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特開2025-9006光干渉測定装置および光干渉測定装置に用いるプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009006
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光干渉測定装置および光干渉測定装置に用いるプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20250109BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111696
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉元 直輝
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA07
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA48
5J084BA51
5J084BB28
5J084CA08
(57)【要約】
【課題】光を用いたFMCW方式の技術において、異なる2波長を用いる方法とは別の方法で、ビート信号における参照光と反射光の大小関係を識別してターゲットの位置的挙動を適切に算出する。
【解決手段】処理回路は、各時点nにおいて、アップチャープ領域、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係の組み合わせを2個抽出する。そして処理回路は、それら複数個の組み合わせをそれぞれ前提とする計算手法で、時点nにおけるターゲットTRの暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出する。そして処理回路は、時点n-1における確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち1つを選択して確定距離Dis(n)とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が経時的に増加するアップチャープ領域と周波数が経時的に減少するダウンチャープ領域を含む出射光(Lp)を出射する光源(1)と、
前記出射光がターゲット(TG)で反射することで生成された反射光(Ltr)と、前記出射光から分岐した参照光(Lr)とを合成させて干渉光(Lb)を生成する光学系(2、3、4、5)と、
前記干渉光に応じたビート信号を出力する光検出器(6)と、
前記ビート信号に基づいて、前記ターゲットの位置および速度を繰り返し測定する処理回路(7)と、を備え、
前記処理回路は、
ある時点(n)において、前記ビート信号のアップチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係、および、前記ビート信号のダウンチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係の組み合わせを複数個抽出し、前記複数個の組み合わせをそれぞれ前提とする前記時点における前記ターゲットの複数個の暫定的な位置的挙動(Dc1(n)、Dc2(n)、Vc1(n)、Vc2(n))を算出し、
前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動(Dis(n-1)、Dis(n-2)、V(n-1)、V(n-2))に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、前記ターゲットの確定的な位置的挙動(Dis(n)、D(n))として決定する、光干渉測定装置。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動(Dis(n-1)、Dis(n-2)、V(n-1)、V(n-2))に基づいて、前記時点における前記ターゲットの推定上の位置的挙動(De(n)、Ve(n))を算出し、
前記推定上の位置的挙動と前記複数個の暫定的な位置的挙動との比較に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、前記ターゲットの前記確定的な位置的挙動として決定する、請求項1に記載の光干渉測定装置。
【請求項3】
前記処理回路は、前記アップチャープ領域におけるビート周波数(f_up(n))と前記ダウンチャープ領域におけるビート周波数(f_down(n))のうち、前記アップチャープ領域におけるビート周波数の方が小さい場合は、前記ダウンチャープ領域において前記参照光の周波数より前記反射光の周波数の方が大きく、かつ、前記アップチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係が異なる2つの組み合わせを前記複数個の組み合わせとして抽出し、前記ダウンチャープ領域におけるビート周波数の方が小さい場合は、前記アップチャープ領域において前記参照光の周波数より前記反射光の周波数の方が小さく、かつ、前記ダウンチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係が異なる2つの組み合わせを前記複数個の組み合わせとして抽出する、請求項1または2に記載の光干渉測定装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記出射光を複数の方位に走査するビームスキャナ(4)を有し、
前記処理回路は、前記時点において、前記複数の方位のうち或る1つの方位について、前記ターゲットの前記複数個の暫定的な位置的挙動を算出し、
前記処理回路は、前記複数の方位のうち前記1つの方位とは異なる他の方位について前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動に基づいて、前記1つの方位についての前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、前記1つの方位についての前記ターゲットの確定的な位置的挙動として決定する、請求項1または2に記載の光干渉測定装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記ターゲットの確定的な位置的挙動を演算するための演算周期における前記時点よりも1回前および2回前の前記ターゲットの位置的挙動に基づいて、前記時点における前記ターゲットの推定上の位置的挙動(eDis(n))を算出する、請求項1または2に記載の光干渉測定装置。
【請求項6】
前記処理回路は、
前記ターゲットの前記複数個の暫定的な位置的挙動として、前記ターゲットの前記複数個の暫定的な距離または速度を算出し、
前記時点における前記ターゲットの前記推定上の位置的挙動として前記ターゲットの前記複数個の暫定的な位置的挙動と同種の量を算出し、
前記推定上の位置的挙動と前記複数個の暫定的な位置的挙動との比較に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち、前記推定上の位置的挙動に対する誤差の絶対値が所定の基準値以下であるものを、前記ターゲットの前記確定的な位置的挙動として決定する、請求項1または2に記載の光干渉測定装置。
【請求項7】
前記基準値は、当該光干渉測定装置の前記確定的な位置的挙動の算出値のばらつきの標準偏差の3倍以上である、請求項6に記載の光干渉測定装置。
【請求項8】
前記処理回路は、前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動と、前記複数個の暫定的な位置的挙動に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のそれぞれに対応する前記ターゲットの複数個の加速度を算出し、算出した前記複数個の加速度に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つを、前記ターゲットの確定的な位置的挙動として決定する、請求項1に記載の光干渉測定装置。
【請求項9】
前記処理回路は、前記複数個の加速度のうち所定の許容値以下である方の加速度に対応する暫定的な位置的挙動を、前記ターゲットの確定的な位置的挙動として決定する、請求項8に記載の光干渉測定装置。
【請求項10】
前記許容値は、2G以下である、請求項9に記載の光干渉測定装置。
【請求項11】
周波数が経時的に増加するアップチャープ領域と周波数が経時的に減少するダウンチャープ領域を含む出射光(Lp)を出射する光源(1)と、前記出射光がターゲット(TG)で反射することで生成された反射光(Ltr)と、前記出射光から分岐した参照光(Lr)とを合成させて干渉光(Lb)を生成する光学系(2、3、4、5)と、前記干渉光に応じたビート信号を出力する光検出器(6)と、前記ビート信号に基づいて、前記ターゲットの位置および速度を繰り返し測定する処理回路(7)と、を備える光干渉測定装置(10)に用いるプログラムであって、
前記処理回路を、
ある時点(n)において、前記ビート信号のアップチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係、および、前記ビート信号のダウンチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係の組み合わせを複数個抽出し、前記複数個の組み合わせをそれぞれ前提とする前記時点における前記ターゲットの複数個の暫定的な位置的挙動(Dc1(n)、Dc2(n)、Vc1(n)、Vc2(n))を算出する算出部および、
前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動(Dis(n-1)、Dis(n-2)、V(n-1)、V(n-2))に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、前記ターゲットの確定的な位置的挙動(Dis(n)、D(n))として決定する決定部として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉測定装置および光干渉測定装置に用いるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いたFMCW方式を実現する光干渉測定装置は、アップチャープ領域とダウンチャープ領域を含む出射光を出射し、出射光がターゲットで反射することで生成された反射光と、出射光に基づく参照光とを干渉させ、得られた干渉光を受光する。そして光干渉測定装置は、この干渉光に応じたビート信号に基づいて、ターゲットの位置的挙動(例えば、距離、速度等)を算出する。具体的には、ビート信号の周波数に相当するビート周波数は、ターゲットまでの距離によって参照光と反射光の間に生じる位相差と、ターゲットの相対速度によって参照光と反射光の間に生じるドップラーシフトとにより決まる。したがって、アップチャープ領域とダウンチャープ領域のビート周波数を特定することにより、ターゲットの位置、速度等が決まる。
【0003】
ただし、ビート周波数は、参照光と反射光の周波数差の絶対値として観測されるので、ビート信号中で参照光と反射光のどちらが大きいかは、ビート周波数からは特定できない。通常は、アップチャープ領域では参照光よりも反射光の方が周波数が低く且つダウンチャープ領域では参照光よりも反射光の方が周波数が高いことが多いので、これを前提とした式によりビート周波数からターゲットの位置、速度等が算出される。
【0004】
しかし、アップチャープ領域またはダウンチャープ領域で上記のような周波数の大小関係が反転する場合もある。そのような場合、すなわち、負の周波数、周波数の折り返しが発生した場合は、上記のような算出方法では、ターゲットの位置、速度等を適切に算出できなくなる。
【0005】
このような問題に対して、2波長の光源を利用しビート信号の位相差に基づいて距離・速度を検出することで、ビート信号における参照光と反射光の大小関係を識別可能にする技術が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-309582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような技術では、異なる2波長を用いて測定するため光源が増加するという問題がある。本発明は上記点に鑑み、光を用いたFMCW方式の技術において、異なる2波長を用いる方法とは別の方法で、ビート信号における参照光と反射光の大小関係を識別してターゲットの位置的挙動を適切に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
周波数が経時的に増加するアップチャープ領域と周波数が経時的に減少するダウンチャープ領域を含む出射光(Lp)を出射する光源(1)と、
前記出射光がターゲット(TG)で反射することで生成された反射光(Ltr)と、前記出射光から分岐した参照光(Lr)とを合成させて干渉光(Lb)を生成する光学系(2、3、4、5)と、
前記干渉光に応じたビート信号を出力する光検出器(6)と、
前記ビート信号に基づいて、前記ターゲットの位置および速度を繰り返し測定する処理回路(7)と、を備え、
前記処理回路は、
ある時点(n)において、前記ビート信号のアップチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係、および、前記ビート信号のダウンチャープ領域における前記参照光の周波数と前記反射光の周波数の大小関係の組み合わせを複数個抽出し、前記複数個の組み合わせをそれぞれ前提とする前記時点における前記ターゲットの複数個の暫定的な位置的挙動(Dc1(n)、Dc2(n))を算出し、
前記時点よりも前の前記ターゲットの位置的挙動(Dis(n-1)、Dis(n-2)、V(n-1)、V(n-2))に基づいて、前記複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、前記ターゲットの確定的な位置的挙動(Dis(n))として決定する、光干渉測定装置である。
【0009】
このように、光干渉測定装置は、過去の時点におけるターゲットの位置的挙動から、今回の時点における参照光と反射光の周波数の大小関係として妥当なものを選ぶ。このようにすることで、異なる2波長を用いる方法とは別の方法で、今回の時点における位置的挙動を、適切に決定することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る光干渉測定装置の構成図である。
図2】光干渉測定装置から送出される出射光の範囲を例示する図である。
図3】光干渉測定装置から送出される出射光の範囲を例示する図である。
図4】処理回路が実行する処理のフローチャートである。
図5】暫定距離を算出する処理のフローチャートである。
図6】ビート信号における参照光と反射光の周波数の大小関係の一例を示すグラフである。
図7】ビート信号における参照光と反射光の周波数の大小関係の一例を示すグラフである。
図8】各方位における前回の演算周期の確定距離、確定速度、および今回の演算周期の推定距離、暫定距離を例示する表である。
図9】第2実施形態において処理回路が実行する処理のフローチャートである。
図10】各方位における前回の演算周期の確定距離、確定速度、および今回の演算周期の推定距離、暫定距離、加速度を例示する表である。
図11】第3実施形態において処理回路が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る光干渉測定装置10は、車両に搭載され、FMCW-LiDAR方式で車両の周囲の物体を検知する。図1に示すように、光干渉測定装置10は、光源1、分岐用のカプラ2、サーキュレータ3、ビームスキャナ4、結合用のカプラ5、光検出器6、および処理回路7を有している。カプラ2、サーキュレータ3、ビームスキャナ4、カプラ5は、光学系を構成する。光源1、カプラ2、サーキュレータ3、カプラ5間の光の経路は、例えば、光ファイバにより形成されている。
【0013】
光源1は、レーザ発振器、変調器等を備える。発振器は、所定の基準周波数(例えば、1550nm、1300nm)のレーザ光を生成して出力する。レーザ発振器は、例えばレーザダイオードが用いられるが、それ以外のものが用いられてもよい。
【0014】
変調器12は、レーザ発振器11が出力した基準周波数のレーザ光に対して所定の変調振幅(例えば0.001nm幅、例えば0.005nm幅)の周波数変調を行うことで、周波数が増減変化するレーザ光である出射光Lpをカプラ2に出射する。周波数の変化は、例えば、周波数がアップチャープ領域で所定のチャープ率で増加した後、ダウンチャープ領域で所定のチャープ率で減少する三角波状になっている。
【0015】
カプラ2は、光源1から出射された出射光Lpの一部をサーキュレータ3に出力すると共に、出射光Lpの他の一部を分岐させて参照光Lrとしてカプラ5に出力する光部品である。
【0016】
サーキュレータ3は、3つのポートを持つ光部品である。サーキュレータ3は、カプラ2から第1のポートに入力された出射光Lpを第2のポートからビームスキャナ4に出力すると共に、ビームスキャナ4から第2のポートに入力された反射光Ltrを第3のポートからカプラ5に出力する。
【0017】
ビームスキャナ4は、サーキュレータ3から出力された出射光Lpの向きを操作して所定の走査パターンに従ってターゲットTGを含む検知対象範囲をビーム走査することが可能な走査装置である。またビームスキャナ4は、出射光LpがターゲットTGで反射することで生じる反射光Ltrの向きを変えてサーキュレータ3に導く。なお、ターゲットTGは、例えば、車両の前方を走行する先行車、車両の後方を走行する後続車、車両の周囲の人および障害物等がある。
【0018】
例えば、ビームスキャナ4は、サーキュレータ3からの出射光Lpを反射し、反射後の出射光Lpの向きを操作してターゲットTGを含む検知対象範囲をビーム走査可能な走査ミラーである。この場合ビームスキャナ4は、出射光LpがターゲットTGで反射することで生じる反射光Ltrを反射してサーキュレータ3に導く。ビームスキャナ4は、例えば、1つまたは2つ以上のガルバノメータによって回転可能であってもよいし、多面体ミラーを回転させてもよいし、他の構成で実現されてもよい。あるいは、ビームスキャナ4は、ミラー以外の装置で構成されていてもよい。
【0019】
カプラ5は、ビームスキャナ4からサーキュレータ3に入り、サーキュレータ3から出力された反射光Ltrと、カプラ2から分岐した参照光Lrとを合成し、合成の結果得られた干渉光Lbを光検出器6に出力する。光検出器6は、カプラ5から受けた干渉光Lbに応じた電気信号としてビート信号を生成し、生成したビートを処理回路7に出力する受光素子である。
【0020】
処理回路7は、光検出器6から出力されたビート信号に基づいて、車両からターゲットTGまでの距離(以下、単にターゲットTGの距離という)、車両に対するターゲットTGの相対速度(以下、単にターゲットTGの速度という)等を算出する。処理回路7は、そのような処理が記述されたソフトウェアを記憶するメモリを有する。そして処理回路7は、当該メモリを備えると共に、当該メモリから当該ソフトウェアを読み出して実行するCPU等を備えたマイクロコンピュータで構成されている。あるいは、処理回路7は、上記のような処理を実現するよう回路構成された専用の電子回路であってもよい。
【0021】
以下、上記のような構成の光干渉測定装置10の作動について説明する。車両のIGがオンになると、光干渉測定装置10の作動が開始する。そして、光源1からアップチャープおよびそれに続くダウンチャープを含む出射光Lpが送出され、その出射光Lpの一部がカプラ2、サーキュレータ3、ビームスキャナ4をこの順に介してターゲットTGに出射される。また、光源1からの出射光Lpの他の一部がカプラ2で参照光Lrとして分岐してカプラ5に導かれる。
【0022】
また、出射光LpがターゲットTGで反射されて生じた反射光Ltrは、ビームスキャナ4、サーキュレータ3をこの順に介した後、カプラ5にて参照光Lrと合成される。そして、合成によって生じた干渉光Lbがカプラ5から光検出器6に出力される。光検出器6は、この干渉光Lbを受光し、干渉光Lbに応じたビート信号を処理回路7に出力する。
【0023】
このとき、ビームスキャナ4の上述の走査機能により、出射光は図2図3に示すように、ターゲットTGを含む広がりを持った方位角の範囲AWに出射される。そして、範囲AW内の複数の方位に出射光Lpが出射され、それら複数の方位から反射光Ltrが戻ってくる。
【0024】
図2の例では、範囲AW内の複数の方位のうち、3つの方位X-1、X、X+1から反射光Ltrが光干渉測定装置10に戻ってくる。また、図3の例では、図2の例よりも光干渉測定装置10がターゲットTGに近いので、範囲AW内の複数の方位のうち、5つの方位X-2、X-1、X、X+1、X+2から反射光Ltrが光干渉測定装置10に戻ってくる。光干渉測定装置10は、複数の方位に出射光Lpを出射し、処理回路7は、そのうち反射光Ltrが戻ってきた方位のそれぞれについて、その方位におけるターゲットTGの距離および速度を算出する。なお、本実施形態では、速度は、ターゲットTGの距離が短くなる向きの速度を正とする。
【0025】
ここで、光検出器6からのビート信号を処理するために処理回路7がプログラムをメモリから読み出して実行する処理について、図4図5を用いて説明する。処理回路7は、車両のIGがオンになって光干渉測定装置10の作動が開始したときに、図4に示す処理の実行を実行する。
【0026】
図4の処理において処理回路7は、まずステップS110で、演算周期の回数を意味する整数の変数nの値をゼロに初期化する。続いてステップS120では、ビート信号を受信した複数の方位のそれぞれに対して、各ビート信号に基づいて、アップチャープ領域におけるビート周波数f_up(0)、ダウンチャープ領域におけるビート周波数f_down(0)を算出する。なお、括弧内の値は演算周期の回数を意味する。これらの算出は、各ビート信号のアップチャープ領域、ダウンチャープ領域に対してFFT等の離散フーリエ変換を行った結果のピーク周波数を特定することで実現する。これにより、ビート信号を受信した方位の数だけ、ビート周波数f_up(0)、f_down(0)の組が算出される。
【0027】
ステップS120では更に、ビート信号を受信した複数の方位のそれぞれについて、算出したビート周波数f_up(0)、f_down(0)を用いて、各方位におけるターゲットTGの確定距離Dis(0)および確定速度V(0)を算出する。確定距離および確定速度は、それぞれ、確定的な距離および速度である。
【0028】
具体的には、以下の式(1)~(4)を用いて、方位毎に算出する。
Dis(0)=tDis×(1/2)×C×T/FMW (1)
tDis=(f_up(0)+f_down(0))/2 (2)
V(0)=Vdiff×(1/2)×C/Flow (3)
Vdiff=(f_down(0)-f_up(0))/2 (4)
ここで、Cは光速で、Tはアップチャープ領域、ダウンチャープ領域の掃引時間、FMWはアップチャープ領域、ダウンチャープ領域の周波数掃引幅、Flowは掃引開始周波数であり、あらかじめメモリに記録されている。これにより、ビート信号を受信した方位の数だけ、確定距離Dis(0)および確定速度V(0)の組が算出される。
【0029】
なお、ここで用いられた式(2)、(4)は、アップチャープ領域では参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が低く且つダウンチャープ領域では参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が高いという前提に基づく計算式である。仮にアップチャープ領域、ダウンチャープ領域における参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係がそのようになっていない場合は、この計算式では正しく確定距離Dis(0)および確定速度V(0)を算出できない。
【0030】
しかし、図4の処理の開始時には、車両の周囲の物体が急激に車両に近づいたり遠ざかったりする可能性が低いと考えられるので、このような前提で計算しても多くの場合正しい確定距離Dis(0)および確定速度V(0)が算出される。
【0031】
続いてステップS130で処理回路7は、変数nの値を1だけ増加させる。このように、ステップS110、S120の処理が1周期目の処理であり、その後、ステップS130~S180のループが繰り返され、これらループの各々が演算周期の1回分の処理となる。
【0032】
ステップS130に続いて処理回路7は、ステップS140で、ビート信号を受信した複数の方位のそれぞれに対して、各ビート信号に基づいて、時点nにおけるビート周波数を算出する。すなわち、アップチャープ領域におけるビート周波数f_up(n)、ダウンチャープ領域におけるビート周波数f_down(n)を算出する。これらの算出は、各ビート信号のアップチャープ領域、ダウンチャープ領域に対してFFT等の離散フーリエ変換を行った結果のピーク周波数を特定することで実現する。これにより、ビート信号を受信した方位の数だけ、ビート周波数f_up(n)、f_down(n)の組が算出される。
【0033】
続いて処理回路7は、ステップS150で、ビート信号を受信した複数の方位のそれぞれに対して、ビート周波数f_up(n)、f_down(n)に基づいて、暫定距離Dc1(n)、暫定距離Dc2(n)を算出する。暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)は、現時点におけるターゲットTGの確定距離Dis(n)の候補となる距離である。
【0034】
各方位における暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)の算出方法は、図5に示す通りである。処理回路7は、ステップS150において、ビート信号を受信した複数の方位のそれぞれについて、図5の処理を実行する。各々の図5の処理において処理回路7は、まずステップS151で、対象の方位におけるターゲットTGの暫定距離Dc1(n)を、以下の式により算出する。
Dc1(n)=tDis×(1/2)×C×T/FMW (5)
ここで、tDisは、
tDis=(f_up(n)+f_down(n))/2 (6)
という式により決定する。この式(6)は、図6に示すように、アップチャープ領域において参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が低く、ダウンチャープ領域において参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が高い場合に、正しい距離を算出するための式である。これが、アップチャープ領域、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係としてあり得る組み合わせの1つである。
【0035】
なお、図6図7においては、2本の実線が、それぞれ、干渉光Lb中の参照光Lrの経時的な周波数の変化と反射光Ltrの経時的な周波数の変化とを示している。また、破線が、仮にターゲットTRの速度がゼロであった場合に得られるであろう反射光Ltr0の経時的な周波数の変化を示している。
【0036】
ステップS140で計測されるアップチャープ領域のビート周波数f_up(n)は、|f_beat-fd|と定義される。また、ダウンチャープ領域のビート周波数f_down(n)は、|f_beat+fd|と定義される。ここで、参照光Lrと反射光Ltr0の周波数の隔たりをf_beatとし、反射光Ltrの周波数から反射光Ltr0の周波数を減算した値をfdとする。
【0037】
つまり、算出されるビート周波数f_up(n)は、f_beat-fdの正負が違っていても、その違いを反映できない。同様に、算出されるビート周波数f_down(n)は、f_beat+fdの正負が違っていても、その違いを反映できない。言い換えれば、算出されるビート周波数f_up(n)、f_down(n)からは、参照光Lrと反射光Ltrのどちらの周波数が高いかを特定できない。
【0038】
続いて処理回路7は、ステップS153で、対象の方位におけるビート周波数f_up(n)、f_down(n)のうち、前者の方が小さいか否かを判定する。前者の方が小さい場合はステップS155に進み、そうでない場合はステップ157に進む。
【0039】
ステップS155では、対象の方位におけるターゲットTGの暫定距離Dc2(n)を、以下の式により算出する。
Dc2(n)=tDis×(1/2)×C×T/FMW (7)
ただし、tDisは、
tDis=(f_up(n)-f_down(n))/2 (8)
という式により決定する。この式(8)は、図7に示すように、アップチャープ領域において参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が高く、ダウンチャープ領域においても参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が高い場合に、正しい距離を算出するための式である。すなわち、アップチャープ領域においてf_beat-fdに負の周波数が発生した場合に正しい距離を算出するための式である。これも、f_up(n)<f_down(n)の場合にはアップチャープ領域、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係としてあり得る組み合わせの1つである。ステップS155の後は、図5の処理を終了する。
【0040】
また処理回路7は、ステップS157では、対象の方位におけるビート周波数f_up(n)、f_down(n)のうち、後者の方が小さいか否かを判定する。後者の方が小さい場合はステップS159に進み、そうでない場合は、すなわち、前者と後者が同じ値の場合は、対象の方位におけるターゲットTGの暫定距離Dc2(n)を算出することなく、図5の処理を終了する。なお、前者と後者が同じ値の場合に暫定距離Dc2(n)を算出しないのは、暫定距離Dc1(n)が確定距離Dis(n)となるべきことが明らかだからである。
【0041】
ステップS159では、対象の方位におけるターゲットTGの暫定距離Dc2(n)を、以下の式により算出する。
Dc2(n)=tDis×(1/2)×C×T/FMW (9)
ただし、tDisは、
tDis=(f_down(n)-f_up(n))/2 (10)
という式により決定する。この式(10)は、アップチャープ領域において参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が低く、ダウンチャープ領域においても参照光Lrよりも反射光Ltrの方が周波数が低い場合に、正しい距離を算出するための式である。すなわち、ダウンチャープ領域においてf_beat+fdに負の周波数が発生した場合に正しい距離を算出するための式である。これも、f_up(n)>f_down(n)の場合にはアップチャープ領域、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係としてあり得る組み合わせの1つである。ステップS159の後は、図5の処理を終了する。
【0042】
このように、処理回路7は、ステップS150において、図5の処理を、ビート信号を受信した複数の方位についてそれぞれ行うことで、ビート信号を受信した方位の数と同じ数だけ、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出する。ただし、ビート周波数f_up、f_downが同じになる方位がある例外的な場合は、その方位については暫定距離Dc2(n)が算出されない。
【0043】
処理回路7は、ステップS150に続いて、ステップS160で、現時点のターゲットTRの方位毎の推定距離De(n)を算出する。その算出の際には、前回(すなわち、n-1回目)の演算周期について確定した1つまたは複数のターゲットTRの各方位の確定距離Dis(n-1)および確定速度V(n-1)を用いる。
【0044】
具体的には、例えば、各方位について、De(n)=Dis(n-1)-V(n-1)×Δtという式で、推定距離De(n)を算出する。ここで、Δtは、連続する演算周期間の時間差である。
【0045】
続いてステップS170では、ステップS150で算出した暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)とステップS160で算出した推定距離De(n)の比較に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち一方を確定距離Dis(n)として選出する。すなわち、推定距離De(n)に鑑みて暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち実際の距離として妥当性が高い方を確定距離Dis(n)として選出する。
【0046】
なお、ある方位についての暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)と比較する相手は、同じ方位についての推定距離De(n)であってもよいし、それがなければ、同じではないが近傍の方位についての推定距離De(n)であってもよい。近傍としては、例えば1つ隣までの方位であってもよいし、2つ隣までの方位であってもよいし、3以上であるm個隣までの方位であってもよい。
【0047】
例えば、図8のように、1回前の演算周期(すなわち時点n-1)において、方位X-1について確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)が決まり、方位X-2、X-3について確定距離Dis(n)、確定速度V(n-1)が決まらなかったとする。確定距離Dis(n-1)が決まらない例としては、例えばその方位に検知できる物体が存在しなかった等がある。図8の事例では、方位X-1について確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)が前回の演算周期のステップS170、S180でそれぞれ114.3m、100km/hに確定していたとする。なお、図8中の各セルのハイフンは、そのセルに該当する値が決まらなかったことを示す。このことは、他図の表でも同様である。
【0048】
また、図8に示すように、今回の演算周期(すなわち時点n)において、方位X-1、X-2について暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)が決まり、方位X-3について暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)が決まらなかったとする。ある方位について暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)が決まらない例としては、例えばその方位に検知できる物体が存在しなかった等がある。
【0049】
図8の事例では、方位X-2について、ステップS151でDc1(n)=114.3mと判定され、ステップS153でf_up<f_downと判定され、ステップS155でDc2(n)=111.5mと判定されたとする。また、方位X-1について、ステップS151でDc1(n)=114.3mと判定され、ステップS153でf_up<f_downと判定され、ステップS155でDc2(n)=111.5mと判定されたとする。したがって、この事例では、これら2つの方位については、暫定距離Dc2(n)は、アップチャープ領域において負の周波数が発生したと仮定した場合のターゲットTRまでの距離である。
【0050】
また、図8の事例では、ステップS160で、方位X-1について、De(n)=Dis(n-1)-V(n-1)×Δt=114.3m-(100km/h×1000/3600)×0.1s=111.5mと、推定距離De(n)が算出される。
【0051】
また、図8の事例では、ステップS170で、方位X-1については、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)に対して同じ方位の推定距離De(n)が算出されているので、これが比較対象となる。
【0052】
具体的には、処理回路7は、方位X-1の暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち、同じ方位の推定距離De(n)との誤差の絶対値が所定の基準値X以下である方を確定距離Dis(n)として選択する。暫定距離Dc1(n)と暫定距離Dc2(n)は、基本的にはどちらかが正しく、かつ、両者の値の乖離はこの基準値Xより十分大きくなるよう基準値Xが設定されているので、このような比較により適切な暫定距離を選ぶことができる。
【0053】
また、基準値Xは、光干渉測定装置10によるターゲットTRまでの確定距離Dis(n)の算出値のばらつき(すなわち、頻度分布)の標準偏差の3倍以上となるよう、あらかじめ定められている。確定距離Dis(n)の算出値のばらつきについては、あらかじめ同じ構成の光干渉測定装置10を用いた実験によって特定可能である。基準値Xは、推定距離De(n)の1%と定められてもよい。
【0054】
図8の事例では、方位X-1の暫定距離Dc2(n)と方位X-1の推定距離De(n)の乖離が基準値X以下となっており、方位X-1の暫定距離Dc1(n)と方位X-1の推定距離De(n)の乖離が基準値Xを超えている。したがって、方位X-1の暫定距離Dc2(n)すなわち111.5mが方位X-1の確定距離Dis(n)として選択される。
【0055】
また、図8の事例では、ステップS170で、方位X-2については、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)に対して同じ方位の推定距離De(n)が算出されていない。そこで、方位X-2の所定の近傍の方位(例えば隣となる方位)である方位X-1における推定距離De(n)が比較対象となる。
【0056】
具体的には、処理回路7は、方位X-2の暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち、方位X-1の推定距離De(n)との誤差の絶対値が所定の基準値X以下である方を選択する。図8の事例では、方位X-2の暫定距離Dc2(n)と方位X-1の推定距離De(n)の乖離が基準値X以下となっており、方位X-2の暫定距離Dc1(n)と方位X-1の推定距離De(n)の乖離が基準値Xを超えている。したがって、方位X-2の暫定距離Dc2(n)すなわち111.5mが方位X-2の確定距離Dis(n)として選択される。その他の方位については、確定距離Dis(n)は決まらない。
【0057】
なお、ある方位について、f_up(n)=f_down(n)であることによりステップS157でf_up(n)>f_down(n)でないと判定された結果、暫定距離Dc1(n)は算出されたが暫定距離Dc2(n)は算出されない場合がある。その場合、処理回路7は、ステップS170で、確定距離Dis(n)として暫定よりDc1(n)を採用する。
【0058】
ステップS170に続くステップS180では、処理回路7は、ステップS170で各方位にて決定された確定距離Dis(n)に基づいて、方位毎に、ビート周波数正負の判定および確定速度V(n)を決定する。まず、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち確定距離Dis(n)として前者が選択された場合は、ビート周波数正負判定は正と判定され、後者が選択された場合は、ビート周波数正負判定は負と判定される。したがって、図8の事例では、方位X-1、X-2の両方について、ビート周波数正負判定は負と判定される。
【0059】
そして、正と判定された場合は、確定速度V(n)は、同じ方位におけるビート周波数f_up(n)、f_down(n)に基づいて、以下の式で算出される。
V(n)=Vdiff×(1/2)×C/Flow (11)
Vdiff=(f_down(n)-f_up(n))/2 (12)
また、負と判定された場合は、確定速度V(n)は、同じ方位におけるビート周波数f_up(n)、f_down(n)に基づいて、以下の式で算出される。
V(n)=Vdiff×(1/2)×C/Flow (13)
Vdiff=(f_down(n)+f_up(n))/2 (14)
ただし、式(14)は、ステップS153で同じ方位についてf_up<f_downと判定された場合の算出式である。ステップS157で同じ方位についてf_up>f_downと判定された場合は、式(14)は、下記式(15)に置き換えられる。
Vdiff=-(f_down(n)+f_up(n))/2 (15)
このようにして、1つまたは複数の方位について、確定距離Dis(n)および確定速度V(n)が算出される。
【0060】
ステップS180の後、処理は次の演算周期のステップS130に戻る。このような処理を繰り返すことで処理回路7は、逐次、複数の方位の確定的な位置的挙動である確定距離および確定速度を算出する。なお、位置的挙動は、距離、速度、加速度、その他位置に関する挙動全般を包含するものである。
【0061】
これら確定距離および確定速度は、車両内の他の装置に出力され、当該他の装置において、乗員等のユーザへの通知、車両の挙動の制御等に用いられる。あるいは、処理回路7が、これら確定距離および確定速度を用いて、報知装置を用いて乗員等のユーザへの通知を行い、駆動装置、制動装置、操舵装置等のアクチュエータを用いての車両の挙動の制御を行ってもよい。
【0062】
[1]以上の通り、処理回路7は、各時点nにおいて、アップチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係、および、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係の組み合わせを2個抽出する。具体的には、ステップS151、S155で2個抽出するか、あるいは、ステップS151、S157で2個抽出する。
【0063】
そして処理回路7は、それら複数個の組み合わせをそれぞれ前提とする計算手法で、時点nにおけるターゲットTRの複数個の暫定的な位置的挙動として、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出する。この処理も、ステップS151、S155で、あるいは、ステップS151、S157で実行される。
【0064】
そして処理回路7は、時点nよりも前の時点におけるターゲットTRの位置的挙動である確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち1つを選択する。そして選択したものを、ターゲットTRの確定的な位置的挙動である確定距離Dis(n)として決定する。
【0065】
このように、光干渉測定装置10は、過去の時点におけるターゲットTRの位置的挙動から、今回の時点における参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係として妥当なものを選ぶ。このようにすることで、異なる2波長を用いる方法とは別の方法で、今回の時点における位置的挙動を、適切に決定することができる。
【0066】
なお、本実施形態のような処理を用いて参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係を特定する場合に、特許文献1のような2波長の光源を用いたりIQ信号を用いたりする手法を併用することが排除されるわけではない。
【0067】
[2]また、処理回路7は、時点nよりも前の時点におけるターゲットTRの位置的挙動に基づいて、時点nにおけるターゲットTRの推定上の位置的挙動として推定距離De(n)を算出する。そして、推定距離De(n)と複数個の暫定的な位置的挙動との比較に基づいて、複数個の暫定的な位置的挙動のうち1つの暫定的な位置的挙動を、ターゲットTRの確定的な位置的挙動として決定する。このようにすることで、適切にターゲットTRの確定的な位置的挙動を決定することができる。
【0068】
[3]また、アップチャープ領域におけるビート周波数f_up(n)とダウンチャープ領域におけるビート周波数f_down(n)のうち、前者の方が小さい場合と、後者の方が小さい場合とで、上記複数個の組み合わせの抽出方法が異なる。
【0069】
すなわち前者の方が小さい場合、ダウンチャープ領域で参照光Lrより反射光Ltrの方が周波数方が大きく、かつ、アップチャープ領域で参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係が異なる2つの組み合わせを、2個の組み合わせとして抽出する。例えば、図6図7の例に対応する2つの組み合わせを抽出する。
【0070】
また、後者の方が小さい場合、アップチャープ領域において参照光Lrより反射光Ltrの方が周波数が小さく、かつ、ダウンチャープ領域における参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係が異なる2つの組み合わせを、複数個の組み合わせとして抽出する。
【0071】
こうするのは、アップチャープ領域のビート周波数f_up(n)の方がダウンチャープ領域のビート周波数f_down(n)よりも小さい場合は、ダウンチャープ領域において参照光Lrより反射光Ltrの方が周波数方が小さいという可能性がないからである。また、ダウンチャープ領域のビート周波数f_down(n)の方がアップチャープ領域のビート周波数f_up(n)よりも小さい場合は、アップチャープ領域において参照光Lrより反射光Ltrの方が周波数方が大きいという可能性がないからである。
【0072】
このようにすることで、暫定的な位置的挙動として、現実的にあり得ないものの算出を省略することができ、ひいては、処理負荷を効率的に低減することができる。
【0073】
[4]また、処理回路7は、複数の方位のうち或る1つの方位(例えば方位X-2)について、ターゲットTRの暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出したとする。その場合、処理回路7は、複数の方位のうち当該1つの方位とは異なる他の方位(例えば方位X-1)の確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)に基づいて、当該1つの方位の暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうちから1つの暫定距離を選択する。そして、選択した暫定距離を、当該1つの方位についてのターゲットTRの確定距離Dis(n)として決定する。
【0074】
このように、或る方位における時点nの暫定的な位置的距離を、別の方位における過去のターゲットTRの確定的な位置的挙動に基づいて、選択することで、より広範囲な方位についてターゲットTRの確定的な位置的挙動を選択することができる。
【0075】
[5]また、処理回路7は、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち、推定距離De(n)に対する誤差の絶対値が所定の基準値X以下であるものを、ターゲットTRの確定距離Dis(n)として決定する。このようにすることで、適切に確定距離Dis(n)を算出することができる。
【0076】
[6]そして、基準値Xは、光干渉測定装置10の確定距離Dis(n)の算出値のばらつきの標準偏差の3倍以上である。このようにすることで、光干渉測定装置10の性能に合わせた基準値Xが設定される。
【0077】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、ハードウェア構成は第1実施形態と同じであるが、処理回路7の処理内容が第1実施形態に対して異なっている。具体的には、本実施形態の処理回路7は、図4の処理に代えて図9の処理を行う。図9の処理において、ステップS110~S160、S180の処理内容は、図4の同じステップ番号の処理内容と同じである。
【0078】
処理回路7は、ステップS160に続くステップS165では、今回の演算周期におけるターゲットTRの同じ方位の加速度Acc1(n)、Acc2(n)を算出する。加速度Acc1(n)は暫定距離Dc1(n)を前提とする加速度であり、加速度Acc2(n)は暫定距離Dc2(n)を前提とする加速度である。その算出には、前回の演算周期(すなわち、時点n-1)における各方位の確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)および今回の演算周期における各方位の暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を用いる。
【0079】
加速度Acc1(n)、Acc2(n)の算出式は、例えば、
Acc1(n)=(2/g)×(-Dc1(n)+Dis(n-1)+V(n-1)
×Δt)/Δt (16)
Acc2(n)=(2/g)×(-Dc2(n)+Dis(n-1)+V(n-1)
×Δt)/Δt (17)
という式で算出されてもよいし、あるいは、
Acc1(n)=(1/2/g)×(Vc1(n)-V(n-1))
/(Dc1(n)-Dis(n-1)) (18)
Acc2(n)=(1/2/g)×(Vc2(n)-V(n-1))
/(Dc2(n)-Dis(n-1)) (19)
という式で算出されてもよい。
【0080】
ここで、gは重力加速度(すなわち、9.80665m/s)である。ここで、暫定速度Vc1(n)、Vc2(n)は、現時点におけるターゲットTGの確定速度V(n)の候補となる距離である。暫定速度Vc1(n)は、以下の式(20)、(21)によって算出される。
Vc1(n)=Vdiff×(1/2)×C/Flow (20)
Vdiff=(f_down(n)-f_up(n))/2 (21)
また、暫定速度Vc2(n)は、f_up(n)<f_down(n)である場合は以下の式(22)、(23)によって算出され、f_up(n)>f_down(n)である場合は以下の式(22)、(24)によって算出される。
Vc2(n)=Vdiff×(1/2)×C/Flow (22)
Vdiff=(f_down(n)+f_up(n))/2 (23)
Vdiff=-(f_down(n)+f_up(n))/2 (24)
【0081】
なお、ある方位についての加速度Acc1(n)、Acc2(n)は、同じ方位についての確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)を用いて算出されてもよい。しかし、それがなければ、同じではないが近傍の方位についての確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)を用いて算出されてもよい。近傍としては、例えば1つ隣までの方位であってもよいし、2つ隣までの方位であってもよいし、3以上であるm個隣までの方位であってもよい。
【0082】
例えば、図10に示すように、第1実施形態の図8の事例と同様に方位X-1、X-2、X-3についての確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)、暫定距離Dc1(n)、暫定距離Dc2(n)、推定距離De(n)が算出されたとする。
【0083】
更に図10の事例ではステップS165で方位X-1について上記式(16)によりAcc1(n)=2×{-(114.3m-114.3m)-(100km/h×1000/3600×0.1s)}/0.01/9.80665=-56.65Gと算出される。また、方位X-1について、上記式(17)により、Acc2(n)=2×{-(111.5m-114.3m)-(100km/h×1000/3600×0.1s)}/0.01/9.80665=0Gと算出される。
【0084】
この際、式(16)、(17)において、確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)については、同じ方位X-1における値があるので、それらが用いられる。
【0085】
また図10の事例ではステップS165で方位X-2について上記式(16)によりAcc1(n)=2×{-(114.3m-114.3m)-(100km/h×1000/3600×0.1s)}/0.01/9.80665=-56.65Gと算出される。また、方位X-1について、上記式(17)により、Acc2(n)=2×{-(111.5m-114.3m)-(100km/h×1000/3600×0.1s)}/0.01/9.80665=0Gと算出される。
【0086】
この際、式(16)、(17)において、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)については、同じ方位X-2における値が用いられる。しかし、確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)については、同じ方位X-2における値がないので、1つ隣の方位X-1の値が用いられる。
【0087】
続いてステップS170では、ステップS150で算出した暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)とステップS160で算出した推定距離De(n)の比較に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち一方を確定距離Dis(n)として算出する。ただしこの際、ステップS165で算出された加速度Acc1(n)、Acc2(n)も加味する。
【0088】
具体的には、処理回路7は、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち、推定距離De(n)との誤差の絶対値が所定の基準値X以下であり、かつ、対応する加速度の値が所定の許容値以下である方を確定距離Dis(n)として選択する。ここで、暫定距離Dc1(n)に対応する加速度は、加速度Acc1(n)であり、暫定距離Dc2(n)に対応する加速度は、加速度Acc2(n)である。許容値は、2G以下の値(例えば2G)であってもよい。ここで、2Gは、重力加速度を単位とする量(すなわち、重力加速度の2倍)である。
【0089】
あるいは、処理回路7は、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)と推定距離De(n)との比較は行わず、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち、対応する加速度の値が所定の許容値以下である方を確定距離Dis(n)として選択してもよい。
【0090】
図10の事例では、どちらの判定基準によっても、暫定距離Dc2が確定距離Dis(n)として選択される。なお、ある方位についての暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)と比較する相手は、同じ方位についての推定距離De(n)であってもよいし、それがなければ、同じではないが近傍の方位についての推定距離De(n)であってもよい。近傍としては、例えば1つ隣までの方位であってもよいし、2つ隣までの方位であってもよいし、3以上であるm個隣までの方位であってもよい。
【0091】
また、ある方位についての対応する加速度は、同じ方位についての加速度Acc1(n)、Acc2(n)であってもよいし、それがなければ、同じではないが近傍の方位についての加速度Acc1(n)、Acc2(n)であってもよい。近傍としては、例えば1つ隣までの方位であってもよいし、2つ隣までの方位であってもよいし、3以上であるm個隣までの方位であってもよい。
【0092】
[1]以上の通り、処理回路7は、時点nよりも前の時点n-1におけるターゲットTRの位置的挙動である確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)用いた計算をする。すなわち、時点n-1におけるこれらターゲットTRの位置的挙動に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のそれぞれに対応するターゲットTRの複数個の加速度Acc1(n)、Acc2(n)を算出する。そして、算出した加速度Acc1(n)、Acc2(n)に基づいて、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうち1つを、確定距離Dis(n)として決定する。このようにすることで、物体の位置的挙動にとって重要な物理量である加速度という観点から、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のどちらが妥当かを判定することができる。
【0093】
[2]また、処理回路7は、加速度Acc1(n)、Acc2(n)のうち所定の許容値以下である方の加速度に対応する暫定距離Dc1(n)を、ターゲットTRの確定距離Dis(n)として決定する。そして許容値は、2G以下である。このように、加速度という物理量の性質に応じた許容値を設定することができる。なお、本実施形態と第1実施形態で同様の構成からは、同様の効果が得られる。
【0094】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、ハードウェア構成は第2実施形態と同じであるが、処理回路7の処理内容が第2実施形態に対して異なっている。具体的には、本実施形態の処理回路7は、図9の処理に代えて図11の処理を行う。図11の処理において、ステップS110~S150、S165~S180の処理内容は、図4の同じステップ番号の処理内容と同じであり、ステップS160の処理内容は、図4のステップS160と異なる。
【0095】
すなわち、処理回路7は、ステップS150に続くステップS160では、処理回路7は、時点n-1のみならず、時点n-1よりも前の時点におけるターゲットの情報(すなわち、確定距離、確定速度等)に基づいて、各方位の推定距離De(n)を算出する。
【0096】
例えば、時点n-1における確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)および時点n-2における確定距離Dis(n-2)、確定速度V(n-2)を用いて、以下の式(25)、(26)により時点nの推定距離De(n)を算出する。
De(n)=Dis(n-1)-V(n-1)×Δt
+Acce/2×Δt (25)
Acce=2×{-(Dis(n-1)-Dis(n-2))-V(n-2)×Δt}
×Δt (26)
ここで、Acceは、時点n-1におけるターゲットTRの推定加速度である。
【0097】
なお、各方位において推定距離De(n)を算出するときに用いる確定距離Dis(n-1)、確定速度V(n-1)、確定距離Dis(n-2)、確定速度V(n-2)は、同じ方位における量である。
【0098】
なお、第2実施形態に対する本実施形態のような変更は、第1実施形態に対しても適用可能である。具体的には、図4のステップS160の処理を、図11のステップS160の処理に置き換えることができる。
【0099】
[1]以上の通り、処理回路7は、ターゲットTRの確定的な位置的挙動を演算するための演算周期における時点nよりも1回前および2回前の時点n-1、n-2のターゲットの位置的挙動に基づいて、推定距離De(n)を算出する。具体的には、時点n-1、n-2の確定距離、確定速度に基づいて推定加速度Acceを算出し、この推定加速度Acceと時点n-1、n-2の確定距離、確定速度に基づいて、推定距離De(n)を算出する。このようにすることで、より精度の高い推定距離De(n)を算出することができる。なお、本実施形態と第1、第2実施形態で同様の構成からは、同様の効果が得られる。
【0100】
なお、第1~第3実施形態において、処理回路7が、ステップS150を実行することで算出部として機能し、ステップS160~S180を実行することで決定部として機能する。
【0101】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0102】
また、本開示に記載の処理回路7およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の処理回路7およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の処理回路7およびその手法は、一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0103】
(変形例1)
上記第1~第3実施形態では、処理回路7は、ステップS170において、各方位の確定距離Dis(n)を、同じ方位における推定距離De(n)、加速度Acc1(n)、Acc2(n)等に基づいて算出する場合がある。また、ステップS170において、各方位の確定距離Dis(n)を、異なる方位における推定距離De(n)、加速度Acc1(n)、Acc2(n)等に基づいて算出する場合もある。そして、そのどちらにおいても、確定距離Dis(n)を最終的な値として採用している。
【0104】
しかし、必ずしもそのようになっていなくてもよい。例えば、処理回路7は、同じ方位における推定距離De(n)、加速度Acc1(n)、Acc2(n)等に基づいて算出した確定距離Dis(n)は最終的な値として採用してもよい。しかし、異なる方位における推定距離De(n)等に基づいて算出した確定距離Dis(n)は仮の値としてもよい。その場合、処理回路7は、ある方位A1について仮の値とした確定距離Dis(n)については、追加の判定を行ってもよい。すなわち、その確定距離Dis(n)の決定に用いた推定距離De(n)、加速度Acc1(n)、Acc2(n)等に対応する方位A2において、確定距離Dis(n)が最終的な値として算出されているか否かを判定してもよい。そして、算出されている場合は、方位A1について仮の確定距離Dis(n)を最終的な値として採用し、算出されていない場合は、方位A1について最終的な確定距離Dis(n)は算出されなかったとしてもよい。
【0105】
(変形例2)
上記第1~第3実施形態では、ステップS150で、アップチャープ領域における参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係の組み合わせを、2組抽出している。そして、抽出した2組に対応する暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出している。また、どれを抽出するかは、ビート周波数f_up(n)、f_down(n)の大小関係に応じて決められている。しかし、必ずしも抽出する数は2組でなくてもよく、3組であってもよい。
【0106】
(変形例3)
上記第1~第3実施形態では処理回路7はステップS150で、アップチャープ領域における参照光Lrと反射光Ltrの周波数の大小関係、ダウンチャープ領域における参照光Lrの周波数と反射光Ltrの周波数の大小関係の組み合わせを複数組抽出している。そして、抽出した複数組に対応するターゲットTRの暫定的な位置的挙動として、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)を算出している。そして、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)のうちから、ターゲットTRの確定的な位置的挙動として、確定距離Dis(n)を選び、選んだ確定距離Dis(n)に基づいて確定速度V(n)を算出している。
【0107】
しかし、抽出した複数組に対応するターゲットTRの暫定的な位置的挙動として算出されるのは、暫定距離Dc1(n)、Dc2(n)ではなく、第2実施形態で説明した暫定速度Vc1(n)、Vc2(n)であってもよい。
【0108】
この場合、処理回路7は、時点nよりも前のターゲットTRの位置的挙動に基づいて、時点nにおけるターゲットTRの推定上の位置的挙動として、ターゲットTRの速度の推定値である推定速度Ve(n)を算出してもよい。そして処理回路7は、暫定速度Vc1(n)、Vc2(n)と推定速度Ve(n)との比較に基づいて、暫定速度Vc1(n)、Vc2(n)のうちから、ターゲットTRの確定的な位置的挙動として、確定速度V(n)を選んでもよい。そして、選んだ確定速度V(n)に基づいて確定距離Dis(n)を算出してもよい。
【0109】
(変形例4)
上記実施形態においては、光学系は光ファイバを用いたものが例示されているが、光学系としては、コリメータ、偏光ビームスプリッタ、波長板等を有する空間光学系が採用されてもよい。
【0110】
(変形例5)
上記実施形態においては、光干渉測定装置10は車両に搭載されているが、車両以外の場所に設置されていてもよい。また、光干渉測定装置10のうち、処理回路7以外が車両に搭載され、処理回路7は車両以外の場所に搭載され、無線通信等を用いて処理回路7以外と信号の授受を行ってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 光源
2、3、4、5 光学系
6 光検出器
7 処理回路
10 光干渉測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11