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特開2025-8989電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システムおよび画像形成方法
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  • 特開-電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システムおよび画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008989
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システムおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20250109BHJP
   G03G 9/10 20060101ALI20250109BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20250109BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20250109BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G9/10
G03G5/05 101
G03G5/05 104A
G03G5/147 503
G03G15/08 235
G03G15/00 651
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111666
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 和裕
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真優子
【テーマコード(参考)】
2H035
2H068
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H035CA07
2H035CB01
2H035CB03
2H068AA03
2H068AA04
2H068AA08
2H068AA13
2H068AA14
2H068AA28
2H068AA59
2H068BB07
2H068BB08
2H068BB59
2H068CA06
2H068CA37
2H068FC08
2H068FC20
2H077AD02
2H077AD06
2H077BA03
2H077EA01
2H500AB00
2H500EA52E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】軸方向の長さを大きくした感光体であって、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いたときの画像汚れを抑制でき、かつ感光体表面の偏摩耗を抑制できる電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システム、および画像形成方法を提供すること。
【解決手段】導電体支持体と、感光層と、がこの順番に積層されて含まれる電子写真感光体であって、前記電子写真感光体の軸方向の長さは400mm以上であり、前記軸方向における一端から他端の間で、前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度は変化しており、前記軸方向における前記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、10N/mm以上100N/mm以下である、電子写真感光体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、
感光層と、
がこの順番に積層されて含まれる電子写真感光体であって、
前記電子写真感光体の軸方向の長さは400mm以上であり、
前記軸方向における一端から他端の間で、前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度マルテンス硬度は変化しており、
前記軸方向における前記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、10N/mm以上100N/mm以下である、
電子写真感光体。
【請求項2】
前記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、15N/mm以上50N/mm以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度は、前記軸方向に沿って前記一端から前記他端にかけて傾斜変化している、
請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記軸方向における前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度の平均値は、150N/mm以上350N/mm以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記軸方向における前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度の平均値は、170N/mm以上300N/mm以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記電子写真感光体は、前記感光層の表面側に配置された、前記感光層を保護するための保護層を有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記保護層は、金属酸化物粒子を含む、請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記保護層は、重合性化合物を含む重合性組成物の硬化物である、請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記重合性化合物は、活性線により重合する重合性化合物である、請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体にトナー画像を形成するための現像装置と、を有する、
画像形成装置。
【請求項11】
前記電子写真感光体は、周速280mm/sec以上700mm/sec以下で回転する、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記現像装置は、トナーとキャリアとを含む現像剤を収容するための収容部と、前記収容された前記現像剤を搬送して前記トナーを前記電子写真感光体に供給するための現像ローラと、を有し、
前記現像装置に含まれる前記現像ローラの本数は2本以上である、
請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記現像ローラは、前記電子写真感光体の回転とは逆方向に回転する、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体にトナー画像を形成するための現像装置と、
前記現像装置に供給された、トナーおよびキャリアを含む現像剤と、
を有する、
画像形成システム。
【請求項15】
前記キャリアの体積平均粒径は20μm以上70μm以下である、請求項14に記載の画像形成システム。
【請求項16】
トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を用いて行う画像形成方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真感光体の表面を帯電させる工程と、
前記二成分現像剤のうち前記トナーを、前記帯電した電子写真感光体の表面に付与する工程と、
前記付与されたトナーを記録媒体に転写する工程と、
を有する、
画像形成方法。
【請求項17】
前記キャリアの体積平均粒径は、20μm以上70μm以下である、請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記キャリアの体積平均粒径は、25μm以上45μm以下である、
請求項17に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、形成しようとする画像に対応した静電潜像を形成するために電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する)が使用されている。電子写真方式の画像形成装置では、まず、表面を帯電させた感光体に光を照射して静電潜像を形成する。次いで、現像装置(現像ローラ)から感光体にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する。最後に、トナー画像を紙などの記録媒体に転写させて定着させる。
【0003】
上述のような感光体として、例えば、特許文献1には、導電性基体と、下引層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、無機保護層とがこの順に積層された電子写真感光体であって、上記下引層、電荷輸送層および無機保護層の膜弾性率が、それぞれ5GPa以上である電子写真感光体が開示されている。特許文献1によれば、上記電子写真感光体により、最表面(無機保護層)の、キャリア等の硬質物による打痕の発生を抑制できたとされている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、導電性基体と、有機感光層と、無機保護層とがこの順で積層された電子写真感光体を有し、外添剤遊離率が2質量%以下であるトナーを用いる画像形成装置が開示されている。特許文献2によれば、上記画像形成装置により、キャリア飛散による感光体表面における凹部形成を抑制できたとされている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、導電性基体と、感光層と、特定の化合物と特定の電荷輸送性材料とを含む表面保護層とがこの順で積層された電子写真感光体であって、感光体表面の軸方向中央部の硬度が、軸方向両端部よりも低い電子写真感光体が開示されている。特許文献3によれば、上記電子写真感光体により、表面保護層の偏摩耗を抑制できたとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-008688号公報
【特許文献2】特開2017-062369号公報
【特許文献3】特開2012-093382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3のように、種々の感光体が知られている。
【0008】
感光体では、表面の偏摩耗を抑制することが要求される。偏摩耗が生じると、摩耗が多く生じた部位において、クリーニングブレードと感光体との隙間が大きくなり、トナーが上記隙間をすり抜けて、画像汚れが発生しやすくなるためである。
【0009】
ところで、電子写真方式の画像形成装置では、様々な大きさの記録媒体に対して画像を形成することが要求されている。中でも、より大きいサイズ(例えば、A3サイズやB2サイズ)の記録媒体に対して高品質の画像を形成することへの要望が高まっている。
【0010】
そこで、本発明者らは、より大きいサイズの記録媒体に画像を形成するために、感光体のサイズ(具体的には、感光体の軸方向の長さ)を大きくすることを検討した。また、本発明者らは、トナーへの帯電付与を容易にする観点から、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いることを試みた。しかしながら、このとき、軸方向の長さを長くした感光体に対して、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて画像形成を行うと、感光体表面の偏摩耗は抑制されたものの、特定の位置で画像汚れが生じる問題が生じた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軸方向の長さを大きくした感光体であって、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いたときの画像汚れを抑制でき、かつ感光体表面の偏摩耗を抑制できる電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システム、および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[1]~[9]の電子写真感光体に関する。
[1]導電性支持体と、
感光層と、
がこの順番に積層されて含まれる電子写真感光体であって、
前記電子写真感光体の軸方向の長さは400mm以上であり、
前記軸方向における一端から他端の間で、前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度は変化しており、
前記軸方向における前記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、10N/mm以上100N/mm以下である、
電子写真感光体。
[2]前記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、15N/mm以上50N/mm以下である、[1]に記載の電子写真感光体。
[3]前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度は、前記軸方向に沿って前記一端から前記他端にかけて傾斜変化している、
[1]または[2]に記載の電子写真感光体。
[4]前記軸方向における前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度の平均値は、150N/mm以上350N/mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[5]前記軸方向における前記電子写真感光体の表面のマルテンス硬度の平均値は、170N/mm以上300N/mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[6]前記電子写真感光体は、前記感光層の表面側に配置された、前記感光層を保護するための保護層を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[7]前記保護層は、金属酸化物粒子を含む、[6]に記載の電子写真感光体。
[8]前記保護層は、重合性化合物を含む重合性組成物の硬化物である、[7]に記載の電子写真感光体。
[9]前記重合性化合物は、活性線により重合する重合性化合物である、[8]に記載の電子写真感光体。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[10]~[13]の画像形成装置に関する。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体にトナー画像を形成するための現像装置と、を有する、
画像形成装置。
[11]前記電子写真感光体は、周速280mm/sec以上700mm/sec以下で回転する、[10]に記載の画像形成装置。
[12]前記現像装置は、トナーとキャリアとを含む現像剤を収容するための収容部と、前記収容された前記現像剤を搬送して前記トナーを前記電子写真感光体に供給するための現像ローラと、を有し、
前記現像装置に含まれる前記現像ローラの本数は2本以上である、[10]または[11]に記載の画像形成装置。
[13]前記現像ローラは、前記電子写真感光体の回転とは逆方向に回転する、請求項[12]に記載の画像形成装置。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[14]および[15]の画像形成システムに関する。
[14][1]~[9]のいずれかに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体にトナー画像を形成するための現像装置と、
前記現像装置に供給された、トナーおよびキャリアを含む現像剤と、
を有する、
画像形成システム。
[15]前記キャリアの体積平均粒径は20μm以上70μm以下である、[14]に記載の画像形成システム。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下記[16]~[18]の画像形成方法に関する。
[16]トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を用いて行う画像形成方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真感光体の表面を帯電させる工程と、
前記二成分現像剤のうち前記トナーを、前記帯電した電子写真感光体の表面に付与する工程と、
前記付与されたトナーを記録媒体に転写する工程と、
を有する、
画像形成方法。
[17]前記キャリアの体積平均粒径は、20μm以上70μm以下である、[16]に記載の画像形成方法。
[18]前記キャリアの体積平均粒径は、25μm以上45μm以下である、[17]に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軸方向の長さを大きくした感光体であって、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いたときの画像汚れを抑制でき、かつ感光体表面の偏摩耗を抑制できる電子写真感光体、画像形成装置、画像形成システム、および画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に関する電子写真感光体の例示的な層構成を示す部分断面図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に関する画像形成装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施例における、感光体1~4の軸方向におけるマルテンス硬度の変化を表したグラフである。
図4図4は、本発明の実施例における、感光体5~8の軸方向におけるマルテンス硬度の変化を表したグラフである。
図5図5は、本発明の実施例における、感光体9~12の軸方向におけるマルテンス硬度の変化を表したグラフである。
図6図6は、本発明の実施例における、感光体13~15の軸方向におけるマルテンス硬度の変化を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.電子写真感光体
図1は、本発明の一実施形態における電子写真感光体(以下、単に「感光体」と称する)100の例示的な層構成を示す部分断面図である。本実施形態における感光体100は、この順に積層された、導電性支持体110、中間層120、電荷発生層130、電荷輸送層140、および保護層150を有する。なお、中間層120および保護層150は、任意の構成要素である。また、本明細書では、電荷発生層130および電荷輸送層140を合わせて感光層とする。
【0019】
本実施形態における感光体100は、軸方向の長さが400mm以上であり、上記軸方向における一端から他端の間で、感光体100の表面のマルテンス硬度は変化しており、上記軸方向における上記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、10N/mm以上100N/mm以下である。
【0020】
上述のように、感光体の軸方向の長さを長くすることで、大判印刷に対応できる一方で、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いたとき、画像汚れが生じてしまった。その原因は以下のように考えられる。
【0021】
画像形成装置内の現像装置には、現像剤を収容する収容部と、上記収容された現像剤を搬送し、トナーを感光体に供給するための現像ローラとが含まれる。トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いるとき、上記収容部にはトナーが随時補給され、収容部内のキャリアとトナーとが撹拌されることで、これらが帯電する。
【0022】
このとき、感光体の軸方向の長さを長くしたことに伴い、上記現像装置(収容部および現像ローラ)も、感光体と同程度に軸方向の長さを長くする必要があった。これにより、上記収容部における、トナー補給位置から離れた領域では、トナーが十分に行き渡らず、トナー補給位置に近い領域に比べて、トナーの量が顕著に少なくなったと考えられる。これに対して、キャリアは、トナーが感光体に付与された後に感光体から収容部内に戻されるため、上記軸方向において収容部内のキャリア量は一定になりやすい。そのため、上記トナー補給位置から離れた領域では、トナー補給位置に近い領域に比べて、トナー量に対するキャリアの量が過多になると考えられる。
【0023】
この状態で、現像ローラによって現像剤が搬送されると、上記キャリアの量が過多となる領域に対応する、現像ローラ上の領域においても、トナーの量に対してキャリアの量が過多となる。キャリア量がトナー量に対して過多となると、現像ローラから感光体にトナーを供給する際に、キャリアが感光体表面に接触しやすくなり、接触した際は感光体表面との接触時間が長くなると考えられる。そして、現像ローラで搬送されているキャリアの中で、より粒径が小さいキャリアおよびより磁性が低いキャリアは、現像ローラに保持されにくく、離脱しやすいと考えられる。これらのことから、現像ローラ上の当該領域では、現像ローラから感光体にトナーを供給する際に、現像ローラ離脱されやすいキャリアが現像ローラから離脱(飛散)して、当該領域に対応する感光体表面に付着しやすくなったと考えられる。
【0024】
キャリアが感光体に付着すると、トナーの転写時にキャリアが感光体と擦れたり、クリーニングブレードと感光体との隙間にキャリアが入り込んだりして、感光体の表面に傷(打痕)が生じてしまう。そして、上記傷が生じた感光体に新たなトナーが付与されると、上記傷にトナーが入り込むと考えられる。この状態で画像を形成すると、特に非画像形成部において、上記傷に入り込んだトナーにより画像汚れが生じやすいと考えられる。
【0025】
これに対して、本発明者らは、軸方向の長さが400mm以上の感光体100において、上記軸方向における一端から他端の間で、感光体表面のマルテンス硬度を変化させることで、上述の問題を解決できることを見出した。
【0026】
軸方向において感光体表面のマルテンス硬度を変化させることで、感光体表面において、より硬度の高い領域を形成できる。当該領域は、他の領域よりも耐傷性が高いため、感光体100の、キャリアが付着しやすい領域を、上記より硬度の高い領域とすることで、感光体表面において、キャリアの付着に由来する傷を生じにくくすることができる。その結果、トナーの上記傷への入り込みを生じにくくして、画像汚れを抑制できる。
【0027】
一方で、上記軸方向における上記マルテンス硬度の変化量(最大値と最小値との差)が大きくなりすぎると、感光体表面の偏摩耗が生じやすくなる
【0028】
そこで本発明者らが検討した結果、上記軸方向における上記マルテンス硬度の最大値と最小値との差を10N/mm以上100N/mm以下とすることで、上記画像汚れを抑制しつつ、上記偏摩耗を抑制できることがわかった。
【0029】
なお、特許文献1および特許文献2では、キャリアによる感光体表面の傷の発生を抑制しているが、本発明者らによれば、これらの感光体の軸方向の長さを長くしたとき、画像汚れを十分には抑制できなかった。
【0030】
以下、上記知見に基づき、本実施形態に係る電子写真感光体100を説明する。
【0031】
1-1.導電性支持体
導電性支持体110は、中間層120、電荷発生層130、電荷輸送層140、および保護層150を支持し、かつ少なくとも中間層120(感光体100が中間層120を含まないときは、電荷発生層130)と接する表面が導電性を有する部材である。
【0032】
導電性支持体110の例には、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の層を有するプラスチックフィルム、導電性物質または導電性物質およびバインダー樹脂からなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材、プラスチックフィルム、および紙などが含まれる。上記金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれる。上記導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウムおよび酸化錫が含まれる。上記金属は、導電性支持体110の加工性および堅牢性を高め、かつ、導電性支持体110をより軽量とする観点からは、アルミニウムであることが好ましい。また、導電性支持体110の周壁の厚さは、例えば、0.05mm以上0.15mm以下とすることができる。
【0033】
1-2.中間層
中間層120は、導電性支持体110と電荷発生層130との間に配置され、電荷発生層130から導電性支持体110側への電荷(典型的には電子)の除去機能、導電性支持体110から電荷発生層130への電荷(典型的には正孔)のリークの抑制機能、および接着機能などを有する層である。中間層120は、中間層用のバインダー樹脂および導電性粒子を含む。
【0034】
上記中間層用のバインダー樹脂の例には、ポリアミド樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂およびゼラチンが含まれる。上記中間層用のバインダー樹脂は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0035】
上記導電性粒子の粒子本体の例は、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウムおよび酸化ビスマスなどを含む金属酸化物粒子、錫をドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化錫、ならびに酸化ジルコニウムなどの導電性物質の粒子が含まれる。
【0036】
中間層120における導電性支持体側への電荷の除去性をより高める観点からは、上記導電性物質は、n型半導体であることが好ましい。当該n型半導体としての上記導電性物質の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、および酸化錫が含まれる。また、中間層120の導電性を高めるとともに、中間層120への導電性粒子の分散性を高める観点からは、上記導電性物質は、酸化チタン、酸化錫および酸化亜鉛であることが好ましく、酸化チタンであることがより好ましい。酸化チタンの結晶型は、アナタース型であってもよいし、ルチル型であってもよいし、アモルファス型であってもよい。酸化チタンの結晶型は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0037】
上記導電性粒子の含有量は、例えば、100体積部の上記中間層中のバインダー樹脂に対して、50体積部以上200体積部以下であることが好ましく、80体積部以上120体積部以下であることがより好ましい。
【0038】
中間層120の膜厚は、0.1μm以上15.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上10.0μm以下であることがより好ましい。
【0039】
1-3.電荷発生層
電荷発生層130は、たとえば、電荷発生層用のバインダー樹脂と、上記電荷発生層用のバインダー樹脂に分散された電荷発生物質とを有する。
【0040】
上記電荷発生層用のバインダー樹脂の例には、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂のうち2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂など)、ならびにポリ-ビニルカルバゾール樹脂などが含まれる。上記電荷発生層用のバインダー樹脂は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0041】
電荷発生層用の電荷発生物質の例には、スーダンレッドおよびダイアンブルーなどを含むアゾ原料、ピレンキノンおよびアントアントロンなどを含むキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴおよびチオインジゴなどを含むインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレン多環キノン化合物、ならびにフタロシアニン顔料が含まれる。上記電荷発生層用の電荷発生物質は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0042】
上記フタロシアニン顔料は、中心金属を有していてもよい。上記中心金属の例には、Ti、Fe、V、Si、Pb、Al、ZnおよびMgなどが含まれる。上記中心金属は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。上記電荷発生層の感度を高める観点から、上記フタロシアニン顔料は、上記中心金属としてTiを有するチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。また、同様の観点から、上記チタニルフタロシアニン化合物は、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2)27.3°に最大ピークを有し、7.4°、9.7°および24.2°に明瞭な回折ピークを有するY型チタニルフタロシアニン化合物、およびブラッグ角8.3°、24.7°、25.1°および26.5°に明瞭な回折ピークを有する2,3-ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンなどが好ましい。
【0043】
上記電荷発生物質の含有量は、100質量部の上記電荷発生層用のバインダー樹脂に対して20質量部以上600質量部以下であることが好ましく、50質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。電荷発生物質の含有量が上記範囲内である電荷発生層は、電荷発生物質の分散性が高まるため、電荷発生層の電気抵抗が低減されやすく、上記感光体の使用に伴う残留電荷の増加が、より生じにくくなる。
【0044】
電荷発生層130の厚さは、例えば0.01μm以上5μm以下であればよく、0.05μm以上3μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
1-4.電荷輸送層
電荷輸送層140は、例えば、電荷輸送層用のバインダー樹脂と、上記電荷輸送層用のバインダー樹脂に分散された電荷輸送性化合物とを有する。感光体150が、後述する保護層150を有さないとき、電荷輸送層140は感光体100の表面を構成する。
【0046】
電荷輸送層用のバインダー樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。電荷輸送層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブラチラ-ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、およびメラミン樹脂などが含まれる。電荷輸送層用のバインダー樹脂は、上記電荷輸送層用のバインダー樹脂の繰り返し単位構造を2種類以上含む共重合体であってもよい。これらのうち、電荷輸送層用のバインダー樹脂は、吸水率が低く、かつ機械的強度の強いポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0047】
上記電荷輸送性化合物の例には、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物およびブタジエン化合物が含まれる。上記電荷輸送性化合物は、下記化合物A、およびN-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジンであることが好ましく、化合物Aであることが好ましい。上記電荷輸送性化合物は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0048】
【化1】
【0049】
上記電荷輸送性化合物の含有量は、100質量部の上記電荷輸送層用のバインダー樹脂に対して10質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
【0050】
電荷輸送層140は、単層であってもよいし、複数層で構成されていてもよい。複数層で構成される場合、上記電荷輸送性化合物が分散されている、上記電荷輸送層用のバインダー樹脂の溶液を、既に作製された電荷輸送層上に塗布することで、複数層の電荷輸送層140を作製できる。電荷輸送層140が複数層で構成される場合、電荷輸送層140の層数は、2層以上4層以下であることが好ましく、2層以上3層以下であることがより好ましい。
【0051】
電荷輸送層140は、電荷輸送層用の金属酸化物粒子を含んでもよい。これにより、電荷輸送層140の強度を高めることができる。特に、電荷輸送層140が感光体100の表面を構成するとき、金属酸化物粒子により、感光体100の表面にキャリアによる傷が生じることをより抑制して、トナーすり抜けによる画像汚れをより抑制できる。上記金属酸化物粒子の材料である金属酸化物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、錫がドープされた酸化インジウム、アンチモンがドープされた酸化錫および酸化ジルコニウムが含まれる。これらのうち、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化スズが好ましい。などが含まれる。
【0052】
電荷輸送層用の金属酸化物粒子の含有量は、100体積部の電荷輸送層140のバインダー樹脂に対して5体積部以上100体積部以下であることが好ましく、15体積部以上30体積部以下であることがより好ましい。
【0053】
電荷輸送層140の1層あたりの厚さは、例えば、5μm以上40μm以下とすることができる。感光体100の内部電場を強め、感光体100の使用に伴う残留電荷の増加を抑制する観点からは、電荷輸送層140の厚さは、10μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層140の厚さは、電荷輸送層140用のバインダー樹脂の種類、ならびに上記電荷輸送性化合物の種類および含有量に応じて適宜調整されうる。
【0054】
電荷輸送層140は、必要に応じて、酸化防止剤などの他の成分を含んでもよい。
【0055】
なお、電荷発生層130および電荷輸送層140は、単層の感光層として構成されていてもよい。このとき、上記感光層は、たとえば、感光層用のバインダー樹脂、上記電荷輸送性化合物および上記電荷発生物質を含む単層物により構成されうる。上記単層である感光層の厚さは、例えば、10μm以上50μm以下とすることができ、20μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0056】
上記単層である感光層を構成する上記感光層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂のうち二以上を含む共重合体樹脂(たとえば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリレート樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、およびスチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂などが含まれる。
【0057】
1-5.保護層
保護層150は、電荷発生層130および電荷輸送層140(感光層)を保護するための層である。保護層150は、電荷輸送層140(感光層)の表面側に配置される。このとき、保護層150は感光体100の表面を構成する。
【0058】
保護層150は、感光体100の表面を保護し、キャリアによる感光体の傷を生じにくくさせて耐傷性を向上させることができる。これにより、トナーのすり抜けの発生を低減させて画像汚れをより抑制できる。また、保護層150により、感光体100表面の偏摩耗をより抑制できる。
【0059】
保護層150は、例えば、保護層用のバインダー樹脂と、保護層用の電荷輸送性化合物とを含む。
【0060】
上記保護層用のバインダー樹脂の例には、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が含まれる。上記保護層用のバインダー樹脂は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0061】
保護層150(具体的には上記保護層用のバインダー樹脂)は、重合性化合物を含む重合性化合物を含む重合性組成物の硬化物であることが好ましい。これにより、感光体100表面の耐久性を高めて、感光体100表面にキャリアによる傷が生じることをより抑制できる。その結果、画像汚れをより抑制できる。また、このとき、保護層150により、感光体表面の偏摩耗を抑制できる。この場合、上記ラジカル重合性組成物は、後述する、表面層用の金属酸化物粒子および表面層用の電荷輸送物質をさらに含んでいてもよい。
【0062】
上記重合性化合物の例には、熱により重合する重合性化合物(熱重合性化合物)および活性線により重合する重合性化合物(活性線重合性化合物)などが含まれる。これらのうち、活性線重合性化合物が好ましい。
【0063】
上記熱重合性化合物の例には、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、ウレタン化合物、エステル化合物などが含まれる。
【0064】
上記活性線重合性化合物の例には、カチオン重合性化合物およびラジカル重合性化合物などが含まれる。これらのうち、ラジカル重合性化合物が好ましい。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性官能基を有する化合物である。上記ラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。
【0065】
上記ラジカル重合性化合物の例には、下記式M1~M15で表される化合物が含まれる。下記式M1~M15において、Rはアクリロイル基を示し、R′はメタクリロイル基を示す。
【0066】
【化2】
【化3】
【0067】
なお、活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0068】
感光体100の表面において、キャリアによる傷を発生しにくくする観点から、保護層150は保護層用の金属酸化物粒子を含むことが好ましい。保護層150が金属酸化物粒子を含むことで、保護層150の表面に凹凸を形成させて、表面粗さを増加させることができる。これにより、クリーニングブレードと感光体100(保護層150)の表面との接触面積を低減させて、クリーニングブレードの摩耗やビビりを抑制できる。その結果、トナーがクリーニングブレードと感光体100との間をすり抜けることをより抑制できる。また、保護層150が金属酸化物粒子を含むことで、保護層150の弾性変形率を向上させることができる。これにより、キャリアが感光体表面にめり込むことを抑制して、感光体表面への傷の形成をより抑制できる。これらの理由により、画像汚れをより抑制できる。また、保護層用の金属酸化物粒子により、感光体表面の偏摩耗を抑制できる。
【0069】
保護層用の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、錫がドープされた酸化インジウム、アンチモンがドープされた酸化錫および酸化ジルコニウムが含まれる。これらのうち、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化スズが好ましい。上記保護層用の金属酸化物粒子は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0070】
上記保護層用の金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、1nm以上300nm以下とすることができ、3nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0071】
上記導電性粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウエアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して数平均一次粒径とすることができる。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0072】
上記保護層用の金属酸化物粒子の含有量は、100体積部の上記保護層中のバインダー樹脂に対して5体積部以上100体積部以下であることが好ましく、15体積部以上30体積部以下であることがより好ましい。上記保護層用の金属酸化物粒子の含有量が上記範囲内であることで、保護層150の強度をより高めて、感光体100の表面における、キャリアによる傷の発生をより抑制できる。また、保護層150の画質安定性および成膜性を高めることができる。
【0073】
上記保護層用の金属酸化物粒子の分散性を高める観点から、上記保護層用の金属酸化物粒子は、表面処理剤により表面処理されていることが好ましい。上記表面処理剤の例には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、無機酸化物、フッ素変性シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤およびフッ素系グラフトポリマーが含まれる。上記表面処理剤は、一種であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0074】
上記保護層用の金属酸化物粒子の表面が上記表面処理剤により表面処理されている場合には、上記保護層中の金属酸化物粒子の表面には、上記表面処理剤の反応後の成分が、担持されている。上記保護層用の金属酸化物粒子の表面処理は、公知の方法により行われうる。
【0075】
上記保護層は、画像メモリの発生をより抑制する観点から、上記保護層用の電荷輸送性化合物を含むことが好ましい。上記保護層用の電荷輸送性化合物は、上記保護層に電荷輸送能を付与する化合物である。上記保護層用の電荷輸送性化合物は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。例えば、上記保護層が、上記ラジカル重合性組成物の紫外線による重合硬化膜により構成されている場合には、上記保護層用の電荷輸送性化合物は、紫外線に対して吸収が小さいか、または紫外線を吸収しない化合物であることが好ましい。上記保護層用の電荷輸送性化合物は、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物およびブタジエン化合物が含まれる。上記電荷輸送性化合物は、下記化合物A、およびN-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジンであることが好ましい。
【0076】
上記保護層用の電荷輸送性化合物の含有量は、例えば、100質量部の上記保護層用のバインダー樹脂に対して、20質量部以上100質量部以下であることが好ましく、40質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。上記保護層用の電荷輸送性化合物の含有量が20質量部以上であると、画像メモリの発生がより抑制されやすい。上記保護層用の電荷輸送性化合物の含有量が100質量部以下であると、保護層150の強度がより高まる。
【0077】
なお、保護層150は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分の例には、重合開始剤および酸化防止剤などが含まれる。
【0078】
重合開始剤は、加熱や活性線の照射により、上述の重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。例えば、上記重合性化合物が活性線重合性化合物としてのラジカル重合性化合物であるときは、重合開始剤はラジカル重合開始剤とすることができる。なお、電子線の照射などにより、上記重合性化合物を重合させることができるときは、重合開始剤は不要である。上記重合開始剤の例には、Ominirad 819(IGM.Resin.B.V.社製)などが含まれる。
【0079】
保護層150の厚さは、たとえば、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上6μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
1-6.感光体の物性
上述のように、感光体100の軸方向における一端から他端の間で、感光体100の表面のマルテンス硬度は変化している。上記軸方向における、上記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、10N/mm以上100N/mm以下であり、15N/mm以上75N/mm以下であることがより好ましく、15N/mm以上50N/mm以下であることがさらに好ましい。15N/mm以上であることで、キャリアによる感光体表面の傷の発生をより抑制して、画像汚れをより抑制できる。また、75N/mm以下であることで、感光体表面の偏摩耗をより抑制でき、50N/mm以下であることで上記偏摩耗をさらに抑制できる。
【0081】
上記マルテンス硬度は、超微小硬度計(H-100V、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて下記の測定条件で測定できる。
圧子形状:ビッカース圧子(a=136°)
測定環境:20℃、60%RH
最大試験荷重:3mN
荷重速度:3mN/20sec
最大荷重クリープ時間:5秒
除荷速度:3mN/20sec
【0082】
具体的には、感光体の周方向を均等角度に分割する3点において、感光体の軸方向の一端から30mmの位置から、他端から30mmの位置までの間を50mm間隔で、上記装置を用いてマルテンス硬度を測定する。このとき、上記3点のいずれにおいても、測定された硬度の中で最大値と最小値があることを確認することで、上記軸方向において上記マルテンス硬度が変化していることを判断できる。
【0083】
また、本実施形態において、上記マルテンス硬度の最大値と最小値との差は、上記3点のそれぞれにおいて、上記軸方向におけるマルテンス硬度の最大値と最小値の差を算出し、これらを平均することで求めることができる。
【0084】
上記マルテンス硬度は、上記軸方向の一端から他端にかけて、線形的または指数的に変化してもよいし、上記一端から他端の間で極大値をとるように変化してもよい。また、上記マルテンス硬度は、上記一端から任意の位置まで線形的または指数的に変化し、上記位置から上記他端まで一定値であってもよい。さらに、上記マルテンス硬度は、上記一端から任意の位置まで第1の値(一定値)であり、上記任意の位置から上記他端まで上記第1の値との差が10N/mm以上100N/mm以下である第2の値(一定値)であってもよい。
【0085】
上記マルテンス硬度は、上記軸方向の一端から他端にかけて傾斜変化していることが好ましい。本明細書において、「マルテンス硬度が傾斜変化する」とは、感光体100の軸方向の一端から他端にかけて、感光体100の表面のマルテンス硬度が連続的に増加または減少していることをいう。上記マルテンス硬度が傾斜変化していることは、上述の測定方法において、上記3点の軸方向における各測定点の硬度が、隣接する測定点の硬度と異なることを確認することで、判断できる。
【0086】
本実施形態では、感光体100が保護層150を含み、かつ保護層150が重合性化合物を含む重合性組成物の硬化物であるときは、上記軸方向において上記重合性化合物の重合度を変化させることで、上記軸方向におけるマルテンス硬度を変化させることができる。例えば、上記重合性化合物が活性線重合性化合物であるときは、活性線(例えば紫外線)の強度を上記軸方向において変化させながら、保護層塗布液に活性線を照射することで、マルテンス硬度を上記軸方向において変化させることができる。このとき、例えば、活性線が紫外線のとき、紫外線の強度(光量)を5mW/cm以上100mW/cm以下の範囲内で変化させることが好ましく、15mW/cm以上80mW/cm以下の範囲内で変化させることがより好ましく、25mW/cm以上50mW/cm以下の範囲内で変化させることがさらに好ましい。
【0087】
保護層150が重合性化合物を含まないとき、および感光体100が保護層150を含まないときは、感光体100の最表層(重合性化合物を含まない保護層150または電荷輸送層140)を形成するための塗布液の乾燥度を、上記軸方向において変化させることで、上記軸方向におけるマルテンス硬度を変化させることができる。例えば、赤外線乾燥機の赤外線出力を上記軸方向において変化させながら、上記塗布液を乾燥させることで、マルテンス硬度を変化させることができる。このとき、赤外線出力を0.1mW/cm以上10mW/cm以下の範囲内で変化させることが好ましく、1.0mW/cm以上9.0mW/cm以下の範囲内で変化させることがより好ましく、2.0mW/cm以上7.5mW/cm以下の範囲内で変化させることがさらに好ましい。
【0088】
上記軸方向における感光体100の表面のマルテンス硬度の平均値は、150N/mm以上350N/mm以下であることが好ましく、170N/mm以上300N/mm以下であることがより好ましく、200N/N/mm以上250N/mm以下であることがさらに好ましい。150N/mm以上であることで、感光体100の表面の耐傷性を高めて、キャリアによる傷の発生をより抑制でき、画像汚れをより抑制できる。また、このとき感光体表面全体の耐摩耗性を高められるので、感光体表面の偏摩耗をより抑制できる。また、350N/mm以下であることで、クリーニングブレードによって、感光体100の表面を適度に摩耗させてリフレッシュすることができる。これにより、感光体100の表面に吸着した水分や放電生成物を除去しやすくできるため、像流れを抑制できる。
【0089】
上記マルテンス硬度の平均値は、上述の測定方法における、全ての測定点の硬度を平均することで求めることができる。また、上記マルテンス硬度の平均値は、例えば、保護層150が活性線重合性化合物を含むときは、保護層塗布液に照射する活性線(例えば紫外線)の強度や活性線の照射時間を調整することで、調整可能である。また、例えば、赤外線乾燥機を用いて、感光体100の最表層を形成するための塗布液を乾燥させるときは、赤外線出力や照射時間を調整することで、上記マルテンス硬度の平均値を調整できる。
【0090】
本実施形態における感光体100の軸方向の長さは400mm以上である。
【0091】
1-7.感光体の製造方法
上記感光体100の製造方法は、例えば、導電性支持体110の表面に中間層120を形成する工程と、導電性支持体110(中間層120)上に感光層(電荷発生層130をおよび電荷輸送層140)を形成する工程と、感光層上に保護層150を形成する工程と、を有する。なお、中間層120を形成する工程、および保護層150を形成する工程は、任意の構成要素である。
【0092】
(中間層120の形成)
中間層120を形成する工程では、上述の導電性微粒子、中間層用のバインダー樹脂、および溶媒を含む中間層塗布液を塗布し、乾燥固化させて中間層120を形成する。中間層塗布液は、上記成分をサンドミルなどで分散処理することで作製されることが好ましい。
【0093】
中間層塗布液に用いられる溶媒の例には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノールなどが含まれる。
【0094】
中間層塗布液の塗布方法は特に制限されず、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、円形量規制型塗布法などであってもよい。
【0095】
(電荷発生層130の形成)
電荷発生層130の形成する工程では、電荷発生物質、電荷発生層用のバインダー樹脂、および溶媒を含む電荷発生層塗布液を導電性支持体110上(中間層を形成する工程を行う場合には中間層120上)に塗布し、乾燥固化させて電荷発生層130を形成する。電荷発生層塗布液は、上記成分をサンドミルなどで分散処理することで作製されることが好ましい。
【0096】
電荷発生層塗布液に用いられる溶媒の例には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが含まれる。
【0097】
電荷発生層塗布液の塗布方法は特に制限されず、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、円形量規制型塗布法などであってもよい。
【0098】
(電荷輸送層140の形成)
電荷輸送層140を形成する工程では、電荷輸送性化合物、電荷輸送層用のバインダー樹脂、および溶媒を含む電荷輸送層塗布液を電荷発生層130上に塗布し、乾燥固化させることで電荷輸送層140を形成する。電荷輸送層塗布液は、上記成分を公知の撹拌方法により撹拌することで作製されうる。
【0099】
電荷輸送層塗布液に用いられる溶媒の例には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランなどが含まれる。
【0100】
電荷輸送層塗布液の塗布方法は特に限定されず、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、円形量規制型塗布法などであってもよい。
【0101】
電荷輸送層塗布液を乾燥させる方法は、自然乾燥法であってもよいし、加熱乾燥法であってもよいし、赤外線乾燥機を用いた乾燥法であってもよい。電荷輸送層140が感光体100の表面を構成する場合は、赤外線乾燥機を用いて乾燥することが好ましい。このとき、上述のように、感光体100の軸方向において、赤外線出力を変化させながら乾燥することで、上基軸方向における上記マルテンス硬度を変化させることができる。
【0102】
(保護層150の形成)
保護層150を形成する工程では、保護層用のバインダー樹脂、および保護層用の電荷輸送性化合物、ならびに必要に応じて他の成分を含む保護層塗布液を、感光層上に塗布し、これを固化させることで保護層150を形成する。上記保護層塗布液は、上記成分を、遮光環境下で公知の撹拌方法により撹拌することで作製されることが好ましい。
【0103】
保護層塗布液に用いられる溶媒の例には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、2-ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが含まれる。
【0104】
保護層塗布液の塗布方法は特に限定されず、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、円形量規制型塗布法などであってもよい。
【0105】
保護層塗布液を固化させる方法は、例えば、乾燥固化法であるが、保護層塗布液が重合性化合物含むときは、保護層塗布液に対して加熱や活性線の照射を行い、重合性化合物を重合させて保護層塗布液を硬化させる方法であることが好ましい。このとき、上述のように、感光体100の軸方向において、重合性化合物の重合度を変化させることで、上記マルテンス硬度を変化させることができる。
【0106】
2.画像形成装置および画像形成システム
図2は、本発明の一実施の形態に関する画像形成装置の構成を示す模式図である。画像形成装置10は、画像読み取り部20と、画像形成部30(感光体32(上述の感光体100)と、現像装置35とを含む)と、中間転写部40と、定着装置60と、記録媒体搬送部80と、を有する。画像形成装置10における感光体32以外の構成は、公知の画像形成装置と同じもので使用できる。
【0107】
画像読み取り部20は、原稿Dから画像を読み取り、静電潜像を形成するための画像データを得る。画像読み取り部20は、給紙装置21と、スキャナー22と、CCDセンサー23と、画像処理部24と、を有する。
【0108】
画像形成部30は、たとえば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応する四つの画像形成ユニット31を含む。画像形成ユニット31は、感光体(電子写真感光体)32と、帯電装置33と、露光装置34と、現像装置35と、クリーニング装置36と、を有する。
【0109】
感光体32は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。感光体32は、帯電装置33により帯電される。帯電装置33は、帯電ローラや帯電ブラシなどの接触帯電部材を感光体32に接触させて帯電させる接触式の帯電装置であり、例えば、帯電ローラにより接触帯電させる接触式帯電装置である。感光体32の周速は280mm/sec以上700mm/sec以下であることが好ましく、300mm/sec以上650mm/sec以下であることがより好ましい。上記周速が280mm/sec以上であることで、感光体表面が帯電されてからトナーが供給されるまでに、感光体表面の帯電量が減少することを抑制して、静電潜像を消失しにくくすることができる。これにより、トナー画像をより形成しやすくできる。また、上記周速が700mm/sec以下であることで、感光体32を摩耗しにくくして、トナーのすり抜けによる画像汚れおよび感光体32の偏摩耗をより抑制できる。また、上記周速が700mm/sec以下であることで、クリーニングブレードによって、より感光体表面をリフレッシュしやすくすることができ、感光体表面上の水分や放電生成物をより除去できる。これにより、像流れをより抑制できる。
【0110】
本実施形態では、上述した感光体100を、図2における感光体32として使用する。
【0111】
露光装置34は、帯電した感光体32に光を照射して静電潜像を形成する。露光装置34は、例えば、半導体レーザーである。
【0112】
現像装置35は、静電潜像が形成された感光体32にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する。ここで、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。トナーは、公知のトナーを用いることができる。トナーは、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。一成分現像剤は、トナー粒子から構成される。また、二成分現像剤は、トナー粒子およびキャリア粒子から構成される。トナー粒子は、トナー母体粒子およびその表面に付着したシリカなどの外添剤から構成される。トナー母体粒子は、例えば、結着樹脂、着色剤およびワックスから構成される。
【0113】
上記キャリアの材料の例には、鉄などの強磁性金属、強磁性金属と、アルミニウム、鉛などの金属との合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の酸化物などの従来公知の材料が含まれる。これらの中でも、特にフェライトが好ましい。
【0114】
上記キャリアは、表面が樹脂により被覆されたキャリア、または樹脂中に磁性粒子が分散した樹脂分散型キャリアであることが好ましい。上記樹脂の種類は、特に限定されないが、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体などが好ましい。
【0115】
上記二成分現像剤を用いるとき、現像装置35は、例えば、上記二成分現像剤を収容するための収容部35aと、上記収容された現像剤を搬送して感光体32にトナーを供給するための現像ローラ35bとを有する構成とすることができる。このとき、現像装置35に含まれる現像ローラ35bの本数は2本以上であることが好ましい。軸方向の長さを長くした感光体を用いた画像形成装置では、現像ローラが2本以上であるとき、搬送される現像剤に含まれるキャリアと感光体との接触時間が長くなる。そのため、キャリアが感光体に付着しやすくなり、上述のキャリアが過多になる領域に対応する感光体表面での傷が生じて画像汚れが生じやすかった。これに対して、本実施形態における感光体32(上述の感光体100)は、上記キャリアが過多になる領域に対応する感光体表面での傷の生成を抑制できるため、現像ローラが2本以上のとき、本発明の効果が顕著になる。
【0116】
現像ローラ35bは、感光体32の回転とは逆方向に回転することが好ましい。軸方向の長さを長くした感光体を用いた画像形成装置では、現像ローラ35bの回転方向が感光体32と逆のとき、搬送される現像剤に含まれるキャリアと感光体との接触時間が長くなる。そのため、上述のキャリアが過多になる領域に対応する感光体表面での傷が生じやすく、画像汚れが生じやすかった。これに対して、本実施形態における感光体32(上述の感光体100)は、上記キャリアが過多になる領域に対応する感光体表面での傷の生成を抑制できるため、現像ローラ35bの回転方向が感光体32と逆のとき、本発明の効果が顕著になる。
【0117】
クリーニング装置36は、感光体32の残留トナーを除去する。クリーニング装置36は、例えば、クリーングブレードを有する。
【0118】
中間転写部40は、一次転写ユニット41と、二次転写ユニット42と、を含む。
【0119】
一次転写ユニット41は、中間転写ベルト43と、一次転写ローラ44と、バックアップローラ45と、複数の第1支持ローラ46と、クリーニング装置47と、を有する。中間転写ベルト43は、無端状のベルトである。中間転写ベルト43は、バックアップローラ45および第1支持ローラ46によって張架される。中間転写ベルト43は、バックアップローラ45および第1支持ローラ46の少なくとも一つのローラが回転駆動することにより、無端軌道上を一方向に一定速度で走行する。
【0120】
二次転写ユニット42は、二次転写ベルト48と、二次転写ローラ49と、複数の第2支持ローラ50と、を有する。二次転写ベルト48は、無端状のベルトである。二次転写ベルト48は、二次転写ローラ49および第2支持ローラ50によって張架される。
【0121】
定着装置60は、定着ベルト61と、加熱ローラ62と、第1加圧ローラ63と、第2加圧ローラ64と、ヒータと、温度センサーと、気流分離装置と、案内板と、案内ローラと、を有する。
【0122】
定着ベルト61は、基層と、弾性層と、離型層とがこの順番で積層されている。定着ベルト61は、基層を内側とし、離型層を外側にした状態で、加熱ローラ62と第1加圧ローラ63とによって軸支される。
【0123】
加熱ローラ62は、回転自在なアルミニウム製のスリーブと、その内部に配置されたヒータと、を有する。第1加圧ローラ63は、たとえば、回転自在な芯金と、その外周面上に配置された弾性層と、を有する。
【0124】
第2加圧ローラ64は、定着ベルト61を介して第1加圧ローラ63に対向して配置されている。第2加圧ローラ64は、第1加圧ローラ63に対して接近、離間自在に配置されており、第1加圧ローラ63に対して接近したときに、定着ベルト61を介して第1加圧ローラ63の弾性層を押圧し、定着ベルト61との接触部である定着ニップ部を形成する。
【0125】
気流分離装置は、定着ベルト61の移動方向の下流側から定着ニップ部に向けて気流を生じさせて、定着ベルト61からの記録媒体Sの分離を促すための装置である。
【0126】
案内板は、未定着のトナー画像を有する記録媒体Sを定着ニップ部に案内するための部材である。案内ローラは、トナー画像が定着された記録媒体を定着ニップ部から画像形成装置10外へ案内するための部材である。
【0127】
記録媒体搬送部80は、三つの給紙トレイユニット81および複数のレジストローラ対82を有する。給紙トレイユニット81には、坪量やサイズなどに基づいて識別された記録媒体(本実施の形態では規格紙、特殊紙など)Sが予め設定された種類ごとに収容される。レジストローラ対82は、所期の搬送経路を形成するように配置されている。
【0128】
このような画像形成装置10では、まず、帯電ローラの接触により帯電させた感光体32に光を照射して静電潜像を形成した後、感光体32の表面にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する。記録媒体搬送部80により送られてきた記録媒体Sに、中間転写部40で記録媒体Sにトナー画像が転写される。中間転写部40でトナー画像が転写された記録媒体Sは、定着装置60で記録媒体Sに定着される。トナー画像が定着された記録媒体は、案内ローラにより、画像形成装置10外に向けて案内される。このようにして、画像を形成することがえきる。
【0129】
なお、画像形成装置10は、感光体表面に滑剤を供給するための滑剤供給部(不図示)を有してもよい。感光体への滑剤の供給により、感光体表面が摩耗しにくくなる。
【0130】
本明細書では、上述の感光体32(感光体100)と、現像装置35とを有する画像形成装置10において、現像装置35にトナーおよびキャリアを含む現像剤が供給された状態を画像形成システムとする。
【0131】
上記画像形成システムにおいて、上記キャリアの体積平均粒径は20μm以上70μm以下であることが好ましく、25μm以上45μm以下であることがより好ましい。上記粒径が20μm以上であることで、現像ローラからキャリアが離脱(飛散)しにくくなり、キャリアによる感光体表面の傷の生成をより抑制して画像汚れをより抑制できる。上記粒径が70μm以下であることで、トナーの帯電量が安定するまでの時間を短くできる。上記体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置であるシンパテック(SYMPATEC)社製へロス(HELOS)により測定することができる。
【0132】
3.画像形成方法
本実施形態における画像形成方法は、トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を用いて行う画像形成方法であって、上述の感光体32(感光体100)の表面を帯電させる工程と、上記現像剤のうち上記トナーを、上記帯電した感光体32(感光体100)の表面に付与する工程と、上記付与されたトナーを記録媒体に転写する工程と、を有する。上記画像形成方法は、上述の画像形成装置10を用いて行うことができる。
【0133】
上記二成分現像剤は、トナーおよびキャリアから構成される。トナーは、トナー母体粒子およびその表面に付着したシリカなどの外添剤から構成される。トナー母体粒子は、例えば、結着樹脂、着色剤およびワックスから構成される。上記キャリアの体積平均粒径は20μm以上70μm以下であることが好ましく、25μm以上45μm以下であることがより好ましい。上記粒径が20μm以上であることで、現像ローラからキャリアが離脱(飛散)しにくくなり、キャリアによる感光体表面の傷の生成をより抑制して画像汚れをより抑制できる。上記粒径が70μm以下であることで、トナーの帯電量が安定するまでの時間を短くできる。
【0134】
3-1.帯電させる工程
本工程では、感光体32の表面を帯電させる。具体的には、上記帯電装置33内の帯電ローラを感光体32に接触させて、感光体32の表面を帯電させることができる。
【0135】
3-2.静電潜像を形成する工程
本実施形態では、上記画像形成方法は、上記帯電した感光体32の表面に光を照射して静電潜像を形成する工程を有してもよい。本工程は、具体的には、上記露光装置34により、帯電した感光体32に光を照射して静電潜像を形成する
【0136】
3-3.トナーを付与する工程
本工程では、帯電した(静電潜像が形成された)感光体32の表面にトナーを付与する。具体的には、現像装置35の収容部35aに収容された現像剤を現像ローラ35bで搬送し、現像剤のうち、感光体32とは逆極性に帯電させたトナーを感光体32の表面に付与する。上記画像形成方法が、上記静電潜像を形成する工程を有する場合は、本工程により、静電潜像に応じたトナー画像を形成できる。
【0137】
3-4.転写する工程
本工程では、感光体32の表面に付与されたトナーを記録媒体に転写する。具体的には、画像形成装置10において、感光体32から中間転写部40にトナーを転写し、中間転写部40から、記録媒体搬送部80により送られてきた記録媒体Sにトナー画像を転写する。なお、本実施形態では、感光体32から、記録媒体Sに直接トナー画像を転写してもよい。本実施形態では、本工程の後に、上記転写されたトナー画像を定着する工程を有してもよい。
【実施例0138】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0139】
1.電子写真感光体の作製
1-1.感光体1の作製
下記手順により、導電性支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層がこの順に積層された、感光体1を作製した。
【0140】
<導電性支持体>
直径60mm、回転軸方向の長さ600mmのドラム状のアルミニウム支持体の表面を切削加工し、これを導電性支持体とした。
【0141】
<中間層>
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で下記成分の混合物に対して10時間の分散処理を行った。その後、メタノールにより二倍に希釈して、一夜静置後に、日本ポール社製、リジメッシュ5μmフィルターを用いて濾過して、中間層塗布液を得た。
バインダー樹脂:ポリアミド樹脂(東レ株式会社製、アミランCM8000)1質量部
(アミランは同社の登録商標)
酸化チタン(テイカ株式会社製、SMT500SAS) 3質量部
メタノール 10質量部
【0142】
上記中間層塗布液を、乾燥膜厚が2μmとなるように浸漬塗布法で上記導電性支持体の表面に塗布して乾燥させて、中間層を得た。
【0143】
<電荷発生層>
分散機としてサンドミルを用いて、下記成分の混合物に対して10時間の分散処理を行い、電荷発生層塗布液を得た。
電荷発生物質:顔料(Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、および26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンと、の混晶) 20質量部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000-C、電気化学工業株式会社製)
10質量部
酢酸t-ブチル 700質量部
4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン 300質量部
【0144】
上記電荷発生層塗布液を、乾燥膜厚が0.3μmとなるように浸漬コーティング法で上記中間層の表面に塗布して乾燥させて、電荷発生層を得た。
【0145】
上記顔料は、以下のようにして合成した。
【0146】
(チタニルフタロシアニンの合成)
29.2質量部の1,3-ジイミノイソインドリンを、200質量部のo-ジクロロベンゼンに加えて撹拌し、これに20.4質量部のチタニウムテトラ-n-ブトキシドを加え、窒素雰囲気下、150~160℃の温度で5時間加熱撹拌した。その後、放冷して、結晶を析出させ、当該結晶を濾過して取り出した。次いで、取り出した結晶をクロロホルムで洗浄後、2%塩酸水溶液で洗浄し、さらに、水洗およびメタノール洗浄して、乾燥させた。これにより、26.2質量部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
【0147】
当該粗チタニルフタロシアニンを250質量部の濃硫酸中(温度5℃以下)で1時間撹拌して溶解させ、この溶解液を5000質量部の水(温度20℃)に注いだ。析出した結晶を濾過し、十分に水洗して225質量部のウエットペースト品を得た。得られたウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥して24.8質量部の無定形チタニルフタロシアニンを得た。
【0148】
(顔料の作製)
10.0質量部の上記無定形チタニルフタロシアニンと、0.94質量部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)の(2R,3R)-2,3-ブタンジオールと、を200質量部のオルトクロロベンゼン(ODB)中に入れて混合し、液温60~70℃で6時間加熱撹拌した。これを一夜放置後、メタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗浄し、10.3質量部の顔料を得た。
【0149】
得られた顔料を分析したところ、X線回折スペクトルには8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークがあり、マススペクトルには576と648にピークがあった。また、IRスペクトルにおいては970cm-1付近のTi=O、630cm-1付近にO-Ti-Oの両吸収が現れた。また、熱分析(TG)においては、390~410℃に約7%の質量減少があった。これらの分析結果から、上記顔料は、チタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混合物と推定された。また、上記顔料のBET比表面積を流動式比表面積自動測定装置(マイクロメトリックス・フローソープ型、株式会社島津製作所製)で測定したところ、31.2m/gであった。
【0150】
<電荷輸送層>
下記成分を攪拌して混合し、電荷輸送層塗布液1を得た。
電荷輸送性化合物:下記化合物A 225質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学株式会社製) 300質量部
酸化防止剤(Irganox1010、BASF社製) 6質量部
テトラヒドロフラン 1600質量部
トルエン 400質量部
シリコーンオイル(KF-50、信越化学工業株式会社製) 1質量部
【0151】
【化4】
【0152】
上記電荷輸送層塗布液1を、乾燥膜厚が20μmとなるように浸漬塗布法で上記中電荷発生層の表面に塗布して自然乾燥させて、電荷輸送層1を得た。
【0153】
<保護層>
下記成分を遮光環境下で攪拌して混合した。
トリメチロールプロパントリメタクリレート(SR350、サートマー社製) 100質量部
電荷輸送物質:上記化合物A 20質量部
テトラヒドロフラン 40質量部
2-ブタノール 400質量部
【0154】
その後、10質量部の重合開始剤(IGM.Resins.B.V.社製、Omnirad819)を加えて、遮光環境下で撹拌し、保護層塗布液1を得た。
【0155】
保護層塗布液1を、浸漬塗布装置を用いて、上記電荷輸送層上に塗布した。塗布された保護層塗布液1に、メタルハライドランプを用いて紫外線(波長365nm)を42秒かけて照射して、乾燥膜厚が3.0μmの保護層を得た。このとき、導電性支持体の軸方向における中央部の紫外線光量を100%(光量34mW/cm)とし、上記軸方向における一端から他端にかけて紫外線光量を97%~103%の範囲で徐々に増加させながら紫外線を照射した。
【0156】
1-2.感光体2~感光体8、感光体16の作製
保護層塗布液1に対する紫外線の照射時間、および上記軸方向における一端から他端への紫外線光量の変化域を表1に示したように変更した以外は、感光体1と同様にして、感光体2~感光体8、感光体16を作製した。
【0157】
1-3.感光体9の作製
以下のように電荷輸送層塗布液2を作製し、これを、保護層塗布液1の代わりに、電荷輸送層1に塗布して電荷輸送層2を形成した以外は、感光体1と同様にして感光体9を作製した。
【0158】
下記成分を混合し、サンドミルを用いて5時間分散処理を行い、電荷輸送層塗布液2を得た。
電荷輸送性化合物:N-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジン 180質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学株式会社製) 300質量部
酸化防止剤(Irganox1010、BASF社製) 6質量部
テトラヒドロフラン 1600質量部
トルエン 400質量部
【0159】
上記電荷輸送層塗布液2を、円形スライドホッパー型塗布装置を用いて電荷輸送層1上に塗布し、赤外線乾燥機を用いて10分かけて乾燥させて乾燥膜厚10μmの電荷輸送層2を得た。このとき、このとき、導電性支持体の軸方向における中央部の赤外線出力を100%(出力5mW/cm)とし、上記軸方向における一端から他端にかけて紫外線光量を85%~115%の範囲で徐々に増加させながら赤外線を照射した。
【0160】
1-4.感光体10の作製
以下のように電荷輸送層塗布液3を作製し、これを、電荷輸送層塗布液2の代わりに、電荷輸送層1に塗布して電荷輸送層3を形成した以外は、感光体9と同様にして感光体10を作製した。
【0161】
下記成分を混合し、サンドミルを用いて5時間分散処理を行い、電荷輸送層塗布液3を得た。
電荷輸送性化合物:N-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジン 180質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学株式会社製) 300質量部
二酸化ケイ素粒子(一次処理:ジメチルジクロロシラン、二次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均一次粒径50nmの粒子、日本アエロジル株式会社製)
30質量部
酸化防止剤(Irganox1010、BASF社製) 6質量部
テトラヒドロフラン 1600質量部
トルエン 400質量部
【0162】
1-5.感光体11の作製
感光体1と同様にして、導電性支持体上に中間層、電荷発生層、および電荷輸送層を形成した。そして、以下のようにして、保護層塗布液2を作製した。
【0163】
下記成分を遮光環境下で攪拌して混合した。
トリメチロールプロパントリメタクリレート(SR350、サートマー社製) 100質量部
酸化スズ粒子(NanoTek Powder SnO、シーアイ化成株式会社製) 100質量部
電荷輸送物質:上記化合物A 20質量部
テトラヒドロフラン 40質量部
2-ブタノール 400質量部
【0164】
その後、10質量部の重合開始剤(IGM.Resis.B.V.社製、Ominirad819)を加えて、遮光環境下で撹拌し、保護層塗布液2を得た。
【0165】
保護層塗布液2を、浸漬塗布装置を用いて、上記電荷輸送層上に塗布した。塗布された保護層塗布液1に、メタルハライドランプを用いて紫外線(波長365nm)を60秒かけて照射して、乾燥膜厚が3.0μmの保護層を得た。このとき、導電性支持体上の軸方向における中央部の紫外線光量を100%(光量34mW/cm)とし、上記軸方向における一端から他端にかけて紫外線光量を90%~110%の範囲で徐々に増加させながら紫外線を照射した。
【0166】
1-6.感光体12の作製
以下のようにして、保護層塗布液3を作製し、保護層塗布液2の代わりに保護層塗布液3を用いたこと以外は、感光体11と同様にして、感光体12を作製した。
【0167】
下記成分を遮光環境下で攪拌して混合した。
トリメチロールプロパントリメタクリレート(SR350、サートマー社製) 100質量部
二酸化ケイ素粒子(一次処理:ジメチルジクロロシラン、二次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均一次粒径50nmの粒子、日本アエロジル株式会社製)
30質量部
電荷輸送物質(CTM) 20質量部
テトラヒドロフラン 40質量部
2-ブタノール 400質量部
【0168】
その後、10質量部の重合開始剤(IGM.Resins.B.V.社製、Ominirad819)を加えて、遮光環境下で撹拌し、保護層塗布液3を得た。
【0169】
1-7.感光体13の作製
電荷輸送層の形成方法を以下のように変更し、電荷輸送層上に保護層を形成しなかったこと以外は、感光体1と同様にして感光体13を作製した。
【0170】
上記電荷輸送塗布液を、円形スライドホッパー型塗布装置を用いて電荷発生層上に塗布し、赤外線乾燥機を用いて10分間乾燥させて乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を得た。このとき、導電性支持体の軸方向における中央部の赤外線出力を100%(出力34mW/cm)とし、上記軸方向における一端から他端にかけて紫外線光量を85%~115%の範囲で徐々に増加させながら赤外線を照射した。
【0171】
1-8.感光体14、感光体15の作製
導電性支持体の軸方向の長さを400mmに変更した以外は、感光体4と同様にして感光体14を作製した。また、上記軸方向の長さを800mmに変更した以外は、感光体4と同様にして感光体15を作製した。
【0172】
1-9.感光体C1の作製
導電性支持体の軸方向の長さを360mmに変更し、保護層塗布液1に紫外線を照射する際、導電性支持体の軸方向の一端から他端にかけて紫外線光量を変化させず、42秒間かけて紫外線光量100%(光量34mW/cm)で紫外線を照射したこと以外は、感光体1と同様にして感光体C1を作製した。
【0173】
1-10.感光体C2の作製
保護層塗布液1に紫外線を照射する際、導電性支持体の軸方向の一端から他端にかけて紫外線光量を変化させず、42秒間かけて紫外線光量100%(光量34mW/cm)で紫外線を照射した以外は、感光体1と同様にして感光体C2を作製した。
【0174】
1-11.感光体C3、C4の作製
保護層塗布液1に紫外線を照射する際、紫外線の照射時間、および上記軸方向における一端から他端にかけて紫外線光量を表1のように以外は、感光体1と同様にして感光体C3および感光体C4を作製した。
【0175】
<マルテンス硬度>
感光体表面のマルテンス硬度(HU)の測定は、超微小硬度計(H-100V、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて下記の測定条件で測定した。
圧子形状:ビッカース圧子(a=136°)
測定環境:20℃、60%RH
最大試験荷重:3mN
荷重速度:3mN/20sec
最大荷重クリープ時間:5秒
除荷速度:3mN/20sec
【0176】
感光体の周方向を均等角度に分割する3点において、感光体の軸方向の一端から30mmの位置から、他端から30mmの位置までの間を50mm間隔でマルテンス硬度を測定した。そして、上記周方向3点のそれぞれにおいて、上記軸方向におけるマルテンス硬度の最大値と最小値の差を算出し、さらに、周方向3点の最大値と最小値の差の平均値を算出した。
【0177】
また、上記測定により得られたマルテンス硬度の全データの平均値を算出し、軸方向の平均値とした。
【0178】
感光体1~感光体15について、上記軸方向における各測定点の硬度を表したグラフを図3図6に示した。これらの結果から、感光体1~15の表面は、軸方向においてマルテンス硬度が傾斜変化していることがわかった。
【0179】
【表1】
【0180】
2.画像形成装置
<実験1>
現像ローラを2本、現像ローラ回転方向を感光体1の回転方向に対して逆方向とした現像装置を作製した。感光体1と上記現像装置を、感光体の周速が550mm/secになるように改造した評価機(bizhub PRESS C1070、コニカミノルタ社製、滑剤供給部あり)に組み込むことで、画像形成装置を作製した。
【0181】
<実験2~実験16、実験23、実験24、実験27、実験28>
用いる感光体を表2、3のように変更した以外は実験1と同様にして画像形成装置を作製した。
【0182】
<実験17>
現像ローラの本数を1本に変更した以外は実験16と同様にして画像形成装置を作製した。
【0183】
<実験18>
現像ローラ回転方向を感光体16の回転方向に対して同方向にした以外は実験16と同様にして画像形成装置を作製した。
【0184】
<実験19>
現像ローラの本数を1本に変更した以外は実験4と同様にして画像形成装置を作製した。
【0185】
<実験20>
現像ローラ回転方向を感光体4の回転方向に対して同方向にした以外は実験4と同様にして画像形成装置を作製した。
【0186】
<実験21、実験22>
感光体4の周速を表3に示したように変更した以外は実験4と同様にして画像形成装置を作製した。
【0187】
<実験25>
現像ローラの本数を1本に変更した以外は実験24と同様にして画像形成装置を作製した。
【0188】
<実験26>
現像ローラ回転方向を感光体C2の回転方向に対して同方向にした以外は実験24と同様にして画像形成装置を作製した。
【0189】
3.評価
<すり抜け(画像汚れ)>
上記作製した各画像形成装置を、滑剤供給部からの滑剤供給速度を初期設定の1/3の速度になるように改造をした評価機を用いた。この評価機と、シアントナーおよびキャリア(フェライトにシクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体を被覆したキャリア、体積平均粒径40μm)を含む二成分現像剤とを用いて、10℃、20%RH環境下で、紙の搬送方向の前方側に印字部、後方側に白地部が配置されたカバレッジ率80%のハーフトーン画像をA3版中性紙に形成し、これを2万枚印刷した。このとき、上記用紙の420mmの辺が用紙の搬送方向の前方および後方になるようにした。2万枚目の紙の白地部を目視により観察し、トナーのすり抜けを評価した。すり抜け評価の評価基準は下記の通りである。評価結果が「5」から「3」の場合を合格とした。なお、本評価では、トナーのすり抜けが少ないほど、感光体への傷が少ないことを示す。
5: 白地部に汚れが見られなかった
4: 白地部に軽微な短いスジ状の汚れが発生したが、実用上の問題はない
3: 白地部に軽微なスジ状の汚れが発生したが、実用上の問題はない
2: 白地部に明らかなスジ状の汚れが発生し、実用上の問題がある
1: 白地部に明らかなスジ状の汚れが複数箇所発生し、実用上の問題がある
【0190】
なお、上記キャリアの体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置であるシンパテック(SYMPATEC)社製へロス(HELOS)により測定した。
【0191】
<像流れ>
上記作製した各画像形成装置と、シアントナーおよびキャリア(フェライトにシクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体を被覆したキャリア、体積平均粒径40μm)を含む二成分現像剤とを用いて、30℃、80%RHの高温高湿環境下で、カバレッジ率10%の横帯画像をA3版中性紙に2000枚印刷した後で実機を停止した。このとき、上記用紙の420mmの辺が用紙の搬送方向の前方および後方になるようにした。その後、12時間以上経過後、カバレッジ率100%ハーフトーン画像を100枚出力した。そして、100枚目のハーフトーン画像中、5箇所をランダムで抽出し、拡大観察してドットの形状をランク評価した。像流れ評価の評価基準は下記の通りである。評価結果が「5」から「3」の場合を合格とした。
5:5箇所全てにおいてドットが問題なく形成されている。
4:5箇所中4箇所でドットが問題なく形成されているが、1箇所はドット形状がぼやけている
3:5箇所中3箇所でドットが問題なく形成されているが、2箇所はドット形状がぼやけている
2:5箇所中2箇所でドットが問題なく形成されているが、3箇所はドット形状がぼやけている
1:5箇所中ドットが問題なく形成されている箇所が0~1箇所である
【0192】
<感光体偏摩耗>
上記作製した各画像形成装置と、ブラックトナーおよびキャリア(種類、粒径)を含む二成分現像剤とを用いて、20℃、50%RH環境下で、カバレッジ率10%の横帯画像をA3版中性紙に30万枚印刷した。印刷後、初期状態からの感光体(最表面層)の膜厚減少量を計測した。感光体の軸方向において、減耗量の最大値と最小値の差を偏摩耗量と定義し、ランク評価した。感光体偏摩耗評価の評価基準は下記の通りである。評価結果が「5」から「3」の場合を合格とした。
5:偏摩耗量が0.05μm以下であった
4:偏摩耗量が0.05μm超0.1μm以下であった
3:偏摩耗量が0.1μm超0.3μm以下であった
2:偏摩耗量が0.3μm超0.5μm以下であった
1:偏摩耗量が0.5μmよりも多かった
【0193】
各評価結果を表2、表3にまとめた。
【0194】
【表2】
【0195】
【表3】
【0196】
表2、3より、軸方向の長さが400mm以上の感光体において、上記軸方向の一端から他端の間で感光体表面のマルテンス硬度が変化しており、かつ上記マルテンス硬度の最大値と最小値との差が10N/mm以上100N/mm以下であることで、画像汚れを抑制しつつ、偏摩耗を抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明によれば、軸方向の長さを大きくした感光体であって、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いたときの画像汚れを抑制でき、かつ感光体表面の偏摩耗を抑制できる。そのため、本発明は、特に、大判印刷分野において有用である。
【符号の説明】
【0198】
10 画像形成装置
20 画像読み取り部
21 給紙装置
22 スキャナー
23 CCDセンサー
24 画像処理部
30 画像形成部
31 画像形成ユニット
32 感光体
33 帯電装置
34 露光装置
35 現像装置
36 クリーニング装置
40 中間転写部
41 一次転写ユニット
42 二次転写ユニット
43 中間転写ベルト
44 一次転写ローラ
45 バックアップローラ
46 第1支持ローラ
47 クリーニング装置
48 二次転写ベルト
49 二次転写ローラ
50 第2支持ローラ
60 定着装置
61 定着ベルト
64 第2加圧ローラ
80 記録媒体搬送部
81 給紙トレイユニット
82 レジストローラ対
D 原稿
S 紙(記録媒体)
100 感光体
110 導電性支持体
120 中間層
130 電荷発生層
140 電荷輸送層
150 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6