(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008941
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111587
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】音田 逸人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智義
(72)【発明者】
【氏名】岡野 祐樹
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA27
5H601DD01
5H601DD11
5H601FF02
5H601GB05
5H601GB23
(57)【要約】
【課題】回転電機の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機の騒音を低減する。
【解決手段】回転電機10は、磁性体30と、磁性体30と一体回転する軸部材と、を有するロータ19と、ステータコア61と、コイル62と、を有するステータ60と、を備える。ステータコア61は、軸線方向Xに延びる筒状のヨーク71と、ヨーク71の内部に位置するとともにヨーク71から延びるティース72と、を有する。中心点Pから直交軸線L2とヨーク71の外周面71aとの第1交点P1までの寸法をLa/2とし、中心点Pから直交軸線L2とティース72の端面76との第2交点P2までの寸法をLb/2とし、直交軸線L2上におけるヨーク71の厚みをLcとし、直交軸線L2上におけるティース72の長さをLdとすると、La/2-Lb/2=Lc+Ldであり、0.15≦Lb/La≦0.35であり、Lc/Ld≧0.35である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体と、前記磁性体と一体回転する軸部材と、を有するロータと、
ステータコアと、コイルと、を有するステータと、を備える回転電機であって、
前記回転電機を収容するハウジングに対して前記軸部材を回転可能に支持する軸受を備え、
前記軸部材の軸線に直交する直交方向に延びる線を直交軸線とすると、
前記ステータコアは、前記軸部材の軸線方向に延び、前記軸線を中心とする筒状のヨークと、前記ヨークの内部に位置するとともに前記ヨークから前記直交軸線に沿って延びるティースと、を有し、
前記コイルは、前記ティースに集中巻きにより巻回され、
前記ヨークの中心の前記直交軸線上における点を中心点とし、前記中心点から前記直交軸線と前記ヨークの外周面との交点までの寸法をLa/2とし、前記中心点から前記直交軸線と前記ティースの端面との交点までの寸法をLb/2とし、前記直交軸線上における前記ヨークの厚みをLcとし、前記直交軸線上における前記ティースの長さをLdとすると、
La/2-Lb/2=Lc+Ldであり、
0.15≦Lb/La≦0.35であり、
Lc/Ld≧0.35であることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ステータコアの内部には、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティース同士の間に位置する空間であるスロットが形成され、
前記スロットは、前記ヨークの周方向に6つ並んでおり、
前記磁性体は、前記直交方向に着磁されるとともに2極を有する、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ティースは、前記ヨークから前記直交方向に延びる軸状のティース本体部と、ティース先端部と、を有し、
前記直交方向における前記ティース本体部の両端部のうち、前記ヨークに繋がる端部を第1端とし、前記第1端とは反対側の端部を第2端とすると、
前記ティース先端部は、前記第2端から前記ヨークの周方向に延びており、
前記コイルは、前記ティース本体部のうち、前記直交方向における前記ヨーク側の部分に巻回され、前記直交方向における前記ティース先端部側の部分に巻回されない、請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回転電機は、ロータと、ステータと、を備える。ロータは、磁性体と、磁性体と一体回転する軸部材と、を有する。ステータは、ステータコアと、コイルと、を有する。ステータコアとしては、ヨークとティースとを有するものが知られている。ヨークは、軸部材の軸線方向に延びるとともに、軸部材の軸線を中心とする筒状をなす。軸部材の軸線に直交する直交方向に延びる線を直交軸線とすると、ティースは、ヨークの内部に位置するとともに、ヨークから直交軸線に沿って延びる。コイルは、ティースに巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸部材が高回転する回転電機の場合、ロータの損失を抑えるため、直交方向における軸部材の寸法を小さくすることがある。この場合、直交方向における軸部材とティースの端面との隙間の寸法を適切な値で確保するために、ヨークの中心の直交軸線上における点である中心点から直交軸線とティースの端面との交点までの寸法を、上記の軸部材の寸法に合わせて小さくする必要がある。また、ヨークの内部にコイルが占める領域を確保する必要があるため、中心点から直交軸線とヨークの外周面との交点までの寸法を小さくするには限度がある。これにより、中心点から直交軸線とティースの端面との交点までの寸法と、中心点から直交軸線とヨークの外周面との交点までの寸法と、の比は特定の範囲内の値となる。こうして上記の比が特定の範囲内の値となる回転電機においては、ティースの長さが長くなるほどヨークの厚みが小さくなる。しかしながら、ティースの長さ及びヨークの厚みによっては、回転電機における固有振動数が小さくなることにより、固有振動数が運転周波数の範囲内の値となるおそれがある。固有振動数が運転周波数の範囲内の値となる場合、回転電機の駆動に伴って共振が発生することにより、振動に起因する騒音が発生するおそれがある。そのため、回転電機においては、こうした振動に起因する騒音を低減することが望まれていた。
【0005】
また、コイルがティースに分布巻きにより巻回される場合は、ティースに作用する加振力のもととなる電磁力が各ティースに分配される。これに対して、コイルがティースに集中巻きにより巻回される場合は、コイルがティースに分布巻きにより巻回される場合のように電磁力を各ティースに分配されないため、ティースに大きな電磁力が作用する。そのため、コイルがティースに集中巻きにより巻回される場合は、コイルがティースに分布巻きにより巻回される場合と比較して、ティースに作用する加振力が大きくなる。これにより、ティースの振動に起因する騒音が発生するおそれがある。こうしてコイルがティースに集中巻きにより巻回される回転電機においても、振動に起因する騒音を低減することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する回転電機は、磁性体と、前記磁性体と一体回転する軸部材と、を有するロータと、ステータコアと、コイルと、を有するステータと、を備える回転電機であって、前記回転電機を収容するハウジングに対して前記軸部材を回転可能に支持する軸受を備え、前記軸部材の軸線に直交する直交方向に延びる線を直交軸線とすると、前記ステータコアは、前記軸部材の軸線方向に延び、前記軸線を中心とする筒状のヨークと、前記ヨークの内部に位置するとともに前記ヨークから前記直交軸線に沿って延びるティースと、を有し、前記コイルは、前記ティースに集中巻きにより巻回され、前記ヨークの中心の前記直交軸線上における点を中心点とし、前記中心点から前記直交軸線と前記ヨークの外周面との交点までの寸法をLa/2とし、前記中心点から前記直交軸線と前記ティースの端面との交点までの寸法をLb/2とし、前記直交軸線上における前記ヨークの厚みをLcとし、前記直交軸線上における前記ティースの長さをLdとすると、La/2-Lb/2=Lc+Ldであり、0.15≦Lb/La≦0.35であり、Lc/Ld≧0.35であることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、Lc/Ld<0.35である場合と比較して、直交方向におけるステータコアの寸法に占めるティースの長さの割合が小さくなることにより、回転電機の駆動に伴ってティースが振動しにくくなる。また、Lc/Ld<0.35である場合と比較して、回転電機における固有振動数を運転周波数の範囲外の値まで大きくできるため、回転電機の駆動に伴う共振の発生を抑制できる。したがって、コイルがティースに集中巻きにより巻回される場合であって、ティースの振動に起因する騒音が発生しやすい回転電機において、回転電機の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機の騒音を低減できる。
【0008】
回転電機において、前記ステータコアの内部には、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティース同士の間に位置する空間であるスロットが形成され、前記スロットは、前記ヨークの周方向に6つ並んでおり、前記磁性体は、前記直交方向に着磁されるとともに2極を有してもよい。
【0009】
上記構成によれば、ステータは、円環2次に変形する振動モードを有する。そのため、円環2次以外に変形する振動モードを有する場合と比較して、回転電機の駆動に伴って生じる騒音が大きくなる傾向にある。したがって、回転電機の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機の騒音を低減することにより、上記のように騒音が大きくなる傾向にある回転電機でも騒音を低減できる。
【0010】
回転電機において、前記ティースは、前記ヨークから前記直交方向に延びる軸状のティース本体部と、ティース先端部と、を有し、前記直交方向における前記ティース本体部の両端部のうち、前記ヨークに繋がる端部を第1端とし、前記第1端とは反対側の端部を第2端とすると、前記ティース先端部は、前記第2端から前記ヨークの周方向に延びており、前記コイルは、前記ティース本体部のうち、前記直交方向における前記ヨーク側の部分に巻回され、前記直交方向における前記ティース先端部側の部分に巻回されなくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、コイルは、ティース本体部のうち、直交方向におけるヨーク側の部分に巻回され、直交方向におけるティース先端部側の部分に巻回されていない。そのため、コイルが直交方向におけるティース本体部の全体に巻回されている場合と比較して、コイルが巻回されたティースの重心が直交方向におけるヨーク側に変位するため、回転電機の駆動に伴うティースの振動がより低減される。したがって、回転電機の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機の騒音をより低減できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、回転電機の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機の騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】回転電機を示す断面を模式的に示す模式図である。
【
図3】比較例と実施例とにおける固有振動数およびOA値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、回転電機を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。
<回転電機の基本構成>
図1に示すように、回転電機10はロータ19とステータ60とを備えている。回転電機10は、ハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製である。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、例えばアルミニウム製である。
【0015】
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周端から筒状に延びる周壁12bと、を有している。周壁12bの両端の開口のうち、一方の開口は底壁12aによって閉塞されており、他方の開口は第2ハウジング構成体13によって閉塞されている。第2ハウジング構成体13は、周壁12bの開口を閉塞した状態で、第1ハウジング構成体12に連結されている。
【0016】
第1ハウジング構成体12は、円筒状の第1ボス部12cを備えている。第1ボス部12cは、底壁12aの内面から突出している。第2ハウジング構成体13は、円筒状の第2ボス部13cを備えている。第2ボス部13cは、第2ハウジング構成体13の内面から突出している。第1ボス部12cの軸線、第2ボス部13cの軸線、及び第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線は、互いに一致している。
【0017】
回転電機10は軸受14を備えている。軸受14は、第1ボス部12cの内周面及び第2ボス部13cの内周面の各々に配置されている。
<ロータの構成>
ロータ19は、ハウジング11の内部に位置している。ロータ19は、磁性体30と、磁性体30と一体回転する軸部材40と、を有する。例えば、ロータ19は筒部材20を有する。
【0018】
筒部材20は円筒状である。筒部材20は、例えば金属製である。筒部材20の軸線は、第1ボス部12cの軸線及び第2ボス部13cの軸線と一致している。以下では、筒部材20の軸線が延びる方向を軸線方向Xという。筒部材20の内周面を筒部材内面20aという。筒部材20の外周面を筒部材外面20bという。
【0019】
軸線方向Xにおける筒部材20の両端の開口のうち、一端の開口を第1開口部21といい、他端の開口を第2開口部22という。第1開口部21及び第2開口部22はいずれも円状の孔である。筒部材20の内径は、第1開口部21及び第2開口部22を含む軸線方向Xの全体で同じ寸法である。以下では、筒部材20の内径が延びる方向を径方向Yという。
【0020】
<磁性体の構成>
磁性体30は、例えば円柱状である。本実施形態の磁性体30は永久磁石である。磁性体30は、径方向Yに着磁されている。磁性体30は、第1磁性部30cと第2磁性部30dとで構成されている。第1磁性部30cは、N極に着磁されている。第2磁性部30dは、S極に着磁されている。すなわち、磁性体30は2極を有する。第1磁性部30cは、例えば磁性体30の径方向Yにおける一方側を占める半円柱状の部分である。第2磁性部30dは、例えば磁性体30の径方向Yにおける他方側を占める半円柱状の部分である。
【0021】
磁性体30は、筒部材20の内部に配置されている。磁性体30の軸線は、筒部材20の軸線と一致している。磁性体30の径は筒部材20の内径と同じ寸法である。磁性体30の径が延びる方向は径方向Yと同じ方向である。磁性体30は、例えば筒部材20の内部に圧入されている。磁性体30の外面30aが筒部材内面20aに密着することにより、磁性体30は筒部材内面20aに固定されている。磁性体30の軸線方向Xにおける両端のうち、一端を第1磁性体端31といい、他端を第2磁性体端32という。
【0022】
<軸部材の構成>
ロータ19は、例えば軸部材40を2つ有する。一方の軸部材40を第1軸部材41ともいい、他方の軸部材40を第2軸部材51ともいう。第1軸部材41及び第2軸部材51は、例えば円柱状である。第1軸部材41及び第2軸部材51は、例えば金属製である。
【0023】
第1軸部材41及び第2軸部材51の径は、筒部材20の内径と同じ寸法である。第1軸部材41及び第2軸部材51の径が延びる方向は、径方向Yと同じ方向である。第1軸部材41の軸線と第2軸部材51の軸線とは、互いに一致している。これら第1軸部材41及び第2軸部材51の軸線は、軸部材40の軸線に相当する。軸部材40の軸線を軸線L1という。軸線L1は、筒部材20の軸線、第1ボス部12cの軸線、及び第2ボス部13cの軸線と一致している。軸線L1が延びる方向は軸線方向Xと同じ方向である。軸線方向Xは軸部材40の軸線方向に相当する。径方向Yは、軸線L1に直交する直交方向に相当する。
【0024】
第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20の内部に圧入されている。第1軸部材41は、筒部材20に圧入される第1圧入部43と、筒部材20に圧入されない第1露出部42と、を有する。第2軸部材51は、筒部材20に圧入される第2圧入部53と、筒部材20に圧入されない第2露出部52と、を有する。
【0025】
第1圧入部43は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21よりも筒部材20の内部に位置する。第1露出部42は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21から筒部材20の外部に露出する。第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22よりも筒部材20の内部に位置する。第2露出部52は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22から筒部材20の外部に露出する。
【0026】
第1露出部42の外周面は、第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第1軸部材41はハウジング11に対して回転可能に支持されている。第2露出部52の外周面は、第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第2軸部材51はハウジング11に対して回転可能に支持されている。したがって、軸受14は、回転電機10を収容するハウジング11に対して軸部材40を回転可能に支持する。
【0027】
第1圧入部43の外周面である第1外周面43aと、第2圧入部53の外周面である第2外周面53aとは、筒部材内面20aに密着している。これにより、第1軸部材41及び第2軸部材51は筒部材内面20aに固定されている。第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20及び磁性体30と一体回転可能となっている。
【0028】
第1圧入部43及び第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて磁性体30と隣り合っている。言い換えると、軸部材40と磁性体30とは軸線方向Xにおいて隣り合っている。第1圧入部43の軸線方向Xにおける端部を第1軸部材端44という。第2圧入部53の軸線方向Xにおける端部を第2軸部材端54という。第1軸部材端44は、第1磁性体端31と軸線方向Xにおいて隣り合っている。第2軸部材端54は、第2磁性体端32と軸線方向Xにおいて隣り合っている。
【0029】
第1軸部材端44は、第1磁性体端31と接触してもよいし、第1磁性体端31から軸線方向Xに離れていてもよい。第2軸部材端54は、第2磁性体端32と接触していてもよいし、第2磁性体端32から軸線方向Xに離れていてもよい。
【0030】
第2露出部52は、第2ハウジング構成体13を貫通するとともに、ハウジング11内とハウジング11外との間で軸線方向Xに延びている。ハウジング11外に位置する第2露出部52の端部には、第2軸部材51と一体回転する不図示の回転部材が連結されていてもよい。この場合、第2軸部材51の回転が駆動力として回転部材に伝達されることによって、回転部材は回転駆動する。本実施形態における回転電機10は、例えば、回転部材としてインペラを備えるいわゆる速度型圧縮機である。そのため、本実施形態における回転電機10においては、軸部材40が高回転する。
【0031】
<ステータの構成>
ステータ60は、ハウジング11の内部に位置している。ステータ60は、径方向Yにおけるロータ19の外側に位置している。ステータ60は、ステータコア61と、コイル62と、を有する。
【0032】
<ステータコアの構成>
ステータコア61は、例えば、複数の電磁鋼板63が軸線方向Xに積層されることによって構成されている。ステータコア61は、軸線方向Xの一端に第1側面61aを有し、軸線方向Xの他端に第2側面61bを有する。
【0033】
図2に示すように、軸部材40の軸線L1に直交する直交方向としての径方向Yに延びる線を直交軸線L2とする。ステータコア61は、例えば、軸線方向Xに延びるヨーク71と、ヨーク71内に位置するティース72と、を有する。ヨーク71は、軸線L1を中心とする筒状である。ヨーク71は、例えば円筒状である。ステータコア61は、例えば6つのティース72を有する。ティース72は、ヨーク71から直交軸線L2に沿って延びている。
【0034】
ステータコア61の内部には、スロットS1が形成されている。スロットS1は、ヨーク71の周方向に隣り合うティース72同士の間に位置する空間である。スロットS1は、ヨーク71の周方向に6つ並んでいる。
【0035】
ティース72は、ティース本体部73と、ティース先端部74と、を有する。ティース本体部73は、ヨーク71から直交方向としての径方向Yに延びる軸状である。直交方向としての径方向Yにおけるティース本体部73の両端部のうち、ヨーク71に繋がる端部を第1端73aとし、第1端73aとは反対側の端部を第2端73bとする。ティース先端部74は、第2端73bからヨーク71の周方向に延びている。
【0036】
ティース先端部74は、径方向Yにおけるティース先端部74の両端部のうち、ティース本体部73と接続される端部とは反対側の端部に端面76を有する。ティース先端部74の端面76は、内部空間S2を区画形成する。ティース先端部74の端面76は、直交方向としての径方向Yにおけるティース72の先端に位置する。そのため、以下では、端面76をティース72の端面76ともいう。ティース先端部74の端面76は、ヨーク71の内周面と平行をなすように湾曲して延びる面である。内部空間S2は、軸線方向Xに貫通するものである。6つのティース72の各々の端面76によって、ステータコア61の内部に円柱状の内部空間S2が区画形成される。
【0037】
磁性体30は、内部空間S2に位置している。詳細には、内部空間S2には、磁性体30及び筒部材20が位置している。軸線方向Xに直交するステータコア61及び筒部材20の断面形状において、ティース先端部74の端面76は、筒部材外面20bと向き合っている。ティース先端部74の端面76は、筒部材20を介して磁性体30の外面30aと向き合っている。ティース先端部74の端面76は、筒部材外面20bに沿って延びる湾曲面である。ティース先端部74の端面76は、筒部材外面20bから径方向Yに離れている。そのため、ティース先端部74の端面76は、磁性体30の外面30aからも径方向Yに離れている。ティース先端部74の端面76と磁性体30の外面30aとは平行である。
【0038】
ヨーク71の内周面の一部と、ティース本体部73の外面の一部とは、樹脂部材75によって被覆されている。樹脂部材75は、ティース72毎に設けられている。
図1に示すように、ヨーク71の外周面71aは、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定されている。こうした第1ハウジング構成体12へのヨーク71の固定によって、ステータコア61はハウジング11に固定されている。
【0039】
<コイルの構成>
図2に示すように、コイル62は、ティース72に集中巻きにより巻回されている。コイル62は、樹脂部材75の外側からティース本体部73に巻回されている。ステータコア61とコイル62とは樹脂部材75によって絶縁されている。
【0040】
コイル62は、ティース本体部73のうち、直交方向としての径方向Yにおけるヨーク71側の部分に巻回され、直交方向としての径方向Yにおけるティース先端部74側の部分に巻回されない。これにより、コイル62は、ティース本体部73のうちで、径方向Yにおけるティース先端部74側よりもヨーク71側に片寄った位置に巻回された状態となっている。
【0041】
コイル62は、U相コイル62U、V相コイル62V、及びW相コイル62Wを含む。ティース72に巻回されたU相コイル62U、V相コイル62V、及びW相コイル62Wの各々の一部は、スロットS1を通過している。U相コイル62U、V相コイル62V、及びW相コイル62Wの各々は、不図示のインバータと電気的に接続されている。インバータからの電力がU相コイル62U、V相コイル62V、及びW相コイル62Wに供給されることによって、ロータ19は回転可能となっている。
【0042】
図1に示すように、コイル62は、第1コイルエンド62aと第2コイルエンド62bとを有する。第1コイルエンド62aは、ステータコア61の第1側面61aから第1ハウジング構成体12の底壁12aに向けて突出している。第2コイルエンド62bは、ステータコア61の第2側面61bから第2ハウジング構成体13に向けて突出している。したがって、第1コイルエンド62a及び第2コイルエンド62bは、軸線方向Xにおけるステータコア61の側面から突出するコイルエンドである。
【0043】
第1コイルエンド62aは、軸受14を径方向Yの外側から囲んでいる。詳細には、第1コイルエンド62aは、第1ボス部12cと第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14とを径方向Yの外側から囲んでいる。第1コイルエンド62aは、第1ボス部12cから径方向Yに離れている。第2コイルエンド62bは、軸受14を径方向Yの外側から囲んでいる。詳細には、第2コイルエンド62bは、第2ボス部13cと第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14とを径方向Yの外側から囲んでいる。第2コイルエンド62bは、第2ボス部13cから径方向Yに離れている。
【0044】
径方向Yにおける第1コイルエンド62aと第1露出部42との間に、第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14が位置している。径方向Yにおける第2コイルエンド62bと第2露出部52との間に、第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14が位置している。したがって、軸受14は、直交方向としての径方向Yにおける軸部材40とコイルエンドとしての第1コイルエンド62a及び第2コイルエンド62bとの間に位置している。本実施形態においては、第1ボス部12cと第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14とが、径方向Yにおける第1コイルエンド62aと第1露出部42との間に位置している。第2ボス部13cと第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14とが、径方向Yにおける第2コイルエンド62bと第2露出部52との間に位置している。
【0045】
<ステータコアの寸法>
図2に示すように、ヨーク71の中心の直交軸線L2上における点を中心点Pとする。中心点Pは軸部材40の軸線L1上に位置する。直交軸線L2とヨーク71の外周面71aとの交点を第1交点P1とする。中心点Pから第1交点P1までの寸法をLa/2とする。La/2は、ステータコア61の外径に相当する。直交軸線L2とティース72の端面76との交点を第2交点P2とする。中心点Pから第2交点P2までの寸法をLb/2とする。Lb/2は、ステータコア61の内径に相当する。直交軸線L2上におけるヨーク71の厚みをLcとし、直交軸線L2上におけるティース72の長さをLdとする。Ldは、ヨーク71の周方向においてティース72を挟むヨーク71の内周面同士を延長した延長面Vと、ティース72の端面76と、の間の径方向Yの寸法に相当する。Lcは、ヨーク71の外周面71aとティース72の端面76との間の径方向Yの寸法からLdを引いた寸法に相当する。La/2-Lb/2=Lc+Ldであり、0.15≦Lb/La≦0.35である。Lc/Ld≧0.35である。
【0046】
<ステータコアの寸法、固有振動数、及びOA値の関係>
図3に示すように、本願発明者らは、比較例及び実施例の各々の回転電機10について、所定の回転数で軸部材40を回転させたときの固有振動数とOA値の計測を行った。比較例として、第1比較例A、および第2比較例Bでの計測を行った。実施例として、第1実施例C、第2実施例D、および第3実施例Eでの計測を行った。OA値は、オーバーオール値のことであり、各例での回転電機10にて発生した音の大きさを示す。
【0047】
第1比較例A、第2比較例B、第1実施例C、第2実施例D、および第3実施例Eにおいて、La/2及びLb/2は、0.15≦Lb/La≦0.35の関係が満たされるように各々設定した。Lc/Ldは、第1比較例A、第2比較例B、第1実施例C、第2実施例D、および第3実施例Eの順で大きくなるように、各例のLc及びLdを設定した。
【0048】
図3において、固有振動数は白抜きのプロットで示し、OA値は塗りつぶしのプロットで示している。固有振動数は、第1比較例A、第2比較例B、第1実施例C、及び第2実施例Dへと上昇し、第3実施例Eでは第2実施例Dより若干減少した。したがって、
図3に破線で示すように、Lc/Ldが大きくなるほど固有振動数は大きくなる傾向がみられた。これに対して、OA値は、第1比較例Aから第2比較例B、及び第1実施例Cへと減少し、第1実施例Cから第2実施例Dへと若干上昇し、第2実施例Dから第3実施例Eへと若干減少した。
【0049】
固有振動数とOA値とは、通常、固有振動数が大きくなるほどOA値は小さくなる関係にある。
図3に示した各例の計側結果から推定したOA値の挙動を
図3に一点鎖線で示す。この挙動は、Lc/Ldが0.35を境に異なる態様を示している。詳細には、Lc/Ld<0.35である範囲では、Lc/Ldが大きくなるほどOA値が小さくなる挙動を示している。Lc/Ld≧0.35である範囲では、Lc/Ldが変動してもOA値はほぼ横ばいとなる挙動を示している。
【0050】
したがって、上記の計測結果からは、Lc/Ld≧0.35である回転電機10では、Lc/Ld<0.35である回転電機10よりも駆動に伴って生じる騒音が小さいことが示された。また、Lc/Ld≧0.35であれば、Lc/Ldの大きさによらず、上記の回転電機10での騒音低減の効果が得られることが示された。
【0051】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
軸部材40が高回転する回転電機10の場合、ロータ19の損失を抑えるため、径方向Yにおける軸部材40の寸法を小さくすることがある。特に、回転電機10が速度型圧縮機である場合、容積型圧縮機よりも軸部材40の回転数が高いため、上記のように径方向Yにおける軸部材40の寸法を小さくすることが好ましい。こうした場合、径方向Yにおける軸部材40とティース72の端面76との隙間の寸法を適切な値で確保するために、ヨーク71の中心点Pから第2交点P2までの寸法であるLb/2を、上記の軸部材40の寸法に合わせて小さくする必要がある。また、ヨーク71の内部にコイル62が占める領域を確保する必要がある。詳細には、コイル62が位置するスロットS1の大きさはロータ19に近いほど小さくなるため、ティース72の長さを確保することで、スロットS1におけるコイル62が占める領域を確保する必要がある。そのため、中心点Pから第1交点P1までの寸法であるLa/2を小さくするには限度がある。これにより、La/2とLb/2と、の比は、0.15≦Lb/La≦0.35といった特定の範囲内の値となる。こうして上記の比が特定の範囲内の値となる回転電機10においては、ティース72の長さであるLdが長くなるほどヨーク71の厚みであるLcが小さくなる。
【0052】
本実施形態における回転電機10では、Lc/Ld≧0.35である。上記のようなスロットS1におけるコイル62が占める領域を確保できる大きさにLdの大きさを維持しつつ、Lcを大きくすることによって、上記のようにLc/Ld≧0.35が満たされるようになる。これにより、Lc/Ld<0.35である場合と比較して、径方向Yにおけるステータコア61の寸法に占めるティース72の長さの割合が小さくなる。
【0053】
[実施形態の効果]
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)Lc/Ld≧0.35である。そのため、Lc/Ld<0.35である場合と比較して、径方向Yにおけるステータコア61の寸法に占めるティース72の長さの割合が小さくなることにより、回転電機10の駆動に伴ってティース72が振動しにくくなる。また、Lc/Ld<0.35である場合と比較して、回転電機10における固有振動数を運転周波数の範囲外の値まで大きくできるため、回転電機10の駆動に伴う共振の発生を抑制できる。したがって、コイル62がティース72に集中巻きにより巻回される場合であって、ティース72の振動に起因する騒音が発生しやすい回転電機10において、回転電機10の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機10の騒音を低減できる。
【0054】
(2)ステータコア61の内部には、ヨーク71の周方向に隣り合うティース72同士の間に位置する空間であるスロットS1が形成されている。スロットS1は、ヨーク71の周方向に6つ並んでいる。磁性体30は、径方向Yに着磁されるとともに、2極を有する。こうしたステータ60は、円環2次に変形する振動モードを有する。そのため、円環2次以外に変形する振動モードを有する場合と比較して、回転電機10の駆動に伴って生じる騒音が大きくなる傾向にある。したがって、回転電機10の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機10の騒音を低減することにより、上記のように騒音が大きくなる傾向にある回転電機10でも騒音を低減できる。
【0055】
(3)コイル62は、ティース本体部73のうち、径方向Yにおけるヨーク71側の部分に巻回され、径方向Yにおけるティース先端部74側の部分に巻回されていない。そのため、コイル62が径方向Yにおけるティース本体部73の全体に巻回されている場合と比較して、コイル62が巻回されたティース72の重心が径方向Yにおけるヨーク71側に変位するため、回転電機10の駆動に伴うティース72の振動がより低減される。したがって、回転電機10の駆動に伴う振動に起因して発生する回転電機10の騒音をより低減できる。
【0056】
(4)コイル62は、コイルエンドとしての第1コイルエンド62a及び第2コイルエンド62bを有する。第1コイルエンド62aは、軸線方向Xにおけるステータコア61の側面としての第1側面61aから突出する。第2コイルエンド62bは、軸線方向Xにおけるステータコア61の側面としての第2側面61bから突出する。軸受14は、直交方向としての径方向Yにおける軸部材40と第1コイルエンド62a及び第2コイルエンド62bとの間に位置する。こうした回転電機10においては、軸部材40と第1コイルエンド62a及び第2コイルエンド62bとの間に軸受14を配置させるスペースを設けるために、ティース72の長さであるLdを大きくする場合がある。こうしてLdが大きく設定される回転電機10においても、駆動に伴うティース72の振動に起因して発生する回転電機10の騒音を低減できる。
【0057】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0058】
○ ヨーク71は、例えば、多角筒状など、円筒状以外の筒状であってもよい。
○ ステータコア61の内部に形成されるスロットS1の数は、6つ未満であってもよいし、7つ以上であってもよい。この場合、スロットS1の数に応じて、ステータコア61が有するティース72の数が増減する。
【0059】
○ 磁性体30は、4極以上を有するものであってもよい。
○ 磁性体30は、径方向Y以外の方向に着磁されていてもよい。例えば、磁性体30は、軸線方向Xに着磁されていてもよい。
【0060】
○ 磁性体30は、永久磁石に限らない。磁性体30は、例えば、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コア等であってもよい。
○ 磁性体30は円柱状に限らない。磁性体30は、例えば、四角柱状であってもよい。
【0061】
○ 磁性体30は、軸部材40と軸線方向Xにおいて隣り合うものに限らない。例えば、磁性体30は、軸線方向Xに延びる筒状であるとともに、軸部材40を外側から覆うものであってもよい。
【0062】
○ 軸部材40から第1軸部材41を省略してもよい。
○ コイル62は、ティース本体部73のうち、径方向Yにおけるティース先端部74側の部分に巻回され、径方向Yにおけるヨーク71側の部分に巻回されないものであってもよい。コイル62は、ティース本体部73のうち、径方向Yにおける中央部分に巻回され、径方向Yにおける両端部に巻回されないものであってもよい。コイル62は、径方向Yにおけるティース本体部73の全体に巻回されるものであってもよい。
【0063】
○ ステータコア61は、複数の電磁鋼板63が積層されたものに限らない。例えば、ステータコア61は、1つの部材から形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
L1…軸線、L2…直交軸線、P…中心点、P1…交点としての第1交点、P2…交点としての第2交点、S1…スロット、X…軸線方向、Y…直交方向としての径方向、10…回転電機、11…ハウジング、14…軸受、19…ロータ、30…磁性体、40…軸部材、60…ステータ、61…ステータコア、62…コイル、71…ヨーク、71a…外周面、72…ティース、73…ティース本体部、73a…第1端、73b…第2端、74…ティース先端部、76…端面。