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  • 特開-光スペクトラムアナライザ 図1
  • 特開-光スペクトラムアナライザ 図2
  • 特開-光スペクトラムアナライザ 図3
  • 特開-光スペクトラムアナライザ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008919
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光スペクトラムアナライザ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20250109BHJP
   G01J 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02F1/39
G01J9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111547
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA05
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD09
2K102DA01
2K102EB06
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】高分解能な光スペクトラムアナライザを提供する。
【解決手段】光スペクトラムアナライザは、連続光を生成する生成手段であって、前記連続光の周波数を変化させることが可能な様に構成された前記生成手段と、観測対象光と前記連続光とを周波数領域において多重することで、前記観測対象光と前記連続光とを含む多重光を出力する多重手段と、前記多重光を通過させる非線形媒体と、前記非線形媒体を通過した前記多重光の内の前記観測対象光の帯域の成分を通過させるフィルタ手段と、前記フィルタ手段が出力する光のパワーを測定する測定手段と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光を生成する生成手段であって、前記連続光の周波数を変化させることが可能な様に構成された前記生成手段と、
観測対象光と前記連続光とを周波数領域において多重することで、前記観測対象光と前記連続光とを含む多重光を出力する多重手段と、
前記多重光を通過させる非線形媒体と、
前記非線形媒体を通過した前記多重光の内の前記観測対象光の帯域の成分を通過させるフィルタ手段と、
前記フィルタ手段が出力する光のパワーを測定する測定手段と、
を備えている、光スペクトラムアナライザ。
【請求項2】
前記非線形媒体は、前記多重光に含まれる前記連続光に基づく光パラメトリック発振が生じる様に構成されている、請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項3】
前記連続光に基づく前記光パラメトリック発振が4次以上の分散に基づき生じる様に前記非線形媒体は構成されている、請求項2に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項4】
前記生成手段は、前記連続光の周波数を第1周波数から第2周波数の範囲で変化させることが可能であり、
前記連続光の周波数を前記第1周波数から前記第2周波数の範囲で変化させた場合、前記連続光に基づく前記光パラメトリック発振で生じるシグナル光又はアイドラ光の周波数が変化する範囲が前記観測対象光の帯域を含む様に前記非線形媒体は構成されている、請求項2に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項5】
前記非線形媒体は、光集積デバイス又は光ファイバである、請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光スペクトラムアナライザに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやシリコンナイトライド等の集積デバイスにおける光パラメトリック発振に関して、近年多くの報告がなされている。非特許文献1及び非特許文献2は、光パラメトリック発振により、ポンプ光に対して数百THz離れたシグナル光及びアイドラ光を生成する構成を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Xiyuan Lu,et.al.,"Milliwatt-threshold visible-telecom optical parametric oscillation using silicon nanophotonics",Optica 6,1535-1541,2019年
【非特許文献2】Renato R.Domeneguetti,et.al.,"Parametric sideband generation in CMOS-compatible oscillators from visible to telecom wavelengths",Optica 8,316-322,2021年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、光スペクトラムアナライザの周波数分解能は、数GHzのオーダであり、より高分解能な光スペクトラムアナライザが望まれている。
【0005】
本開示は、高分解能な光スペクトラムアナライザを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によると、光スペクトラムアナライザは、連続光を生成する生成手段であって、前記連続光の周波数を変化させることが可能な様に構成された前記生成手段と、観測対象光と前記連続光とを周波数領域において多重することで、前記観測対象光と前記連続光とを含む多重光を出力する多重手段と、前記多重光を通過させる非線形媒体と、前記非線形媒体を通過した前記多重光の内の前記観測対象光の帯域の成分を通過させるフィルタ手段と、前記フィルタ手段が出力する光のパワーを測定する測定手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、高分解能な光スペクトラムアナライザが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】位相不整合量の周波数による変化の一例を示す図。
図2】ポンプ光の周波数と位相不整合量が0となる周波数との関係を示す図。
図3】光スペクトラムアナライザの構成図。
図4】非線形媒体の前後における多重光を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
実施形態の説明を行う前に、光パラメトリック発振の概要について説明する。
【0011】
シリコン(Si)やシリコンナイトライド(Si3N4)を用いた光集積デバイス等の非線形媒体に周波数fpのポンプ光を入射することで、周波数fsのシグナル光と周波数fiのアイドラ光を生成するのが光パラメトリック発振である。光パラメトリック発振は、ポンプ光と、シグナル光と、アイドラ光の3つの光の位相不整合量が0に近い周波数(波長)領域で生じる。なお、シグナル光とアイドラ光の周波数の和(fs+fi)は、ポンプ光の周波数fpの2倍となる。位相不整合量は、光パラメトリック発振に使用する非線形媒体の伝送パラメータ、例えば、分散値等により決定される。つまり、光パラメトリック発振で生じるシグナル光の周波数fsとアイドラ光の周波数fiは、光パラメトリック発振で使用する非線形媒体と、ポンプ光の周波数fpとにより決定される。なお、光集積デバイス以外にも光ファイバの非線形性を利用して光パラメトリック発振を生じさせることができる。
【0012】
例えば、図1に示す様に、所定の非線形媒体に固定的な周波数fpのポンプ光を入力するものとすると、位相不整合量は、周波数fpとの周波数差が大きくなるに従い0から離れてゆくが、その後、0に近づいてゆく。周波数fpの両側にある位相不整合量が0から離れた第1周波数領域において光パラメトリック発振は生じず、よって、第1周波数領域内の周波数のシグナル光/アイドラ光は生成されない。しかしながら、第1周波数領域より周波数fpとの周波数差が大きく、位相不整合量が0に近い第2周波数領域においては、光パラメトリック発振が生じ、よって、第2周波数領域内の周波数のシグナル光/アイドラ光が生成され得る。なお、第2周波数領域において位相不整合量が0に近くなるのは、非線形媒体における4次以上の分散によるものである。この4次以上の分散による光パラメトリック発振により、ポンプ光の周波数fpとは数百THzだけ離れた周波数fsのシグナル光と周波数fiのアイドラ光を生成することを非特許文献1及び非特許文献2は開示している。
【0013】
なお、第2周波数領域の周波数範囲は極めて狭く、よって、シグナル光(アイドラ光)は極めて狭帯域、例えば、数百MHzのオーダとなる。また、ポンプ光の周波数fpと、4次以上の分散により位相不整合量が0となる周波数との関係を計算すると、図2に示す様に、傾きが1より大きくなる。これは、ポンプ光の周波数をΔfだけ変化させると、シグナル光(アイドラ光)の周波数がαΔf(αは図2の傾きに対応し、1より大きい)だけ変化することを意味する。つまり、ポンプ光の周波数をΔfだけ変化させると、シグナル光(アイドラ光)の周波数の変化はΔfより大きくなる。
【0014】
本発明者は、上記の知見に基づき本発明を完成させた。以下に、本実施形態の詳細について説明する。
【0015】
図3は、本実施形態による光スペクトラムアナライザの構成図である。可変光源10は、周波数fpの連続光を生成し、これをポンプ光として合波部20に出力する。可変光源10は、生成する連続光の周波数fpを変化させることができる。つまり、周波数fpは、固定値ではなく、変更可能な値である。光スペクトラムアナライザで観測する光(以下、観測対象光)は、偏波制御部60を介して合波部20に入力される。偏波制御部60は、観測対象光の偏波面を、ポンプ光の偏波面に一致させるために設けられている。なお、偏波制御部60を、可変光源10と合波部20との間に配置し、ポンプ光の偏波面を調整することで、ポンプ光の偏波面と観測対象光の偏波面を一致させる構成であっても良い。また、可変光源10の配置を調整してポンプ光の偏波面と観測対象光の偏波面を一致させる構成であっても良く、この場合、偏波制御部60は省略され得る。
【0016】
合波部20は、ポンプ光と観測対象光を合波して、第1多重光を非線形媒体30に出力する。図4(A)は、合波部20が非線形媒体30に出力する第1多重光を示している。第1多重光は、ポンプ光80と、観測対象光90と、を含む。なお、図4(A)において、参照符号81は周波数fpのポンプ光により非線形媒体30での光パラメトリック発振で生成されるシグナル光を示している。
【0017】
非線形媒体30における光パラメトリック発振により、観測対象光90の内の、シグナル光81が生じる帯域以外の成分は減衰するため、非線形媒体30からは、シグナル光81の帯域に対応する成分のみが出力される。したがって、非線形媒体30から出力される第2多重光は、図4(B)に示す様になる。図4(B)において、参照符号82は、観測対象光90の内の、シグナル光81が生じる帯域部分が切り出されたフィルタ済光である。上述した様に、シグナル光81の帯域幅は数百MHzのオーダであり、よって、フィルタ済光82の帯域幅も数百MHzのオーダである。フィルタ済光82のパワーは、観測対象光90の内のシグナル光81が生じる帯域の成分のパワーと、光パラメトリック発振のゲインとに依存する。なお、図4では、第1多重光(図4(A))のポンプ光80のパワーと、第2多重光(図4(B))のポンプ光80のパワーを同じ様に示しているが、ポンプ光80のパワーも非線形媒体30において変動し得る。
【0018】
分離部40は、第2多重光の内の少なくとも観測対象光90の帯域を含む所定帯域の成分を切り出して電力測定部50に出力する様に構成される。なお、所定帯域は、ポンプ光80と、アイドラ光(図4には示さず)を含まない様に設定される。言い換えると、分離部40は、第2多重光に含まれるポンプ光80と、アイドラ光(図4には示さず)を減衰させる(除去する)フィルタリングを行って、フィルタ後の第2多重光を電力測定部50に出力する。フィルタ後の第2多重光は、フィルタ済光82のみを含む。したがって、電力測定部50は、観測対象光90の内のシグナル光81が生じる帯域の成分のパワーを測定する。
【0019】
上記の通り、ポンプ光80の周波数を変化させることで、シグナル光81の周波数fsも変化する。したがって、ポンプ光80の周波数を変化させることで、フィルタ済光82の周波数も変化する。これにより、観測対象光90を掃引して、観測対象光90の周波数成分の解析を高い分解能で行うことができる。なお、上記の通り、ポンプ光80の周波数をΔfだけ変化させると、シグナル光81の周波数、つまり、フィルタ済光82の周波数は、αΔf(αは1より大きい)だけ変化する。したがって、観測対象光90の帯域幅が、可変光源10において周波数を変化させることできる範囲より大きくても、観測対象光90の周波数解析を行うことができる。
【0020】
なお、上述した様に、フィルタ済光82のパワーは、観測対象光90の内のシグナル光81が生じる帯域の成分のパワーと、光パラメトリック発振のゲインとに依存する。したがって、光パラメトリック発振のゲインを事前に求めておくことで、観測対象光90の周波数成分(シグナル光81の帯域幅に依存)毎のパワーを測定することができる。
【0021】
なお、本実施形態では、シグナル光81の周波数fsを観測対象光90の帯域において掃引したが、アイドラ光の周波数fiを観測対象光90の帯域において掃引する構成であっても良い。
【0022】
以上、非線形媒体30における光パラメトリック発振を利用することで、高分解能な光スペクトラムアナライザが実現される。非線形媒体30は、第1多重光に含まれるポンプ光80に基づく光パラメトリック発振が生じる様に構成される、なお、好ましくは、非線形媒体30は、4次以上の分散に基づく光パラメトリック発振が生じる様に構成される。また、可変光源10は、連続光の周波数を第1周波数から第2周波数の範囲で変化させることが可能な様に構成される。ここで、可変光源10が連続光の周波数を第1周波数から第2周波数の範囲で変化させた場合、ポンプ光80に基づく光パラメトリック発振で生じるシグナル光又はアイドラ光の周波数が変化する範囲は、観測対象光90の帯域を含む様に非線形媒体30は構成される。或いは、ポンプ光80に基づく光パラメトリック発振で生じるシグナル光又はアイドラ光の周波数を観測対象光90の帯域を含む範囲で変化させることができる様に、可変光源10における周波数の可変範囲は設定される。
【0023】
以上の構成により、高分解能な光スペクトラムアナライザを提供することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0024】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10:可変光源、20:合波部、30:非線形媒体、40:分離部、50:電力測定部
図1
図2
図3
図4