(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025089657
(43)【公開日】2025-06-16
(54)【発明の名称】ホットメルト接着性樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20250609BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250609BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250609BHJP
【FI】
C09J7/35
B32B27/36
B32B27/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204412
(22)【出願日】2023-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】高村 聡
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】千嶋 憲治
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04C
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4J004AA07
4J004AA15
4J004AB03
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004EA05
(57)【要約】
【課題】引張破壊応力の低下を抑制することが可能な樹脂組成物を用いたホットメルト接着性樹脂積層体を提供する。
【解決手段】樹脂を形成材料とする第1樹脂層1と、第1樹脂層1の両面にそれぞれ第2樹脂層2を有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、第1樹脂層1は、液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂と、結晶融解温度が250℃以下である低融点液晶ポリマーと、を含有する樹脂組成物から形成され、第2樹脂層2は、酸変性ポリエチレン樹脂またはイミン変性ポリオレフィン樹脂から形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を形成材料とする第1樹脂層と、前記第1樹脂層の両面にそれぞれ第2樹脂層を有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、
前記第1樹脂層は、液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂と、結晶融解温度が250℃以下である低融点液晶ポリマーと、を含有する樹脂組成物から形成され、
前記第2樹脂層は、酸変性ポリエチレン樹脂またはイミン変性ポリオレフィン樹脂から形成されている、ホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項2】
前記第1樹脂層は基材層であり、前記第2樹脂層は接着層である、請求項1に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項3】
前記第2樹脂層の前記第1樹脂層とは反対の側に、それぞれ第3樹脂層を有し、
前記第3樹脂層は、酸変性ポリプロピレン樹脂から形成され、
前記第1樹脂層は基材層であり、前記第2樹脂層は中間層であり、前記第3樹脂層は接着層である、請求項1に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項4】
前記第1樹脂層の樹脂組成物は、さらに酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する、請求項1に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項5】
前記第1樹脂層に含有される前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性ポリエチレン樹脂である、請求項4に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【請求項6】
前記第1樹脂層は、前記樹脂組成物の全体を100重量部として、前記液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂が40~60重量部、前記低融点液晶ポリマーが20~40重量部、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が5~30重量部の割合である、請求項4に記載のホットメルト接着性樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂の中でも、液晶ポリマーは耐加水分解性が良好だが、結晶融解温度が280℃以上の液晶ポリマーは、他の樹脂と混錬してポリマーアロイとすることが困難である。そこで、結晶融解温度が250℃以下の低融点液晶ポリマーと他の樹脂とをポリマーアロイ化した樹脂組成物が市販されている(例えば特許文献1,2を参照)。
また、特許文献3には、ホットメルト接着性樹脂積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-214677号公報
【特許文献2】特開2022-83103号公報
【特許文献3】特開2019-137853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結晶融解温度が250℃以下の低融点液晶ポリマーを微分散させた樹脂組成物は、液晶ポリマーの耐加水分解性が低くなることが影響し、多湿条件下で保管したり、使用したりすると、樹脂組成物の引張破壊応力が低くなるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、引張破壊応力の低下を抑制することが可能な樹脂組成物を用いたホットメルト接着性樹脂積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、樹脂を形成材料とする第1樹脂層と、前記第1樹脂層の両面にそれぞれ第2樹脂層を有するホットメルト接着性樹脂積層体であって、前記第1樹脂層は、液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂と、結晶融解温度が250℃以下である低融点液晶ポリマーと、を含有する樹脂組成物から形成され、前記第2樹脂層は、酸変性ポリエチレン樹脂またはイミン変性ポリオレフィン樹脂から形成されている。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1樹脂層は基材層であり、前記第2樹脂層は接着層である。
第3の態様は、第1の態様において、前記第2樹脂層の前記第1樹脂層とは反対の側に、それぞれ第3樹脂層を有し、前記第3樹脂層は、酸変性ポリプロピレン樹脂から形成され、前記第1樹脂層は基材層であり、前記第2樹脂層は中間層であり、前記第3樹脂層は接着層である。
【0008】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記第1樹脂層の樹脂組成物は、さらに酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
第5の態様は、第4の態様において、前記第1樹脂層に含有される前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸変性ポリエチレン樹脂である。
第6の態様は、第4又は第5の態様において、前記第1樹脂層は、前記樹脂組成物の全体を100重量部として、前記液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂が40~60重量部、前記低融点液晶ポリマーが20~40重量部、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が5~30重量部の割合である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、引張破壊応力の低下を抑制することが可能な樹脂組成物を用いたホットメルト接着性樹脂積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体を例示する断面図である。
【
図2】第2実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0012】
実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体は、樹脂を形成材料とする第1樹脂層1と、前記基材層の両面にそれぞれ第2樹脂層2を有する。
【0013】
図1に示すホットメルト接着性樹脂積層体10では、第1樹脂層1は基材層11であり、第2樹脂層2は接着層12である。ホットメルト接着性樹脂積層体10の層構成は、接着層12/基材層11/接着層12の3層からなる。
【0014】
図2に示すホットメルト接着性樹脂積層体20では、第2樹脂層2の第1樹脂層1とは反対の側に、それぞれ第3樹脂層3を有する。第1樹脂層1は基材層21であり、第2樹脂層2は中間層22であり、第3樹脂層3は接着層23である。ホットメルト接着性樹脂積層体20の層構成は、接着層23/中間層22/基材層21/中間層22/接着層23の5層からなる。
【0015】
第1樹脂層1は、液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂と、結晶融解温度が250℃以下である低融点液晶ポリマーと、を含有する樹脂組成物から形成されている。第1樹脂層1の樹脂組成物は、さらに酸変性ポリオレフィン樹脂を含有してもよい。
【0016】
第1樹脂層1は、液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂を含有する。これらのポリエステル樹脂は、非液晶性のポリエステル樹脂であるが、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との縮合重合で得られる線状ポリエステル樹脂であってもよい。
【0017】
前記ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール、2,2-ジアルキル-1,3-プロパンジオール等の分枝状ジオール;シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオール等が挙げられる。分枝状ジオールの主鎖から分岐する側鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0018】
前記ポリエステル樹脂の具体例としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、及びこれらのポリエステルにおけるジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の一部を他のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分で変性した変性ポリエステルが挙げられる。
【0019】
第1樹脂層1は、結晶融解温度が250℃以下である低融点液晶ポリマーを含有する。液晶ポリマーは、溶融時に液晶性を示す熱可塑性樹脂であるが、ポリエステル樹脂からなる液晶ポリマーが好ましい。液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂は、溶融時に液晶性を示さない熱可塑性樹脂であってもよい。
【0020】
前記低融点液晶ポリマーは、1種類の低融点液晶ポリマーのみから構成されていてもよく、複数種類の低融点液晶ポリマーの混合物であってもよい。
前記低融点液晶ポリマーは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる異方性溶融層を形成する液晶ポリエステル又は液晶ポリエステルアミドであってよく、液晶ポリエステルが好ましい。
【0021】
前記低融点液晶ポリマーの結晶融解温度は、示差走査熱量計を用いて測定した結晶融解ピークの温度である。示差走査熱量計を用いた測定方法は、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリマーの結晶融解温度とする。前記低融点液晶ポリマーの結晶融解温度は、250℃以下であり、160℃~240℃であることが好ましく、170℃~230℃であることがより好ましく、200℃~230℃であることが特に好ましい。
【0022】
前記低融点液晶ポリマーを構成する繰り返し単位としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸単位(-O-Ar-CO-)、芳香族ジカルボン酸単位(-CO-Ar-CO-)、芳香族ジオール単位(-O-Ar-O-)、芳香族アミノカルボン酸単位(-NH-Ar-CO-)、芳香族ヒドロキシアミン単位(-O-Ar-NH-)、芳香族ジアミン単位(-NH-Ar-NH-)、脂肪族ジオール単位(-O-Ra-O-)および脂肪族ジカルボン酸単位(-O-Ra-O-)が挙げられる。ここで、-Ar-は芳香族基、-Ra-は脂肪族基を表す。これらの単位に含まれる-CO-基は、カルボン酸(-CO-OH)由来に限られず、アシル化物(-CO-O-COR)、エステル誘導体(-CO-OR)、酸ハロゲン化物(-CO-X)等に由来してもよい。また、-O-基および-NH-基は、それぞれヒドロキシ基(-OH)およびアミノ基(-NH2)由来に限られず、アシル化物(-O-CORおよび-NH-COR)等に由来してもよい。ここで、Rはアルキル基、アリール基等の有機基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
これらの液晶ポリマーを構成する繰り返し単位は、低融点液晶ポリマーとしてポリエステルが成立すれば、1種のみであってもよく、2種以上を組み合わせてもよいが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸単位を含むことが望ましい。前記低融点液晶ポリマーとしては、各繰り返し単位が全て芳香族基を含む全芳香族低融点液晶ポリマーが好ましい。
【0023】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸単位の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという観点から、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上に由来する単位が好ましい。
【0024】
前記芳香族ジカルボン酸単位の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,4’-ジカルボキシビフェニルおよび4,4”-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上に由来する単位が好ましく、テレフタル酸単位または2,6-ナフタレンジカルボン酸単位がより好ましい。
【0025】
前記芳香族ジオール単位の具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上に由来する単位が好ましく、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上に由来する単位がより好ましい。
【0026】
前記脂肪族ジオール単位の具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールに由来する単位が挙げられる。また、製造時には、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
【0027】
前記脂肪族ジカルボン酸単位の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸に由来する単位が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位が好ましい。
【0028】
第1樹脂層1は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、酸変性ポリエチレン樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。第1樹脂層1における酸変性ポリオレフィン樹脂の割合としては、例えば、5~30重量%が挙げられる。
【0029】
酸変性ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、酸変性されていないポリオレフィン樹脂を酸官能基含有モノマーとを溶融混練によりグラフト変性する方法、オレフィンモノマーと酸官能基含有モノマーとを共重合させる方法等が挙げられる。
前記酸官能基含有モノマーとしては、カルボン酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマーが挙げられる。カルボン酸基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)等のα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
前記酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸等の不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
【0030】
第1樹脂層1の樹脂組成物の製造方法としては、少なくともポリエステル樹脂、低融点液晶ポリマーを溶融混練等の方法でブレンドする方法が挙げられる。ポリエステル樹脂と低融点液晶ポリマーとのブレンドと同時または事後に、酸変性ポリオレフィン樹脂を加えてブレンドしてもよい。溶融混練の装置としては、特に限定されないが、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を使用することができる。さらに、ポリエステル樹脂、低融点液晶ポリマー、酸変性ポリオレフィンをドライブレンド後に押出機等で製膜することでブレンドすることもできる。
【0031】
第1樹脂層1の樹脂組成物は、ブレンドの結果、前記ポリエステル樹脂が海部を構成し、前記低融点液晶ポリマー及び前記酸変性ポリオレフィン樹脂がそれぞれ島部を構成する海島構造を形成してもよい。ポリエステル樹脂及び低融点液晶ポリマーに対して、酸変性ポリオレフィン樹脂が良好に分散されるので、熱成形時など高温多湿の環境であっても、ポリエステル樹脂及び低融点液晶ポリマーに含まれるエステル結合等の加水分解を抑制することができる。さらに、樹脂組成物の引張破壊応力の低下を抑制することができる。
【0032】
第1樹脂層1の樹脂組成物の全体を100重量部として、前記液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂が40~60重量部、前記低融点液晶ポリマーが20~40重量部、前記酸変性ポリオレフィン樹脂が5~30重量部の割合であることが好ましい。前記液晶ポリマー以外のポリエステル樹脂の割合が前記低融点液晶ポリマーの割合より多いことが好ましく、前記低融点液晶ポリマーの割合が前記酸変性ポリオレフィン樹脂の割合より多いことが好ましい。
【0033】
第1樹脂層1の樹脂組成物は、任意成分を含有してもよい。任意の樹脂成分としては、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。添加剤として、特に限定されないが、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光吸収剤などが挙げられる。
【0034】
第1樹脂層1の樹脂組成物は、結晶融解温度が250℃を超える高融点液晶ポリマーを含有しない組成であってもよい。さらに、第1樹脂層1の樹脂組成物は、融解温度(融点)が250℃を超える樹脂成分を含有しない組成であってもよい。第1樹脂層1の厚さとしては、特に限定されないが、60~120μmが挙げられる。
【0035】
第2樹脂層2は、酸変性ポリエチレン樹脂またはイミン変性ポリオレフィン樹脂から形成されている。
第2樹脂層2の酸変性ポリエチレン樹脂としては、酸変性されていないポリエチレン樹脂を酸官能基含有モノマーとを溶融混練によりグラフト変性したグラフト重合体、エチレンモノマーと酸官能基含有モノマーとを共重合させた共重合体等が挙げられる。前記酸官能基含有モノマーとしては、前記カルボン酸基含有モノマー、前記酸無水物基含有モノマーが挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。
第2樹脂層2のイミン変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をイミン化合物で変性した高分子化合物が挙げられる。
【0036】
第2樹脂層2が接着層12である場合は、ホットメルト接着性樹脂積層体10の被着体に対して、良好な接着性を得ることができる。接着層12の厚さとしては、特に限定されないが、10~40μmが挙げられる。
【0037】
第2樹脂層2が中間層22である場合は、基材層21と接着層23との間で接着力(層間剥離強度)を向上させることができる。中間層22の厚さとしては、特に限定されないが、1~20μmが挙げられる。中間層22に含まれる酸変性ポリエチレン樹脂が、基材層21に含まれる酸変性ポリエチレン樹脂と同一グレードでも異なるグレードでもよい。
【0038】
第2樹脂層2の樹脂組成物は、任意成分を含有してもよい。任意の樹脂成分としては、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。添加剤として、特に限定されないが、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光吸収剤などが挙げられる。
【0039】
第3樹脂層3は、酸変性ポリプロピレン樹脂等の接着性ポリプロピレン樹脂から形成されている。前記酸変性ポリプロピレン樹脂としては、酸変性されていないポリプロピレン樹脂を酸官能基含有モノマーとを溶融混練によりグラフト変性したグラフト重合体、プロピレンモノマーと酸官能基含有モノマーとを共重合させた共重合体等が挙げられる。前記酸官能基含有モノマーとしては、前記カルボン酸基含有モノマー、前記酸無水物基含有モノマーが挙げられる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。
【0040】
第3樹脂層3は接着層23であり、ホットメルト接着性樹脂積層体20の被着体に対して、良好な接着性を得ることができる。接着層23の厚さとしては、特に限定されないが、10~40μmが挙げられる。
【0041】
第3樹脂層3の樹脂組成物は、任意成分を含有してもよい。任意の樹脂成分としては、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。添加剤として、特に限定されないが、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光吸収剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等を単独又は混合して用いることができる。
特に最外層となる樹脂層に酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0042】
実施形態のホットメルト接着性樹脂積層体10,20は、各種の電気装置、電子機器等における接着材料、封止材料等として用いることができる。用途としては、特に限定されないが、太陽電池、燃料電池、電気分解装置、電気化学装置等が挙げられる。
【実施例0043】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0044】
<基材層>
ポリエステル樹脂及び低融点液晶ポリマーのポリマーアロイと、酸変性ポリオレフィン樹脂とを溶融混練し、得られた樹脂組成物を厚さ90μmのフィルム状に成形し、基材層(第1樹脂層)を得た。
【0045】
ポリエステル樹脂及び低融点液晶ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)と液晶ポリマー(LCP)が60:40の重量比でブレンドされたポリマーアロイ(商品名:TECROS(登録商標)T-440HS、上野製薬株式会社製、表では「PET/LCP」)を用いた。このポリマーアロイに含まれる液晶ポリマーは、結晶融解温度が220℃の低融点液晶ポリマーである。
【0046】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販の酸変性ポリエチレン(商品名:アドマー(登録商標)SF728、三井化学株式会社製、表では「APE」)を用いた。No.1ではPET/LCPのみ(APEなし)で用い、No.2ではPET/LCPとAPEを重量比90:10、No.3ではPET/LCPとAPEを重量比80:20の割合とした。
【0047】
引張破壊応力の測定は、得られた基材層のフィルムを5号形のダンベル状に打ち抜いて得られたサンプルを、チャック間距離:80mm、標線間:45mm、引張速度:300mm/minの条件で測定した。引張方向がMD方向(流れ方向)又はTD方向(幅方向)となるように、それぞれのサンプルを作製した後、サンプルの幅が狭い部分における断面積(幅6mm、厚さ0.09mm)から引張破壊応力を求めた。
【0048】
プレッシャークッカー試験(PCT)は、110℃、85%RH、96hの条件で実施した。同一のサンプルについてPCT前とPCT後の引張破壊応力を測定し、PCT前後における維持率を算出した。この維持率は、(PCT後の引張破壊応力)/(PCT前の引張破壊応力)×100(%)で求められる。引張破壊応力の測定結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1に示すように、酸変性ポリオレフィン樹脂を配合することにより、PCT後に引張破壊応力の低下を抑制できることが確認された。
【0051】
<ホットメルト接着性樹脂積層体>
接着層/中間層/基材層/中間層/接着層の5層からなるホットメルト接着性樹脂積層体を作製した。中間層の厚さは5μm、接着層の厚さは25μmとした。
【0052】
中間層としては、基材層に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂と同一グレードのAPEを用いた。
【0053】
接着層としては、2種類の酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名:アドマー(登録商標)QE060、三井化学株式会社製、表では「APP1」)及び(商品名:アドマー(登録商標)QF575、三井化学株式会社製、表では「APP2」)と酸化防止剤(フェノール系とホスファイト系とチオエーテル系の混合物)を重量比55:40:5の割合でブレンドして接着層の樹脂分に対して3500ppm添加した樹脂組成物を用いた。
【0054】
N=3の平均(3回測定した測定値の平均)で、ホットメルト接着性樹脂積層体の層間剥離強度を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
表2に示すように、No.2のサンプルが最も層間剥離強度が高くなった。