査装置の位置決め部の動作を示す正面図である。
【
図7】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図16は、本発明に係るガラス板の検査装置及びこの検査装置を用いたガラス板の製造方法の一実施形態を示す。
【0022】
図1及び
図2に示すように、検査装置1は、ガラス板Gを載置する載置部2と、載置部2に載置されたガラス板Gの形状を測定する測定部3と、載置部2及び測定部3の制御を行う制御部4と、を備える。
【0023】
検査対象となるガラス板Gは、例えば一枚又は複数枚の製品ガラス板が採取される矩形状のガラス原板(マザーガラス板)である。ガラス原板及び製品ガラス板の厚みは、例えば0.05mm~1.2mmである。ガラス原板のサイズは、例えば1000mm×1000mm~3500mm×3500mmであり、製品ガラス板のサイズは、例えば700mm×700mm~3500mm×3500mmである。製品ガラス板は、例えばディスプレイの基板やカバーガラスとして利用される。なお、ディスプレイの基板やカバーガラスは、フラットパネルに限定されず、曲面パネル、フォルダブルパネルに使用されてもよい。
【0024】
以下、ガラス板Gの一方の表面を第一主面Gaといい、他方の表面を第二主面Gbという。また、ガラス板Gの各辺を、第一辺GS1、第二辺GS2、第三辺GS3及び第四辺GS4という。
【0025】
載置部2は、複数の定盤5と、定盤5の間に設けられる複数の支持部材6と、ガラス板Gの位置決めを行う位置決め部7a,7bと、ガラス板Gを定盤5に案内するガイド部材8と、を備える。
【0026】
定盤5は、長尺状の部材であり、その長手方向がガラス板Gの搬入方向A1及び搬出方向A2に沿うように配置されている。定盤5は、例えばアルミニウム合金等の金属により構成される。定盤5の上面5aは、ガラス板Gが載置される載置面として機能する。定盤5の上面5aは、気体を噴出させる複数の噴出孔5bを有する。
【0027】
複数の定盤5は、その長手方向Yに直交する幅方向Xにおいて、所定の間隔で並べて配置されている。この配置により、隣り合う二つの定盤5の間には、溝部9が形成されている。載置部2は、定盤5と溝部9とが交互に配置されることにより構成される。換言すると、載置部2は、定盤5による凸部と、溝部9による凹部とが交互に設けられることにより構成されている。
【0028】
凸部としての定盤5の幅W(上面5aの幅)は、50mm以上200mm以下であることが好ましい。幅Wの下限値は、より好ましくは80mm以上であり、さらに好ましくは100mm以上である。幅Wの上限値は、より好ましくは180mm以下であり、さらに好ましくは150mm以下である。幅方向Xにおける定盤5の間隔D、すなわち溝部9の幅は、50mm以上200mm以下であることが好ましい。間隔Dの下限値は、より好ましくは70mm以上であり、さらに好ましくは80mm以上である。間隔Dの上限値は、より好ましくは180mm以下であり、さらに好ましくは150mm以下である。
【0029】
一定の間隔をおいて配置される複数の定盤5の上面5aによって、ガラス板Gを載置するための矩形状の載置面が構成される。
図1及び
図2に示すように、載置面は、第一角部10aと、第二角部10bと、第三角部10cと、第四角部10dとを有する。
【0030】
図3に示すように、載置面は、その対角線の方向、すなわち第三角部10cから第一角部10aに向かうにつれて徐々に下方に傾斜する傾斜面として構成される。水平方向(水平線H)に対して載置面がなす角度θは、0.1°以上5°以下であることが好ましい。
【0031】
支持部材6は、幅方向Xにおいて隣り合う定盤5の間に配置されている。換言すると、支持部材6は、載置部2における溝部9の範囲内に設けられている。複数の支持部材6は、定盤5の長手方向Yにおいて、所定の間隔をおいて配置されている。
【0032】
支持部材6は、上下方向に沿って移動可能に構成される。具体的には、支持部材6は、定盤5の上面5aよりも下方に位置する待機位置と、定盤5の上面5aよりも上方においてガラス板Gを支持する支持位置と、に移動可能に構成される。
【0033】
位置決め部7a,7bは、第一位置決め部7aと、第二位置決め部7bとを含む。第一位置決め部7aは、載置部2に載置されたガラス板Gの第一辺GS1に接触することで、この第一辺GS1の位置決めを行う、第二位置決め部7bは、載置部2に載置されたガラス板Gの第二辺GS2に接触することで、この第二辺GS2の位置決めを行う。
【0034】
各位置決め部7a,7bは、上下方向及び水平方向に移動可能に構成される。
図4に示すように、第一位置決め部7aは、定盤5の上面5aよりも下方に位置する待機位置(実線で示す位置)と、待機位置の上方であって、ガラス板Gの第一辺GS1から水平方向に離れた退避位置(一点鎖線で示す位置)とに上下移動可能に構成される。さらに第一位置決め部7aは、この退避位置と、ガラス板Gの第一辺GS1に接触する位置決め位置(二点鎖線で示す位置)とに水平移動可能に構成される。
【0035】
図5に示すように、第二位置決め部7bは、定盤5の上面5aよりも下方に位置する待機位置(実線で示す位置)と、待機位置の上方であって、ガラス板Gの第二辺GS2から水平方向に離れた退避位置(一点鎖線で示す位置)とに上下移動可能に構成される。さらに第二位置決め部7bは、この退避位置と、ガラス板Gの第二辺GS2に接触する位置決め位置(二点鎖線で示す位置)とに水平移動可能に構成される。
【0036】
ガイド部材8は、定盤5の長手方向Yの端部から離れた位置に設けられている。本実施形態において、ガイド部材8は、例えばガラス板Gの下面である第二主面Gbに接触するガイドローラにより構成される。ガイド部材8の構成は、本実施形態に限定されない。
【0037】
図1及び
図2に示すように、測定部3は、センサ部11と、センサ部11を移動させる駆動部12a,12bと、を備える。
【0038】
センサ部11は、例えばレーザ変位計により構成されるが、センサ部11の構成は本実施形態に限定されない。センサ部11は、レーザ変位計や超音波型変位計等の非接触式の変位計により構成されることが好ましい。
【0039】
駆動部12a,12bは、センサ部11を支持する第一駆動部12aと、第一駆動部12aを支持する第二駆動部12bと、を備える。第一駆動部12aは、幅方向Xに沿って延びる長尺状の第一支持部13と、第一支持部13の端部を支持する第二支持部14とを有する。第一支持部13は、センサ部11を幅方向Xに沿って往復移動させるように構成される。第二支持部14は、上下方向に沿って延びる長尺状の部材(脚部)である。
【0040】
第二駆動部12bは、第一駆動部12aの第二支持部14を移動可能に支持する一対の支持台として構成される。第二駆動部12bは、ガラス板Gの搬入・搬出方向A1,A2に沿って延びる長尺状の部材として構成される。第二駆動部12は、定盤5と平行となるように、幅方向Xにおいて載置部2の外側に配置されている。
【0041】
第二駆動部12bは、第一駆動部12aの第二支持部14を案内するためのガイドレール15を備える。この構成により、第二駆動部12bは、定盤5の長手方向Y又は搬入・搬出方向A1,A2に沿って、第一駆動部12aを往復移動させることができる。
【0042】
制御部4は、載置部2及び測定部3の制御及び各種の演算処理を行うコンピュータにより構成される。制御部4は、載置部2における定盤5の噴出孔5bによる気体の噴出動作、載置部2における支持部材6の動作、測定部3におけるセンサ部11及び駆動部12a,12bの動作に係る制御、測定部3によって測定されたデータに関する演算処理などを行う。
【0043】
図6に示すように、制御部4は、演算処理部16と、記憶部17と、通信制御部18と、を主に備える。
【0044】
演算処理部16は、ガラス板Gの検査に必要とされる「基準形状」に関する数値を演算処理により求めることができる。演算処理部16は、この基準形状に基づいて、検査対象となるガラス板Gの良否を判定する評価部19を備える。
【0045】
記憶部17は、ガラス板Gの検査に必要な各種データ及びプログラム、ガラス板Gの測定値、演算処理部16の評価部19による判定結果等の各種の情報を記憶することができる。通信制御部18は、載置部2及び測定部3に対する信号の送受信などを行うことができる。
【0046】
以下、上記の構成を有する検査装置1を使用してガラス板Gを検査する方法及びガラス板Gを製造する方法について説明する。
【0047】
図7に示すように、ガラス板Gの製造方法は、成形工程S1と、徐冷工程S2と、冷却工程S3と、第一切断工程S4と、第二切断工程S5と、検査工程S6と、を備える。
【0048】
成形工程S1では、成形装置によって溶融ガラスからガラスリボンを連続成形する。成形装置は、オーバーフローダウンドロー法を実行可能な成形体を備える。成形体は、その上部に形成されたオーバーフロー溝から溶融ガラスを溢れ出させて、当該成形体の両側の側壁面に沿って流下させる。さらに成形体は、流下させた溶融ガラスを各側壁面の下端部で融合させる。これにより、所定の幅を有するガラスリボンが成形される。なお、成形体は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0049】
徐冷工程S2は、成形装置の下方に配置された徐冷炉内で行われる。徐冷工程S2において、ガラスリボンは、徐冷炉内に配置されたローラ対によって下方に搬送される。徐冷炉内では所定の温度勾配が設定されており、ガラスリボンは徐冷炉内を通過することで徐冷される。徐冷工程S2後の冷却工程S3では、ガラスリボンは、徐冷炉の下方に配された冷却ゾーンを通過しつつ、室温付近まで冷却される。
【0050】
第一切断工程S4では、冷却ゾーンの下方に配置された第一切断装置によってガラスリボンの中途部を幅方向に沿って切断することで、所定サイズのガラス板Gを切り出す。すなわち、第一切断工程S4では、下方に移動するガラスリボンの中途部にスクライブ装置によって幅方向に沿うスクライブ線を形成し(スクライブ工程)、このスクライブ線に沿ってガラスリボンの一部を折割ることで、枚葉状のガラス板Gを形成する(折割工程)。
【0051】
第二切断工程S5は、第一切断工程S4において切り出されたガラス板Gの幅方向における端部(不要部)を除去する工程である。第二切断工程S5は、第一切断工程S4と同様に、ガラス板Gの一部にスクライブ線を形成し(スクライブ工程)、その後、折割装置によってガラス板Gの端部を折割る(折割工程)。
【0052】
検査工程S6では、検査装置1によってガラス板Gの形状を測定し、測定値に基づいて、ガラス板Gの良否を判定する。
【0053】
図8に示すように、検査工程S6は、準備工程S61と、演算工程S62と、測定工程S63と、評価工程S64と、を備える。
【0054】
準備工程S61では、まず第二切断工程S5を経て形成されたガラス板Gから検査の基準となる複数枚のガラス板(以下「基準ガラス板」という)G1を選別する。基準ガラス板は、例えば3枚~10枚の良品のガラス板で構成できる。その後、検査装置1によって基準ガラス板G1の形状を測定することで、評価工程S64に使用される「基準形状」に係るデータを取得する。以下、準備工程S61の具体的な実施態様について説明する。
【0055】
図1及び
図2に示すように、準備工程S61では、載置部2に基準ガラス板G1が搬入される。この搬入工程では、基準ガラス板G1の第一主面Gaを上面とし、第二主面Gbを下面とする。基準ガラス板G1は、第二主面Gbをガイド部材8に接触させた状態で、搬入方向A1に沿って定盤5へと送られる。このとき、ガイド部材8は、回転しながら基準ガラス板G1の第二主面Gbを搬入方向A1に沿って案内する。また、搬入工程では、制御部4の制御により、噴出孔5bから気体を噴出させる。これにより、基準ガラス板G1と定盤5との接触が回避され、搬入工程における基準ガラス板G1の破損を防止することができる。基準ガラス板G1が載置部2に搬入される間は、位置決め部7a,7bは、待機位置にあるため、基準ガラス板G1に接触することはない。
【0056】
図4及び
図5に示すように、基準ガラス板G1が載置部2に搬入されると、位置決め部7a,7bは、待機位置から退避位置へと移動し、その後、退避位置から接触位置へと移動する。
【0057】
その後、定盤5は、気体の噴出を停止させる。これにより、基準ガラス板G1は、定盤5の上面5aに接触する。このとき、定盤5の上面5aは、その傾斜の方向に沿って、すなわち、載置面の第三角部10cから第一角部10aに向かう方向に沿って基準ガラス板G1を案内する。これにより、基準ガラス板G1の第一辺GS1は、接触位置にある第一位置決め部7aに接触する。また、基準ガラス板G1の第二辺GS2は、接触位置にある第二位置決め部7bに接触する。以上により、基準ガラス板G1は、測定部3によって測定することが可能な基準測定位置に位置決めされる。
【0058】
次に、測定部3は、制御部4の制御により、載置部2に載置された基準ガラス板G1の形状を測定する。具体的には、測定部3は、載置面(定盤5の上面5a)に載置された状態における基準ガラス板G1の反り量(以下「第一反り量」という)と、基準ガラス板G1を載置面から浮上させた状態における当該基準ガラス板G1の反り量(以下「第二反り量」という)と、を測定する。
【0059】
図9に示すように、センサ部11は、幅方向Xに沿って移動しながら基準ガラス板G1の第一反り量を測定する。すなわち、センサ部11は、溝部9の上方を幅方向Xに移動しながら、レーザ光Lを基準ガラス板G1の第一主面Gaに照射し、この第一主面Gaから反射したレーザ光Lを受光することにより、センサ部11から基準ガラス板G1の第一主面Gaまでの距離(第一反り量)を測定する。
【0060】
準備工程S61では、センサ部11は、複数枚の基準ガラス板G1について、第一反り量を測定する。
図10に示すように、各基準ガラス板G1には、複数の測定点MP(測定領域)が設定されており、各測定点MPに対して、センサ部11と基準ガラス板G1の第一主面Gaとの距離が測定される。各測定点MP間のピッチは、例えば10mm以上200mm以下で設定される。なお、各測定点MPは、等ピッチで設定されても良く、基準ガラス板G1上の位置又は方向に応じて、異なるピッチで設定されても良い。本実施形態では、幅方向X及び定盤5の長手方向Yについて、等ピッチで設定されており、測定点MPは凸部(定盤5)に対応する位置と、凹部(溝部9)に対応する位置とを含む。
【0061】
センサ部11は、
図10において矢印B1で示すように、載置部2に載置された基準ガラス板G1に対し、幅方向Xに沿って移動しながら、各測定点MPに対して、第一反り量の測定を行う。幅方向Xに沿った一列分の測定点MPに対して測定が完了した後、センサ部11は定盤5の長手方向Yに沿って移動し、幅方向Xに沿った次の一列分の測定を行う。以上の手順を繰り返すことで、基準ガラス板G1の全ての測定点MPに対して第一反り量の測定を行う。センサ部11は、取得した第一反り量に係る測定データを制御部4の通信制御部18に送信する。
【0062】
第二反り量を測定する場合において、載置部2は、制御部4の制御により、定盤5の噴出孔5bから気体を噴出させる。これにより、
図11に示すように、定盤5の上面5aに支持されていた基準ガラス板G1は、この上面5aから浮き上がる。センサ部11は、基準ガラス板G1が定盤5から浮上した状態で、幅方向Xに沿って移動しながら、基準ガラス板G1の第一主面Gaの形状を測定する。すなわち、センサ部11は、移動しながらレーザ光Lを基準ガラス板G1の第一主面Gaに照射し、この第一主面Gaから反射したレーザ光Lを受光することにより、センサ部11から基準ガラス板G1の第一主面Gaまでの距離(第二反り量)を測定する。
【0063】
第二反り量の測定は、第一反り量の測定と同様に、複数枚の基準ガラス板G1に対して行われる。また、各基準ガラス板G1に対して設定された各測定点MPに対して、第二反り量の測定が行われる。
【0064】
センサ部11は、第一反り量の測定と同様に、載置部2に載置された基準ガラス板G1に対して幅方向Xに沿って往復移動を繰り返しながら、第二反り量の測定を行う(
図10参照)。センサ部11は、第二反り量に係る測定データを制御部4の通信制御部18に送信する。準備工程S61の終了後、使用した基準ガラス板G1は廃棄される。
【0065】
演算工程S62は、準備工程S61で得られた基準ガラス板G1の測定値から基準形状を演算する工程である。
【0066】
制御部4の演算処理部16は、測定部3から送信された測定データの平均値を算出する。すなわち、演算処理部16は、複数枚の基準ガラス板G1の第一反り量(センサ部11と基準ガラス板G1の第一主面Gaとの距離)について、測定点毎に平均値を算出する。また、演算処理部16は、複数枚の基準ガラス板G1の第二反り量について、測定点MP毎に平均値を算出する。算出された平均値は、後の評価工程S64において、サンプルガラス板G2の良否を判定するための基準値となる。
【0067】
演算処理部16は、算出した各測定点の測定データの平均値に基づいて、「基準形状」を作成する。ここで、「基準形状」とは、基準ガラス板G1の各測定点において算出された基準値(平均値)の集合を意味する。例えば
図10に示すように、基準ガラス板G1に対して設定された複数の測定点MPに対して、準備工程S61で算出された基準値(平均値)が設定される。制御部4は、基準形状に係るデータを記憶部17に記録させる。
【0068】
測定工程S63では、第二切断工程S5を経て形成されたガラス板Gから、選択されたサンプルガラス板G2の形状を測定する。サンプルガラス板G2は、例えば所定時間毎、または所定枚数毎に選択されても良い。所定時間及び所定枚数は、ガラス板Gの製造条件や検査結果に応じて適宜選択される。測定工程S63では、基準ガラス板G1を測定した場合と同様に、サンプルガラス板G2が載置部2の定盤5の上面5aに載置される。
【0069】
その後、サンプルガラス板G2の第一主面Gaに対して設定された各測定点MPに対して、検査装置1の測定部3による測定が行われる。なお、サンプルガラス板G2に設定される測定点MPは、基準ガラス板G1に設定された測定点MPと同じ位置に設定されている。
【0070】
測定工程S63では、サンプルガラス板G2の形状、すなわちサンプルガラス板G2の各測定点MPにおける第一反り量及び第二反り量が測定される他、サンプルガラス板G2の撓み差及び板厚についても測定される。
【0071】
測定工程S63においてサンプルガラス板G2の撓み差を測定する場合には、支持部材6によってサンプルガラス板G2を支持した状態とする。
図12に示すように、支持部材6は、待機位置から支持位置へと移動することで、サンプルガラス板G2の一部を持ち上げる。支持部材6が支持位置にある場合、支持部材6の上端部は、定盤5の上面5aよりも上方に位置する。支持部材6に支持されたサンプルガラス板G2は、定盤5の上面5aから離れた状態となる。
【0072】
図12に示すように、センサ部11は、幅方向Xに沿って移動しながら、サンプルガラス板G2の上面である第一主面Gaにレーザ光Lを照射し、この第一主面Gaから反射したレーザ光Lを受光することにより、センサ部11からサンプルガラス板G2の第一主面Gaまでの距離を測定する。
【0073】
図13に示すように、センサ部11は、矢印B2で示す経路に沿って支持部材6の直上を通過するように移動しながら、幅方向Xに沿って往復移動を繰り返す。これにより、幅方向Xで隣り合う二つの支持部材6の間における、センサ部11とサンプルガラス板G2の第一主面Gaとの距離が測定される。
【0074】
その後、サンプルガラス板G2は、載置部2から搬出され、上下反転され、再び載置部2に搬入される。これにより、サンプルガラス板G2は、第二主面Gbが上面となり、第一主面Gaが下面となって載置部2の載置面に載置される。
【0075】
その後、サンプルガラス板G2は、支持部材6によって再度支持され、センサ部11によって、このセンサ部11とサンプルガラス板G2の第二主面Gbとの距離が測定される。センサ部11は、測定したデータを制御部4の通信制御部18に送信する。
【0076】
図14及び
図15は、本実施形態に係る撓み差の算出方法を説明するための概念図である。本方法では、
図14に示すように、第一主面Gaを上方に向けた状態で、サンプルガラス板G2を支持部材6によって支持した場合の第一撓みd1を測定する。その後、サンプルガラス板G2を上下反転させ、
図15に示すように、第二主面Gbを上方に向けた状態で、サンプルガラス板G2を支持部材6によって支持した場合の第二撓みd2を測定する。その後、第一撓みd1と第二撓みd2との差(|d1-d2|)を算出し、これを「撓み差」として評価の対象とする。
【0077】
制御部4の演算処理部16は、センサ部11から送信された測定データから、幅方向Xにおいて隣り合う二つの支持部材6の中間位置におけるサンプルガラス板G2の撓み(d1,d2)を検出し、撓み差を算出する。制御部4は、演算処理部16によって算出された撓み差に係るデータを記憶部17に記録させる。
【0078】
測定工程S63においてサンプルガラス板G2の板厚を測定する場合、測定部3のセンサ部11は、溝部9の範囲内において、支持部材6と重ならないように、レーザ光Lをサンプルガラス板G2に照射する。すなわち、
図16に示すように、センサ部11は、定盤5の長手方向Yに沿って、かつ、矢印B3に示す経路に沿って往復移動しながら、サンプルガラス板G2の板厚を測定する。
【0079】
測定部3のセンサ部11は、サンプルガラス板G2の上面である第一主面Gaと、下面である第二主面Gbとにレーザ光Lを照射し、反射したレーザ光Lを受光し、その光路長の差から板厚を測定することができる。詳細には、サンプルガラス板G2の板厚をd[mm]、光路長差をL[mm]、サンプルガラス板G2の屈折率をnとした場合、d=L/2nより板厚を測定することができる。センサ部11は、板厚に係る測定データを制御部4の通信制御部18に送信する。測定工程S63の終了後、使用したサンプルガラス板G2は廃棄される。
【0080】
評価工程S64において、演算処理部16の評価部19は、測定工程S63によって測定されたサンプルガラス板G2の形状の良否を判定する。
【0081】
具体的には、評価部19は、測定工程S63においてサンプルガラス板G2の各測定点MPにおける第一反り量の測定値と、準備工程S61において各測定点MPに設定された基準値(基準形状)とを比較する。
【0082】
すなわち、評価部19は、サンプルガラス板G2の各測定点MPにおける第一反り量の測定値と、基準形状の各測定点MPに設定された第一反り量の基準値との差を演算する。次に、評価部19は、この差が、記憶部17に保存されている第一反り量の閾値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0083】
評価部19は、上記の第一反り量の差が、閾値の範囲内にあるときに、そのサンプルガラス板G2を「良」と判定する。評価部19は、上記の第一反り量の差が、閾値の範囲を超えるときに、そのサンプルガラス板G2を「不良」と判定する。
【0084】
評価工程S64において、演算処理部16の評価部19は、測定工程S63で測定されたサンプルガラス板G2の第二反り量の測定値についても、第一反り量の判定と同様に、基準形状と比較して、その良否を判定する。
【0085】
評価工程S64において、演算処理部16の評価部19は、測定工程S63で測定されたサンプルガラス板G2の撓み差及び板厚の測定値についても、その良否を判定する。制御部4の記憶部17には、撓み差及び板厚に関する閾値が保存されている。評価部19は、測定されたサンプルガラス板G2の撓み差及び板厚の測定値が、この閾値の範囲内にあるか否かを判定する。評価部19は、撓み差及び板厚の測定値が、閾値の範囲内にあるときに、そのサンプルガラス板G2を「良」と判定する。評価部19は、撓み差及び板厚の測定値が閾値の範囲を超えるときに、そのサンプルガラス板G2を「不良」と判定する。
【0086】
評価工程S64において、サンプルガラス板G2が不良であることが判明した場合には、成形工程S1や徐冷工程S2にその情報が伝達される。成形工程S1又は徐冷工程S2では、ガラスリボンの形状不良を解消するために、成形条件又は徐冷条件の修正が行われる。
【0087】
なお、サンプルガラス板G2が不良と判定された場合、サンプルガラス板G2が最後に良と判定されてから、再び良と判定されるまでの間に生産されたガラス板Gは廃棄される。
【0088】
以上説明した本実施形態に係る検査装置1及びガラス板Gの製造方法によれば、検査工程S6(検査方法)の測定工程S63によってサンプルガラス板G2の形状を測定し、測定結果と、評価工程S64において基準形状とを比較することにより、載置部2の載置面に複数の凹部(溝部9)が存在する場合であっても、サンプルガラス板G2の形状を精度良く検査することが可能となる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
上記の実施形態では、載置面が水平方向に対して角度θで傾斜していたが、これに限定されない。載置面が傾斜した状態と、載置面が水平面に一致した状態とを切り替え可能に構成されていても良い。また、載置面が水平面に一致するよう固定されており、基準ガラス板G1又はサンプルガラス板G2の第一辺GS1、第二辺GS2を、位置決め部7a,7bに接触するよう、サンプルガラス板G2を移動させることで位置決めを行っても良い。
【0091】
上記の実施形態では、基準形状を作成する際に、測定点毎に複数の測定データの平均値を算出していたが、これに限定されない。複数の測定データの中央値を算出したり、複数の測定データから最大値及び最小値を除外した後に平均値を算出したりしても良い。
【0092】
上記の実施形態では、複数の凸部が長尺状の定盤5により構成されているが、これに限定されない。凸部が格子状の定盤により構成され、格子間の穴によって凹部が形成されていても良い。また、凹部が格子状に形成され、格子間に定盤が配置されていても良い。
【符号の説明】
【0093】
1 検査装置
3 測定部
4 制御部
5 定盤(凸部)
5a 定盤の上面(載置面)
17 記憶部
19 評価部
G1 基準ガラス板
G2 サンプルガラス板
S6 検査工程
S61 準備工程
S62 演算工程
S63 測定工程
S64 評価工程
W 定盤の幅(凸部の幅)
D 定盤の間隔(凸部の間隔)