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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009084
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/30 20160101AFI20250110BHJP
【FI】
H02J50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111845
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 紘己
(72)【発明者】
【氏名】森田 佳憲
(57)【要約】
【課題】複数の受電装置に対して効率的に同時給電することができる光給電システムを提供する。
【解決手段】給電装置10からの給電光20が、光ファイバ2を介して入力される複数個の光ファイバカプラ30と、光ファイバカプラ30のそれぞれに光ファイバ2を介して接続され、受信した給電光を電力に変換する光電変換素子60-1、・・・、60-(n+1)を含む受電装置50とを備えた光給電システムであって、光ファイバカプラ30は、それぞれ選択可能な分岐比を有し、光ファイバカプラ30の分岐比を選択することにより各受電装置50に同時給電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電光を出力する給電装置と、
前記給電装置からの給電光が、光ファイバを介して入力される複数個の光ファイバカプラと、
複数個の前記光ファイバカプラのそれぞれに光ファイバを介して接続され、受信した給電光を電力に変換する光電変換素子を含む受電装置とを備えた光給電システムであって、
複数個の前記光ファイバカプラは、それぞれ選択可能な分岐比を有し、各前記光ファイバカプラの前記分岐比を選択することにより各前記受電装置に同時給電する光給電システム。
【請求項2】
複数個の前記光ファイバカプラは、前記給電装置に対して直列に接続されている請求項1に記載の光給電システム。
【請求項3】
少なくとも、各前記光ファイバカプラの前記分岐比および各前記光ファイバの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電する請求項1または請求項2に記載の光給電システム。
【請求項4】
各前記光ファイバカプラの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電する請求項3に記載の光給電システム。
【請求項5】
各前記受電装置の給電光の受信電力が均等になるように各前記受電装置に同時給電する請求項1または請求項2に記載の光給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光給電システムはシングルモード光ファイバを使った場合、長距離(例えば10Km)の電力伝送が可能であり、外部からのノイズに強いことが知られているが、光ファイバへの入力パワーに上限があること、あるいは光から電気への変換効率が低いため、効率的に受電装置を動作させることが難しい。そこで、複数の受電装置へ効率的に同時給電させる手法を検討する必要がある。
【0003】
高効率で給電を行うことを考慮すると、1つの給電光に対して1つの受電装置に接続するのが最も効率が良いが、受電装置を増やした場合に、給電用光源および給電用光ファイバの敷設が必要であり、コストの増加が問題である。
【0004】
従来、先行技術(下記の特許文献1参照)として、電力によりレーザー発振して給電光を出力する半導体レーザーを含む給電装置と、前記給電装置による給電光を電力に変換する光電変換素子を含む複数の受電装置と、前記給電装置からの給電光を前記複数の受電装置に向けて伝送する光ファイバーケーブルと、前記給電光を前記複数の受電装置のそれぞれの必要電力の比率に応じて分配するスイッチ素子と、を備えた光ファイバー給電システムが開示されている。
【0005】
また、先行技術(下記の特許文献2参照)として、給電光を出力する給電装置と、前記給電装置からの給電光が入力され、当該給電光を電力に変換する受電装置が複数接続可能な光分岐デバイスと、前記光分岐デバイスにおける前記受電装置の接続数を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記受電装置の接続数に基づいて、前記給電装置からの前記給電光の出力を制御する給電制御部と、を備える光給電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-68934号公報
【特許文献2】特開2021-19444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1では、複数の受電装置へ給電可能であるが、各受電装置へ給電光をスイッチ素子により切り替える必要があり、受電装置を同時給電できない問題がある。さらにスイッチ素子の切り替え時間に給電光がロスする問題がある。
前記特許文献2では、入力光を一定の比率(出力ポート数に応じて等分)で分岐する光デバイスである光スプリッタによる分岐を用いた複数給電手法であるが、光スプリッタの分岐比が一定であり、受電装置へ効率的な分配ができない問題点がある。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、複数の受電装置に対して効率的に同時給電することができる光給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の光給電システムは、
給電光を出力する給電装置と、
前記給電装置からの給電光が、光ファイバを介して入力される複数個の光ファイバカプラと、
複数個の前記光ファイバカプラのそれぞれに光ファイバを介して接続され、受電した給電光を電力に変換する光電変換素子を含む受電装置とを備えた光給電システムであって、
複数個の前記光ファイバカプラは、それぞれ選択可能な分岐比を有し、各前記光ファイバカプラの前記分岐比を選択することにより各前記受電装置に同時給電する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の光給電システムによれば、複数の受電装置に対して効率的に同時給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】比較例による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】実施例1による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
図4】実施例2による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈実施の形態の説明〉
図1は本開示の実施の形態による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
本開示の実施の形態による光給電システムは、給電装置10と、受電ネットワーク100を備える。
【0013】
給電装置10は、電源(図示せず)により駆動される半導体レーザ11を備えており、半導体レーザ11からの給電光は、光ファイバ2を介して、受電ネットワーク100に送信されている。
受電ネットワーク100は、給電装置10に光ファイバ2を介して直列に接続される複数個の光ファイバカプラ30と、複数個の光ファイバカプラ30のそれぞれに接続される受電装置50を備えている。
すなわち、光ファイバカプラ30は、複数個の光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nを備えている。ただし、nは2以上の整数である。
光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nは、それぞれ受電した給電光を、選択可能な分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xに基づいて分岐する。ただし、a、b、c、・・・、xは0より大きい数である。
【0014】
受電装置50は、複数個の受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)を備えている。ただし、nは2以上の整数である。
受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)は、それぞれ受電する給電光を光電変換する光電変換素子60-1、60-2、60-3、・・・、60-n、60-(n+1)を有している。
【0015】
光ファイバカプラ30-1は、受電した給電光を分岐比1:aに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-1は、受電装置50-1に対して比率1/(1+a)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-2に対して比率a/(1+a)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-2は、受電した給電光を分岐比1:bに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-2は、受電装置50-2に対して比率1/(1+b)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-3に対して比率b/(1+b)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-3は、受電した給電光を分岐比1:cに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-3は、受電装置50-3に対して比率1/(1+c)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-3に対して比率c/(1+c)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-nは、受電した給電光を分岐比1:xに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-nは、受電装置50-nに対して比率1/(1+x)の割合、および受電装置50-(n+1)に対して比率x/(1+x)の割合で分岐する。
【0016】
以上のように、本実施の形態によれば、給電装置10から送信された給電光20は、光ファイバカプラ30-1、30-2、・・・30-nを介して受電装置50-1、50-2、50-3、・・・50-n、50-(n+1)に供給される。受電装置50-1、50-2、50-3、・・・50-n、50-(n+1)の給電光の受信電力つまり消費電力に応じて、光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの選択可能な分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xをそれぞれ選択することにより、複数個の受電装置50-1、50-2、50-3、・・・50-n、50-(n+1)に対して効率的に同時給電することができる。
【0017】
ここで、本実施の形態の光給電システムの効果を検証するため、図2の比較例、図3の実施例1、および図4の実施例2の光給電システムについて説明する。
【0018】
図2の比較例の説明〉
図2は、本開示の比較例による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
図2に示す比較例において、給電装置10に対して2個の光ファイバカプラ30-1、30-2が接続されている。そして、光ファイバカプラ30-1には受電装置50-1が接続され、光ファイバカプラ30-2には受電装置50-2、50-3が接続されている。光ファイバカプラ30-1、30-2の分岐比は固定しており、1:1である。
【0019】
給電装置10の給電光の送信電力が100mWの場合、半導体レーザ11から光ファイバカプラ30-1までの光ファイバ2の伝送ロスによって1mWのロスが発生するとして、光ファイバカプラ30-1には99mWの給電光の送信電力が到達する。
ここで、伝送ロスは、光ファイバの長さによる減衰、光ファイバの曲げによる曲げ損失、光ファイバ同士の融着またはコネクタ接続による接続損失などを意味する。なお、以下の説明でも同様である。
光ファイバカプラ30-1は分岐比1:1であり、給電光の送信電力を49.5mWと49.5mWに分岐する。ここでは、光ファイバカプラ30-1自体のロスは0として考える。
光ファイバカプラ30-1から受電装置50-1までの光ファイバ2の伝送ロスによって1mWのロスが発生するとして、受電装置50-1には48.5mWの給電光の受信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-1から光ファイバカプラ30-2までの光ファイバ2の伝送ロスによって、2mWのロスが発生するとして、光ファイバカプラ30-2には47.5mWの給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-2は分岐比1:1であり、給電光の送信電力を23.75mWと23.75mWに分岐する。ここで光ファイバカプラ30-2自体のロスは0として考える。光ファイバカプラ30-2から受電装置50-2までの光ファイバ2の伝送ロスによって、2mWのロスが発生するとして、受電装置50-2には21.75mWの給電光の受信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-2から受電装置50-3までの光ファイバ2の伝送ロスによって、4mWのロスが発生するとして、受電装置50-3には19.75mWの給電光の受信電力が到達する。
【0020】
この比較例のように、光ファイバカプラ30-1、30-2の分岐比を固定した場合、受電装置50-1、50-2、50-3の給電光の受信電力は自ずと決まってしまう。
例えば、受電装置50-1が低い消費電力(例えば30mW)で動作する装置の場合、電力の高い給電光を供給してもロスが大きく非効率となる。一方、受電装置50-3が大きな消費電力(例えば40mW)で動作する装置の場合は、電力の低い給電光では動作ができない問題が発生する。なお、上記の消費電力は光電変換素子の変換効率を含んだ値を意味する。
【0021】
〈実施例1の説明〉
次に、実施の形態の光給電システムの効果が現れる、実施例1の光給電システムについて説明する。
図3は、本開示の実施例1による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【0022】
図3に示す実施例1の光給電システムは、前述の比較例と同様に、給電装置10に対して2個の光ファイバカプラ30-1、30-2が接続されている。そして、光ファイバカプラ30-1には受電装置50-1が接続され、光ファイバカプラ30-2には受電装置50-2、50-3が接続されている。
ただし、図3に示す実施例は、比較例と異なり、光ファイバカプラ30-1、30-2の分岐比は固定ではなく選択可能となっており、光ファイバカプラ30-1の分岐比は1:2、光ファイバカプラ30-2の分岐比は1:3としている。
【0023】
給電装置10の給電光の送信電力が100mWの場合、半導体レーザ11から光ファイバカプラ30-1までの光ファイバ2の伝送ロスによって1mWのロスが発生するため、光ファイバカプラ30-1には99mWの給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-1は分岐比1:2であるので、給電光の送信電力99mWを33mWと66mWに分岐する。ここで光ファイバカプラ自体のロスは0として考える。
光ファイバカプラ30-1から受電装置50-1までの光ファイバ2の伝送ロスによって1mWのロスが発生するため、受電装置50-1には32mWの給電光の受信電力が到達する。
一方、光ファイバカプラ30-1から光ファイバカプラ30-2までの光ファイバ2の伝送ロスによって、2mWのロスが発生するため、光ファイバカプラ30-2には64mWの給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-2は分岐比1:3であるので、給電光の送信電力64mWを16mWと48mWに分岐する。ここで、光ファイバカプラ30-2自体のロスは0として考える。光ファイバカプラ30-2から受電装置50-2までの光ファイバ2の伝送ロスによって2mWのロスが発生するため、受電装置50-2には14mWの給電光の受信電力が到達する。
また、光ファイバカプラ30-2から受電装置50-3までの光ファイバ2の伝送ロスによって、4mWのロスが発生するため、受電装置50-3には44mWの給電光の受信電力が到達する。
【0024】
この実施例1のように、光ファイバカプラ30-1、30-2の分岐比を選択可能とした場合、受電装置50-1、50-2、50-3の給電光の受信電力を適切な値に調整することができる。
例えば、給電装置10から近い受電装置50-1に比較的低い電力(32mW)で動作する装置を配置することができ、給電装置10から離れた受電装置50-3に比較的高い電力(44mW)で動作する装置を配置することができる。すなわち、受電装置50-1、50-2、50-3の消費電力に合わせて効率的に給電することが可能である。なお、上記の消費電力は光電変換素子の変換効率を含んだ値を意味する。
【0025】
〈実施例2の説明〉
次に、実施の形態の光給電システムをより一般化した、実施例2の光給電システムについて説明する。
図4は本開示の実施例2による光給電システムの概略構成を示すブロック図である。
本開示の実施例2による光給電システムは、給電装置10と、受電ネットワーク100を備える。
給電装置10は、電源(図示せず)により駆動される半導体レーザ11を備えており、半導体レーザ11からの給電光は、光ファイバ2を介して、受電ネットワーク100に送信されている。
【0026】
受電ネットワーク100は、給電装置10に光ファイバ2を介して直列に接続される複数個の光ファイバカプラ30と、複数個の光ファイバカプラ30のそれぞれに接続される受電装置50を備えている。
光ファイバカプラ30は、光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nを備えている。ただし、nは2以上の整数である。
光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nは、それぞれ受電した給電光を、選択可能な分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xに基づいて分岐する。ただし、a、b、c、・・・、xは0より大きい数である。
【0027】
受電装置50は、光ファイバカプラ30から分岐する給電光を光電変換素子60を介して受電する。
受電装置50は、複数個の受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)を備えている。ただし、nは2以上の整数である。
受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)は、それぞれ受電する給電光を光電変換する光電変換素子60-1、60-2、60-3、・・・、60-n、60-(n+1)を有している。
【0028】
光ファイバカプラ30-1は、受電した給電光を分岐比1:aに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-1は、受電装置50-1に対して比率1/(1+a)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-2に対して比率a/(1+a)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-2は、受電した給電光を分岐比1:bに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-2は、受電装置50-2に対して比率1/(1+b)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-3に対して比率b/(1+b)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-3は、受電した給電光を分岐比1:cに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-3は、受電装置50-3に対して比率1/(1+c)の割合、および後段の光ファイバカプラ30-3に対して比率c/(1+c)の割合で給電光を分岐する。
光ファイバカプラ30-nは、受電した給電光を分岐比1:xに基づいて分岐する。つまり、光ファイバカプラ30-nは、受電装置50-nに対して比率1/(1+x)の割合、および受電装置50-(n+1)に対して比率x/(1+x)の割合で分岐する。
【0029】
ここで、給電装置10の給電光の送信電力をP(W:以下、Wは省略する)として、半導体レーザ11から光ファイバカプラ30-1までの光ファイバ2の伝送ロスをlos01とすると、光ファイバカプラ30-1には(P-los01)の給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-1は分岐比1:aであるので、給電光の送信電力(P-los01)を、受電装置50-1に向かって{1/(1+a)}・(P-los01)で分岐し、次段の光ファイバカプラ30-2に対して{a/(1+a)}・(P-los01)で分岐する。ここで光ファイバカプラ自体のロスは0として考える。
【0030】
光ファイバカプラ30-1から受電装置50-1までの光ファイバ2の伝送ロスをlos1とすると、受電装置50-1に到達する給電光の受信電力P1は、以下の(1)式になる。
P1={1/(1+a)}・(P-los01)-los1・・・(1)
【0031】
また、光ファイバカプラ30-1から光ファイバカプラ30-2までの光ファイバ2の伝送ロスをlos12とすると、光ファイバカプラ30-2には{a/(1+a)}・(P-los01)-los12の給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-2は分岐比1:bであるので、給電光の送信電力{a/(1+a)}・(P-los01)-los12を、受電装置50-2に向かって{1/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]で分岐し、次段の光ファイバカプラ30-3に対して{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]で分岐する。ここで光ファイバカプラ自体のロスは0として考える。
【0032】
光ファイバカプラ30-2から受電装置50-2までの光ファイバ2の伝送ロスをlos2とすると、受電装置50-2に到達する給電光の受信電力P2は、以下の(2)式になる。
P2={1/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los1・・(2)
【0033】
また、光ファイバカプラ30-2から光ファイバカプラ30-3までの光ファイバ2の伝送ロスをlos23とすると、光ファイバカプラ30-3には{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los23の給電光の送信電力が到達する。
光ファイバカプラ30-3は分岐比1:cであるので、給電光の送信電力{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los23を、受電装置50-3に向かって{1/(1+c)}・[{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los23]で分岐し、次段の光ファイバカプラ30-4に対して{c/(1+c)}・[{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los23]で分岐する。ここで光ファイバカプラ自体のロスは0として考える。
【0034】
光ファイバカプラ30-3から受電装置50-3までの光ファイバ2の伝送ロスをlos3とすると、受電装置50-3に到達する給電光の受信電力P3は、以下の(3)式になる。
P3={1/(1+c)}・[{b/(1+b)}・[{a/(1+a)}・(P-los01)-los12]-los23]-los3・・(3)
【0035】
以上のように、給電光の送信電力Pおよび光ファイバの伝送ロスが分かっているとして、光ファイバカプラ30-1の選択可能な分岐比1:aを決定すれば、前記(1)式に示すように、受電装置50-1に到達する給電光の受信電力P1が算出される。
さらに、光ファイバカプラ30-2の選択可能な分岐比1:bを決定すれば、前記(2)式に示すように、受電装置50-2に到達する給電光の受信電力P2が算出される。
さらに、光ファイバカプラ30-3の選択可能な分岐比1:cを決定すれば、前記(3)式に示すように、受電装置50-3に到達する給電光の受信電力P3が算出される。
【0036】
すなわち、光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの選択可能な分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xを決定すれば、受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)に到達する給電光の受信電力P1、P2、P3、・・・、Pn、Pn+1を算出することができる。
【0037】
以上のように、光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xを選択することにより、受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)の給電光の受信電力P1、P2、P3、・・・、Pn、Pn+1を適切な値に調整することができる。
【0038】
例えば、光ファイバカプラ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの分岐比1:a、1:b、1:c、・・・、1:xを選択することにより、受電装置50-1、50-2、50-3、・・・、50-n、50-(n+1)の給電光の受信電力P1、P2、P3、・・・、Pn、Pn+1を均等な値に調整することができる。
【0039】
なお、前記実施の形態においては、各光ファイバカプラの分岐比および各光ファイバの伝送ロスに基づいて、各受電装置の給電光の受信電力を算出し、各受電装置の給電光の受信電力を調整するようにしているが、各光ファイバカプラの伝送ロスをも考慮に入れて各受電装置の給電光の受信電力を算出し、各受電装置の給電光の受信電力を調整しても良い。
【0040】
また、前記実施の形態においては、複数個の光ファイバカプラは、給電装置に対して直列に接続されている光給電システムについて説明したが、複数個の光ファイバカプラが直列および並列に接続されている光給電システムについても適用できる。例えば、図1の光給電システムにおいて、光ファイバカプラ30-1から受電装置60-1および光ファイバカプラ30-2に分岐するとともに、図示しない別の光ファイバカプラに分岐することもできる。この別の光ファイバカプラにはさらに別の受電装置、光ファイバカプラが接続されることになる。
【0041】
〈実施の形態の効果〉
以上のように、本実施の形態によれば、
給電光を出力する給電装置と、
前記給電装置からの給電光が、光ファイバを介して入力される複数個の光ファイバカプラと、
複数個の前記光ファイバカプラのそれぞれに光ファイバを介して接続され、受信した給電光を電力に変換する光電変換素子を含む受電装置とを備えた光給電システムであって、
複数個の前記光ファイバカプラは、それぞれ選択可能な分岐比を有し、各前記光ファイバカプラの前記分岐比を選択することにより各前記受電装置に同時給電するようにしたので、複数の受電装置に対して効率的に同時給電することができる。
【0042】
また、複数個の前記光ファイバカプラは、前記給電装置に対して直列に接続されているので、複数の受電装置に対して効率的に同時給電することができる。
【0043】
また、少なくとも、各前記光ファイバカプラの前記分岐比および各前記光ファイバの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電するようにしたので、複数の受電装置に対して効率的にかつ正確に同時給電することができる。
【0044】
また、各前記光ファイバカプラの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電するようにしたので、複数の受電装置に対して効率的にかつ正確に同時給電することができる。
【0045】
また、各前記受電装置の給電光の受信電力が均等になるように各前記受電装置に同時給電するようにしたので、複数の受電装置に対して効率的にかつ均等に同時給電することができる。
【0046】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本開示の技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0047】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0048】
[付記1]
給電光を出力する給電装置と、
前記給電装置からの給電光が、光ファイバを介して入力される複数個の光ファイバカプラと、
複数個の前記光ファイバカプラのそれぞれに光ファイバを介して接続され、受信した給電光を電力に変換する光電変換素子を含む受電装置とを備えた光給電システムであって、
複数個の前記光ファイバカプラは、それぞれ選択可能な分岐比を有し、各前記光ファイバカプラの前記分岐比を選択することにより各前記受電装置に同時給電する光給電システム。
[付記2]
複数個の前記光ファイバカプラは、前記給電装置に対して直列に接続されている付記1に記載の光給電システム。
[付記3]
少なくとも、各前記光ファイバカプラの前記分岐比および各前記光ファイバの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電する付記1または付記2に記載の光給電システム。
[付記4]
各前記光ファイバカプラの伝送ロスに基づいて、各前記受電装置の給電光の受信電力を算出して、各前記受電装置に同時給電する付記3に記載の光給電システム。
[付記5]
各前記受電装置の給電光の受信電力が均等になるように各前記受電装置に同時給電する付記1から付記4のいずれか1項に記載の光給電システム。
【符号の説明】
【0049】
2 光ファイバ、10 給電装置、11 半導体レーザ、20 給電光、
30 光ファイバカプラ、50 受電装置、
60-1,60-2,60-3,60-n,60-(n+1) 光電変換素子、
100 受電ネットワーク。
図1
図2
図3
図4