(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025090166
(43)【公開日】2025-06-17
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20250610BHJP
【FI】
F04B39/00 107J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205236
(22)【出願日】2023-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】野崎 務
(72)【発明者】
【氏名】成澤 伸之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩介
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB07
3H003AC01
3H003BC03
3H003CB01
3H003CB08
(57)【要約】
【課題】ピストンリングの合口部における圧縮気体の漏洩を低減することができる気体圧縮機の提供。
【解決手段】気体圧縮機は、シリンダと、シリンダの内側で揺動しながら往復動し、圧縮室の気体を圧縮するピストンと、ピストンの外周に設けられたピストンリング149と、を備え、ピストンリング149は、ピストンリング149の外周の圧縮室側に傾斜面149jを有し、傾斜面149jは、ピストンリング149の軸心J1との成す角度である傾斜角がピストンの圧縮工程における最大揺動角度よりも大きい傾斜面領域を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダの内側で揺動しながら往復動し、シリンダ圧縮室の気体を圧縮するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられたピストンリングと、を備え、
前記ピストンリングは、該ピストンリングの外周のシリンダ圧縮室側に傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記ピストンリングの軸心との成す角度である傾斜角が前記ピストンの圧縮工程における最大揺動角度よりも大きい傾斜面領域を有する、気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記傾斜面は、前記ピストンリングの厚さ方向に関して、前記ピストンリングの合口部の重なり面である水平シール部よりもシリンダ圧縮室側に設けられている、気体圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記傾斜面は、前記ピストンリングの周方向位置に関して周方向半周よりも広い範囲に設けられている、気体圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記傾斜面は、前記ピストンリングの周方向位置に関して、揺動方向の一方側及び他方側のうち、前記圧縮工程において前記シリンダ圧縮室からより遠い側を含むように設けられている、気体圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記ピストンリングは、前記傾斜面が設けられている周方向範囲に合口部を備える、気体圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記傾斜面は、前記ピストンリングの周方向の所定範囲に形成される円錐面であり、
前記傾斜角は、前記所定範囲の中央において前記最大揺動角度よりも大きく、かつ、前記所定範囲の中央から端部に近づくほど大きく設定される、気体圧縮機。
【請求項7】
請求項1に記載の気体圧縮機において、
前記傾斜面は凸曲面であり、
前記凸曲面は、前記ピストンリングの厚さ方向に関してシリンダ圧縮室に近いほど前記傾斜角が大きい、気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
レシプロ式圧縮機は、空気圧縮機や冷凍空調用圧縮機として広く普及している。ところで、レシプロ式圧縮機において圧縮中の作動流体が作動室からクランク室へ漏洩すると、圧縮機の効率が低下してしまう。そこで、ピストンとシリンダの隙間から作動流体の漏洩を防ぐ方法として、ピストンリングをピストン外周に設け、ピストンリングをシリンダに押し付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ピストンリングは合口部を備え、合口部においてピストンリングの径を拡張してピストンに装着する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、揺動ピストン式レシプロ圧縮機ではピストンが揺動する。そのため、特定の揺動角においてピストンリングの合口部がシリンダ内周面に押し付けられ、合口部を介して作動室内の高圧空気がクランク室へ漏洩するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による気体圧縮機は、シリンダと、前記シリンダの内側で揺動しながら往復動し、シリンダ圧縮室の気体を圧縮するピストンと、前記ピストンの外周に設けられたピストンリングと、を備え、前記ピストンリングは、該ピストンリングの外周のシリンダ圧縮室側に傾斜面を有し、前記傾斜面は、前記ピストンリングの軸心との成す角度である傾斜角が前記ピストンの圧縮工程における最大揺動角度よりも大きい傾斜面領域を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ピストンリングの合口部における圧縮気体の漏洩を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】ピストンおよび連接棒の構成を示す図である。
【
図4】クランク角度とピストンの状態との関係を説明する図である。
【
図5】クランク角度と揺動角度との関係を示す模式図である。
【
図6】比較例におけるピストンの構成を示す分解斜視図である。
【
図7】比較例におけるピストンリングの合口部の拡大図である。
【
図8】比較例におけるピストンリングの合口隙間からの圧縮気体の漏れを説明する図である。
【
図9】
図8のピストンリングおよびシリンダ内周面を圧縮室側から見た図である。
【
図10】実施形態におけるピストンリングの平面図である。
【
図11】
図10のピストンリングをx軸方向のマイナス側から見た側面図である。
【
図12】実施形態におけるピストンリングの傾斜面の形状を説明する図である。
【
図13】
図12のピストンリングのR1断面およびR2断面を示す図である。
【
図14】実施形態におけるピストンリングの合口隙間からの圧縮気体の漏れを説明する図である。
【
図16】
図15に示すピストンリングおよびシリンダ内周面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図14を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【0009】
図1は気体圧縮機1の構成を示す図である。気体圧縮機1は、気体(例えば、空気)を圧縮する圧縮機本体10と、それを駆動する電動機2と、圧縮機本体10が吐出する気体を貯留するタンク3と、を備える。
【0010】
圧縮機本体10および電動機2はタンク3上に設置されている。圧縮機本体10に設けられた付図示のクランクシャフトには、圧縮機プーリ4が固定されている。電動機2の回転軸には電動機プーリ5が固定されている。圧縮機プーリ4と電動機プーリ5とには伝動ベルト6が掛け回されている。電動機2が回転駆動されて電動機プーリ5が回転すると、圧縮機プーリ4が回転駆動されて圧縮機本体10のクランクシャフトが回転する。その結果、圧縮機本体10による気体圧縮動作が行われる。圧縮気体は、シリンダ110の頂部に設けられたシリンダヘッド113内の排気室から、配管7を通じてタンク3へ吐出される。
【0011】
図2は、圧縮機本体10の概略構成を示す図である。圧縮機本体10は、クランクシャフト160と、シリンダ110と、シリンダ110内を往復動するピストン104と、クランクシャフト160とピストン104とを接続する連接棒102とを備える。シリンダ本体111はクランクケース109に接続され、クランクケース109によって形成されるクランク室109aはシリンダ本体111の内部に連通している。クランクケース109には、クランク室109aとクランクケース109の外部とを繋ぐ呼吸孔109bが形成されている。
【0012】
上述した圧縮機プーリ4と接続されるクランクシャフト160は、クランクジャーナル161と、クランクピン162と、クランクウエイト163と、クランクアーム164とを備える。クランクジャーナル161は、クランクケース109により回転自在に支持される。クランクシャフト160は、クランクジャーナル161の軸心Csを回転中心として回転する。クランクジャーナル161に設けられたクランクアーム164の一端には、連接棒102に連結されるクランクピン162が設けられている。
【0013】
クランクジャーナル161の軸心Csを中心にクランクシャフトが回転すると、クランクピン162の軸心Cbは円形軌跡P上を移動する。例えば、クランクシャフト160が反時計回りに回転すると、クランクピン162の軸心Cbは、円形軌跡P上を反時計回りに移動する。その結果、連接棒102の先端に固定されたピストン104は、シリンダ本体111内を揺動しつつ往復運動する。すなわち、ピストン104は、連接棒102と一体となってシリンダ内を揺動しながら往復する揺動型ピストンである。なお、クランクジャーナル161の軸心Csの位置は、シリンダ本体111の軸心Ccに対してオフセット量δだけ図示左側にオフセットしている。
【0014】
連接棒102の基端部121には、圧縮室119(
図2参照)内の気体圧力に基づく圧縮反力が加わる。このため、連接棒102の基端部121には、機械的強度が求められる。機械的強度の高い材料の一例としては、鉄系材料、アルミ系材料などの金属材料がある。
【0015】
図3は、ピストン104および連接棒102の構成を示す図である。連接棒102は、円筒状の基端部121と、半球状の先端部129と、基端部121と先端部129とを接続する直棒部120とを備える。先端部129は、球面側が直棒部120に接続され、平面側にピストン104が固定される。なお、ピストン104と先端部129との固定には、ボルト締結、溶接、圧入等が用いられる。
【0016】
連接棒102の基端部121には軸受128が設けられている。軸受128には、転がり軸受、滑り軸受などが用いされる。クランクピン162は、軸受128の内輪に固定される。基端部121に設けられた軸受128の軸心は、
図3の紙面に直交しており、かつ、連接棒102の軸心C1上に配置されている。ピストン104は、ピストン本体140とピストンリング149とを有する。ピストンリング149は、ピストン本体140の外周に形成された環状溝141に装着される。ピストン104の詳細については後述する。
【0017】
図2に戻って、シリンダ110について説明する。シリンダ110は、円筒状のシリンダ本体111と、バルブプレート112と、シリンダヘッド113とを備える。シリンダ110はクランクケース109に固定される。シリンダ本体111の上部開口端部を塞ぐように設けられるバルブプレート112は、シリンダ本体111とシリンダヘッド113とで挟持される。クランクシャフト160が回転すると、クランクピン162で連結された連接棒102の先端に固定されたピストン104が、シリンダ本体111内を揺動しながら往復動する。
【0018】
シリンダ本体111内には、ピストン104、シリンダ本体111およびバルブプレート112によって圧縮室119が形成される。シリンダヘッド113には、吸気室113aと排気室113bとが形成されている。吸気室113aは、バルブプレート112に形成された吸入孔112aを介して、シリンダ本体111に形成された圧縮室119に連通している。一方、排気室113bは、バルブプレート112に形成された吐出孔112bを介して、シリンダ本体111に形成された圧縮室119に連通している。
【0019】
バルブプレート112には、リード弁タイプの吸入弁112cおよび吐出弁112dが取り付けられている。吸入弁112cは、吸入孔112aの圧縮室119側の開口に対向して設けられ、吸入孔112aを閉じている。吐出弁112dは、吐出孔112bの排気室113b側の開口に対向して設けられ、吐出孔112bを閉じている。
【0020】
ピストン104がシリンダ110内を図示下方に移動することで、圧縮室119内の気体が膨張して圧縮室119の圧力が吸気室113aの圧力よりも低くなると、それらの差圧により吸入弁112cが開く。その結果、吸入孔112aを介して吸気室113aの気体が圧縮室119内へ流入する。逆に、ピストン104がシリンダ110内を図示上方に移動することで、圧縮室119内の気体が圧縮されて圧縮室119の圧力が排気室113bの圧力よりも高くなると、それらの差圧により吐出弁112dが開く。その結果、吐出孔112bを介して圧縮室119内の気体が排気室113bへ流入する。
【0021】
図4は、クランクシャフト160のクランク角度αとピストン104の状態との関係を説明する図である。
図4において、状態(a)はクランク角度αが0度の場合を示し、状態(b)はα=90度の場合を示し、状態(c)はα=180度の場合を示し、状態(d)はα=270度の場合を示し、状態(e)はα=360度の場合を示す。ピストン104は、状態(a),(e)で上死点となり、状態(c)で下死点となる。状態(a)から状態(c)までが吸入工程で、状態(c)から状態(e)までが圧縮行程である。
【0022】
ピストン104が上死点から下死点へ向かう吸入工程では、圧縮室119の気体が膨張し、圧縮室119の圧力が吸気室113a(
図2参照)およびクランク室109a側の圧力よりも低くなる。その結果、吸入弁112cが開いて吸気室113aの気体が圧縮室119内に吸い込まれるとともに、クランク室109a側の気体が、ピストン104とシリンダ110との間の隙間を通じて圧縮室119内に気体が吸い込まれる。ピストン104が下死点から上死点へ向かう圧縮工程では、圧縮室119の気体が圧縮され吐出弁112dから排出される。
【0023】
なお、
図2に示した例では、クランクシャフト160の回転中心(すなわち、クランクジャーナル161の軸心Cs)は、シリンダ本体111の軸心Cc(y軸)に対して図示左側にオフセットしている。一方、
図4では、説明を簡単にするためにオフセット量δが0の場合を例に示した。
【0024】
クランクシャフト160は、
図2において反時計回りに回転駆動されるものとする。
図4では、説明の便宜上、クランクジャーナル161を通るx軸、y軸で区切られる4つの領域を第1象限、第2象限、第3象限、第4象限とする。y軸はシリンダ本体111の軸心に一致している。
【0025】
クランク角度αが0度の状態(a)では、クランクピン162はy軸のプラス側軸上に位置しており、ピストン104は上死点に位置する。状態(a)では、ピストン104およびピストンリング149は水平状態となる。
【0026】
クランクシャフト160が反時計回りに回転してクランク角度αが0度から増加すると、クランクピン162はy軸上から第2象限に移動するとともに、圧縮室119の容積が増加する。連接棒102の先端に固定されたピストン104は、シリンダ本体111の軸心に直交する方向への移動がシリンダ本体111の内壁によって規制される。そのため、クランクピン162が第2象限に移動すると、ピストン104は、ピストン104の図示右側が図示下側(
図2のクランク室109aの方向)に傾くように揺動する。
【0027】
クランク角度αが90度の状態(b)になると、クランクピン162はx軸上のマイナス側に位置し、吸入工程において最も揺動角度が大きくなる。ここでは、クランク角度αのときの揺動角度βをβ(α)のように表すことにする。すなわち、状態(b)における揺動角度はβ(90)と表される。揺動中心C0はピストン104の略中央に位置し、状態(d)のように連接棒102が揺動中心C0に対して図示右側に振れるように揺動した場合の揺動角度をプラスとし、逆に、状態(b)のように図示左側に振れている場合の揺動角度をマイナスとする。すなわち、β(90)<0である。
【0028】
クランク角度αが180度の状態(c)になると、クランクピン162の位置はy軸上となり、揺動角度β(180)は0度となる。なお、β(180)は、クランク角度が180度の場合の揺動角度を表す。ピストン104は下死点の位置となり、ピストン104およびピストンリング149は水平状態となる。クランク角度αが180度を超えると圧縮室119の容積の縮小が開始され,圧縮室119内の気体が圧縮される。
【0029】
クランク角度αが270度の状態(d)になると、クランクピン162はx軸上のプラス側に位置し、圧縮工程において最も揺動角度βが大きくなる。連接棒102は揺動中心C0に対して図示右側に振れるように揺動しているので、β(270)>0である。
図4に示す例では、シリンダ本体111の軸心(y軸)に対するクランクジャーナル161の軸心のオフセット量δが0なので、β(270)=-β(90)の関係が成り立っている。
【0030】
クランク角度αが360度となって状態(e)になると、ピストン104はシリンダ本体111内を一往復して上死点に戻り、圧縮された気体の吐出しが完了する。
【0031】
図5は、クランク角度αと揺動角度βとの関係を模式的に示した図である。
図5において、実線L1は
図2に示したオフセット量δがゼロでない場合(
図2に示す構成の場合)を示し、破線L2はオフセット量δ=0の場合(
図4に示す構成の場合)を示す。ここでは、
図2の場合の揺動角度をβ1とし、
図4の場合の揺動角度をβ2と表すことにする。
【0032】
オフセット量δがゼロでない実線L1の場合(
図2)もゼロである破線L2の場合(
図4)も、揺動角度β1,β2はクランク角度αが90度で最小となり、270度で最大となる。すなわち、揺動角度β1,β2の絶対値|β1|,|β2|は、吸入工程ではα=90度で最大となり、圧縮工程ではα=270度で最大となる。また、上死点および下死点となるクランク角度αは、オフセット量δがゼロの場合もゼロでない場合も、上死点は0度,360度で下死点は180度である。
【0033】
一方、揺動角度β1,β2がゼロとなるクランク角度αは、オフセット量δがゼロの場合(破線L2)はα=0度であるが、オフセット量δがゼロでない場合(実線L1)には180度-α1および360度-α1となる。ここで、角度α1は、
図2に示すようにクランクピン162の軸心Cbがシリンダ本体111の軸心Cc上に位置する場合における、軸心Cc,Cbを通る直線と軸心Ccとの成す角度である。
【0034】
本実施の形態においては、ピストン104に装着されたピストンリング149の形状に特徴を有しており、その形状を有することで特有の効果を奏する。先ず、従来のピストンリングの形状と問題点について、
図6~8に示す比較例を参照して説明する。
【0035】
図6は、ピストン本体140と比較例におけるピストンリング249とを示す分解斜視図である。上述したように、本実施形態においてはピストンリング149の形状が、
図6に示すピストンリング249と異なっている。
図6のピストン本体140と
図3に示すピストン本体140とは同一形状である。
【0036】
ピストン本体140は略円板状に形成され、ピストン本体140の外周にはピストンリング249が装着される環状溝141が形成されている。ピストン104は、
図4に示したように、シリンダ本体111の軸心Ccに直交する方向の移動に関してはシリンダ内周面により拘束された状態で、シリンダ本体111内を揺動しつつ往復運動する。そのため、ピストン本体140は、円筒状のシリンダ内周面に対して揺動可能な形状であることが要求される。ピストン本体140の側周面142a,142bは、円筒形のシリンダ内周面に対して滑らかに揺動しつつ往復運動するように、球面状に形成されている。例えば、側周面142a,142bは、
図4の揺動中心C0を中心とする球面の一部で構成される。
【0037】
ピストン本体140は、固体潤滑性の優れた材料で形成される。固体潤滑性の優れた材料の一例としては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂に、強度などの機械的特性を改善するためにグラスファイバーなどの充填剤を入れた材料がある。ピストン本体140に固体潤滑性の優れた材料を用いることで、潤滑油を用いない構成とすることが可能である。潤滑油を用いない構成では、圧縮室119内の気体に潤滑油が混入することがなくなるという利点を有する。なお、本実施形態では、ピストンリング149は、ピストン本体140と同じ材料で形成される。
【0038】
比較例のピストンリング249は、矩形断面を有する略C字形状の部材である。そのため、ピストンリング249の外側面249dは略円筒面を形成している。ピストンリング249の端部249a,249bは厚さ(軸方向寸法)が薄くなっており、互いに重なり合っている。端部249a,249bの合計の厚さは、端部249a,249b以外の領域の厚さと等しく設定されている。以下では、互いに重なり合う端部249a,249bの領域Bを合口部249cと呼ぶことにする。
【0039】
図7は、ピストンリング249の合口部249cの部分の拡大図である。合口部249cにおいては、両方の端部249a,249bが重なり合っている水平シール部249fと、水平シール部249fの両端の端部249a,249bが重なり合っていない隙間領域249e,249gとが形成されている。以下では、隙間領域249e,249gを合口隙間249e,249gと呼ぶことにする。ピストンリング249の外側面249dの上端エッジ249iは、隙間領域249eの部分で途切れている。同様に、外側面249dの下端エッジ249mは、隙間領域249eの部分で途切れている。
【0040】
合口部249cにおける端部249a,249bが周方向にずれることで、ピストンリング249の径を変えることができる。なお、ピストンリング249が装着されたピストン104をシリンダ内に挿入する際には、自然状態のピストンリング249の外径をシリンダ内径寸法よりも小さくなるように弾性変形させて挿入する。
【0041】
ピストンリング249の軸方向がシリンダ本体111の軸方向と一致している場合には、ピストンリング249の外側面249dの全体がシリンダ内周面と密着する。ピストン104の上面側は圧縮室119に面しているので、端部249aは圧縮室内の圧縮気体の圧力により端部249bに押し付けられ、水平シール部249fにおいて端部249bに密着している。そのため、隙間領域249e,249gがあっても、シリンダ内周面の一周に亘ってピストンリング249の外側面249dが切れ目なく密着し、ピストンリング149の厚さ方向の気体漏洩が防止される。
【0042】
しかしながら、ピストン本体140の揺動に伴って、ピストンリング249がシリンダ内周面に対して水平状態だけでなく傾いた状態になると、ピストンリング249の厚さ方向の漏洩が生じる。
図8,9は、ピストンリング249の合口隙間249eからの圧縮気体の漏れを説明するための模式図である。
図8は、ピストン104が
図4の状態(d)にある場合、すなわち、クランク角度αが270度であって圧縮工程における揺動角度βの絶対値が最も大きくなった状態における、ピストンリング249とシリンダ内周面との接触状態を示したものである。
【0043】
図8において、ピストン本体140は図示左側が下がるように傾いている。
図8における座標軸x、y、zは
図4の場合と同様に設定されている。
図4に示したように、ピストン104はxy面内においてx方向に揺動する。紙面と直交するz方向は、揺動方向と直交する方向である。以下では、
図8におけるx軸のマイナス方向を揺動方向の一方と定義し、x軸のプラス方向を揺動方向の他方と定義する。なお、
図8に示す例では、ピストンリング249は、合口隙間249eがx軸上に位置するようにピストン本体140に装着されている。
【0044】
ピストン本体140が
図8のように傾くとピストンリング249も傾き、ピストンリング249の外側面249dの上端エッジ249iのみがシリンダ内周面111aと接触することになる。
図9は、ピストンリング249とシリンダ内周面111aとを
図8のy軸プラス側(圧縮室側)から見た図である。
図9は、合口部249cにおけるピストンリング249とシリンダ内周面111aとの接触状態を示す図である。なお、シリンダ内周面111aは二点鎖線で示した。
【0045】
図8に示すように合口隙間249eは圧縮室側に面しているので、
図9のように圧縮室側から合口隙間249eを見ると、合口隙間249e、シリンダ内周面111aおよび端部249bで囲まれた開口250が観察されることになる。そのため、
図8の破線矢印Cで示すように、開口250を介して圧縮室119の圧縮気体が圧縮室側からクランク室側へと漏洩し、気体圧縮機1の吐出し空気量を低下させる要因となる。なお、寸法Gは、シリンダ内周面111aに接触する外側面249dの上端エッジ249iから、端部249bの水平シール部側のエッジまでのx方向距離である。
【0046】
図10,11は、本実施形態におけるピストンリング149を説明する図である。
図10はピストンリング149の平面図であり、ピストンリング149の軸方向上側から見た図である。
図11は、
図10のピストンリング149をx軸方向のマイナス側から見た側面図である。
図10において、x軸方向は揺動方向と一致しており、z軸方向は揺動方向に直交する方向となっている。ピストンリング149の合口部149cは、揺動方向の一方の側に配置されるようにピストン本体140に装着される。
図10に示す例では、合口部149cの合口隙間149eがx軸上に位置するように配置されている。
【0047】
ピストンリング149の合口部149cを含む周方向領域には、傾斜面149jが形成されている。傾斜面149jは、揺動方向の一方のx軸(すなわち、合口隙間149eの中央)を中央とする角度2φの範囲に形成されている。
図10に示す例では、φは90度よりも大きく設定され、傾斜面149jの範囲は揺動方向に直交する方向(z軸)よりも右側(揺動方向の他方の側)にまで及んでいる。傾斜面149jは、外側面149dの上端を切り欠くように形成されている。ピストンリング149の周方向の角度範囲2φには、傾斜面149jと外側面149dとの交線である傾斜面下端エッジ149kが形成される。すなわち、傾斜面下端エッジ149kは、傾斜面149jによって切り欠かれた外側面149dの上端エッジも構成している。
【0048】
なお、外側面149dにおいて、傾斜面149jによって切り欠かれていない領域の上端エッジ149i、および、外側面149dの下端エッジ149mは、ピストンリング249の上端エッジ249iの対応領域および下端エッジ249mと同様の形状となっている。
【0049】
ピストンリング149の端部149a,149bが重なり合う部分には、ピストンリング249の場合と同様に水平シール部149fが形成される。傾斜面149jは、傾斜面下端エッジ149kが水平シール部149fよりも軸方向上側に位置するように形成される。すなわち、傾斜面149jは、合口部149cの形成されている角度範囲を含み、かつ、水平シール部149fと交差しないように形成される。
【0050】
図12は、傾斜面149jの形状を説明する図である。なお、合口部149cの図示は省略した。
図12において、ピストンリング149の軸心J1はx軸とz軸との交点(原点O)と一致している。符号J2で示す点は傾斜面149jを切削加工する際の加工中心軸を示しており、軸心J1に対してx軸上をプラス方向に位置ずれした位置に設定される。二点鎖線L11,L12で示す円形ラインで挟まれた領域Eが加工領域である。加工領域Eと軸心J1中心とするリング形状のピストンリング149との重なり領域(破線を施した領域)に、傾斜面149jが形成される。傾斜面149jは、周方向においてx軸と一致する位置において(すなわち揺動方向の一方において)最も深く形成される。軸心J1に対する加工中心軸J2のずれ量が大きいほど、傾斜面149jが形成される周方向範囲が小さくなる。
【0051】
加工面の形状は、加工中心軸J2を軸心とする円錐面をリング状に切り取った形状を有している。傾斜面149jの面形状は加工面の形状と同一の円錐面となる。以下では、円錐面の母線と加工中心軸J2との間の角度θ2を、円錐面の傾きと称することにする。円錐面の母線は、例えば、
図12の加工中心軸J2と動径R2とを含む平面と円錐面との交線である。また、ピストンリング149の軸心J1を含む平面(例えば、軸心J1と動径R1とを含む平面)と傾斜面149jとの交線に関して、その交線と軸心J1との成す角を傾斜面149jの傾斜角θ1と称することにする。
【0052】
図12からも分かるように、xy平面は軸心J1および加工中心軸J2を含んでいるので、x軸位置における傾斜面149jの傾斜角θ1は、円錐面の傾きθ2と等しくなる。しかし、傾斜面149jのその他の周方向位置においては、傾斜面149jの傾斜角θ1と円錐面の傾きθ2とは等しくならず、θ1>θ2となっている。
【0053】
図13は、
図12の動径R1を含む平面で断面したピストンリング149の断面(R1断面と称する)と、動径R2を含む平面で断面したピストンリング149の断面(R2断面と称する)とを図示したものである。円錐面である傾斜面149jの断面上の形状は、傾斜した線分で表される。R2断面における、傾斜面149jと加工中心軸J2との成す角は、円錐面の傾きθ2と一致している。一方、R1断面における、傾斜面149jと軸心J1との成す角(すなわち傾斜角)θ1は、θ1>θ2である。
【0054】
図14は、ピストンリング149を用いた場合の合口隙間149eからの圧縮気体の漏れを説明する模式図である。
図14の場合も、上述した
図8と同様の揺動状態(
図4の状態(d))における断面を示す図である。すなわち、クランク角度αが270度であって圧縮工程における揺動角度βの絶対値が最も大きくなった状態を示している。以下では、この揺動角度β(270)を最大揺動角度βmaxと称することにする。
【0055】
ピストンリング149には傾斜面149jが形成されているので、
図14のようにピストンリング149が傾いた状態では、傾斜面下端エッジ149kがシリンダ内周面111aに接触するようになる。一方、
図8に示したピストンリング249の場合には、外側面249dの上端エッジ249iがシリンダ内周面111aに接触する。すなわち、ピストンリング149の場合には、比較例のピストンリング249の場合と比べて、外側面149dにおけるより水平シール部149fに近い箇所がシリンダ内周面111aに接触することになる。
【0056】
ピストンリング149を用いた場合の合口隙間149eに起因する漏洩開口(
図9の開口250に対応する開口)のx方向寸法G1は、傾斜面下端エッジ149kから端部149bの上端エッジである水平シール部149fまでのx方向距離となる。一方、ピストンリング249を用いた場合の寸法G(
図8参照)は、外側面249dの上端エッジ249iから水平シール部249fまでのx方向距離である。その結果、G>G1の関係が成り立っている。すなわち、ピストンリング249に代えてピストンリング149を用いることで、合口隙間149eに起因する漏洩開口をより小さくすることができる。その結果、合口隙間149eからの圧縮気体の漏洩を低減することができ、気体圧縮機1の吐出し空気量の低下を抑制することができる。
【0057】
ところで、ピストンリング149の傾斜面149jの傾斜角θ1は、ピストン本体140が揺動した場合に傾斜面149jがシリンダ内周面111aと接触しないような角度に設定される。
図14に示すように、ピストンリング149の外側面149dの圧縮室側延長面と傾斜面149jとの成す角は傾斜角θ1と等しい。また、
図14に示す揺動方向においては、ピストンリング149の外側面149dとシリンダ内周面111aとの成す角は、ピストン本体140の最大揺動角度βmaxと等しい。揺動方向以外の外周方向位置においては、外側面149dとシリンダ内周面111aとの成す角は最大揺動角度βmaxよりも小さくなる。そのため、傾斜面149jがシリンダ内周面111aと接触しないようにするためには、
図14の揺動方向における角度θ1(=θ2)がθ1>βmaxとなるように傾斜面149jを形成すれば良い。
【0058】
また、傾斜面149jは、傾斜面下端エッジ149kが水平シール部149fよりも厚さ方向上側に位置するように形成される。例えば、
図14において、傾斜面下端エッジ149kが水平シール部149fよりも厚さ方向の下側に位置するように傾斜面149jを形成した場合、圧縮気体の圧力による水平シール部149fにおける押付け力の作用が消失し、圧縮室119の圧縮空気が水平シール部149fからクランク室側に漏洩するおそれがある。そのため、傾斜面149jは、傾斜面下端エッジ149kが水平シール部149fよりも厚さ方向の上側となるように形成するのが好ましい。
【0059】
なお、ピストンリング149が
図14に示すように傾く圧縮工程では、揺動方向の一方側においては、傾斜面下端エッジ149kがシリンダ内周面111aと接触してシール機能を担っている。一方、揺動方向の他方側では、外側面149dの下端エッジ149mがシリンダ内周面111aに接触している。そして、揺動方向と直交する方向では、ピストンリング149のシリンダ内周面111aとの接触位置は、傾斜面下端エッジ149kから外側面149dの下端エッジ149mへと推移する。そのため、傾斜面下端エッジ149kから下端エッジ149mへの推移を適切に行わせるためには、傾斜面149jの周方向終端部は、
図10に示すように揺動方向の他方側に位置するのが好ましい。その結果、傾斜面149jは周方向の一部(角度2φの範囲)のみに形成されることになる。
【0060】
(変形例)
図15は、上述した実施形態の変形例を示す図であり、変形例におけるピストンリング149を装着したピストン本体140を示す。
図15においても、
図14と同様に、
図4の状態(d)に示す揺動状態における断面を示している。
図10,11に示したピストンリング149では、傾斜面149jは円錐面であって断面形状が直線(線分)である面であった。一方、変形例のピストンリング149の傾斜面149nは、外側に凸の曲面であって断面形状も外側に凸の曲線で構成されている。ピストンリング149のその他の構成は、
図10,11に示したピストンリング149と同様であり、説明を省略する。
【0061】
図16は、
図15に示したピストンリング149およびシリンダ内周面111aの拡大図である。上述したように、凸曲面である傾斜面149nの断面形状は、外側に凸の曲線となっている。
図15,16に示す例では、傾斜面149nは、断面曲線が円弧となるような凸曲面で形成されている。円弧の半径はt2であって、
図16に示す揺動方向においては、傾斜面149nは、厚さt1の端部149aの上端から寸法t2の範囲に形成されている。点P1で示す位置は、傾斜面149nの下端である。寸法t2は、t2<t1のように設定される。すなわち、傾斜面149nは、その下端が水平シール部149fよりも厚さ方向上側となるように形成される。
【0062】
揺動角度βがβ=0の場合には、ピストンリング149の外側面149dがシリンダ内周面111aに接触した状態となる。揺動角度βの大きさがゼロから大きくなるとピストンリング149が傾き始め、傾斜面149nとシリンダ内周面111aとの接触位置がP1からP2の方向に移動する。そして、
図16に示すように揺動角度βが最大揺動角度βmaxになると、傾斜面149nとシリンダ内周面111aとの接触位置は点P2で示す位置となる。
【0063】
傾斜面149nの傾斜角θ1は、凸曲面である傾斜面149nの接平面とピストンリング149の軸心J1(
図12参照)との成す角である。例えば、
図16の断面曲線である円弧の接線と軸心J1との成す角度である。傾斜角θ1は点P1ではゼロであって、点P1から点P2に近づくに従って角度が大きくなり、点P2において最大揺動角度βmaxとなる。さらに、点P2からピストンリング149の上端(圧縮室側の端部)に近づくに従い、傾斜角θ1は最大揺動角度βmaxからさらに大きくなる。
【0064】
傾斜面149nが凸曲面である変形例の場合も、寸法G1は
図8の場合の寸法Gよりも小さくなる。その結果、合口隙間149eからの圧縮気体の漏洩を低減することができ、気体圧縮機1の吐出し空気量の低下を抑制することができる。
【0065】
上述した実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0066】
(1)
図2,9~13,16等に示すように、気体圧縮機1は、シリンダ110と、シリンダ110の内側で揺動しながら往復動し、圧縮室(シリンダ圧縮室)119の気体を圧縮するピストン104と、ピストン104の外周に設けられたピストンリング149と、を備え、ピストンリング149は、ピストンリング149の外周のシリンダ圧縮室側に傾斜面149jを有し、傾斜面149jは、ピストンリング149の軸心J1との成す角度である傾斜角θ1がピストン104の圧縮工程における最大揺動角度βmaxよりも大きい傾斜面領域を有する。
【0067】
例えば、
図12に示す平面で構成される傾斜面149jであれば、傾斜面149jの全領域で傾斜角θ1はθ1>βmaxである。また、
図16に示す凸曲面で構成される傾斜面149nであれば、
図16における点P2よりも圧縮室側の傾斜角θ1はθ1>βmaxである。このような傾斜面149j、149nを有するピストンリング149においては、揺動方向の一方の側に設けられる合口部149cを傾斜面範囲に形成することで、合口部149cの圧縮室側に設けられた合口隙間149eによる圧縮気体の漏洩を低減することができる。その結果、気体圧縮機1の吐出し空気量の低下を抑制することができる。
【0068】
(2)上記(1)において、
図11,14等に示すように、傾斜面149jは、ピストンリング149の厚さ方向に関して、ピストンリング149の合口部149cの重なり面である水平シール部149fよりも圧縮室側に設けられている。そのような構成とすることにより、水平シール部149fはクランク室側の位置することになる(
図14参照)。その結果、圧縮室側の圧縮気体の圧力により水平シール部149fが密着し、水平シール部149fにおける圧縮気体の漏洩が防止される。
【0069】
(3)上記(1)において、
図10等に示すように、傾斜面149jは、ピストンリング149の周方向位置に関して周方向半周よりも広い範囲(角度2φの範囲)に設けられている。そのため、傾斜面149jの周方向形成領域を揺動方向に直交する方向にも配置することができ、揺動方向に直交する方向におけるピストンリング149のシール性を確保することができる。
【0070】
(4)上記(1)において、
図10,11,14等に示すように、傾斜面149jは、ピストンリング149の周方向位置に関して、揺動方向の一方側及び他方側のうち、圧縮工程において圧縮室119からより遠い側(
図10のx軸マイナス側)を含むように設けられている。合口部149cは揺動方向の一方の側に設けられるので、傾斜面149jが合口部149cの領域に設けられることになり、合口隙間149eからの圧縮気体の漏洩を低減することができる。
【0071】
(5)上記(1)において、
図10,11等に示すように、ピストンリング149は、傾斜面149jが設けられている周方向範囲に合口部149cを備える。合口部149cを傾斜面149jが形成されている周方向範囲に設けることで、合口隙間149eからの圧縮気体の漏洩を低減することができる。なお、
図10に示す例では、合口部149cは、合口隙間149eがx軸上となるように配置されているが、必ずしもこの周方向位置に限定されない。
図10の位置から時計回り方向または反時計回り方向にずれた位置に合口部149cを配置した場合でも、合口隙間149eからの漏洩を低減することができる。
【0072】
(6)上記(1)において、
図10~13等に示すように、傾斜面149jは、ピストンリング149の周方向の所定範囲に形成される円錐面であり、傾斜角θ1は、所定範囲の中央において最大揺動角度βmaxよりも大きく、かつ、所定範囲の中央から端部に近づくほど大きく設定するのが好ましい。このように構成された傾斜面149jの周方向範囲に合口部149cを設けることで、合口隙間149eにおける圧縮気体の漏洩を低減することができる。また、
図15,16に示す傾斜面149nのように、圧縮室(シリンダ圧縮室)119に近い側ほど傾斜角が大きい凸曲面としても良い。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0074】
1…気体圧縮機、2…電動機、10…圧縮機本体、102…連接棒、104…ピストン、109…クランクケース、109a…クランク室、110…シリンダ、111…シリンダ本体、111a…シリンダ内周面、112…バルブプレート、113…シリンダヘッド、119…圧縮室(シリンダ圧縮室)、140…ピストン本体、141…環状溝、149,249…ピストンリング、149a,149b,249a,249b…端部、149c,249c…合口部、149d,249d…外側面、149e,149g,249e,249g…合口隙間、149f,249f…水平シール部、149i,249i…上端エッジ、149j,149n…傾斜面、149k…傾斜面下端エッジ、149m,249m…下端エッジ、160…クランクシャフト、250…開口、J1…軸心、J2…加工中心軸、α…クランク角度、β,β(α)…揺動角度、β(270),βmax…最大揺動角度、θ1…傾斜角、θ2…円錐面の傾き