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特開2025-8931製作品の管理装置と、製作品の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008931
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】製作品の管理装置と、製作品の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20250109BHJP
   G16Y 10/25 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20250109BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20250109BHJP
   B23K 26/21 20140101ALN20250109BHJP
【FI】
G06Q50/04
G16Y10/25
G16Y20/20
G16Y40/30
G16Y40/20
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111574
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入内嶌 修
【テーマコード(参考)】
4E168
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA16
4E168BA86
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB24
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA17
4E168FB03
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】溶接部を有した製作品を管理することができる管理装置を提供する。
【解決手段】製作品10の一例はディスク装置用サスペンションである。製作品10は溶接部を有している。管理装置60は、カメラ63と、制御部66と、データベース68とを含んでいる。製作品10の情報と製品IDとがひも付けられてデータベース68に記憶されている。製作品10の溶接部を撮影し、ナゲット模様を画像処理することにより、模様データを得る。この模様データが製品IDとひも付けされ、データベース68に記憶される。製品IDが不明の製作品10Aの溶接部を撮影し、ナゲット模様を画像処理することにより、照合用データを得る。この照合用データを既存の模様データと照合し、照合用データと既存の模様データとが合致すれば、その既存の模様データにひも付いている製品IDを取得する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部を有した製作品を管理する管理装置であって、
前記製作品の情報と製品IDとをひも付けて記憶したデータベースと、
前記製作品の前記溶接部を撮影するカメラと、
撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理し模様データを得る画像処理部と、
前記模様データと前記製品IDとをひも付けて前記データベースに記憶する制御部と、
を具備したことを特徴とする製作品の管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された管理装置において、
トレースすべき製作品の溶接部を撮影するカメラと、
撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理し、該ナゲット模様に応じた照合用データを取得する画像処理部と、
前記照合用データを前記データベースに記憶された既存の前記模様データと照合し、前記照合用データが前記既存の模様データと合致すると、その既存の模様データと対応する製品IDを取得する制御部と、
を具備した管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の管理装置において、
前記製作品が複数種類の溶接部を有したディスク装置用サスペンションであり、
前記画像処理部が、
前記複数種類の前記溶接部のそれぞれのナゲット模様を画像処理し、これらナゲット模様に応じた前記模様データを取得する管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の管理装置において、
複数の前記製作品が設けられたフレームがフレームIDを有し、
前記製品IDと前記フレームIDとがひも付けられて前記データベースに記憶された管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の管理装置において、
前記カメラが前記溶接部の表側ナゲット部を撮影する管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の管理装置において、さらに、
前記溶接部の外観形状の良否を判断する外観検査部を具備した管理装置。
【請求項7】
溶接部を有した製作品を管理する管理方法であって、
前記製作品の情報と製品IDとをひも付けてデータベースに記憶し、
前記製作品の前記溶接部を撮影し、
前記撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理し、
前記画像処理されたナゲット模様に応じた模様データを取得し、
前記模様データと前記製品IDとをひも付けてデータベースに記憶することを特徴とする製作品の管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載された管理方法において、
製品IDが不明の製作品の溶接部を撮影し、
撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理することにより、前記ナゲット模様に応じた照合用データを取得し、
前記照合用データを、データベースに記憶された既存の前記模様データと照合し、
前記照合用データと前記既存の模様データとが合致すると、その既存の模様データにひも付いている製品IDを取得する管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶接部を有する製作品を管理するための管理装置と管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばディスク装置用サスペンションのように小さな複数の金属板からなる製作品(work piece)を製造する際に、特許文献1に記載されたようなレーザ溶接が使用されることがある。例えばディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに沿って配置されたフレキシャ(flexure)とを含んでいる。これらベースプレートとロードビームとフレキシャとは、ステンレス鋼の板からなる。前記フレキシャを前記ロードビームに固定したり、前記ロードビームを前記ベースプレートに固定したりするために、レーザ光を用いるスポット溶接が適用されている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションのように高品質であることが要求され、しかも複数の工程を経て製造される製作品では、品質等を維持するために格別な管理が必要である。例えば各工程で適切な生産条件で生産されたか否かを把握するために、製造された製作品を識別するためのIDを個々の製作品に付与することが望まれた。あるいは特許文献2に記載されたように、ハッシュ値(hash value)を用いて電子機器部品を管理する生産管理システムも提案されている。この明細書でIDは identification(識別子)の略語である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-95934号公報
【特許文献2】特開2023-00687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスク装置用サスペンションのように、きわめて小さい製作品の場合、製作品の一部に二次元コードや数字等の識別可能なIDを表示することが困難である。たとえ製作品にIDを表示することができても、そのような表示を製作品に設けたことが製作品に何らかの影響を与えるおそれがある。特許文献2のようにハッシュ値を用いる生産管理システムによれば、製作品を厳密に管理することができる。しかしシステムが大がかりとなり簡易さに欠けるという点で、用途によっては利用しにくいことがあった。
【0006】
本発明の目的は、レーザスポット溶接等によって形成された溶接部を有する製作品を管理することができる管理装置と管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態は、溶接部を有した製作品を管理する管理装置であって、カメラと、画像処理部と、制御部と、データベースなどを有している。データベースには複数の製品IDが例えば連番で記憶され、それぞれの製品IDと製品情報とがひも付いて記憶されている。前記カメラは、前記製作品の前記溶接部を撮影する。前記画像処理部は、撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理することにより模様データを得る。前記制御部は、前記模様データと前記製品IDとをひも付けて前記データベースに保存する。
【0008】
この実施形態の管理装置において、トレースすべき製作品(製品IDが不明の製作品)の溶接部を撮影するカメラと、撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理することにより前記ナゲット模様に応じた照合用データを取得する画像処理部と、照合のための制御部とを有してもよい。前記制御部は、前記照合用データを、前記データベースに記憶されている既存の前記模様データと照合する。前記照合用データが前記既存の模様データと合致すると、その既存の模様データにひも付いている製品IDを取得する。製品IDを知れば、その製品IDに対応した製品情報(製作品の詳細な情報等)を得ることができる。
【0009】
前記製作品の一例が複数種類の溶接部を有したディスク装置用サスペンションであってもよい。前記画像処理部は、前記複数種類の前記溶接部のそれぞれのナゲット模様を画像処理し、これらナゲット模様に応じた模様データを取得してもよい。
【0010】
複数の前記製作品がフレームに設けられ、このフレームがフレームIDを有していてもよい。前記フレームIDと前記製品IDとがひも付けられて前記データベースに記憶されてもよい。前記カメラは、例えば前記溶接部の表側ナゲット部を撮影する。さらに1つの実施形態の管理装置が前記溶接部の外観形状の良否を判断する外観検査部を具備してもよい。
【0011】
1つの実施形態に係る製作品の管理方法では、前記製作品の製品情報と製品IDとをひも付けてデータベースに記憶する。模様データを取得するプロセスにおいて、前記製作品の前記溶接部を撮影する。前記撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理することにより、ナゲット模様に応じた模様データを得る。そして前記模様データと前記製品IDとをひも付けてデータベースに記憶する。
【0012】
前記本実施形態の管理方法は、さらに照合プロセスを有してもよい。この照合プロセスは、製品IDが不明の製作品(トレースすべき製作品)の溶接部を撮影する。撮影された前記溶接部のナゲット模様を画像処理することにより、前記ナゲット模様に応じた照合用データを得る。この照合用データが、データベースに記憶されている前記既存の模様データと照合される。前記照合用データと前記既存の模様データとが合致すると、この既存の模様データにひも付いている製品IDが取得される。この製品IDに基づいて製作品の情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶接部を有した製作品を管理するにあたり、前記溶接部のナゲット模様の画像に基づいて、特徴付けられた模様データを取得することができる。製品IDが不明の製作品に対しては、当該製作品の溶接部を撮影し、ナゲット模様に応じた照合用データを得る。その照合用データと前記既存の模様データとを照合することにより、製品IDを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】複数の溶接部を有する製作品の一例を示した平面図。
図2図1に示された製作品の第1の溶接部を拡大した平面図。
図3図2中のF3-F3線に沿う第1の溶接部の断面図。
図4図1に示された第2の溶接部を拡大した平面図。
図5図1に示された第3の溶接部を拡大した平面図。
図6】レーザ溶接装置を模式的に表わした正面図。
図7図6に示されたレーザ溶接装置の一部と第1の溶接部の断面図。
図8】1つの実施形態に係る管理装置と複数の製作品とを模式的に示した斜視図。
図9】1つの実施形態に係る管理方法の模様データ取得プロセスを示したフローチャート。
図10】画像処理された第1の溶接部の第1の例を示した平面図。
図11】画像処理された第1の溶接部の第2の例を示した平面図。
図12】画像処理された第1の溶接部の第3の例を示した平面図。
図13】1つの実施形態に係る管理方法の照合プロセスを示したフローチャート。
図14】1つの実施形態に係る管理装置の一部と、トレースすべき製作品とを模式的に示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、1つの実施形態に係る製作品の管理装置と管理方法とについて、図1から図14を参照して説明する。
図1は、複数の溶接部を有する製作品10の一例としてのディスク装置用サスペンションを示している。図1に示された製作品10は、第1の板11と、第2の板12と、第3の板13とを含んでいる。ディスク装置用サスペンションの場合、第1の板11がロードビーム、第2の板12がフレキシャ、第3の板13がベースプレートである。
【0016】
第1の板11と第2の板12と第3の板13とは、それぞれ、ステンレス鋼からなる。ステンレス鋼の一例は、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼である。SUS304の化学成分は、C:0.08以下、Si:1.00以下、Mn:2.00以下、Ni:8.00~10.50、Cr:18.00~20.00、残部がFeである。
【0017】
第1の板(ロードビーム)11と第2の板(フレキシャ)12と第3の板(ベースプレート)13とは、互いに異なる厚さを有している。第1の板11の厚さは第2の板12の厚さよりもよりも大きい。第1の板11の厚さは例えば100μm以下である。第2の板12の厚さの一例は18μmである。第3の板13の厚さは第1の板11の厚さよりも大きい。第3の板13の厚さは、例えば200μm以下である。第2の板12に沿って配線部15が形成されている。配線部15は、ポリイミド等の絶縁樹脂からなる絶縁層と、銅からなる導体とを含んでいる。
【0018】
第1の板11と第2の板12とは、互いに第1の溶接部W1によって固定されている。第2の板12と第3の板13とは、互いに第2の溶接部W2によって固定されている。第1の板11と第2の板12と第3の板13とは、第3の溶接部W3によって固定されている。これら溶接部W1,W2,W3以外にも、必要に応じて溶接部Wが設けられている。
【0019】
溶接部W,W1,W2,W3は、いずれもレーザスポット溶接によって形成されている。この明細書ではレーザ光が照射される側を表側と称し、レーザ光の照射とは反対側を裏側と称す。本実施形態のワーク(製作品10)は、板が3枚重なった溶接部W3を有している。しかしワークによっては、このような3枚重ねの溶接部を有していないこともある。
【0020】
図2は、第1の溶接部W1を表側から見た平面図である。図2に示されたように第1の溶接部W1は平面視においておおむね円形である。つまり厳密な意味での真円であるとは限らず、実際には歪んだ丸に近い形や楕円あるいはそれ以外の円に近い形である。第1の溶接部W1の表面に、溶接の際に生じた固有のナゲット模様20が形成されている。ナゲット模様20は、拡大すれば目視によっても観察することができる。
【0021】
図3は、図2中のF3-F3線に沿う第1の溶接部W1の断面図である。図3に示されたように、厚さT1の第1の板(ロードビーム)11と、厚さT2の第2の板(フレキシャ)12とが第1の溶接部W1によって溶接されている。第1の溶接部W1は、第2の板12に形成された表側ナゲット部21と、第1の板11に形成された裏側ナゲット部22とを含んでいる。
【0022】
表側ナゲット部21の径D1は、裏側ナゲット部22の径D2よりも大きい。ナゲット模様20は表側ナゲット部21に形成されている。なおワークによっては、裏側ナゲット部22が第1の板11を厚さ方向に貫通していないこともある。その場合、裏側ナゲット部22の径D2は観察されない。
【0023】
図4は、第2の溶接部W2の平面図である。第2の溶接部W2は、第1の板11と第3の板13とが互いに重なる箇所にレーザ光を照射することによって形成されている。レーザ光は、例えば第1の板11の表側から照射される。図4に示されたように表側ナゲット部31に、溶接の際に生じた固有のナゲット模様30が形成されている。
【0024】
第1の溶接部W1と第2の溶接部W2とは互いに溶接条件が異なるため、第2の溶接部W2の径D3(図4に示す)は、第1の溶接部W1の径D1(図3に示す)とは異なっている。しかも第2の溶接部W2のナゲット模様30は、第1の溶接部W1のナゲット模様20とはかなり異なっている。
【0025】
第1の溶接部W1のナゲット模様20と第2の溶接部W2のナゲット模様30とが互いに異なる理由は、溶接に使用したレーザ光の照射条件や、溶接する2枚の板の厚さなどが互いに異なるためである。溶接された板の表面粗さや、溶接部に向けて流す不活性ガスの当たり方、雰囲気温度などに応じて固有のナゲット模様30が生じることもある。
【0026】
図5は、第3の溶接部W3の平面図である。第3の溶接部W3は、第1の板11と、第2の板12と、第3の板13とが互いに重なる箇所にレーザ光を照射することによって形成されている。レーザ光は、例えば第2の板12の表側から照射される。図5に示されたように、第3の溶接部W3の表側ナゲット部41に、溶接の際に生じた固有のナゲット模様40が形成されている。
【0027】
第3の溶接部W3の溶接条件は、第1の溶接部W1や第2の溶接部W2と異なる。このため第3の溶接部W3の径D4は、第1の溶接部W1の径D1(図3に示す)や第2の溶接部W2の径D3(図4に示す)とは異なっている。しかも第3の溶接部W3のナゲット模様40(図5に示す)は、第1の溶接部W1のナゲット模様20や第2の溶接部W2のナゲット模様30とはかなり異なっている。その原因は、レーザ光の照射条件や、第3の溶接部W3では3枚の板11,12,13が重なることや、押さえ治具の態様など、溶接条件の違いである。溶接された板の表面粗さや、溶接部に向けて流す不活性ガスの当たり方、雰囲気温度などに応じて固有のナゲット模様40が生じることもある。
【0028】
図6はレーザ溶接装置50の一例を模式的に表わしている。レーザ溶接装置50は、パルス状に放出するレーザ光51によって、複数の溶接部(例えば溶接部W,W1,W2,W3)を溶接する機能を有している。レーザ溶接装置50は、溶接すべき製作品10を支持するワーク支持部52と、レーザ照射部53と、レーザ光制御部54と、レーザ光の発生源であるレーザ発振器55とを含んでいる。レーザ照射部53とレーザ発振器55とが互いに光ファイバ58によって光学的に接続されている。
【0029】
レーザ照射部53は、光学的なレンズ系56と、走査機構としてのガルバノスキャナなどを含んでいる。ガルバノスキャナは、レーザ照射部53から放出されたレーザ光51を溶接部W,W1,W2,W3に向けて順次移動させる。レーザ光制御部54は、レーザ発振器55を制御するための電気的な構成と、制御のためのソフトウェアと、制御用のデータを格納するメモリなどを含んでいる。
【0030】
図7は、レーザ溶接装置50の一部と第1の溶接部W1とを模式的に示した断面図である。例えばワーク支持部52の上に第1の板11と第2の板12とを重ね、押さえ治具57で支持し、レーザ光51を照射する。レーザ光51によって第1の板11の一部と第2の板12の一部が溶融し、凝固することにより、第1の溶接部W1が形成される。この溶接の過程で第1の溶接部W1に第1のナゲット模様20が形成される。図2は第1のナゲット模様20の一例である。
【0031】
レーザ光51をガルバノスキャナ等によって移動させることにより、第1の溶接部W1と同様に第2の溶接部W2が形成され、さらに第3の溶接部W3が形成される。ただし溶接の順序は必要に応じて選択される。
【0032】
図4に示されたように、第2の溶接部W2の表面に第2のナゲット模様30が形成される。図5に示されたように、第3の溶接部W3の表面に第3のナゲット模様が形成される。これらのナゲット模様20,30,40は、溶接条件等に応じて、あたかも人間の指紋のように固有の特徴を有している。
【0033】
本実施形態に係る製作品の管理装置と管理方法とは、溶接部W1,W2、W3の少なくとも一部のナゲット模様を撮像し、画像処理により模様データを得る。例えば第1のナゲット模様20の画像データと、第2のナゲット模様30の画像データと、第3のナゲット模様40の画像データとに応じた模様データを得る。あるいは第1のナゲット模様20と第2のナゲット模様30と第3のナゲット模様40との少なくとも一部を、二値化等の画像処理と所定のアルゴリズムによって特徴付けし、模様データを得る。
【0034】
図8は、1つの実施形態に係る管理装置60を模式的に表わした斜視図である。管理装置60の一例は、製作品10を乗せるワーク支持部材61と、移動機構62と、カメラ63と、外観検査部64と、画像処理部65を含む制御部66と、表示部67と、データベース68とを有している。複数の製作品10は、所定ピッチP1でフレーム70に接続されている。複数の製作品10とフレーム70とによって、シート状のワーク(サスペンション集合体71)が構成されている。
【0035】
サスペンション集合体71のフレーム70に、例えば二次元コードあるいはバーコード等のフレーム側のID(この明細書ではフレームID72と称す)が設けられている。フレーム70に複数の製作品10が設けられているため、これら製作品10を識別するための製品IDが例えば連番でデータベース68に記憶されている。またデータベース68には、製品IDごとに、製作品10に関する各種の製品情報、例えば製作品10が生産された日時や場所、加工条件、材質等の情報が記憶されている。このため製品IDを知ることができれば、製作品10の製造履歴や、使用した材料等の製品情報をデータベース68から得ることができる。
【0036】
移動機構62は、ガイド部材80と、サーボモータ等のアクチュエータ81とを含んでいる。アクチュエータ81は、ワーク支持部材61とサスペンション集合体71とを、ガイド部材80に沿って所定ピッチP1ずつ移動させることができる。カメラ63は、製作品10の溶接部W,W1,W2,W3を撮影する。
【0037】
管理装置60の一部をなす外観検査部64は、溶接部W,W1,W2,W3の外観形状(例えば溶接部の大きさや形状、色など)が基準の範囲に収まっているか否かを判断する。不合格と判断された場合、製造工程に何らかの問題が生じた可能性があるため、不合格の製作品10を含むサスペンション集合体71の使用を禁止する措置がとられる。
【0038】
画像処理部65は、カメラ63によって撮影された溶接部W1,W2,W3のナゲット模様を、二値化等の画像処理と所定のアルゴリズムなどによって数値化し、模様データとする。この模様データは、制御部66によって製品IDにひも付けされ、データベース68に記憶される。
【0039】
図9は、模様データの取得プロセスの一例を示したフローチャートである。本実施形態の模様データの取得プロセスでは、溶接部の画像(ナゲット模様)に基づいて模様データを取得する。すなわち図9中のステップS1では、カメラ63によって溶接部(例えば第1の溶接部W1)が撮影され、ナゲット模様の画像が生成される。
【0040】
図9中のステップS2では、撮影された溶接部のナゲット模様が画像処理部65によって処理される。例えば二値化と所定のアルゴリズムなどによって画像処理が行なわれ、溶接部のナゲット模様がデータ化される。ナゲット模様がデータ化されることにより、溶接部の特徴が抽出される。撮影されたナゲット模様が表示部67に表示されてもよい。また画像を処理するためのステップS2が、ステップS3の後であってもよい。
【0041】
複数種類の溶接部W1,W2,W3は、それぞれ、図2図4図5に示されたように、互いにかなり異なるナゲット模様20,30,40を有している。このためこれらのナゲット模様の特徴を組み合わせれば、識別のための情報量を多くすることができる。すなわち種類が異なる複数の溶接部のナゲット模様の特徴を組み合わせることにより、特徴づけのしきい値を下げることができ、製作品の識別が容易となる。
【0042】
種類が同じ複数の第1の溶接部W1のナゲット模様20どうしでも、あたかも人間の指紋のように互いに識別可能な特徴を有している。種類が同じ複数の第2の溶接部W2のナゲット模様30どうしでも、互いに識別可能な特徴を有している。種類が同じ複数の第3の溶接部W3のナゲット模様40どうしでも、互いに識別可能な特徴を有している。このため同一種類の溶接部のナゲット模様のみを抽出してもよい。
【0043】
図10は、画像処理された第1の溶接部W1のナゲット模様の第1の例を示している。図11は、画像処理された第1の溶接部W1のナゲット模様の第2の例を示している。図12は、画像処理された第1の溶接部W1のナゲット模様の第3の例を示している。このように同一種類の複数の溶接部どうしでも、互いに異なるナゲット模様を有している。
【0044】
図9中のステップS3では、撮影すべき溶接部が全て撮影されたか否かが判断される。全ての溶接部が撮影されれば(ステップS3において“YES”)、ステップS4に移る。全ての溶接部が撮影されていなければ(ステップS3において“NO”)、ステップS1に戻り、次の溶接部を撮影する。なお、ステップS3の後にステップS2が実施されてもよい。
【0045】
図9中のステップS4において、個々の製作品のナゲット模様が数値化され、それぞれのナゲット模様に応じた模様データが取得される。ステップS5では、取得された模様データが製品IDとひも付けされ、データベース68に記憶される。この明細書では、製品IDとひも付けされた模様データを、既存の模様データと称す。
【0046】
ステップS4において取得された模様データは、ステップS6において、フレームID72とひも付けてもよい。模様データをフレームID72とをひも付けることにより、フレームID72に対応した情報をデータベース68から得ることが可能となる。
【0047】
模様データとフレームIDとをひも付ける必要がない場合は、ステップS6を省略してもよい。さらに別の実施形態では、カメラ63によって撮影されたナゲット模様の画像そのものを模様データとしてデータベース68に記録するとともに、その画像を製品IDまたはフレームIDとひも付けてもよい。
【0048】
本実施形態の管理装置60は、溶接部の外観を検査するための外観検査部64(図8に示す)を含んでいる。このため、溶接部の外観検査と模様データの取得との両方を実施することができる。しかし外観検査部64が管理装置60とは別に設けられてもよい。
【0049】
模様データが取得された製作品10は、その後の工程でフレーム70(図8に示す)から切り離される。そののち製作品10が所定の電子機器(例えばディスク装置)に組み込まれる。ディスク装置用サスペンションのように、製作品がきわめて小さいと、二次元コードや数字等の製品IDを製作品自体に表示することが困難である。
【0050】
たとえ製品IDを製作品自体に表示することができたとしても、そのような表示が製作品に何らかの影響を与えるおそれがある。このため製作品自体に製品IDを表示することは避けたい。しかし製品IDが不明の製作品の製造履歴や使用された材料等の情報を知りたいことがある。この明細書と図13では、製品IDが不明の製作品を、特定すべき製作品あるいはトレースすべき製作品10Aと称す。トレースすべき製作品10Aは、例えば後の工程で不具合が発見された製作品など、何らかの理由により製造履歴や使用された材料等の情報を知る必要がある製作品である。
【0051】
本実施形態の管理方法は、以下に述べる照合プロセスを実施する。
図13は、照合プロセスの一例を示したフローチャートである。図14は照合プロセスで使用する管理装置60Aを模式的に示している。トレースすべき製作品10Aがワーク載置台91に置かれる。
【0052】
図14に示されたように、照合プロセスで使用する管理装置60Aは、模様データの取得プロセスで用いた管理装置60(図8に示す)と同じであってよい。すなわちこの管理装置60Aは、カメラ63と、画像処理部65と、制御部66と、表示部67と、データベース68とを有している。他の実施形態では、照合プロセスで使用する管理装置60Aが、模様データの取得プロセスで用いた管理装置60と異なっていてもよい。
【0053】
図13中のステップS10において、トレースすべき製作品10Aの溶接部がカメラ63によって撮影され、ナゲット模様の画像が生成される。このナゲット模様の画像が、ステップS11において画像処理部65によって処理される。例えば前述の模様データの取得プロセスと共通の二値化等の画像処理によってナゲット模様の画像が処理される。撮影されたナゲット模様が表示部67に表示されてもよい。なお、画像を処理するステップS11が、ステップS12の後であってもよい。
【0054】
ステップS12では、撮影すべき溶接部が全て撮影されたか否かが判断される。全ての溶接部が撮影されれば(ステップS12において“YES”)、ステップS13に移る。全ての溶接部が撮影されていなければ(ステップS12において“NO”)、ステップS10に戻り、次の溶接部を撮影する。
【0055】
図13中のステップS13において、製作品10Aのナゲット模様が所定のアルゴリズムによって数値化され、照合用データが取得される。ステップS14では、ステップS13によって得られた照合用データが、データベース68に記憶されている既存の模様データと照合される。例えば照合用データと既存の模様データとが、制御部66によって照合される。
【0056】
図13中のステップ15において、照合用データが既存の模様データと合致すれば(ステップS15において“YES”)、ステップS16に移る。照合用データが既存の模様データと合致しなければ(ステップS15において“NO”)ステップS14に戻り、照合用データと既存の模様データとの照合を続ける。
【0057】
ステップS16では、照合用データと合致した既存の模様データIDに基づき、データベース68に記録された製品IDが特定される。製品IDがフレームIDとひも付けられている場合には、フレームIDも特定される。データベース68に記録された製品IDやフレームIDが特定されることにより、製作品10Aの製造履歴や、使用された材料等の情報を知ることができる。得られた情報を表示部67に表示してもよいし、プリンタによってプリントアウトしてもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の管理装置と管理方法によれば、溶接部を有する製作品のナゲット模様の画像から得た模様データに基づいて、製作品の製品IDやフレームIDを知ることができ、製作品の情報をトレースすることができる。このため管理のための専用の製品IDを製作品自体に設ける必要がなく、製品IDが製作品に影響を及ぼすことも回避できる。
【0059】
本発明を実施するに当たり、管理装置を構成するカメラや画像処理部、表示部、データベース、制御部等の具体的な態様を、必要に応じて種々に変更して実施できることは言うまでもない。また本発明は、ディスク装置用サスペンション以外の製作品の管理に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10,10A…製作品(ディスク装置用サスペンション)、11…第1の板、12…第2の板、13…第3の板、W,W1,W2,W3…溶接部、20,30,40…ナゲット模様、50…レーザ溶接装置、51…レーザ光、53…レーザ照射部、54…レーザ光制御部、55…レーザ発振器、60,60A…管理装置、63…カメラ、64…外観検査部、65…画像処理部、66…制御部、67…表示部、68…データベース、70…フレーム、72…フレームID。
図1
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