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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008960
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】改修用防水シート固定具
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E04D5/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111622
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 恵太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(57)【要約】
【課題】従来よりも断面二次モーメントが高くなり、強度が高い改修用防水シート固定具を提供する。
【解決手段】防水下地に設けられた既存の防水シート固定具に重ねられて、表側の面に防水シート2が固定される板状の改修用防水シート固定具3であって、中央点C3の周りに位置する溝状の中央溝状部位32と、平面視で中央溝状部位32よりも外側に位置する外側部位33と、を備え、外側部位33は、中央溝状部位32とは離間している溝状の外側溝状部位33aと、防水シート2を既存の防水シート固定具に固定するための固定部材11が挿通される外側貫通孔33bと、を有する改修用防水シート固定具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に設けられた既存の防水シート固定具に重ねられて、表側の面に防水シートが固定される板状の改修用防水シート固定具であって、
中央点の周りに位置する溝状の中央溝状部位と、
平面視で前記中央溝状部位よりも外側に位置する外側部位と、を備え、
前記外側部位は、前記中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位と、前記防水シートを前記既存の防水シート固定具に固定するための固定部材が挿通される外側貫通孔と、を有する改修用防水シート固定具。
【請求項2】
複数の前記外側溝状部位が周方向に等間隔で並んでいる請求項1に記載の改修用防水シート固定具。
【請求項3】
複数の前記外側溝状部位は奇数個であり、
前記外側溝状部位は前記中央点から離れる方向に延びている請求項2に記載の改修用防水シート固定具。
【請求項4】
一対の前記外側貫通孔が前記中央点を挟んで対称な位置にある請求項1に記載の改修用防水シート固定具。
【請求項5】
前記中央溝状部位の外側端部から前記外側溝状部位の内側端部までの径方向における直線距離は、前記外側溝状部位の外側端部から前記外側部位の外側縁部までの径方向における直線距離よりも小さい請求項1に記載の改修用防水シート固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改修用防水シート固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の防水シート固定具は、防水シート固定具を下地に固定するための止め具が挿通される挿通孔と、挿通孔から外周に向けて隆起させた隆起部と、隆起部から更に外周側に向けて形成され、挿通孔を囲む溝部と、溝部の外周方向に位置し、防水シートが固定される固定板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-187338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水シート固定具は、溝部の外周方向に位置する固定板には、溝部が形成されていない。
【0005】
ここで、防水シートが敷設された防水構造は、経年による水密性の低下を避けるため定期的に張り替えられる。既存の防水構造を改修する際には、改修作業を効率化するために、既存の防水シートを防水下地から取り除くことなく、既存の防水シートに新たな防水シートを重ねて敷設する場合がある。
【0006】
このような改修作業に用いられる改修用防水シート固定具は、防水下地の状況や種類によって、防水下地に直接固定されず、既存の防水シート固定具に重ねられて固定される場合がある。既存の防水シート固定具に重ねられた改修用防水シート固定具は、防水下地に固定される防水シート固定具よりも高い位置にある。これにより、強い風が吹いた場合、改修用防水シート固定具には、防水シートを上方に吹上げる力が作用しやすい。したがって、改修用防水シート固定具は、防水下地に固定される防水シート固定具よりも断面二次モーメントを高くして、強度を高くすることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、従来よりも断面二次モーメントが高くなり、強度が高い改修用防水シート固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する手段として、本発明の改修用防水シート固定具は、防水下地に設けられた既存の防水シート固定具に重ねられて、表側の面に防水シートが固定される板状の改修用防水シート固定具であって、中央点の周りに位置する溝状の中央溝状部位と、平面視で前記中央溝状部位よりも外側に位置する外側部位と、を備え、前記外側部位は、前記中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位と、前記防水シートを前記既存の防水シート固定具に固定するための固定部材が挿通される外側貫通孔と、を有することを特徴とする。
【0009】
発明者の鋭意工夫によって、本発明の改修用防水シート固定具は、外側溝状部位を備えることで、断面二次モーメントが高くなり、強度が高くなることがわかった。本構成によれば、中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位によって、従来よりも強度が高くなる。
【0010】
本発明において、複数の前記外側溝状部位が周方向に等間隔で並んでいると好適である。
【0011】
外側溝状部位が位置する箇所には防水シートが固定されない。本構成によれば、防水シートが固定されない箇所が周方向に等間隔に位置するので、防水シートが改修用防水シートに均等に固定される。
【0012】
本発明において、複数の前記外側溝状部位は奇数個であり、前記外側溝状部位は前記中央点から離れる方向に延びていると好適である。
【0013】
本構成によれば、2つの外側溝状部位が径方向において同一直線上に配置されない。これにより、2つの外側溝状部位が径方向において同一直線上に配置されている構成と比較して、断面二次モーメントが高くなり、強度が高くなる。
【0014】
また、発明者の鋭意工夫によって、外側溝状部位が中央点から離れる方向に延びている構成は、外側溝状部位が径方向に対して直交する方向に延びている構成や外側溝状部位が外側部位の周方向に傾いた姿勢で延びている構成と比較して、断面二次モーメントが高くなり、強度が高くなることがわかった。本構成によれば、中央点から離れる方向に延びている外側溝状部位によって、従来よりも強度が高くなる。
【0015】
本発明において、一対の前記外側貫通孔が前記中央点を挟んで対称な位置にあると好適である。
【0016】
本構成によれば、2つの外側貫通孔が中央点よりも一方側に偏って配置されている構成と比較して、既存の防水シート固定具に固定される箇所が均等になり、改修用防水シート固定具が既存の防水シート固定具に安定して支持される。
【0017】
本発明において、前記中央溝状部位の外側端部から前記外側溝状部位の内側端部までの径方向における直線距離は、前記外側溝状部位の外側端部から前記外側部位の外側縁部までの径方向における直線距離よりも小さいと好適である。
【0018】
強い風により防水シートを上方に吹上げる力が作用した場合、外側部位の外側縁部と防水シートと接続箇所に大きな力がかかる。本構成によれば、中央溝状部位の外側端部から外側溝状部位の内側端部までの径方向における直線距離が、外側溝状部位の外側端部から外側部位の外側縁部までの径方向における直線距離以上である構成と比較して、外側溝状部位の外側端部から外側部位の外側縁部までの箇所において、防水シートが固定される面積が大きくなるので、防水シートが剥がれにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】改修用防水シート固定具を示す平面図である。
図2図1におけるII-II矢視断面図である。
図3】改修用防水シート固定具を用いた改修方法を示すフローチャートである。
図4】改修用防水シート固定具の強度の検証方法を示す図面である。
図5】検証結果を示す図面である。
図6】検証結果を示す図面である。
図7】改修用防水シート固定具の別の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る改修用防水シート固定具について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。
【0021】
本発明に係る改修用防水シート固定具3は、防水シートによって防水処理された防水構造を改修する際に用いられる。
【0022】
図1に示されるII-IIの断面線は、紙面上側から中央点C3まで直線状に延びて、中央点C3において時計回り方向に折れ曲がって、中央点C3から紙面左下側に向かって直線状に延びている。
【0023】
図1図2に示すように、改修用防水シート固定具3は板状であり、既存の防水シート12を防水下地1に固定する既存の防水シート固定具13に重ねられる。また、改修用防水シート固定具3は、既存の防水シート固定具13に固定され、表側の面に防水シート2が固定される。これにより、既存の防水構造を改修する際に、既存の防水シート12を防水下地1から取り除くことなく、既存の防水シート12の上に防水シート2を敷設することができる。
【0024】
ここで、「既存の防水シート」とは、防水構造を改修する際に、既に敷設されており、表側の面に防水シート2が敷設される防水シートを示す。「既存の防水シート固定具」とは、表側の面に既存の防水シート12が固定されている板状の防水シート固定具を示す。
【0025】
本実施形態において、既存の防水シート固定具13は中央点に位置する中央貫通孔13aを有している。既存の防水シート固定具13は、中央貫通孔13aに挿通されるタッピングビス14によって、防水下地1に固定されている。つまり、既存の防水シート12は、既存の防水シート固定具13によって、防水下地1に固定されている。これに限らず、既存の防水シート固定具13は、防水下地1の種類によっては、アンカーボルトによって防水下地1に固定されてもよい。
【0026】
防水シート2、及び既存の防水シート12は樹脂材料からなるシート状の部材である。具体的には、防水シート2は塩化ビニル系防水シートである。これに限らず、樹脂材料は他の樹脂でもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等でもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。また、防水シート2、及び既存の防水シート12はゴム製のシート状部材であってもよい。
【0027】
防水下地1は、防水シート2によって防水処理がなされる防水構造である。本実施形態において、防水下地1は、建物の屋上の躯体である。具体的には、防水下地1は、縦断面視で山部と谷部とが繰り返される波型である板状の金属屋根1aと、金属屋根1aに重ねて敷設される断熱材1bと、を有する。これに限らず、防水下地1は他の形態でもよい。例えば、防水下地1は木製、コンクリート製、または金属とコンクリートとを組み合わせた躯体でもよい。また、防水下地1の表面部位は、水平面以外に、縦壁などの垂直面や傾斜面であってもよい。
【0028】
図2において線CHは、改修用防水シート固定具3の中心を通る仮想線である。線CH上に位置する点C3は改修用防水シート固定具3の中央点を示している。
【0029】
図1図2に示すように、改修用防水シート固定具3は直径50~100mm程度の円盤状の部材である。これに限らず、改修用防水シート固定具3は他の形状でもよい。例えば、改修用防水シート固定具3は平面視で四角形や多角形などでもよい。
【0030】
改修用防水シート固定具3は、中央点C3の周りに位置する溝状の中央溝状部位32と、中央溝状部位32に囲まれた中央部位31と、平面視で中央溝状部位32よりも外側に位置する外側部位33と、を備える。本実施形態の改修用防水シート固定具3は、中央点C3にタッピングビスが挿通される貫通孔を備えていない。
【0031】
改修用防水シート固定具3の表側の面には、防水シート2を固定するための層Hが形成される。この層Hによって、防水シート2は中央部位31及び外側部位33の表側の面に固定される。具体的には、防水シート2は熱による融着または溶剤による溶着などによって、改修用防水シート固定具3に固定される。
【0032】
〔中央溝状部位〕
中央溝状部位32は凹状に成形された部位である。換言すると、中央溝状部位32は凹部である。中央溝状部位32の底は外側部位33の表側の面よりも防水下地1側に位置する。中央部位31は中央溝状部位32の長手方向の端部同士が繋がる一連の凹部によって囲まれている。具体的には、中央溝状部位32は中央部位31が多角形状となるように囲んでいる。
【0033】
〔中央部位〕
図1図2に示すように、中央部位31は中央点C3の周りに位置している。中央部位31は平板状である。中央部位31は外側部位33と平行に延びている。本実施形態において、中央部位31と外側部位33とは面一である。これに限らず、中央部位31は外側部位33と面一でなくてもよい。例えば、中央部位31は外側部位33の表側の面よりも防水下地1側に位置してもよく、外側部位33の表側の面よりも表側に突出してもよい。
【0034】
中央部位31は平面視で多角形状である。中央部位31の内角の数は平面視で4以上8以下であると好ましい。本実施形態において、中央部位31は平面視で内角の数が5つの五角形状である。これに限らず、中央部位31は他の形態でもよい。例えば、中央部位31は平面視で円形でもよい。
【0035】
〔外側部位〕
図1図2に示すように、外側部位33は中央溝状部位32の周りに位置している。外側部位33は平板状である。外側部位33は、中央溝状部位32とは離間している溝状の外側溝状部位33aと、防水シート2を既存の防水シート固定具13に固定するためのリベット11(本発明の固定部材に相当)が挿通される外側貫通孔33bと、を有する。
【0036】
外側部位33は、既存の防水シート固定具13の外側部位13cと重なるように位置している。換言すると、外側貫通孔33bが、既存の防水シート固定具13の外側部位13cと重なるように配置されている。これにより、外側貫通孔33bに挿通されるリベット11が平板状の既存の防水シート固定具13の外側部位13cに固定されやすくなる。
【0037】
〔外側溝状部位〕
外側溝状部位33aは凹状に成形された部位である。換言すると、外側溝状部位33aは凹部である。外側溝状部位33aの底は外側部位33の表側の面よりも防水下地1側に位置する。外側溝状部位33aの長手方向の大きさは、4.8~14.8mmである。
【0038】
外側溝状部位33aの個数、配置、及び向きは任意である。本実施形態において、外側溝状部位33aの個数は複数である。外側溝状部位33aは、多角形状の中央部位31の頂点に対して、径方向外側に隣接している。換言すると、外側溝状部位33aは多角形状の中央部位31の頂点と中央点C3とを通る直線上に配置されている。また、複数の外側溝状部位33aが周方向に等間隔で並んでいる。外側溝状部位33aは中央点C3から離れる方向に延びている。
【0039】
図1、に示すように、中央溝状部位32の外側端部から外側溝状部位33aの内側端部までの径方向における直線距離L1は、外側溝状部位33aの外側端部から外側部位33の外側縁部までの径方向における直線距離L2よりも小さい。強い風により防水シート2を上方に吹上げる力が作用した場合、外側部位33の外側縁部と防水シート2との接続部に大きな力がかかる。外側溝状部位33aが中央点C3寄りに配置されることで、外側溝状部位33aが、外側部位33の外側縁部寄りに配置される構成と比較して、外側部位33において、外側溝状部位33aの外側端部から外側部位33の外側縁部までの面積が大きくなるので、防水シート2が外側部位33から剥がれにくくなる。
【0040】
〔外側貫通孔〕
図1に示すように、一対の外側貫通孔33bが中央点C3を挟んで対称な位置にある。これにより、一対の外側貫通孔33bが中央点C3に対して一方側のみに配置されている構成と比較して、既存の防水シート固定具13に固定される箇所が均等になるので、改修用防水シート固定具3が既存の防水シート固定具13に安定して支持される。
【0041】
次に、改修用防水シート固定具3を用いた防水構造の改修方法について、図3に記載のフローチャートに基づいて説明する。なお、下記に記載する工程は矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数の工程が同時に行われてもよい。
【0042】
既存の防水シート固定具13と重なる位置に改修用防水シート固定具3を載置する(ステップS01)。具体的には図2に示すように、既存の防水シート固定具13の中央点と改修用防水シート固定具3の中央点C3とが重なる位置に改修用防水シート固定具3を載置する。既存の防水シート固定具13の中央溝状部位13bが中央点を円形状に囲んでいる場合、本実施形態の中央溝状部位32は中央点C3を五角形状に囲んでいるので、中央溝状部位32は、既存の防水シート固定具13の中央溝状部位13bとは平面視で異なる形状となる。これにより、中央溝状部位32の一部が、既存の防水シート固定具13の中央溝状部位13bに嵌り込みにくくなる。したがって、改修用防水シート固定具3の姿勢が斜めになりづらく、改修用防水シート固定具3が既存の防水シート固定具13に安定して支持される。
【0043】
次に、改修用防水シート固定具3を既存の防水シート固定具13に固定する(ステップS02)。具体的には図2に示すように、改修用防水シート固定具3の外側貫通孔33bにリベット11を挿通し、改修用防水シート固定具3をリベット11によって、既存の防水シート固定具13の外側部位13cに固定する。これに限らず、改修用防水シート固定具3をタッピングビスなどその他の固定部材によって、既存の防水シート固定具13に固定してもよい。
【0044】
次に、防水シート2を既存の防水シート12及び改修用防水シート固定具3に重ねて敷設する(ステップS03)。また、改修用防水シート固定具3の表側の面に防水シート2を固定する(ステップS04)。本実施形態においては、改修用防水シート固定具3の熱可塑性合成樹脂からなる層Hを電磁誘導加熱器で融かして、防水シート2を改修用防水シート固定具3の表側の面に融着する。これに限らず、溶剤からなる層Hによって、防水シート2を改修用防水シート固定具3の表側の面に溶着してもよい。
【0045】
〔外側溝状部位による改修用防水シート固定具の強度の検証について〕
外側溝状部位33aの形態と改修用防水シート固定具3の強度との関係を、シミュレーションを用いて調べた。改修用防水シート固定具3の鋼材はSUS430とした。また、鋼材の厚みは0.6mmと設定した。
【0046】
図4に示すように、改修用防水シート固定具3の外側縁部の裏側の面を、改修用防水シート固定具3の下方に位置する固定部に固定した状態で、一対の外側貫通孔33bに対して重力方向に荷重を加えた。このような状態で改修用防水シート固定具3の変位量(断面二次モーメント)をシミュレーションにより計算した。
【0047】
図5に示すように、改修用防水シート固定具3に加える荷重は200N、400N、600N、800N、1000N、1200N及び1400Nと変化させた。
【0048】
また、外側溝状部位33aの個数と、外側溝状部位33aの長手方向の大きさと、を変更した12種類の改修用防水シート固定具3のサンプルを用意した。
【0049】
各サンプルの外側溝状部位33aの個数は、サンプルAは1個、サンプルBは2個、サンプルCは3個、サンプルDが4個、サンプルEは5個及びサンプルFが6個である。また、比較対象として外側溝状部位33aが0個であるサンプル(リブ無し)を用意した。いずれのサンプルも外側溝状部位33aは中央から離れる方向に延びている。また、中央部位31の平面視での形状が円形である。さらに、サンプルB-Fの外側溝状部位33aは円周方向に等間隔で配置されている。
【0050】
図5に示すように、サンプルA、B及びFは外側溝状部位33aの長手方向の大きさが14.8mmである。サンプルC、D及びEは、外側溝状部位33aの長手方向の大きさが4.8mm、9.8mm、14.8mmに変更したものをそれぞれ用意した。
【0051】
外側溝状部位33aが0個であるサンプル(リブ無し)と比較して、12種類の全てのサンプルで変位量が少なかった。したがって、外側溝状部位33aは、改修用防水シート固定具3の強度に影響していると認められた。特に、サンプルC(外側溝状部位33aが3個)、E(外側溝状部位33aが5個)の変位量が他のサンプルよりも少ない傾向が認められた。サンプルC及びEは2つの外側溝状部位33aが一直線上に配置されていない。一方で、B(外側溝状部位33aが2個)、D(外側溝状部位33aが4個)及びF(外側溝状部位33aが6個)は少なくとも2つの外側溝状部位33aが一直線上に配置されている。したがって、複数の外側溝状部位33aを有する場合、奇数個の外側溝状部位33aを円周方向に等間隔に配置することが好ましい。
【0052】
一方で、外側溝状部位33aの長手方向の大きさによる変位量の違いはあまり認められなかった。つまり、外側溝状部位33aの長手方向の大きさは4.8mm~14.8mmであると好ましい。ここで、外側溝状部位33aの長手方向の大きさは小さい方が、改修用防水シート固定具3と防水シート2との固定面積が大きくなる。したがって、外側溝状部位33aの長手方向の大きさは特に4.8mmであると好ましい。
【0053】
次に、図6に示すように、中央部位31の平面視での形状と、外側溝状部位33aの向きと、の違いによる変位量の変化を検証した。サンプルG-Rの12種類を用意した。図6にはサンプルG-Rの中央部位31の平面視での形状と、外側溝状部位33aの平面視での向きと、が示されている。具体的には、図6において、改修用防水シート固定具3の中心を囲む二重の円または二重の五角形によって中央部位31及び中央溝状部位32が示されている。また、円周方向に並んでいる複数の長方形によって外側溝状部位33aが示されている。これらのサンプルG-Rにおいて外側溝状部位33aの長手方向の大きさは4.8mmである。
【0054】
中央部位31の平面視での形状について、サンプルG-Kは中央部位31の平面視での形状が円形である。サンプルL-Rは中央部位31の平面視での形状が五角形である。この結果、図6に示すように、サンプルNを除く、サンプルL、M、O、P、Q及びRの変位量がG-Kの変位量よりも少ない傾向にあることが認められた。サンプルNは、外側溝状部位33aが中央溝状部位32と接触する位置に配置されている。したがって、中央部位31の平面視での形状は円形よりも五角形であることが好ましい。また、中央部位31が平面視で五角形状である場合、外側溝状部位33aは中央溝状部位32と離間した位置にあると好ましい。
【0055】
また、外側溝状部位33aの向きについて、サンプルH、I、J、M、N、O及びQは外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向に延びている。サンプルK、P及びRは外側溝状部位33aが外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びている。サンプルG及びLは外側溝状部位33aが外側部位33の周方向に傾いた姿勢で延びている。この結果、図6に示すように、サンプルJ、M、O、P、Q及びRの変位量が少ない傾向が認められた。したがって、外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向または、外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びていると好ましい。中でもサンプルM及びOの変位量が特に少ないことが認められた。したがって、中央部位31が平面視で五角形である場合、外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向に延びていると特に好ましい。
【0056】
以上の結果から、中央部位31の平面視での形状と、外側溝状部位33aの向きと、が改修用防水シート固定具3の強度に影響することが認められた。
【0057】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では実施形態と同じ構成には上述した実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0058】
〔1〕上述の実施形態では、改修用防水シート固定具3は中央部位31を備えていた。これに限らず、改修用防水シート固定具3は中央部位31を備えていなくてもよい。具体的には、外側部位33よりも中央点C3側の領域全体が中央溝状部位32であってもよい。換言すると、平面視で中央溝状部位32の底面は内角の数が4以上8以下の多角形であってもよい。
【0059】
〔2〕図7に示すように、外側溝状部位33aは外側部位33の周方向に傾いた姿勢で延びていてもよい。また、中央部位31が五角形である場合、外側溝状部位33aは、多角形状の中央部位31の頂点に対して、径方向外側に隣接していなくてもよい。
【0060】
〔3〕外側溝状部位33aは外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びていてもよい。
【0061】
〔4〕図7に示すように、一部の外側溝状部位33a同士の間隔が、その他の外側溝状部位33a同士の間隔と異なっていてもよい。換言すると、複数の外側溝状部位33aが周方向に等間隔で並んでいなくてもよい。
【0062】
〔5〕外側貫通孔33bは一対でなくてもよい。例えば、外側部位33は、外側貫通孔33bを1つ、または3つ以上有していてもよい。
【0063】
〔6〕距離L1は、距離L2と同じでもよく、距離L1は、距離L2よりも大きくてもよい。
【0064】
〔7〕上述の実施形態において、中央部位31は中央溝状部位32の長手方向の端部同士が繋がる一連の凹部によって囲まれている。これに限らず、中央溝状部位32の長手方向の端部同士が繋がる一連の凹部ではなく、中央部位31は複数の円周方向に離間した中央溝状部位32によって囲まれていてもよい。
【0065】
〔8〕上述の実施形態において、本実施形態の改修用防水シート固定具3は、中央点C3にタッピングビスやアンカーボルトなどが挿通される貫通孔を備えていない。これに限らず、改修用防水シート固定具3は、中央点C3にタッピングやアンカーボルトなどが挿通される貫通孔を備えていてもよい。
【0066】
〔9〕上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、改修用防水シート固定具に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 :防水下地
2 :防水シート
3 :改修用防水シート固定具
32 :中央溝状部位
33 :外側部位
33a :外側溝状部位
33b :外側貫通孔
11 :リベット(固定部材)
13 :既存の防水シート固定具
C3 :中央点
L1 :距離
L2 :距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7