(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025090535
(43)【公開日】2025-06-17
(54)【発明の名称】被験者の肌状態の推定方法、推定装置、及び、推定プログラム、並びに、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法、提案装置、及び、提案プログラム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20250610BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250610BHJP
G16B 50/10 20190101ALI20250610BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6869 Z
G16B50/10
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024202396
(22)【出願日】2024-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2023205297
(32)【優先日】2023-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 史哉
(72)【発明者】
【氏名】河野 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】横田 真理子
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB11
4B029BB20
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4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】皮膚を用いて被験者の肌状態を推定する新規な方法を提供すること。
【解決手段】被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、を有し、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、被験者の肌状態の推定方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定方法。
【請求項2】
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記A~F群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である、請求項1に記載の推定方法。
[A群]
【表1】
[B群]
【表2】
[C群]
【表3】
[D群]
【表4】
[E群]
【表5】
[F群]
【表6】
【請求項3】
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記G~L群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である、請求項1に記載の推定方法。
[G群]
【表7】
[H群]
【表8】
[I群]
【表9】
[J群]
【表10】
[K群]
【表11】
[L群]
【表12】
【請求項4】
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記ア~カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である、請求項1に記載の推定方法。
[ア群]
MMP1、MMP3、CCL21、COL1A1、COL3A1、ELN、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINB5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVL
[イ群]
MMP1、MMP3、CCL21、CXCR3、TNF、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、COL1A1、COL3A1、LY6G5B
[ウ群]
IGF1、IGFBP3、IL1A、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2
[エ群]
FLG、IL4、IL13、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTN
[オ群]
FLG、CCL17、IL4、IL13、CDH1、CLDN1、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRIN
[カ群]
CASP1、CASP4、CD44、CDH5、COL6A1、ELANE、EGFR、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、TRPV1、USP50
【請求項5】
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記キ~シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である、請求項1に記載の推定方法。
[キ群]
SMAD3、TGFB1、MMP2、MMP9、MMP13、FOS、JUN、RFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3
[ク群]
ELN、MMP12、MME、CSF2
[ケ群]
ALOX15、SLC27A1、SREBF1、DGAT1、FASN、ELF4、HMGCR
[コ群]
IL1B、TLR2、CXCL8、CXCL2、LCN2、STAT1、IFNG、IRF1、IL17A、TNF、TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPM2、TRPM4、TRPC6
[サ群]
MMP12、IL1A、IL1B、IL36G、IFNG、CXCL10、STAT3、TSLP、STAT1、CXCL8、IL4R、CCL18、CCL2、IL17A、IL23A、S100A7、S100A8、S100A9、S100A12、JUN、TNF、FOS
[シ群]
CD14、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1
【請求項6】
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物の顔画像、複数の人物から得た肌評価用のアンケートに対する回答、及び/又は複数の人物の医師による診断結果に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、請求項1~5の何れか一項に記載の推定方法。
【請求項7】
前記肌状態は、シワ、たるみ、開大毛穴、敏感肌、アトピー性皮膚炎、酒さ、赤ら顔、及びざ瘡から選ばれる1又は2以上である、請求項2~5の何れか一項に記載の推定方法。
【請求項8】
前記推定工程は、前記肌状態を、
前記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む、請求項6に記載の推定方法。
【請求項9】
前記推定工程は、前記肌状態を、
前記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記L群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む、請求項6に記載の推定方法。
【請求項10】
前記推定工程は、前記肌状態を、
前記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む、請求項6に記載の推定方法。
【請求項11】
前記推定工程は、前記肌状態を、
前記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む、請求項6に記載の推定方法。
【請求項12】
前記遺伝子発現解析は、前記皮膚から抽出したRNAを試料としたPCR又はトランスクリプトーム解析によって行われる、請求項1~5の何れか一項に記載の推定方法。
【請求項13】
前記被験者から取得直後の皮膚の体積は、0.05mm3以下である、請求項1~5の何れか一項に記載の推定方法。
【請求項14】
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
推定された前記肌状態に基づいて、前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法。
【請求項15】
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定装置。
【請求項16】
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案装置。
【請求項17】
被験者の肌状態を推定するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラム。
【請求項18】
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラム。
【請求項19】
被験者からマイクロバイオプシーにより採取された皮膚を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果に基づいて前記被験者の肌状態を推定する、被験者の肌状態の推定方法。
【請求項20】
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の心理状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の心理状態を推定する心理状態推定工程と、
を有し、
前記の特定の心理状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の心理状態を有する群と特定の心理状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の心理状態の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の肌状態の推定方法、推定装置、及び、推定プログラム、並びに、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法、提案装置、及び、提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の肌状態を推定するために、肌状態と因子との関係について数多くの研究がなされてきた。
例えば、特許文献1には、被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の色素沈着を評価することを特徴とする、皮膚の色素沈着を評価する方法であって、前記遺伝子が、NT5E遺伝子である、方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術があるところ、本発明は、皮膚を用いて被験者の肌状態を推定する新規な方法を提供することを課題とする。
また、被験者の推定された肌状態に基づいて、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する新規な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定方法である。
【0006】
本発明の好ましい形態では、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記A~F群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記G~L群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記ア~カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[ア群]
MMP1、MMP3、CCL21、COL1A1、COL3A1、ELN、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINB5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVL
[イ群]
MMP1、MMP3、CCL21、CXCR3、TNF、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、COL1A1、COL3A1、LY6G5B
[ウ群]
IGF1、IGFBP3、IL1A、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2
[エ群]
FLG、IL4、IL13、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTN
[オ群]
FLG、CCL17、IL4、IL13、CDH1、CLDN1、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRIN
[カ群]
CASP1、CASP4、CD44、CDH5、COL6A1、ELANE、EGFR、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、TRPV1、USP50
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、下記キ~シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[キ群]
SMAD3、TGFB1、MMP2、MMP9、MMP13、FOS、JUN、RFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3
[ク群]
ELN、MMP12、MME、CSF2
[ケ群]
ALOX15、SLC27A1、SREBF1、DGAT1、FASN、ELF4、HMGCR
[コ群]
IL1B、TLR2、CXCL8、CXCL2、LCN2、STAT1、IFNG、IRF1、IL17A、TNF、TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPM2、TRPM4、TRPC6
[サ群]
MMP12、IL1A、IL1B、IL36G、IFNG、CXCL10、STAT3、TSLP、STAT1、CXCL8、IL4R、CCL18、CCL2、IL17A、IL23A、S100A7、S100A8、S100A9、S100A12、JUN、TNF、FOS
[シ群]
CD14、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物の顔画像、複数の人物から得た肌評価用のアンケートに対する回答、及び/又は複数の人物の医師による診断結果に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記肌状態は、シワ、たるみ、開大毛穴、敏感肌、アトピー性皮膚炎、酒さ、赤ら顔、及びざ瘡から選ばれる1又は2以上である。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記推定工程は、前記肌状態を、
前記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡
であると推定することを含む。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記推定工程は、前記肌状態を、
前記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記L群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記推定工程は、前記肌状態を、
前記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡
であると推定することを含む。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記推定工程は、前記肌状態を、
前記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するシワ、
前記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するたるみ、
前記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する開大毛穴、
前記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因する敏感肌、
前記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子発現が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎、
及び/又は前記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子発現が変動したことに起因するざ瘡、
であると推定することを含む。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記遺伝子発現解析は、前記皮膚から抽出したRNAを試料としたPCR又はトランスクリプトーム解析によって行われる。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記被験者から取得直後の皮膚の体積は、0.05mm3以下である。
【0030】
また、本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
推定された前記肌状態に基づいて、前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法でもある。
【0031】
また、本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定装置でもある。
【0032】
また、本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案装置でもある。
【0033】
また、本発明は、被験者の肌状態を推定するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラムでもある。
【0034】
また、本発明は、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラムでもある。
【0035】
また、本発明は、被験者からマイクロバイオプシーにより採取された皮膚を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果に基づいて前記被験者の肌状態を推定する、被験者の肌状態の推定方法でもある。
【0036】
また、本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の心理状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の心理状態を推定する心理状態推定工程と、を有し、前記の特定の心理状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の心理状態を有する群と特定の心理状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、被験者の心理状態の推定方法でもある。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、皮膚を用いて被験者の肌状態を推定する新規な方法を提供することができる。また、被験者の推定された肌状態に基づいて、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する新規な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の推定装置のハードウェアブロック図である。
【
図2】本発明の提案装置のハードウェアブロック図である。
【
図3】シワを有さない群に属する人と、シワを有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図4】シワを有さない群に属する人と、シワを有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図5】たるみを有さない群に属する人と、たるみを有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図6】たるみを有さない群に属する人と、たるみを有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図7】開大毛穴を有さない群に属する人と、開大毛穴を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図8】開大毛穴を有さない群に属する人と、開大毛穴を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図9】敏感肌を有さない群に属する人と、敏感肌を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図10】敏感肌を有さない群に属する人と、敏感肌を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図11】アトピー性皮膚炎を有さない群に属する人と、アトピー性皮膚炎を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図12】アトピー性皮膚炎を有さない群に属する人と、アトピー性皮膚炎を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図13】ざ瘡を有さない群に属する人と、ざ瘡を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図14】ざ瘡を有さない群に属する人と、ざ瘡を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図15】メンタルヘルス不調を有さない(メンタルヘルス健康)群に属する人と、メンタルヘルス不調を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【
図16】メンタルヘルス不調を有さない(メンタルヘルス健康)群に属する人と、メンタルヘルス不調を有する群に属する人と、の間で発現の増減が認められた遺伝子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<1>被験者の肌状態の推定方法
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定方法である。
【0040】
(1)遺伝子発現解析工程
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程を有する。
【0041】
前記皮膚は、表皮、真皮及び/又は皮下組織を含み、皮膚片、皮膚細胞を含む。
前記皮膚は、好ましくは、角層を含む表皮領域と、皮膚の最外層から深さ0.20~0.50mmに位置する真皮領域を含む。表皮としては、角層の他、顆粒層、有棘層、基底層を含むことができる。
【0042】
前記真皮領域は、皮膚の最外層(角層)からの深さ(深度)が、好ましくは0.20mm以上、より好ましくは0.22mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上、特に好ましくは0.28mm以上に位置する領域を含む。
また、前記真皮領域は、前記深度が好ましくは0.75mm以下、より好ましくは0.50mm以下、さらに好ましくは0.40mm以下、特に好ましくは0.38mm以下に位置する領域を含む。
前記深度は、好ましくは0.20~0.50mm、より好ましくは0.25~0.45mm、さらに好ましくは0.28~0.40mmとすることができる。
取得する真皮領域の位置を上記範囲内とすることで、表皮領域と真皮領域を含むサンプルを、採取時の対象者への負担を軽減させつつ取得することができる。
【0043】
前記皮膚の採取方法は特に限定されないが、低侵襲的な採取方法を採用することが好ましい。具体的には、直径が1mm以下の針を用いて前記皮膚を採取することが好ましい。
前記針の直径は、好ましくは0.75mm以下、より好ましくは0.50mm以下、さらに好ましくは0.40mm以下である。
前記皮膚の採取には、マイクロバイオプシーを用いることが特に好ましい。
【0044】
前記皮膚の採取量は特に限定されないが、被験者から取得直後の皮膚の体積は、0.05mm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.045mm3以下、より好ましくは0.04mm3以下、より好ましくは0.038mm3以下、0.02mm3以下、0.01mm3以下、0.008mm3以下、0.005mm3以下、0.003mm3以下、0.002mm3以下である。
【0045】
前記皮膚を採取する部位は特に限定されないが、例えば、顔面、首、手の甲、腹部、足、及び指等が挙げられ、好ましくは皮膚疾患の生じやすい部位や、腕等の露光部と非露光部等比較に用いやすい部位から皮膚を採取する。
【0046】
本発明における「遺伝子発現解析」とは、遺伝子の発現状態を調べることをいう。
【0047】
前記遺伝子発現解析の手法は特に限定されないが、網羅的な遺伝子発現解析が可能であることが好ましい。具体的には、前記皮膚よりmRNAを抽出し、適切なサンプル処理を加えた上で、マイクロアレイや次世代シーケンサーなどのトランスクリプトーム解析によって網羅的な遺伝子発現解析(RNA-seq等)を行うことができる。
また、組織学的解析(RNAscope(登録商標)等)を利用することもできる。
また、単離された遺伝子個々の発現を解析する方法として、PCR解析などを利用することもできる。
【0048】
(2)肌状態推定工程
本発明は、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程を有する。
【0049】
本発明における「特定の肌状態」は、肌の炎症、シワ、たるみ、開大毛穴、敏感肌、肌荒れ、弾力の程度、肌色の程度、アトピー性皮膚炎、ニキビ、酒さ、赤ら顔、及びざ瘡等を含む。
本発明における「特定の肌状態」は、好ましくは、シワ、たるみ、開大毛穴、敏感肌、アトピー性皮膚炎、及びざ瘡から選ばれる1又は2以上である。
【0050】
ここで、開大毛穴には、毛穴の面積の広がり、毛穴の容積の広がり、毛穴の深さの広がりも含む。
【0051】
また、本発明における「特定の肌状態」には、肌の水分量、肌の水分蒸散量、肌の皮脂量、肌の立体感(容積)、頬の高さ、フェイスラインの長さに関する情報(パラメータ)に基づく肌状態も含む形態とすることができる。
【0052】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である。
【0053】
本発明における肌状態の推定には、肌状態の有無を推定することだけではなく、肌状態の程度を推定することが含まれる。
【0054】
複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法としては、複数の人物の顔画像、複数の人物から得た肌評価用のアンケートに対する回答、複数の人物の医師による診断結果、複数の人物の肌の機器分析結果(水分、TEWL、油分、及び粘弾性等)、及び、複数の人物の組織学的な鑑別等に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法が挙げられる。
本発明において好ましくは、複数の人物の顔画像、複数の人物から得た肌評価用のアンケートに対する回答、及び/又は、複数の人物の医師による診断結果に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する。
【0055】
複数の人物の顔画像に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法としては、複数の人物における特定の肌状態の程度を、評価者が顔画像を用いて目視評価することでグレード分けし、特定の肌状態の程度が大きい群を特定の肌状態を有する群に分類し、特定の肌状態の程度が小さい群を特定の肌状態を有さない群に分類する方法が挙げられる。
【0056】
複数の人物から得た肌評価用のアンケートに対する回答に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法としては、複数の人物のうち、特定の肌状態であると答えた人を特定の肌状態を有する群に分類し、特定の肌状態ではないと答えた人を特定の肌状態を有さない群に分類する方法が挙げられる。
【0057】
複数の人物の医師による診断結果に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法としては、複数の人物のうち、医師の診断により、特定の肌状態を有すると診断された人を特定の肌状態を有する群に分類し、特定の肌状態を有さないと診断された人を特定の肌状態を有さない群に分類する方法が挙げられる。
【0058】
複数の人物の肌の機器分析結果(水分、TEWL、油分、及び粘弾性等)に基づいて、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類する方法としては、特定の肌状態に関連する情報(パラメータ)に基準(基準値)を設け、複数の人物のうち、該基準(該基準値)を満たす人を特定の肌状態を有する群に分類し、該基準(該基準値)を満たさない人を特定の肌状態を有さない群に分類する方法が挙げられる。
【0059】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上述の方法により複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類した後、両群に属する複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析し、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において増減が認められた遺伝子である。
【0060】
本発明において、好ましくは、前記被験者の特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、特定の肌状態を有さない人の前記の特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する。
具体的には、前記被験者の特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、特定の肌状態を有さない人の前記の特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、を対比したときに、前記被験者の特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量の変動が認められた場合に、前記被験者の肌状態を推定する。
【0061】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記A~F群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記G~L群から選ばれる1又は2以上の群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
遺伝子オントロジー(Gene Оntology)は、個々の遺伝子が保持する情報を構造化し生物学的な意味付けをする用語の統制語彙のことである。個々の語彙は、GO Termと呼ばれる。
遺伝子オントロジーは、Molecular Function(分子機能)、Cellular Component(細胞構成要素)及びBiological Process(生物学的反応過程)の3つに大きく分類され、それらは各々階層構造を持つ。
【0076】
網羅的遺伝子解析から得られた変動遺伝子の意味を推定する際に、遺伝子オントロジーを利用することで、どのような機能や細胞内の位置、生物の反応過程に関連する遺伝子群が有意に変動しているのか等を理解することができる。
【0077】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0078】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がシワである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0079】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0080】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Extracellular Matrix Organization(GO:0030198、細胞外マトリックス組織)」、「Extracellular Structure Organization(GO:00403062、細胞外構造組織)」、「External Encapsulating Structure Organization(GO:0045229、外部カプセル化構造組織)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0081】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Extracellular Matrix Organization(GO:0030198)、Extracellular Structure Organization(GO:00403062)、External Encapsulating Structure Organization(GO:0045229)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0082】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0083】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がシワである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記A群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0084】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記G群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0085】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0086】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がたるみである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0087】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記B群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0088】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Lymphocyte Chemotaxis(GO:0048247、リンパ球走化性)」、「Chemokine-Mediated Signaling Pathway(GO:0070098、ケモカイン媒介シグナル伝達経路)」、「Cellular Response To Chemokine(GO:1990869、ケモカインに対する細胞反応)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0089】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Lymphocyte Chemotaxis(GO:0048247)、Chemokine-Mediated Signaling Pathway(GO:0070098)、Cellular Response To Chemokine(GO:1990869)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0090】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0091】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がたるみである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0092】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記H群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0093】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0094】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が開大毛穴である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0095】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記C群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0096】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Regulation Of Sequestering Of Triglyceride(GO:0010889、トリグリセリドの隔離の制御)」、「Regulation Of Receptor Signaling Pathway Via STAT(GO:1904892、STATを介した受容体シグナル伝達経路の調節)」、「Positive Regulation Of DNA Binding(GO:0043388、DNA結合の積極的な制御)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0097】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Regulation Of Sequestering Of Triglyceride(GO:0010889)、Regulation Of Receptor Signaling Pathway Via STAT(GO:1904892)、Positive Regulation Of DNA Binding(GO:0043388)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0098】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0099】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が開大毛穴である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0100】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記I群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0101】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0102】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が敏感肌である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0103】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、上記D群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0104】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Apoptotic Mitochondrial Changes(GO:0008637、アポトーシスによるミトコンドリアの変化)」、「Negative Regulation of mRNA Catabolic Process(GO:1902373、mRNA異化プロセスの負の制御)」、「Mitochondrial Transport(GO:0006839、ミトコンドリア輸送)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0105】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、Apoptotic Mitochondrial Changes(GO:0008637)、Negative Regulation of mRNA Catabolic Process(GO:1902373)、Mitochondrial Transport(GO:0006839)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0106】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0107】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が敏感肌である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0108】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、上記J群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0109】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0110】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がアトピー性皮膚炎である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0111】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記E群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0112】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Establishment Of Skin Barrier(GO:0061436、皮膚バリアの確立)」、「Skin Epidermis Development(GO:0098773、表皮の発達)」、「Triglyceride Metabolic Process(GO:0006641、トリグリセリドの代謝プロセス)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0113】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Establishment Of Skin Barrier(GO:0061436)、Skin Epidermis Development(GO:0098773)、Triglyceride Metabolic Process(GO:0006641)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0114】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0115】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がアトピー性皮膚炎である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0116】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記K群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0117】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0118】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がざ瘡である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0119】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記F群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0120】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、「Inflammatory Response(GO:0006954、炎症反応)」、「Chemokine-Mediated Signaling Pathway(GO:0070098、ケモカイン媒介シグナル伝達経路)」、「Cellular Response To Lipopolysaccharide(GO:0071222、リポ多糖に対する細胞反応)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0121】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Inflammatory Response(GO:0006954)、Chemokine-Mediated Signaling Pathway(GO:0070098)、Cellular Response To Lipopolysaccharide(GO:0071222)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0122】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記L群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0123】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がざ瘡である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記L群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記L群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0124】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記L群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記L群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0125】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記ア~カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[ア群]
MMP1、MMP3、CCL21、COL1A1、COL3A1、ELN、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINB5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVL
[イ群]
MMP1、MMP3、CCL21、CXCR3、TNF、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、COL1A1、COL3A1、LY6G5B
[ウ群]
IGF1、IGFBP3、IL1A、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2
[エ群]
FLG、IL4、IL13、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTN
[オ群]
FLG、CCL17、IL4、IL13、CDH1、CLDN1、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRIN
[カ群]
CASP1、CASP4、CD44、CDH5、COL6A1、ELANE、EGFR、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、TRPV1、USP50
【0126】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0127】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がシワである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0128】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記ア群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0129】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINA5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVLから選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0130】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINA5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVLから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、CLASP2、COMP、DAG1、FAP、SERPINA5、ELANE、LY6G5B、KRT10、IVLから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0131】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0132】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がたるみである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0133】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記イ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0134】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、LY6G5Bから選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0135】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、LY6G5Bから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、CCR2、RIPK2、AIPL1、ELANE、OGN、LY6G5Bから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0136】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0137】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が開大毛穴である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0138】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記ウ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0139】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2から選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0140】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、KRT16、MKI67、CRH、PPARG、PTGS2、EGF、TRPV1、PLIN1、PLIN2から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0141】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0142】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が敏感肌である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0143】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、上記エ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0144】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTNから選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0145】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTNから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、GBA1、IL18、STMN1、IRAK1、CARD10、CTCF、GSK3A、NGF、SEMA3A、ARTNから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0146】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0147】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がアトピー性皮膚炎である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0148】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記オ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0149】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRINから選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0150】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRINから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、KDF1、KRT16、GBA1、IL18、STMN1、DSP、PKP1、CTNNA1、LORICRINから選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0151】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0152】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がざ瘡である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0153】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記カ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0154】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、ELANE、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、USP50から選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0155】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、ELANE、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、USP50から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、ELANE、HYAL2、KRT1、MYO5A、NPY、SIRT2、TNC、USP50から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0156】
また、本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記キ~シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[キ群]
SMAD3、TGFB1、MMP2、MMP9、MMP13、FOS、JUN、RFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3
[ク群]
ELN、MMP12、MME、CSF2
[ケ群]
ALOX15、SLC27A1、SREBF1、DGAT1、FASN、ELF4、HMGCR
[コ群]
IL1B、TLR2、CXCL8、CXCL2、LCN2、STAT1、IFNG、IRF1、IL17A、TNF、TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPM2、TRPM4、TRPC6
[サ群]
MMP12、IL1A、IL1B、IL36G、IFNG、CXCL10、STAT3、TSLP、STAT1、CXCL8、IL4R、CCL18、CCL2、IL17A、IL23A、S100A7、S100A8、S100A9、S100A12、JUN、TNF、FOS
[シ群]
CD14、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1
【0157】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0158】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がシワである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0159】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記キ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0160】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、RFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3から選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるシワの有無を推定することができる。
【0161】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、RFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者におけるRFX5、IRF1、STAT1、BMP2、STAT3から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するシワの有無を推定することができる。
【0162】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0163】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がたるみである場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるたるみの有無を推定することができる。
【0164】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記ク群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するたるみの有無を推定することができる。
【0165】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0166】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が開大毛穴である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者における開大毛穴の有無を推定することができる。
【0167】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記ケ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する開大毛穴の有無を推定することができる。
【0168】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0169】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」が敏感肌である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者が敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0170】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者が、上記コ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因する敏感肌であるか否かを推定することができる。
【0171】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0172】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がアトピー性皮膚炎である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0173】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記サ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するアトピー性皮膚炎の有無を推定することができる。
【0174】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、上記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
【0175】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の肌状態」がざ瘡である場合に、特定の肌状態を有さない群に属する人と比較して、特定の肌状態を有する群に属する人において、上記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0176】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記シ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0177】
本発明における「特定の肌状態に関連する遺伝子」は、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1から選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるざ瘡の有無を推定することができる。
【0178】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、LY96、TNFSF13B、JUN、EIF2AK2、TREM1から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するざ瘡の有無を推定することができる。
【0179】
<2>被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定工程と、
推定された前記肌状態に基づいて、前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案工程と、
を有し、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法でもある。
【0180】
本発明の組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)は、通常知られているものであれば特に限定なく適用できる。
【0181】
上記の通り、本発明の刺激は、医療行為を含まない。
ここで、本発明における「医療行為」は、医師(医師の指示を受けた者を含む)がヒトに対して手術、治療、又は診断を実施する行為を意味する。
具体的には、本発明の刺激は、人体に対しての外科的処置を含まない。
【0182】
本発明の組成物としては、市販の化合物、公知化合物、コンビナトリアル・ケミストリー技術によって得られた化合物群、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物などの物質を挙げることができる。
【0183】
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
また、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等を挙げることができる。
【0184】
また、本発明の組成物としては、上記化合物、天然成分、及び物質を含む化粧品及び皮膚外用剤を挙げることができる。
【0185】
本発明の刺激としては、顔パック、マッサージ手法、アロマ、レーザー光照射、電気パルス、イオン導入、エレクトロポレーション、超音波、マイクロニードル等を挙げることができる。
【0186】
<3>被験者の肌状態の推定装置
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の肌状態の推定装置でもある。
【0187】
以下、本発明の推定装置のハードウェアブロック図(
図1)を参照しながら説明を加える。なお、本発明の推定装置は、上記<1>の項目で説明した被験者の肌状態の推定方法を実施するための装置である。したがって、上記<1>の項目の説明は、以下の推定装置に関しても妥当する。
【0188】
本発明の推定装置1は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部11と、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部131と、を備える。
【0189】
図1に示すように、推定装置1は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部11、記憶部121を備えるROM(Read Only Memory)12、被験者の肌状態を推定する肌状態推定部131を備えるCPU(Central Processing Unit)13、及び推定結果表示部14を有している。
【0190】
遺伝子発現解析結果取得部11は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する。具体的には、遺伝子発現解析を行った結果算出された、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量のデータを取得する。
【0191】
記憶部121は、特定の肌状態と遺伝子との関連性を記憶する。例えば、細胞外マトリックス組織(Extracellular Matrix Organization)や細胞外構造組織(Extracellular Structure Organization)に関するGO Termを有する遺伝子の発現変動が、シワと関連することを記憶する。また、例えば、MMP1やSERPINB5等の遺伝子の発現変動が、シワと関連することを記憶する。
【0192】
肌状態推定部131は、遺伝子発現解析結果取得部11において取得された遺伝子発現解析結果と、記憶部121に記憶された特定の肌状態に関連する遺伝子とを基に、被験者の肌状態を推定する。
【0193】
推定結果表示部14は、肌状態推定部131が推定した結果を表示するディスプレイである。
【0194】
<4>被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案装置
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析部と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、
を備え、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案装置でもある。
【0195】
以下、本発明の提案装置のハードウェアブロック図(
図2)を参照しながら説明を加える。なお、本発明の提案装置は、上記<2>の項目で説明した被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案方法を実施するための装置である。したがって、上記<2>の項目の説明は、以下の提案装置に関しても妥当する。
【0196】
本発明の提案装置2は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部21と、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部231と、推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部232と、を備える。
【0197】
図2に示すように、提案装置2は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する遺伝子発現解析結果取得部21、第一記憶部221と第二記憶部222とを備えるROM(Read Only Memory)22、被験者の肌状態を推定する肌状態推定部231と推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部232とを備えるCPU(Central Processing Unit)23、及び提案結果表示部24を有している。
【0198】
遺伝子発現解析結果取得部21は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析した結果を取得する。具体的には、遺伝子発現解析を行った結果算出された、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量のデータを取得する。
【0199】
第一記憶部221は、特定の肌状態と遺伝子との関連性を記憶する。例えば、細胞外マトリックス組織(Extracellular Matrix Organization)や細胞外構造組織(Extracellular Structure Organization)に関するGO Termを有する遺伝子の発現変動が、シワと関連することを記憶する。また、例えば、MMP1やSERPINB5等の遺伝子の発現変動が、シワと関連することを記憶する。
【0200】
肌状態推定部231は、遺伝子発現解析結果取得部21において取得された遺伝子発現解析結果と、第一記憶部221に記憶された特定の肌状態に関連する遺伝子とを基に、被験者の肌状態を推定する。
【0201】
第二記憶部222は、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量を減少(又は増加)することができる組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を記憶する。
【0202】
提案部232は、肌状態推定部231で推定された被験者の肌状態と、第二記憶部222に記憶された組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)とを基に、被験者に適した組成物及び/又は刺激を提案する。
【0203】
提案結果表示部24は、提案部232が提案した結果を表示するディスプレイである。
【0204】
<5>被験者の肌状態の推定プログラム
本発明は、被験者の肌状態を推定するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラムでもある。
【0205】
本発明の推定プログラムは、上記<3>の項目で説明した推定装置に含まれるCPUにおける各手段に対応する。したがって、上記<3>の項目の説明は、本発明の提案装置に関しても妥当する。
【0206】
<6>被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)の提案プログラム
また、本発明は、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案するプログラムであって、
コンピュータを、
被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析装置から得た遺伝子発現解析結果と、特定の肌状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の肌状態を推定する肌状態推定部と、
推定された前記肌状態に基づいて前記被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案する提案部と、として機能させ、
前記の特定の肌状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の肌状態を有する群と特定の肌状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、プログラムでもある。
【0207】
本発明の提案プログラムは、上記<4>の項目で説明した提案装置に含まれるCPUにおける各手段に対応する。したがって、上記<4>の項目の説明は、本発明の提案装置に関しても妥当する。
【0208】
<7>被験者の心理状態の推定方法
本発明は、被験者の皮膚における遺伝子の発現を解析する遺伝子発現解析工程と、
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、特定の心理状態に関連する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者の心理状態を推定する心理状態推定工程と、
を有し、
前記の特定の心理状態に関連する遺伝子は、複数の人物を特定の心理状態を有する群と特定の心理状態を有さない群とに分類し、両群において発現量の増減が認められた遺伝子である、
被験者の心理状態の推定方法である。
【0209】
ここで、本発明における被験者の心理状態の推定方法の説明は、上記<1>における「肌状態」を「心理状態」と読み替え適用することができる。
以下、本発明における被験者の心理状態の推定方法について、追加説明する。
【0210】
本発明における「特定の心理状態」は、好ましくは、メンタルヘルス不調である。
本発明における「メンタルヘルス不調」は、「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」のことを意味する。
【0211】
本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記M群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0212】
【0213】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の心理状態」がメンタルヘルス不調である場合に、特定の心理状態を有さない群に属する人と比較して、特定の心理状態を有する群に属する人において、上記M群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記M群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0214】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記M群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記M群から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0215】
本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、「Negative Regulation Of Immune Response(GO:0050777、免疫応答の負の制御)」、「Negative Regulation Of Immune System Process(GO:0002683、免疫システムプロセスの負の制御)」、「Regulation Of T Cell Cytokine Production(GO:0002724、T細胞サイトカイン産生の調節)」から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0216】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、Negative Regulation Of Immune Response(GO:0050777)、Negative Regulation Of Immune System Process(GO:0002683)、Regulation Of T Cell Cytokine Production(GO:0002724)から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0217】
本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記ス群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[ス群]
ADAR、ATG5、C4BPA、CCR1、CCR2、CD59、COL3A1、FOXP3、GPX1、IL33、SMAD7、TYRO3、WDR41
【0218】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の心理状態」がメンタルヘルス不調である場合に、特定の心理状態を有さない群に属する人と比較して、特定の心理状態を有する群に属する人において、上記ス群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ス群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0219】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記ス群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記ス群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0220】
本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、ADAR、ATG5、C4BPA、CD59、FOXP3、GPX1、IL33、SMAD7、TYRO3、WDR41から選ばれる1又は2以上の遺伝子であることがより好ましい。
前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0221】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、ADAR、ATG5、C4BPA、CD59、FOXP3、GPX1、IL33、SMAD7、TYRO3、WDR41から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、ADAR、ATG5、C4BPA、CD59、FOXP3、GPX1、IL33、SMAD7、TYRO3、WDR41から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0222】
また、本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記N群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子である。
【0223】
【0224】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の心理状態」がメンタルヘルス不調である場合に、特定の心理状態を有さない群に属する人と比較して、特定の心理状態を有する群に属する人において、上記N群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記N群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0225】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記N群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記N群の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0226】
本発明における「特定の心理状態に関連する遺伝子」は、好ましくは、下記セ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子である。
[セ群]
JUN、ICAM1、ACKR3、MSR1、PRIM2、PLAU、FYN
【0227】
後述する実施例で示す通り、本発明における「特定の心理状態」がメンタルヘルス不調である場合に、特定の心理状態を有さない群に属する人と比較して、特定の心理状態を有する群に属する人において、上記セ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現の増減が認められた。
したがって、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記セ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて前記被験者におけるメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【0228】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被験者の遺伝子発現解析結果と、上記セ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量と、に基づいて、前記被験者における、上記セ群から選ばれる1又は2以上の遺伝子の発現量が変動したことに起因するメンタルヘルス不調の有無を推定することができる。
【実施例0229】
<試験例1>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(1)
試験例1では、「特定の肌状態」がシワである場合に、被験者の肌状態がシワであると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0230】
まず、複数の人物を、目視評価基準を用いてシワを有する群とシワを有さない群とに分類した。目視評価基準は、予めシワの程度とグレード(シワの程度に応じてグレード0~グレード7まで用意)を対応付けた表である。シワの程度がグレード2以下の5人をシワを有さない群、シワの程度がグレード3以上の5人をシワを有する群、に分類した。
【0231】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面におけるシワ部位及び非シワ部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0232】
遺伝子発現解析の結果、
図3及び
図4に示す遺伝子は、シワを有さない群に属する人と比較して、シワを有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図3及び
図4に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図3及び
図4に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がシワであると推定できることがわかった。
【0233】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、シワ部位から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表27及び表28に示す。
【0234】
【0235】
【0236】
エンリッチメント解析の結果、細胞外マトリックス組織(Extracellular Matrix Organization)や細胞外構造組織(Extracellular Structure Organization)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0237】
上記表27及び表28から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表27及び表28から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がシワであると推定することができる。
【0238】
<試験例2>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(2)
試験例2では、「特定の肌状態」がたるみである場合に、被験者の肌状態がたるみであると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0239】
まず、複数の人物を、既報文献(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/49/2/49_114/_pdf/-char/ja)の方法に従って、たるみを有する群とたるみを有さない群とに分類した。たるみの度合い下位5人をたるみを有さない群、たるみの度合い上位5人をたるみを有する群、に分類した。
【0240】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面におけるたるみ部位及び非たるみ部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0241】
遺伝子発現解析の結果、
図5及び
図6に示す遺伝子は、たるみを有さない群に属する人と比較して、たるみを有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図5及び
図6に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図5及び
図6に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がたるみであると推定できることがわかった。
【0242】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、たるみ部位から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表29及び表30に示す。
【0243】
【0244】
【0245】
エンリッチメント解析の結果、リンパ球走化性(Lymphocyte Chemotaxis)やケモカイン媒介シグナル伝達経路(Chemokine-Mediated Signaling Pathway)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0246】
上記表29及び表30から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表29及び表30から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がたるみであると推定することができる。
【0247】
<試験例3>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(3)
試験例3では、「特定の肌状態」が開大毛穴である場合に、被験者の肌状態が開大毛穴であると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0248】
まず、VISIA-Evolution(Canfield社、VISIAは登録商標)の毛穴解析を用いて、複数の人物の毛穴個数を算出した。そして、算出した毛穴個数が80個以下の5人を開大毛穴を有さない群、算出した毛穴個数が80個よりも多い5人を開大毛穴を有する群、に分類した。
【0249】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面における開大毛穴部位及び非開大毛穴部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0250】
遺伝子発現解析の結果、
図7及び
図8に示す遺伝子は、開大毛穴を有さない群に属する人と比較して、開大毛穴を有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図7及び
図8に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図7及び
図8に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態が開大毛穴であると推定できることがわかった。
【0251】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、開大毛穴部位から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表31及び表32に示す。
【0252】
【0253】
【0254】
エンリッチメント解析の結果、トリグリセリドの隔離の制御(Regulation Of Sequestering Of Triglyceride)やSTATを介した受容体シグナル伝達経路の調節(Regulation Of Receptor Signaling Pathway Via STAT)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0255】
上記表31及び表32から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表31及び表32から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態が開大毛穴であると推定することができる。
【0256】
<試験例4>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(4)
試験例4では、「特定の肌状態」が敏感肌である場合に、被験者の肌状態が敏感肌であると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0257】
まず、複数の人物に対して、自分が敏感肌であるか否かについてのアンケートを行った。
そして、敏感肌ではないと回答した5人を敏感肌を有さない群、敏感肌であると回答した5人を敏感肌を有する群、に分類した。
【0258】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面における敏感肌部位及び非敏感肌部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0259】
遺伝子発現解析の結果、
図9及び
図10に示す遺伝子は、敏感肌を有さない群に属する人と比較して、敏感肌を有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図9及び
図10に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図9及び
図10に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態が敏感肌であると推定できることがわかった。
【0260】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、敏感肌を有する群に属する人から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表33及び表34に示す。
【0261】
【0262】
【0263】
エンリッチメント解析の結果、アポトーシスによるミトコンドリアの変化(Apoptotic Mitochondrial Changes)やmRNA異化プロセスの負の制御(Negative Regulation of mRNA Catabolic Process)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0264】
上記表33及び表34から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表33及び表34から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態が敏感肌であると推定することができる。
【0265】
<試験例5>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(5)
試験例5では、「特定の肌状態」がアトピー性皮膚炎である場合に、被験者の肌状態がアトピー性皮膚炎であると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0266】
まず、複数の人物に対して、自分がアトピー性皮膚炎であるか否かについてのアンケートを行った。また、複数の人物に対して医師がアトピー性皮膚炎であるか否かを診断した。
そして、アトピー性皮膚炎ではないと回答した人及び/又は医師の診断によりアトピー性皮膚炎ではないと診断された人をアトピー性皮膚炎を有さない群、アトピー性皮膚炎であると回答した人及び/又は医師の診断によりアトピー性皮膚炎であると診断された人をアトピー性皮膚炎を有する群、に分類した。
【0267】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面におけるアトピー性皮膚炎部位及び非アトピー性皮膚炎部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0268】
遺伝子発現解析の結果、
図11及び
図12に示す遺伝子は、アトピー性皮膚炎を有さない群に属する人と比較して、アトピー性皮膚炎を有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図11及び
図12に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図11及び
図12に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がアトピー性皮膚炎であると推定できることがわかった。
【0269】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、アトピー性皮膚炎を有する群に属する人から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表35及び表36に示す。
【0270】
【0271】
【0272】
エンリッチメント解析の結果、皮膚バリアの確立(Establishment Of Skin Barrier)や表皮の発達(Skin Epidermis Development)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0273】
上記表35及び表36から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表35及び表36から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がアトピー性皮膚炎であると推定することができる。
【0274】
<試験例6>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(6)
試験例6では、「特定の肌状態」がざ瘡である場合に、被験者の肌状態がざ瘡であると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0275】
まず、VISIA-Evolution(Canfield社、VISIAは登録商標)を用いて、複数の人物のざ瘡の有無を評価した。また、複数の人物に対して医師がざ瘡であるか否かを診断した。
そして、医師の診断によりざ瘡ではないと診断された人をざ瘡を有さない群、医師の診断によりざ瘡であると診断された人をざ瘡を有する群、に分類した。
【0276】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。
皮膚としては、複数の人物の顔面におけるざ瘡部位及び非ざ瘡部位から採取された皮膚を用いた。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0277】
遺伝子発現解析の結果、
図13及び
図14に示す遺伝子は、ざ瘡を有さない群に属する人と比較して、ざ瘡を有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図13及び
図14に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態を推定することができることがわかった。特に、
図13及び
図14に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がざ瘡であると推定できることがわかった。
【0278】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、ざ瘡を有する群に属する人から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表37及び表38に示す。
【0279】
【0280】
【0281】
エンリッチメント解析の結果、炎症反応(Inflammatory Response)やケモカイン媒介シグナル伝達経路(Chemokine-Mediated Signaling Pathway)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0282】
上記表37及び表38から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の肌状態を推定することができる。特に、上記表37及び表38から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の肌状態がざ瘡であると推定することができる。
【0283】
<試験例7>肌状態の推定の指標となる遺伝子の抽出(7)
試験例7では、「特定の心理状態」がメンタルヘルス不調である場合に、被験者の心理状態がメンタルヘルス不調であると推定するための指標となる遺伝子を抽出する。
【0284】
まず、複数の人物に対して、「心の状態」についてのアンケートを行った。
そして、アンケートの結果に基づいて、メンタルヘルス不調傾向なしの5人をメンタルヘルス不調を有さない(メンタルヘルス健康)群、メンタルヘルス不調傾向ありの5人をメンタルヘルス不調を有する群、に分類した。
【0285】
次に、それぞれの群に含まれる複数の人物の皮膚における遺伝子の発現を解析した。ここで、用意された皮膚は、採取量が0.05mm3以下であった。
遺伝子発現解析において、Picopure kit(Thermo fisher社製)を用いて、用意された皮膚からRNAを抽出した。
そして、Bioanalyzer(Agilent社製)を用いて、抽出後のRNAの品質確認を行った。その後、DV200値が60%以上のものを、SMART-seq Stranded kit(タカラバイオ株式会社製)のプロトコールに従い、RNA-seqに供した。
【0286】
遺伝子発現解析の結果、
図15及び
図16に示す遺伝子は、メンタルヘルス不調を有さない(メンタルヘルス健康)群に属する人と比較して、メンタルヘルス不調を有する群に属する人において発現の増減が認められた。
したがって、
図15及び
図16に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の心理状態を推定することができることがわかった。特に、
図15及び
図16に示す遺伝子の発現を指標として、被験者の心理状態がメンタルヘルス不調であると推定できることがわかった。
【0287】
また、上記遺伝子発現解析を行った結果、メンタルヘルス不調を有する群に属する人から採取された皮膚において、有意に遺伝子発現の増減が認められた遺伝子群を抽出し、公共ウェブツールであるEnrichr(https://maayanlab.cloud/Enrichr/)を用いて遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析によるbiological process(BP)の探索を行った。結果を表39及び表40に示す。
【0288】
【0289】
【0290】
エンリッチメント解析の結果、免疫応答の負の制御(Negative Regulation Of Immune Response)や免疫システムプロセスの負の制御(Negative Regulation Of Immune System Process)に関するGO Termが有意に出現することがわかった。
【0291】
上記表39及び表40から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現変化を複合的に評価することで、被験者の心理状態を推定することができる。特に、上記表39及び表40から選ばれる1又は2以上の遺伝子オントロジー(Gene Ontology)を有する遺伝子の発現を指標として、被験者の心理状態がメンタルヘルス不調であると推定することができる。
本発明によれば、被験者の肌状態を推定することできる。また、本発明によれば、被験者に適した組成物及び/又は刺激(ただし、医療行為は除く)を提案することができる。