(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009052
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】生地又は不織布の被覆シート
(51)【国際特許分類】
A01N 59/14 20060101AFI20250109BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20250109BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20250109BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20250109BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20250109BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20250109BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20250109BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20250109BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A01N59/14
A47G9/02 K
A47G9/10 Z
A01P7/04
A01N25/10
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/20 Z
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111786
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】509180658
【氏名又は名称】株式会社バイオフェイス東京研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】溝垣 友通
【テーマコード(参考)】
3B102
4H011
【Fターム(参考)】
3B102BA10
3B102BA11
4H011AA02
4H011AC04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BB22
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH04
(57)【要約】
【課題】使い捨てではなく長期の防ダニ効果を実現できる生地又は不織布の被覆シートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の生地又は不織布の被覆シートは、被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、防ダニ剤を担持体に担持させてなる本体シート材からなることを特徴とする。本体シート材の防ダニ効果からダニなどの不快害虫を死滅させ、且つ生息可能な対象物品への不快害虫の移動を抑え、また同時に生息可能な対象物品からの不快害虫の拡散も防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、防ダニ剤を担持体に担持させてなる本体シート材からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項2】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記防ダニ剤は硼酸系セラミックス又は銅担持セラミックスを含むことを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項3】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記防ダニ剤は植物由来の微粉若しくは精油を練込み若しくは担持させたものであることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項4】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は、防ダニ成分の化合物からなる薬品を含む層を有することを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項5】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は抗菌防臭剤若しくは抗菌消臭剤が付加されることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項6】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は端部にファスナーを有することを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項7】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記被覆対象物は寝具、衣類、緩衝材若しくは家具の一部であることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項8】
被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、抗菌防臭剤又は消臭剤の少なくとも一方を担持体に担持させてなる本体シート材からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項9】
請求項8記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記担持体には防ダニ剤を担持させてなる本体シート材からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項10】
請求項1又は請求項8記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は袋状の形状からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に影響があるダニから人が使用する物品を隔離して人体への影響を低減させる生地又は不織布の被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、居住環境の改良や、高級化が進む中、ダニを中心とする不快害虫の生息が数多く認められている。かかる不快害虫は皮膚疾患や喘息などの原因とされていることからその防除が強く望まれている。
【0003】
従来、このような不快害虫の防除方法としては、強力な掃除機による吸引除去の他、これらの不快害虫にとって好適な生息場所となる畳やカーペット、或いは寝具などにおいて、カーペットの下や寝具の付近に、ダニ誘引剤を含むダニ誘引シートと粘着剤層を組み合わせた防ダニシートを配置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のようにダニ誘引シートと粘着剤層を組み合わせた防ダニシートを配置して不快害虫を駆除する方法では、一旦、防ダニシートに不快害虫を集めて駆除することになり、例えば枕などの寝具に対して使用する場合には、人が寝ている間に不快害虫が防ダニシートに集まってくることになり、それは心理的には安眠を妨げるようになってしまう。また、ダニ誘引シートと粘着剤層を組み合わせた防ダニシートは、不快害虫を補足してシートごと廃棄することになるが、その防ダニシートの廃棄後は、また元の状態となるために長期の防ダニ効果をもたらすことが難しいと言う課題も生じる。
【0006】
そこで、本発明は、上述の技術的な課題に鑑み、不快害虫を集めるようなことはせずに、長期の防ダニ効果を実現できる生地又は不織布の被覆シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的な課題に鑑み、本発明の生地又は不織布の被覆シートは、被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、防ダニ剤を担持体に担持させてなる本体シート材からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の生地又は不織布の被覆シートは、本体シート材の担持体に防ダニ効果を有しており、被覆対象物より大きなサイズを有し、寝具、クッション材、座布団、家具の一部、衣類などの不快害虫が生息可能な被覆対象物を包むように配設させることができる。被覆対象物より大きなサイズは、被覆対象物を全体的に余裕を以って包むことができるサイズである、例えば枕や座布団などの物品であれば、最も大きな物品面の2倍以上の面積を有し、端部のマージンも考慮すると、被覆対象物の2.5~3.5倍の縦横方向の長さのサイズ、より好ましくは被覆対象物の2.2~4.0倍の縦横方向の長さのサイズを有するものとされる。包み方は、被覆対象物に応じて選ぶことができ、被覆対象物の形状に密着させることもで、余裕をもって折るような方式でも良い。さらに包み方については一部が2重折や3重折のような折り込み方でも良い。これにより、本体シート材の防ダニ効果から不快害虫を死滅させ、且つ生息可能な対象物品への不快害虫の移動を抑え、また同時に生息可能な対象物品からの不快害虫の拡散も防止する。
【0009】
本発明の防ダニ被覆シートは、一枚の平坦なシート形状であっても良く、筒状の形状のものも含まれる。紐やテープを本体シート材の端部近傍に沿わせて巾着の紐を絞るように操作することで閉じる構造とすることもでき、本体シート材の端部に粘着テープ、スナップボタン、ファスナー、面ファスナーなどを有する構造とすることもできる。
【0010】
防ダニ被覆シートの防ダニ効果を有する本体シート材は、生地製若しくは不織布製である担持体を有し、防ダニ剤をその担持体に担持させたものであり、担持体の例としては、編地、織布または不織布等の基布、木材パルプ板、木材パルプ粒、多孔質有機成形体である多孔性セルロース粒子(商品名:ビスコパール)、カオリン、タルク、ケイ酸カルシウム粒子(商品名:フローライト)、炭酸カルシウム粒子、珪石、珪砂、セラミックス等の無機(多孔質)担持体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ABS、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン系ジブロックポリマー、スチレン系トリブロックポリマー、熱可塑性樹脂エラストマー(TPE、TPO)等から構成されるフィルム又は固形状あるいは繊維状成形体等が挙げられ、これらの単体若しくは複数の層からなる構造を有していても良い。さらに担持体としては上記のポリオール系繊維の代わりにアクリロニトリル、ビニロン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリウレタン、非染色用ナイロンからなる繊維を使用しても良い。担持体に対しては、防ダニ機能付与剤を滴下、塗布、浸漬、練り込み等の各種方法にて含有させることができる。なお、本明細書において、「防ダニ」とは広い意味で用いており、殺ダニ、ダニ忌避、ダニ侵入阻止、ダニ行動阻害などの多くの機能について言及するものである。
【0011】
本体シート材に担持される防ダニ剤の一例としては、例えばポリエステル系繊維を担持体として、B2O3を放出する硼酸系セラミックスや、銅、銀若しくは白金又はこれらの混合物を表面に担持させたセラミックスなどの無機化合物を用いることができる。また、複合系のセラミックスを用いることも可能であり、例えば複合系のセラミックスとして、マグネシアと蛇紋石を混合した複合セラミックス、またはマグネシア、酸化亜鉛、硅石およびチタンを混合した複合セラミックス、あるいはマグネシア、硅石および酸化カルシウムを混合した複合セラミックスのうちのいずれかを使用することも可能である。
【0012】
また、天然由来の防ダニ剤を使用することもでき、杉、檜、赤松、ベイ檜葉、ベイ杉、ベイ松の精油を用いることができ、特に屋久杉、シノブヒバ、オウゴンシノノブヒバはその効果が高いとされており、他にもトド松、エゾ松の樹皮、ユーカリやメラルーカ、イチジクの葉、とちのきの実などもその精油は防ダニ剤として利用できる。またさらにはダニ忌避効果を有する防ダニ成分が含まれるハッカ油、レモンユーカリ油、ラベンダー油等の天然精油を用いることができる。
【0013】
有機系の防ダニ剤としては、例えばアミド系化合物,チオシアネート系化合物,カルボン酸エステル系化合物,ボルニルアルコール系化合物などの有機系化合物も挙げられる。具体的には、酢酸シンナミル、酢酸メンチル、シトロネロール、オイゲノール、ペリルアルデヒド、アニスアルデヒド、p-メンタン-3,8-ジオール、サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シクロヘキシル、安息香酸アミル、安息香酸イソアミル、安息香酸ヘキシル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸シス-3-ヘキセニル、安息香酸ベンジル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアミル、コハク酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、ファルネシルアセトン、ヘキシルシンナムアルデヒドなどがあげられる。光学異性体あるいは幾何異性体が存在する場合は、各異性体並びに可能な異性体混合物の全てが本発明に包含される。
【0014】
これらのなかでもサリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニル、セバシン酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチルや、安全性の面で、天然植物成分由来である酢酸シンナミル、p-メンタン-3,8-ジオール、サリチル酸ベンジル、セバチン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、安息香酸ベンジルが好ましく、とりわけp-メンタン3,8ジオール、サリチル酸ベンジル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、安息香酸ベンジルがより好ましい。これらのうち1種あるいは1種以上の複数を薬剤担持体に含有させることにより本発明の効果が発揮される。
【0015】
防ダニ剤を使用する防ダニ被覆シートは、単層の布地を折り畳んだものとすることもでき、複数の層の生地や布を重ねた構造ものでも良い。本体シート材を折り畳んだ場合の表面と裏面で異なる層構造とすることもでき、例えば枕を包む枕カバーとしても機能する生地又は不織布の被覆シートを用意する場合においては、枕の表面側に位置する本体シート材には、人体に近いことを想定して天然由来の防ダニ剤やセラミック系の防ダニ剤を使用し、枕の裏面側には有機系の防ダニ剤を使用することもでき、この場合において、防ダニ剤の成分に応じて本体シート材に着色して区別をつけることもできる。例えば、天然由来の防ダニ剤を含む構造部には緑色、セラミック系の防ダニ剤を含む構造部には青色、有機系の防ダニ剤を含む構造部には赤色というような色分けを例示できる。また、本体シート材を全体的に2層構造としリバーシブルとすることもできる。例えば内側をセラミック系の防ダニ剤を使用し、外側を天然由来の防ダニ剤として、植物由来の防ダニ剤が人体に近い位置にくることを好ましくないと感じる使用者は、本体シート材の表側と裏側を反転させて使用することもできる。また、防ダニ剤の成分を含有する層だけではなく、透湿性が高く且つ不快害虫の通過は遮断できる程度の生地を追加することもでき、このような生地の採用により、防ダニ効果をさらに高めることができる。
【0016】
また、本発明の生地又は不織布の被覆シートには、抗菌消臭効果や抗菌防臭効果を付与することもできる。生地又は不織布の被覆シートに抗菌防臭効果を付与する手段はいくつかの方法でなし得るものであり、その一例としては、防ダニ剤に銀イオン、白金イオン、金イオン系などの金属イオンなどからなる抗菌防臭剤若しくは抗菌消臭剤を混ぜる方法であり、また、他の方法としては防ダニ効果の備わった本体シート材の表面に、噴霧若しくは塗布などの方法で、銀イオン、白金イオン、金イオン系などの抗菌防臭剤を若しくは抗菌消臭剤を固定する方法である。また、本発明の生地又は不織布の被覆シートを多層構造とし、防ダニ機能層とは別層で抗菌防臭機能層若しくは抗菌消臭機能層を付与することも可能である。
【0017】
防ダニ被覆シートとして利用される抗菌防臭剤若しくは抗菌消臭剤としては、さらに金属イオンに由来するものだけではなく、臭いの元を吸収する作用のある活性炭やセラミックの粒子を利用することができる。活性炭やセラミックの粒子はシート構成材料に混ぜる方法や、金属イオンに由来するものでは染色時に液剤に混入することで付加する方法とすることもできる。
【0018】
本発明にかかる生地又は不織布の被覆シートに収納される被収納物としては、寝具として、例えばマットレス、まくら、敷布団、掛布団などがあり、家具若しくはインテリアとして、例えばクッション、ソファー、座布団、長座布団、椅子の座部や背もたれ、手すりなどがあり、服飾関連としては、スーツカバー、和服カバーなどの被服カバーなどがあり、さらには人間用だけではなく、動物や鳥類などの人間以外の生物の不快害虫対策としても機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】前記実施形態の生地又は不織布の被覆シートで枕を被覆したところを示す斜視図である。
【
図3】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図4】前記実施形態の生地又は不織布の被覆シートでマットレスを被覆したところを示す斜視図である。
【
図5】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第4の実施形態を示す平面図である。
【
図7】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第5の実施形態を示す模式図である。
【
図8】前記実施形態の生地又は不織布の被覆シートで洋服を被覆したところを示す模式図である。
【
図9】本発明の生地又は不織布の被覆シートの第6の実施形態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の生地又は不織布の被覆シートの1つの実施形態を示す斜視図である。
【
図11】
図10に示した前記実施形態の生地又は不織布の被覆シートを枕に装着する途中の断面図である。
【
図12】
図10に示した前記実施形態の生地又は不織布の被覆シートを枕に装着した時の断面図である。
【
図13】本発明の生地又は不織布の被覆シートの他の実施形態であって、いくつかの層構造を示す断面図である。
【
図14】本発明の生地又は不織布の被覆シートを枕に装着した際に、表面と裏面で層構造が異なる例を示す模式図である。
【
図15】本発明の生地又は不織布の被覆シートの一例をソファーに使用した例を示す模式図である。
【
図16】本発明の生地又は不織布の被覆シートの一例を洋服カバーに使用した例を示す模式図である。
【
図17】本発明の生地又は不織布の被覆シートの一例を座布団に使用した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。最初に説明する生地又は不織布の被覆シートは、
図1乃至
図2に示すように、枕カバーとして機能する生地又は不織布の被覆シートである。
【0021】
図1乃至
図2に示すように、本実施形態の防ダニ被覆シート10は、概ね矩形状のシート材であり、被覆対象物の枕12のサイズ(シングル:43cm×64cm)よりも大きく、例えば100×160cmのサイズである。防ダニ被覆シート10を使用する場合には、枕12を防ダニ被覆シート10の中央付近に置き、端部を折り込むようにして枕12を包み込めば良い。防ダニ被覆シート10は大き目のサイズであるので、枕12の端部に沿って折りこむこともでき、端部から余裕をもって包むような包み方でも良い。防ダニ被覆シート10の端部には面ファスナーやファスナー、粘着テープなどを配することもできる。
【0022】
本実施形態の防ダニ被覆シート10をそのまま枕カバーとして頭部に当接させて使用することも可能であり、本実施形態の防ダニ被覆シート10を内側のカバーとしてさらにその外側に外側枕カバーを配することも可能である。内側のカバーが防ダニ効果を有するため、使用者は快適な睡眠を享受することができる。
【0023】
防ダニ効果は防ダニ被覆シート10の本体シート材に含まれるセラミック系の防ダニ剤により、防ダニ効果が発揮される。セラミック系の防ダニ剤は、B2O3を放出する硼酸系セラミックスや、銅、銀、若しくは、金、白金またはこれらの混合物を表面に担持させたセラミックスなどの無機化合物であり、例えばポリエチレン樹脂に担持されて不快害虫を殺すと共に忌避させて、長期間の使用でも不快害虫から内部の枕12を保護し、使用者の体をダニから守ることができる。
【0024】
このようなダニの低減効果を有する生地又は不織布の被覆シートの本体シート材は、単層構造とすることも可能であるが、多層構造であっても良い。単層構造の場合は、ポリエステル系合成樹脂などを担持体としB2O3を放出する硼酸系セラミックスや、銅、銀、若しくは白金又はこれらの混合物を表面に担持させたセラミックスなどの無機化合物をその担持体に担持させて構成させる。これらのセラミックスに代えて天然由来の防ダニ剤を使用することもでき、同様に天然由来の防ダニ剤を担持体に担持させても良い。
【0025】
多層構造の場合には、異なる種類の層を形成することができ、一例として外側層をセラミックス系防ダニ剤を含む層とし、内側層を天然由来の防ダニ剤を含む層とすることができる。2種類以上の防ダニ剤を使用することで相乗効果を引き出すことも可能である。また、内側層44は有機系の防ダニ剤を含浸させる構造とすることもでき、内側層は直接人体等に使用時に触れない構成になることから、皮膚に敏感な使用者でも使用が容易となる。
【0026】
多層構造の場合には、外側層、中間層、内側層の3層構造となり、例えば中間層と内側層のどちらか一方をベース層として本体の形状を維持するための材料とし、このようなベース層の存在から外側層を防ダニ剤を含んだ層としながら同時に中間層と内側層のどちらか他方を防ダニ剤を含んだ層とすることもできる。ベース層としては、ダニなどの不快害虫を通過させない程度の細かな孔があり、生地又は不織布の被覆シート全体としての通気性は担保されていることが望ましい。
【0027】
このような単層構造若しくは多層構造の生地又は不織布の被覆シートには、抗菌防臭効果や抗菌消臭効果を付与することもできる。例えば本発明の生地又は不織布の被覆シートを多層構造とした場合では、防ダニ機能層とは別層で抗菌防臭機能層を付与することも可能である。この抗菌防臭効果が付与された生地又は不織布の被覆シートについて、本件発明者は、JIS L1902に従った繊維製品の抗菌性試験を行っており、その結果として抗菌活性値として、5.3と6.0が得られた。標準値は2.0であることから、高い抗菌性能も得られていることが分かる。
【0028】
また、このような生地又は不織布の被覆シートに抗菌防臭効果若しくは抗菌消臭効果を付加することについては、銀イオン系などの抗菌防臭剤を混ぜることや噴霧などで加えることができ、例えば防ダニ剤に銀イオン系などの抗菌防臭剤を混ぜる方法も可能とされ、他の方法としては防ダニ効果の備わった本体シート材の表面に、噴霧若しくは塗布などの方法で、銀イオン系などの抗菌防臭剤を固定することも可能である。さらには、活性炭の微粒子を漉き込んだ不織布や、臭いの吸着材料を混ぜた生地若しくは不織布を使用することもできる。
【0029】
生地又は不織布の被覆シートの第2実施形態として、被覆対象物をマットレス24とする例を
図3及び
図4に示す。防ダニ被覆シート20は、マットレス24を包むのに適合して、上からマットレス24の表面を被覆し、袋状の防ダニ被覆シート20の底面側には、ギャザーとその内側に開口部22があり、この開口部22からマットレス24を押し込むことで、マットレス24の表面側に防ダニ被覆シート20が広がることになる。
【0030】
図5は第3の実施形態として被覆対象物としてクッション36を覆う生地又は不織布の被覆シート30を示す。
図5に示す例では、クッション36が、実施形態にかかる生地又は不織布の被覆シート30に被覆されるところを模式的に示しており、筒状で両端に開口部32,34を有した生地又は不織布の被覆シート30の本体シート材には、防ダニ剤が担持されている。このように本発明にかかる生地又は不織布の被覆シートには緩衝材若しくは家具の一部を収納することができ、ソファー以外では例えば椅子などの家具にも適用できる。
【0031】
図6は第4の実施形態として平板状の防ダニ被覆シート40を示す。この防ダニ被覆シート40は、その両端にファスナー42を有しており、両端のファスナー42の位置を合わせこんで平板状から筒状にシートを変形させてから、被覆対象物を被覆することができる。
【0032】
図7及び
図8に示す例では、生地又は不織布の被覆シート50がスーツカバーとして使用されており、内部にはハンガーが配され、防ダニ被覆シート50に包まれるようにスーツ52が格納される。このようなスーツカバーにも、本発明の生地又は不織布の被覆シート50を適用することができ、スーツカバー以外では、運動用被服カバー、和服カバー、帽子カバー、シューズカバー、ハンカチカバー、靴下カバー、下着カバーなどにも使用することができる。
【0033】
図9に示す例では、生地又は不織布の被覆シート60が座布団カバーである例を示しており、その内部には座布団62を収容することができる。座布団としては、長座布団などにもサイズを変更して適用することができる。また、寝具としては、枕カバーについて説明したが、掛布団カバーや敷布団カバー、毛布カバー、タオルケットカバー、マットレスカバー、マットカバー、絨毯カバー、ラグカバー、スリッパカバー、タオルカバーなどの他の寝具やインテリアに対しても本発明の生地又は不織布の被覆シートを適用できることは言うまでもないことである。
【0034】
本発明の生地又は不織布の被覆シートは、使い捨て装置の如く不快害虫を集めるようなことはせずに、本体に担持される防ダニ剤の効果が続く限り比較的に長期の防ダニ効果を発揮する。よって、被収納物は、ダニなどの不快害虫が侵入することなく、清潔で安心した使用を継続できる。また、防ダニ剤として、天然由来の防ダニ剤では、心理的な安眠効果も得られることがあり、特に寝具などの適用で使用者に快適感を提供する。
【0035】
本発明の生地又は不織布の被覆シートは、以下に説明するように、形状として袋状とすることもできる。
図10乃至
図12に示すように、本実施形態の生地又は不織布の被覆シートは、枕カバーとして機能する防ダニ袋体である。
【0036】
図10乃至
図12に示すように、本実施形態の枕カバー110は、内部に収納する枕120を挿入できる開口部114を袋体本体112に有しており、収納される枕120のサイズ(シングル:43cm×64cm)よりも大きく、例えば45×78cmのサイズである。袋体本体112の一端には、開口部114が形成されており、袋体本体112の内部に枕120を十分に押し込んだ状態で開口部114の近傍には、袋体本体112のサイズが大きいことから、袋体本体112の一部が余って折り畳むことができ、その折り畳まれた部分が閉塞部116として機能する。閉塞部116には面ファスナーやファスナー、粘着テープなどを配することもできる。
【0037】
本実施形態の枕カバー110をそのまま枕カバーとして頭部に当接させて使用することも可能であり、本実施形態の枕カバー110を内側のカバーとしてさらにその外側に外側枕カバー122を配することも可能である。内側のカバーが防ダニ効果を有するため、使用者は快適な睡眠を享受することができる。
【0038】
防ダニ効果は袋体本体112の本体シート材111に含まれるセラミック系の防ダニ剤により、防ダニ効果が発揮される。セラミック系の防ダニ剤は、B2O3を放出する硼酸系セラミックスや、銅、銀、若しくは白金またはこれらの混合物を表面に担持させたセラミックスなどの無機化合物であり、例えばポリエチレン樹脂に担持されて不快害虫を殺すと共に忌避させて、長期間の使用でも不快害虫から内部の枕120を保護し、使用者の体をダニから守ることができる。
【0039】
本実施形態で使用するセラミック系の防ダニ剤は、その効果が約半年程度は長持ちするように構成されており、セラミックが有する防ダニ効果によって不快害虫の繁殖を防止する。この効果については、本件発明者は、JIS L-1920に従った試験を行ってその効果を確認している。試験は、JIS規格による繊維製品の防ダニ性能試験(増殖抑制試験)であり、供試ダニとしてヤケヒュウヒダニ (Dermatophagoides pteronyssinus) を用いた。本件の防ダニ袋体からなる枕カバー(実施例A, B)と、防ダニ袋体を配していない通常の枕カバー(比較例)を残存しているダニの数で比較したものである。なお、実施例Aは色付き、実施例Bは色なしである。
【0040】
【0041】
この表からも明らかように、実施例A, Bの本件の防ダニ袋体からなる枕カバーでは、8週間後において比較例の3375匹に対して129匹及び147匹に大きく低減されていることが分かり、96.2%及び95.6%の高い増殖抑制率が得られていることが分かる。
【0042】
このようなダニの低減効果を有する防ダニ袋体の本体シート材は、
図13の(a)に示すような単層構造とすることも可能であるが、(b)または(c)で示すような多層構造であっても良い。
図13の(a)に示す単層構造140の場合は、ポリエステル系合成樹脂などを担持体141としB
2O
3を放出する硼酸系セラミックスや、銅、銀、若しくは白金又はこれらの混合物を表面に担持させたセラミックスなどの無機化合物をその担持体に担持させて構成させる。これらのセラミックスに代えて天然由来の防ダニ剤を使用することもでき、同様に天然由来の防ダニ剤を担持体に担持させても良い。
【0043】
図13の(b)に示す多層構造142の場合には、異なる種類の層を形成することができ、一例として外側層143をセラミックス系防ダニ剤を含む層とし、内側層144を天然由来の防ダニ剤を含む層とすることができる。2種類以上の防ダニ剤を使用することで相乗効果を引き出すことも可能である。また、内側層144は有機系の防ダニ剤を含浸させる構造とすることもでき、内側層144は直接人体等に使用時に触れない構成になることから、皮膚に敏感な使用者でも使用が容易となる。
【0044】
図13の(b)に示す多層構造145の場合には、外側層146、中間層147、内側層148の3層構造となり、例えば中間層147と内側層148のどちらか一方をベース層として袋状の本体の形状を維持するための材料とし、このようなベース層の存在から外側層146を防ダニ剤を含んだ層としながら同時に中間層147と内側層148のどちらか他方を防ダニ剤を含んだ層とすることもできる。ベース層としては、ダニなどの不快害虫を通過させない程度の細かな孔があり、防ダニ袋体全体としての通気性は担保されていることが望ましい。
【0045】
このような単層構造若しくは多層構造の防ダニ袋体には、抗菌防臭効果を付与することもできる。例えば本発明の防ダニ袋体を多層構造とした場合では、防ダニ機能層とは別層で抗菌防臭機能層を付与することも可能である。この抗菌防臭効果が付与された防ダニ袋体について、本件発明者は、JIS L1902に従った繊維製品の抗菌性試験を行っており、その結果として抗菌活性値として、5.3と6.0が得られた。標準値は2.0であることから、高い抗菌性能も得られていることが分かる。
【0046】
また、このような防ダニ袋体に抗菌防臭効果を付加することについては、銀イオン系などの抗菌防臭剤を混ぜることや噴霧などで加えることができ、例えば防ダニ剤に銀イオン系などの抗菌防臭剤を混ぜる方法も可能とされ、他の方法としては防ダニ効果の備わった本体シート材の表面に、噴霧若しくは塗布などの方法で、銀イオン系などの抗菌防臭剤を固定することも可能である。
【0047】
防ダニ袋体の他の実施形態として、表と裏で異なる種類の防ダニ剤を使用した例を
図14に示す。
図14に示す防ダニ袋体150は、枕などの被収納物を挿入できる開口部151を有し、表面152が外側層156と内側層158の2層構造であり、裏面154が外側層156の単層構造とされる例である。例えば、防ダニ袋体150の外側層156をセラミックス系の防ダニ剤を含有する層とし、内側層158を天然由来の防ダニ剤を含有する層とすれば、使用者に近い表面にだけ、安眠効果なども高い檜などの由来の精油からなる防ダニ剤を配することもでき、より優れた防ダニ効果をもたらすことができる。
【0048】
図15乃至
図17はそれぞれ防ダニ袋体の被収納物を換えた例を示し、
図15は家具の一例として、ソファー160のクッション162を覆う防ダニ袋体がクッションカバー164である例を示し、
図16は防ダニ袋体がスーツカバー170として使用される例を示し、
図17は防ダニ袋体が座布団カバー180である例を示す。
【0049】
図15に示す例では、ソファー160の座面に配される一対のクッション162が、実施形態にかかるクッションカバー164に収納されるところを模式的に示しており、クッションカバー164の本体シート材には、防ダニ剤が担持されている。このように本発明にかかる防ダニ袋体の本体袋体には緩衝材若しくは家具の一部を収納することができ、ソファー以外では例えば椅子などの家具にも適用できる。
【0050】
図16に示す例では、防ダニ袋体がスーツカバー170として使用されており、内部にはハンガー172が配され、スーツカバー170に包まれるようにスーツ174が格納される。スーツカバー170の形状は背広に沿ったものとなっているが、一方の面には開口部176が縦方向に設けられ、開口部176を開閉自在とするファスナー178も取り付けられている。このようなスーツカバー170にも、本発明の防ダニ袋体を適用することができ、スーツカバー170以外では、運動用被服カバー、和服カバー、帽子カバー、シューズカバー、ハンカチカバー、靴下カバー、下着カバーなどにも使用することができる。
【0051】
図17に示す例では、防ダニ袋体が座布団カバー180である例を示しており、その内部には座布団182を収容することができる。座布団としては、長座布団などにもサイズを変更して適用することができる。また、寝具としては、枕カバーについて説明したが、掛布団カバーや敷布団カバー、毛布カバー、タオルケットカバー、マットレスカバー、マットカバー、絨毯カバー、ラグカバー、スリッパカバー、タオルカバーなどの他の寝具やインテリアに対しても本発明の防ダニ袋体を適用できることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0052】
10 防ダニ被覆シート
12 枕
20 防ダニ被覆シート
22 開口部
24 マットレス
30 防ダニ被覆シート
32、34 開口部
36 クッション
40 防ダニ被覆シート
42 ファスナー
50 防ダニ被覆シート
52 スーツ
60 防ダニ被覆シート
62 座布団
110 枕カバー
111 本体シート材
112 本体袋体
114 開口部
116 閉塞部
120 枕
122 外側枕カバー
140 単層構造
141 担持体
142 多層構造
143 外側層
144 内側層
145 多層構造
146 外側層
147 中間層
148 内側層
150 防ダニ袋体
151 開口部
152 表面
154 裏面
156 外側層
158 内側層
160 ソファー
162 クッション
164 クッションカバー
170 スーツカバー
172 ハンガー
174 スーツ
176 開口部
178 ファスナー
180 座布団カバー
182 座布団
【手続補正書】
【提出日】2024-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、JIS規格L-1920に従った防ダニ性能試験で6週間目から8週間目においても残存ダニ数の減少が生ずる、ダニに対する忌避機能を有したセラミックス系の防ダニ剤を担持体に担持させ、前記担持体と共に前記被覆対象物を全体的に包むように被覆する本体シート材からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項2】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は、防ダニ成分の化合物からなる薬品を含む層を有することを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項3】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は抗菌防臭剤若しくは抗菌消臭剤が付加されることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項4】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、抗菌防臭剤又は消臭剤の少なくとも一方を前記担持体に担持させてなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項5】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は端部にファスナーを有することを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【請求項6】
請求項1記載の生地又は不織布の被覆シートであって、前記本体シート材は袋状の形状からなることを特徴とする生地又は不織布の被覆シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上述の技術的な課題に鑑み、本発明の生地又は不織布の被覆シートは、被覆対象物より大きなサイズを有し、生地製若しくは不織布製であり、JIS規格L-1920に従った防ダニ性能試験で6週間目から8週間目においても残存ダニ数の減少が生ずる、ダニに対する忌避機能を有したセラミックス系の防ダニ剤を担持体に担持させ、前記担持体と共に前記被覆対象物を全体的に包むように被覆する本体シート材からなることを特徴とする。