(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008978
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】礫材の液状化対策構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20250109BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D3/10 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111651
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石川 明
(72)【発明者】
【氏名】眞野 英之
(72)【発明者】
【氏名】浅香 美治
【テーマコード(参考)】
2D043
2D046
【Fターム(参考)】
2D043DA07
2D043EA02
2D046DA11
(57)【要約】
【課題】礫材の噴出を抑制することができる礫材の液状化対策構造を提供する。
【解決手段】液状化対策構造10は、礫材22が袋体21に詰められて構成された下側礫層部2と、下側礫層部2の上方に配置された構造物の基礎部3と、基礎部3と隣り合って配置された上側礫層部4と、下側礫層部2と基礎部3との間にモルタルが充填された充填層部5と、を備え、充填層部5は、下側礫層部2における構造物の基礎部3側を向く側方には充填されていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
礫材が袋体に詰められて構成された下側礫層部と、
前記下側礫層部の上方に配置された構造物の基礎部と、
前記基礎部と隣り合って配置された上側礫層部と、
前記下側礫層部と前記基礎部との間にモルタルが充填された充填層部と、を備える液状化対策構造。
【請求項2】
前記充填層部は、前記下側礫層部における前記構造物の基礎部側を向く側方には充填されていない請求項1に記載の液状化対策構造。
【請求項3】
前記下側礫層部は、前記構造物の基礎部の下方から前記上側礫層部の下方にわたって配置されている請求項1または2に記載の液状化対策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、礫材の液状化対策構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、新設又は既存構造物の液状化被害を軽減する対策工法として、地表面付近に7号砕石等の透水性の高い礫材を敷設し、液状化時に地盤内に生じる水圧を地表に速やかに消散させることで噴砂や基礎の傾斜を抑える工法が提案されている(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の工法では、基礎がある程度の平面積を有している場合に、地震時に排出する地下水量が多くなり、上昇する地下水の流速で礫材が地表面に噴出してしまうことがある。基礎下に敷設した礫材が水の勢いに押されて地表面に噴出したため、結果として噴砂を抑えることができない。基礎の面積が広い場合には、地表付近まで上昇した地下水は基礎下で水平方向に広がる。このため、基礎が広いほど排水流量が多くなってしまう。基礎の荷重が大きい場合には、液状化時には地盤の支持力が失われ、基礎の荷重を水圧が一時的に支えるために水圧が高くなってしまう。基礎の設置深度が浅い場合には、土被り重量が小さいため、礫材が地表面に噴出しやすくなる。これらの場合には、特に礫材が地表面に噴出する現象が生じやすいため、何らかの方法で礫材の噴出を抑制することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、礫材の噴出を抑制することができる礫材の液状化対策構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る液状化対策構造は、礫材が袋体に詰められて構成された下側礫層部と、前記下側礫層部の上方に配置された構造物の基礎部と、前記基礎部と隣り合って配置された上側礫層部と、前記下側礫層部と前記基礎部との間にモルタルが充填された充填層部と、を備える。
【0007】
このように構成された液状化対策構造では、地震時に上向きの地下水上昇流が生じても、下側礫層部及び充填層部によって、礫材が構造物の基礎部と下側礫層部との間から地表面へ噴出することを抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係る液状化対策構造は、前記充填層部は、前記下側礫層部における前記構造物の基礎部側を向く側方には充填されていなくてもよい。
【0009】
このように構成された液状化対策構造では、充填層部は、下側礫層部における構造物の基礎部側を向く側方には充填されていない。よって、充填層部を大きく設ける必要がなく、施工性が良い。
【0010】
また、本発明に係る液状化対策構造は、前記下側礫層部は、前記構造物の基礎部の下方から前記上側礫層部の下方にわたって配置されていてもよい。
【0011】
このように構成された液状化対策構造では、下側礫層部は、構造物の基礎部の下方から上側礫層部の下方にわたって配置されている。よって、礫材の地表面へ噴出をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液状化対策構造によれば、礫材の噴出を抑制することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液状化対策構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る液状化対策構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る本発明の一実施形態に係る液状化対策構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る液状化対策構造10は、下側礫層部2と、構造物の基礎部(以下、単に「基礎部」と称する)3と、上側礫層部4と、充填層部5と、を備える。
【0015】
下側礫層部2は、複数の礫嚢20を有している。複数の礫嚢20は水平方向に並んで配置されるとともに、上下方向に積層されている。下側礫層部2は、原地盤Gよりも透水係数が大きい排水機能を有している。
【0016】
礫嚢20は、透水性を有する袋体21と、袋体21に圧縮された状態に詰められた礫材22と、を有する。礫嚢20は、例えば土嚢である。
【0017】
袋体21は、例えば、不織布、網、籠等が用いられている。礫材22には、例えば、砂利、砕石、人工透水性材料などが用いられている。
【0018】
基礎部3は、例えばコンクリート等で構成されている。上側礫層部4は、例えば礫材で構成されている。
【0019】
基礎部3及び上側礫層部4は、下側礫層部2の上方に配置されている。基礎部3と上側礫層部4とは、隣り合って配置されている。上側礫層部4は、基礎部3の外周に配置されている。上側礫層部4は、例えば、平面視で基礎部3の外側に環状に配置されている。
【0020】
下側礫層部2は、基礎部3の下方から上側礫層部4の下方にわたって配置されている。
図1では、下側礫層部2のうち、基礎部3の下方に配置される部分(「礫層基礎直下部」とする)2Aの高さよりも、上側礫層部4の下方に配置される部分(「礫層外周部」とする)2Bの高さの方が高くなっているが、礫層基礎直下部2Aと礫層外周部2Bとが同じ高さであったり、礫層基礎直下部2Aよりも礫層外周部2Bの方が低かったりしもよい。また、下側礫層部2は、上側礫層部4の下方には配置されず、基礎部3の下方にのみ配置されていてもよい。
【0021】
礫層基礎直下部2Aの上面2a及び構造物の中央側を向く側面2bには、ビニールシート等の不透水性のシート24が覆われている。シート24のうち、礫層基礎直下部2Aの上側に配置される部分を、シート上部24aとする。シート24のうち、礫層外周部2Bの側方に配置される部分を、シート側部24bとする。
【0022】
充填層部5は、シート24と基礎部3における下側礫層部2の上方の部分との間の隙間配置されている。充填層部5は、例えば流動性の高い無収縮モルタルで構成されている。充填層部5は、シート24と基礎部3における下側礫層部2の上方の部分との間の隙間に充填されて硬化することで、隙間を閉塞している。充填層部5は、下側礫層部2における基礎部3側を向く側方、つまりシート側部24bの側方には配置されていない。充填層部5は、礫層外周部2Bと上側礫層部4との間には、配置されていない。
【0023】
基礎部3の下側において下側礫層部2が配置されていない部分には、水みちが形成される。
【0024】
このように構成された液状化対策構造10では、地震時に上向きの地下水上昇流が生じても、下側礫層部2及び充填層部5によって、礫材が基礎部3と下側礫層部2との間から地表面へ噴出することを抑制することができる。
【0025】
また、充填層部5は、下側礫層部2における基礎部3側を向く側方には充填されていない。よって、充填層部5を大きく設ける必要がなく、施工性が良い。
【0026】
また、下側礫層部2は、基礎部3の下方から上側礫層部4の下方にわたって配置されている。よって、礫材の地表面へ噴出をより一層抑制することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。また、これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0028】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る液状化対策構造10は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「11.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0029】
2 下側礫層部
3 構造物の基礎部
4 上側礫層部
5 充填層部
10 液状化対策構造
21 袋体
22 礫材