(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009077
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】汚泥焼却設備および汚泥焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/04 20060101AFI20250110BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20250110BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20250110BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20250110BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20250110BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F23G5/04 A
C02F11/06 B ZAB
F23N5/00 E
F23N5/00 G
F23N5/00 L
F23N5/00 U
F23G5/50 G
F23N1/00 116
F23G7/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111821
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 央範
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】田島 潤一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 努
(72)【発明者】
【氏名】芝田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真也
【テーマコード(参考)】
3K003
3K062
3K065
3K068
3K161
4D059
【Fターム(参考)】
3K003EA10
3K003FA01
3K003FA10
3K003FB05
3K003GA05
3K062AA02
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3K062AC02
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3K065AA02
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3K065AC02
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3K065BA06
3K065CA11
3K068FA02
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3K068HA03
3K161AA34
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3K161DA02
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3K161HA03
3K161JA25
3K161JA31
4D059AA03
4D059BB01
4D059BB11
4D059BD00
4D059BK08
4D059CA14
4D059CB06
4D059EA01
4D059EA02
4D059EA09
4D059EB02
(57)【要約】
【課題】ストーカ式焼却炉に供給する汚泥の乾燥に必要な乾燥装置の規模(処理量または台数)を削減できる汚泥焼却設備、および、汚泥焼却方法を提供する。
【解決手段】汚泥焼却設備100は、往復する火格子12Mと、乾燥体供給装置2と、脱水汚泥供給装置3と、乾燥体センサ4と、制御装置9とを備える。火格子12Mは、上流から下流に向かう方向に往復する。乾燥体供給装置2は、乾燥体DBを火格子12Mに供給する。脱水汚泥供給装置3は、火格子12Mに供給された乾燥体DBの上に脱水汚泥DSを供給する。乾燥体センサ4は、火格子12Mに供給された乾燥体DBの量を計測する。制御装置9は、火格子12Mに積まれる量の乾燥体DBを乾燥体センサ4が計測したときに、脱水汚泥DSを供給するように脱水汚泥供給装置3を制御する。火格子12Mは、脱水汚泥DSが積まれた乾燥体DBを燃焼領域に送り出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に向けて汚泥を送り出し、前記汚泥を焼却する汚泥焼却設備であって、
上流から下流に向かう方向に往復する火格子と、
乾燥体を前記火格子に供給する乾燥体供給装置と、
前記火格子に供給された前記乾燥体の上に、含水率が前記乾燥体よりも高い脱水汚泥を供給する脱水汚泥供給装置と、
前記火格子に供給された乾燥体の量を計測する乾燥体センサと、
前記火格子に積まれる量の前記乾燥体を前記乾燥体センサが計測したときに、前記脱水汚泥を供給するように前記脱水汚泥供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記火格子は、前記脱水汚泥が積まれた前記乾燥体を、前記乾燥体、および、前記脱水汚泥が燃焼する領域に送り出すことを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項2】
前記脱水汚泥供給装置は、前記乾燥体の上に前記脱水汚泥を分散して供給する分散供給装置を有することを特徴とする請求項1に記載の汚泥焼却設備。
【請求項3】
前記分散供給装置は、複数のスクリューフィーダであり、
前記スクリューフィーダは、前記脱水汚泥を排出する排出口を有し、
各スクリューフィーダの排出口は、互いに離れて配置されることを特徴とする請求項2に記載の汚泥焼却設備。
【請求項4】
前記分散供給装置は、前記脱水汚泥の形状を整えた成形汚泥を生成する成形機であり、
前記成形機は、前記成形汚泥が排出される複数の成形汚泥排出部を有することを特徴とする請求項2に記載の汚泥焼却設備。
【請求項5】
前記汚泥を乾燥させる乾燥装置をさらに備え、
前記乾燥装置は、前記汚泥を乾燥させた乾燥汚泥を前記乾燥体として、前記乾燥体供給装置に供給することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の汚泥焼却設備。
【請求項6】
前記乾燥汚泥の含水率を計測する第1計測器と、
前記脱水汚泥の含水率を計測する第2計測器と、
前記乾燥汚泥、および、前記脱水汚泥が燃焼されることで排出されるガスの温度を計測する温度計とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1計測器の計測結果、前記第2計測器の計測結果、および前記温度計の計測結果に基づいて、前記乾燥汚泥の供給量を調整する制御を前記乾燥体供給装置に行うとともに、前記脱水汚泥の供給量を調整する制御を前記脱水汚泥供給装置に行うことを特徴とする請求項5に記載の汚泥焼却設備。
【請求項7】
上流から下流に汚泥を送り出しながら、前記汚泥を焼却する汚泥焼却方法であって、
乾燥体を供給するステップと、
前記乾燥体の上に、含水率が前記乾燥体よりも高い脱水汚泥を供給するステップと、
前記脱水汚泥が積まれた前記乾燥体を上流から下流に送り出すステップと、
下流に送られた、前記乾燥体および前記脱水汚泥を燃焼するステップとを備えることを特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項8】
前記脱水汚泥を供給するステップは、
前記乾燥体の上に前記脱水汚泥を分散して供給するステップを有することを特徴とする請求項7に記載の汚泥焼却方法。
【請求項9】
前記脱水汚泥を供給するステップは、
前記脱水汚泥の形状を整えた複数の成形汚泥を生成するステップと、
前記乾燥体の上に、前記複数の成形汚泥を分散して供給するステップとを有することを特徴とする請求項7に記載の汚泥焼却方法。
【請求項10】
前記汚泥を乾燥させた乾燥汚泥を前記乾燥体とするステップをさらに備えることを特徴とする請求項7から請求項9の何れか一項に記載の汚泥焼却方法。
【請求項11】
前記乾燥汚泥の含水率を計測するステップと、
前記脱水汚泥の含水率を計測するステップと、
前記乾燥汚泥、および、前記脱水汚泥を燃焼させて排出されるガスの温度を計測するステップと、
前記乾燥汚泥の含水率、前記脱水汚泥の含水率、および前記ガスの温度に基づいて、前記乾燥汚泥を供給する量、および、前記脱水汚泥を供給する量を調整するステップとをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の汚泥焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を焼却する汚泥焼却設備、および、汚泥焼却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場に導入された下水から生じる下水汚泥は含水率が98~99%あるため、これを焼却する際には、遠心式脱水機やフィルタプレス式脱水機などの脱水機で脱水して脱水汚泥とし、脱水汚泥を乾燥機で含水率35~40%の乾燥ケーキとしてから焼却設備に搬入している。このような焼却設備として、特許文献1に記載されているストーカ式焼却炉が知られている。特許文献1に記載されているようなストーカ式焼却炉では、進退可能な火格子が汚泥を送り出しながら、火格子下から供給される空気によって完全燃焼させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脱水汚泥の含水率は通常76~80%であるため、特許文献1に記載されているように脱水汚泥を含水率35~40%まで乾燥させるには、大規模な乾燥装置が必要であり、建設コストが高くなる問題があった。また、脱水汚泥は付着性が大きいため、乾燥が不十分な状態で焼却炉に供給されると、火格子に付着して搬送できなくなったり、火格子で圧密されることで大きな塊状になって焼却炉内で完全燃焼させることが困難になったりする恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ストーカ式焼却炉における乾燥装置の規模(処理量または台数)を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚泥焼却設備は、上流から下流に向けて汚泥を送り出し、前記汚泥を焼却する汚泥焼却設備であって、上流から下流に向かう方向に往復する火格子と、乾燥体を前記火格子に供給する乾燥体供給装置と、前記火格子に供給された前記乾燥体の上に、含水率が前記乾燥体よりも高い脱水汚泥を供給する脱水汚泥供給装置と、前記火格子に供給された乾燥体の量を計測する乾燥体センサと、前記火格子に積まれる量の前記乾燥体を前記乾燥体センサが計測したときに、前記脱水汚泥を供給するように前記脱水汚泥供給装置を制御する制御装置とを備え、前記火格子は、前記脱水汚泥が積まれた前記乾燥体を、前記乾燥体、および、前記脱水汚泥が燃焼する領域に送り出すことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の汚泥焼却方法は、進退可能な火格子が上流から下流に汚泥を送り出しながら、火格子下から供給される空気によって前記汚泥を焼却する汚泥焼却方法であって、乾燥体を供給するステップと、前記乾燥体の上に、含水率が前記乾燥体よりも高い脱水汚泥を供給するステップと、前記脱水汚泥が積まれた前記乾燥体を上流から下流に送り出すステップと、下流に送られた、前記乾燥体、および、前記脱水汚泥を燃焼するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の汚泥焼却設備および汚泥焼却方法によれば、ストーカ式焼却炉に供給する汚泥の乾燥にかかる乾燥装置の規模(処理量または台数)を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る汚泥焼却設備の概略図である。
【
図2】下流から見た焼却炉の断面を概略的に示す図であり、分散供給装置が複数のスクリューフィーダの例を示す図である。
【
図3】下流から見た燃焼炉の断面を概略的に示す図であり、分散供給装置が成形機の例を示す図である。
【
図4】乾燥体センサが第1供給量記録計であり、脱水汚泥センサが第2供給量記録計の例を示す図である。
【
図5】乾燥段の火格子が、乾燥汚泥を下流に送るのを概略的に示す図である。
【
図6】脱水汚泥が積まれた乾燥汚泥を火格子が送るのを概略的に示す図である。
【
図7】実施形態1に係る汚泥焼却設備の汚泥焼却方法のフローの前段を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る汚泥焼却設備の汚泥焼却方法のフローの後段を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係る汚泥焼却設備の概略図である。
【
図10】実施形態2に係る汚泥焼却設備の汚泥焼却方法のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態1に係る汚泥焼却設備100、実施形態2に係る汚泥焼却設備200、および汚泥焼却方法の概要について、
図1、および、
図9を参照して説明する。
【0011】
汚泥焼却設備100、200は、ストーカ式の焼却炉1(以降、焼却炉1)で、焼却対象物を焼却する。焼却対象物は、後述する火格子12Mによって、焼却炉1の上流から下流の燃焼領域に向かって送られる。燃焼領域は、焼却対象物を燃焼する領域である。燃焼領域に到達した焼却対象物は、燃焼されて、焼却灰BAになる。
【0012】
本発明の要旨は、脱水汚泥DSが積まれた乾燥体DBを焼却対象物として、火格子12Mが、燃焼領域に送り出すことにある。乾燥体DBは、後述するように、従来の焼却炉に供給されていた汚泥と同等以下の含水率を有する物質である。脱水汚泥DSは、乾燥体DBよりも含水率が高い汚泥であって、脱水処理がされた汚泥である。補足すると、脱水汚泥DSは、乾燥処理がされていない汚泥である。
【0013】
さらに、詳細には、焼却すべき脱水汚泥DSの内、一部だけを含水率20~40%に乾燥させて、付着性の小さい乾燥体DBとし、これを火格子12M上に供給する。そして、残りの脱水汚泥DSを乾燥体DBの上に供給することで、脱水汚泥DSが火格子12M上に付着することを防ぐ。本発明によると、焼却すべき脱水汚泥DSの内、乾燥させるのは一部だけであるため、乾燥装置の処理量または台数を削減することができる。
【0014】
脱水汚泥DSは、粘土質で付着性が大きいため、火格子12Mに送り出されることで、塊状になる特性がある。一方で、乾燥体DBは、付着性がほとんどないため、火格子12Mに送り出されても塊状にならない。脱水汚泥DSが積まれた乾燥体DBを火格子12Mが送ることで、乾燥体DBは、積み上げた脱水汚泥DSとともに燃焼領域に流動する。したがって、焼却炉1は、脱水汚泥DS、および、乾燥体DBをまとめて焼却できる。よって、本発明の汚泥焼却設備100、および、汚泥焼却方法は、乾燥処理なしに焼却できる脱水汚泥DSの量だけ乾燥するために必要な乾燥装置の規模(処理量または台数)を削減できる。
【0015】
乾燥体DBは、汚泥を乾燥させた乾燥汚泥DBSと、乾燥物質DBMとを含む。乾燥汚泥DBSは、一般的には、脱水汚泥DSを乾燥させて生成される。乾燥汚泥DBSは、含水率は40%以下の汚泥を指すことが多い。乾燥物質DBMは、シリカサンドなどの汚泥の焼却業者にとって入手しやすい物質、または、焼却灰BAなどの汚泥焼却設備200から入手できる物質である。その他、砂利、砕石、川砂、山砂のように商品として販売されており入手が容易な物質、または、破砕スラグのような廃棄物から再生された物質を乾燥物質DBMとしてもよい。
【0016】
実施形態1に係る汚泥焼却設備100は、乾燥体DBとして乾燥汚泥DBSを用いている。また、後述するように、実施形態2に係る汚泥焼却設備200は、乾燥体DBとして乾燥物質DBMを用いている。
【0017】
実施形態1に係る汚泥焼却設備100の構成について、
図1から
図3を参照して説明する。
【0018】
汚泥焼却設備100は、
図1に示すように、焼却対象物を焼却する焼却炉1と、汚泥を乾燥させて乾燥汚泥DBSにする乾燥装置20と、焼却炉1に乾燥汚泥DBSを供給する乾燥体供給装置2と、焼却炉1に脱水汚泥DSを供給する脱水汚泥供給装置3と、各種センサと、制御装置9とを備える。各種センサは、焼却炉1に設けられる。また、各種センサの一部は、焼却炉1の他に、乾燥体供給装置2、および、脱水汚泥供給装置3に設けられる場合もある。制御装置9は、各種センサの計測結果に基づいて、乾燥体供給装置2、および、脱水汚泥供給装置3を制御する。
【0019】
焼却炉1は、焼却対象物を燃焼する部屋である1次燃焼室11と、1次燃焼室11に設けられる搬送装置12と、1次燃焼室11の上方に設けられるとともに、1次燃焼室11と連通する2次燃焼室13とを有する。
【0020】
1次燃焼室11は、1次燃焼室11に焼却対象物を搬入するための搬入口111と、焼却対象物を燃焼した後に発生する焼却灰BAを1次燃焼室11から搬出する搬出口112とを有する。
【0021】
搬送装置12は、上流にある搬入口111から、下流にある搬出口112に向かって焼却対象物を搬送する装置である。
【0022】
搬送装置12は、上流から順に、乾燥段121と、燃焼段122と、後燃焼段123とを有する。乾燥段121は、搬入口111から搬入された焼却対象物を火格子の下から供給された空気によって乾燥させながら下流の燃焼段122に送る。燃焼段122の上、および、後燃焼段123の上には、燃焼領域がある。燃焼段122は、乾燥された焼却対象物を燃焼領域で火格子の下から供給された空気によって燃焼させながら下流の後燃焼段123に送る。後燃焼段123は、焼却対象物を燃焼した後に生成される焼却灰BAに含まれる未燃成分を燃焼領域で燃焼させる。未燃成分を燃焼させた焼却灰BAは、搬出口112に向かって流動する。
【0023】
乾燥段121、燃焼段122、および、後燃焼段123は、上流から下流に向かう方向に沿って往復する複数の火格子12Mと、位置が固定された複数の火格子12Fと有する。各火格子12M、12Fは、汚泥を燃焼させるための高温の空気が通過する通路(図示せず)を有する。各火格子12M、12Fに積まれた汚泥は、前記通路から供給される空気によって、乾燥、または、燃焼される。
【0024】
往復する火格子12Mと、固定された火格子12Fとは、互い違いに階段状に配置される。
図1では、搬入口111に最も近い位置に往復する火格子12Mが設けられている。搬入口111を通じて焼却炉1の内部に搬入された焼却対象物は、往復する火格子12Mが下流に送る。往復する火格子12Mは、固定された火格子12Fに積まれた焼却対象物を下流に押し出す。加えて、各火格子12M、12Fに積まれた焼却対象物には、各火格子12M、12Fの下から乾燥用または燃焼用の空気が供給される。したがって、焼却対象物は、乾燥、または、燃焼されながら、往復する火格子12Mによって下流に送られる。
【0025】
2次燃焼室13は、乾燥段121の上方に設けられる。これにより、燃焼段122、および、後燃焼段123での燃焼により発生した高温のガスGは、
図1に示すように、乾燥段121の上を通過して2次燃焼室13に流入する。焼却対象物において、ガスGにさらされた部分は、乾燥するため、燃焼しやすくなる。
【0026】
乾燥装置20は、高温の水蒸気や熱風などの熱エネルギを消費して、脱水汚泥DSを乾燥する。したがって、乾燥が必要な脱水汚泥DSの量が少ない程、乾燥装置20の規模(処理量または台数)が削減できる。乾燥装置20は、脱水汚泥DSを乾燥させた乾燥汚泥DBSを乾燥体供給装置2に供給する。
【0027】
乾燥体供給装置2は、乾燥段121の火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSを供給する。
【0028】
乾燥体供給装置2は、乾燥装置20から供給された乾燥汚泥DBSを一時的に溜める乾燥汚泥貯留槽22と、乾燥汚泥貯留槽22に溜められた乾燥汚泥DBSを乾燥段121の火格子12M、12Fに供給する給じん装置23とを有する。
【0029】
給じん装置23は、搬入口111から乾燥段121の火格子12Mに乾燥汚泥DBSを供給する装置である。給じん装置23は、例えば、乾燥段121の火格子12Mに向かって乾燥汚泥DBSを押し出すプッシャ式の装置である。
【0030】
脱水汚泥供給装置3は、火格子12M、12Fに供給された乾燥汚泥DBSの上に、脱水汚泥DSを供給する装置である。脱水汚泥供給装置3は、脱水汚泥DSを一時的に溜める脱水汚泥貯留槽31と、脱水汚泥貯留槽31に溜められた脱水汚泥DSを火格子12M、12Fに積まれた乾燥汚泥DBSに上から供給する分散供給装置32とを有する。
【0031】
分散供給装置32は、乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSを分散して供給する。脱水汚泥DSを分散して供給するとは、乾燥汚泥DBSの上において、互いに離れた複数の箇所に脱水汚泥DSを積むことを意味する。乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSが分散して供給されることで、特定の一箇所に多量の脱水汚泥DSが供給されるのを防止できる。これにより、部分的に脱水汚泥DSの層厚が高くなることを防ぐことで、焼却炉1内で脱水汚泥DSを均一に燃焼させることができるため、脱水汚泥DSを安定的に完全燃焼させることができる。
【0032】
好ましくは、分散供給装置32は、往復する火格子12Mに積まれた乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSを供給する。砂状で付着性がほとんどない乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSを積むことで、脱水汚泥DSが火格子12M、12Fに付着したり、火格子12M、12Fに押されて大きな塊状になったりすることを防ぐことができる。
【0033】
また好ましくは、分散供給装置32は、乾燥段121を構成する火格子12Mに積まれた乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSを供給する。乾燥段121を構成する火格子12Mに乾燥汚泥DBSを介して積まれた脱水汚泥DSは、燃焼領域で発生したガスGにさらされる。ガスGにさらされた脱水汚泥DSは、乾燥する。結果として、ガスGにさらされた脱水汚泥DSは、燃焼しやすくなる。
【0034】
さらに好ましくは、分散供給装置32は、
図1に示すように搬入口111に最も近い位置に積まれた乾燥汚泥DBSの上に脱水汚泥DSを供給する。搬入口111に最も近い位置とは、火格子12Mにおいて、乾燥汚泥DBSの層が形成される位置の内、最も上流の位置を意味する。このようにすると、焼却炉1に供給された脱水汚泥DSにおいて、ガスGにさらされる時間が最も長くなる。したがって、脱水汚泥DSが燃焼しやすくなる。
【0035】
分散供給装置32は、
図2に例示する複数のスクリューフィーダ321、または、
図3に例示する成形機323である。
【0036】
図2に例示する複数のスクリューフィーダ321は、スクリューにより脱水汚泥DSを搬送する装置である。
図2には、3基のスクリューフィーダ321、321、321が例示されている。しかし、スクリューフィーダ321の数は、3基に限定されず、焼却対象物の量などに応じて、適宜定められる。各スクリューフィーダ321、321、321は、脱水汚泥DSを排出する排出口322、322、322を有する。排出口322は、乾燥段121の火格子12Mの上方に設けられる。各排出口322、322、322は、互いに離れて配置される。各スクリューフィーダ321、321、321から排出された脱水汚泥DSは、乾燥汚泥DBSの上に分散して供給される。
【0037】
好ましくは、各スクリューフィーダ321、321、321は、互いに独立している。これにより、各スクリューフィーダ321、321、321の供給する脱水汚泥DSの量は、個々に調整できる。
【0038】
成形機323は、
図3に例示するように、脱水汚泥DSの形状を整えた成形汚泥を生成する。成形汚泥の形状は、脱水汚泥DSに含まれる成分、および/または、焼却炉1の仕様に応じて適宜定められる。成形機323は、成形汚泥が排出される成形汚泥排出部324を有する。成形汚泥排出部324は、複数ある。そして、各成形汚泥排出部324は、互いに離れた位置に配置される。このようにすることで、成形機323は、脱水汚泥DSに含まれる成分、および/または、焼却炉1の仕様に適した形状の成形汚泥を乾燥汚泥DBSの上に分散して供給できる。
【0039】
図3には、成形機323の一例が示されている。
図3に示す成形機323は、互いに隣接する二本のローラ325、325の間に脱水汚泥DSが通される装置である。各ローラ325、325には、長手方向に交差する複数の溝が設けられている。
図3に示す成形機323では、各溝が、成形汚泥を生成する部分であり、かつ成形汚泥排出部324に相当する。二本のローラ325、325の間に脱水汚泥DSが供給されると、脱水汚泥DSは、溝の形状に合わせて成形される。そして、各溝を通った成形汚泥は、脱水汚泥DSの上に分散して供給される。
【0040】
好ましくは、
図3に示す成形機323の溝は、回転方向に沿うとともに、溝の底部は、一定の幅を有する。このような溝であれば、成形汚泥は、棒状になる。棒状の成形汚泥は、乾燥汚泥DBSに積まれたときに、隣り合う位置に配置される成形汚泥との間の距離が大きくできる。したがって、多量の成形汚泥が、乾燥汚泥DBSの上の局所的な部分に積まれることを防止できる。
【0041】
加えて、棒状の成形汚泥の断面積は、可能な限り小さい方が好ましい。断面積が小さい棒状の成形汚泥は、乾燥しやすいためである。ただし、断面積の小さい棒状の成形汚泥を成形するためには、成形機323は、大きな動力を必要とする。したがって、棒状の成形汚泥の断面積は、脱水汚泥DSの量、および、脱水汚泥DSを成形するために必要な動力とのバランスを考慮して定められる。このようなバランスが最も良い成形汚泥の断面Yの断面積は、25mm2(四角断面の成形汚泥であれば、縦D5mm、横W5mm)である。
【0042】
各種センサは、乾燥汚泥DBSの層、および、脱水汚泥DSの層が形成されたか否かを判定するための判定センサと、乾燥汚泥DBSの供給量、または、脱水汚泥DSの供給量を調整するための調整センサとを含む。
【0043】
図1、および、
図4に示すように、判定センサは、火格子12M、12Fに供給された乾燥汚泥DBSの量を計測する乾燥体センサ4と、乾燥汚泥DBSの上に供給された脱水汚泥DSの量を計測する脱水汚泥センサ5とを含む。
【0044】
乾燥体センサ4は、具体的には、
図1に示すように、火格子12M、12Fに供給された乾燥汚泥DBSの量を、火格子12M、12Fに積まれた乾燥汚泥DBSの高さで計測する第1レベル計41である。また、乾燥体センサ4は、
図4に示すように、火格子12M、12Fに供給された乾燥汚泥DBSの量を直接的に計測する第1供給量記録計42でもよい。
【0045】
図1に示すように、第1レベル計41は、脱水汚泥供給装置3が脱水汚泥DSを供給する位置よりも上流の火格子12M、12Fに積まれた乾燥汚泥DBSの層の高さを計測する。
【0046】
第1レベル計41は、基準位置から乾燥汚泥DBSの層の表面までの高さを計測する。基準位置は、適宜定められる。例えば、第1レベル計41の下に配置された火格子12M、12Fの位置などが基準位置となる。
【0047】
図1に例示する第1レベル計41は、往復する火格子12Mの内、最も上流に配置された火格子12Mに積まれた乾燥汚泥DBSの層の高さを計測する。第1レベル計41であれば、脱水汚泥DSを積んで流動するのに十分な高さの乾燥汚泥DBSの層が、往復する火格子12Mの上に形成されたか否かを直接的に計測できる。
【0048】
第1レベル計41は、非接触式のセンサである。非接触式の第1レベル計41には、超音波式、電磁波式、またはレーザー式のレベル計がある。また、第1レベル計41は、乾燥汚泥DBSの画像を撮像するビデオカメラでもよい。
【0049】
図4に示すように、第1供給量記録計42は、乾燥体供給装置2に取り付けられる。第1供給量記録計42は、乾燥体供給装置2が火格子12M、12Fに供給する乾燥汚泥DBSの量を計測する。第1供給量記録計42であれば、焼却炉1内に設ける必要がないので、第1レベル計41と比較して取りつけが容易になる。
【0050】
脱水汚泥センサ5は、具体的には、
図1に示すように、乾燥汚泥DBSの上に供給された脱水汚泥DSの量を、乾燥汚泥DBSに積まれた脱水汚泥DSの高さで計測する第2レベル計51である。また、
図4に示すように、脱水汚泥センサ5は、乾燥汚泥DBSの上に供給された脱水汚泥DSの量を直接的に計測する第2供給量記録計52でもよい。
【0051】
図1に示すように、第2レベル計51は、脱水汚泥供給装置3が脱水汚泥DSを供給する位置よりも下流の乾燥汚泥DBSに積まれた脱水汚泥DSの層の高さを計測する。
【0052】
第2レベル計51は、基準位置から脱水汚泥DSの層の表面までの高さを計測する。基準位置は、適宜定められる。例えば、第2レベル計51の下に配置された乾燥汚泥DBSの表面の位置などが基準位置となる。第2レベル計51であれば、乾燥汚泥DBSの上に積まれた脱水汚泥DSの量が直接的に計測される。第2レベル計51は、第1レベル計41と同様に、非接触式のセンサ、または、ビデオカメラであることが好ましい。
【0053】
図4に示すように、第2供給量記録計52は、脱水汚泥供給装置3に取り付けられる。第2供給量記録計52は、脱水汚泥供給装置3が乾燥汚泥DBSの上に供給する脱水汚泥DSの量を計測する。第2供給量記録計52であれば、焼却炉1内に設ける必要がないので、第2レベル計51と比較して取りつけが容易になる。
【0054】
調整センサは、
図1、および、
図4に示すように、乾燥汚泥DBSの含水率を計測する第1計測器6と、脱水汚泥DSの含水率を計測する第2計測器7と、焼却対象物を焼却することで発生するガスGの温度を計測する温度計8とを含む。
【0055】
第1計測器6は、乾燥体供給装置2に取り付けられる。これにより、第1計測器6は、乾燥体供給装置2が火格子12M,12Fに供給する乾燥汚泥DBSの含水率を計測できる。第1計測器6は、例えば、赤外線式の水分計である。第1計測器6は、電気抵抗式、電気容量式、マイクロ波式の水分計でも良い。
【0056】
第2計測器7は、脱水汚泥供給装置3に取り付けられる。これにより、第2計測器7は、脱水汚泥供給装置3が、乾燥汚泥DBSの上に供給する脱水汚泥DSの含水率を計測できる。第2計測器7も、第1計測器6と同様に、例えば、赤外線式の水分計である。第2計測器7は、電気抵抗式、電気容量式、マイクロ波式の水分計でも良い。
【0057】
温度計8は、2次燃焼室13に取り付けられる。これにより、温度計8は、1次燃焼室11から2次燃焼室13に流入したガスGの温度を計測できる。
【0058】
制御装置9は、乾燥体供給装置2、および、脱水汚泥供給装置3を制御する。詳細には、制御装置9は、乾燥体供給装置2の給じん装置23を制御して、火格子12M、12Fに供給される乾燥汚泥DBSの量を調整する。また、制御装置9は、脱水汚泥供給装置3の分散供給装置32を制御して、乾燥汚泥DBSの上に供給される脱水汚泥DSの量を調整する。
【0059】
具体的に、給じん装置23がプッシャ式であれば、制御装置9は、プッシャの往復速度、プッシャのストローク、および/またはプッシャの往復する間隔などを調整する制御を行う。分散供給装置32が複数のスクリューフィーダ321であれば、制御装置9は、各スクリューフィーダ321のスクリューの回転速度を調整する制御を行う。また、分散供給装置32が二本のローラ325、325から構成される成形機323であれば、制御装置9は、二本のローラ325、325の回転速度を調整する制御を行う。
【0060】
制御装置9は、例えば、中央演算装置と、メモリとを組み合わせた装置である。中央演算装置が、メモリに格納されたプログラムを実行することにより、乾燥体供給装置2、および、脱水汚泥供給装置3が制御される。
【0061】
制御装置9は、第1計測器6、第2計測器7、および温度計8の計測結果に基づいて、給じん装置23、および、分散供給装置32を制御することが好ましい。ここで、乾燥汚泥DBSの含水率からは、乾燥汚泥DBSの有するおおよその発熱量を推算できる。また、脱水汚泥DSの含水率からは、脱水汚泥DSの有するおおよその発熱量を推算できる。加えて、1次燃焼室11から2次燃焼室13に流入したガスGの温度は、焼却対象物の1次燃焼室11での燃焼状態を表す量である。したがって、制御装置9は、1次燃焼室11での焼却対象物が適切な燃焼状態を維持させられるように、乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSの供給量の増減を調整できる。
【0062】
制御装置9は、例えば、ガスGの温度が所定の温度より低くなりそうな場合、発熱量が大きい乾燥汚泥DBSの供給量を増やすように給じん装置23を制御することで、ガスGの温度を上げることができる。逆に、制御装置9は、ガスGの温度が所定の温度より高くなりそうな場合、発熱量が小さい脱水汚泥DSの供給量を増やすように分散供給装置32を制御することで、ガスGの温度を下げることができる。
【0063】
以降において、制御装置9の処理、すなわち、汚泥焼却設備100の行う汚泥焼却方法について、
図1、および、
図4から
図8を参照して説明する。
【0064】
制御装置9は、
図7に示すように、ステップS1において、乾燥汚泥DBSを火格子12M、12Fに供給するように、乾燥体供給装置2を制御する。詳細には、制御装置9は、給じん装置23を動作させる制御を行う。給じん装置23がプッシャ式であれば、制御装置9は、プッシャの往復動作を開始させる。給じん装置23の動作が開始することで、乾燥段121において、往復する火格子12Mの上に乾燥汚泥DBSが供給される。
【0065】
往復する火格子12Mの上に供給された乾燥汚泥DBSの一部は、
図5に示すように火格子12Mの往復運動によって生じた空間SP1に落下する。往復する火格子12Mから落下した乾燥汚泥DBSは、固定された火格子12Fに積まれる。固定された火格子12Fに積まれた乾燥汚泥DBSは、往復する火格子12Mによって下流側に押し出される。このようにして、乾燥汚泥DBSは、徐々に下流に送られる。なお、以降の説明において、往復する火格子12Mは、非常時などの例外を除いて、原則的に往復運動を行っている。したがって、火格子12M、12Fに供給された乾燥汚泥DBSは、例外を除いて常に下流に流動している。
【0066】
ステップS2において、制御装置9は、乾燥体センサ4の計測結果に基づいて、火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSが積まれたか否かを判定する。
【0067】
例えば、
図1に示すように、乾燥体センサ4が第1レベル計41であれば、制御装置9は、第1レベル計41の計測結果が、乾燥汚泥DBSの層の高さが所定以上を示していた場合に、火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSが積まれたと判定する。制御装置9が判定に用いる乾燥汚泥DBSの層の高さは、下流に送り出される乾燥汚泥DBSが脱水汚泥DSを積んだ状態で流動できる量を目安として設定される。
【0068】
乾燥汚泥DBSの層の高さは、往復する火格子12Mの高さ以上であることが好ましい。このようにすれば、
図6に示すように、往復する火格子12Mが乾燥汚泥DBSを押し出すことによって生じる空間SP1には、乾燥汚泥DBSのみが流入する。したがって、脱水汚泥DSが、往復する火格子12Mに押し出されることを防止できる。
【0069】
また、例えば、
図4に示すように、乾燥体センサ4が第1供給量記録計42であれば、第1供給量記録計42が記録した乾燥汚泥DBSの量が所定以上となった場合に、制御装置9は、火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSが積まれたと判定する。乾燥汚泥DBSの量は、下流に送り出される乾燥汚泥DBSが脱水汚泥DSを積んだ状態で流動できる量を目安として設定される。
【0070】
ステップS2おいて、制御装置9が、火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSが積まれていないと判定した場合(NOの場合)、制御装置9の処理は、ステップS1に戻る。一方で、ステップS2において、制御装置9が、火格子12M、12Fに乾燥汚泥DBSが積まれたと判定した場合(YESの場合)、処理は、ステップS3に進む。
【0071】
ステップS3において、制御装置9は、脱水汚泥DSを乾燥汚泥DBSの上に供給するように脱水汚泥供給装置3を制御する。具体的に、制御装置9は、分散供給装置32を動作させる。分散供給装置32が、
図2に示すように、複数のスクリューフィーダ321から構成されている場合、制御装置9は、スクリューフィーダ321のスクリューを回転させる制御を行う。また、分散供給装置32が、
図3に示すように、二本のローラ325、325で構成されている場合、制御装置9は、二本のローラ325、325を回転させる制御を行う。
【0072】
ステップS4において、
図1、および、
図4に示すように、火格子12Mは、燃焼段122の上の燃焼領域に、脱水汚泥DSが積まれた乾燥汚泥DBSを送り出す。これにより、乾燥汚泥DBSに積まれた脱水汚泥DSは、乾燥汚泥DBSに追従して流動する。燃焼段122の上の燃焼領域に送られた、乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSは、燃焼する。したがって、全ての脱水汚泥DSを乾燥させなくとも、汚泥焼却設備100は、燃焼対象物を燃焼させられる。よって、汚泥焼却設備100は、燃焼させる脱水汚泥DSの量だけ乾燥に必要な乾燥装置の規模(処理量や台数)を削減できる。
【0073】
乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSは、完全燃焼させることで焼却灰BAになる。燃焼後の焼却灰BAは、燃焼段122から後燃焼段123に送られた後に、搬出口112から1次燃焼室11の外に排出される。
【0074】
ステップS5において、脱水汚泥センサ5は、脱水汚泥DSの量を計測する。
図1に示すように、脱水汚泥センサ5が第2レベル計51であれば、脱水汚泥DSの高さが計測される。また、
図4に示すように、脱水汚泥センサ5が第2供給量記録計52であった場合、脱水汚泥供給装置3が1次燃焼室11に供給した脱水汚泥DSの量が計測される。
【0075】
ステップS6において、制御装置9は、乾燥体センサ4の計測結果、および/または、脱水汚泥センサ5の計測結果に基づいて、各計測値が基準範囲内か否かを判定する。基準範囲とは、脱水汚泥DSが積まれた乾燥汚泥DBSが流動性を維持できる、乾燥汚泥DBSの量、および、脱水汚泥DSの量の許容範囲である。
【0076】
ステップS6において、乾燥汚泥DBSの量の計測値、および、脱水汚泥DSの量の計測値が基準範囲内にあると制御装置9が判定した場合(YESの場合)、制御装置9の処理は、ステップS8に進む。一方で、ステップS6において、乾燥汚泥DBSの量の計測値、および、脱水汚泥DSの量の計測値が基準範囲内にないと制御装置9が判定した場合(NOの場合)、制御装置9の処理は、ステップS7に進む。
【0077】
ステップS7において、制御装置9は、乾燥体供給装置2が供給する乾燥汚泥DBSの量、および、脱水汚泥供給装置3が供給する脱水汚泥DSの量を調整する制御を行う。これにより、火格子12M、12Fに供給される乾燥汚泥DBSの量、および、乾燥汚泥DBSに積まれる脱水汚泥DSの量のそれぞれが調整されて、各計測値が基準範囲に入る。給じん装置23がプッシャ式であれば、制御装置9は、プッシャの往復速度などを調整する制御を行う。同様に、分散供給装置32が複数のスクリューフィーダ321であれば、制御装置9は、スクリューフィーダ321の回転速度を調整する制御を行う。また、分散供給装置32が、二本のローラ325、325から構成される装置であれば、制御装置9は、二本のローラ325、325の回転速度を調整する制御を行う。
【0078】
図8に示すように、ステップS8において、第1計測器6は、乾燥汚泥DBSの含水率を計測する。乾燥汚泥DBSの含水率の計測結果は、第1計測器6から制御装置9に出力される。
【0079】
ステップS9において、第2計測器7は、脱水汚泥DSの含水率を計測する。脱水汚泥DSの含水率の計測結果は、第2計測器7から制御装置9に出力される。
【0080】
ステップS10において、温度計8は、1次燃焼室11から2次燃焼室13に流入するガスGの温度を計測する。ガスGの温度の計測結果は、温度計8から制御装置9に出力される。
【0081】
ステップS11において、制御装置9は、乾燥汚泥DBSの含水率の計測結果、脱水汚泥DSの含水率の計測結果、およびガスGの温度の計測結果に基づいて、給じん装置23、および、分散供給装置32を制御する。このようにすることで、燃焼領域での燃焼状態は、適切な状態で維持される。具体的に、温度計8の温度が基準よりも低い値を示した場合、制御装置9は、乾燥汚泥DBSの供給量を増やす調整を行う。温度計8の温度が基準よりも高い値を示した場合、制御装置9は、脱水汚泥DSの供給量を増やす調整を行う。したがって、制御装置9は、適切な燃焼状態を維持させるように、乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSを1次燃焼室11に供給できる。
【0082】
以上にて説明した汚泥焼却方法によれば、乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSを合わせた焼却対象物の含水率は、従来の焼却炉に搬入されていた焼却対象物の含水率よりも高くできる。結果として、乾燥させる必要のある焼却対象物の量は低減する。よって、焼却対象物を乾燥させるための乾燥装置20の規模(処理量または台数)を削減できる。
【0083】
詳細には、従来のストーカ式下水汚泥焼却炉において、含水率76~80%の脱水汚泥を搬入した場合、脱水汚泥の付着性が大きいため、脱水汚泥が、火格子に付着したり、大きな塊状になったりして、脱水汚泥を完全燃焼させることが難しくなる課題があった。この課題を解決するため、脱水汚泥を乾燥装置で含水率20~40%まで乾燥させ、付着性がほぼない乾燥汚泥として、ストーカ式焼却炉に搬入している。しかし、脱水汚泥を乾燥装置で含水率20~40%まで乾燥させるためには、大規模な乾燥装置が必要となる課題が生じる。
【0084】
本発明の焼却炉1によると、含水率40~80%の汚泥であっても火格子12M、12Fに付着したり、大きな塊状になったりすることなく、焼却対象物の汚泥を完全に燃焼させることができる。具体的には、焼却すべき脱水汚泥DSの内、一部だけを含水率を20~40%に乾燥させて、付着性の小さい乾燥体DBとし、これを火格子12M、12F上に供給する。そして、残りの脱水汚泥DSを乾燥体DBの上に供給することで、脱水汚泥DSが火格子12M、12F上に付着することを防ぐ。したがって、焼却すべき脱水汚泥DSの内、乾燥させるのは一部だけであるため、乾燥装置20の規模(処理量または台数)を削減することができる。
【0085】
焼却対象となる汚泥の含水率、または、乾燥汚泥DBSと脱水汚泥DSの重量割合については、汚泥の焼却方法、および/または、脱水汚泥DSの含水率によって異なる。ここで、焼却対象となる汚泥の含水率は、乾燥汚泥DBS、および、脱水汚泥DSを合わせた焼却対象物の含水率という意味を含む。
【0086】
焼却対象となる汚泥の含水率について、例えば、焼却排ガスの熱エネルギを回収して、場内の設備加熱などに使用したい場合、焼却対象となる汚泥の含水率が低いほど、多くの熱エネルギを回収することができる。この場合、焼却対象となる汚泥の含水率は、40~65%程度が望ましい。一方、焼却排ガスのエネルギを回収しない場合、焼却対象となる汚泥の含水率が高いほど、乾燥装置20の規模を小さくできる。この場合、焼却対象となる汚泥の含水率は60~80%程度が望ましい。
【0087】
乾燥汚泥DBSと脱水汚泥DSの重量割合について、例えば、脱水汚泥DSの含水率が78%で、焼却対象となる汚泥の含水率を60%に設定する場合、処理すべき脱水汚泥DSの62%を乾燥装置20で含水率20%まで乾燥させてから焼却炉1に搬入する。そして、残りの38%の脱水汚泥DSは、そのまま焼却炉1に搬入することで、焼却対象となる汚泥の含水率は60%となる。これにより、乾燥装置20の規模(大きさまたは台数)を、約40%削減することができる。
【0088】
また、乾燥汚泥DBSと脱水汚泥DSの重量割合について、例えば、脱水汚泥DSの含水率が78%で、焼却対象となる汚泥の含水率を70%に設定する場合、処理すべき脱水汚泥DSの量の37%を乾燥装置20で含水率20%まで乾燥させてから焼却炉1に搬入する。そして、残りの63%の量の脱水汚泥DSはそのまま焼却炉1に搬入することで、焼却対象の汚泥の含水率は70%となる。これにより、乾燥装置20の規模(大きさまたは台数)を、約60%削減することができる。
【0089】
ステップS12において、制御装置9は、燃焼対象物の燃焼を終了させてもよいか判定する。燃焼対象物の終了をさせてもよいか否かは、オペレータが汚泥焼却設備100の終了を指示したか否かで判定される。制御装置9が、燃焼対象物の燃焼を終了させてはならないと判定した場合(NOの場合)、制御装置9の処理は、ステップS6に戻る。一方で、制御装置9が、燃焼対象物の燃焼を終了させてもよいと判定した場合(YESの場合)、制御装置9は、燃焼対象物の燃焼を終了させる。この後、制御装置9の処理は終了する。
【0090】
実施形態2に係る汚泥焼却設備200の構成について、
図9を参照して説明する。
【0091】
実施形態2に係る汚泥焼却設備200は、乾燥体DBとして付着性がない砂状の乾燥物質DBMを用いる点で、実施形態1に係る汚泥焼却設備100と異なる。このようにすると、
図9に示す汚泥焼却設備200は、乾燥物質DBMが乾燥汚泥DBSと同じ役割を果たすため、脱水汚泥DSを製造する必要がない。したがって、
図1に示すような乾燥装置20を設ける必要がない。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0092】
図9に示すように、実施形態2に係る汚泥焼却設備200の乾燥体供給装置21は、
図1に示す乾燥体供給装置2と異なる。加えて、各種センサは、乾燥汚泥DBSの代わりに乾燥物質DBMについて計測する。具体的に、
図9に示す乾燥体センサ4は、乾燥物質DBMの量を計測する。なお、
図9に示す汚泥焼却設備200は、調整センサを必ずしも必要としない。
【0093】
図9に示す乾燥体供給装置21は、
図1に示す乾燥汚泥貯留槽22の代わりに、乾燥物質DBMを一時的に溜める乾燥物質貯留槽25を備える。給じん装置23は、
図1に示す乾燥汚泥DBSの代わりに、乾燥段121の火格子12M、12Fに乾燥物質DBMを供給する。乾燥体DBが乾燥物質DBMであれば脱水汚泥DSの乾燥処理を行う必要がないので、
図9に示す乾燥体供給装置21は、
図1に示す乾燥体供給装置2のように、乾燥装置20を必要としない。したがって、
図9に示す乾燥体供給装置21は、設置するためのスペースを小さくでき、かつ、乾燥体供給装置21の設置に必要な費用を低減できる。
【0094】
図10には、
図9に示す制御装置9の処理、すなわち、実施形態2に係る汚泥焼却設備200の行う汚泥焼却方法が示されている。
【0095】
図10に示すように、
図9に示す汚泥焼却方法は、ステップP1からステップP8を有する。
図10と
図7、および、
図8との違いは、乾燥汚泥DBSを乾燥物質DBMとしたのみである。そして、
図10に示すステップP1からステップP7のそれぞれは、
図7に示すステップS1からステップS7に対応する。また、
図10に示すステップP8は、
図8に示すステップS12に対応する。
図10に示す汚泥焼却方法であれば、乾燥物質DBMが乾燥汚泥DBSと同じ役割を果たすため、脱水汚泥DSを製造する必要がない。したがって、
図1に示すような乾燥装置20を設ける必要がない。
【0096】
ところで、実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。実施形態では、焼却炉内での汚泥の乾燥や燃焼に空気を用いたが、支障のない範囲で空気中の酸素濃度を変えてもよく、他の成分を含む混合ガスを空気の代わりに用いてもよい。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および、範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。前記発明を実施するための形態として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除、および、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 焼却炉
2 乾燥体供給装置
3 脱水汚泥供給装置
4 乾燥体センサ
5 脱水汚泥センサ
6 第1計測器
7 第2計測器
8 温度計
9 制御装置
20 乾燥装置
21 乾燥体供給装置
23 給じん装置
32 分散供給装置
321 スクリューフィーダ
322 排出口
323 成形機
12M 火格子
12F 火格子
100 汚泥焼却設備
200 汚泥焼却設備
DB 乾燥体
DS 脱水汚泥
DBS 乾燥汚泥