(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008961
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】防水シート固定具
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E04D5/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111623
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 恵太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(57)【要約】
【課題】強度を高くしつつ、防水シートがしっかりと固定されやすい防水シート固定具を提供する。
【解決手段】表側の面に防水シート2が固定される板状の防水シート固定具3であって、中央点C3を囲む溝状の中央溝状部位32を備え、中央溝状部位32に囲まれた中央部位31が多角形状であり、中央部位31の内角の数は、平面視で4以上8以下である防水シート固定具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側の面に防水シートが固定される板状の防水シート固定具であって、
中央点を囲む溝状の中央溝状部位を備え、
前記中央溝状部位に囲まれた中央部位が多角形状であり、
前記中央部位の内角の数は、平面視で4以上8以下である防水シート固定具。
【請求項2】
前記中央部位は平面視で内角の数が5つの五角形状である請求項1に記載の防水シート固定具。
【請求項3】
前記中央点に位置し、前記防水シートを防水下地に固定するための固定部材が挿通される中央貫通孔を更に備える請求項1に記載の防水シート固定具。
【請求項4】
平面視で前記中央溝状部位よりも外側に位置する外側部位を更に備え、
前記外側部位は、前記中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位と、前記防水シートを既存の防水シート固定具に固定するための固定部材が挿通される外側貫通孔と、を有する請求項1に記載の防水シート固定具。
【請求項5】
一対の前記外側貫通孔が前記中央点を挟んで対称な位置にある請求項4に記載の防水シート固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の防水シート固定具は、防水シート固定具を下地に固定するための止め具が挿通される挿通孔と、挿通孔から外周に向けて隆起させた隆起部と、隆起部から更に外周側に向けて形成され、挿通孔を円形状に囲む溝部と、溝部の外周方向に位置し、防水シートが固定される固定板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水シート固定具は、挿通孔を円形状に囲む溝部を備えている。これにより、防水シート固定具を平板のまま構成するより断面二次モーメントを高くすることができ、薄板であっても強度をより高くすることが可能となる。
【0005】
また、溝部の外周方向に位置する固定板には防水シートが固定される。ここで強い風により防水シートを上方に吹上げる力が作用すると、防水シート固定具の外側縁部と防水シートとの接続部に大きな力がかかる。したがって、溝部の外周方向に位置する固定板に防水シートがしっかりと固定されていない場合、風などにより、防水シート固定具から防水シートが剥がれてしまう。
【0006】
本発明の目的は、強度を高くしつつ、防水シートがしっかりと固定されやすい防水シート固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、表側の面に防水シートが固定される板状の防水シート固定具であって、中央点を囲む溝状の中央溝状部位を備え、前記中央溝状部位に囲まれた中央部位が多角形状であり、前記中央部位の内角の数は、平面視で4以上8以下であることを特徴とする。
【0008】
発明者の鋭意工夫によって、本発明の防水シート固定具は、中央溝状部位に囲まれた中央部位を内角の数が平面視で4以上8以下である多角形状とすることで、断面二次モーメントが高くなり、強度が高くなることがわかった。本構成によれば、中央溝状部位によって、中央溝状部位を備えていない防水シート固定具よりも断面二次モーメントが高くなることで強度が高くなる。
【0009】
また、中央点から中央溝状部位の外側端部までの最大距離が同じである場合、中央溝状部位が中央部位を多角形状に囲んでいる構成は、中央溝状部位が中央部位を円形状に囲んでいる構成と比較して、中央溝状部位のよりも外側に位置する部位の表面積が大きくなる。本構成によれば、中央溝状部位のよりも外側に位置する部位の表面積が大きくなるので、防水シートを上方に吹上げる力が作用した場合でも、防水シートが防水シート固定具にしっかりと固定され、防水シートが防水シート固定具から剥がれにくくなる。
【0010】
本発明において、前記中央部位は平面視で内角の数が5つの五角形状であると好適である。
【0011】
発明者の鋭意工夫によって、本発明の防水シート固定具は中央溝状部位に囲まれた中央部位を五角形状にすることで、断面二次モーメントが高くなることで強度が高くなることがわかった。本構成によれば、中央溝状部位によって、断面二次モーメントがさらに高くなり、強度が高くなる。
【0012】
本発明において、前記中央点に位置し、前記防水シートを防水下地に固定するための固定部材が挿通される中央貫通孔を更に備えると好適である。
【0013】
本構成によれば、中央溝状部位によって、断面二次モーメントが高くなることで強度が高くなる。また、中央溝状部位のよりも外側に位置する部位の表面積が大きくなるので、防水シートを上方に吹上げる力が作用した場合でも、防水シートが防水シート固定具にしっかりと固定され、防水シートが防水シート固定具から剥がれにくくなる。
【0014】
本発明において、平面視で前記中央溝状部位よりも外側に位置する外側部位を更に備え、前記外側部位は、前記中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位と、前記防水シートを既存の防水シート固定具に固定するための固定部材が挿通される外側貫通孔と、を有すると好適である。
【0015】
発明者の鋭意工夫によって、本発明の防水シート固定具は、外側溝状部位を備えることで、さらに断面二次モーメントが高くなり、強度が高くなることがわかった。本構成によれば、中央溝状部位とは離間している溝状の外側溝状部位によって、断面二次モーメントがさらに高くなり、強度が高くなる。
【0016】
本発明において、一対の前記外側貫通孔が前記中央点を挟んで対称な位置にあると好適である。
【0017】
本構成によれば、2つの外側貫通孔が中央点よりも一方側に偏って配置されている構成と比較して、既存の防水シート固定具に固定される箇所が均等になり、防水シート固定具が既存の防水シート固定具に安定して支持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】防水シート固定具を用いた施工方法を示すフローチャートである。
【
図4】防水シート固定具の強度の検証方法を示す図面である。
【
図7】防水シート固定具の別の一例を示す平面図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII矢視断面図である。
【
図9】防水シート固定具を用いた改修方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る防水シート固定具について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。
【0020】
図1に示されるII-IIの断面線は、紙面左側から中央点C3を通って、紙面右側に直線状に延びている。
図1、
図2に示すように、防水シート固定具3は板状であり、防水下地1に載置される。また、防水シート固定具3は、防水下地1に固定され、表側の面に防水シート2が固定される。これにより、防水シート2が防水下地1に固定される。
【0021】
本実施形態において、防水シート固定具3は中央点C3に位置する中央貫通孔34を有している。防水シート固定具3は、中央貫通孔34に挿通されるタッピングビス14によって、防水下地1に固定されている。つまり、防水シート2は、防水シート固定具3によって、防水下地1に固定されている。これに限らず、防水シート固定具3は、防水下地1の種類によっては、アンカーボルトによって防水下地1に固定されてもよい。
【0022】
防水シート2及び既存の防水シート12(
図7参照)は樹脂材料からなるシート状の部材である。具体的には、防水シート2は塩化ビニル系防水シートである。これに限らず、樹脂材料は他の樹脂でもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等でもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。また、防水シート2はゴム製のシート状部材であってもよい。
【0023】
防水下地1は、防水シート2によって防水処理がなされる防水構造である。本実施形態において、防水下地1は、建物の屋上の躯体である。防水下地1は、縦断面視で山部と谷部とが繰り返される波型である板状の金属屋根1aと、金属屋根1aに重ねて敷設される断熱材1bと、を有する。これに限らず、防水下地1は他の形態でもよい。例えば、例えば、防水下地1は木製、コンクリート製、または金属とコンクリートとを組み合わせた躯体でもよい。また、防水下地1の表面部位は、水平面以外に、縦壁などの垂直面や傾斜面であってもよい。
【0024】
図2において線CHは、防水シート固定具3の中心を通る仮想線である。線CH上に位置する点C3は防水シート固定具3の中央点を示している。
【0025】
図1、
図2に示すように、防水シート固定具3は直径50~100mm程度の円盤状の部材である。これに限らず、防水シート固定具3は他の形状でもよい。例えば、防水シート固定具3は平面視で四角形や多角形などでもよい。
【0026】
防水シート固定具3は、中央点C3を囲む溝状の中央溝状部位32と、中央溝状部位32に囲まれた中央部位31と、平面視で中央溝状部位32よりも外側に位置する外側部位33と、中央点C3に位置し、防水シート2を防水下地1に固定するためのタッピングビス14(本発明の固定部材に相当)が挿通される中央貫通孔34と、を備える。
【0027】
中央部位31及び外側部位33の表側の面には、防水シート2を固定するための層Hが形成される。この層Hによって、防水シート2は中央部位31及び外側部位33の表側の面に固定される。具体的には、防水シート2は熱による融着または溶剤による溶着などによって、防水シート固定具3に固定される。
【0028】
〔中央溝状部位〕
中央溝状部位32は凹状に成形された部位である。換言すると、中央溝状部位32は凹部である。中央溝状部位32の底は外側部位33の表側の面よりも防水下地1側に位置する。中央部位31は中央溝状部位32の長手方向の端部同士が繋がる一連の凹部によって囲まれている。具体的には、中央溝状部位32は中央部位31が多角形状となるように囲んでいる。
【0029】
〔中央部位〕
図1、
図2に示すように、中央部位31は中央点C3の周りに位置している。換言すると、中央部位31は中央貫通孔34の周りに位置している。中央部位31は平面視で多角形状である。中央部位31の内角の数は平面視で4以上8以下であると好ましい。本実施形態において、中央部位31は平面視で内角の数が5つの五角形状である。
【0030】
〔外側部位〕
図1、
図2に示すように、外側部位33は中央溝状部位32の周りに位置している。外側部位33は平板状である。外側部位33は、中央溝状部位32とは離間している溝状の外側溝状部位33aを備えている。
【0031】
〔外側溝状部位〕
外側溝状部位33aは凹状に成形された部位である。換言すると、外側溝状部位33aは凹部である。外側溝状部位33aの底は外側部位33の表側の面よりも防水下地1側に位置する。外側溝状部位33aの長手方向の大きさは、4.8~14.8mmである。
【0032】
外側溝状部位33aの個数、配置、及び向きは任意である。本実施形態において、外側溝状部位33aの個数は複数である。外側溝状部位33aは、多角形状の中央部位31の頂点に対して、径方向外側に隣接している。換言すると、外側溝状部位33aは多角形状の中央部位31の頂点と中央点C3とを通る直線上に配置されている。また、複数の外側溝状部位33aが周方向に等間隔で並んでいる。外側溝状部位33aは中央点C3から離れる方向に延びている。
【0033】
図1に示すように、中央溝状部位32の外側端部から外側溝状部位33aの内側端部までの径方向における直線距離L1は、外側溝状部位33aの外側端部から外側部位33の外側縁部までの径方向における直線距離L2よりも小さい。強い風により防水シート2を上方に吹上げる力が作用した場合、外側部位33の外側縁部と防水シート2との接続部に大きな力がかかる。外側溝状部位33aが中央点C3寄りに配置されることで、外側溝状部位33aが、外側部位33の外側縁部寄りに配置される構成と比較して、外側部位33において、外側溝状部位33aの外側端部から外側部位33の外側縁部までの面積が大きくなるので、防水シート2が外側部位33から剥がれにくくなる。
【0034】
次に、防水シート固定具3を用いた施工方法について、
図3に記載のフローチャートに基づいて説明する。なお、下記に記載する工程は矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数の工程が同時に行われてもよい。
【0035】
防水シート固定具3を防水下地1に載置する(ステップS01)。具体的には、複数の防水シート固定具3を等間隔で防水下地1に載置する。
【0036】
次に、防水シート固定具3を防水下地1に固定する(ステップS02)。具体的には
図2に示すように、防水シート固定具3の中央貫通孔34にタッピングビス14を挿通し、防水シート固定具3をタッピングビス14によって、防水下地1に固定する。これに限らず、防水シート固定具3を接着剤などによって、防水下地1に固定してもよい。
【0037】
次に、防水シート2を防水下地1及び防水シート固定具3に重ねて敷設する(ステップS03)。また、防水シート固定具3の表側の面に防水シート2を固定する(ステップS04)。本実施形態において、防水シート固定具3の熱可塑性合成樹脂からなる層Hを電磁誘導加熱器で融かして、防水シート2を防水シート固定具3の表側の面に融着する。これに限らず、溶剤からなる層Hによって、防水シート2を防水シート固定具3の表側の面に溶着してもよい。
【0038】
〔外側溝状部位による防水シート固定具の強度の検証について〕
外側溝状部位33aの形態と防水シート固定具3の強度との関係を、シミュレーションを用いて調べた。防水シート固定具3の鋼材はSUS430とした。また、鋼材の厚みは0.6mmと設定した。
【0039】
図4に示すように、防水シート固定具3の外側縁部の裏側の面を、防水シート固定具3の下方に位置する固定部に固定した状態で、外側部位33のうち中央点C3を挟んで対称な2箇所に対して重力方向に荷重を加えた。このような状態で防水シート固定具3の変位量(断面二次モーメント)をシミュレーションにより計算した。
【0040】
図5に示すように、防水シート固定具3に加える荷重は200N、400N、600N、800N、1000N、1200N及び1400Nと変化させた。
【0041】
中央溝状部位32によって囲まれる中央部位31の平面視での形状が、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、七角形状及び八角形状であるサンプルを用意した。また、これらのサンプルとの比較対象として中央部位31が平面視で円形状であるサンプルを用意した。
【0042】
図5に示すように、中央部位31が平面視で四角形状、五角形状、六角形状、七角形状及び八角形状であるサンプルは、中央部位31が平面視で三角形状であるサンプルと比較して変位量が小さい傾向が認められた。また、中央部位31が平面視で四角形状、五角形状、六角形状、七角形状及び八角形状のサンプルは、中央部位31が平面視で円形状であるサンプルと同等の変位量であることが認められた。したがって、中央溝状部位32に囲まれた中央部位31の形状は、平面視で4以上8以下である多角形状が好ましい。これらの中で、中央部位31が平面視で五角形状であるサンプルの変位量が小さい傾向が認められた。したがって、中央溝状部位32が中央部位31を五角形状に囲んでおり、中央部位31が平面視で五角形状であると特に好ましい。
【0043】
一方で、中央部位31が平面視で三角形状のサンプルは、特に200N及び400Nの荷重で他のサンプルよりも変位量が大きいことが認められた。したがって、中央部位31が平面視で三角形状である場合、風による防水シート2を上方に吹上げる力によって防水シート固定具3が変位しやすいので好ましくない。
【0044】
次に、
図6に示すように、中央部位31が平面視で五角形状であり、複数の外側溝状部位33aを備えたサンプルの変位量を検証した。外側溝状部位33aの向きと配置を変えた7種類のサンプルA-Gと、比較対象として外側溝状部位33aを備えていないサンプル(五角形のみ)と、を用意した。
図6にはこれらのサンプルA-Gの中央部位31と、外側溝状部位33aの平面視での向きと、が示されている。具体的には、
図6において、防水シート固定具3の中心を囲む二重の五角形によって中央部位31及び中央溝状部位32が示されている。また、円周方向に並んでいる複数の長方形によって外側溝状部位33aが示されている。これらのサンプルの外側溝状部位33aの長手方向の大きさは4.8mmである。
【0045】
外側溝状部位33aの向きについて、サンプルB、C、D、Fは外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向に延びている。サンプルE及びGは外側溝状部位33aが外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びている。サンプルAは外側溝状部位33aが外側部位33の径方向に対して周方向に傾いた姿勢で延びている。この結果、
図6に示すように、外側溝状部位33aを備えていないサンプル(五角形のみ)と比較して、サンプルCを除くサンプルA、B、D、E、F及びGの変位量が少ない傾向が認められた。サンプルCは、外側溝状部位33aが中央溝状部位32と接触する位置に配置されている。したがって、中央部位31が平面視で五角形状である場合、外側溝状部位33aは中央溝状部位32と離間した位置にあると、防水シート固定具3の変位量が小さいと認められる。
【0046】
また、サンプルB、D、E、F、及びGの変位量が小さい傾向が認められた。したがって、外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向または、外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びていると好ましい。中でもサンプルB及びDの変位量が特に小さいことが認められた。したがって、外側溝状部位33aが中央点C3から離れる方向に延びていると特に好ましい。
【0047】
以上の結果から、中央部位31が平面視で五角形状である場合、中央溝状部位32と離間した外側溝状部位33aが防水シート固定具3の強度に影響することが認められた。
【0048】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では実施形態と同じ構成には上述した実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0049】
〔1〕
図7、
図8に示すように、防水シート固定具3は既存の防水シート12を防水下地1に固定する既存の防水シート固定具13に重ねられてもよい。また、防水シート固定具3は、既存の防水シート固定具13に固定されてもよい。これにより、既存の防水構造を改修する際に、既存の防水シート12を防水下地1から取り除くことなく、既存の防水シート12の上に防水シート2を敷設することができる。
【0050】
ここで、「既存の防水シート」とは、防水構造を改修する際に、既に敷設されており、表側の面に防水シート2が敷設される防水シートを示す。「既存の防水シート固定具」とは、表側の面に既存の防水シート12が固定されている板状の防水シート固定具を示す。
【0051】
図7に示されるVIII-VIIIの断面線は、紙面上側から中央点C3まで直線状に延びて、中央点C3において時計回り方向に折れ曲がって、中央点C3から紙面左下側に向かって直線状に延びている。
【0052】
本実施形態において、既存の防水シート固定具13は中央点に位置する中央貫通孔13aを有している。既存の防水シート固定具13は、中央貫通孔13aに挿通されるタッピングビス14によって、防水下地1に固定されている。つまり、既存の防水シート12は既存の防水シート固定具13によって、防水下地1に固定されている。これに限らず、既存の防水シート固定具13は、防水下地1の種類によっては、アンカーボルトによって防水下地1に固定されてもよい。
【0053】
本実施形態において、防水シート固定具3は、中央貫通孔34に代えて外側貫通孔33bを有する。具体的には、外側部位33は防水シート2を既存の防水シート固定具13に固定するためのリベット11(本発明の固定部材に相当)が挿通される外側貫通孔33bを有する。
【0054】
〔外側貫通孔〕
図7、
図8に示すように、一対の外側貫通孔33bが中央点C3を挟んで対称な位置にある。これにより、一対の外側貫通孔33bが中央点C3に対して一方側のみに配置されている構成と比較して、既存の防水シート固定具13に固定される箇所が均等になるので、防水シート固定具3が既存の防水シート固定具13に安定して支持される。
【0055】
外側部位33は、既存の防水シート固定具13の外側部位13cと重なるように位置している。換言すると、外側貫通孔33bが、既存の防水シート固定具13の外側部位13cと重なるように配置されている。これにより、外側貫通孔33bに挿通されるリベット11が平板状の既存の防水シート固定具13の外側部位13cに固定されやすくなる。
【0056】
次に、防水シート固定具3を用いた防水構造の改修方法について、
図9に記載のフローチャートに基づいて説明する。なお、下記に記載する工程は矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数の工程が同時に行われてもよい。
【0057】
既存の防水シート固定具13と重なる位置に防水シート固定具3を載置する(ステップS11)。具体的には
図8に示すように、既存の防水シート固定具13の中央点と防水シート固定具3の中央点C3とが重なる位置に防水シート固定具3を載置する。
【0058】
次に、防水シート固定具3を既存の防水シート固定具13に固定する(ステップS12)。具体的には
図8に示すように、防水シート固定具3の外側貫通孔33bにリベット11を挿通し、防水シート固定具3をリベット11によって、既存の防水シート固定具13の外側部位13cに固定する。これに限らず、防水シート固定具3をタッピングビスなどその他の固定部材によって、既存の防水シート固定具13に固定してもよい。
【0059】
次に、防水シート2を既存の防水シート12及び防水シート固定具3に重ねて敷設する(ステップS13)。また、防水シート固定具3の表側の面に防水シート2を固定する(ステップS14)。本実施形態においては、防水シート固定具3の熱可塑性合成樹脂からなる層Hを電磁誘導加熱器で融かして、防水シート2を防水シート固定具3の表側の面に融着する。これに限らず、溶剤からなる層Hによって、防水シート2を防水シート固定具3の表側の面に溶着してもよい。
【0060】
〔2〕
図7に示すように、外側溝状部位33aは外側部位33の周方向に傾いた姿勢で延びていてもよい。また、外側溝状部位33aは、多角形状の中央部位31の頂点に対して、径方向外側に隣接していなくてもよい。
【0061】
〔3〕外側溝状部位33aは外側部位33の径方向に対して直交する方向に延びていてもよい。
【0062】
〔4〕
図7に示すように、一部の外側溝状部位33a同士の間隔が、その他の外側溝状部位33a同士の間隔と異なっていてもよい。換言すると、複数の外側溝状部位33aが周方向に等間隔で並んでいなくてもよい。
【0063】
〔5〕外側貫通孔33bは一対でなくてもよい。例えば、外側部位33は、外側貫通孔33bを1つ、または3つ以上有していてもよい。
【0064】
〔6〕距離L1は、距離L2と同じでもよく、距離L1は、距離L2よりも大きくてもよい。
【0065】
〔7〕上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、防水シート固定具に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :防水下地
2 :防水シート
3 :防水シート固定具
31 :中央部位
32 :中央溝状部位
33 :外側溝状部位
33 :外側部位
33a :外側溝状部位
33b :外側貫通孔
34 :中央貫通孔
11 :リベット(固定部材)
13 :既存の防水シート固定具
14 :タッピングビス(固定部材)
C3 :中央点